審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2018-008943

野菜・果実の水耕栽培装置

審判番号
2018-008943
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-009841外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年06月28日
審決日
2019年05月22日
公報発行日
2019年08月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A01G)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2017-  9841「野菜・果実の水耕栽培装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 8月 9日出願公開、特開2018-121527〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成29年1月23日に出願された特願2017-9841号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成29年11月28日:拒絶理由通知(11月30日発送) 平成30年 1月26日:意見書、手続補正書 平成30年 3月27日:拒絶査定(4月2日送達) 平成30年 6月28日:審判請求書、手続補正書 平成31年 2月20日:拒絶理由通知(2月21日発送) 平成31年 4月18日:意見書、手続補正書 第2 本願発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成31年4月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「植物栽培用ハウス内に設置した野菜・果実の水耕栽培装置であって、直径が10cm以上の樹脂パイプないし金属パイプからなる複数の循環パイプを連結して形成された養液の循環路と、別途設置された養液貯留槽と、この養液貯留槽と前記循環パイプとの間に配設され、前記養液貯留槽から前記循環パイプに養液を送り込む給液管とを備え、 前記循環パイプの周囲は断熱層で被覆するとともに、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした野菜・果実の水耕栽培装置において、前記植物栽培用ハウスは、前記ハウス内に設置したラジエータ内を地下水ないし水道水の13℃前後の水を循環させるとともに、ラジエータ近傍に配設したファンでラジエータの温度を吸い出すことにより室内温度を調整するようにしたことを特徴とする野菜・果実の水耕栽培装置。」 第3 拒絶の理由 平成31年2月20日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2は、概略、次のとおりのものである。 (進歩性)本件出願の請求項1~6に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1~6(請求項1については、1~4。)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2010-35540号公報 引用文献2:特開昭61-132123号公報 引用文献3:実願平4-7508号(実開平6-10722号) のCD-ROM 引用文献4:特開昭57-170116号公報 引用文献5:国際公開第2016/098414号 引用文献6:特開2014-33621号公報 第4 引用文献の記載及び引用発明 1 引用文献1 引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、審決で付した。以下同様。) (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、水槽から水をくみ上げ上部パイプから流し、水を循環させながら、育成ポット内の固定材(保水効果がある海面を使用)に、種および苗をはさみ固定し、流水式の水耕栽培ができる流水式水耕栽培機に関するものである。」 (2)「【0006】 以下、本発明の実施の形態について説明する。 (イ)三角形状の取付台(1)の周囲に階段状に育成パイプ(2)を設ける。 (ロ)育成パイプ(2)の上部に吸水口(3)を、下部に排水口(4)を設ける。 (ロ)育成パイプ(2)に水高安定弁(5)を設け、育成パイプ(2)に整列状態に複数個の育成ポット差込口(6)を設ける。 育成ポット(2)に常に水に浸かる様、水高安定弁をパイプ内部に装着する。 (ハ)取付台(1)の下部に水槽(7)を設ける。 (ニ)水槽(7)に給水管(8)を設け、給水管(8)に育成パイプ(2)を取り付ける。 (ホ)水槽(7)にポンプ(11)を取り付ける。 (ヘ)育成ポット差込口(4)に育成ポット(9)を取り付け、固定材(10)を入れる。 育成ポット(9)は、差し込み式で、常に掃除が可能である。 (ト)モーターポンプ(11)を運転させるための、電源(12)は、太陽光パネル電池、または12ボルトバッテリーを使う。 本発明は、以上の構成よりなっている。 本発明を使用するときは、育成ポット差込口(5)に育成ポット(9)を取り付け、固定材(10)を入れる。 育成ポット内の固定材(保水効果がある海面を使用)に種および苗をはさみ固定する。 水高安定弁から流水する際、落ちる勢いで空気と混じり自動的に水槽内に酸素が取り込まれる。 モーターポンプ(11)を運転させるための、電源(12)は、太陽光パネル電池、または12ボルトバッテリーを使う。 育成ライトを使えば、太陽が当たらない室内にて栽培が可能である。 電源(12)は、家庭用の電源が使える。 高温の地域、高温の季節のときでも、水槽の水が高温にならないように、水冷機を取り付ければ使える。 低温の地域、低温の季節のときでも、水槽の水が低温にならないように、加温機を取り付ければ使える。また、低温の地域、低温の季節のときでも、専用ビニールで覆い、ビニール温室のような形で使うことができる。」 (3)【図3】及び【図4】を参照すると、水槽(7)から育成パイプ(2)の上端に繋がるパイプが設けられており、該パイプの水の流れは、水槽(7)から育成パイプ(2)方向である矢印が示されており、該パイプの直径は、育成パイプ(2)の直径より小さいことが看取できる。 そして、該パイプは、水槽(7)から育成パイプ(2)方向に水が流れていることから、給水管(8)といえる。 (4)上記(1)ないし(3)からみて、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認める。 「三角形状の取付台(1)の周囲に階段状に育成パイプ(2)を設け、 育成パイプ(2)の上部に吸水口(3)を、下部に排水口(4)を設け、 育成パイプ(2)に水高安定弁(5)を設け、育成パイプ(2)に整列状態に複数個の育成ポット差込口(6)を設け、 取付台(1)の下部に水槽(7)を設け、 水槽(7)には育成パイプ(2)より小径な給水管(8)を設け、給水管(8)に育成パイプ(2)を取り付け、 水槽(7)にポンプ(11)を取り付け、 育成ポット差込口(4)に育成ポット(9)を取り付け、固定材(10)を入れ、 育成ポット内の固定材(保水効果がある海面を使用)に種および苗をはさみ固定することにより、 水槽から水をくみ上げ上部パイプから流し、水を循環させながら、流水式の水耕栽培ができ、専用ビニールで覆い、ビニール温室のような形で使うことができる、流水式水耕栽培機。」 2 引用文献2 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (1)「9 わさび栽培は外気と遮断したハウス内で行なうようにした特許請求の範囲第1項および第7項のいずれかに記載のわさびの栽培方法。」(2頁左上欄12~末行) (2)「第1図は本発明の一実施例を示す栽培装置の全体図であり、第2図は培養ユニットの拡大断面図を示す。図に於いてAは複数のパイプ1からなる培養ユニット、Bはこの培養ユニットAを連結する単一のパイプ1からなる培養ユニットである。これら培養ユニットAおよびBはプラスチックより成るパイプ1をエルボやソケット2で連結したものであり、各パイプ1上面には所定間隔をおいて一体に培養筒3を突設してパイプ1内と連通している。また各パイプ1の表面には断熱材4を被覆すると共に、培養筒3に通気孔5が開けてある。上記パイプ1内はその上部に空気層が存在するように一定水量の培養水6が流動するもので、パイプ1内にバッフル板7を嵌め込んで所定水量を得ている。 培養ユニットA、Bの各培養筒3内には筒状の培養ネット8に根茎9を入れたわさび10が収容されて培養される。この培養には2通りあって、培養ネット8に直接根茎9を入れる場合と、培養ネット8に例えばパーライトや硅藻土等の成型品よりなる充填材11を収納し、その中に根茎9を入れるものとがある。前者の場合は根茎9の下部が培養水6の流れに触れるようにし、後者の場合は培養水6から根茎9を浮かすようにする。すなわち、後者は充填材11が毛細管現象により吸い上げた培養水6を根茎9に供給している。 12は最終の培養ユニットAからの培養水6の排水をエヤーレイター13によって貯溜するチェック槽で、このチェック槽12には排水中のアルカリ度、水温、肥料濃度および植物の有機排出物による自家中毒の防止と循環中に蓄積するインヒビターをチェックするコントロール感知部14を備えていると共に、チェック槽12内に肥料タンク15からの肥料を補充する補給管16がある。