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特許拒絶査定不服審判

2018-008797

乾癬の治療のためのバイオマーカー

審判番号
2018-008797
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-101189外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2018年06月27日
審決日
2019年05月09日
公報発行日
2019年11月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .575-Z (C12Q) / P18 .121-Z (C12Q)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第44条第1項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016-101189「乾癬の治療のためのバイオマーカー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-185151〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯、本願発明 この出願は、平成23年6月15日を国際出願日とする特願2013-515465号(優先権主張 平成22年6月15日、平成23年3月21日、いずれも米国)の一部を特許法第44条第1項の規定に基づいて平成28年5月20日に分割出願したものであり、平成29年5月30日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月5日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月13日付けで拒絶査定がなされ、同年6月27日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正書が提出されたものである。 第2 平成30年6月27日付け手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成30年6月27日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項12が、 「【請求項12】 乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって: 該患者由来の第一の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10のmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10、及びそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること; を含み、 該治療化合物が、(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド又はシクロプロパンカルボン酸{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシ-フェニル)-2-メタンスルホニル-エチル]-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル}-アミドであり、 ここで、該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す、前記方法。」であったものを、 「【請求項12】 乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって: 該患者由来の第一の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1のmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、及びそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること; を含み、 該治療化合物が、(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド又はシクロプロパンカルボン酸{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシ-フェニル)-2-メタンスルホニル-エチル]-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル}-アミドであり、 ここで、該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す、前記方法。」とする補正事項を含むものである。 2.目的要件について 上記補正事項によって、補正前の請求項12における「IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10、又はそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること」が補正後の請求項12において「IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、又はそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること」に補正され、補正前のmRNAの選択肢である「IL-10」を削除されており、これは補正前の請求項12の発明特定事項を減縮するものであると認められる。 したがって、上記補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項12に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。 3.独立特許要件について (1)本件補正発明 補正後の請求項12に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、補正後の請求項12に記載された以下のとおりのものである。 「乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって: 該患者由来の第一の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1のmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、及びそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること; を含み、 該治療化合物が、(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド又はシクロプロパンカルボン酸{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシ-フェニル)-2-メタンスルホニル-エチル]-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル}-アミドであり、 ここで、該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す、前記方法。」 (2)引用例の記載事項 拒絶査定で引用文献2として引用された国際公開第2009/120167号(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、引用例1のパテントファミリーである特表2011-515463号公報の記載を翻訳文として用いる。また、下線は当審が付したものである。 ア 「1. 鏡像異性体として純粋な式(I)の化合物を含む固形物形態であって、 2θで約8.1°、15.2°、17.4°、23.6°および25.1°のピークを含む粉末X線回折パターンを有する固形物形態。 ・・・・ 27. TNF-α産生の阻害によって寛解する疾患または障害を治療するまたは予防する方法であって、請求項1、4、10、13、16、19および22に記載の固形物形態から選択される固形物形態の治療上有効量または予防上有効量を投与するステップを含む方法。 28. 疾患または障害が、乾癬;乾癬性関節炎;関節リウマチ;慢性皮膚サルコイドーシス;巨細胞性動脈炎;パーキンソン病;結節性痒疹;扁平苔癬;複合性アフタ症;ベーチェット病;狼瘡;肝炎;ブドウ膜炎;シェーグレン病;うつ病;間質性膀胱炎;外陰部痛;前立腺炎;変形性関節症;びまん性大細胞型B細胞リンパ腫;多発性筋炎;皮膚筋炎;封入体筋炎;びらん性骨関節炎;間質性膀胱炎;肝炎;子宮内膜症;神経根症;および壊疽性膿皮症から選択される、請求項27に記載の方法。」(特許請求の範囲) イ 「1.技術分野 [001] 本明細書で提供されるのは、(+)-2-[1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-4-アセチルアミノイソインドリン-1,3-ジオンを含む固形物形態、上記固形物形態を含む組成物、上記固形物形態を製造する方法および様々な疾患および/または障害の治療のためのその使用方法である。」 ウ 「[0012] 本明細書で提供されるのは、(+)-2-[1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-4-アセチルアミノイソインドリン-1,3-ジオンと化学的に名付けられた化合物(「化合物A」)の固形物形態の必要性に取り組んでいる実施形態であり、これは、2003年3月19日出願の米国特許出願第10/392,195号(米国特許第6,962,940号として発行)、ならびに2002年3月20日出願の米国特許仮出願第60/366,515号および2003年1月7日出願の米国特許仮出願第60/438,450号に開示された。」 エ 「5.10.実施例10:重度のプラーク型乾癬患者における化合物Aの生物活性 [00248] 化合物Aは、ヒト細胞モデルにおける炎症誘発性サイトカイン産生をダウンレギュレートする新規な経口剤である。化合物Aにより、TNF-α、IL-12およびIFN-γ産生を低下することならびにIL-10の産生を上昇することが示されている。乾癬は、免疫調節性化合物による潜在的な療法を可能にするサイトカインおよびケモカインの調節不全に強く関連している。この第2相、非盲検、一群、パイロット試験を、重度のプラーク型乾癬患者における化合物Aの生物活性を評価するために設計した。臨床成績の追加の評価を実施して重度のプラーク型乾癬を治療する化合物Aの潜在的な効力を評価した。 [00249] 化合物Aを、患者の安全のために28日間の観察的フォローアップ期間を追加して経口で毎日20mgを29日間投与した。標的プラークから得られた皮膚パンチ生検検体(6mm)を、ベースライン時、15日目および29日目に得た。非損傷性皮膚生検もまたベースライン時に採取した。主要な薬力学的エンドポイントは、ベースラインから29日目の表皮の厚さの変化百分率であった。表皮の厚さの測定および免疫組織化学分析は、CD11c、CD83、K16、ICAM-1、HLA-DR、およびフィラグリンを評価するために盲検下の評価者によって実施された。生検検体を、TNF-α、p40-IL12/IL23、IL-10、IFN-γ、IP10、IL-2、IL-8、iNOS、p19-IL23、K16、CD83、およびhARPについてRT-PCRによって分析した。PASI、PGA、およびBSA測定を実施して試験の29日間の治療相中の臨床的有効性を探索した。報告されている有害事象、臨床検査値の評価、身体検査、ECGおよびバイタルサイン測定により安全性を評価した。総数19名の患者を登録した:15名の患者は評価可能な生検のセットを完了し、17名の患者は有効性の評価を完了した。 [00250] 表皮の厚さの変化の評価は、本試験における主要エンドポイントであった。19名の患者を試験に登録し、そのうち15名は、ベースライン時および29日目に評価可能な生検の完全なセットを有した。19名の対象のうち17名は、ベースライン時および29日目に測定した臨床的有効性パラメーターを有した。ベースライン時および29日目に評価可能な生検を有する15名の患者のうち8名(53.3%)は、表皮の厚さの20%の減少を実証した。ベースライン時および29日目に評価可能な生検を有する15名の対象全員の表皮の厚さの平均の減少は、20.5%であった(p=0.015)。図31は、評価可能な生検を有する対象間のベースライン時から29日目までの表皮の厚さの変化を示す。 [00251] 表皮および真皮のT細胞、CD83+およびCD11c細胞を含めた重要な炎症マーカーを生検検体において評価した。応答した8名の患者の結果により、表皮および真皮のT-細胞の低下は、応答者においてそれぞれ42.56%および28.79%であることが示された(≧20%表皮の厚さの減少)。表皮および真皮のCD83+細胞におけるベースライン時からの平均の減少は、応答者においてそれぞれ32.50%および25.86%であった。CD11c細胞を、応答者の表皮において40.16%および真皮において18.50%低減した。表5は応答者および非応答者における重要な皮膚生検の炎症マーカーの減少を示す。さらに、ベースライン時に異常なK16を有する患者1名は、29日目に正常なK16を有した。ベースライン時に異常なICAM-1を有する患者3名は、29日目に正常なICAM-1を有した。