特許拒絶査定不服審判
2018-014705
エンジンピストン
- 審判番号
- 2018-014705
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-500498外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年11月05日
- 審決日
- 2020年03月09日
- 公報発行日
- 2020年09月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】テネコ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人深見特許事務所
- 分類
- P18 .121-WZ (F02F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-500498「エンジンピストン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年9月19日国際公開、WO2013/138261、平成27年4月20日国内公表、特表2015-511676〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月12日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。
平成28年1月20日:手続補正書の提出
平成29年1月30日付け(発送日:同年2月7日):拒絶理由通知書
平成29年5月8日:意見書、手続補正書の提出
平成29年10月4日付け(発送日:同年10月17日):拒絶理由通知書
平成30年1月15日:意見書、手続補正書の提出
平成30年6月25日付け(発送日:同年7月3日):拒絶査定
平成30年11月5日:審判請求書、手続補正書の提出
平成31年4月1日:上申書の提出
令和元年10月3日付け(発送日:同年10月8日):拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和元年12月19日:意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年12月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「内燃機関のためのピストンであって、
鋼から製造され、冠部分と、前記冠部分から懸架する正反対のスカート部分の対と、ピンボスパネルの対とを含む一体型ピストン本体を含み、
前記冠部分は、上側燃焼面と、下冠面領域を有する下側表面と、少なくとも1つのリング溝を伴う外側環状リングベルトとを有し、
前記ピンボスパネルは前記冠部分から懸架し、前記スカート部分間において互いと離間された関係で延在し、各ピンボスパネルは、ピンボアを有するピンボスを含み、前記ピンボアは、リストピンを受けるために互いと整列され、各ピンボスパネルは、前記冠部分の改善された冷却のために、前記ピンボアのうちの対応するピンボアと前記冠部分との間に位置する少なくとも2つの凹部を呈し、
各ピンボスパネル上の前記少なくとも2つの凹部は、凹部の対として規定され、前記凹部の一方は前記ピンボスパネルの内側表面上にあり、前記凹部の他方は前記ピンボスパネルの外側表面上にある、内燃機関のためのピストン。」
第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由のうちの理由2は、次のとおりのものである。
(進歩性)本願の請求項1ないし13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
1.特開平8-338302号公報
2.実願平4-65355号(実開平6-22549号)のCD-ROM
3.特開2007-309477号公報
4.特開2007-182827号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献、引用発明及び引用文献2技術
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された特開平8-338302号公報(以下「引用文献1」という。)には、「内燃機関のピストン」に関して、図面(特に、【図1】ないし【図5】を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は内燃機関に適用されるピストンに係る。詳しくは、ヘッドの下側に設けられたピンボスとスカートとの間をつなぐサイドウォールに孔を有し、ヘッドの下面に潤滑オイルが供給される内燃機関のピストンに関する。
【0002】
【従来の技術】従来の内燃機関において、シリンダボアの中で往復運動するピストンは燃焼室で発生する高熱を多量に受けて膨張する。ピストンの過熱は燃焼室における混合気の点火時期に関するノックの限界値を低下させる。更に、ピストンの過剰な熱膨張はピストンとシリンダボアとの間のフリクションを増大させる。そこで、これらの不具合を解消するために、内燃機関に設けられたオイルジェット等はピストンのヘッドの下面に潤滑オイルを吹き付けることにより、ピストンを冷却する。」
