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特許拒絶査定不服審判

2023-014745

農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム

審判番号
2023-014745
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-092618
請求日
2023年09月01日
審決日
2026年05月14日
公報発行日
2026年07月31日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】タキロンシーアイ株式会社
  • 【請求人代理人】弁理士法人前田特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 居島 一仁
  • 審判官 立澤 正樹
  • 審判官 石川 信也
分類
P18 .113-WZ (A01G) / P18 .121-WZ (A01G) / P18 .537-WZ (A01G)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019- 92618「農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月19日出願公開、特開2020-184955〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年5月16日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和4年 8月22日付け:拒絶理由通知 同年12月23日 :意見書・手続補正書の提出 令和5年 1月26日付け:拒絶理由通知 同年 3月24日 :意見書・手続補正書の提出 同年 5月24日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。) (同年 6月 6日 :原査定の謄本の送達) 同年 9月 1日 :審判請求書・手続補正書の提出 令和6年 8月23日付け:拒絶理由通知 同年10月 9日 :意見書・手続補正書の提出 令和7年11月21日付け:拒絶理由通知 令和8年 1月23日 :意見書・手続補正書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1~4に係る発明は、令和8年1月23日受付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 (本願発明) 「 【請求項1】 主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)を含む樹脂材料からなる1層で構成された外層と、 主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)を含む樹脂材料からなる1層で構成された内層と、 前記外層と前記内層との間に設けられ、1層以上で構成された中間層(ただし、バルビツール酸誘導体である縮合生成物の光質変換剤が含有されている中間層を除く)とを備え、 前記中間層は、3層以上で構成されており、主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え、且つ、樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備えており、 前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の密度は、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)及び前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)の密度よりも小さく、 前記中間層を構成する各層の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の含有量が20質量部以上70質量部以下であり、 前記外層および前記内層の各厚さは、フィルム全体の厚さの10~40%であり、前記中間層の厚さは、フィルム全体の厚さの10~80%であることを特徴とする農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。」 第3 当審において通知した拒絶理由通知の概要 当審で通知した令和7年11月21日付け拒絶理由は、次の概要に記した理由を含むものである。 理由1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2001-62972号公報 第4 引用文献に記載された事項及び引用発明について 1 引用文献に記載された事項 当審で令和7年11月21日付けで通知した拒絶理由において、引用した本願の出願日前の平成13年3月13日に公開された特開2001-62972号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、施設園芸用フィルムに関する。詳しくは、施設園芸用フィルムを施設園芸ハウスに張る(以下「展張」という)際に、予め一旦一枚のフィルムとする(以下「開反」という)必要がなく、展張作業性に優れた、かつ、時間が経過してもフィルム折り目部の強度が低下しにくい施設園芸用フィルムに関する。」 (2)「【0012】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の施設園芸用フィルムは、インフレーション法により成形された筒状フィルムに長さ方向に沿ってスリット部を設け、前記スリット部から前記筒状フィルムを開き施設園芸ハウスに展張する際に、前記筒状フィルムの内皮が施設園芸ハウス内面側に位置する内層(A)であり、前記筒状フィルムの外皮が施設園芸ハウス外面側に位置する外層(C)であり、かつ、内層(A)と外層(C)の間に中間層(B)を有する3層以上の多層構造の施設園芸用フィルムである。