異常なHLA-DRを有する患者2名は、29日目に正常なHLA-DRを有し、ベースライン時に異常なフィラグリンを有する患者3名は、29日目に正常なフィラグリンを有した。 [00252] 生検検体を、TNFα、p40-IL12/IL23、IL-10、IFNγ、IP10、IL-2、IL-8、iNOS、p19-IL23、K16およびCD83を含めた、重要な炎症マーカーのmRNA遺伝子発現についてRT-PCRによって評価した。iNOSのmRNA発現は、化合物Aによる治療の29日後の損傷性皮膚において66.5%(p=0.025)減少した。他の炎症マーカーのmRNA発現の減少および増加は、全体的な改善傾向を示した。図32は、試験中のiNOS発現の変化を図示する。 [00253] 登録した19名の対象のうち17名全員が29日間の治療相を完了し、臨床的有効性の評価を完了した。登録した19名の対象のうち14名(73.7%)は、これらの患者がベースラインから29日目に患者の乾癬の領域および重症度の指数(Psoriasis Area and Severity Index)(PASI)の全スコアにおいて>50%の減少を示す3(15.8%)であり、PASIの改善を実証した。図33は、ベースラインから29日目において評価可能な患者間のPASIスコアの変化百分率を示す。さらに、17名の評価可能な患者のうち9名(52.9%)は、医師の静的な総合評価(static Physician's Global Assessment)(sPGA)の改善を実証し、17名の評価可能な患者のうち10名(58.8%)が化合物Aによる治療の29日後に患者の乾癬の体表面積(BSA)においてベースラインからの減少を示した。治療およびフォローアップ相の間、有害事象のモニタリング、ECG、臨床検査、身体検査およびバイタルサインによって安全性を評価した。死亡も報告されず、いずれの患者も有害事象により途中で中止しなかった。最もよく知られる治療関連の有害事象には、頭痛(26.3%)、および悪心(15.8%)が含まれた。」 (3)引用発明 上記(2)より、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「重度のプラーク型乾癬患者における、(+)-2-[1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-4-アセチルアミノイソインドリン-1,3-ジオン(当審注:請求項1の式(I)の化合物、「化合物A」と呼ぶ。)の生物活性と効力を評価する方法であって、 患者の標的プラークから得た皮膚パンチ生検検体を用い、ベースライン時、化合物Aの投与後15日目および29日目に、RT-PCRによってiNOS mRNAの発現を測定し、iNOS mRNA発現の減少から化合物Aの生物活性と効力を評価する、上記方法。」 (4)対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明の「(+)-2-[1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-4-アセチルアミノイソインドリン-1,3-ジオン」は、本件補正発明の「治療化合物」である「(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド」に相当すると認められ。 また、引用発明におけるベースライン時のmRNAの測定は、本件補正発明の第一の生物学的試料のmRNAの測定に相当し、引用発明の投与後15日目、または投与後29日目のmRNAの測定は、本件補正発明の第二の生物学的試料のmRNAの測定に相当し、引用発明の「重度のプラーク型乾癬患者における、化合物Aの生物活性と効力を評価する」ことは、本件補正発明の「乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする」ことに相当すると認められるから、引用発明の「患者の標的プラークから得た皮膚パンチ生検検体を用い、ベースライン時、化合物Aの投与後15日目および29日目に、RT-PCRによってiNOS mRNAを発現を測定し、iNOS mRNA発現の減少から生物活性と効力を評価する」ことは、本件補正発明の「乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって; 該患者由来の第一の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1のmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、及びそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること」と、「乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって; 該患者由来の第一の生物学的試料中の、マーカー遺伝子mRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、マーカー遺伝子のmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること」である点で共通すると認められる。 さらに、引用発明の「重度のプラーク型乾癬患者における、(+)-2-[1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-メチルスルホニルエチル]-4-アセチルアミノイソインドリン-1,3-ジオン(請求項1の式(I)、化合物A)の生物活性と効力を評価する方法」は、本件補正発明の「該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す、前記方法」と、「該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少を評価する、前記方法」ある点で共通すると認められる。 したがって、「治療化合物」が「(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド」である場合の本件補正発明と引用発明とは、 「乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって: 該患者由来の第一の生物学的試料中の、マーカー遺伝子のmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、マーカー遺伝子のmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること;を含み、 該治療化合物が、(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミドであり、 ここで、該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少を評価する、前記方法。」