特許拒絶査定不服審判
2018-006541
反射防止層用樹脂組成物、反射防止層および光学装置
- 審判番号
- 2018-006541
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-263432外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年05月14日
- 審決日
- 2019年05月20日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】住友ベークライト株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-263432「反射防止層用樹脂組成物、反射防止層および光学装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 6月25日出願公開、特開2015-118349〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、平成25年12月20日の出願であって、平成29年8月29日付けで拒絶理由が通知され、平成30年2月23日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年5月14日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
2 本件発明
本願の請求項1~13に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定されるとおりの発明であり、その請求項1に係る発明は、以下のものである。
「光学装置であって、化学式1および/又は化学式2で表わされる脂環式エポキシ樹脂前駆体と重合開始剤を含む反射防止層用樹脂組成物から形成される反射率が3%以下の反射防止層を用いた光学装置。
【化1】
[ 上記式( 1 ) 中、- X - は- O - 、- S - 、- S O - 、- S O 2 - 、- C H 2 - 、- CH ( C H 3) - 、または- C ( C H 3 ) 2 - を表す。]
【化2】
」(以下、「本件発明」という。)
なお、本件発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1、請求項1の記載を引用する請求項6、請求項6の記載を引用する請求項7、及び、請求項7の記載を引用する請求項13に記載された発明特定事項を全て具備した発明に該当する。
3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本件補正前の請求項7及び13に係る発明について、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2012-140607号公報
引用文献2:特開2010-8756号公報
4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成24年7月26日に頒布された刊行物である特開2012-140607号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載事項がある。なお、下線は、合議体が発明の認定等に用いた箇所を示す。以下同様である。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物として、下記成分(A)、成分(B)を、前者/後者(重量比)が5/95~50/50となる割合で含有することを特徴とする硬化性組成物。
成分(A):脂環とエポキシ基とが単結合又は連結基を介して結合しているエポキシ化合物であって、エステル結合を有しないエポキシ化合物
成分(B):脂環を有し、且つエステル結合を有するエポキシ化合物
【請求項2】
硬化性化合物として、更に下記成分(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬化性組成物。
成分(C):脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を有し、且つエステル結合を有しないエポキシ化合物
(中略)
【請求項5】
