特許拒絶査定不服審判
2018-013837
遊技機
- 審判番号
- 2018-013837
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-224975外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年10月18日
- 審決日
- 2019年01月07日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-224975号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年5月24日出願公開、特開2018-79206号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月18日の出願であって、平成29年10月27日付けの拒絶理由通知に対し、同年12月25日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年3月26日付けの最後の拒絶理由通知に対し、同年5月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月31日付けで同年5月14日にされた手続補正を却下するとともに、拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1.本件補正の概要
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1において、「特定実装領域」に「実装」される「特定の電子部品」に係る事項及び「特定実装領域」に「形成」される「特定印刷部」に係る事項を補正することを主旨とするものであり、本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載はそれぞれ、以下のとおりである(下線部は、補正箇所を示す。)。
(本件補正前:平成29年12月25日にされた手続補正)
「【請求項1】
複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機において、
前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成され、該特定印刷部の少なくとも一部と重なるように前記特定の電子部品が実装される、
ことを特徴とする遊技機。」
(本件補正後:平成30年10月18日にされた手続補正)
「【請求項1】
複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機において、
前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成されると共に、該特定印刷部の少なくとも一部と重なり且つ前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され、
前記特定印刷部は前記空間を通して視認可能とされる
ことを特徴とする遊技機。」
2.補正の適否
(以下では、本件補正後や本件補正前を単にそれぞれ「補正後」や「補正前」ともいう。)
(1)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「特定実装領域」において、「前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成されると共に、該特定印刷部の少なくとも一部と重なり且つ前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され」と特定することにより、補正前の請求項1に記載の上記「特定実装領域」に「実装」される「特定の電子部品」の実装態様を限定するものである。
(2)補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である、「特定実装領域」に「形成」される「特定印刷部」について、「特定印刷部は前記空間を通して視認可能とされる」と特定することにより、補正前の請求項1に記載の上記「特定印刷部」の特徴を限定するものである。
そして、補正前の請求項1に記載された発明と、補正後の請求項1に記載される発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付された明細書の段落【1077】~【1089】、図面【図140】~【図142】の記載に基づいており、いわゆる新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3.独立特許要件
そこで、本件補正後における請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否か、について以下検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記「1.本件補正の概要」において示した次に特定されるとおりのものである。
(A~Eについては、発明特定事項を分説するため当審で付した。)
「A 複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機において、
B 前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
C 前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成されると共に、該特定印刷部の少なくとも一部と重なり且つ前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され、
D 前記特定印刷部は前記空間を通して視認可能とされる
E ことを特徴とする遊技機。」
(2)刊行物に記載された事項
(2-1)刊行物1
平成30年7月31日付けでされた補正の却下の決定において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10―190172号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子機器回路を構成するプリント配線板のシルク印刷表示構造に関するものである。
【0002】~【0003】
(省略)
【0004】そのために、非絶縁電子部品2-1は、その下に絶縁紙5を入れて接触を防止するか、または、非絶縁電子部品2-1を浮かして取付けて接触を防止するという作業が生じていた。また、発熱電子部品2-2は、部品特性から高熱を発生し、その熱を放熱するために図5のように浮かして取付けている。」
イ 「【図5】
」
ウ 「【0023】図1に示すように、プリント配線板1には、非絶縁電子部品であるトランス2-1や、発熱電子部品である抵抗2-2や、自動挿入電子部品であるIC2-3や、手挿入電子部品であるトランジスタ2-4や、後付け電子部品であるコネクタ2-5、スイッチ2-6などが搭載されており、各々の電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6は、パターン3、3-1、3-2により接続され、回路機能を形成している。
【0024】そして、プリント配線板1には、電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6の表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が各々電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6が配置される位置にシルク印刷により表示されている。