である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。 (相違点1) マーカー遺伝子が、本件補正発明では「IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1」であるのに対して、引用発明では「iNOS」である点。 (相違点2) 本件補正発明では「該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す」と特定されており、すなわち、「マーカー遺伝子mRNAのレベルの減少」と「有効な応答」とが関連すること特定されているのに対して、引用発明では特定されていない点。 (5)判断 (相違点1、2)について 引用例1には化合物Aを用いた治療の有効性に関して「表皮の厚さの変化の評価は、本試験における主要エンドポイントであった。19名の患者を試験に登録し、そのうち15名は、ベースライン時および29日目に評価可能な生検の完全なセットを有した。19名の対象のうち17名は、ベースライン時および29日目に測定した臨床的有効性パラメーターを有した。ベースライン時および29日目に評価可能な生検を有する15名の患者のうち8名(53.3%)は、表皮の厚さの20%の減少を実証した。ベースライン時および29日目に評価可能な生検を有する15名の対象全員の表皮の厚さの平均の減少は、20.5%であった(p=0.015)。」(上記(2)エ)と記載されており、この記載から、19名の乾癬患者に対して化合物Aを用いた治療が行われ、そのうち17名は表皮の厚さの変化による評価から治療が有効であったことが示されていると認められ、したがって、化合物Aよる治療の高い割合での有効性が読み取れる。 また、引用例1には「生検検体を、TNFα、p40-IL12/IL23、IL-10、IFNγ、IP10、IL-2、IL-8、iNOS、p19-IL23、K16およびCD83を含めた、重要な炎症マーカーのmRNA遺伝子発現についてRT-PCRによって評価した。iNOSのmRNA発現は、化合物Aによる治療の29日後の損傷性皮膚において66.5%(p=0.025)減少した。他の炎症マーカーのmRNA発現の減少および増加は、全体的な改善傾向を示した。」(上記(2)エ)と記載されており、化合物Aの治療で乾癬が改善された患者においてiNOSが減少したこと、すなわち、iNOSのmRNAレベルの減少と化合物Aに対する患者の有効な応答とが関連することが示されるとともに、他の重要な炎症マーカーである、TNFα、p40-IL12/IL23、IL-10、IFNγ、IP10、IL-2、IL-8、p19-IL23、K16、CD83のmRNAレベルの「減少」や「増加」も、患者の有効な応答と関連することも示されていると認められる。 つまり、引用例1にはTNFα、p40-IL12/IL23、IL-10、IFNγ、IP10、IL-2、IL-8、p19-IL23、K16、CD83がマーカー遺伝子として使用できることが示されていると認められる。なお、引用例1には、化合物Aの治療によってTNFαとIFNγは減少し、IL-10は増加することも記載されている。 ここで、新たに有用なマーカー遺伝子を特定しようとすることは当業者の自明な課題であるから、引用発明におけるマーカー遺伝子のiNOSに代えて、引用例1に具体的に記載された他のマーカー遺伝子を用いることは当業者が容易になし得ることであり、その際に、発現の増減が引用例1に記載されているTNFα、IFNγ、IL-10だけでなく、p40-IL12/IL23、IP10、IL-2、IL-8、p19-IL23、K16、CD83についても、化合物Aの治療によるこれらのマーカー遺伝子のmRNA発現の増減を確認し、その結果からこれらのマーカー遺伝子のmRNA発現の増減と、患者の有効な応答とを関連付けることも当業者が容易になし得ることである。なお、引用例1に記載される「p40-IL12/IL23」は本件補正発明の「IL-12/IL-23 p40」に相当すると認められる。 したがって、引用例1に具体的に記載されたマーカー遺伝子のひとつであるp40-IL12/IL23のmRNAの発現が化合物Aの治療により減少することを確認し、そのことと患者の有効な応答とが関連することを特定すること、すなわち、マーカー遺伝子として「IL-12/IL-23 p40」を特定し、「該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す」ことを特定することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本件補正発明において、引用例1から予測できない効果が奏されたとは認められない。 よって、本件補正発明は引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)審判請求人の主張について 審判請求人は平成30年8月9日に補正された審判請求書において、概ね以下の点を主張している。 ア 引用文献2はiNOSのmRNAが、皮膚病変部において化合物1での処置29日後に、66.5%減少したことを開示している([0292]、実施例10)が、引用文献2には化合物1又は2での処置に応答するIL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL 22、DEFB4、又はMX-1のmRNAレベルの変化について何ら開示も示唆もしていない。 イ 引用文献2は、有効な応答のある乾癬患者(応答者)及び有効な応答のない乾癬患者(不応答者)からの細胞における、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL 22、DEFB4、又はMX-1のレベルの異なる応答に関して何ら開示も示唆もしていない。したがって、当業者は、前記バイオマーカーの発現レベルが不応答者の乾癬性細胞においてどのように変化するか、及び応答者の乾癬性細胞における前記バイオマーカーの発現レベルが、不応答者における発現レベル変化と比較して、どのように変化するかについて何ら知る余地もない。本件出願の図6に示されているように、12週での乾癬性細胞におけるIL-12/IL-23 p40、IL-17A及びDEFB4を含むバイオマーカーの遺伝子発現の減少が、不応答者よりも応答者において大きくなる。とりわけ、本開示は、バイオマーカーの発現レベルの変化を用いて、応答及び不応答患者を区別し、応答性を予測できることを示している。 ウ Jiangらの文献に示されているように、異なる種類のバイオマーカーが存在し、広範な複数のバイオマーカーが同定されている。