特許拒絶査定不服審判
2018-014752
印刷装置
- 審判番号
- 2018-014752
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-029708外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月06日
- 審決日
- 2019年12月03日
- 公報発行日
- 2020年03月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ブラザー工業株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (B41J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017- 29708「印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開,特開2017- 94750〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成25年9月13日(以下,「原出願日」という。)に出願された特願2013-190801号の一部を新たな特許出願として平成29年2月21日に出願された特許出願であって,平成30年1月16日付けで拒絶理由が通知され,同年5月24日に意見書及び手続補正書が提出され,同年8月3日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がされ,これに対して,同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 平成30年11月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年11月6日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,審判請求と同時にされ,特許請求の範囲を補正するものであり,平成30年5月24日にされた手続補正により補正された,下記(1)に示すとおりの請求項1の記載を,下記(2)に示すとおりの請求項1の記載に補正する補正事項を含むものである。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の記載
「認証情報の入力を受け付ける受付部と,
印刷部と,
制御部と,
を備え,
前記制御部は,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いた認証が成功したことを条件に,蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別不能な識別不能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別不能印刷処理と,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いた認証が成功したことを条件に,前記蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別可能な識別可能データのうち前記認証情報に対応するユーザと合致するユーザが識別される識別可能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別可能印刷処理と,
を実行し,
前記制御部は,前記蓄積装置に前記識別不能データ,及び,前記識別可能データが蓄積されている場合は,前記識別可能印刷処理,前記識別不能印刷処理の順で実行する,印刷装置。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載
「各ユーザに対応する認証情報の入力を受け付ける受付部と,
印刷部と,
制御部と,
を備える印刷装置であって,
前記制御部は,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて前記印刷装置の使用が許諾されたユーザであることを認証することに成功したことを条件に,蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別不能な識別不能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別不能印刷処理と,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて前記印刷装置の使用が許諾されたユーザであることを認証することに成功したことを条件に,前記蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別可能な識別可能データのうち前記認証情報に対応するユーザと合致するユーザが識別される識別可能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別可能印刷処理と,
を実行し,
前記制御部は,前記蓄積装置に前記識別不能データ,及び,前記識別可能データが蓄積されている場合は,前記識別可能印刷処理,前記識別不能印刷処理の順で実行する,印刷装置。」
(下線部は,補正箇所を示す。)
2 補正の適否
本件補正は,本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「認証情報」,及び認証情報を用いて認証する内容について,上記のとおり限定を付加するものであって,補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。