【0025】この場合、非絶縁電子部品であるトランス2-1の表示部4-1は、このトランス2-1の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線を入れて2重線のシルク印刷とし、その2本の線間全てをシルク印刷により面状にて塗り潰した表示にしてある。
【0026】また、発熱電子部品である抵抗2-2の表示部4-2は、この抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線とし、その約1mm外側にもう1本の線を入れて2重線のシルク印刷表示にしてある。
【0027】また、自動挿入電子部品であるIC2-3の表示部4-3は、このIC2-3の外形の投影枠より少し大きめの1本の線のシルク印刷表示にしてある。また、手挿入電子部品であるトランジスタ2-4の表示部4-4は、このトランジスタ2-4の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線を入れて2重線のシルク印刷表示とし、その2本の線間の上側半分をシルク印刷により面状にて塗り潰した表示にしてある。
【0028】また、後付け電子部品であるコネクタ2-5とスイッチ2-6の表示部4-5は、このコネクタ2-5、スイッチ2-6の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線を入れて2重線のシルク印刷表示とし、その2本の線間の下側半分をシルク印刷により面状にて塗り潰した表示にしてある。
【0029】このように、各々の電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6が実装されていても表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が確認できるようになっている。また、組立工程別の表示部においては、自動挿入電子部品であるIC2-3の表示部を4-6のようにAを、手挿入電子部品であるトランジスタ2-4の表示部を4-7のようにBを、後付け電子部品であるコネクタ2-5、スイッチ2-6の表示部を4-8のようにCを入れるなど、シルク印刷による部品外形の表示部の内側に文字を入れて組立工程を区別することも可能である。また、文字に限らず、記号やマークを入れて区別してもよい。また、シルク印刷の色をかえて区別してもよい。」
エ 「【図1】
」
オ 「【0035】また、発熱電子部品である抵抗2-2は、その発熱電子部品の表示部4-2の部分に実装される。この場合、発熱電子部品表示部4-2は、抵抗2-2の外形より少し大きめにしてあって、発熱電子部品以外の電子部品の表示部とは違った表示方法にしているために、抵抗2-2が実装された後にも発熱電子部品表示部4-2が目視にて確認できる。」
カ 上記ア、ウ、オの記載事項及び上記イ、エの図示内容から、以下の認定事項が導かれる。
(ア)上記ア【0001】には、「電子機器回路を構成するプリント配線板」と記載されており、この「プリント配線板」は、「電子機器回路を構成」するものであるから、「電子機器」が「プリント配線板」を備えるものであるといえる。
上記ウ【0023】には、「プリント配線板1には、非絶縁電子部品であるトランス2-1や、発熱電子部品である抵抗2-2や、自動挿入電子部品であるIC2-3や、手挿入電子部品であるトランジスタ2-4や、後付け電子部品であるコネクタ2-5、スイッチ2-6などが搭載されており」と記載されている。
そうすると、刊行物1には、「トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品が搭載されたプリント配線板1を備える電子機器」が記載されているといえる。
(イ)上記ウ【0024】には、「プリント配線板1には、電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6の表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が各々電子部品2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6が配置される位置にシルク印刷により表示されている」と記載されており、上記ウ【0025】~【0028】の記載内容(「外形の投影枠より少し大きめの線」)及び上記エ【図1】の図示内容から、「表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5」は、各電子部品の外形の投影枠より少し大きめの線を含み、この線で囲まれた領域の中に各電子部品がそれぞれ実装されることが読み取れる。
そうすると、刊行物1には、「プリント配線板1には、表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が形成されており、各表示部は、各電子部品の外形の投影枠より少し大きめの線を含み、この線で囲まれた領域の中に各電子部品がそれぞれ実装される」ことが記載されているといえる。
(ウ)上記ウ【0026】には、「抵抗2-2の表示部4-2は、この抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線とし、その約1mm外側にもう1本の線を入れて2重線のシルク印刷表示にしてある」と記載されており、「抵抗2-2の表示部4-2」は、「この抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線」と、「その約1mm外側にもう1本の線」とからなる「2重線」であり、この2重線は「シルク印刷」されたものであるといえる。
また、上記オ【0035】には、「発熱電子部品である抵抗2-2は、その発熱電子部品の表示部4-2の部分に実装される。この場合、発熱電子部品表示部4-2は、抵抗2-2の外形より少し大きめにしてあって、発熱電子部品以外の電子部品の表示部とは違った表示方法にしている」と記載されており、上記エ【図1】の図示内容も参照すると、表示部4-2は、抵抗2-2以外の電子部品とは違った表示方法で表示されており、表示部4-2の2重線で囲まれた領域の中に前記抵抗2-2が実装されるといえる。
また、上記ア【0004】には、「発熱電子部品2-2は、部品特性から高熱を発生し、その熱を放熱するために図5のように浮かして取付けている」と記載されており、上記イ【図5】の図示内容も参照すると、抵抗2-2は、プリント配線板1の表面から離れて取り付けられており、抵抗2-2とプリント配線板1の表面との間には隙間が存在することが読み取れる。
そうすると、刊行物1には、「抵抗2-2の表示部4-2は、前記抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線とからなる2重線であって、この2重線はシルク印刷されたものであり、抵抗2-2以外の電子部品とは違った表示方法で表示されており、表示部4-2の2重線で囲まれた領域の中に前記抵抗2-2が実装され、前記抵抗2-2は、前記プリント配線板1の表面から離れて取り付けられており、前記抵抗2-2と前記プリント配線板1の表面との間には隙間が存在する」ことが記載されているといえる。