17は給水栓、17aは排水栓である。 チェック槽12には排水管18が接続され、この排水管18に吸引ポンプ19および排水中のバクテリア等の菌やその他の不純物を除去するフィルター20、上記インヒビターを除去するイオン交換槽21、更に水温を所定水温に保つ熱交換器22が接続され、ここから出た排水は再び培養水6として供給管23から培養ユニットAへ還流される。なお、本発明においてはは培養水中のアルカリ度はpH6.3~7.3(バクテリア防止の場合pH4~3.5)とし、水温は12℃±1℃に設定し、また本装置を設置したハウス内温度は20~25℃の多湿条件とすることが推奨される。24は2000~3000ルックスの人工光を得る照明器具で、照明時間はタイマーによりコントロールする。」(3頁左下欄11行~4頁左下欄4行) (3)「さらに培養ユニットA、Bのパイプ1には断熱材4を被覆したので、水温の変動がほとんど生じることもない。」(5頁左上欄2~3行) (4)第1図を参照すると、供給管23と培養ユニットAとの間に、バルブが設けられていることが看取できる。 (5)上記(1)ないし(4)からみて、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認める。 「複数のプラスチックより成るパイプ1からなる培養ユニットA、及び培養ユニットAを連結する単一のパイプ1からなる培養ユニットBと、 最終の培養ユニットAからの培養水6の排水を貯留するチェック槽12と、 チェック槽12に接続された配水管18と、 配水管18に接続された吸引ポンプ19及び水温を所定水温に保つ熱交換器22と、 熱交換器から出た排水を再び培養水6として培養ユニットAへ還流させる供給管23と、を備え、 培養ユニットA、Bはプラスチックより成るパイプ1をエルボやソケット2で連結したものであり、 各パイプ1上面には所定間隔をおいて一体に培養筒3を突設してパイプ1内と連通し、 各パイプ1の表面には断熱材4を被覆すると共に、培養筒3に通気孔5が開けてあって、上記パイプ1内はその上部に空気層が存在するように一定水量の培養水6が流動するもので、パイプ1内にバッフル板7を嵌め込んで所定水量を得ており、 培養ユニットAと供給管23の間には、バルブが設けられており、 培養水6の水温は12℃±1℃に設定し、 各培養筒3内には筒状の培養ネット8に根茎9を入れたわさび10が収容されて培養されるところ、培養ネット8に直接根茎9を入れて、根茎9の下部が培養水6の流れに触れるようにした、 ハウス内に設置される、栽培装置。」 3 引用文献3 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0006】 【実施例】 以下本考案の実施例を図面に基いて説明する。図面において、図1は本考案の実施例を示す略画した側面図、図2はその要部拡大側断面図である。図1において、10は温室であり、天井部および側部をガラスあるいはビニールシート等の透明資材により形成してなり、該温室10内に冷却装置11を設置する。この冷却装置11は図2に示すようになっている。即ち、直方体状に形成されたケーシング12の前部壁12aおよび後部壁12bに吐出孔13および吸入孔14を形成し、上記ケーシング12内の前部と後部とにファン15とラジエータ17とを収容する。」 (2)「【0009】 次に上記実施例の作動態様について説明する。ラジエータ17の水管18に水道水を流通させるとともにファン15を起動させると、ケーシング12内の空気が吐出孔13から温室10内に吐出され、負圧になったケーシング12内に温室10内の空気がケーシング12後部の吸入孔14から吸入されてラジエータ17を流通し、この部で熱交換されて冷却および除湿された後、上記ファン15によって吐出孔13から温室10内に吐出される。そして上記ラジエータ17部に付着した水滴は下方に流下して水受け19aに溜った後、ホース19b内を流通して温室10の外部に排出される。この場合、上記吐出孔13から吐出される空気はファン15により勢い良く吐出されるので、温室10内の空気が強く撹拌され、該温室10内の全域の空気が平均的に除湿および冷却されることになる。」 4 引用文献4 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (1)「本発明においては、前記した夏期栽培に関連して、かかる熱交換機を用い地下水を効率良く温室冷房のために利用するもので、以下、本発明の実施例を添付図面を参照して説明する。 第2図は、本発明の方法と装置を断面で示す図である。第1の循環ポンプP1で井戸11から水を汲上げそれを配管Cを通して熱交換機Aに送る。熱交換機Aは、冷房すべき温室Bの空気を矢印Iで示す如く取入れ、空気排出口2から矢印IIで示す如くに排出する。」