(1) 本件補正発明
本件補正発明は,上記1(2)に記載したとおりのものである。
(2) 引用文献の記載事項,引用発明について
ア 引用文献1について
(ア) 引用文献1の記載事項
本願の原出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由で引用された文献である特開2005-254736号公報(以下,「引用文献1」という。)には,以下の記載がある(下線は,認定に用いた箇所を強調するために付加したものである。以下,(2)において同様。)
a 「【0028】
-複合機の説明-
先ず,本通信システムに使用されるユーザ側のマシンである画像形成装置としての複合機について説明する。
【0029】
図1は本形態に係る複合機1の内部構成の概略を示している。この図1のように,本複合機1は,原稿読取部としてのスキャナ部2,画像形成部としてのプリント部3及び原稿自動給紙部4を備えている。以下,各部について説明する。」
b 「【0049】
-制御ブロック-
図2は,本実施形態に係る複合機1を構成する各種ユニット部,画像処理部などの主要構成要素を示すブロック図である。図中,略中央に位置するメイン中央演算処理装置401(CPU)が,各ユニット部毎に搭載されたサブ中央演算処理装置(CPU)との連携をとりながら複合機1各部の動作を管理する。」
c 「【0103】
-印刷動作設定及びモード設定-
次に,本複合機1において設定変更可能な各種印刷動作設定及びモード設定について図5のフローチャートに沿って説明する。ここでは待機モードの一つとして「夜間モード」において本発明に係る動作が行われる場合について説明する。
【0104】
先ず,本複合機1において切り換え可能な設定としては,「一括印刷設定」の切り換え,「完了時間予約選択」の切り換え,「セキュリティモード選択」の切り換えがある。
【0105】
「一括印刷設定」とは,夜間モード中にハードディスク503aに記憶した画像データを一時に一括印刷するといった動作を実行するか否かを設定するものである。また,「完了時間予約選択」とは,上記「一括印刷設定」がなされている場合においてハードディスク503aに記憶されている画像データを読み出すことによる画像形成動作を完了する時刻を設定するものである。更に,「セキュリティモード選択」とは,特定のユーザのみに閲覧を許可する秘密文書データがハードディスク503aに記憶される場合に,その秘密文書データを読み出すための識別情報(パスワード)を設定するものである。
【0106】
更に,本複合機1では,夜間の時間帯には「夜間モード」に移行させるか否かを設定する夜間モード設定機能も備えている。
【0107】
図5において,先ず,ステップST1で「一括印刷設定」がなされているか否かを判定し,この設定がなされている場合にはステップST2において一括印刷モードに切り換える。また,ステップST3で「完了時間予約選択」がなされるか否かを判定し,この設定がなされる場合にはステップST4においてその時刻の入力が行われる。更に,ステップST5で「セキュリティモード選択」がなされるか否かを判定し,この設定がなされる場合にはステップST6において画像データに対するパスワードの設定入力が行われる。
【0108】
その後,ステップST7で,上記「夜間モード」の設定(夜間の時間帯には「夜間モード」に移行させる設定)がなされているか否かを判定し,この判定がNoである場合にはステップST8に移り,Yesである場合にはステップST21に移る。
【0109】
上記ステップST7の判定がNo,つまり,「夜間モード」の設定がなされていない場合には,ステップST8に移って,印刷要求の有無を判定する。つまり,ユーザが操作パネル103を操作することによる印刷要求,FAX受信,リモート印刷要求,終夜運転の端末機からの印刷要求等の有無を判定する。そして,この印刷要求がありYesに判定された場合にはステップST9において,この印刷要求に係る画像データを記憶保存するか否かを判定する。つまり,時間帯に拘わりなく画像データを記憶するように設定されているか否かを判定し,この設定が成されておりYesに判定された場合にはステップST10に移って,画像データ(印刷データ)の受信動作及び記憶保存動作を実行する。この際の保存先は上記ハードディスク503aである。このようにして画像データの受信動作及び記憶保存動作を実行した後,ステップST19に移って装置(複合機1)の上記受信動作及び記憶保存動作を停止する。
【0110】
一方,ステップST9において,画像データを記憶するように設定されておらず,Noに判定された場合にはステップST11に移って,上記「一括印刷設定」がなされているか否か(一括印刷モードとなっているか否か)を判定し,この判定がNoである場合にはステップST12に移って,要求された画像データに対する印刷(通常印刷)動作を実行する。そして,この印刷動作が完了すると,ステップST19に移って装置(複合機1)の印刷動作を停止する。
【0111】
また,ステップST11において,「一括印刷設定」がなされておりYesに判定された場合にはステップST13において,上記「セキュリティモード選択」がなされているか否か(セキュリティモードとなっているか否か)を判定し,この判定がNoである場合にはステップST14に移って,現在ハードディスク503aに記憶されている全画像データに対する印刷(一括印刷)動作を実行する。そして,この一括印刷動作が完了すると,ステップST19に移って装置(複合機1)の一括印刷動作を停止する。
【0112】
