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特許拒絶査定不服審判

2018-012792

複雑な形状の鍛造ピストンオイルギャラリ

審判番号
2018-012792
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-558026外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年09月26日
審決日
2019年12月24日
公報発行日
2020年06月26日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (F02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-558026「複雑な形状の鍛造ピストンオイルギャラリ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年8月21日国際公開、WO2014/126736、平成28年4月4日国内公表、特表2016-510097〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)2月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年2月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続は以下のとおりである。 平成29年1月16日      :手続補正書の提出 平成29年9月12日(発送日) :拒絶理由通知書 平成29年12月11日     :意見書、手続補正書の提出 平成30年5月29日(発送日) :拒絶査定 平成30年9月26日      :審判請求書の提出 平成30年11月15日     :手続補正書(方式)の提出 令和元年6月25日(発送日)  :拒絶理由通知書 (以下「当審拒絶理由」という。) 令和元年9月10日       :意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし15に係る発明は、令和元年9月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「ピストンであって、 下部部材を備え、前記下部部材は、側壁部と、ピンボアとを備え、前記ピストンはさらに、 前記下部部材に接合された上部クラウン部材を備え、前記上部クラウン部材は、鍛鋼で作製され、その上方側に燃焼ボウルを有し、その下方側にオイルギャラリ通路を有し、前記オイルギャラリ通路は、少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向外側壁部と、少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部とを含み、前記ポケット部は、前記上部クラウン部材に設けられ、前記燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように前記ピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる、ピストン。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 (進歩性)本願の請求項1ないし15に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2007-270812号公報 引用文献2:特表平3-502720号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1 当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2007-270812号公報)には、「内燃機関用ピストン」に関して、図面(特に図2ないし4及び6を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。 ア 「【0030】 図1乃至図6はこの実施の形態1に係る直接噴射式ディーゼルエンジン用ピストンを示す。図において、符号10はピストンであり、図示しないシリンダの燃焼室側に配置されるヘッド部11と、図示しないクランク側に配置されるスカート部12を有している。スカート部12には、ピストンピン孔13aを有するボス13が設けられ、ヘッド部11の側周面側には3本のピストンリング溝15を有するランド部14が設けられ、ヘッド部11の中央部11aの頂面11bには、燃焼室の一部を構成し、燃料噴射装置から直接燃料が吹き込まれるキャビティ16が設けられている。また、ヘッド部11の内部にはクーリングチャネル17が設けられている。 