(2頁左上欄18行~右上欄7行) (2)「地下水は一般に夏期においては17℃から18℃の温度であるので、この対向流の間に空気はほぼ十分に冷却除湿されて空気排出口12から温室D内に放出され、温室を冷房する。温室Dはかくして、この第1段階の冷熱熱交換によって冷房される。この段階で、地下水は温室内では顕熱として冷却源となる。」(2頁右上欄17行~左下欄3行) 5 引用文献5 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 (1)「[0071] 栽培液Rの供給経路を構成する部材は、保温性の部材で構成することが好ましい。具体的には、培地部2、栽培液槽8及び貯留槽9は、例えば断熱シートで包むことにより断熱する。また、送液部10は、例えば断熱シートで挟み、供給管15は、例えば断熱材を巻いて断熱する。これらの部材を断熱することにより、栽培液槽8から培地部2までの供給経路における栽培液Rの温度変化を抑制でき、培地部2の温度調節がし易くなると共に、栽培液Rの温度調節のためのランニングコストを低減できる。なお、上記断熱シート及び断熱材としては、発泡プラスチックが低コストで好ましい。」 (2)「[0136] 上記実施形態では、温度調節機構としてヒーターを用い栽培液を加熱する構成について説明したが、栽培液の温度を調節できるものであればよく、温度調節機構としてヒーター以外のものを用いてもよい。例えば温度調節機構として熱交換器を用いることにより、冷却により栽培液の温度を迅速に低下させるように調節することができる。ここで、従来の冷房による温度調節は、細霧冷房(ミスト冷却)が用いられ、湿度の変動を伴うため過湿による病害発生が起き易かった。これに対し、当該栽培装置は、湿度の変動を伴わずに培地部の温度を低下させることができるので、培地部の温度を低下させる際の過湿による病害発生が起き難い。このように栽培液の温度を低下させるように調節することで、培地部の温度を低下させることができ、作物に適した地温よりも高い地温を有する土地でもその作物を栽培することができる。」 6 引用文献6 引用文献6には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 植物体の栽培を行うための水耕栽培用プレートであって、 該水耕栽培用プレートは、 前記植物体が植栽されるキャリアを嵌合支持するためキャリア配設孔を少なくとも1個有するキャリア支持体と、 該キャリア支持体の上面を被覆して、前記キャリア配設孔の上面を被覆するよう覆設される遮光材料で構成された表面被覆材と、を少なくとも備えて構成されており、 前記表面被覆材を前記キャリア支持体に覆設した際、前記表面被覆材において前記キャリア配設孔の直上に位置する部位には、第1スリットが切り込み形成されていることを特徴とする水耕栽培用プレート。」 第5 当審の判断 1 引用発明1を主引用発明として検討 (1)対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「専用ビニールで覆」う「ビニール温室」、「流水式水耕栽培機」、「水」、「水槽(7)」、「給水管(8)」、「育成ポット差込口(6)」は、その構成及び機能等からみて、本願発明の「植物栽培用ハウス」、「野菜・果実の水耕栽培装置」、「養液」、「養液貯留槽」、「給液管」、「植付け用の孔」にそれぞれ相当する。 また、引用発明1の「育成パイプ(2)」は、本願発明の「循環パイプ」と「循環路」に相当する。 引用発明1の「専用ビニールで覆い、ビニール温室のような形で使うことができる、流水式水耕栽培機」は、本願発明の「植物栽培用ハウス内に設置した野菜・果実の水耕栽培装置」に相当する。 引用発明1の「水槽から水をくみ上げ上部パイプから流し、水を循環させ」る、「三角形状の取付台(1)の周囲に階段状に」「設け」た「育成パイプ(2)」は、本願発明の「複数の循環パイプを連結して形成された養液の循環路」に相当する。 引用発明1の「水槽(7)に」「設け、」「育成パイプ(2)」に「取り付け」、「水槽から水をくみ上げ上部パイプから流」す、「育成パイプ(2)より小径な給水管(8)」は、本願発明の「養液貯留槽と前記循環パイプとの間に配設され、前記養液貯留槽から前記循環パイプに養液を送り込む給液管」に相当する。 引用発明1の「流水式水耕栽培機」において、「種及び苗」は、「野菜あるいは果実の種及び苗」であることは自明であるから、引用発明1の「育成パイプ(2)に整列状態に複数個の育成ポット差込口(6)を設け、」「育成ポット差込口(4)に育成ポット(9)を取り付け、固定材(10)を入れ、育成ポット内の固定材(保水効果がある海面を使用)に種および苗をはさみ固定すること」と、本願発明の「前記循環パイプの周囲は断熱層で被覆するとともに、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした」こととは、「循環パイプの上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした」ことで共通する。 