一方,ステップST13において,セキュリティモードに設定されておりYesに判定された場合にはステップST15に移って,その画像データを読み出すためのパスワードがユーザにより入力される。ステップST16では,この入力されたパスワードが登録済みのものであるか否かを判定し,登録されていないパスワードであった場合(No判定された場合)にはそのまま装置を停止する(ステップST19)。
【0113】
これに対し,入力されたパスワードが登録済みのものであるYesに判定された場合には,ステップST17に移って,先ず,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されていない画像データ(秘密文書ではない画像データ)に対する一括印刷が実行され,それが終了すると,次に,パスワードが設定されており,上記入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データ(秘密文書データ)に対する一括印刷が実行される。このようにして,印刷動作が完了すると,ステップST19に移って装置(複合機1)の印刷動作を停止する。」
d 「【0121】
以上,説明してきたように,本形態では,夜間モード中(待機モード中)である場合,画像形成要求がある度に画像形成動作を実行するのではなく,このモード中の画像データをハードディスク503aに記憶しておき,つまり,所定期間は画像形成動作を禁止しておき,その後に,これら記憶しておいた画像データを一括して印刷するようにしている。このため,ウォームアップ動作回数を必要最小限に抑えることができ装置の消費電力の削減を図ることができる。
(イ) 引用発明について
上記(ア)で摘記した事項から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「原稿読取部としてのスキャナ部2,画像形成部としてのプリント部3及び原稿自動給紙部4を備え,
メイン中央演算処理装置401が,サブ中央演算処理装置との連携をとりながら各部の動作を管理するようになっており,
夜間モード中である場合,画像形成要求がある度に画像形成動作を実行するのではなく,このモード中の画像データをハードディスク503aに記憶しておき,つまり,所定期間は画像形成動作を禁止しておき,その後に,これら記憶しておいた画像データを一括して印刷するようにしている複合機1であって,
切り換え可能な設定としては,「一括印刷設定」の切り換え,「セキュリティモード選択」の切り換えがあり,
「一括印刷設定」とは,夜間モード中にハードディスク503aに記憶した画像データを一時に一括印刷するといった動作を実行するか否かを設定するものであり,「セキュリティモード選択」とは,特定のユーザのみに閲覧を許可する秘密文書データがハードディスク503aに記憶される場合に,その秘密文書データを読み出すためのパスワードを設定するものであり,
先ず,「一括印刷設定」がなされているか否かを判定し,この設定がなされている場合には,一括印刷モードに切り換え,「セキュリティモード選択」がなされるか否かを判定し,この設定がなされる場合には,画像データに対するパスワードの設定入力が行われ,
「夜間モード」の設定がなされているか否かを判定し,「夜間モード」の設定がなされていない場合には,印刷要求の有無を判定し,この印刷要求がありYesに判定された場合には,この印刷要求に係る画像データを記憶保存するか否かを判定し,画像データを記憶するように設定されておらず,Noに判定された場合には,上記「一括印刷設定」がなされているか否かを判定し,
「一括印刷設定」がなされておりYesに判定された場合には,上記「セキュリティモード選択」がなされているか否かを判定し,
セキュリティモードに設定されておりYesに判定された場合には,その画像データを読み出すためのパスワードがユーザにより入力され,
この入力されたパスワードが登録済みのものであるか否かを判定し,登録されていないパスワードであった場合にはそのまま装置を停止し,
入力されたパスワードが登録済みのものであるYesに判定された場合には,先ず,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されていない画像データに対する一括印刷が実行され,それが終了すると,次に,パスワードが設定されており,上記入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データに対する一括印刷が実行される,
複合機1。」
イ 引用文献2について
(ア) 本願の原出願日前に頒布され,原査定の拒絶の理由に引用された文献である特開2005-245000号公報(以下,「引用文献2」という。)には,以下の記載がある。
a 「【0085】
PC等の端末装置上からモード設定を行う場合には,画面上のメニューからファクシミリ送信のモードを選択する。この際,ファクシミリ送信モード設定画面において送信先情報(電話番号,短縮ダイヤル番号etc.),送信サイズ情報,拡大/縮小などの変倍情報,希望する解像度,回転の有無,セキュリティの高い内容を含んだ文書(親展)であるか否か等の送信条件を設定する。」
b 「【0212】
続いて,図33の説明に移る。この図33は,印刷キューテーブルに与えられる優先度の管理状況を模式的に示す図である。
【0213】
この図33では,例えば,優先度を10段階に分けランク9を最高優先度としていることを意味している。このうち,操作者に開放しているのはランク1~ランク7までで,残りは固有の機能を実現するために確保されている。ここでいう固有の機能とは,複写等の操作者が任意のタイミングで実行可能であることを要求する機能や,パスワード入力のように特定の条件がそろわなければ実行してはいけないような機能を意味する。
【0214】