【0031】 このピストン10は、ボス13を有するスカート部12全体及びヘッド部11の中央部11aが一体に形成されたピストン本体18と、ピストンリング溝15を有するランド部14及びヘッド部11の周縁部11eが一体に形成されたヘッド環状部11cとが、それぞれの接合面11d、18dにおいて接合されることにより構成されている。 【0032】 ピストン本体18は、ヘッド部11の中央部11aの頂面11bに設けられたキャビティ16の底面16aを含んでいる。また、スカート部12のボス13のピストンピン孔13aは、スカート部12の一対の対向部分に形成された肉厚部に、青銅ブッシュ部材等を配置することなく直接開設されており、所定の精度の貫通孔となっている。 【0033】 一方、ヘッド環状部11cは、ヘッド部11の頂面11bとキャビティ16の周囲の内側に突出したリップ部11fを含んでいる。 【0034】 また、クーリングチャネル17は、図2に示すように、ヘッド環状部11cに沿う無端環状に連続する環状路17aと、図4に示すように、ヘッド部11の底部から環状路17aまで貫通する2つの貫通路からなる冷却用オイルの供給路17c及び排出路17dを備えている。 【0035】 この実施の形態1では、クーリングチャネル17は、環状路17aからヘッド環状部11cの頂面11bに向けて穿設された有端孔からなる複数の延長路17bを備えている。この延長路17bは周方向に複数所定の間隔で配置されている。この延長路17bは、図2に示されるように、ヘッド部11のキャビティ16に噴射される燃料16bに対応する位置に設けられて、特に高温となる部分の冷却効率が向上するようになっている。 【0036】 そして、ヘッド環状部11cとピストン本体18との接合面11d、18dは、ヘッド部11の周縁部11e側の端部よりも中央部11a側の端部が頂面11bに近接するように傾斜する一定の勾配を有する単一のテーパ面により構成されている。 【0037】 この接合面11d、18dは、環状路17aを横切るように形成されており、ヘッド環状部11cとピストン本体18との各接合面11d、18dには、互いに対向することにより、環状路17aを形成するように環状の溝11g、18gが設けられている。」 イ 「【0038】 次に、このようなピストン10を製造する方法について図6を用いて説明する。 【0039】 まず、ヘッド環状部11cとピストン本体18とを別体に作製する。ここでは、ヘッド環状部11cを鍛造により作製することにより、軽量且つ引張り強度等、十分な強度を確保する。また、ピストン本体18は、鍛造、鋳造等適宜な方法で作製することができるが、この実施の形態では、強度を確保し易いという理由で、鍛造により成形して作製する。 【0040】 その際、ヘッド環状部11cとピストン本体18とを異なる材料を用いて製造するのが好ましく、ヘッド環状部11cはピストン本体18より耐熱強度が高い材料を用いるのが好適であり、ピストン本体18はピストンピンを支持する関係から耐面圧強度が確保できる材料を用いるのが好適である。 【0041】 具体的には、ヘッド環状部11cの材料としては、例えば、シリコン及び/又は鉄含有アルミニウム合金を溶解した後で急冷凝固させて得られる急冷粉末アルミニウム合金、或いは、更にニッケル、クロム、マンガンなどの元素を含有させた前記アルミニウム合金を溶解した後で急冷凝固させて得られる粉末や金属箔でもよい。他の金属元素が含有されていてもよく、上記粉末や箔にSiC、Al2O3などの粒子やウィスカを強化材として添加してもよい。また、アルミニウム合金の連続鋳造棒でもよい。その場合、強化材としてSiC、Al2O3などの粒子やウィスカを添加してもよい。 【0042】 また、ピストン本体18の材料としては、ヘッド環状部11cの材料とシリコン及び/又は鉄の含有量が異なるアルミニウム合金や、更に銅、マグネシウム等の含有量の異なるアルミニウム合金などを用いてもよい。 【0043】 このような材料を用いて、ヘッド環状部11cを鍛造により作製するには、急冷粉末アルミニウム合金を丸棒形状に押出し(工程a)、切断してヘッド環状部11に対応する大きさのビレットとし(工程b)、ピストン軸方向の一対の成形型で挟み強圧して成形することにより鍛造し(工程c)、機械加工する(工程d)ことにより行う。 【0044】 鍛造する工程では(工程c)、成形型に接合面11dに対応するテーパ面を形成しておくのが好ましく、更に、そのテーパ面にクーリングチャネル17の環状路17aを構成するための環状の溝11gを形成しておくのが好ましい。 【0045】 得られた成形体を機械加工する工程では(工程d)、接合面11dを所定精度で単一テーパ面となるように加工する。また、環状の溝11gから頂面11bに向けて延長路17bを周方向に所定の間隔で穿設する。 