(エ)上記ウ【0029】には、「電子部品...2-2...が実装されていても表示部...4-2...が確認できるようになっている」と記載されており、上記オ【0035】には、「発熱電子部品表示部4-2は、抵抗2-2の外形より少し大きめにしてあって、発熱電子部品以外の電子部品の表示部とは違った表示方法にしているために、抵抗2-2が実装された後にも発熱電子部品表示部4-2が目視にて確認できる。」と記載されているから、刊行物1には、「抵抗2-2が実装された後にも表示部4-2は目視にて確認できる」ことが記載されているといえる。
キ 上記(ア)~(エ)の認定事項を総合すれば、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる。
(a~eは刊行物発明の構成を分説するため当審で付した。)
[刊行物発明]
「a トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品が搭載されたプリント配線板1を備える電子機器において、
b 前記プリント配線板1には、表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が形成されており、各表示部は、各電子部品の外形の投影枠より少し大きめの線を含み、この線で囲まれた領域の中に各電子部品がそれぞれ実装され、
c 前記抵抗2-2の前記表示部4-2は、前記抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線とからなる2重線であって、この2重線はシルク印刷されたものであり、前記抵抗2-2以外の電子部品とは違った表示方法で表示されており、前記表示部4-2の2重線で囲まれた領域の中に前記抵抗2-2が実装され、前記抵抗2-2は、前記プリント配線板1の表面から離れて取り付けられており、前記抵抗2-2と前記プリント配線板1の表面との間には隙間が存在し、
d 前記抵抗2-2が実装された後にも前記表示部4-2は目視にて確認できる、
e 電子機器。」
(2-2)刊行物2
平成30年7月31日付けでされた補正の却下の決定において引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10―56246号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
ア 「【0019】図1に示すように、プリント配線板1には、コネクタ2-1や発光ダイオード2-2やIC2-3や金属ケースで被覆された電子部品2-4などの電子部品が搭載されており、各々の電子部品2-1、2-2、2-3、2-4はパターン3、3-1により接続され回路機能を形成している。
【0020】そして、プリント配線板1には、前記電子部品2-1、2-2、2-3、2-4の表示部4、8が、これら電子部品2-1、2-2、2-3、2-4が配置される位置に、シルク印刷により表示されている。
【0022】また、自動ハンダ付け後に後付けとなる後付け電子部品であるコネクタ2-1や発光ダイオード2-2や電子部品2-4のシルク印刷による後付け表示部8は、これらコネクタ2-1や発光ダイオード2-2や電子部品2-4の外形の投影枠より少し大きめにしてあって、さらに、その内側をシルク印刷により面状にて塗り潰してある。」
イ 「【0028】また、自動ハンダ付け後に後付けとなる後付け電子部品であるコネクタ2-1や発光ダイオード2-2や電子部品2-4は、その内側を面状にて塗り潰された後付け表示部8に実装される。この場合、後付け表示部8は、コネクタ2-1や発光ダイオード2-2や電子部品2-4の外形より少し大きめにしてあるために、コネクタ2-1や発光ダイオード2-2や電子部品2-4が実装された後にも後付け表示部8が目視にて確認できる。」
ウ 上記記載事項ア及びイにより、刊行物2には、以下の技術事項(以下、「刊行物2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[刊行物2記載事項]
「電子部品2-1、2-2、2-4が搭載されたプリント配線板1において、前記電子部品2-1、2-2、2-4の表示部8が、これら電子部品が配置される位置に、シルク印刷により表示されており、前記表示部8は、これらの電子部品の外形の投影枠より少し大きめにしてあって、さらに、その内側をシルク印刷により面状にて塗り潰してあり、これらの電子部品が実装された後にも表示部8が目視にて確認できること。」
(2-3)刊行物3
本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10―313156号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
ア 「【0014】
【発明の実施の形態】図1は、本発明によるプリント配線基板の第1の実施の形態を示す構成図で、プリント配線基板1の表面1a上に、実装する電子部品の配置位置および記号等が実装部品の標識としてシルク印刷によって表示されている。
【0015】すなわち、プリント配線基板1の表面1a上には、図で左側の位置に縦方向に長方形状の集積回路ICの標識11が付されており、その右側には図で上から順にダイオードD1の標識12、トランスT2の標識13、コンデンサC1,C2の標識14および抵抗器R2の標識15がそれぞれ付されている。各標識11~15には各実装部品の形状および部品番号が付されている。」
イ 「【0019】これらの実施の形態において、組立作業時に作業者が前述した集積回路5を取り付ける場合は、標識11に示す集積回路ICの位置にリード線5Lを挿入し、傾斜指示標識16~18で指示された方向にリード線5Lを曲げることで集積回路5をトランスT2側に傾斜して取り付けることができる。
【0020】また、傾斜指示標識16~18を集積回路5の傾斜側と反対側に表示したことにより、集積回路5の実装後においても標識16~18が集積回路5の下に隠れることがないので、目視検査において標識16~18を見ながら集積回路5の実装状態を検査することができる。」
ウ 上記記載事項ア及びイにより、刊行物3には、以下の技術事項(以下、「刊行物3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[刊行物3記載事項]
「プリント配線基板1の表面1a上に、実装する集積回路5の配置位置および記号等が標識11としてシルク印刷によって表示されており、集積回路5を取り付ける場合は、標識11に示す集積回路5の位置にリード線5Lを挿入し、傾斜指示標識16~18で指示された方向にリード線5Lを曲げることで集積回路5をトランスT2側に傾斜して取り付けること。」
(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを対比する。
なお、見出しは(a)~(e)とし、刊行物発明の分説に対応させている。
(a)刊行物発明の「トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品」は、本件補正発明の「複数の電子部品」に相当し、刊行物発明の「プリント配線板1」は、本件補正発明の「基板」に相当する。
また、刊行物発明の「プリント配線板1」には「電子部品が搭載され」ているところ、この「搭載」は、本件補正発明の「実装」に相当するから、刊行物発明の「トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品が搭載されたプリント配線板1」は、本件補正発明の「複数の電子部品を実装した基板」に相当する。
そして、本件補正発明の「遊技機」は、「複数の電子部品を実装した基板を備え」ているから、「電子機器」であるといえる。
そうすると、刊行物発明の構成aと本件補正発明の構成Aとは、