なお、本発明において組成物の「主成分」とは、組成物に50重量%以上含まれた成分を指す。 【0013】本発明の施設園芸用フィルムにおいて、筒状フィルムの外皮である外層(C)を構成する組成物の主成分は、エチレン-α-オレフィン共重合体(c1)もしくは密度(dc2)0.91~0.93g/cm3のエチレン単独重合体(c2)である。前記エチレン-α-オレフィン共重合体(c1)は、エチレンと炭素原子数が3~20のα-オレフィンとのランダム共重合体であり、チーグラー触媒等のマルチサイト触媒やメタロセン触媒等のシングルサイト触媒を用いて重合され、その密度(dc1)は0.88~0.96g/cm3、好ましくは0.89~0.93g/cm3である。密度(dc1)が0.88g/cm3の未満の場合にはエチレン-α-オレフィン共重合体(c1)の融点が低下し太陽光線の照射により施設園芸用フィルム同志が融着し易くなる傾向がある。また、密度(dc1)が0.96g/cm3を越える場合には施設園芸用フィルムの柔軟性が低下し展張時や回収時の作業性が低下するおそれがある。」 (3)「【0032】本発明の施設園芸用フィルムにおいて、筒状フィルムの内皮である内層(A)を構成する組成物の主成分としては、公知の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂をはじめとして、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられるが、中でも、筒状フィルムの外層(C)を構成する組成物の主成分であるエチレン-α-オレフィン共重合体もしくはエチレン単独重合体と共押出によりインフレーション成形ができ、かつ、得られる施設園芸用フィルムの防曇性などの性能が良好であるため、酢酸ビニル含有量が2~15重量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(a)が好適に用いられる。前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(a)中の酢酸ビニル含有量が2重量%未満であると、得られる施設園芸用フィルムの防曇性特に低温時の発現効果が得られにくく、防曇持続性も低下する傾向がある。また、前記酢酸ビニル含有量が15重量%を越える場合には、フィルム同志が密着したり、屋外に放置した際に太陽光線により蓄熱し、フィルム同志が融着するおそれがある。」 (4)「【0042】本発明の施設園芸用フィルムにおいて、筒状フィルムの中間層(B)を構成する組成物の主成分としては、公知の高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂をはじめとして、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられるが、中でも、得られる施設園芸用フィルムの強靱性や表面平滑性、押出機モーター負荷の上昇を防ぎ押出温度を低く抑えるフィルムの成形性の観点から、シングルサイト触媒を用いて重合された、密度(db)が0.85~0.93g/cm3で、 a)メルトフロー比I10/I2≧5.63 b)分子量分布Mw/Mn≦(I10/I2)-4.63 c)グロスメルトフラクチャーが起こり始める時の臨界せん断応力γ γ>4×106dyne/cm2 であるエチレン-α-オレフィン共重合体(b)が好適に用いられる。なお、エチレン-α-オレフィン共重合体(b)はエチレン-α-オレフィン共重合体(c12)と同一であってもよい。 【0043】本発明の施設園芸用フィルムにおいては、筒状フィルムの外層(C)、内層(A)および中間層(B)を構成する組成物に、必要に応じて、柔軟性を向上させるためにシングルサイト触媒や公知のマルチサイト触媒で重合されたエチレン-ジエン弾性共重合体、エチレンープロピレン弾性共重合体やスチレン-ブタジエン系弾性共重合体等の弾性共重合体を添加することができ、更に、通常の施設園芸用フィルムに用いられている公知の、無機質もしくは有機質の保温剤、防曇剤、ヒンダードアミン系耐候剤、紫外線吸収剤、防霧剤(フッ素系界面活性剤)、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、熱安定剤、抗菌剤、色素・着色剤などを添加することができる。また、筒状フィルムの内面に、コーンスターチや馬鈴薯等の澱粉を付着させ、フィルム同志のブロッキングを更に緩和させることができる。 【0044】本発明の施設園芸用フィルムの厚みは、使用する場所や耐用年数等により異なるが、一般的に0.05~0.3mm程度のものが好適に用いられる。内層の厚みと外層の厚みは特に限定されるものではないが、全層厚みの5~50%の範囲が好適に用いられる。なお、本発明の施設園芸用フィルムの中間層は、1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよい。また、本発明の施設園芸用フィルムは、透明でも、梨地でも、半梨地であってもいずれでも良く、施設園芸用のハウスやトンネル等の被覆用以外のマルチング用、袋掛け用等の用途に使用することもできる。」 (5)「【0051】実施例および比較例において用いられた熱可塑性樹脂を以下に示す。 「1」(当審注:「1」は、丸に数字の1。以下同様。)エリート 5400 ダウケミカルジャパン(株)製 ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・MFR;1.0g/10min.、密度;0.916g/cm3 「2」アフィニティ PF1140 ダウケミカルジャパン(株)製 ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・MFR;1.6g/10min.