【0046】 また、前記のような材料を用いて、ピストン本体18を鍛造により作製するには、丸棒形状に押出し(工程e)、切断してピストン本体18に対応する大きさのビレットとし(工程f)、ピストン軸方向の一対の成形型で挟み強圧して成形することにより鍛造し(工程g)、機械加工する(工程h)ことにより行う。 【0047】 鍛造する工程では(工程g)、成形型に接合面18dに対応するテーパ面を形成しておくのが好ましく、更に、そのテーパ面にクーリングチャネル17の環状路17aを構成するための環状の溝18gを形成しておくのが好ましい。更に、ヘッド部11の頂面11b側には、キャビティ16を成形型により形成するのがよい。 【0048】 得られた成形体を機械加工する工程では(工程h)、接合面18dをヘッド環状部11cの接合面11dと同一となるように、所定精度の単一テーパ面に加工する。また、ヘッド部11の底部から環状の溝18gに貫通する供給路17c及び排出路17dを穿設する。 【0049】 ヘッド環状部11c及びピストン本体18の機械加工を施した後、ヘッド環状部11cとピストン本体18とを、接合面11d、18dにおいて接合する(工程i)。この接合方法は、例えば、電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、ろう付け、摩擦圧接等各種の方法により行うことができる。」 ウ 「【0054】 また、接合面11d、18dが単一のテーパ面で形成されているので、水平面や垂直面等の複数の面を組合せて接合面を形成する場合に比べて、接合面11d、18d全面で公差を小さく抑えることができ、接合面11d、18d同士を容易に密着させて精度よく接合することができる。また、精度良く密着させられれば、電子ビーム溶接等による接合がより容易に行える。」 エ 「【0061】 また、このピストン10では、環状路17aを横切る接合面11d、18dを有するピストン本体18及びヘッド環状部11cが、それぞれ鍛造により成形されているので、クーリングチャネル17をヘッド部11の内部に備えていても、ピストン10を十分な強度で形成することが可能である。 【0062】 しかも、鍛造のため肉厚も薄くでき、クーリングチャネルの通路断面積の大型化とピストン全体の軽量化が可能である。 【0063】 更に、このピストン10では、クーリングチャネル17が環状路17aからヘッド環状部11cの頂面11bに向けて穿設された延長路17bを備え、この延長路17bがピストン周方向に複数所定の間隔で配置されているので、ヘッド部11の特に加熱されやすい頂面11b側をより冷却し易い。 【0064】 なお上記の実施の形態1はこの発明の範囲内で適宜変更可能であり、例えば、上記では環状路17aを完全な無端環状路として形成したが、ヘッド環状部11cに沿って端部が設けられた通路として形成されていてもよい。」 上記アないしエの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 [引用発明] 「ピストン10であって、 ピストン本体18を備え、前記ピストン本体18は、スカート部12と、ピストンピン孔13aとを備え、前記ピストン10は、 前記ピストン本体18に接合されたヘッド環状部11cを備え、前記ヘッド環状部11cは、鍛造により作製され、その上方側にキャビティ16を有し、その下方側にクーリングチャネル17を有し、前記クーリングチャネル17は、穿設された延長路17bを含む、ピストン10。」 (2)引用文献2 当審拒絶理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2(特表平3-502720号公報)には、「エンジンピストン組立体及び冷却凹部を有する鍛造ピストン部材」に関して、図面(特にFig.1ないしFig.4及びFig.7を参照。)とともに以下の事項が記載されている。 ア 「本発明は、一般的には、高出力内燃機関用のコンパクトなエンジンピストン組立体に関し、より詳細には、燃焼室の高圧および高温に対する耐久性を有し、機械加工された回転表面を有する鋼鉄ピストンに関する。」(第2ページ右上欄第4行ないし7行) イ 「このように、現在求められているものは高出力エンジン用ピストン組立体であり、約13,790KPa(2000psi)以上、好ましくは約15,170KPa(2200psi)の範囲の燃焼室圧力において連続的に、かつ効率的に作動し得るピストンを備えたピストン組立体である。さらに、ピストンは、その鍛造を行うことができるように複雑な形状を有しない合金鋼鉄から鍛造により製造されることが好ましい。そのうえ、ピストンの上部分の範囲および、特に、冷却凹部の範囲は壁の厚さを比較的薄くし、ほぼ均一にし、均一な熱分散および表面の最大の冷却効果を達成するようにすることが好ましい。 