「複数の電子部品を実装した基板を備える電子機器」である点で共通する。
(b)刊行物発明の「プリント配線板1」に「形成」された「表示部」に含まれる「電子部品の外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域の中に各電子部品がそれぞれ実装され」ているから、刊行物発明の「プリント配線板1」には「各電子部品」が「実装」される「領域」がそれぞれ形成されているといえる。
そして、「トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品」のうち、「抵抗2-2」の「外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域」には、「抵抗2-2」が「実装」されるから、刊行物発明の「抵抗2-2」は、本件補正発明の「特定の電子部品」に相当し、刊行物発明の「抵抗2-2」の「外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域」は、本件補正発明の「特定実装領域」に相当する。
刊行物発明において、「トランス2-1、抵抗2-2、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6などの電子部品」のうち、「抵抗2-2」とは異なる電子部品である「トランス2-1、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6」は、本件補正発明の「特定の電子部品とは異なる電子部品」に相当するところ、これら「トランス2-1、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6」の「外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域」には、それぞれ「トランス2-1、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6」が「実装」されるから、刊行物発明の「トランス2-1、IC2-3、トランジスタ2-4、コネクタ2-5、スイッチ2-6」の「外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域」は、本件補正発明の「別実装領域」に相当する。
したがって、刊行物発明の構成bである
「前記プリント配線板1には、表示部4-1、4-2、4-3、4-4、4-5が形成されており、各表示部は、各電子部品の外形の投影枠より少し大きめの線を含み、この線で囲まれた領域の中に各電子部品がそれぞれ実装され、」は、
本件補正発明の構成Bである
「前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、」に相当する。
(c)刊行物発明の「前記抵抗2-2の前記表示部4-2は、前記抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線と、その約1mm外側にもう1本の線とからなる2重線であって、この2重線はシルク印刷されたもの」であるから、刊行物発明の「表示部4-2」は、本件補正発明の「特定印刷部」に相当する。
そして、刊行物発明の「表示部4-2」は、「前記抵抗2-2以外の電子部品とは違った表示方法で表示されて」いるから、「抵抗2-2」を示すためのものであり、本件補正発明の「前記特定の電子部品を示す特定印刷部」に相当するところ、刊行物発明の「表示部4-2」は「プリント配線板1」に形成され、本件補正発明の「特定印刷部」は、「基板の実装面」に形成された「特定実装領域」に形成されているから、両者は「基板の実装面」に形成される点で共通する。
また、刊行物発明の「表示部4-2」の「2重線」のうち「抵抗2-2」の「外形の投影枠より少し大きめの線」で「囲まれた領域」は、本件補正発明の「特定実装領域」に相当するところ(上記(b)を参照)、この「領域の中に前記抵抗2-2が実装され、前記抵抗2-2は、前記プリント配線板1の表面から離れて取り付けられており、前記抵抗2-2と前記プリント配線板1の表面との間には隙間が存在し」ているから、このことは、本件補正発明の「前記特定実装領域」には「前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され」ることに相当する。
したがって、刊行物発明の構成cと本件補正発明の構成Cとは、「前記基板の実装面には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成されると共に、前記特定実装領域には、前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され」るという点で共通する。
(d)刊行物発明の「表示部4-2」は「前記抵抗2-2が実装された後にも」「目視にて確認できる」ものであり、このことは、本件補正発明の「前記特定印刷部」は「視認可能とされる」ことに相当する。
したがって、刊行物発明の構成dと本件補正発明の構成Dとは、「前記特定印刷部は視認可能とされる」点で共通する。
(e)上記(a)で検討したように、本件補正発明の「遊技機」は、「複数の電子部品を実装した基板を備え」ているから、「電子機器」であるといえる。
そうすると、刊行物発明の構成eと本件補正発明の構成Eとは、「電子機器。」である点で共通する。
上記(a)~(e)の対比により、本件補正発明と刊行物発明とは、
「A’ 複数の電子部品を実装した基板を備える電子機器において、
B 前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
C’ 前記基板の実装面には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成されると共に、前記特定実装領域には、前記基板の実装面との間に空間を有するように前記特定の電子部品が実装され、
D’ 前記特定印刷部は視認可能とされる、
E’ 電子機器。」
である点で一致し、以下の相違点1~4で相違する。
[相違点1]
「前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成される」場所が、本件補正発明では、「特定実装領域」であるのに対して(構成C)、刊行物発明では、「特定実装領域」に相当する領域の外である点。
[相違点2]
「特定実装領域」に「実装」される「特定電子部品」が、本件補正発明では、「特定印刷部の少なくとも一部と重な」るように実装されるのに対して(構成C)、刊行物発明では、そのような特定がされていない点。
[相違点3]
「前記特定印刷部」が、本件補正発明では、「前記空間を通して」視認可能とされるのに対して(構成D)、刊行物発明では、そのような特定がされていない点。
[相違点4]
本件補正発明では、「電子機器」が「遊技機」であると特定されているのに対して(構成A及びE)、刊行物発明では、「遊技機」であるとは特定されていない点。
(4)判断
上記相違点1~4について検討する。
(4-1)相違点1について
上記刊行物2記載事項には、「電子部品2-1、2-2、2-4が搭載されたプリント配線板1において、前記電子部品2-1、2-2、2-4の表示部8が、これら電子部品が配置される位置に、シルク印刷により表示され」ることが開示されており、この「表示部8」は、本件補正発明の「特定の電子部品を示す特定印刷部」に相当する。
