特許拒絶査定不服審判
2020-007419
ロックウール素材及びその成形体である放射線遮蔽低減体を用いた公衆被爆防護、職業被爆防護、医療被爆防護ならびに放射性廃棄物処理に関する。
- 審判番号
- 2020-007419
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-018391
- 請求日
- 2020年06月01日
- 審決日
- 2021年10月25日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】石井 卯
- 審判長/審判官
- 審判長 瀬川 勝久
- 審判官 野村 伸雄
- 審判官 松川 直樹
- 分類
- P18 .113-WZ (G21F) / P18 .121-WZ (G21F) / P18 .536-WZ (G21F) / P18 .537-WZ (G21F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016- 18391「ロックウール素材及びその成形体である放射線遮蔽低減体を用いた公衆被爆防護、職業被爆防護、医療被爆防護ならびに放射性廃棄物処理に関する。」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-125828〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月15日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。
平成30年 8月29日 :手続補正書の提出
令和 元年 7月26日付け:拒絶理由通知書
令和 元年11月27日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 2月20日付け:拒絶査定
令和 2年 6月 1日 :審判請求書の提出
令和 3年 5月10日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 7月12日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1ないし7に係る発明は、令和3年7月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。また、請求項2、4、7は、以下のとおり記載されている。
「【請求項1】
放射線の透過低減を有する素材がロックウールであって、
前記ロックウールは、ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていることを特徴とする放射線遮蔽基材。」
「【請求項2】
水を含水させた鉱物繊維または、水を含水させたロックウールの含水が残存するように圧縮もしくは絞って、成形されていることを特徴とする請求項1に記載の放射線遮蔽基材。」
「【請求項4】
容器内部充填物が容器外部に漏れ出ないように密閉蓋を構成してなる容器内部に請求項1から3に記載のうちのいずれか又は、請求項1から3に記載のうちの複数種を混合してなる混合構成基材を充填して、前記混合構成充填基材に放射性廃棄物を挿入混合または、放射性物質が含まれる水を注水することを特徴とする放射線遮蔽基材および放射性物質充填容器。」
「【請求項7】
放射線透過低減性繊維が、無機繊維、有機繊維のいずれかであって、前記放射線透過低減繊維が請求項1から3に記載のうちのいずれかの表面を被覆してなることを特徴とする放射線遮蔽基材。」
第3 拒絶の理由
令和3年5月10日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
[理由1](実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
[理由2](明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由3](新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由4](進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
●理由1(実施可能要件)について
本願の請求項1~10には、特に請求項1に記載されているように「放射線の透過低減を有する素材がロックウールであること」で、「放射線遮蔽基材」や「放射性物質充填袋体」として機能するものが記載されており、実質的に、「ロックウール」を「放射線の透過低減を有する素材」として用いることが、本願の請求項1~10に係る発明のポイントであると認められる。