、密度;0.895g/cm3 「3」ユメリット 1520F 宇部興産(株)製 ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・MFR;2.0g/10min.、密度;0.913g/cm3 「4」ユメリット 0540F 宇部興産(株)製 ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・MFR;4.0g/10min.、密度;0.904g/cm3 「5」NUC3270 日本ユニカー(株)製 ・エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ヒ゛ニル含有量7.5%)(EVA) ・MFR;2.3g/10min.、密度;0.925g/cm3 「6」ウルトラセン 630 東ソー(株)製 ・エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ヒ゛ニル含有量15%)(EVA) ・MFR;1.5g/10min.、密度;0.936g/cm3 「7」ニポロン-L FR151A 東ソー(株)製 ・マルチサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(M-LLDPE) ・MFR;0.9g/10min.、密度;0.924g/cm3 「8」NUC8505 日本ユニカー(株)製 ・高圧法低密度ポリエチレン(LDPE) ・MFR0.8g/10min.、密度0.923g/cm3」 (6)「【0058】実施例1~8、比較例1~6 各3構造筒状フィルムの配合例と評価結果を表1~2に示す。なお、表中の実施例の内層A、中間層B、外層Cは、それぞれ3層に積層された筒状フィルムの内皮、中間層、外皮を指し、比較例の内層A、中間層B、外層Cは、それぞれ3層に積層された筒状フィルムの外皮、中間層、内皮を指す。また、引張特性の変化の押出温度は成形試験における最適押出温度である。」 (7)「【0065】 【表1】 [図:0001436447000001.jpg] 」 (8) 上記「(7)」の【表1】の「実施例6」から、 「外皮」「外層C」ベース樹脂名「3」1520F ベース樹脂密度0.913 「中間層」「中間層B」ベース樹脂名「4」0540F ベース樹脂密度0.913 「8」NUC8505 20wt% 「内皮」「内層A」ベース樹脂名「3」1520F ベース樹脂密度0.913 であることが看取される。 ここで、「中間層B」のベース樹脂「「4」0540F」のベース樹脂密度は、上記「(5)」の記載から、「0.904」であり、【表1】で「ベース樹脂名「4」0540F」「ベース樹脂密度0.913」との記載は、「ベース樹脂密度0.904」の誤記であると認められる。 2 引用発明 上記1からみて、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。 <引用発明> 「施設園芸用フィルムであって(【0001】)、 施設園芸用フィルムは、インフレーション法により成形された筒状フィルムに長さ方向に沿ってスリット部を設け、前記スリット部から前記筒状フィルムを開き施設園芸ハウスに展張する際に、前記筒状フィルムの内皮が施設園芸ハウス内面側に位置する内層(A)であり、前記筒状フィルムの外皮が施設園芸ハウス外面側に位置する外層(C)であり、かつ、内層(A)と外層(C)の間に中間層(B)を有する3層以上の多層構造の施設園芸用フィルムであり(【0012】)、 筒状フィルムの外皮である外層(C)を構成する組成物の主成分は、エチレン-α-オレフィン共重合体(c1)であり、前記エチレン-α-オレフィン共重合体(c1)は、その密度(dc1)は0.88~0.96g/cm3であり(【0013】)、 筒状フィルムの内皮である内層(A)を構成する組成物の主成分としては、低密度ポリエチレンが挙げられ(【0032】)、 筒状フィルムの中間層(B)を構成する組成物の主成分としては、低密度ポリエチレンが挙げられ(【0042】)、 内層の厚みと外層の厚みは、全層厚みの5~50%の範囲が好適に用いられ(【0044】)、 中間層は、1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよく(【0044】)、 熱可塑性樹脂として、 「3」ユメリット 1520F ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・密度;0.913g/cm3 「4」ユメリット 0540F ・シングルサイト触媒系エチレン-α-オレフィン共重合体樹脂(S-LLDPE) ・密度;0.904g/cm3 「8」NUC8505 ・高圧法低密度ポリエチレン(LDPE) ・密度0.923g/cm3 が用いられ(【0051】)、 各3構造筒状フィルムの配合例で、内層A、中間層B、外層Cは、それぞれ3層に積層された筒状フィルムの内皮、中間層、外皮を指し、比較例の内層A、中間層B、外層Cは、それぞれ3層に積層された筒状フィルムの外皮、中間層、内皮を指し(【0058】)、 「実施例6」として、 「外皮」「外層C」ベース樹脂名「3」1520F ベース樹脂密度0.913 「中間層」「中間層B」ベース樹脂名「4」0540F ベース樹脂密度0.904 「8」NUC8505 20wt% 「内皮」「内層A」ベース樹脂名「3」1520F ベース樹脂密度0.913 である(【表1】及び上記(8))、 施設園芸用フィルム。」 第5 対比・検討・判断 1 本願発明について (1)本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「施設園芸用フィルム」は、「ポリエチレン系樹脂」を使用した「フィルムであり、本願発明の「農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム」に相当する。 