また、上記刊行物2記載事項では、「前記表示部8は、これらの電子部品の外形の投影枠より少し大きめにしてあって、さらに、その内側をシルク印刷により面状にて塗り潰して」あり、電子部品2-1、2-2、2-4が実装される領域においても、表示部8は存在しているといえるから、このことは、本件補正発明の「特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成される」ことに相当する。
ここで、刊行物発明及び上記刊行物2記載事項は、いずれも、プリント配線板に印刷形成され、電子部品の外形の投影枠に沿った表示部が、電子部品の実装場所を示し、実装後も目視にて確認できるものである点で共通しているところ、刊行物発明の抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線で囲まれた領域の内部に上記刊行物2記載事項を適用して、当該領域が面状に塗り潰されるように構成することにより、上記相違点1に係る本件補正発明の構成Cの「前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成される」場所が「特定実装領域」とすることは、当業者ならば容易になし得たことである。
(4-2)相違点2について
上記刊行物2記載事項の「表示部8」は、「電子部品の外形の投影枠より少し大きめにしてあって、さらに、その内側をシルク印刷により面状にて塗り潰して」あるから、上記(4-1)において検討したように、刊行物発明の抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線で囲まれた領域の内部に上記刊行物2記載事項を適用して、当該領域が面状に塗り潰されるように構成したとき、面状に塗り潰された表示部の少なくとも一部と重なるように当該抵抗2-2が実装されることは明らかである。
したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成Cの「特定実装領域」に「実装」される「特定電子部品」が、「特定印刷部の少なくとも一部と重な」るように実装されることは、上記相違点1に係る本件補正発明の構成Cの「前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成される」場所が「特定実装領域」とすることの当然の帰結にすぎず、上記(4-1)において検討したことから、当業者ならば容易になし得たものである。
(4-3)相違点3について
刊行物発明では、「前記抵抗2-2は、前記プリント配線板1の表面から離れて取り付けられており、前記抵抗2-2と前記プリント配線板1の表面との間には隙間が存在し」ているから、上記(4-1)において検討したように、刊行物発明の抵抗2-2の外形の投影枠より少し大きめの線で囲まれた領域の内部に上記刊行物2記載事項を適用して、当該領域が面状に塗り潰されるように構成したとき、面状に塗り潰された表示部は、当該抵抗2-2の実装後にも上記「隙間」を通して視認できることは明らかである。
したがって、上記相違点3に係る本件補正発明の構成Dの「前記特定印刷部」が「前記空間を通して」視認可能とされることは、上記相違点1に係る本件補正発明の構成Cの「前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成される」場所が「特定実装領域」とすることの当然の帰結にすぎず、上記(4-1)において検討したことから、当業者ならば容易になし得たものである。
また、上記相違点1~3に係る本件補正発明の構成のようにすることは、以下に述べるように、刊行物発明に上記刊行物3記載事項を適用することにより、当業者が容易に為し得たものでもある。
すなわち、上記刊行物3記載事項では、プリント配線基板1の表面1a上に集積回路5を実装するとき、シルク印刷された標識11に示す集積回路5の位置にリード線5Lを挿入し、指示された方向にリード線5Lを曲げることで集積回路5を傾斜して取り付けることが開示されており、プリント配線基板1の表面1aと集積回路5との間に、リード線5Lを曲げることができる程度の間隙が設けられているといえる。
ここで、上記刊行物3記載事項の「集積回路5」は、本件補正発明の「特定の電子部品」に相当し、上記シルク印刷された標識11は、本件補正発明の「特定の電子部品を示す特定印刷部」に相当し、この標識11により画定される領域が、本件補正発明の「特定実装領域」に相当するものであるところ、この「集積回路5」は、リード線5Lを曲げることでトランスT2側に傾斜して取り付けられることから、上記シルク印刷された標識11の少なくとも一部と重なるように実装されており、実装後もこの標識11は上記間隙を通して視認できるといえる。
そうすると、刊行物発明及び上記刊行物3記載事項は、いずれも、プリント配線板に形成された印刷部により、電子部品がプリント配線板表面と間隙を有して実装される場所が示され、実装後も目視にて確認できるものである点で共通しているところ、刊行物発明における抵抗2-2の実装領域に上記刊行物3記載事項を適用して、当該実装領域には、シルク印刷された標識が形成されようにし(相違点1)、前記シルク印刷された標識の少なくとも一部と重なるように実装して(相違点2)、プリント配線板表面との間隙を通して当該標識を視認可能とする(相違点3)ことにより、上記相違点1~3に係る本件補正発明の構成のようにすることは、当業者ならば容易になし得たことである。
(4-4)相違点4について
複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機は、例えば、特開平11-76564号公報の段落【0025】、【図5】、特開2015-204961号公報の段落【0084】~【0090】、【図14】~【図17】、特開2000-167203号公報の段落【0016】、【図3】に記載されているように本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という)であるから、上記周知技術を刊行物発明に適用して、「遊技機」として構成することにより、上記相違点4に係る本件補正発明の構成A及びEのようにすることは、当業者ならば容易になし得たことである。
ここで、審判請求書において、請求人は、
「すなわち、引用文献1に開示される発明は、各々の電子部品の外形より少し大きめの線の外側に他の電子部品とは違った表示方法で形成される表示部によって非絶縁電子部品と発熱電子部品と自動挿入電子部品と手挿入電子部品と後付け電子部品とのいずれであるかを判断したり、各々の電子部品の外形より少し大きめの線の外側に他の電子部品とは違った表示方法で形成される表示部によって非絶縁電子部品と発熱電子部品とを区別するとともに各々の電子部品の外形の表示部の内側に文字等を入れてどの組立工程にて実装すべき部品なのかを判断するものに過ぎず、電子部品が実装された後に各々の電子部品の外形の内側に形成される表示部によって各々の電子部品(特に非絶縁電子部品と発熱電子部品と)を区別することができるものではありません。
このような技術的事項が開示される引用文献1に、電子部品の外形よりも少し大きめに形成される線の内側の塗り潰しの有無によってどの組立工程にて実装すべき部品なのか(前付け電子部品であるか後付け電子部品であるか)を判断するという引用文献2に開示される技術を適用した技術は、各々の電子部品の外形より少し大きめの線の外側に形成される表示部の塗り潰しパターンを異ならせるとともに、後付け電子部品の外形より少し大きめの線の内側を塗り潰し、後付け電子部品以外の電子部品の外形より少し大きめの線の内側を塗り潰さないようにして、各々の電子部品の外形より少し大きめの線の外側に形成される表示部の塗り潰しパターンによって非絶縁電子部品と発熱電子部品と自動挿入電子部品と手挿入電子部品と後付け電子部品との各々の電子部品を区別するとともに、各々の電子部品の外形より少し大きめの線の内側の塗り潰しの有無によって前付け電子部品であるか後付け電子部品であるかを判断するというものに過ぎません。