また、冷却凹部の表面は、隣接する表面との間の間隔を正確にあけるため、また、特に冷却チャネルとリング溝との間の間隔を正確にあけるため、機械仕上げされた回転表面とされる。ピストンはその中心軸回りに対称な回転表面を有していることが好ましく、この回転表面はひび割れの伝播の原因となる表面の凹凸がなく、このため熱歪みを避けることができるものとすることが好ましい。 本発明は以上述べた問題の一つまたは二つ以上を解決することを目的とするものである。」(第2ページ右下欄第24行ないし第3ページ左上欄第15行) ウ 「第1図および第2図には多気筒型のディーゼル・エンジン10が示されている。ディーゼル・エンジン10は底部ブロック12と、頂部ブロックまたはスペーサー部分14と、複数のファスナすなわちボルト18により通常の方法で強固に結合されたシリンダー・ヘッド16とを備えている。 中央で支持されたシリンダー・ライナー48は頂部ブロック14により安定的に支持された円筒形の上部分52を備えており、また中心軸66を有するピストン・ボア54を形成している。この点に関しては、1987年1月27日付けでB.ボールハイマー(Ballheimer)に付与された米国特許第4,638,769号に相互参照がなされている。すなわち、同米国特許においては、中央支持式ライナーを備えた多気筒型シリンダー・ブロックの特徴および利点が述べられている。ただし、本実施例におけるディーゼル・エンジン10は従来型式のエンジンで足りる。 ディーゼル・エンジン10は、第1図の右下に示すように、第一冷却用オイル発射ノズル74および第二冷却用オイル発射ノズル75を備えている。第一オイル発射ノズル74は底部ブロック12に強固に取り付けられており、さらに、圧力オイル供給源(図示せず)と作動的に連結しており、連結式ピストン組立体76の所定の領域においてほぼ垂直方向にエンジン潤滑オイルの小幅の噴流をつくり出す。第二オイル発射ノズル75も底部ブロック12に取り付けられているが、垂直方向からは傾斜して取り付けられており、ピストン組立体76の他の領域において冷却オイルの噴流と衝突する。 ディーゼル・エンジン10の連結式ピストン組立体76は鍛造上部鋼鉄ピストン部材78と下部鍛造アルミニウムピストンスカート80とを備えている。上部ピストン部材78と下部ピストンスカート80とは、長手方向を向いている中心軸84を有する共通の鋼鉄リストピン82に連結して取り付けられている。上部眼状端部92と、鋼鉄で裏打ちされたブロンズのスリーブ・ベアリング94とを有する従来型のコネクティング・ロッド90はリストピン82と作動的に連結し、リストピン82によって駆動される。 第2図および第4図に最も良く示されているように、上部鋼鉄ピストン部材78はほぼ円筒形状で、所定の最大直径Dを有する上部分96を備えている。上部分96は十分に機械加工された頂面98と、凹状の対称形のクラウン表面100とを有している。頂面98は平坦である、すなわち中心軸66と垂直な面上に位置している。クラウン表面100は、本実施例においては、中心軸66の回りに十分に機械加工された回転表面である。一般的に、クラウン表面100は、クラウン表面100の中央に位置し、頂面98の高さよりも下方にある頂部102と、軸方向外周表面104と、頂部102と軸方向外周表面104とを滑らかに結ぶ環状トラフ106とを有している。」(第3ページ左下欄第17行ないし第4ページ左上欄第6行) エ 「第3図に最も良く示されているように、上部ピストン部材78は、頂面98の外周縁から延びる比較的薄い厚さの管状壁108を有している。本実施例における管状壁108の高さLHは31mmであった。管状壁108は、その周囲に、第一ランドまたは頂部ランド110と、断面が楔形の頂部リング溝112と、第二中間ランドまたは上部中間ランド114と、断面が矩形の中間リング溝116と、第三中間ランドまたは下部中間ランド118と、断面が矩形の底部リング溝120と、第四ランドまたは底部ランド122とをこの順番に備えており、底部ランド122は該底部ランド122より下方にあり、半径方向に延び、十分に機械加工された下端面124で終わっている。本実施例においては、頂面98と頂部リング溝112との間の最小垂直距離TRHは5mmであった。ほぼ軸方向に延び、内方を向いている環状のテーパ付き壁面126は管状壁108内部にあり、下端面124から上方に延びている。 上部ピストン部材78の上部分96は、さらに、テーパ付き壁面126から半径方向内側に隔てられて形成されている半径方向外側を向いている環状の壁面128と、下方を向いている連結壁部分130とからなる。連結壁部分130は壁面126と壁面128とを連結し、正確に定められた断面形状を有する環状の冷却用凹部132を形成している。冷却用凹部132の頂上部は頂部リング溝112の頂上部とほぼ同じ高さの関係にある。冷却用凹部132の頂上部は上部ピストン部材78の頂面98の直下に位置しており、頂面98からの垂直距離はEで表される。