引用発明1の「水槽(7)」は、「育成パイプ(2)」とは別途設置されていることは明らかである。 よって、本願発明と引用発明1とは、 「植物栽培用ハウス内に設置した野菜・果実の水耕栽培装置であって、複数の循環パイプを連結して形成された養液の循環路と、別途設置された養液貯留槽と、この養液貯留槽と前記循環パイプとの間に配設され、前記養液貯留槽から前記循環パイプに養液を送り込む給液管とを備え、 循環パイプの上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした野菜・果実の水耕栽培装置。」で一致するものの、以下の3点で相違する。 〔相違点1〕本願発明の「循環パイプ」は、「直径が10cm以上の樹脂パイプないし金属パイプからなる」のに対し、引用発明1の「育成パイプ(2)」は、そのような特定がない点。 〔相違点2〕本願発明は、循環パイプの周囲を断熱材で被覆するとともに、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けたのに対し、引用発明1は、育成パイプ(2)の周囲を断熱材で被覆したとの特定がなく、「育成ポット差込口(6)」も、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に開けたものでもない点。 〔相違点3〕本願発明は、「前記ハウス内に設置したラジエータ内を地下水ないし水道水の13℃前後の水を循環させるとともに、ラジエータ近傍に配設したファンでラジエータの温度を吸い出すことにより室内温度を調整するようにした」のに対し、引用発明1は、そのような特定がない点。 (2)判断 上記相違点1ないし3について検討する。 ア 相違点1 農業用のパイプとして、樹脂製や金属製のものは、一般的に用いられているものであって、またパイプの直径は、栽培する植物の大きさ等を勘案して適宜選択し得る設計上の事項に過ぎないから、引用発明1の育成パイプ(2)を、直径が10cm以上の樹脂製ないし金属製とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点2 本願発明は、循環パイプの周囲を断熱材で被覆することによって、「前記循環パイプ13の周囲を発泡スチロールやポリエチレン発泡体、ポリウレタン等からなる断熱層13aで被覆してあり、したがって管内の温度が安定すると同時に、養液温度を定温にすることができる。」(本願明細書の段落【0020】)との作用効果を奏するものであるところ、引用文献1に、「高温の地域、高温の季節のときでも、水槽の水が高温にならないように、水冷機を取り付ければ使える。低温の地域、低温の季節のときでも、水槽の水が低温にならないように、加温機を取り付ければ使える。」(上記「第4 1(2)」)と記載されているように、引用発明1は水の温度を適温に維持することが課題と認識されており、そして、パイプの周囲を断熱材で被覆することにより、「さらに培養ユニットA、Bのパイプ1には断熱材4を被覆したので、水温の変動がほとんど生じることもない。」(上記「第4 2(3)」)ものとすることは、引用文献2に記載されているように、本願出願前に周知の技術であるから、引用発明1の育成パイプ(2)の周囲を断熱材で被覆することは、当業者が適宜なし得る事項に過ぎず、そして、該断熱材の被覆によって、育成パイプ(2)は、積層構造体となって、育成ポット差込口(6)は、本願発明と同様に、積層構造物の上部に開けたものとなる。 したがって、引用発明1と上記周知技術に基いて、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点3 引用文献3に記載されているように、温室内の空気を冷却するために、ケーシングの前部と後部にファンとラジエータを収容した冷却装置を設け、ラジエータを流通して冷却された空気をファンで吐出すること、つまり相違点3における「前記ハウス内に設置したラジエータ内を水を循環させるとともに、ラジエータ近傍に配設したファンでラジエータの温度を吸い出すことにより室内温度を調整するようにした」ことは、本願出願前に周知又は公知の技術であって、また、温室内の空気を冷却する際に、引用文献3には、水道水を用いること、引用文献4には、地下水を用いることがそれぞれ記載されている。 そして、栽培する植物に適する温度を考慮して、温室内の室温を適温に維持することは、温室設置者が常に配慮すべき事項であるから、引用発明1のビニール温室内に、引用文献3に記載される上記周知または公知の技術を適用することは、当業者が容易になし得ることである。 