つまり、引用文献1、2には各々の電子部品を区別したり、どの組立工程にて実装すべき部品なのかを判断することを目的として電子部品の外形の外側に形成される表示部を形成する一方、どの組立工程にて実装すべき部品なのかを判断するためだけを目的として電子部品の外形の内側のシルク印刷表示を異ならせるという技術が開示されているものに過ぎず、電子部品を実装した後に各々の電子部品を区別することを目的として電子部品の外形の内側のシルク印刷表示を異ならせるという技術については開示も示唆もされていません。
このように、引用文献1、2のいずれも電子部品の外形の内側のシルク印刷表示によって実装後の電子部品各々を区別することについて全く想定していないことは明らかであります。
なお、発熱電子部品(抵抗2-2)が後付け電子部品である場合には、抵抗2-2の外形の内側が面状に塗り潰したシルク印刷表示とされるため、抵抗2-2を実装した後にもこのシルク印刷表示を目視によって確認できるものの、当該シルク印刷表示によっては後付け電子部品であることが示されるだけであって、抵抗2-2以外の後付け電子部品についても外形の内側が面状に塗り潰されたシルク印刷表示とされるため、当該シルク印刷表示によって発熱電子部品(抵抗2-2)であることを判断することはできません。
(中略)
1.遊技機の製造元のサービスセンターの担当者が遊技ホールの店員等の係員に電話で特定の電子部品を指示する場合には、特定印刷部の特徴を遊技ホールの店員等の係員に伝えて、この特定印刷部を基板の実装面の中から探す旨を指示することができ、サービスセンターの担当者と遊技ホールの店員等の係員との意思疎通がし易くなる。
2.特定の電子部品と基板の実装面との間の空間を通して特定印刷部の略全てを視認することができるため、特定印刷部を基板の実装面の中から見つけ易くなる。
3.特定印刷部と重なるように特定の電子部品が実装されているため、複数の電子部品が近接して配置される場合であっても、特定印刷部と対応する特定の電子部品を、特定の電子部品以外の電子部品と混同することなしに容易に識別することができる。
という顕著な効果を奏します。」と主張している(下線は当審にて付したものである)。
しかしながら、上記「(2)刊行物に記載された事項」において述べたように、刊行物発明(引用文献1)では、「前記抵抗2-2が実装された後にも前記表示部4-2は目視にて確認できる」(構成d)とされており、刊行物2(引用文献2)では、「これらの電子部品が実装された後にも表示部8が目視にて確認できる」とされているから、いずれの文献でも、電子部品の実装後に印刷表示部の確認を行うことが開示されており、この確認の時点では、印刷表示部は電子部品の外形の投影枠に沿ったものとして視認されるから、その外形の投影枠がどのようなものであるかによって、電子部品の各々を区別することは可能である。
また、刊行物発明(引用文献1)では、「前記抵抗2-2の前記表示部4-2」は、「前記抵抗2-2以外の電子部品とは違った表示方法で表示されて」いるから(構成c)、「前記抵抗2-2以外の電子部品」についても外形の内側が面状に塗り潰されたシルク印刷表示となるようにしても、外形そのものが抵抗2-2とそれ以外の電子部品とで違っているのであるから、当該シルク印刷表示によって前記抵抗2-2とそれ以外の電子部品を区別することは可能である。
そして、請求人が主張する上記1.~3.の効果についても、刊行物発明、上記刊行物2記載事項又は刊行物3記載事項、及び上記周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできないから、請求人の上記主張を採用することはできない。
よって、本件補正発明は、刊行物発明、上記刊行物2記載事項又は刊行物3記載事項、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
4.むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記第2において述べたとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年12月25日に提出された手続補正書により補正された、上記第2の1.で本件補正前として記載された次のとおりのものである。
「A 複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機において、
B 前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
C 前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成され、該特定印刷部の少なくとも一部と重なるように前記特定の電子部品が実装される、
E ことを特徴とする遊技機。」
2.原査定における拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
というものである。
引用文献1.特開2012-99670号公報
引用文献2.特開2000-167203号公報
3.引用文献に記載された事項
(3-1)引用文献1
上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。
ア 「【0002】
従来から、プリント基板上にリレーやトランス等の複数の電気部品が搭載されて、それらの複数の電気部品におけるリード部がプリント配線に半田付け等により接続された実装基板が知られている。このような実装基板は、自動車の電気接続箱等の内部に収容されて内部回路を構成し、制御系の電気信号に応じて、各種電装品への給電等を制御するようになっている。」
イ 「【0017】
図1に、本発明の第一の実施形態としての実装基板10の要部の分解斜視図を示す。実装基板10は、プリント基板12に複数の電気部品としてのリレー14a,14bが装着された構造とされている。
【0018】
リレー14a,14bは、従来公知のものと略同様の構造とされており、矩形ブロック形状の本体16から、リード部としての電源端子18a,一対のコイル端子18b,18b、および一対の接点端子18c,18cが突出された構造とされている。リレー14aとリレー14bは互いに等しい外形状を有しており、本体16の形状や大きさ、各端子18の形状や長さおよび本体16からの突出位置等が、互いに等しくされている。このように、リレー14aとリレー14bは、互いに同一の全体形状を有しつつ、仕様としての抵抗値が互いに異ならされた同種電気部品とされている。
【0019】
一方のリレー14aの本体16の上面20には、部品側着色領域22が形成されている。本実施形態では、部品側着色領域22は、白色(本明細書の図中においては黒色で図示)で塗り潰された矩形のマークとされている。部品側着色領域22は、視認性を確保するために、上面20の全領域の1/10以上、より好ましくは、1/5以上の領域を占める大きさをもって形成されていることが好ましく、上面20に表示される部品の型番表示23等よりも大きく形成されていることが好ましい。部品側着色領域22は、好適には、例えば、シルク印刷等で形成される。これに対して、リレー14bには部品側着色領域22は形成されていない。これにより、部品側着色領域22の有無により、リレー14aとリレー14bを相互に区別することが可能とされており、部品側着色領域22によって、部品側識別マークが構成されている。」