例えば,ランク0の場合であれば,図31のシーケンスにおいても実行待ちジョブとして処理結果に反映されない。また,ランク9の場合は,あらゆるジョブに優先して実行されることを意味している。
【0215】
続いて,図34の説明に移る。この図34は,7種類の印刷キューテーブル(仮想プリンタ)に対して,それぞれ固有の優先度が割り当てられている状態を例示する図である。
【0216】
この場合,親展印刷については通常はランク0が割り当てられているが,パスワードが入力されるとランク8に割り当てられることが示されている。また,FAX受信原稿の印刷については通常はランク3で,通常のPCで作成された文書フアイル印刷(当審注:「文書フアイル印刷」は,「文書ファイル印刷」の誤記であると認められる。)と同優先度であるが,ファイルメモリ68の残量が少なくなった場合には,ファイルメモリ68のメモリフル印刷として最高の優先度が割り当てられることを意味している。これらの情報は,装置の制御上,必須の情報としてNVRAM34上に保管されている。図31の処理フローチャートで示す優先度は,ここで説明したものである。
【0217】
尚,図中の現状設定優先度は,操作者によって任意に設定された優先度を示すものであり,この現状設定優先度の設定方法は後に説明する。この現状設定優先度が設定されていない場合は,図中のデフォルト(Default)優先度によって,各印刷キューテーブルの優先度が決定されることになる。」
c 上記bで摘記した事項から,優先度のランクは,数字が大きい程高く,ランク8は,ファイルメモリの残量が少ないという状況を除けば最も高い優先度であることが把握できる。
(イ) 上記(ア)の事項から,引用文献2には,「セキュリティの高い内容を含んだ文書である親展印刷については通常はランク0が割り当てられているが,パスワードが入力されるとランク8に割り当てられ,ファイルメモリの残量が少ないという状況を除けば最も高い優先度になる」という技術的事項が記載されているものと認められる。
ウ 引用文献3について
(ア) 本願の原出願日前に頒布された文献である特開平10-79863号公報(以下,「引用文献3」という。)には,以下の記載がある。
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,回線から受信した受信データを順次印刷処理して,該受信データに対応する画像データを印刷した出力用紙を出力トレイに排出するファクシミリ装置に関し,特に記憶部のメモリ容量の増大を抑制しつつ,ユーザニーズに適合した受信データの秘密保持を図るとともに,記憶部に記憶した受信データを効率良く印刷するファクシミリ装置に関する。
b 「【0024】図1に示すファクシミリ装置10は,他のファクシミリ装置から受信した受信データを常に自動排出する自動排出モードと,受信データを自動排出しない排出保留モードのいずれの排出モードが選択されているかを排出モード管理部110で管理するよう構成している。
【0025】そして,この排出モードが自動排出モードである場合には,受信データを印刷キュー113にジョブとして受け付け順に一時記憶し,一時記憶したジョブを順次印刷部106で印刷して出力トレイに排出する。
【0026】これに対して,この排出モードが排出保留モードである場合には,受信データを待機キュー114にジョブとして受け付け順に記憶し,該ジョブを自動排出しない。その後,操作表示部100からのジョブの選択操作がなされたならば,選択されたジョブを印刷キュー113に移管して,該印刷キュー113上のジョブを順次印刷部106で印刷する。
【0027】このように,このファクシミリ装置10は,ファクシミリデータを受信した場合の処理にその特徴があるため,以下ではファクシミリ受信について重点を置いて説明する。
【0028】図1に示すように,このファクシミリ装置10は,操作表示部100と,操作表示制御部101と,画像入力部102と,カードリーダ103と,ユーザ認証部104と,画像処理部105と,印刷部106と,印刷制御部107と,回線制御部108と,排出モード管理部110を内在する制御部109と,送信ジョブ管理部111と,印刷キュー113及び待機キュー114を内在する受信ジョブ管理部112とからなる。
【0029】操作表示部100は,操作入力機能及び表示機能を有する操作パネル面を有する入力部であり,具体的には,ファクシミリ送信時の宛先番号の入力及び排出モードの設定等がこの操作表示部100から行われる。
【0030】操作表示制御部101は,操作表示部100を制御する制御部であり,具体的には,ユーザの選択操作に応答して排出モードの設定枠の表示及び待機キュー114に滞留するジョブの一覧表示等を併せて行う。
【0031】画像入力部102は,文書を光学的に読み取り,読み取ったイメージデータを制御部109に出力する入力部であり,具体的にはイメージスキャナ等で構成される。
【0032】カードリーダ103は,図示しないカード挿入口に挿入された部門管理カードからユーザ識別情報(以下「ユーザID」と言う。)を読み出して制御部103に出力する入力部であり,ユーザ認証部104は,このユーザIDに基づいて,正当ユーザであるか否かを判別する処理部である。」
c 「【0079】ところで,上記説明においては,全ての受信データを一律に取り扱う場合を示したが,特定のユーザへの親展データ(以下「親展受信データ」と言う。)を他の受信データ(以下「一般受信データ」と言う。)と区別して取り扱うことも可能である。
【0080】すなわち,回線制御部108が一般受信データを受け付けた場合には,排出モードに基づいて印刷キュー113又は待機キュー114に対して一般受信データが一般ジョブとして格納される。