ある実施例においては垂直距離Eは約5.5mmであった。 実際には、本実施例の壁面128は上部円錐部分134とその下方に続いている円筒部分136とからなる。上部円錐部分134は、第3図に示すように、約12.33°の中心軸66からの傾斜角Aを有する。一方、壁面126は十分に円錐形状をなしており、約1.17°の傾斜角Bを有する。内側を向いている壁面126、外側を向いている壁面128、および下方を向いている連結壁部分130はいずれも十分に機械仕上げされた回転表面である。壁面126と頂部リング溝112の最も内側の部分との間の半径方向厚さは、壁面126と中間リング溝116の最も内側の部分との間の半径方向厚さよりもわずかに大きい。したがって、壁面126と中間リング溝116の最も内側の部分との間の半径方向厚さは最も破損し易い部分であり、本実施例におけるその半径方向厚さの最小値は1.74mmである。好ましくは、3mmまたは4mmである。シール溝112、116、120は十分に機械仕上げされた回転表面であるので、それらの半径方向における危険断面は正確に制御できるものである。」(第4ページ左上欄第7行ないし同ページ右上欄第20行) オ 「変形例として、環状冷却用凹部132は第7図に示すような浅い凹部、あるいは第8図に示すような深い凹部その他いかなる形状に鍛造してもよい。さらに、第7図および第8図に示すように、凹部の深さを変えることにより得られるグレン流れが想像線により示されている。第8図に示す変形例においては、内側を向いている壁面126のみが機械仕上げした回転表面であれば良く、したがって、壁面126とシール・リング溝116との間の危険断面だけを正確に制御すればよい。」(第4ページ右上欄第21行ないし同ページ左下欄第1行) カ 「環状トラフ106と冷却用環状凹部132との間には比較的薄く、ほぼ円錐形のような形状のウェブまたは壁166が形成されており、ウェブ166は最小厚さWを有する。」(第4ページ左下欄第16ないし18行) キ 「第3図を参照すると、冷却用凹部132の頂上部は頂部リング溝112の頂上部と同じ高さにある。冷却用凹部132の頂上部は上部ピストン部材78の頂面98の直下に位置しており、頂面98からの垂直距離はEで表される。ある実施例においては、直径Dは124mm、垂直距離Eは約5.5mmであった。このように、壁の厚さを比較的薄く、ほぼ一定とするのは熱分散をほぼ均等に行い、冷却を最大限に行うためである。壁面126は中心軸66の回りに機械仕上げされた回転表面であり、機械仕上げすることによって正確に寸法通りに形成でき、およびリング溝112、116、120と壁面126との間を正確に同心とすることができる。寸法通りに形成すること、およびリング溝底部と壁面126とを同心とすること、特に壁面126に最も近いリング溝116底部と壁面126とを同心とすることは極めて重要である。というのは、誤差があると管状壁108の強度が低下し、ひび割れ、不均一な熱分散および/または熱ひずみの原因となるからである。冷却用凹部132を形成している内側を向いている壁面126、外側を向いている壁面128および下方を向いている連結壁部分130はすべて中心軸66回りの機械仕上げの回転表面であり、こうすることによって、ひび割れの伝播や熱ひずみの原因となる不均一さを排除することができる。壁面126、128および連結壁部分130を機械加工することによって壁の厚さ、同心性、壁面の仕上げをすべて正確に行うことが可能になる。あるいは、第8図に示す深い鍛造凹部132を有する変形例においては、壁面126のみを機械仕上げによる回転表面とし、寸法上の制御、リング溝112、116、120の底部との間の同心性、特に壁面126に最も近いリング溝116底部との同心性を確保することができる。」(第5ページ左上欄第17行ないし同ページ右上欄第16行) ク 上記オ及びFig.7の図示内容からみて、「鍛造部分を示す線」であるグレン流れがあり、ここから、鍛造された状態のままの機械仕上げされていない部分があり、その形状は凹部といえることが分かる。そして、前記凹部は、連結式ピストン組立体76の中心軸66の方に半径方向内側に窪んだ形状であるといえる。 ケ 上記イ及びク並びにFig.4及び7の図示内容からみて、環状トラフ106と冷却用凹部132及び凹部との壁の厚さは、薄く、ほぼ均一である。 上記アないしケの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 [引用文献2記載事項] 「下部鍛造アルミニウムピストンスカート80に連結された鍛造上部鋼鉄ピストン部材78を備え、前記鍛造上部鋼鉄ピストン部材78は、鍛鋼で作製され、その上方側に環状トラフ106を有し、その下方側に環状の冷却凹部132を有し、前記環状の冷却凹部132は、機械仕上げされた回転表面である環状の壁面126と、鍛造された状態のままの機械仕上げされていない凹部とを含み、前記凹部は、前記鍛造上部鋼鉄ピストン部材78に設けられ、前記環状トラフ106との間の壁の厚さは、薄く、ほぼ均一であり、連結式ピストン組立体76の中心軸66の方に半径方向内側に窪んでいる、連結式ピストン組立体76。」 