特許拒絶査定不服審判
2018-015162
電磁波保護システム
- 審判番号
- 2018-015162
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-167164外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月14日
- 審決日
- 2020年01月20日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A41D) / P18 .561-Z (A41D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項、特許法第159条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-167164「電磁波保護システム」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 3月22日出願公開、特開2019- 44290〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は、平成29年8月31日の出願であって、同年12月11日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年5月10日に手続補正がなされ、同年8月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月14日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、手続補正がなされたものである。
第2.平成30年11月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成30年11月14日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、具体的には請求項1の記載を以下のとおりに補正するものである。
なお、〈本件補正による請求項1〉における下線は補正箇所を表している。
〈本件補正前の請求項1〉
「【請求項1】
人体近くで動作する電気製品が放射する電磁波から人体を保護する第1の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体とのどちらか一方あるいは両方が繊維状にされて使用者の視界及び音波伝播を妨げない程度に間隔を空けたメッシュ構造の布状幕が少なくとも前記使用者の顔面及び耳を覆う、第1の人体保護装置と、
家庭電化製品や電力線から放射される電磁波から人体を保護する第2の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体とが繊維状にされて編み込まれた布状の第2の人体保護装置と、
電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置であって、板状の電磁シールドチップからなり該板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ第3の人体保護装置と、
人体住環境外から到来する電磁波から人体を保護する第4の人体保護装置であって、内部に中空部分が設けられた板状の電磁シールドチップの表面に超高周波電磁波に共振して吸収する微細加工が施される、第4の人体保護装置と
のいずれか1つ以上を備えて構成されることを特徴とする電磁波保護システム。」
〈本件補正による請求項1〉
「【請求項1】
人体近くで動作する電気製品が放射する電磁波から人体を保護する第1の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が繊維状にされて使用者の視界及び音波伝播を妨げない程度に間隔を空けたメッシュ構造の布状幕が少なくとも前記使用者の顔面及び耳を覆う、第1の人体保護装置と、
家庭電化製品や電力線から放射される電磁波から人体を保護する第2の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体とが繊維状細線とされてその両方が編み込まれた布状の第2の人体保護装置と、
電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が編み込まれた板状の電磁シールドチップからなり該板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ第3の人体保護装置と、
人体住環境外から到来する電磁波から人体を保護する第4の人体保護装置であって、内部に中空部分が設けられ電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が編み込まれた板状の電磁シールドチップの表面に超高周波電磁波に共振して吸収する微細加工が施されテラヘルツ加工が施された、第4の人体保護装置と
のいずれか1つ以上を備えて構成されることを特徴とする電磁波保護システム。」
2.本件補正に対する判断
本件補正による請求項1における「電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置であって、電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が編み込まれた板状の電磁シールドチップからなり該板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ第3の人体保護装置」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初の明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてされたものとは認められない。