イ 引用発明の「外層C」は、「樹脂」であり、「S-LLDPE」である「1520F」で構成されるから、本願発明の「主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)を含む樹脂材料からなる1層で構成された外層」に相当する。 ウ 引用発明の「内層A」は、「樹脂」であり、「S-LLDPE」である「1520F」で構成されるから、本願発明の「主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)を含む樹脂材料からなる1層で構成された内層」に相当する。 エ 引用発明の「中間層B」は、「樹脂」であり、「S-LLDPE」である「0540F」、及び、「高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)」である「NUC8505」で構成され、「内層A、中間層B、外層Cは、それぞれ3層に積層され」るものであり、また、「中間層は、1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよ」いから、本願発明の「前記外層と前記内層との間に設けられ、1層以上で構成された中間層(ただし、バルビツール酸誘導体である縮合生成物の光質変換剤が含有されている中間層を除く)」に相当する。 オ 引用発明の「中間層B」は、「樹脂」であり、「S-LLDPE」である「0540F」を含むから、本願発明の「前記中間層は、主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え」ることと、「層」が「直鎖状低密度ポリエチレン」「を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え」ることで共通する。 カ 引用発明の「中間層B」を構成する「0540F」の密度は、0.904g/cm3であり、「外層C」及び「内層A」を構成する「1520F」の密度は、0.913g/cm3であるから、本願発明の「前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の密度は、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)及び前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)の密度よりも小さ」いことと、各層の密度の関係において共通する。 (2)一致点及び相違点 上記「(1)」の検討に基づき、本願発明と引用発明とは、 <一致点> 「主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)を含む樹脂材料からなる1層で構成された外層と、 主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)を含む樹脂材料からなる1層で構成された内層と、 前記外層と前記内層との間に設けられ、1層以上で構成された中間層(ただし、バルビツール酸誘導体である縮合生成物の光質変換剤が含有されている中間層を除く)とを備え、 前記中間層は、主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備えており、 前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の密度は、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(a)及び前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(c)の密度よりも小さい、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム。」 である点において一致し、以下の相違点1~3で相違する。 <相違点1> 「主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え」た「中間層」が、本願発明では、「中間層は、3層以上で構成されており」、「樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備えて」いるのに対して、引用発明の「中間層B」は、S-LLDPEである「0540F」、又はLDPEである「NUC8505」からなる1層である点。 <相違点2> 本願発明では、「前記中間層を構成する各層の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の含有量が20質量部以上70質量部以下である」のに対して、引用発明では、「中間層B」が「0540F」「NUC8505」の樹脂で構成され、「NUC8505」の割合が「20wt%」である点。 <相違点3> 本願発明では、「前記外層および前記内層の各厚さは、フィルム全体の厚さの10~40%であり、前記中間層の厚さは、フィルム全体の厚さの10~80%である」のに対して、引用発明では、「内層の厚みと外層の厚みは、全層厚みの5~50%の範囲が好適に用いられ」ており、一部重複はあるもの、数値範囲が異なる点。 (3)判断 各相違点について検討する。 ア 相違点1について (ア)本願発明の「中間層」が3層であることについて、本願の発明の詳細な説明の【0032】に「<中間層> 中間層3は、外層2と内層7との間に設けられている。この中間層3は、外層2側から順に、第1中間層4と、第2中間層5、第3中間層6とを備えた3層で構成されている。・・・」、【0033】に「ここで、第1中間層4、第2中間層5及び第3中間層6のうち少なくとも1層は、強度を発現させるため、主な樹脂成分としてポリオレフィン系樹脂である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料である。」