【0081】これに対して,回線制御部108が親展受信データを受け付けた場合には,排出モードの如何を問わず該親展受信データが親展ジョブとして待機キュー114に格納される。
【0082】そして,待機キュー114に格納された一般ジョブ及び親展ジョブは下記要領で印刷される。
【0083】図7は,図1に示す待機キュー114内に滞留する一般ジョブ及び親展ジョブを印刷する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0084】図7に示すように,まず最初にカードリーダ103が部門管理カードから取得したユーザIDに基づいてユーザ認証部104がファクシミリ装置10の利用者の正当性を確認する(ステップ701)。
【0085】そして,正当ユーザでない場合には,待機キュー114内のジョブの印刷を許可しないでそのまま処理を終了し,正当ユーザであると認めた場合には,このユーザIDに対応する親展ジョブリストを取得した後(ステップ702),ユーザにプリント方法を指定するよう指示する(ステップ703)。
【0086】その結果,ユーザが一括プリントを選択した場合には(ステップ704),待機キュー114に滞留するユーザIDに対応する親展ジョブ及び全ての一般ジョブを印刷キュー113に移管する(ステップ705)。
【0087】これに対して,ユーザが選択プリントを選択した場合には,待機キュー114に滞留するユーザIDに対応する親展ジョブ及び全ての一般ジョブを操作表示部100上に一覧表示し(ステップ706),印刷対象となるジョブをユーザに指定させる(ステップ707)。
【0088】そして,ユーザが1又は複数のジョブを指定したならば,指定されたジョブを待機キュー114から印刷キュー113に移管する(ステップ708)。
【0089】なお,ステップ705又は708で印刷キュー113に移管されたジョブは,何等の指示がなくとも画像処理部105による画像伸長及び印刷部106による印刷が順次実行される。
【0090】このように,上記一連の処理を行うことにより,待機キュー114に滞留するユーザIDに対応する親展ジョブ及び一般ジョブを一括プリントするか選択プリントするかを容易に指定することができる。」
(イ) 上記(ア)で摘記した事項から,引用文献3には,以下の技術的事項が記載されているものと認められる。
「操作表示部100と,操作表示制御部101と,画像入力部102と,カードリーダ103と,ユーザ認証部104と,画像処理部105と,印刷部106と,印刷制御部107と,回線制御部108と,排出モード管理部110を内在する制御部109と,送信ジョブ管理部111と,印刷キュー113及び待機キュー114を内在する受信ジョブ管理部112とからなり,
他のファクシミリ装置から受信した受信データを常に自動排出する自動排出モードと,受信データを自動排出しない排出保留モードのいずれの排出モードが選択されているかを排出モード管理部110で管理するよう構成され,
この排出モードが排出保留モードである場合には,受信データを待機キュー114にジョブとして受け付け順に記憶し,該ジョブを自動排出せず,その後,操作表示部100からのジョブの選択操作がなされたならば,選択されたジョブを印刷キュー113に移管して,該印刷キュー113上のジョブを順次印刷部106で印刷するファクシミリ装置10であって,
回線制御部108が一般受信データを受け付けた場合には,排出モードに基づいて印刷キュー113又は待機キュー114に対して一般受信データが一般ジョブとして格納され,これに対して,回線制御部108が親展受信データを受け付けた場合には,排出モードの如何を問わず該親展受信データが親展ジョブとして待機キュー114に格納され,
まず最初にカードリーダ103が部門管理カードから取得したユーザIDに基づいてユーザ認証部104がファクシミリ装置10の利用者の正当性を確認し,
正当ユーザでない場合には,待機キュー114内のジョブの印刷を許可しないでそのまま処理を終了し,正当ユーザであると認めた場合には,このユーザIDに対応する親展ジョブリストを取得した後,ユーザにプリント方法を指定するよう指示し,
その結果,ユーザが一括プリントを選択した場合には,待機キュー114に滞留するユーザIDに対応する親展ジョブ及び全ての一般ジョブを印刷キュー113に移管し,
印刷キュー113に移管されたジョブは,何等の指示がなくとも画像処理部105による画像伸長及び印刷部106による印刷が順次実行されるファクシミリ装置10。」
(3) 対比
本件補正発明と,引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。
ア 引用発明においては,セキュリティモードに設定されている場合には,印刷要求に係る画像データを読み出すためのパスワードがユーザにより入力されるので,ユーザにより入力されるパスワードを受け付ける手段を備えるものと認められる。
また,引用発明においては,入力されたパスワードが登録済みのものであるか否かを判定し,登録されていないパスワードであった場合にはそのまま装置を停止し,入力されたパスワードが登録済みのものである場合には,先ず,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されていない画像データに対する一括印刷が実行され,それが終了すると,次に,パスワードが設定されており,上記入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データに対する一括印刷が実行されることから,引用発明の「パスワード」は,認証に用いられる情報であるといえる。
したがって,本件補正発明の「認証情報」と引用発明の「パスワード」は,認証に用いられる情報であるという限りにおいては共通する。