請求項1~4の何れかの項に記載の硬化性組成物を硬化して得られる硬化樹脂。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化樹脂からなる光学部材。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、速硬化性を有する耐熱透明樹脂組成物、その硬化樹脂、及び該硬化樹脂よりなる光学部材に関する。より詳しくは、低粘度で作業性に優れ、加熱することにより速やかに硬化して、優れた耐熱性、透明性を有する硬化樹脂を形成することができる樹脂組成物、該樹脂組成物を硬化して得られる硬化樹脂、及び該硬化樹脂からなるレンズ等の光学部材に関する。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、硬化させる前は低粘度で流動性に優れ、加熱することにより速やかに硬化して、光のにじみ(色収差)の発現を抑制し、透明性、耐熱性に優れた硬化樹脂を形成することができる硬化性組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、光のにじみ(色収差)がなく、透明性に優れ、リフロー方式によるハンダ付け等の高温条件に曝しても、優れた光学特性及び物理特性を維持することができる硬化樹脂、及び該硬化樹脂からなる光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、脂環を有するエポキシ化合物は、樹脂に耐熱性、透明性を付与することができ、更に、光のにじみ(色収差)の発現を抑制することができる化合物として知られているものの、該脂環を有するエポキシ化合物の中でも分子内にエステル結合を有する特定のエポキシ化合物は、流動性には優れるが、カチオン重合開始剤から発生したプロトンがエステル結合を構成するカルボニル酸素と反応して比較的安定なオキソニウムイオンを形成するためか、硬化速度が遅い。一方、分子内にエステル結合を有さない特定のエポキシ化合物は、硬化速度は早いが流動性が低い。そのため、これらを特定の範囲内で組み合わせて使用することにより、流動性に優れ、速やかに硬化して、光のにじみがなく、耐熱性、透明性に優れた樹脂を形成することができる硬化性組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき、さらに研究を重ねて完成したものである。
(中略)
【発明の効果】
【0017】
本発明の硬化性組成物は、硬化させる前は低粘度で流動性が高く、金型等への流し込みが容易であり、カチオン重合することにより速やかに硬化樹脂を形成することができる。そのため、作業効率に優れる。また、140℃、2分間の加熱処理により、60%を超える優れた硬化率で硬化させることができる。そのため、加熱処理後の硬化樹脂を離型して更にアニール処理等の加熱処理を施す場合は、該加熱処理による硬化収縮の影響を最小に留めることができ、設計値からの形状誤差を極めて小さく、また硬化収縮による応力歪みや割れの発生を抑制することができる。
【0018】
そして、得られる硬化樹脂は、高アッベ数を有するため光のにじみ(色収差)がなく、高い光学特性(光線透過率、屈折率、アッベ数等)、物理特性(耐熱性、柔軟性、耐水性等)を有するとともに、例えば260℃程度の高温条件下においても前記光学特性及び物理特性が変化しにくいという特性を有する。このような硬化樹脂は、リフロー方式によるハンダ付け工程に供しても黄変しにくく、また形状変化しにくいため、特に、レンズ等の光学部材の用途に有用である。例えば、本発明の硬化樹脂からなるレンズをカメラ付き携帯電話のレンズとして用いる場合、リフロー方式によるハンダ付け工程(実装工程)においてカメラモジュールを同時に実装することが可能となり、ハンダ付け工程後に行われているコネクタによるカメラモジュールの接続工程を省略することができる。」
ウ 「【発明を実施するための形態】
【0019】
[硬化性組成物]
本発明の硬化性組成物は、硬化性化合物として、下記成分(A)、成分(B)を含むことを特徴とする。
成分(A):脂環とエポキシ基とが単結合又は連結基を介して結合しているエポキシ化合物であって、エステル結合を有しないエポキシ化合物
成分(B):脂環を有し、且つエステル結合を有するエポキシ化合物
【0020】
(成分(A))
本発明の成分(A)は、脂環とエポキシ基とが単結合又は連結基を介して結合しているエポキシ化合物であって、エステル結合を有しないエポキシ化合物(下記成分(C)に含まれるもの、すなわち、脂環エポキシ基を有する化合物を除く)であり、カチオン重合により他の硬化性化合物と共に三次元架橋構造を形成して硬化する化合物である。
(中略)
【0027】
(成分(B))
本発明の成分(B)は、脂環を有し、且つエステル結合を有するエポキシ化合物であり、分子内に少なくとも1つの脂環を有し、且つ少なくとも1つのエステル結合を有するエポキシ化合物であればよい。成分(B)は、カチオン重合により他の硬化性化合物と共に三次元架橋構造を形成して硬化樹脂を形成することができる。
(中略)
【0036】