したがって、引用文献1~6を考慮して、当業者が、無数の乾癬関連バイオマーカーからCD3、CD56、Foxp3、ランゲリン、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL 22、DEFB4、又はMX-1を選択する理由はない。 ア の主張について 確かに引用例1にはIL-12/IL-23 p40などのmRNAレベルの変化について具体的に記載されていないが、上記(5)で述べたとおり、引用例1に具体的に記載されたマーカー遺伝子のひとつであるIL-12/IL-23 p40のmRNAのレベルが化合物Aの治療により減少することを確認することは当業者が容易になし得ることである。 引用例1の記載から、乾癬患者に対する化合物Aの治療の有効性とp40-IL12/IL23のmRNAの増減が関連していることが理解できるから、化合物Aの治療によってp40-IL12/IL23のmRNAが「増加」するのか、それとも「減少」するのかを確認することに格別の困難性はない。 したがって、当業者であれば、引用例1の記載に基づいて、化合物A(化合物1)での処置に応答したp40-IL12/IL23のmRNAレベルの減少について特定できるといえる。 イ の主張について 本願明細書の図6をみると、IL10、IL2以外のマーカー遺伝子の場合、化合物1の投与12週間後に応答者と不応答者のいずれにおいてもmRNAの発現が減少していることが示されており、この図の[ベースライン]が本件補正発明にいう「該患者由来の第一の生物学的試料中の・・・mRNAのレベル」であり、化合物1の投与12週間後の[応答者のレベルの変化]及び[不応答患者のレベルの変化]の両方が本件補正発明にいう「該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の・・・mRNAのレベル」であると認められる。 そして、図6から[応答者のレベルの変化]と[不応答患者のレベルの変化]に違いがあることは読み取れるものの、本件補正発明には、応答及び不応答患者のmRNAレベルを比較することなどは特定されていない。 そうすると、本件補正発明によって「バイオマーカーの発現レベルの変化を用いて、応答及び不応答患者を区別し、応答性を予測できる」とは認められず、イの主張は本件補正発明に対応するものとは認められない。 ウ の主張について 例え他に無数の乾癬関連バイオマーカーが存在したとしても、IL-12/IL-23 p40は引用例1にマーカー遺伝子として使用できるものとして記載されているのだから、IL-12/IL-23 p40を特定し、これについて増減を確認することに格別の困難性はない。 したがって、審判請求人の主張はいずれも採用することができない。 (7)まとめ 本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満足しない。 4.小括 以上のとおり、上記の補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第6項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1~21に係る発明は、平成29年9月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載の事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本願の請求項12に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項12に記載される以下のとおりのものと認める。 「【請求項12】 乾癬治療に対する患者応答をモニタリングする方法であって: 該患者由来の第一の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10のmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること; 該患者に対して治療化合物が投与された後に得られた第二の生物学的試料中の、IL-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10、及びそれらの組合せのmRNAから選択されるmRNAのレベルを測定すること;並びに 該第一及び第二の生物学的試料から得られた該mRNAのレベルを比較すること; を含み、 該治療化合物が、(S)-N-(2-(1-(3-エトキシ-4-メトキシフェニル)-2-(メチルスルホニル)エチル)-1,3-ジオキソイソインドリン-4-イル)アセトアミド又はシクロプロパンカルボン酸{2-[(1S)-1-(3-エトキシ-4-メトキシ-フェニル)-2-メタンスルホニル-エチル]-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-4-イル}-アミドであり、 ここで、該第二の生物学的試料中の該mRNAのレベルの減少が、有効な応答を示す、前記方法。」 2.原査定の拒絶の理由 平成30年2月13日付けの拒絶査定は、この出願の請求項1~20に係る発明は、その出願前に頒布された下記の引用文献1~6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。 1.米国特許出願公開第2008/0234359号明細書 2.国際公開第2009/120167号 3.Br. J. Pharmacol., 2010, 159(4), pp.842-855 4.国際公開第2009/120296号 5.特表2009-521933号公報 6.国際公開第2009/063897号(新たに引用された文献;周知技術を示す文献) 3.引用例、引用発明 引用例1(引用文献2)には上記第2の3.(2)に記載したとおりの事項が記載されており、上記第2の3.(3)に記載したとおりの引用発明が記載されていると認められる。 4.当審の判断 本願発明では測定するmRNAが「L-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、IL-10、及びそれらの組合せ」であるのに対して、本件補正発明では測定するmRNAが「L-12/IL-23 p40、IL-17A、IL-22、DEFB4、MX-1、及びそれらの組合せ」であり、本件補正発明は、測定するmRNAからIL-10が除かれている点を除き、本願発明の発明特定事項を全て含むものである。 そうすると、上記第2の3.(5)で述べたとおり、本件補正発明が引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、この出願の請求項12に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-008797

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