また、水道水や地下水の温度は、その採水地点の水温に依存し、また、温室内をどの程度の室温とするかによって、適宜選択し得ることであるから、上記周知または公知の技術を引用発明1に適用する際に、13℃前後の地下水ないし水道水とすることは、適宜なし得たことである。 よって、引用発明1及び周知技術に基いて、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 2 引用発明2を主引用発明として検討 (1)対比 本願発明と引用発明2を対比する。 引用発明2の「ハウス」、「栽培装置」、「複数のプラスチックより成るパイプ1」、「培養水6」、「培養ユニットA」と「培養ユニットB」、「チェック槽12」、「供給管23」、「断熱材4」、「培養筒3」は、その構成及び機能等からみて、本願発明の「植物栽培用ハウス」、「野菜・果実の水耕栽培装置」、「樹脂パイプ」「からなる複数の循環パイプ」、「養液」、「循環路」、「養液貯留槽」、「給液管」、「断熱層」、「植付け用の孔」にそれぞれ相当する。 引用発明2の「ハウス内に設置される、栽培装置」は、本願発明の「植物栽培用ハウス内に設置した野菜・果実の水耕栽培装置」に相当する。 引用発明2の「複数のプラスチックより成るパイプ1からなる培養ユニットA、及び培養ユニットAを連結する単一のパイプ1からなる培養ユニットB」は、本願発明の「複数の循環パイプを連結して形成された養液の循環路」に相当する。 引用発明2の「チェック槽12に接続された配水管18と、配水管18に接続された吸引ポンプ19及び水温を所定水温に保つ熱交換器22と、熱交換器から出た排水を再び培養水6として培養ユニットAへ還流させる供給管23」は、本願発明の「養液貯留槽と前記循環パイプとの間に配設され、前記養液貯留槽から前記循環パイプに養液を送り込む給液管」に相当する。 引用発明2の「各パイプ1の表面には断熱材4を被覆すると共に、」「各パイプ1上面には所定間隔をおいて一体に培養筒3を突設してパイプ1内と連通し、」「各培養筒3内には筒状の培養ネット8に根茎9を入れたわさび10が収容されて培養される」ことは、本願発明の「前記循環パイプの周囲は断熱層で被覆するとともに、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした」ことに相当する。 引用発明2の「チェック槽」は、培養ユニットA及びBとは、別途設置されていることは明らかである。 よって、本願発明と引用発明2とは、 「植物栽培用ハウス内に設置した野菜・果実の水耕栽培装置であって、樹脂パイプからなる複数の循環パイプを連結して形成された養液の循環路と、別途設置された養液貯留槽と、この養液貯留槽と前記循環パイプとの間に配設され、前記養液貯留槽から前記循環パイプに養液を送り込む給液管とを備え、 前記循環パイプの周囲は断熱層で被覆するとともに、該周囲を断熱層で被覆した循環パイプからなる積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした野菜・果実の水耕栽培装置。」で一致するものの、以下の2点で相違している。 〔相違点A〕本願発明の「循環パイプ」は、「直径が10cm以上の樹脂パイプないし金属パイプからなる」のに対し、引用発明2の「パイプ1」は、プラスチックからなるが、その直径の特定がない点。 〔相違点B〕本願発明は、「前記ハウス内に設置したラジエータ内を地下水ないし水道水の13℃前後の水を循環させるとともに、ラジエータ近傍に配設したファンでラジエータの温度を吸い出すことにより室内温度を調整するようにした」のに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。 (2)判断 上記相違点A及びBについて検討する。 ア 相違点A 農業用のパイプとして、樹脂製や金属製のものは、一般的に用いられているものであって、またパイプの直径は、栽培する植物の大きさ等を勘案して適宜選択し得る設計上の事項に過ぎないから、引用発明2のパイプ1を、直径が10cm以上の樹脂製ないし金属製とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 イ 相違点B 引用文献3に記載されているように、温室内の空気を冷却するために、ケーシングの前部と後部にファンとラジエータを収容した冷却装置を設け、ラジエータを流通して冷却された空気をファンで吐出すること、つまり相違点Bにおける「前記ハウス内に設置したラジエータ内を水を循環させるとともに、ラジエータ近傍に配設したファンでラジエータの温度を吸い出すことにより室内温度を調整するようにした」ことは、本願出願前に周知又は公知の技術であって、また、温室内の空気を冷却する際に、引用文献3には、水道水を用いること、引用文献4には、地下水を用いることがそれぞれ記載されている。 