よって,本件補正発明と引用発明とは,「認証情報の入力を受け付ける受付部」「を備える」点で共通する。
イ 引用発明の「プリント部3」は,本件補正発明の「印刷部」に相当する。
ウ 引用発明の「メイン中央演算処理装置401」は,サブ中央演算処理装置との連携をとりながら各部の動作を管理していることから,印刷要求に係る画像データを読み出すためのパスワードがユーザにより入力された場合の,パスワードが設定されていない画像データに対する一括印刷や,入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データに対する一括印刷の管理も,メイン中央演算処理装置401がサブ中央演算処理装置との連携をとりながら行っているものと解される。
したがって,引用発明の「メイン中央演算処理装置401」と「サブ中央演算処理装置」を合わせた部材は,本願発明の「制御部」に相当する。
エ 引用発明の「ハードディスク503a」は,夜間モード中である場合,画像形成要求がある度に画像形成動作を実行するのではなく,このモード中の画像データが記憶されるものである。
したがって,引用発明の「ハードディスク503a」は,本件補正発明の「蓄積装置」に相当する。
オ 引用発明においては,ユーザが入力したパスワードが,登録済みである場合には,ハードディスク503aに記憶されている画像データの印刷が行われ,逆に,登録されていない場合には,印刷せずに装置を停止することから,認証することに成功した場合に印刷するといえる。
したがって,本件補正発明と引用発明とは,「少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて」「認証することに成功したことを条件に,」「蓄積装置に蓄積されているデータ」「に基づく印刷を前記印刷に実行させる」点で共通する。
カ 引用発明においては,特定のユーザのみに閲覧を許可する秘密文書データには,そのデータを読み出すためのパスワードが設定され,ユーザが登録済みのパスワードを入力すると,その入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データを印刷するので,パスワードに係る画像データが,そのパスワードを知る特定のユーザのもの,すなわち,いかなるユーザのものであるかが,識別可能であるといえる。
そうすると,引用発明の「パスワードに係る画像データ」は,本件補正発明の「ユーザを識別可能な識別可能データ」に相当し,逆に,引用発明の「パスワードが設定されていない画像データ」は,その画像データが,いかなるユーザのものであるのか識別できないので,本件補正発明の「ユーザを識別不能な識別不能データ」に相当する。
キ 引用発明においては,「一括印刷設定」がなされ,ユーザが入力したパスワードが登録済みのものである場合に,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されていない画像データに対する一括印刷が実行される。
したがって,上記オ及びカで検討した事項を踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,「少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて」「認証することに成功したことを条件に,蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別不能な識別不能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別不能印刷処理」「を実行」する点で共通する。
ク 引用発明においては,「一括印刷設定」がなされ,ユーザが入力したパスワードが登録済みのものである場合に,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されており,入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データに対する一括印刷が実行されるが,このことは,ハードディスク503aに,ユーザが入力したパスワードに対応しない他のパスワードに係る画像データも記憶されている場合もあり,そのような画像データは,当該他のパスワードが入力されるまでは,印刷されないものであるということを,当然の前提とするものと認められる。
引用発明における,「パスワード」は,対応する画像データを,特定のユーザのみに閲覧を許可するためのものであるから,「入力されたパスワード」は,パスワードを入力したユーザが,そのパスワードに対応する画像データの閲覧が許可された特定ユーザであることを示すものである。
ここで,引用発明の「特定のユーザ」は,本件補正発明の「認証情報に対応するユーザ」という点において一致するといえる。
したがって,上記オ及びカで検討した事項も踏まえると,本件補正発明と引用発明とは,「少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて」「認証することに成功したことを条件に,前記蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別可能な識別可能データのうち」「認証情報に対応するユーザと合致するユーザが識別される識別可能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別可能印刷処理」「を実行」する点で共通する。
ケ 引用発明の「複合機1」は,本件補正発明の「印刷装置」に相当する。
コ 上記アないしケから,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致する。