ここで、一般的な「ロックウール」の放射線遮蔽性能は、下記引用文献1の表1に記載されているように、実効線量透過率は9.97E-01~1.00E+00程度であり、密度が一定以上であれば若干の放射線遮蔽性能はあるものの、必ずしも高い放射線遮蔽性能を有するものではない。そして、このことは、ロックウールがいわゆる綿状であり、同じ材料を同じ量、板状に成形した場合と比較しても(密度が低くなる分)放射線遮蔽性能が劣るであろうという一般的な推認とも符合する。
しかしながら、本願の請求項1~10には「ロックウール」そのものについて、一般的な「ロックウール」とは異なる、「放射線の透過低減」に寄与する格別な構成などについて記載されておらず、また、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、一般的な「ロックウール」とは異なる特別な「ロックウール」を用いるといった記載もなく、どのようにして、放射線遮蔽基材として実効性のある形で「ロックウール」を用いることができるのか不明瞭である。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願の請求項1~10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
●理由2(明確性)について
(1)請求項5において、「水を含水させた鉱物繊維または、水を含水させたロックウールの含水が残存するように」の記載から「水を含水させた鉱物繊維」のみを有する放射線遮蔽基材の場合もあり得るように解されるが、「水を含水させた鉱物繊維」のみの態様の場合、「ロックウール」を含んでいないことになり、その場合、「ロックウール」の存在が必須である請求項1~4に記載された構成とどのように関係することになるのか、また、どのような態様を意味しているのか不明瞭である。
(2)請求項7において「請求項1から6に記載のうちのいずれか又は、請求項1から6に記載のうちの複数種を混合してなる混合構成基材」と記載されているが、「請求項1から6に記載のうちのいずれか」を混合する、又は「請求項1から6に記載のうちの複数種を混合」するとは、「請求項1から6に記載のうちの」何を混合するという意味なのか不明瞭である。
また、「請求項1から6に記載のうちの複数種を混合して」が、仮に「請求項1から6に記載の放射線遮蔽基材のうちの複数種を混合して」という意味であったとしても、どのような態様を意味しているのか不明瞭である。(例えば、請求項2、5、6に記載の放射線遮蔽基材を混合するとは、どのような混合構成基材を意味しているのかわからない。)
(3)請求項10において「請求項1から6に記載のうちのいずれかの表面を被覆してなる」と記載されているが、「請求項1から6に記載のうちのいずれかの表面」とは、何の表面を意味しているのか不明瞭である。
●理由3(新規性)、理由4(進歩性)について
・請求項 1-10
・引用文献等 1-3
<引用文献等一覧>
引用文献1.別府克俊 外1名,「セシウム-137から生ずるガンマ線に対する各種建築材料の遮蔽データベース」,日本建築学会構造系論文集,日本,[online],2014年 8月,第79巻第702号,第1089-1095頁,[令和3年4月30日検索]、インターネット<URL https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijs/79/702/79_1089/_pdf >
引用文献2.特開2015-125143号公報
引用文献3.「2010年度版 ロックウール製品の特性と取扱い」,ロックウール工業会,2010年
第4 当審の判断
1 新規性、進歩性について
(1)引用文献について
ア 引用文献1
(ア)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
「
[図:0001388598000001.jpg]
」(第1090頁左欄第12-29行)
「
[図:0001388598000002.jpg]
」(第1091頁右欄第3-14行)
「
[図:0001388598000003.jpg]
」(第1092頁右欄第2-29行)
「
[図:0001388598000004.jpg]
」(第1093頁左欄)
(イ)上記(ア)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「線源から放出されるガンマ線に対する各種建築材料の遮蔽性能のデータベースにおいて、断熱材として用いられるロックウールについて、組成割合SiO2 40%、CaO 20%、Al2O3 20%であって、密度0.050g/cm3の実効線量透過率は、9.99E-01、密度0.100g/cm3の実効線量透過率は、9.97E-01、であること。」
イ 引用文献2
(ア)引用文献2には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【請求項1】