詳細は、以下のとおりである。
出願当初の明細書等には、電力線やブレーカからの電磁波放射の抑制に関して、段落【0031】~【0034】に、「電力線やブレーカからの電磁波放射を抑制」する「電磁シールドチップ31」として「酸化鉄を主成分とするセラミック製のソフトフェライト(軟磁性)を板状チップに形成」されること、「最も電磁波が放出されている部分」に「電磁シールド41」は「両面接着テープや接着剤にて貼り付け設置」されること、当該「設置により、電圧、電流の位相差変動を抑え、無効電力発生による電力損失を抑制すると共に人体に有害と思われる電磁波発生を抑えることができる」ことが記載されている。また、段落【0035】~【0036】に、「電磁波シールドチップ51」について、「設置貼り付け面及び反対面の表面が、凹凸加工52されることで、表面積を大とし」、「電力線から放射される不要な電磁波を吸収し、ソフトフェライトの「電磁波熱変換特性を利用して電磁波エネルギーを熱に変換し大気中に熱放散」し、「表面積拡大加工により熱放散効率が上がり、電磁波吸収効率を高めて電圧、電流の位相関係を安定化し力率改善効果を高める」ことが記載されている。
しかしながら、電力線やブレーカからの電磁波放射の抑制に関する上記記載には、電磁シールドチップとしてソフトフェライト(軟磁性)の板状チップを用い電磁波を吸収することが記載されるのみであり、電磁波反射体を用いることは記載も示唆もされていない。
また、出願当初の明細書等には、請求項2を引用する請求項7,請求項8として、電磁波反射体と電磁波吸収体の両方が繊維状にして用いられる電磁シールドチップの構成が記載され、段落【0020】に「電磁波反射体及び電磁波吸収体を繊維状細線とし、反射体あるいは吸収体のどちらか一方あるいは両方を編み込んだ布状あるいはチップ状とした保護装置とする」ことが記載されているものの、これらの記載は、電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する保護装置に関する記載でも、貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造を持つ保護装置に関する記載でもない。
その他に、「電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が編み込まれた板状の電磁シールドチップ」に関する記載は無い。
以上のことより、「電力線やブレーカからの電磁波放射を抑制」する「電磁シールドチップ」を「電磁波反射体と電磁波吸収体との両方が編み込まれた板状」で「貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造を持つ」ものとすることは、出願当初の明細書等には、記載も示唆もされていない。
3.むすび
上記「2.」で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。
第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、上記「第2.」の「1.」の〈本件補正前の請求項1〉に記載されたとおりのものである。
ここで、本願の請求項1には、「・・・第1の人体保護装置と、・・・第2の人体保護装置と、・・・第3の人体保護装置と、・・・第4の人体保護装置とのいずれか1つ以上を備えて構成されることを特徴とする電磁波保護システム」と記載されているから、本願の請求項1に係る発明は、以下の「第3の人体保護装置」のみで構成される「電磁波保護システム」である発明(以下、「本願発明」という。)を含むものである。
〈本願発明〉
「電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置であって、板状の電磁シールドチップからなり該板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ第3の人体保護装置、
を備えて構成されることを特徴とする電磁波保護システム。」
2.引用文献の記載、引用発明等
ア.引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2017-121143号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の記載がある。なお、下線は当審で付与した。
(ア)「【0008】
電力の伝送効率は電磁波の影響により低下する傾向がある。そこで、電磁波が多く発生しやすい分電盤周辺の電磁波を低減させることにより、電力の伝送効率の改善を図ることができる。本発明では、上記磁性体により分電盤周辺に発生した電磁波の磁束を収束させ、その磁束を導体板により熱に変換することができる。このため、電磁波が減衰され、電力の伝送効率を改善させることができる。従って、この電磁波減衰体を分電盤または分電盤の周辺に取り付けるだけで電力の伝送効率が改善されるので、低コスト且つ少ない手間で省電力化を図ることが可能となる。」
(イ)「【0013】
図1(a)は、電磁波減衰体1を正面側から見た斜視図であり、図1(b)は、電磁波減衰体1を背面側から見た斜視図である。図1(a)に示すように、電磁波減衰体1は、略矩形状の磁性体2と導体板3とが積層されて構成されている。また、図1(b)に示すように導体板3には粘着シールからなる粘着部4が固着されており、粘着部4の外側(導体板3とは反対側)には、粘着部4の粘着性を保護する剥離紙5が貼付されている。