そして、栽培する植物に適する温度を考慮して、温室内の室温を適温に維持することは、温室設置者が常に配慮すべき事項であるから、引用発明2のハウス内に、引用文献3に記載される上記周知または公知の技術を適用することは、当業者が容易になし得ることである。 また、水道水や地下水の温度は、その採水地点の水温に依存し、また、温室内をどの程度の室温とするかによって、適宜選択し得ることであるから、上記周知または公知の技術を引用発明2に適用する際に、13℃前後の地下水ないし水道水とすることは、適宜なし得たことである。 よって、引用発明2及び周知技術に基いて、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 3 請求人の主張について 平成31年4月18日付け意見書における請求人の主張について検討する。 (1)まず、請求人は、 「引用発明1の「育成ポット差込口(6)」が「植付け用の孔」に該当する都のご認定は全くの誤りといわざるを得ません。なぜなら、「育成ポット差込口(6)」には「育成ポット(9)」がはめ込まれるのであって、「育成ポット(9)」の取付けが必須である「育成ポット差込口(6)」を単独で野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした「植付け用の孔」と比定することはあってはならないことであると思量します。 また、引用発明2の「培養筒3」はその構成及び機能等からみて、本願発明の請求項1の「植付け用の孔」に相当するとのご認定にも、到底承服することができません。なぜなら、前記「培養筒3」内には「培養ネット8」が保持されているのであって、引用発明2の「培養筒3」は、単独で野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした「植付け用の孔」に相当するとのご認定には到底承服することができません。」と主張している。 しかしながら、本願発明において、「積層構造物の上部に適宜間隔で循環パイプ内部に通ずる植付け用の孔を開けて野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにした」と特定されているように、「植付け用孔」は、循環パイプ内部に通じ、野菜あるいは果実の苗を植え付けることができればよいものであって、野菜あるいは果実の苗をどの様な態様で植え付けるのかの限定はなされていないので、請求人が主張するように、野菜あるいは果実の苗を単独で植え付ける態様の孔であるとの限定的なものと解することはできない。 また、発明の詳細な説明をみても、「植付け用孔」は、野菜あるいは果実の苗を単独で植え付ける態様の孔と限定的に解するような記載はなく、特に、段落【0027】には、「図3はこの実施例の野菜・果実の水耕栽培装置11における前記スリット付きの可撓性のあるシートないしマット18を示すものであり、その中心位置から放射状に複数のスリット19が配設してある。20は外周に形成した段差であり、前記植付け用の植付け孔17の周面に落とし込んで保持するようになっている。育成時には植え付けた野菜や果実の根が太って簡単に外れることはないが、必要に応じて接着剤等の脱落防止手段を採用してもよい。植え付けた野菜や果実の根が太っても、この可撓性のあるシートないしマット18のスリット19が開閉することによって無理なく対応させることができるのである。」と記載されているように、その外周に形成した段差20を、植付け用の植付け孔17の周面に落とし込んで保持される、スリット付きの可撓性のあるシートないしマット18を介して苗を植え付けることも、本願発明の実施例として示されていることから、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、本願発明の「植付け用孔」は、苗を単独で植え付ける態様の孔とは解することはできず、請求人に主張は採用することができない。 (2)次に、 「B)また前記循環パイプの周囲は断熱層で被覆するとともに、該積層構造物の上部に適宜間隔で植付け用の植付け孔を開け、該植付け孔に取り付けたスリット付きの可撓性のあるシートないしマットに野菜あるいは果実の苗を植え付けるようにしたものであり、例えばイチゴであれば冬季に植物栽培用ハウスなしの屋外でも栽培することができ、また根が太っても可撓性のあるシートないしマットのスリットによって簡単に対応することができる。 という非常に顕著な作用効果を奏するものであります。」とも主張している。 しかしながら、本願発明の「植付け用の孔」は、「スリット付きの可撓性のシートあるいはマット18に野菜あるいは果実の苗を植え付ける」との構成を備えていないので、請求人が主張する「根が太っても可撓性のあるシートないしマットのスリットによって簡単に対応することができる」との作用効果は、本願発明の構成に基づくものではないから、請求人の主張は採用できない。 