複数のリブと、当該複数のリブを介して積層された少なくとも1枚の表薄板及び裏薄板と、を含み、前記表薄板と前記裏薄板とに挟まれ、前記複数のリブを除いた領域と中空リブの中空領域に含水用空間又は、含水用空間と気相部を形成している中空板状体と、前記含水用空間の中に充填された保水基材又は、含水用空間の中に充填された保水基材と気相部と、を備える放射線透過低減構成基材である。・・・(略)・・・
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項記載の放射線透過低減構成基材の表薄板側、裏薄板側又は表裏薄板側のいずれかの薄板側に、2枚の不織布が格子状に接合され、生じた格子目の上下不織布の間にゼオライト又はゼオライトと活性炭の混合物が封入されてなる放射性物質吸着シートが積層されている放射線透過低減構成基材。
【請求項22】
少なくとも1枚の不織布に極細粒活性炭が付着若しくは含浸されている請求項21記載の放射線透過低減構成基材。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項記載の放射線透過低減構成基材の表薄板側に、ロックウール繊維又はその成形体が積層されている放射線透過低減構成基材。
【請求項24】
請求項23記載のロックウール繊維の成形体が不織布、フェルト状体、板状体、角棒、粒状物、綿状物である。さらに、前記ロックウール繊維の成形体の表面に亀甲金網を貼合された形態、該成形体の表面にガラスクロスで被覆された形態、該成形体の表面にアルミ箔とガラス繊維シートが貼合してなるアルミクロスを貼合された形態のロックウール繊維が含まれて、前記成形体のいずれかを請求項21又は22の放射性物質吸着シートの周縁部が、閉鎖されているか一部開口部を残して閉鎖されている袋体に形成された内部に、保水基材又は空隙保持基材として充填された形態である放射線透過低減構成基材。」
「【発明の効果】
【0098】
以上のように本発明の放射線透過低減構成基材と放射線透過低減構成基材それを用いた放射線防護緑地及び放射性物質拡散防止策緑地化構造体によれば、保水基材の働きにより、含水用空間に貯水することができ、放射線の透過低減効果を安定的に発揮させることができる。そして、放射線物質を微昌形炭素が物理的に吸着する機能で飛散を防ぐ効果も得られる。この効果の要因は、表薄板と裏薄板、複数のリブ、周縁閉鎖部材の構成から創造した含水用空間に保水基材が充填されているので、保水基材は、荷重による外力の影響を受けることなく静的状態を保ち、永続に含水量が保持できる。さらに、周辺の高温熱環境による蒸発作用が要因の含水量変化、微生物による保水基材の分解減少変化、植物の蒸発散に伴う土壌含水量の増減変化などの影響を受けることがなく保水基材に存在する含水量に変化はない。
この構成により、中空板状部材の重量と保水基材の重量、保水基材に含水された初期含水量の重量が持続できるので放射線の透過低減効果を持続的に発揮させることができる。また、設置現場もしくは、その付近で含水用空間に注水することができるので、運送の負担が軽減される。さらに、従来から有する放射線遮蔽効果を発揮させる重量物を運ぶ作業者の負担が軽減できる。」
「【0105】
次に、この実施の形態について、図面に即して説明する。
図1の上図(a)に示すように、表薄板2と裏薄板3の間にリブ4が構成されて、リブ4を除くスペースが含水用空間5になり、含水用空間5に保水基材6が充填されている。保水基材6はロックウールの粒状物であり、含水量はロックウールの自重の約5倍の水が含水される。よって、1平方メートル当たり20kgのロックウール粒状物に水が飽和する状態まで注水すると、ロックウール粒状物と水を合わせた重量は、1平方メートル当たり、約120kgとなる。この重量で、透過性の高い放射線であるガンマ線の透過率が約50%に抑えられることが理論上予測される。また、リブ4とリブ4の位置と間隔は定位置、一定の間隔にする、もしくはリブ4の位置をランダムにして間隔も一定間隔ではない構成でも中空板状体を製造することが可能ではあるが、保水基材量と含水量を考慮して、放射性物質の遮蔽率と荷重による固定効果を算出して設計、製造することを推奨する。
また下図(b)は、上図の表薄板2をリブ4の上面から分離させている。この図で示されたリブ4の位置は一定間隔ではないリブ4の位置の一例である、なお、リブ4の形状は円筒形のリブ4が選択されて保水基材6が含水用空間5の周縁部空間を除いて隙間なく充填されている。
【0106】