また、本発明に係る硬化性化合物は、より優れた流動性と、より優れた硬化性を付与することができる点で、硬化性化合物として、上記成分(A)、成分(B)に下記成分(C)を配合することが好ましい。
【0037】
(成分(C))
本発明の成分(C)は、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(脂環エポキシ基)を有し、且つエステル結合を有しないエポキシ化合物であり、少なくとも1つの脂環エポキシ基を有し、且つエステル結合を有しない脂環式エポキシ化合物であればよい。このような成分(C)は、カチオン重合により他の硬化性化合物と共に三次元架橋構造を形成して硬化樹脂を形成することができる。
【0038】
前記脂環としては、上記成分(A)における脂環と同様の例を挙げることができ、前記脂環エポキシ基としては、上記成分(B)における脂環エポキシ基と同様の例を挙げることができる。
【0039】
本発明における成分(C)としては、例えば、下記式(C1)で表される化合物(2つの脂環エポキシ基が単結合により結合、又は2価の炭化水素基を介して結合している化合物:ビシクロエポキシ化合物)を挙げることができる。
【化5】
【0040】
上記式中、Y1は単結合又は2価の炭化水素基を示す。2価の炭化水素基としては2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基、及び、これらが複数個結合した基を挙げることができる。2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(例えば、C1-6アルキレン基)を挙げることができる。また、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン、1,3-シクロペンチレン、1,2-シクロへキシレン、1,3-シクロへキシレン、1,4-シクロへキシレン基等2価のシクロアルキレン基を挙げることができる。
【0041】
式(C1)で表される化合物に含まれる代表的な化合物を下記に示す。
【化6】
【0042】
成分(C)としては、上記式(C1)で表される化合物の他に、分子内に脂環エポキシ基を1つ有する化合物も挙げられる。前記化合物は、脂環エポキシ基以外に他のエポキシ基を有していてもよい。代表的な化合物を下記に示す。
【化7】
【0043】
本発明における成分(C)としては、なかでも耐熱性に優れる硬化樹脂を形成することができる点で、上記式(C1)で表されるビシクロエポキシ化合物が好ましく、特に、反応性が高く、迅速に硬化性組成物を硬化させると共に、硬化時に収縮せず、むしろ体積膨張する傾向が見られるため、硬化性組成物を硬化する際の体積収縮率を抑制することができ、且つ、硬化して得られた硬化樹脂をアニール処理した際の硬化収縮による歪みや変形の発生も抑制することができる点で上記式(C1-1)で表される化合物が好ましい。
【0044】
硬化性組成物における上記成分(C)の割合としては、硬化樹脂の用途等によっても異なるが、硬化性組成物全体(又は、硬化性化合物の総量)の、例えば、65重量%以下、好ましくは、5~60重量%、特に好ましくは5~35重量%程度である。
【0045】
また、成分(A)と成分(B)の総和100重量部に対する成分(C)の添加量としては、例えば5~60重量部程度、好ましくは5~45重量部、特に好ましくは5~25重量部程度である。
【0046】
また、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の含有割合としては、硬化性化合物の総量を100重量部とすると、成分(A)/成分(B)/成分(C)(重量比)が、5~35/55~95/0~25程度(なかでも、10~34/56~90/5~15)が好ましい。
【0047】
成分(C)を上記範囲で配合すると、得られる硬化樹脂の透明性を維持しつつ、硬化性組成物に優れた流動性を付与することができる。さらに、硬化速度を促進し、前記硬化性組成物が硬化を開始する温度と、前記硬化性組成物を2分間加熱して硬化率90%の硬化樹脂を形成することができる温度との差(反応温度ギャップ)を50℃以下にすることができ、より速やかに金型へ注入した硬化性組成物に硬化処理を施し、金型から取り出す作業を行うことができ、成型装置のスループット性を著しく向上させることができる。
【0048】
(他の成分)
本発明の硬化性組成物は、硬化樹脂の光学特性、物理特性を損なわない範囲で、上記成分以外の他の硬化性化合物(カチオン重合性化合物、ラジカル重合性化合物等)を含んでいてもよい。
(中略)
【0052】
また、本発明の硬化性組成物は、使用する硬化性化合物の種類等に応じて、カチオン重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤、光増感剤等各種添加剤を含んでいてもよい。