第5 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「ピストン10」は前者の「ピストン」に相当し、以下同様に、「ピストン本体18」は「下部部材」に、「スカート部12」は「側壁部」に、「ピストンピン孔13a」は「ピンボア」に、「ヘッド環状部11c」は「上部クラウン部材」に、「キャビティ16」は「燃焼ボウル」に、「クーリングチャネル17」は「オイルギャラリ通路」に、それぞれ相当する。 後者の「鍛造により作製され」ることと、前者の「鍛鋼で作製され」ることとは、「鍛造で作製され」るという限りで一致する。 後者の「穿設された延長路17b」は、径方向外側の壁部を含むから、前者の「少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向外側壁部」とは、「少なくとも1つの機械加工された壁面部を有する径方向外側壁部」という限りで一致する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点がある。 [一致点] 「ピストンであって、 下部部材を備え、前記下部部材は、側壁部と、ピンボアとを備え、前記ピストンはさらに、 前記下部部材に接合された上部クラウン部材を備え、前記上部クラウン部材は、鍛造で作製され、その上方側に燃焼ボウルを有し、その下方側にオイルギャラリ通路を有し、前記オイルギャラリ通路は、少なくとも1つの機械加工された壁面部を有する径方向外側壁部を含む、ピストン。」 [相違点1] 上部クラウン部材が鍛造で作製される点について、本願発明は、「鍛鋼」で作製されるのに対し、引用発明は、鍛造により作製される点。 [相違点2] オイルギャラリ通路について、本願発明は、少なくとも1つの「機械旋削」された壁面部を有する径方向外側壁部と、「少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部とを含み、前記ポケット部は、上部クラウン部材に設けられ、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」のに対し、引用発明のクーリングチャネル17は、穿設された延長路17bを含む点。 上記相違点1及び2について検討する。 引用文献2記載事項は、「下部鍛造アルミニウムピストンスカート80に連結された鍛造上部鋼鉄ピストン部材78を備え、前記鍛造上部鋼鉄ピストン部材78は、鍛鋼で作製され、その上方側に環状トラフ106を有し、その下方側に環状の冷却凹部132を有し、前記環状の冷却凹部132は、機械仕上げされた回転表面である環状の壁面126と、鍛造された状態のままの機械仕上げされていない凹部とを含み、前記凹部は、前記鍛造上部鋼鉄ピストン部材78に設けられ、前記環状トラフ106との間の壁の厚さは、薄く、ほぼ均一であり、連結式ピストン組立体76の中心軸66の方に半径方向内側に窪んでいる、連結式ピストン組立体76。」である。 本願発明と引用文献2記載事項とを対比すると、後者の「下部鍛造アルミニウムピストンスカート80」は前者の「下部部材」に、以下同様に、「環状トラフ106」は「燃焼ボウル」に、「連結式ピストン組立体76」は「ピストン」に、「中心軸66」は「長手方向軸」に、それぞれ相当する。 後者の「鍛造上部鋼鉄ピストン部材78」は、前者の「上部クラウン部材」に相当するとともに、前者の「鍛鋼で作製され」ることを含むものである。 後者の「凹部」は前者の「ポケット部」に相当するから、後者の「鍛造された状態のままの機械仕上げされていない凹部」は前者の「少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部」に相当し、後者の「環状の冷却凹部132」及び「凹部」は前者の「オイルギャラリ通路」に相当する。 また、後者の「半径方向内側に窪んでいる」ことは前者の「径方向内向きに窪んでいる」ことに相当する。 前者の「機械旋削された壁面部」に関して、本願の発明の詳細な説明には「『機械旋削』または単に『旋削』は、旋盤上などでワークピースが回転している間に切削工具、典型的には非回転式ツールビットが線形に移動する機械加工プロセスである。『機械旋削』は、ワークピースの内面または外面のいずれかに対するこのような切削または仕上げ作業を指し得る。オイルギャラリ通路の面のうちのいくつかを機械加工する際に、機械旋削が内面を仕上げ処理するか、または形成する。」(段落【0025】)との記載がある。 