また下図(c)の断面図は、表薄板2と裏薄板3の間に複数の円筒状の中空リブ4と含水用空間5と気相部118が構成されて、中空リブ4には保水基材6であるロックウールの粒状物101が充填されている。また、保水基材6と気相部118を構成している中空リブ4が示されている。そして、表薄板2と裏薄板3の間の上部領域が気相部118として構成されている。この気相部118にはロックウールの成形体である撥水断熱材42が静止状態を保つように構成されている。なお、保水基材6と撥水断熱材42との境目に遮水シート76を介して保水基材6の水を遮水している。この遮水シート76は透湿を防ぐ樹脂とフッ素ゴムを圧着してなる厚さ0 .3mmのゴムシートが選択されている。また、樹脂フイルムを選択することも好ましい。当該発明の構成により液相部である含水用空間5に保水基材6が充填されて水が静止状態になることによって含水時の水荷重を保つ、そして、気相部118の撥水断熱材42の無数に存在する微小空気層が熱伝導を低減できる。また、密度の高い帯電防止効果を有する樹脂板の構成が要因して放射性物質の遮蔽低減に有用となることが予測できる一例である。当該発明の構造体を放射性物質で汚染された箇所の上、近椄に設置すると、当該発明の構造体が放射性物質から放出される放射線の透過の低減効果を得ることが推測できるので好ましい。・・・(略)・・・
【0110】
図2は、透明樹脂からなる中空板状体1の含水用空間5に包装された保水基材7が充填されている図である。保水基材7の内容にもよるが、保水基材7を紙や樹脂繊維の織物、樹脂フイルム、ゴム引布シートなどで包み、所定の含水空間5に充填することが好ましいがこの方法がすべてではない。気相部118に鉱物繊維などで無数に形成された微小空気層体である撥水断熱材42を確保すると熱伝導率が減り放射性物質の線量の遮蔽に好ましい。また、含水空間に空隙空間(気相部118)を一部構成して空隙空間に耐水性能を有するロックウール成形体、グラスウール成形体、セラミック繊維成形体のいずれかを備えることも好ましい。なお、気相部118に充填される無数の繊維が成形されているロックウール成形体は、ロックウール繊維に樹脂を付着もしくは含浸させて撥水性を有する成形体を選択することが好ましい。・・・(略)・・・
【0120】
また、中空板状体の含水用空間5に保水基材7を充填する方法は、保水基材7そのものを充填することが好ましいが、保水基材7を透水性がある不織布又はポリエチレン繊維をネット状に織ったポリエチレンシートを縫製する、または周縁の一部を熱熔着してなる袋物に保水基材7を充填して含水用空間5に備える方法もよい。もしくは、不織布、ポリエチレン繊維をネット形状に織ったポリエチレンシートまたは、不織布や紙で保水基材7を包装して含水用空間5に備えてもよい。」
「【0199】
<第50の実施の形態>
第50の発明の放射線透過低減に係る構造体は、表薄板2と裏薄板3とが複数の板状、円筒状、円錐台状、ハニカム状、角柱状、角錐台状、格子状のいずれかのリブを介して積層されてなる中空板状体21、樹脂板、樹脂シート、ゴムシートのいずれかを選択または、第1から17の発明のいずれかに記載の放射線透過低減構成基材の上面に暗渠形状が板状、箱状、樋状、すのこ状、凹凸状、スポンジ状又は波板状であり、複数の貫通孔が穿設されている基材の上面に、厚み0.03mm以上、目付量10g/m2以上ある不織布/ 又は、活性炭が付着若しくは含浸されている不織布、2枚の不織布が格子状に接合され、生じた格子目の上下不織布の間に肥料又は肥料と活性炭の混合物が封入されてなる植物育成シートのうち少なくとも一つが積層されたその上面にロックウール繊維からなる密度25kg/m3以上の粒形状成形体が積層され、更に前記ロックウール繊維の上面に土壌層33が積層されていることを特徴とした放射線透過低減構成基材それを用いた放射線防護緑地及び放射性物質拡散防止策緑地化構造体である。」
「【0254】
図34は第57の発明の一例が示された実施の形態である。
図34の断面図に示す構成では、黒色の顔料を添加されたポリエチレン樹脂で成形された底を有する外側容器65と底を有する内側容器66とそれらの間隙に設けられた保水基材6とにより、容器本体が構成される。内側容器66の内側領域が、放射性物質収納空間70としての使用に供される。容器本体の上面を覆う容器蓋69には、保水基材6が容器蓋69の蓋底板の上部領域に設けられている。また、容器蓋69の上面には、注水口と注水口を閉じる蓋25が設けられる。
外側容器65と内側容器66との間隙に配置された保水基材6の断面厚さは40cmである。また、保水基材6はロックウールの粒状綿と粒径が990μm以下の極細粒活性炭を混合した保水基材であり、その含水飽和時の重量は約280kg/m2となる。この重量により、放射性物質収納空間70に収納される放射性物質から放出される放射線が外側容器65を透過することを防ぐことができる。また、容器蓋69に設けられた保水基材6の断面厚さは35cm/m2である。この厚みの保水基材6と含水飽和量を合わせた重量は約240kg/m2となる。この重量により放射性物質収納空間70に収納される放射性物質から放出される放射線が、容器蓋69を透過することを防ぐことができる。この容器は、第1又は2の発明の構成の具体例である[0111]から[0124]の説明文より選択した材料と成形手段を取り入れて製造されてもよい。」