ウ 「【0020】
一方、図2に示すように、プリント基板12には、電気部品の装着領域としての2つのリレー装着部24a,24aと、1つのリレー装着部24bが設けられている。これらリレー装着部24aとリレー装着部24bの共通部分においては、特に区別することなくリレー装着部24として説明する。
【0021】~【0022】
(省略)
【0023】
これに対して、リレー装着部24aには、基板側着色領域32が形成されている。本実施形態では、基板側着色領域32は、リレー装着部24a内を白色(本明細書の図中においては黒色で図示)に塗り潰した矩形のマークとされている。基板側着色領域32は、プリント基板12の表面30におけるリレー装着部24a上に、シルク印刷を反転して施すことによって形成されている。基板側着色領域32は、視認性を確保するために、リレー装着部24aの全領域の1/10以上、より好ましくは1/5以上の領域を占める大きさをもって形成されることが好ましい。本実施形態における基板側着色領域32は、リレー装着部24aの略全領域に亘る大きさをもって形成されており、平面視においてリレー14aの上面20よりも僅かに大きな矩形状とされている。このように、基板側着色領域32は、リレー14aに設けられた部品側識別マークとしての部品側着色領域22と同様に、白色のシルク印刷塗料で塗り潰された矩形状のマークとされている。これにより、本実施形態においては、基板側着色領域32によって、リレー14aの部品側識別マークに対応するリレー装着部24aの基板側識別マークが構成されている。そして、リレー装着部24bは、基板側着色領域32が形成されていないことをもって、リレー装着部24aと相互に区別することが可能とされている。
【0024】~【0025】
(省略)
【0026】
このようなリレー装着部24aの2つと、リレー装着部24bの1つが、プリント基板12上で一直線上に並んで設けられている。そして、2つのリレー装着部24a,24aに、リレー14a,14a(図1においては1つのみ図示)がそれぞれ装着されると共に、リレー装着部24bに、リレー14bが装着される。リレー14a,14bは、それぞれ、リレー装着部24a,24bに形成された各スルーホール26a~26cに対応する各端子18a~18cが挿通されて半田付けされることにより、リレー装着部24a,24bに実装される。図3に示すように、リレー14aの装着状態の平面視において、リレー装着部24aの基板側着色領域32が、リレー14aから外周側に僅かにはみ出すようになっている。」
エ 「【0027】
本実施形態における実装基板10によれば、互いに同一の外形状を有し、仕様の異なるリレー14aとリレー14bにおいて、一方のリレー14aの本体16には部品側着色領域22が形成されている。これにより、部品側着色領域22の有無により、リレー14aとリレー14bを容易に判別することが出来る。
【0028】
そして、リレー装着部24aとリレー装着部24bにおいて、リレー14aが装着されるリレー装着部24aには、リレー14aの部品側着色領域22と同様の白色で塗り潰された矩形の基板側着色領域32が形成されている。これにより、スルーホール26a~26cの形成位置が互いに等しいリレー装着部24aとリレー装着部24bの間でも、基板側着色領域32の有無によって、リレー装着部24aとリレー装着部24bを容易且つ正確に判別することが出来る。その結果、外形状が等しいリレー14aとリレー14bを、それぞれ対応するリレー装着部24aとリレー装着部24bに正しく装着することが可能となり、誤組付けを防止することが出来る。
【0029】
特に、リレー装着部24aの基板側着色領域32がシルク印刷が反転されて形成されていることにより、リレー装着部24aは、白色で塗り潰されている。これにより、リレー装着部24bとの目視による判別が容易に行なえるようにされている。それと共に、部品側着色領域22および基板側着色領域32が、何れも矩形の図形であることから、部品番号などの判読が困難なものに比べて、容易に認識することが出来る。また、基板側着色領域32をシルク印刷を反転させて形成したことによって、シルク印刷塗料の色数を増加することなく基板側識別マークの種類を増やすことが出来る。そして、リレー装着部24aの基板側着色領域32および型番表示34と、リレー装着部24bの回路表示28bが何れも同一の白色とされていることから、プリント基板12の表面30にシルク印刷されるその他の回路記号等と同時に一度のシルク印刷で効率良く形成することが出来る。
【0030】
さらに、リレー14aの装着状態で、基板側着色領域32がリレー14aからはみ出されていることから、リレー14aの装着後でも基板側着色領域32を視認することが可能であり、基板側着色領域32の有無を確認することによって、リレー14aが正規のリレー装着部24aに装着されているか否かを判別することが出来る。特に、部品側着色領域22および基板側着色領域32が白色で塗り潰された表示とされていることから、リレー14aの本体16およびプリント基板12の表面30に対するコントラストも明確であって、画像認識装置で誤組付の有無を自動で判別することも可能となる。更にまた、リレー装着部24aには型番表示34が形成されており、この型番表示34の有無により、リレー装着部24aとリレー装着部24bの判別がより容易とされている。」
オ 「【0038】
また、同種電気部品としては、一見して判別が困難な程度に外観が類似するものであれば良く、必ずしも本体の形状や大きさ、リード部の個数や本体からの突出位置が全く等しくされた同一形状のものに限定されず、例えば外周形状が等しく高さ寸法が若干異ならされた類似形状のもの等でも良い。更に、同種電気部品が前述の如きリレーに限定されないのは勿論であって、従来からプリント基板に実装される各種の電気部品が任意に採用可能である。更にまた、電気部品としては、リード部がスルーホールに挿通されるものに限定されず、リード部がプリント基板表面に形成されたランドに重ね合わされて半田付けされる表面実装型のものでも良い。」
カ 上記ア~オの記載事項を総合すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(a~eは引用発明の構成を分説するため当審で付した。)
[引用発明]
「a リレーやトランス等の複数の電気部品が搭載されたプリント基板12を内部に収納した自動車の電気接続箱等において、(上記ア【0002】、オ【0038】)
b 前記プリント基板12には、電気部品の装着領域としての2つのリレー装着部24aと、1つのリレー装着部24bが設けられており、前記2つのリレー装着部24aには、リレー14aがそれぞれ装着されると共に、前記リレー装着部24bには、リレー14bが装着され、前記リレー14aの上面20には、部品側識別マークとしての部品側着色領域22が形成されており、前記リレー14bには部品側着色領域22は形成されておらず、(上記イ【0019】、ウ【0020】、ウ【0026】)
c 前記リレー装着部24aには、前記リレー14aの前記部品側識別マークに対応する前記リレー装着部24aの基板側識別マークとして、基板側着色領域32が形成されており、
前記基板側着色領域32は、
前記リレー装着部24a内を白色に塗り潰した矩形のマークであり、シルク印刷を反転して施すことによって形成されたものであり、
前記リレー装着部24aの略全領域に亘る大きさをもって形成され、平面視において前記リレー14aの上面20よりも僅かに大きな矩形状とされ、前記リレー14aの装着状態の平面視において、前記基板側着色領域32が、前記リレー14aから外周側に僅かにはみ出すようになっている、