【0053】
カチオン重合開始剤は、熱又は光によりカチオン重合を開始させる物質を放出する化合物(硬化触媒、酸発生剤)である。本発明においては、耐熱性の高い硬化樹脂を迅速に形成することができる点で、カチオン重合開始剤として熱カチオン重合開始剤を使用することが好ましい。カチオン重合開始剤の配合量は、硬化性組成物全体の、例えば0.01~15重量%、好ましくは0.01~2重量%である。この範囲で配合することにより、耐熱性、透明性等の良好な硬化樹脂を得ることができる。
【0054】
上記カチオン重合開始剤としては、例えば、アリールジアゾニウム塩[例えば、商品名「PP-33」(旭電化工業(株)製)等]、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩[例えば、商品名「FC-509」(スリーエム(株)製)、商品名「UVE1014」(G.E.(株)製)、商品名「CP-66」、「CP-77」(共に、旭電化工業(株)製)、商品名「サンエイド SI-60L」、「サンエイド SI-80L」、「サンエイド SI-100L」、「サンエイド SI-110L」(共に、三新化学工業(株)製)等]、アレン-イオン錯体[例えば、商品名「CG-24-61」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)等]などが挙げられる。さらに、アルミニウムやチタン等の金属とアセト酢酸エステル又はジケトン類とのキレート化合物と、シラノールまたはフェノール類との系も使用される。前記キレート化合物としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスアセト酢酸エチル等が挙げられる。前記シラノールまたはフェノール類としては、例えば、トリフェニルシラノールやビスフェノールS等が挙げられる。本発明においては、なかでも、アリールスルホニウム塩(特に、商品名「サンエイド SI-60L」、商品名「サンエイド SI-100L」等)が、硬化性組成物が硬化を開始する温度を、例えば、80~120℃(好ましくは、80~100℃)に引き下げ、更に、硬化性組成物が硬化を開始する温度と、2分間加熱して硬化率90%の硬化樹脂を形成することができる温度との差(反応温度ギャップ)を小さくし、成型装置に高いスループット性を付与することができる点で好ましい。
(中略)
【0062】
本発明の硬化性組成物は、例えば、上記成分(成分(A)、(B)、好ましくは、成分(A)、(B)、(C))、必要に応じてカチオン重合開始剤、硬化剤、硬化促進剤、ラジカル重合開始剤、光増感剤、各種添加剤等を配合して、必要に応じて真空下で気泡を排除しつつ、撹拌・混合することにより調製される。撹拌・混合する際の温度は、例えば、10~60℃程度である。撹拌・混合には、公知の装置、例えば、自転公転型ミキサー、1軸又は多軸エクストルーダー、プラネタリーミキサー、ニーダー、ディソルバー等を使用できる。
(中略)
【0069】
本発明の硬化樹脂は、上記硬化性組成物を硬化して得られるため、光学特性、物理特性の何れにも優れた性質を有する。
(中略)
【0077】
本発明の硬化樹脂は、光学部材(例えば、レンズ等の光学材料用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、電気・電子部品材料用途等)に好適に使用できる。光学部材としては、例えば、カメラ(車載カメラ、デジタルカメラ、PC用カメラ、携帯電話用カメラ、監視カメラ等)の撮像用レンズ、メガネレンズ、フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ、表示装置用カバーガラス、フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波路、光分割器、光ファイバー接着剤、表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止フィルム等を挙げることができる。」
エ 「【実施例】
【0079】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0080】
実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
[硬化性化合物]
「EHPE3150」:下記式で表される2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(式中、p'、p''、p'''は同一又は異なって、1~30の整数を示す)、商品名「EHPE3150」(ダイセル化学工業社製)、前記式(A1)で表される化合物に含まれる
【化8】