イ 「【0008】
【実施例】以下、この発明に係る内燃機関のピストンを具体化した一実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0009】図1はこの実施例のピストン11を示す正面図であり、図2は図1の2-2線に沿った断面図であり、図3は図2の3-3線に沿った断面図である。ピストン11はほぼ円盤状をなすヘッド12と、そのヘッド12の下側に設けられたピンボス13とを有する。ヘッド12はその外周に、互いに平行に延びる三つのリング溝14,15,16を有する。各リング溝14~16にはピストンリング及びオイルリング(図示しない)がそれぞれ装着される。
【0010】ピンボス13はピストン11の前後方向へ向かって開口する。ピンボス13にはピストンピンが装着される。ヘッド12の下側において、ピンボス13の軸線L1を中心に対称に配置された一対のスカート17はヘッド12の外周に沿って下方へ延びる。両スカート17は同じ形状を有する。ヘッド12の下側において、ピンボス13の両端に位置するサイドウォール18は両スカート17とピンボス13とをつなぐ。サイドウォール18はその外側とヘッド12の下側とを連通する孔19を有する。ピンボス13の両端に位置する二つの孔19は互いに連通する。
【0011】図4はスカート17のバレルプロフィールを誇張的に表す。このスカート17はその外周が垂直方向の中央付近で最も外方へ大きく張り出したバレルプロフィールを有する。この張り出しのピークP1ではシリンダボアとの間のクリアランスが最も小さく、スカート17の面圧が最も高くなる。このピークP1はスカート17の周方向に沿って延びる。ここで、スカート17の上端から孔19の下端までの距離D1は、スカート17の上端からピークP1までの距離D2と等しいか、それよりも大きくなるように設定される。即ち、孔19の下端はピークP1と同じ高さか、それよりも下方に位置するように設定される。
【0012】このピストン11は内燃機関(エンジン)に適用される。図5に示すように、このピストン11はクランクシャフト20に連結されたコンロッド21に対してピストンピン22を介して連結される。この連結状態において、ピストン11はエンジンに設けられたシリンダボア23に組み付けられる。エンジンの運転時にピストン11はシリンダボア23に沿って往復運動する。コンロッド21に設けられたオイルノズル24は、エンジンの運転時にクランクシャフト20のオイル通路25に圧送される潤滑オイルをピストン11及びシリンダボア23に向けて噴射する。ピストン11へ向けて噴射されたオイルは両スカート17の間においてヘッド12の下面12aに吹き付けられる。
【0013】図2に示すように、上記下面12aは潤滑オイルを受けるための凹部26を有する。この凹部26は軸線L1を中心に対称な形状を有する。この凹部26はオイルノズル24から噴射されたオイルを受けて四方へ飛散させる。図3に示すように、凹部26はヘッド12の下面の一部を肉抜きすることにより得られる。凹部26の周縁は滑らかに湾曲した断面形状を有する。その湾曲面26aを外方へ延長させた方向は垂直線に対して所定の角度θを有する。この実施例では、角度θに「10°」以上の値を当てはめることができる。」
ウ 「【0014】図2に示すように、軸線L1の方向における凹部16の幅W1は、同軸線L1の方向におけるスカート17の付け根付近の幅W2に比べて大きく設定される。即ち、凹部26の両端は各スカート17の両端の付け根よりも軸線L1の方向へ長く延びる。
【0015】従って、この実施例の構成によれば、エンジンの運転時にピストン11がシリンダボア23に沿って上下運動するときに、オイルノズル24からピストン11へ向けて潤滑オイルが噴射される。このオイルはヘッド12の下面12aの凹部26に当たって四方へ飛散する。このとき、凹部26の湾曲面26a及びその角度θによりオイルを凹部26の外方へ効率良く飛散させることができる。飛散したオイルはピンボス13に当たったり、その軸線L1に平行に飛んで孔19を通じてシリンダボア23に当たったり、スカート17の内側面に当たったりする。このように凹部26によって飛散したオイルがヘッド12の下側でピストン11の各部に効率良く当たることから、ピストン11を効率良く冷却することができる。
【0016】加えて、凹部26から飛び散ったオイルの一部はスカート17の付け根の傍らを通り抜けてシリンダボア23に当たり、シリンダボア23とスカート17との間に侵入する。このため、オイルがシリンダボア23とスカート17との間に積極的に供給されることになり、両者23,17の間に十分なオイルが行き渡り、スカート17の潤滑性を一層向上させることができる。この結果、スカート17の耐焼付き性を向上させることができる。この焼付き性の改善はスカート17の面積を現状よりも縮減することを可能にする。スカート17とシリンダボア23との間に供給されるオイル量の増加は、ピストン11に係るスカッフィングの改善につながる。更に、スカート17とシリンダボア23との間に生じるオイル膜が相対的に厚くなることから、そのオイル膜がダンパの機能を発揮してスカート17とシリンダボア23との間における打音の発生を抑えることができる。