【0014】
磁性体2は、フェライトの粉末にマイナスイオン発生物質の粉末を混合して焼成させたものである。マイナスイオン発生物質としては、美濃顔料化学株式会社の「イオミックス」を使用している。尚、磁性体2は磁束を収束させるものであればフェライトでなくてもよい。導体板3は炭素鋼を採用しているが、別の金属材料を使用してもよい。
【0015】
図2は、電磁波減衰体1を分電盤6の周辺(本実施例では、上方)に設置した状態を示す説明図である。電磁波減衰体1を分電盤6の周辺に設置した場合、電磁波減衰体1の周辺に発生した電磁波の磁束が磁性体2によって収束される。この収束された磁束が導体板3を貫通すると渦電流が生じ熱に変換される。よって、分電盤6の周辺における電磁波を減衰させることができる。電力の伝送効率は電磁波の影響によって低下しているところ、本発明によれば分電盤6の周辺における電磁波を減衰させることができるので、これにより施設内における電力の伝送効率を改善させることができる。」
上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、電磁波減衰体として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「電磁波減衰体1は、略矩形状の磁性体2と導体板3とが積層されて構成され、導体板3には粘着シールからなる粘着部4が固着されており、
磁性体2は、フェライトの粉末を焼成させたものであり、
電磁波減衰体1を分電盤6の周辺に設置した場合、周辺に発生した電磁波の磁束が磁性体2によって収束され、この収束された磁束が導体板3を貫通すると渦電流が生じ熱に変換され、分電盤6の周辺における電磁波を減衰させる
電磁波減衰体。」
イ.引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-261184号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の記載がある。
(ア)「【0003】かかる問題の対策として、従来は鉄、アルミニウム、銅といった金属によるシールドが用いられてきた。しかし、これらの金属を用いたシールドは輻射ノイズを反射させることによって外部に出さないことを目的とするため、特に高周波化したデジタル部品においては、反射した輻射ノイズが輻射ノイズの発生源であるデジタル部品へ影響を与えてしまうという難点があった。
【0004】そこで、磁化の大きな軟磁性の金属粉末を偏平状に加工し、これをポリマー中に配向させてシート状の電磁干渉抑制体を用いる方法が考案された(特開平09-124322等)。この方法によると、金属粉末の損失成分を利用してノイズ成分を熱エネルギーに変換することによりノイズを除去することが可能となり、金属を用いる場合のような輻射ノイズの反射による機器への影響が問題にならない。しかし、かかる電磁干渉抑制体では、ポリマー樹脂を含有させるため、その分金属粉末の割合が低下し、どうしてもノイズ抑制効果が小さくなってしまわずを得ない。
【0005】このような問題点に鑑み、発明者は図7に示すようなフェライトコアプレート20を用いることに思い至った。かかるフェライトを用いると、上述の電磁干渉抑制体と同様に、輻射ノイズを吸収することにより除去する為、金属を用いる場合のような輻射ノイズの反射による機器への影響が問題にならない。更に、フェライト自体を用いるので、上述の電磁干渉抑制体に比してノイズ除去効果も格段に大きくなる。
【0006】ところが、CPU等のように高周波化の進む部品においては、部品自体が高熱を発し、それによる熱暴走を起こす危険性がある。かかる部品においては、冷却ファン等を用いて強制的に放熱を行っているが、かかる部品にフェライトコアプレート20を直接貼ると放熱性が悪化するという問題が生じた。又、フェライトの損失は一般に温度が高くなると、高温となる部品のノイズを十分に減衰させることができない場合があった。特に、高周波化の著しいパソコンのCPU等のデジタル部品では、近い将来には1GHzを超えることも予想される。かかる高周波化したCPU等においては、フェライトの温度がキュリー点を超えるような場合も想定され、フェライトの磁性が消滅することになりかねず、フェライトをノイズ対策に用いることは困難となることが予想される。」
(イ)「【0010】図1の1は、本願発明であるノイズ吸収体の一実施例である。
【0011】尚、本願発明は、CPU等のデジタル部品の表面に直接貼り付け、ノイズを除去する為に用いられるが、本願発明はCPUの他電源の内部素子のような高周波部品にも用いることができる。
【0012】ノイズ吸収体1は、ノイズ吸収部である平坦部2と放熱部である複数の凸部3を有している。この凸部3の存在により、ノイズ吸収体1の比表面積は増加し、これによって熱の発散が効果的に行える。従って、CPUのような高周波であって、高熱を発する部品でも、素早くフェライトのノイズ吸収効果が十分発揮できる温度にまで冷却することができる。又、CPUのように高熱を発生しやすいデジタル部品においては、自分の発した熱により熱暴走を起こす場合があるが、かかるノイズ吸収体を用いることにより、かかる熱暴走を抑えることも可能となる。凸部3は平坦部2と同じ材質であることが望ましい。一体的に成形することにより製造過程の複雑化を防止できるからである。この場合、放熱部である凸部はノイズ吸収部としても機能する。尚、放熱性とフェライトコアの成形の容易性を考慮し、凸部3の高さ及び、ノイズ吸収体1の厚さを適宜調節することが好ましい。