「YX8000」:下記式で表される非エステル系水添ビスフェノール型ジグリシジル化合物。商品名「YX8000」(ジャパンエポキシレジン社製)
【化9】
「CEL2021P」:下記式で表される3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」(ダイセル化学工業社製)
【化10】
「C1-1」:下記式で表される3,4,3’,4’-ジエポキシビシクロヘキシル(下記調製例1により得られた化合物を使用した)
【化11】
【0081】
[カチオン重合開始剤]
「SI-100L」:アリールスルホニウム塩、商品名「サンエイド SI-100L」(三新化学工業株式会社製)
「SI-60L」:アリールスルホニウム塩、商品名「サンエイド SI-60L」(三新化学工業株式会社製)
【0082】
[酸化防止剤]
「IRG1010」:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール)プロピオネート]、商品名「IRG1010」(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)
(中略)
【0085】
実施例1~5、比較例1~4
下記表1に記載の各成分を配合し、常温(25℃)雰囲気下で自転公転型ミキサーを使用して撹拌・混合することにより硬化性組成物を得た。
【表1】
(中略)
【0091】
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物を予め離型剤で表面処理したガラス製の型に室温(25℃)で注型した。
次いで、注型された硬化性組成物を、大気雰囲気下でオーブンを使用して下記のように加熱し、硬化樹脂(1)を得た。
実施例1で得られた硬化性組成物:注型した硬化性組成物を100℃で60分間加熱
実施例2、4、5、及び比較例で得られた硬化性組成物:注型した硬化性組成物を常温(25℃)から昇温速度50℃/分で140℃まで急速に昇温し、140℃で2分間加熱
実施例3で得られた硬化性組成物:注型した硬化性組成物を200℃で5分間加熱
(中略)
【0106】
本発明の硬化性組成物は、流動性に優れるため容易且つ速やかに注型することができ、また、極めて速やかに硬化して、光学特性、物理特性、及び耐熱性に優れる硬化樹脂を得ることができた。一方、比較例1、2で得られた硬化性組成物を硬化して得られた硬化樹脂(2)は、高温環境に曝すと光学特性が大きく低下し、レンズ等の用途には適さなかった。また、比較例2で得られた硬化性組成物は、粘度が低く、注型してから硬化がある程度進むまでの間に型崩れし易く、取り扱いが難しかった。一方、比較例3で得られた硬化性組成物は、粘度が高すぎるため注型が困難であり、気泡の除去が難しく、均等に金型に注入して表面が平滑な硬化樹脂を得ることができなかった。さらに、比較例4は、組成物の硬化反応が極めて速く進み、硬化樹脂の内部に気泡が生じて、均一な硬化樹脂を得ることができなかった。
したがって、比較例の硬化性組成物は、何れも、成形性に劣り、とりわけキャスト法による成形に用いることが困難であるか、或いは、成形性は悪くなくとも、該硬化性組成物からは、光学特性、物理特性、及び耐熱性に優れた硬化樹脂が得られなかった。」
(2)引用文献1に記載された発明
前記(1)の記載事項イ及び記載事項ウに基づけば、引用文献1の段落【0039】~【0041】には、段落【0009】に記載された課題を解決するとともに、段落【0036】に記載の性質を具備する硬化樹脂として、成分(A)及び成分(B)(段落【0019】)に加えて成分(C1-1)及び(C1-2)で代表される成分(C)を含み、これらに、カチオン重合性開始剤(段落【0052】)を配合して、撹拌・混合することにより調製される硬化性組成物(段落【0062】)を、硬化して得られる硬化樹脂(段落【0069】)であって、光学部材として、例えば、反射防止フィルムに使用できる(段落【0077】)、以下の発明が記載されていると認められる。
「硬化させる前は低粘度で流動性に優れ、加熱することにより速やかに硬化する硬化性組成物により形成した、光のにじみ(色収差)の発現を抑制し、透明性、耐熱性に優れた硬化樹脂であって、
硬化性組成物は、硬化性化合物として、下記成分(A)、成分(B)を含み、さらに、より優れた流動性と、より優れた硬化性を付与するために、以下の化合物(C1-1)又は化合物(C1-2)である成分(C)を配合するものであり、成分(A)、(B)、(C)に、カチオン重合性開始剤を配合して、撹拌・混合することにより調製され、
硬化樹脂は、上記硬化性組成物を硬化して得られるものであり、反射防止フィルムに使用できる、硬化樹脂。
成分(A):脂環とエポキシ基とが単結合又は連結基を介して結合しているエポキシ化合物であって、エステル結合を有しないエポキシ化合物