[一致点]
「認証情報の入力を受け付ける受付部と,
印刷部と,
制御部と,
を備える印刷装置であって,
前記制御部は,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて認証することに成功したことを条件に,蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別不能な識別不能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別不能印刷処理と,
少なくとも前記受付部で受け付けられた認証情報を用いて認証することに成功したことを条件に,前記蓄積装置に蓄積されているデータであってユーザを識別可能な識別可能データのうち認証情報に対応するユーザと合致するユーザが識別される識別可能データに基づく印刷を前記印刷部に実行させる識別可能印刷処理と,
を実行する,印刷装置。」
サ そして,両者の発明は,以下の点で相違する。
[相違点1]
本件補正発明においては,「認証情報」が,「各ユーザに対応する」ものであるのに対して,引用発明においては,「パスワード」が,画像データに対して設定されるものである点。
[相違点2]
本件補正発明においては,「認証情報」が,「各ユーザに対応する」ものであるから,認証情報を用いて,「前記印刷装置の使用が許諾されたユーザであることを」認証して,印刷を印刷部に実行させるものであるが,それに対して,引用発明においては,「パスワード」は,画像データに対して設定されるものであるから,当該パスワードを入力したユーザが,複合機1の使用が許諾されたユーザであることを認証するのか否か不明である点。
[相違点3]
本件補正発明においては,「認証情報」が,「各ユーザに対応する」ものであるから,「識別可能印刷処理」において印刷される識別可能データは,「各ユーザに対応する認証情報」「に対応するユーザと合致するユーザが識別される」ものであるが,それに対して,引用発明においては,「パスワード」が,画像データに対して設定されるものであるから,パスワードに係る画像データに対する一括印刷も,各ユーザに対応するデータを印刷するものではない点。
[相違点4]
本件補正発明においては,「前記蓄積装置に前記識別不能データ,及び,前記識別可能データが蓄積されている場合は,前記識別可能印刷処理,前記識別不能印刷処理の順で実行する」のに対して,引用発明においては,ハードディスク503aに記憶されている画像データのうち,パスワードが設定されていない画像データに対する一括印刷が実行され,それが終了すると,次に,パスワードが設定されており,上記入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データに対する一括印刷が実行されており,順番が異なる点。
(4) 判断
ア 相違点1ないし3について
(ア) 引用文献3には,上記(2)ウ(イ)で認定したとおりの技術的事項が記載されている。
引用文献3に記載された技術的事項における「ユーザID」は,本件補正発明における「各ユーザに対応する認証情報」に相当する。
また,引用文献3に記載された技術的事項における「待機キュー114」は,印刷を保留すべきジョブを受け付け順に管理するキューであるから,本件補正発明の「蓄積装置」に相当する。
そして,引用文献3に記載された技術的事項においては,待機キュー114に滞留するジョブを印字する際に,カードリーダ103が取得したユーザIDに基づいて,ファクシミリ装置10の利用者の正当性を確認しており,このことは,本願発明において,「各ユーザに対応する認証情報」「を用いて前記印刷装置の使用が許諾されたユーザであることを認証する」ことに相当する。
さらに,引用文献3に記載された技術的事項における「ユーザIDに対応する親展ジョブ」は,ユーザIDがファクシミリ装置10の利用者の正当性を確認するために用いられるので,本件補正発明の「各ユーザに対応する認証情報」「に対応するユーザと合致するユーザが識別される識別可能データ」に相当する。
そうすると,引用文献3は,本件補正発明の上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を開示するものである。
(イ) 引用発明と引用文献3に記載された技術的事項とは,蓄積装置に蓄積されているデータを印刷する際に,秘密を保持するという共通の課題を有するので,引用発明において,画像データに対して設定されるパスワードをユーザが入力する構成に代えて,引用文献3に記載された技術的事項を適用し,「各ユーザに対応する認証情報」「を用いて前記印刷装置の使用が許諾されたユーザであることを認証する」ようにすることは,当業者にとって容易である。
また,相違点1ないし3によって奏される本件補正発明の効果も,当業者の予測を超えるものではない。
(ウ) 請求人は平成30年11月6日に提出した審判請求書において,引用発明の「パスワード」は,「画像データに対するパスワード」であることから,画像データを特定するものであり,各ユーザを特定するものではない。このことは,「画像データに対するパスワード」を知る者であれば,だれしもその画像データにアクセスできることを意味するものである。そのため,引用発明のような「パスワード」を設定するのみでは,「信頼できるユーザ」の特定といった,信頼できるユーザが印刷装置の近くにいる可能性が高い環境を作り出すという本願の本質的解決課題を解決することができない旨主張する。