なお、該シートあるいはマット18に関して、平成31年4月18日付け手続補正書により特許請求の範囲の請求項6は、「前記断熱層が、スリット付きの可撓性のあるシートないしマットであり、かつスリットが中心位置から放射状に切り込まれてなる請求項1ないし5のいずれかに記載の野菜・果実の水耕栽培装置。」と補正された。 しかしながら、断熱層が、可撓性のシートないしマットであること、かつスリットが、(断熱層である)該可撓性のシートないしマットに設けられていることは、出願当初の明細書、特許請求の範囲または図面には記載されておらず、示唆する記載もないことから、補正後の「前記断熱層が、スリット付きの可撓性のあるシートないしマット」は、新規事項の追加にあたることを付言しておく。 4 当審の判断のまとめ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1または引用発明2、及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用文献1ないし4に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、その他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2018-008943

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決2件(ユニテック株式会社)
  • 2016-018750拒絶査定不服審判 / 2017-10-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)植物栽培用ハウスの冷暖房装置
    同じ当事者: ユニテック株式会社
  • 2016-018749拒絶査定不服審判 / 2017-10-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)植物栽培用ハウスの冷暖房装置
    同じ当事者: ユニテック株式会社
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-020690拒絶査定不服審判 / 2026-06-25 / 請求不成立植物栽培用プール
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-005069拒絶査定不服審判 / 2025-09-22 / 請求不成立包装済み葉野菜及びその製造方法並びに葉野菜の生産方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-006388拒絶査定不服審判 / 2023-04-13 / 請求不成立地這い植物の生育用シート及びその使用方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2021-009251拒絶査定不服審判 / 2022-10-13 / 請求不成立農業用温室
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2019-006874拒絶査定不服審判 / 2020-03-16 / 請求不成立農業用生分解性マルチフィルム及び使用済農業用生分解性マルチフィルムを圃場の土壌に…
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)186件(121・A01G)
  • 2023-021602拒絶査定不服審判 / 2026-07-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)植物の成長を改善するための緑色微細藻類の使用
    共通の審決分類: 121・A01G
  • 2024-020690拒絶査定不服審判 / 2026-06-25 / 請求不成立植物栽培用プール
    共通の審決分類: 121・A01G
  • 2023-014745拒絶査定不服審判 / 2026-05-14 / 請求不成立農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム
    共通の審決分類: 121・A01G
  • 2024-020581拒絶査定不服審判 / 2026-04-20 / 原査定取消(特許/登録すべき)液状資材供給方法
    共通の審決分類: 121・A01G
  • 2024-004635拒絶査定不服審判 / 2026-03-31 / 原査定取消(特許/登録すべき)植物賦活剤
    共通の審決分類: 121・A01G

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存