【0017】更に、この実施例では、サイドウォール18が孔19を有することに加え、ヘッド12がその下面12aに凹部26を有する。このため、凹部26の分だけピストン11を一層軽量化することができる。」
エ 上記段落【0012】の「ピストン11へ向けて噴射されたオイルは両スカート17の間においてヘッド12の下面12aに吹き付けられる。」という記載、及び段落【0013】の「図2に示すように、上記下面12aは潤滑オイルを受けるための凹部26を有する。この凹部26は軸線L1を中心に対称な形状を有する。この凹部26はオイルノズル24から噴射されたオイルを受けて四方へ飛散させる。図3に示すように、凹部26はヘッド12の下面の一部を肉抜きすることにより得られる。凹部26の周縁は滑らかに湾曲した断面形状を有する。」という記載から、引用文献1に記載されたピストン11はヘッドの下面12aの凹部26及び凹部26の湾曲面26aにおいて潤滑オイルを受けることが分かる。そして、段落【0010】の「ヘッド12の下側において、ピンボス13の両端に位置するサイドウォール18は両スカート17とピンボス13とをつなぐ。」という記載及び図1ないし図3の記載から、凹部26の湾曲面26aの一部は、サイドウォール18の外側にあると理解できる。
(2)引用発明
したがって、引用文献1には、その記載からみて、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
〔引用発明〕
「内燃機関のピストン11であって、
ヘッド12と、前記ヘッド12から懸架する正反対のスカート17の対と、サイドウォール18の対とを含むピストン11を含み、
前記ヘッド12は、上面と、下面12aと、3つのリング溝14、15、16を伴うヘッド12の外周とを有し、
前記サイドウォール18は前記ヘッド12から懸架し、前記スカート17間において互いと離間された関係で延在し、各サイドウォール18は、開口を有するピンボス13を含み、前記開口は、ピストンピンを受けるために互いと整列され、各サイドウォール18は、前記ヘッド12の改善された冷却のために、前記開口のうちの対応する開口と前記ヘッド12との間に位置する凹部26を呈し、
各サイドウォール18の上の前記凹部26は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部26として規定され、前記凹部26の一部は前記サイドウォール18の内側にあり、前記凹部26の湾曲面26aの一部は前記サイドウォール18の外側にある、内燃機関のピストン11。」
2 引用文献2
(1)引用文献2の記載事項
当審拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された実願平4-65355号(実開平6-22549号)のCD-ROM(以下、「引用文献2」という。)には、「内燃機関用ピストン」に関して、図面(特に、【図1】及び【図2】を参照。)とともに以下の事項が記載されている。
ア 「【0011】
図1(1)は内燃機関用ピストンを示す一部破断の正面図、(2)は(1)のP-P線に沿う縦断面図、図2は使用状態を示す図1(2)に対応する縦断面図である。これらの図において、1はクラウン部、2はスカート部、3はピンボス部である。
【0012】
クラウン部1とスカート部2とでピストン本体が構成され、ピンボス部3はクラウン部1の冠面部1aに連設されてパネル部4を介してスカート部2のスラスト側2Aと反スラスト側2Bに結合されている。このピンボス部3の端部3aは前記ピストン本体の外周部から中央側へ後退して形成されている。また、スカート部2の前記ピンボス部3の端部3aに対向した部位は切り欠かれている。
【0013】
前記スカート部2A、2Bとピンボス部3との連設部には図示しない透孔が、ピンボス部3とクラウン部1の外周(ピストン本体外周)のランド部1bとの間には肉抜き凹陥部5がそれぞれ形成され、該肉抜き凹陥部5と、ピンボス部3に形成されたピストンピン孔6とを連通させる肉抜き溝7が前記冠面部1aとピンボス部3との連設部8の外面に形成されている。更に、ピンボス部3の前記連設部8側とは反対側には、ピストンピン孔6内を外部に連通させる肉抜き溝9がピストン本体の軸方向で対応するように形成されている。
【0014】
前記ピストンピン孔6内にはピストンピン10が嵌挿され、該ピストンピン10の端部の外周にはスナップリング溝11が形成され、該スナップリング溝11内には、ピンボス部3の端部3aに当接する抜止め用のスナップリング12が装着されている。
【0015】
以上の構成において、エンジンの運転時、ピストン本体はクラウン部1の冠面1cに燃焼ガス圧力を受けてピストンピン10に一端が連結された図示しないコネクティングロッドを介してクランクシャフトに支持されながらシリンダボア内を摺動するが、その際、クラウン部1の冠面部1aとピンボス部3との連設部8がピストン本体の外周部から中央側へ後退していてシリンダボアとの接触による面圧を受けることがなく、発生応力がほとんどピストン本体の軸方向の圧縮応力だけとなる。このため、前記連設部8の外面に肉抜き溝7を設けても、該連設部8の強度は低下しない。