しかし,引用発明の「パスワード」は,特定のユーザのみが閲覧を許可された画像データを読み出すためのものであるから,そのパスワードを知るものは,特定のユーザに限られ,このような特定のユーザは,「信頼できるユーザ」であると解され,当該パスワードが入力されれば,特定のユーザが複合機1の近くにいる可能性が高い環境を作り出せることは明らかであると解される。
また,引用発明において,「パスワード」が,画像データの閲覧を許可された特定のユーザ以外の他のユーザに知られてしまい,他のユーザが印刷できてしまうという状況を想定するのであれば,本件補正発明においても,パスワードに対応するユーザ以外の他のユーザに,当該パスワードが知られてしまう状況も当然に想定され,本件補正発明がそのような状況に対して,当該他のユーザによって印刷されてしまうことを防止できるものではないので,請求人の主張を採用することはできない。
イ 相違点4について
(ア) 引用文献2には,上記(2)イ(イ)で認定したとおりの技術的事項が記載されている。
引用発明と,引用文献2に記載された技術的事項とは,パスワードを必要とする機密性の高い印刷を行うという共通の課題を有しており,引用発明に対して,引用文献2に記載された技術的事項を適用して,パスワードが設定されている画像データの印字の優先度を高くし,ファイルメモリの残量が少ないという状況を除けば最も高い優先度となるようにし,その際,引用発明において,パスワードが設定されていない画像データをまとめて印字しているのであるから,パスワードが設定された画像データを,パスワードが設定されていない画像データよりも先に印字されるようにすることは,当業者が適宜なし得る程度のことである。
(イ) 請求人は平成30年5月24日に提出した意見書において,引用文献2に記載された発明の構成では,1つ印刷ジョブごとに認証情報を設定するのに対し,引用文献1に記載された発明の構成では,複数の印刷ジョブの印刷処置の前提として認証情報を設定するという構成上の違いのため,そもそも,引用文献1に記載された発明の構成によって達成される機能である,「認証を条件とした複数ジョブの印刷(一括印刷)」が,達成できなくなってしまうため,引用文献1に記載された発明に対して,引用文献2に記載された発明を適用することに阻害要因となる旨主張する。
しかし,引用文献2には,パスワードが入力された親展印刷の優先度をあげることが記載されているだけであり,親展印刷のジョブの数は何ら特定していない。引用発明においては,入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データが一括印刷されるのであるから,引用文献2に記載された技術的事項を適用した際にも,入力されたパスワードに対応するパスワードに係る画像データが複数あれば,それらの優先度を一括して上げて印刷られることは明らかであり,請求人が主張するような阻害要因にはならない。
よって,請求人の主張を採用することはできない。
(ウ) また,請求人は同じく上記意見書において,請求項1で特定される順番の構成では,識別不能データに基づいて印刷された印刷物のセキュリティという効果は引用文献1に記載の順番に比べて低下することが想定される点からしても,引用文献1に引用文献2を適用して,引用文献1に記載された順番を請求項1で特定された順番にすることには無理がある旨主張する。
しかし,引用発明において,パスワードが設定されていない画像データと,パスワードが設定された画像データは,続けて印刷されるのであるから,順番が変わっても,特定のユーザが複合機1の近くにいる可能性が高いという状況は変わらないものと解されるし,印刷装置のユーザは,どのような順番で印刷されるのかわかっているものと解されるので,引用発明において順番を変えることに無理はないといえる。
よって,請求人の主張を採用することはできない。
(5) 小括
以上のとおりであるから,本件補正発明は,引用発明並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記第2のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成30年5月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ,本願発明は,上記第2の1(1)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は,本願発明が,上記引用文献1に記載された発明に対して,上記引用文献2に記載された発明を適用することで,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない,というものである。
3 引用発明
引用文献1には,上記第2の2ア(イ)に記載したとおりの引用発明が記載され,引用文献2には,上記第2の2イ(イ)に記載したとおりの技術的事項が記載されている。
4 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると,本願発明の「認証情報」が,「各ユーザに対応する」ものに限ったものではないので,データに設定されたパスワードも含まれるものと認められるところ,本願発明と引用発明とは,第2の2(3)コで説示した[一致点]で一致し,両者は,同サで説示した[相違点4]のみで相違する。
そして,上記相違点4に係る発明特定事項が,当業者にとって容易に想到し得たものであることは,上記第2の2(4)イで説示したとおりである。
したがって,本願発明は,引用発明に対して,引用文献2に記載された技術的事項を適用することで,当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
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2018-014752