(イ)上記(ア)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠とした箇所を、参考として、括弧内に示す。
「複数のリブと、当該複数のリブを介して積層された少なくとも1枚の表薄板及び裏薄板と、を含み、前記表薄板と前記裏薄板とに挟まれ、前記複数のリブを除いた領域と中空リブの中空領域に含水用空間又は、含水用空間と気相部を形成している中空板状体と、前記含水用空間の中に充填された保水基材又は、含水用空間の中に充填された保水基材と気相部と、を備える放射線透過低減構成基材あり、(請求項1)
放射線透過低減構成基材の表薄板側に、ロックウール繊維又はその成形体が積層されており、(請求項23)
ロックウール繊維の成形体が不織布、フェルト状体、板状体、角棒、粒状物、綿状物であり、さらに、前記ロックウール繊維の成形体の表面に亀甲金網を貼合された形態、該成形体の表面にガラスクロスで被覆された形態、該成形体の表面にアルミ箔とガラス繊維シートが貼合してなるアルミクロスを貼合された形態のロックウール繊維が含まれている、(請求項24)
放射線透過低減構成基材。」
ウ 引用文献3
引用文献3の2頁1.2には、「ロックウール」を「粒状綿」とすること、
2頁表1.1には、「ロックウール化学組成(重量%)」として、
[図:0001388598000005.jpg]
5頁1.6.1には、「ロックウール」「などの人造鉱物繊維」、とそれぞれ記載されている。
(2)引用文献1を主引例とした場合
ア 対比
本願発明と引用発明1を対比する。
(ア)本願発明の「放射線の透過低減を有する素材がロックウール」の特定事項について
引用発明1の「ロックウール」は、本願発明の「素材がロックウール」に相当する。
したがって、引用発明1は上記特定事項のうち「素材がロックウール」を備えているものといえる。
(イ)本願発明の「前記ロックウールは、ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること」の特定事項について
引用発明1の「ロックウール」は「密度0.050g/cm3の実効線量透過率は、9.99E-01、密度0.100g/cm3の実効線量透過率は、9.97E-01」であることから、密度を高くして50kg/m3又は100kg/m3の重量値に形成されているものといえる。また、「ロックウール」は鉱物繊維の一つであることは技術常識である(必要ならば、引用文献3を参照されたい。)。
したがって、引用発明1は「前記ロックウールは、ロックウールを含む鉱物繊維を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること」を備えているものといえる。
(ウ)そうすると、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「素材がロックウールであって、
前記ロックウールは、ロックウールを含む鉱物繊維を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること。」
【相違点1】
本願発明は「基材」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がなされていない点。
【相違点2】
ロックウールについて、本願発明は「放射線の透過低減を有する」素材として用いて、「放射線遮蔽基材」を構成しているのに対し、引用発明1はそのような特定がなされていない点。
イ 判断
(ア)新規性について
a 相違点1について
引用文献1には、「データベースの活用事例」として「外装材、断熱材、躯体、内挿下地材を組み合わせ、それらのデータベースの値を乗じる」と記載されていることから、引用発明1において、ロックウールを断熱材等の建築材料として用いることを想定していることは明らかであり、引用発明1は、ロックウールを断熱材として用いた断熱材等の建築材料の構成を実質的に有しているといえる。そして、断熱材等の建築材料は基材の一種であるといえる。
そうすると、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
b 相違点2について
(a)本願発明において、ロックウールについて、「放射線の透過低減を有する」ことに貢献する具体的な構成について、「ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること」以外、特定されていないこと、当該密度は引用文献1、引用文献2等にも記載されているように一般的な「ロックウール」の密度であることから、本願発明の「ロックウール」は、一般的な「ロックウール」であると解するべきであり、引用発明1のロックウールとの実質的な相違はないというべきである。