他方、後者の「機械仕上げされた回転表面である環状の壁面126」は、中心軸66回りの機械仕上げの回転表面(第5ページ右上欄第5ないし第8行)であり、後者の「壁面126」は前者の「径方向外側壁部」に相当するから、後者の「機械仕上げされた回転表面である環状の壁面126」は前者の「少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向外側壁部」に相当する。 前者において、ポケット部は、「燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように」ピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいることに関して、本願の発明の詳細な説明には「これは、オイルギャラリと燃焼ボウル12との間の壁領域70の厚みを最小化し、燃焼ボウルの外側の周囲の壁厚を均一にする。」(段落【0029】)との記載がある。 そうすると、後者における凹部と「環状トラフ106との間の壁の厚さは、薄く、ほぼ均一であ」ることは、前者の「燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように」に相当する事項を含んでいるといえる。 以上から、引用文献2記載事項は、本願発明の用語を用いると、 「下部部材に連結された上部クラウン部材を備え、前記上部クラウン部材は、鍛鋼で作製され、その上方側に燃焼ボウルを有し、その下方側にオイルギャラリ通路を有し、前記オイルギャラリ通路は、少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向内側壁面と、少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部とを含み、前記ポケット部は、前記上部クラウン部材に設けられ、前記燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように前記ピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる、ピストン」といえる。 相違点1について 引用文献2記載事項は「上部クラウン部材は、鍛鋼で作製され」る点を含むものである。そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、ピストンに関する技術であることで共通し、引用発明のヘッド環状部11cと引用文献2記載事項の上部クラウン部材とは機能・作用が共通する構成である。また、引用発明に引用文献2記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、引用発明に引用文献2記載事項の「上部クラウン部材は、鍛鋼で作製され」る点を適用して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 相違点2について 引用文献2記載事項は「オイルギャラリ通路は、少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向内側壁面と、少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部とを含み、前記ポケット部は、上部クラウン部材に設けられ、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」点を含むものである。そして、引用発明と引用文献2記載事項とは、ピストンに関する技術であることで共通し、オイルギャラリ通路の壁の厚さを薄くするという課題でも共通する。また、引用発明に引用文献2記載事項を適用することについての格別な阻害要因を見いだすこともできない。 そうすると、引用発明に引用文献2記載事項の「オイルギャラリ通路は、少なくとも1つの機械旋削された壁面部を有する径方向内側壁面と、少なくとも1つの鍛造された状態のままの機械加工されていないポケット部とを含み、前記ポケット部は、上部クラウン部材に設けられ、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」ことを適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 また、本願発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献2記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。 したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 令和元年9月10日の意見書における審判請求人の主張について 審判請求人は、令和元年9月10日の意見書において、次のように主張する。 