と記載されるとともに、【0068】に「(その他の実施形態) 本発明の農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム1,10は、図示例のものに限定されない。例えば、上記各実施形態では、中間層が3層又は1層で構成されているが、2層でもよく、4層以上でもよい。中間層が2層以上で構成されている場合、該中間層のうち少なくとも1層が、樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(b)を含む樹脂材料からなる層で構成されていればよい。」等の記載がある。 (イ)そして、本願発明の「中間層」が「樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備えて」いることについて、本願の発明の詳細な説明には、段落【0048】に「・・・なお、外層2及び内層7と中間層3との引裂強さを向上させる観点から、エチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる第1中間層4及び第3中間層6と、直鎖状低密度ポリエチレン(b)を含む樹脂材料からなる第2中間層5との3層構造が好ましい。」と記載されているのみである。 (ウ)そうすると、上記(ア)及び(イ)からみて、「中間層」は、「少なくとも1層は」、「主な樹脂成分としてポリオレフィン系樹脂である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む」ことにより「強度を発現させ」るものであるといえるものの、何層の構造でもよい旨の記載も参酌すると、「中間層」を当該層を含む「3層以上で構成」することにより更なる技術的意義が付加されるものとまではいえない。 (エ)一方、農業用フィルムとしての収縮特性、引裂強度、耐衝撃強度、光学特性、高透明性、耐候性、流滴性等の特性を満たし、複数層が積層された農業用フィルムを形成する際、中間に設けられる層を複数層として、その中の層を、樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層で形成することは周知技術である(必要ならば、特開平11-254612号公報(段落【0015】【0018】【0019】参照)、特開昭58-166049号公報(公報7頁左下欄12行~右下欄2行、FIG.2参照。)を参照のこと)。 (オ)また、引用文献1の記載からみて、引用発明において「0540F」や「NUC8505」の樹脂で構成される「中間層B」を1層以上とすることを阻害する特段の事情があるともいえない。 そうすると、引用発明において、「0540F」「NUC8505」の樹脂で構成される「中間層B」に対して、農業用フィルムの特性を担保するために、周知技術を適用し、中間層を構成する層の少なくとも1層を、「樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層」を設けるようにし、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。 イ 相違点2について (ア)本願の発明の詳細な説明の段落【0047】に「中間層3の樹脂成分(第1中間層4、第2中間層及び第3中間層6の樹脂成分の全て)を100質量部とした場合に、直鎖状低密度ポリエチレン(b)の含有量は、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルム1の強度及び透明性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以上80質量部以下、より好ましくは20質量部以上70質量部以下である。」と記載されている。 (イ)すなわち、本願発明では、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムの強度及び透明性を向上させるために、直鎖状低密度ポリエチレン(b)の含有量を調整していることが理解される。 (ウ)そして、引用文献1の段落【0007】には、「・・・シングルサイト触媒を用いたエチレン-α-オレフィン共重合体を使用した農業用フィルムが提案されている。これらの農業用フィルムは、内外層にシングルサイト触媒を用いたエチレン-α-オレフィン共重合体を使用しており、強靱性は向上する・・・」と記載されていることから、エチレン-α-オレフィン共重合体、すなわち、LLDPEは他の樹脂より強度が高い特性があるといえる。 (エ)また、引用文献1の段落【0065】【表1】の実施例6では、「中間層」として、「0540F」とともに「NUC8505」(20wt%)、「DHT4A-2」(5.0wt%)、「防曇剤」(3.0wt%)を含有することから、「0540F」の含有量は、72wt%となり、中間層の樹脂成分を100質量部とした場合、「0540F」は、78.3質量部(=72*100/(72+20))となる。 そして、引用文献1の段落【0061】、段落【0065】【表1】には、実施例6を含めた実施例の樹脂成分の配合割合により、比較例に対し、折り目部の強度低下が少なく、ブロッキングが解消され、口開き性および開反加工性が良好で、低温防曇性、防曇持続性に優れた施設園芸用フィルムが提供されている。 (オ)そうしてみると、引用発明の「施設園芸用フィルム」において、上記相違点1において検討したように、中間層を3層以上としたとしても、各層を個別に形成することは可能であるから、良好な防曇性、防霧性、強靱性、展張作業性、強度が得られるように、各層を形成する際にその割合を調整し、中間層全体として、もとのLLDPEの配合比である、78.3%を超えない範囲、すなわち、LLDPEが当然有する強度の機能が保たれるように複数の層の樹脂成分を配合するように設計して、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計事項である。 