このことは、引用発明1において、ロックウールの実効線量透過率は9.99E-01、9.97E-01と特定されており、微量であるとはいえ、放射線を遮蔽する機能を有しているから、ロックウールは「放射線の透過低減を有する素材」であるということはでき、ロックウールを用いた基材(断熱材等)は、「放射線遮蔽基材」ということができることからも、首肯される。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
c まとめ
したがって、本願発明は、引用発明1である。
(イ)進歩性について
a 上記相違点1が、実質的な相違点である場合についても一応検討する。
ロックウールを断熱材等の住宅用の材料として用いることは、周知技術(必要ならば、引用文献3(特に、図1.1、表2.2参照。)を参照されたい。)である。
そうすると、上記周知技術を引用発明1に適用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
したがって、仮に、本願発明が、引用発明1であるとはいえないとした場合であっても、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
b そして、これら相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
c まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)引用文献2を主引例とした場合
ア 対比
本願発明と引用発明2を対比する。
(ア)本願発明の「放射線の透過低減を有する素材がロックウール」の特定事項について
引用発明2の「ロックウール繊維」は、本願発明の「素材がロックウール」に相当する。
したがって、引用発明2は上記特定事項のうち「素材がロックウール」を備えているものといえる。
(イ)本願発明の「放射線遮蔽基材」の特定事項について
引用発明2の「放射線透過低減構成基材」は、本願発明の「放射線遮蔽基材」に相当する。
したがって、引用発明2は上記特定事項を備えているものといえる。
(ウ)そうすると、本願発明と引用発明2の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「素材がロックウールである放射線遮蔽基材。」
【相違点3】
ロックウールについて、本願発明は「放射線の透過低減を有する」素材であるのに対し、引用発明2はそのような特定がなされていない点。
【相違点4】
本願発明は「ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されている」と特定されているのに対して、引用発明2はそのような特定がなされていない点。
イ 判断
(ア)相違点3、4について
a 本願発明において、ロックウールについて、「放射線の透過低減を有する」ことに貢献する具体的な構成について、「ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること」以外、特定されていないこと、当該密度は引用文献1、引用文献2等にも記載されているように一般的な「ロックウール」の密度であることから、本願発明の「ロックウール」は、一般的な「ロックウール」であると解するべきである。
このことは、引用文献1において、ロックウールの実効線量透過率は9.99E-01、9.97E-01と記載されており、微量であるとはいえ、放射線を遮蔽する機能を有しているから、ロックウールは「放射線の透過低減を有する素材」であるということはでき、ロックウールを用いた基材(断熱材材等)は、「放射線遮蔽基材」ということができることからも、首肯される。
そして、ロックウールとして、10kg/m3から4000kg/m3のものは周知技術(必要ならば、引用文献1(特に、表1参照。)、引用文献2(特に、【0199】参照。)を参照されたい。)である。
そうすると、上記周知技術を引用発明2に適用し、相違点3、4に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。
b そして、これら相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(イ)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
2 実施可能要件について
(1)本願の請求項1に記載されているように「放射線の透過低減を有する素材がロックウールであること」及び「ロックウールを含む鉱物繊維または、ロックウールの粒状綿を密度が高くなるように圧縮させて、10kg/m3から4000kg/m3のうちのいずれかの重量値に成形されていること」で、「放射線遮蔽基材」として機能するものが記載されている。