「引用文献2(特開平3-502720号公報)の図7には、環状冷却用凹部132は鍛造で浅い凹部として形成されてもよく、図8の例において内側を向いている壁面126のみを機械仕上げしてもよいことが記載されています。 しかし、引用文献2にも、『ポケット部が、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる』という本願発明の構成は記載されていません。 したがって、引用文献1,2を参酌したとしても、『ポケット部は、上部クラウン部材に設けられ、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる』という独立請求項1,10に係る本願発明の構成を容易に想到できるものではありません。よって、上記補正後の独立請求項1,10に係る本願発明は、引用文献1,2から容易に想到できるものではないと思料致します。」 そこで、上記主張についてさらに検討すると、請求人は「ポケット部は、上部クラウン部材に設けられ、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」ことについて、本願明細書の段落【0029】や図5等にその内容が記載されていると主張する。 そして、本願の発明の詳細な説明における段落【0029】には、「本発明のプロセスは、複雑な形状の燃焼ボウルの外周形状と同様または実質的に同一の内周形状を有するピストンのための環状のオイルギャラリを提供する。これは、オイルギャラリと燃焼ボウル12との間の壁領域70の厚みを最小化し、燃焼ボウルの外側の周囲の壁厚を均一にする。鍛造および機械加工プロセスの実際的な限界により、全ての壁の厚みは、燃焼ボウルの円周にわたって全く同じではないであろう。しかし、本発明は、壁厚70をオイルギャラリ全体にわたってできるだけ薄く、均一にする。これにより、ピストンが完成したときにオイルギャラリに導入されたオイルが、ボウル壁面および縁80の温度を適切な範囲内に維持することが可能になり、有害なホットスポットが回避される。」との記載がある。 また、本願の図5には、紙面左右に2つの壁領域70が示されているが、それぞれの厚み寸法は異なっており、また、いずれか1つの壁領域70においても、厚みを規定する横断線の位置により厚み寸法は異なることが分かる。 以上から、本願のポケット部において、「燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」とは、有害なホットスポットを回避するために、オイルギャラリと燃焼ボウル12との間の壁厚70をオイルギャラリ全体にわたってできるだけ薄く、均一に近づけようとすることと理解できる。 一方、引用文献2記載事項において、「環状トラフ106との間の壁の厚さは、薄く、ほぼ均一であ」ることは、冷却凹部の範囲は壁の厚さをほぼ均一にすることである(第3ページ左上欄4ないし5行)。 また、引用文献2の環状トラフ106は、ピストンの長手軸方向からみて円形であり(図4)、このような環状トラフ106と、それを周方向に取り囲んでいる環状の冷却凹部132及び凹部との間の壁厚の寸法は周方向全体にわたってほぼ均一にする、すなわち均一化するようにしているといえる。 そうすると、引用文献2記載事項は、本願発明における、ポケット部は、「燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」ことに相当する事項を含むものである。 そして、引用発明に引用文献2記載事項を適用して、「ポケット部は、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するようにピストンの長手方向軸の方に径方向内向きに窪んでいる」に係る発明特定事項とすることは、上記「第5 対比・判断」において検討したように、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、請求人の主張を採用することはできない。 なお、例えば、本願の優先日前に頒布された引用文献3(米国特許出願公開第2011/0107997号明細書の段落[0048]ないし[0049]及びFIG.10ないし13にもあるように、「燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように」構成することは、本願の優先日前に周知の事項であり、引用発明に引用文献2記載事項を適用するにあたって、上記周知の事項を考慮して、ポケット部は、燃焼ボウルの周囲の壁厚を均一化するように構成することも、当業者にとって容易に想到し得たことである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-012792

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