【0013】さらに、比表面積をより大きくする為に、ノイズ吸収体1の片面のみならず両面に凸部3を設けても良いが、部品との接着効果が問題となるので、用途に応じた設計をすることが好ましい。尚、デジタル部品にノイズ吸収体1を貼る場合には、ポリミド系樹脂、又は、エポキシ樹脂等の耐熱性、熱伝導性の高いものを用いるのが好ましい。かかる熱伝導性の高い接着剤を用いることで、部品の発した熱が本願発明に伝わることとなり、本願発明の効果は一層高くなる。但し、部品の発する熱や部品自体の耐熱性を考慮して、接着剤は適宜変更する。」
(ウ)「【0018】図6は、本願発明にかかるノイズ吸収体1を実際にCPU5に用いたものの概略図である。なお、ここでは、本願発明の実施の形態をより明確化すべく基板及びCPU以外の集積回路部品、ノイズ吸収体を接着するための樹脂は省略している。この図のように本願発明にかかるノイズ吸収体1は、CPU5の表面に接着して用いられることが好ましい。よりノイズ除去効果が高くなるからである。尚、図6では、CPU5の上面Aにのみノイズ吸収体1を接着しているが側面a,b,c,dにも同様にノイズ吸収体1を接着しても良い。側面からもノイズが輻射されるからである。但し、側面に接着する際には他の集積回路部品との関係を十分考慮する必要がある。導通等の恐れがあるからである。尚、ここで表面とは基板上にデジタル部品を搭載する際の搭載面Bを除いた部分のことである。」
(エ)図6には、ノイズ吸収体1の貼り付けられる面の反対面に凸部3を設けることが見てとれる。
上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献2には、ノイズ吸収体に関して、以下の周知技術が記載されている。
「ノイズ吸収体1は、放熱部である複数の凸部3を有し、この凸部3の存在により、ノイズ吸収体1の比表面積は増加し、これによって熱の発散が効果的に行え、素早くフェライトのノイズ吸収効果が十分発揮できる温度にまで冷却することができ、
ノイズ吸収体1の貼り付けられる面の反対面に凸部3を設ける技術」
3.対比・判断
ア.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電磁波減衰体1」は、「分電盤6の周辺に設置した場合、」「分電盤6の周辺における電磁波を減衰させる」ものである。
分電盤が電力線やブレーカ等により構成されていることは例示するまでもなく周知の事項であることを考慮すれば、引用発明の「電磁波減衰体1」は本願発明の「電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置」に相当する。
(イ)引用発明の「電磁波減衰体1」は、「略矩形状の磁性体2と導体板3とが積層されて構成され、」「電磁波の磁束が磁性体2によって収束され、この収束された磁束が導体板3を貫通すると渦電流が生じ熱に変換され、」「電磁波を減衰させる」ものである。
一方、本願の明細書段落【0031】には人体保護のための電磁シールドチップとして「ソフトフェライト(軟磁性体)を板状チップに成形している」こと、段落【0035】には「電磁シールドチップ51は電力線から放射される不要な電磁波を吸収し、ソフトフェライトの電磁波熱変換特性を利用して電磁波エネルギーを熱に変換」する記載があり、これらの記載を考慮すれば、本願発明の「第3の人体保護装置」の「板状の電磁シールドチップ」は、「ソフトフェライト(軟磁性体)を板状チップに成形し、電磁波熱変換特性を利用して電磁波エネルギーを熱に変換」するものである。
したがって、引用発明の「電磁波の磁束が磁性体2によって収束され、この収束された磁束が導体板3を貫通すると渦電流が生じ熱に変換され、」「電磁波を減衰させる」ものである「略矩形状の磁性体2と導体板3とが積層」された構成は、本願発明の「板状の電磁シールドチップ」に相当する。
(ウ)引用発明の「電磁波減衰体」は「電磁波を減衰させる」ものであるから、「電磁波保護システム」ともいい得るものである。
したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
〈一致点〉
「電力線もしくはブレーカからの電磁波放射を抑制する第3の人体保護装置であって、板状の電磁シールドチップからなる第3の人体保護装置
を備えて構成されることを特徴とする電磁波保護システム。」
〈相違点〉
板状の電磁シールドチップについて、本願発明は「板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ」ものであるのに対し、引用発明はその旨特定されていない点。
イ.判断
〈相違点〉について
まず、上記周知技術と本願発明の関係について検討する。
上記周知技術の「凸部3」は、「ノイズ吸収体1の貼り付けられる面の反対面」に設けられ「ノイズ吸収体1の比表面積は増加し、これによって熱の発散が効果的に行え、素早くフェライトのノイズ吸収効果が十分発揮できる温度にまで冷却することができ」るものであるから、上記周知技術において「ノイズ吸収体1」に「凸部3」を設けることは、本願発明の「板状体が貼り付けられる面の反対面が表面積を大とする複雑構造をもつ」ものとすることに相当する。
次に、相違点に係る構成の容易性について判断する。
上記周知技術は「フェライトのノイズ吸収効果」を用いた「ノイズ吸収体1」に関するものであるから、引用発明と上記周知技術は共に、フェライトを用いた電磁波吸収体に関するものといえる。
そして、引用発明が電磁波を熱に変換し減衰させるものであることを考慮すれば、引用発明に上記周知技術を適用し、電磁波減衰体の粘着部が固着された面と反対面に放熱部である凸部を設け、本願発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-015162