(2)ここで、一般的な「ロックウール」の放射線遮蔽性能は、上記引用文献1の表1に記載されているように、実効線量透過率は9.97E-01~1.00E+00程度であり、密度が一定以上であれば若干の放射線遮蔽性能はあるものの、必ずしも高い放射線遮蔽性能を有するものではない。
(3)しかしながら、本願の請求項1には「ロックウール」そのものについて、一般的な「ロックウール」とは異なる、「放射線の透過低減」に寄与する格別な構成などについて特定されていない。
また、本願の発明の詳細な説明を参酌しても、一般的な「ロックウール」とは異なる特別な「ロックウール」を用いるといった記載もない。
そうすると、どのようにして、放射線遮蔽基材として実効性のある形で「ロックウール」を用いることができるのか不明瞭である。
したがって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
3 明確性について
(1)請求項2において、「水を含水させた鉱物繊維または、水を含水させたロックウールの含水が残存するように」の記載から「水を含水させたロックウール」以外の「水を含水させた鉱物繊維」のみを有する放射線遮蔽基材の場合もあり得るように解される。
そうすると、「水を含水させたロックウール」以外の「水を含水させた鉱物繊維」のみの態様の場合、「ロックウール」を含んでいないことになり、また、請求項2は請求項1を引用しており、その場合、「ロックウール」の存在が必須である請求項1に記載された構成とどのように関係することになるのか、また、どのような態様を意味しているのか不明瞭である。
(2)請求項4において「請求項1から3に記載のうちのいずれか又は、請求項1から3に記載のうちの複数種を混合してなる混合構成基材」と記載されている。
しかしながら、「請求項1から3に記載のうちのいずれか」を混合する、又は「請求項1から3に記載のうちの複数種を混合」するとは、「請求項1から3に記載のうちの」何を混合するという意味なのか不明瞭である。
また、「請求項1から3に記載のうちの複数種を混合して」が、仮に「請求項1から3に記載の放射線遮蔽基材のうちの複数種を混合して」という意味であったとしても、どのような態様を意味しているのか不明瞭である。(例えば、請求項2、3に記載の放射線遮蔽基材を混合するとは、どのような混合構成基材を意味しているのかわからない。)
(3)請求項7において「請求項1から3に記載のうちのいずれかの表面を被覆してなる」と記載されている。
しかしながら、「請求項1から3に記載のうちのいずれかの表面」とは、何の表面を意味しているのか不明瞭である。
したがって、請求項2、4、7に係る発明は明確でない。
4 審判請求人の主張について
(1)審判請求人は、令和3年7月12日付けの意見書において、
「本出願の放射線遮蔽率と引用文献1とされている論文1.別府克俊外1名,「セシウム-137から生ずるガンマ線に対する各種建築材料の遮蔽データベース」のロックウール放射線遮蔽率を比較すると、比較対象になり得ないほどその効果の差異は大きい。」
旨主張している。
(2)上記1でも説示したように、密度0.050g/cm3、又は密度0.100g/cm3のロックウールは、微量であるとはいえ、放射線を遮蔽する機能を有している。
そして、引用発明1のロックウールと本願発明のロックウールは、実質的に相違していないことから、効果も同様と考えるのが自然である。
審判請求人が主張するように、審判請求人の圧縮ロックウールの実証実験結果が引用文献1に記載のロックウールや一般的なロックウールに比べ比較対象になり得ないほど放射線の遮蔽効果の差異は大きいのであれば、本願発明の特定事項以外の一般的な「ロックウール」とは異なる、「放射線の透過低減」に寄与する格別な構成が必要である。そして、審判請求書の実験成績証明書について検討すると、当該実験成績証明書のロックウールは、密度0.350g/cm3、厚さ150mmである。そうすると、ロックウールの密度を0.350g/cm3(350kg/m3)以上、及び厚さを150mm以上が格別な構成であったとも推測されるが、本願発明はそのような格別の構成は特定されていない。また、仮に、ロックウールの組成を一般的なロックウールとは異なる格別な組成とし、遮蔽機能を高めたとしても、本願発明はそのような格別な組成は特定されていない。なお、もともと、放射線遮蔽機能が低い材料でも、厚さを厚くしたり、密度を高くすれば、遮蔽機能が上がることは当然であって、格別のことではない。
以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができず、また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。さらに、本願の請求項2、4、7は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2020-007419