【0016】
また、エンジンの運転時、冷却オイルMはオイルジェット13等により肉抜き凹陥部5内に噴射されてピストン本体のクラウン部1の冠面部1aを裏側から冷却した後、クラウン部1の冠面部1aとピンボス部3との連設部8の外面に沿って流れ落ちる。そして、冷却オイルMの一部は肉抜き溝7内に入ってスナップリング12に邪魔されることなくピストンピン孔6内に導かれる。このため、冷却オイルMによりピストンピン10の潤滑が行われる。潤滑後の冷却オイルは、肉抜き溝9に導かれて外部に排出される。
【0017】
【考案の効果】
以上の通りこの考案は、ピストンピンが嵌挿されるピンボス部の端部をピストン本体外周のランド部からピストン本体の中央側へ後退させると共に、前記ピンボス部と前記ランド部との間に肉抜き凹陥部を設けた軽量型の内燃機関用ピストンにおいて、前記肉抜き凹陥部と、前記ピンボス部に形成されたピストンピン孔とを連通させる肉抜き溝を形成したため、ピストン本体の強度を低下させることなくピストン本体の軽量化が更に図れ、従って音振の低減とエンジン性能の向上が可能となる。
【0018】
また、エンジンの運転時、肉抜き凹陥部内に噴射された冷却オイルによりピストン本体の冠面部を裏側から冷却する一方、冷却オイルの一部を前記肉抜き溝により確実にピストンピン孔内に導いて、ピストンピンを潤滑することができる。このため、冷却性能の向上と耐スカッフィング性の向上が図れる。」
イ 段落【0016】の「また、エンジンの運転時、冷却オイルMはオイルジェット13等により肉抜き凹陥部5内に噴射されてピストン本体のクラウン部1の冠面部1aを裏側から冷却した後、クラウン部1の冠面部1aとピンボス部3との連設部8の外面に沿って流れ落ちる。そして、冷却オイルMの一部は肉抜き溝7内に入ってスナップリング12に邪魔されることなくピストンピン孔6内に導かれる。このため、冷却オイルMによりピストンピン10の潤滑が行われる。潤滑後の冷却オイルは、肉抜き溝9に導かれて外部に排出される。」という記載から、引用文献2に記載されたピストンにおいて、冷却オイルMが肉抜き凹陥部5内に噴射されてピストン本体のクラウン部1の冠面部1aを裏側から冷却した後、クラウン部1の冠面部1aとピンボス部3との連設部8の外面に沿って流れ落ちるとともに、冷却オイルMの一部は肉抜き溝7内に入ることが分かる。
(2)引用文献2技術
したがって、引用文献2には、その記載からみて、次の技術(以下「引用文献2技術」という。)が記載されている。
〔引用文献2技術〕
「内燃機関用ピストンにおいて、
各ピンボス部3、パネル部4及び連接部8上の少なくとも1つの肉抜き溝7は、冷却油の噴射を受けるための肉抜き溝7として規定され、前記肉抜き溝7は、前記ピンボス部3、パネル部4及び連接部8の外側表面上にあること。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「内燃機関のピストン11」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「内燃機関のためのピストン」に相当し、以下同様に、「ヘッド12」は「冠部分」に、「スカート17」は「スカート部分」に、「サイドウォール18」は「ピンボスパネル」に、「ピストン11」は「一体型ピストン本体」に、「上面」は「上側燃焼面」に、「下面12a」は「下冠面領域」及び「下冠面領域を有する下側表面」に、「3つのリング溝14、15、16」は「少なくとも1つのリング溝」に、「ヘッド12の外周」は「外側環状リングベルト」に、「開口」は「ピンボア」に、「ピンボス13」は「ピンボス」に、「ピストンピン」は「リストピン」に、「凹部26」は「凹部」に、「凹部26の一部」は「凹部の一方」に、「凹部26の湾曲面26aの一部」は「凹部の他方」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「各サイドウォール18の上の前記凹部26は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部26として規定され、前記凹部26の一部は前記サイドウォール18の内側にあり、前記凹部26の湾曲面26aの一部は前記サイドウォール18の外側にある」と、本願発明における「各ピンボスパネル上の前記少なくとも2つの凹部は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部の対として規定され、前記凹部の一方は前記ピンボスパネルの内側表面上にあり、前記凹部の他方は前記ピンボスパネルの外側表面上にある」とは、「各ピンボスパネルの上の前記凹部は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部として規定され、前記凹部の一部は前記ピンボスパネルの内側にあり、前記凹部の他の一部は前記ピンボスパネルの外側にある」という限りにおいて一致する。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
〔一致点〕
「内燃機関のためのピストンであって、
冠部分と、前記冠部分から懸架する正反対のスカート部分の対と、ピンボスパネルの対とを含む一体型ピストン本体を含み、