(上記ウ【0023】、ウ【0026】)
e 自動車の電気接続箱等。(上記ア【0002】、オ【0038】)」
(3-2)引用文献2
上記引用文献2は、上記「第2 本件補正についての補正の却下の決定」の[理由]の「3.独立特許要件」の「(4)判断」の「(4-4)相違点4について」において、複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機が周知の技術であることを示すために引用された周知例のうちの一つであり、
「複数個の電気部品27~45と、該複数個の電気部品27~45が装着された基板本体46とを備えた遊技機用プリント基板」が記載されている。
4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
なお、見出しは(a)~(e)とし、引用発明の分説に対応させている。
(a)引用発明の「リレーやトランス等の複数の電気部品」は、本願発明の「複数の電子部品」に相当し、引用発明の「プリント基板12」は、本願発明の「基板」に相当する。
また、引用発明の「プリント基板12」には「複数の電気部品が搭載され」ているところ、この「搭載」は、本願発明の「実装」に相当するから、引用発明の「リレーやトランス等の複数の電気部品が搭載されたプリント基板12」は、本願発明の「複数の電子部品を実装した基板」に相当する。
そして、本願発明の「遊技機」も、引用発明の「自動車の電気接続箱等」も、どちらも「複数の電子部品を実装した基板」を備えているから、「電子機器」であるといえる。
そうすると、引用発明の構成aと本願発明の構成Aとは、
「複数の電子部品を実装した基板を備える電子機器」である点で共通する。
(b)引用発明の「リレー14a」は、「部品側識別マークとしての部品側着色領域22が形成されて」いるから、本願発明の「特定の電子部品」に相当し、引用発明の「リレー14b」は、「部品側着色領域22は形成されて」いないことから、本願発明の「特定の電子部品とは異なる電子部品」に相当する。
また、引用発明の「リレー装着部24a」は、「前記プリント基板12」に「電気部品の装着領域として」「設けられ」、「リレー14aが装着され」るものであるから、本願発明の「特定の電子部品が実装される特定実装領域」に相当する。
同様に、引用発明の「リレー装着部24b」は、「前記プリント基板12」に「電気部品の装着領域として」「設けられ」、「リレー14bが装着され」るものであるから、本願発明の「特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域」に相当する。
したがって、引用発明の構成bである
「前記プリント基板12には、電気部品の装着領域としての2つのリレー装着部24aと、1つのリレー装着部24bが設けられており、前記2つのリレー装着部24aには、リレー14aがそれぞれ装着されると共に、前記リレー装着部24bには、リレー14bが装着され、前記リレー14aの上面20には、部品側識別マークとしての部品側着色領域22が形成されており、前記リレー14bには部品側着色領域22は形成されておらず、」は、
本願発明の構成Bである
「前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、」に相当する。
(c)引用発明の「基板側着色領域32」は、「前記リレー14aの前記部品側識別マークに対応する前記リレー装着部24aの基板側識別マーク」であり、「シルク印刷を反転して施すことによって形成されたもの」であるから、本願発明の「特定の電子部品を示す特定印刷部」に相当する。
また、引用発明の「基板側着色領域32」は、「リレー装着部24a内を白色に塗り潰した矩形のマークであり」、「前記リレー装着部24aの略全領域に亘る大きさをもって形成され、平面視において前記リレー14aの上面20よりも僅かに大きな矩形状とされ、前記リレー14aの装着状態の平面視において、前記基板側着色領域32が、前記リレー14aから外周側に僅かにはみ出すようになっている」ことから、「リレー装着部24a」において、「基板側着色領域32」の少なくとも一部と重なるように「リレー14a」が実装されることは明らかである。
したがって、引用発明の構成cである
「前記リレー装着部24aには、前記リレー14aの前記部品側識別マークに対応する前記リレー装着部24aの基板側識別マークとして、基板側着色領域32が形成されており、
前記基板側着色領域32は、
前記リレー装着部24a内を白色に塗り潰した矩形のマークであり、シルク印刷を反転して施すことによって形成されたものであり、
前記リレー装着部24aの略全領域に亘る大きさをもって形成され、平面視において前記リレー14aの上面20よりも僅かに大きな矩形状とされ、前記リレー14aの装着状態の平面視において、前記基板側着色領域32が、前記リレー14aから外周側に僅かにはみ出すようになっている、」は、
本願発明の構成Cである
「前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成され、該特定印刷部の少なくとも一部と重なるように前記特定の電子部品が実装される、」に相当する。
(e)上記(a)で検討したように、本願発明の「遊技機」も、引用発明の「自動車の電気接続箱等」も、どちらも「複数の電子部品を実装した基板」を備えているから、「電子機器」であるといえる。
そうすると、引用発明の構成eと本願発明の構成Eとは、「電子機器。」である点で共通する。
したがって、上記(a)~(e)の対比により、本願発明と引用発明とは、
「A’ 複数の電子部品を実装した基板を備える電子機器において、
B 前記基板の実装面には、前記複数の電子部品のうちの特定の電子部品が
実装される特定実装領域と、前記複数の電子部品のうちの前記特定の電子部品とは異なる電子部品が実装される別実装領域と、が形成され、
C 前記特定実装領域には、前記特定の電子部品を示す特定印刷部が形成され、該特定印刷部の少なくとも一部と重なるように前記特定の電子部品が実装される、
E’ 電子機器。」
である点で一致し、以下の相違点で相違する。
[相違点]
本願発明では、「電子機器」が「遊技機」であると特定されているのに対して(構成A及びE)、引用発明では、「遊技機」であるとは特定されていない点。
5.判断
上記相違点について検討するに、複数の電子部品を実装した基板を備える遊技機は、例えば、特開平11-76564号公報の段落【0025】、【図5】、特開2015-204961号公報の段落【0084】~【0090】、【図14】~【図17】、特開2000-167203号公報の段落【0016】、【図3】に記載されているように本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という)であるから、上記周知技術を引用発明に適用して、「遊技機」として構成することにより、上記相違点に係る本願発明の構成A及びEのようにすることは、当業者ならば容易になし得たことである。
そして、本願発明の奏する効果についても、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測可能な範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるということはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-013837