ウ 相違点3について (ア)相違点3にあるように、本願発明と引用発明において、「外層」、「内層」、「中間層」の各層の「フィルム」の「厚さ」は、一部重複はあるもの、数値範囲が異なる。 (イ)しかしながら、本願の発明の詳細な説明の段落【0065】に「中間層30の厚さは、柔軟性を向上させる観点から、好ましくはフィルム全体の厚さの10~80%である。」と記載されていることからみて、本願発明における当該「厚さ」の数値範囲を特定は、強度や使用目的により決定されるものであり、特段の技術的意義を有するといえない。 (ウ)そうしてみると、引用発明の「外層」、「内層」、「中間層」の各層の「フィルム」の「厚さ」の数値範囲を特定するにあたり、強度や使用目的を考慮して、効果を損なわない範囲で適切に選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。 エ 本願発明の効果について 相違点1~3を総合的に判断しても、本願発明の作用効果は、本願発明の構成が奏するものとして、引用発明に基づいて当業者にとって予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 オ 請求人の主張について (ア)相違点1~3について、請求人は、令和8年1月23日提出の意見書において、下記の主張をしている。 a 相違点1について 「具体的には、本拒絶理由通知書の「(2)本願発明2について」欄には、「引用発明の「施設園芸用フィルム」の「中間層」は、「1層から構成されていても、2層以上から構成されていてもよく」とあることから、「実施例6」において、「中間層」を「3層以上」とすることは、当業者が容易になし得ることである。」と記載されています。当該記載より、中間層の層数は言及されていますが、補正前(令和6年10月9日付け提出の手続補正書)の請求項2に記載の「樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備えている」ことについては何ら言及されていません。」 b 相違点2について 「また、3層以上の中間層を構成する各層の樹脂成分の合計(100質量部)に対するLLDPE)(b)の含有量を「20質量部以上70質量部以下」に構成することは、各層の樹脂組成や含有割合、厚さ比率(樹脂比率)など複数の要因が関係するため、引用文献1に記載の発明の「実施例6」のように1層の中間層Bにおける「0540F」と「NUC8505」の含有割合だけを調整する場合と比較して困難であり、たとえ当業者であっても容易になし得ることではありません。」 c 相違点1及び2について 「したがって、引用文献1に記載の発明の「「実施例6」において、「中間層」を「3層以上」とすることは、当業者が容易になし得ることである」としても、 ・「主な樹脂成分として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)を含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え、且つ、樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層を少なくとも1層備え」ることとし、 ・「中間層を構成する各層の樹脂成分の合計を100質量部とした場合に、前記直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(b)の含有量が20質量部以上70質量部以下であ」るとすることは、当業者が容易になし得ることではありません。」 (イ)しかし、上記ア及びイで示したように、引用発明において、「0540F」「NUC8505」の樹脂で構成される「中間層B」を3層以上とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、かつ、農業用フィルムの特性を担保するために、周知技術を参照し、中間層を構成する層の少なくとも1層を、「樹脂成分として低密度ポリエチレン又はエチレン-酢酸ビニル共重合体を単独で含む樹脂材料からなる層」を設けるようにすることは、当業者が適宜なし得る設計変更である。 そして、3層以上の中間層を構成する各層の樹脂成分の合計(100質量部)に対するLLDPE)(b)の含有量を「20質量部以上70質量部以下」とすることについて、LLDPEを配合することにより所望の強度が得られるという機能からみて、全体として同程度の強度を保つように設計することに格別の困難性は認められない。 また、3層以上の中間層を構成する各層の樹脂成分の合計(100質量部)に対するLLDPE)(b)の含有量を「20質量部以上70質量部以下」とすることについて、本願発明の発明の詳細な説明を参酌しても、LLDPEを配合することにより、「施設園芸用フィルム」の所望の強度が得られることはいえるが、これは、LLDPEを配合することによる通常の効果にすぎず、3層以上の中間層としたことにより、特段に格別の効果を奏するとはいえない。 さらに、本願発明における当該「厚さ」の数値範囲を特定は、強度や使用目的により決定されるものであり、特段の技術的意義を有するといえないことから、引用発明の「外層」、「内層」、「中間層」の各層の「フィルム」の「厚さ」の数値範囲を特定するにあたり、強度や使用目的を考慮して、効果を損なわない範囲で適切に選択することは、当業者が適宜なし得る設計事項である。 したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。 カ 本願発明のまとめ 各相違点については、前記ア~ウで検討したとおりであり、また、本願発明の効果については、前記エで検討したとおりである。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2023-014745

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