前記冠部分は、上側燃焼面と、下冠面領域を有する下側表面と、少なくとも1つのリング溝を伴う外側環状リングベルトとを有し、
前記ピンボスパネルは前記冠部分から懸架し、前記スカート部分間において互いと離間された関係で延在し、各ピンボスパネルは、ピンボアを有するピンボスを含み、前記ピンボアは、リストピンを受けるために互いと整列され、各ピンボスパネルは、前記冠部分の改善された冷却のために、前記下冠面領域を増大させるよう、前記ピンボアのうちの対応するピンボアと前記冠部分との間に位置する凹部を呈し、
各ピンボスパネルの上の前記凹部は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部として規定され、前記凹部の一部は前記ピンボスパネルの内側にあり、前記凹部の他の一部は前記ピンボスパネルの外側にある、内燃機関のためのピストン。」
〔相違点1〕
本願発明のピストンは「鋼から製造され」たものであるのに対し、引用発明のピストンは「鋼から製造され」たものであるかどうか不明である点。
〔相違点2〕
凹部の配置に関して、本願発明においては、「各ピンボスパネル上の前記少なくとも2つの凹部は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部の対として規定され、前記凹部の一方は前記ピンボスパネルの内側表面上にあり、前記凹部の他方は前記ピンボスパネルの外側表面上にある」のに対し、引用発明においては、「各サイドウォール18の上の前記凹部26は、さらに、冷却油の噴射を受けるための凹部26として規定され、前記凹部26の一部は前記サイドウォール18の内側にあり、前記凹部26の湾曲面26aの一部は前記サイドウォール18の外側にある」点。
2 判断
(1)相違点1について
上記相違点1について検討する。
内燃機関のためのピストンを、鋼から製造することは、内燃機関の技術分野において例示するまでもない本願優先日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。
してみれば、引用発明に対し、周知技術1を適用して、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことである。
(2)相違点2について
上記相違点2について検討する。
上記引用文献2技術は、
「内燃機関用ピストンにおいて、
各ピンボス部3、パネル部4及び連接部8上の少なくとも1つの肉抜き溝7は、冷却油の噴射を受けるための肉抜き溝7として規定され、前記肉抜き溝7は前記ピンボス部3、パネル部4及び連接部8の外側表面上にあること。」である。
ここで、引用文献2技術における「内燃機関用ピストン」は、本願発明における「内燃機関のためのピストン」に相当し、以下同様に、「ピンボス部3、パネル部4及び連接部8」は「ピンボスパネル」に、「肉抜き溝7」は「凹部」に、それぞれ相当する。
したがって、引用文献2技術は、本願発明の用語を用いると、
「内燃機関のためのピストンにおいて、
各ピンボスパネル上の少なくとも1つの凹部は、冷却油の噴射を受けるための凹部として規定され、前記凹部は前記ピンボスパネルの外側表面上にあること。」と言い換えることができる。
そして、引用発明と、引用文献2技術とは、内燃機関用ピストンという共通の技術分野において、ピストンの冷却という共通の課題を解決するためのものである。
また、ピンボスパネルの内側表面と外側表面を冷却油により冷却する技術は、本願優先日前の周知技術(以下「周知技術2」という。例えば、特開2007-309477号公報の段落【0031】ないし【0034】及び図4、特開2007-182827号公報の段落【0015】ないし【0017】及び図1ないし図4、特開2008-163936号公報の段落【0025】及び【0026】並びに図4及び図5を参照。)であり、また、各ピンボスパネルは少なくとも2つの凹部を呈し、ピンボスパネル上の少なくとも2つの凹部は凹部の対として規定されることも本願優先日前の周知技術(以下「周知技術3」という。例えば、実願昭63-166341号(実開平1-124059号)のマイクロフィルムの第3図及び第6図、実願平1-40617号(実開平2-131055号)のマイクロフィルムの第1図及び第2図を参照。)である。
してみれば、引用発明において、引用文献2技術、周知技術2及び周知技術3を適用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものである。
(3)作用効果について
そして、本願発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献2技術及び周知技術1ないし周知技術3から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
(4)小括
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2技術及び周知技術1ないし周知技術3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-014705