成分(B):脂環を有し、且つエステル結合を有するエポキシ化合物
成分(C):
」(以下、「引用発明」という。)
(3)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前の平成22年1月14日に頒布された刊行物である特開2010-8756号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、それを用いた偏光板、及び画像表示装置に関するものである。
(中略)
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記背景に鑑み、高温高湿耐久試験前後での耐薬品密着性、耐薬品擦傷性に優れ、低ヘイズ・高透過率・干渉むらのない反射防止フィルムを提供するものである。
(中略)
【0030】
本発明の反射防止フィルムは、フィルム基材上に、ハードコート層を塗布し、その上に反射防止層との結合用下地層としてカチオン重合開始剤を主成分とする中間層を設け、その上層にカチオン重合性硬化樹脂を含む反射防止層を塗布した反射防止フィルムである。
【0031】
本発明の構成によれば、高温高湿耐久試験前後の耐薬品性と密着性、耐擦傷性、高透明性及び高生産性を達成することができる。また、本発明の反射防止フィルムを用いることにより、光の映り込みが気にならず、視認性に優れた偏光板及び該偏光板を用いた表示装置を得ることができる。」
イ 「【0041】
《中間層》
本発明の中間層は、透明フィルム基材上にハードコート層、中間層、反射防止層がこの順に積層されてなり、該中間層が樹脂バインダーで保持された光重合開始剤を主成分とする層であって、該光重合開始剤がカチオン重合開始剤であることを特徴としている。
(中略)
【0050】
本発明における、カチオン重合開始剤を主成分とする中間層の樹脂バインダーとしては、カチオン重合性反応性、またはラジカル重合性反応性を有する活性エネルギー線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0051】
カチオン重合性反応性を有する活性エネルギー線硬化樹脂としては、例えばエポキシ化合物、オキセタン化合物、オキソラン化合物、ビニル化合物、ビニルエーテル化合物、チエタン化合物、チイラン化合物、環状エーテル化合物、環状チオエーテル化合物、環状ラクトン化合物、環状アセタール化合物等をあげることができる。これらのカチオン重合性反応基を有する活性エネルギー線硬化樹脂は1種を単独で用いることもできるし、或いは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
(中略)
【0063】
《ハードコート層》
次に、基材フィルムと中間層の間に設けるハードコート層について説明する。
【0064】
(多官能アクリレート)
ハードコート層は一般に紫外線のような活性エネルギー線硬化性樹脂より構成されるが、このような活性エネルギー線硬化性樹脂としては、多官能アクリレートが好ましい。該多官能アクリレートとしては、ペンタエリスリトール多官能アクリレート、ジペンタエリスリトール多官能アクリレート、ペンタエリスリトール多官能メタクリレート、及びジペンタエリスリトール多官能メタクリレートよりなる群から選ばれることが好ましい。ここで、多官能アクリレートとは、分子中に2個以上のアクリロイルオキシ基及び/またはメタクロイルオキシ基を有する化合物である。
(中略)
【0093】
《反射防止層》
本発明の中間層上には、反射防止層が積層され反射防止フィルムを形成する。
【0094】
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されていることが好ましいが、本発明においては、中間層上に直接ハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層が積層されることが好ましい。
【0095】
また、ハードコート層よりも屈折率の高い高屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成しても良い。更に、中屈折率層(ハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)が積層されても良い。その場合、本発明に係るカチオン重合性硬化樹脂は該層に各々含有させる必要がある。
【0096】
具体的な反射防止フィルムの層構成としては下記のような構成が考えられるが、これに限定されるものではない。
【0097】
フィルム基材/ハードコート層/中間層/低屈折率層
フィルム基材/ハードコート層/中間層/中屈折率層/低屈折率層
フィルム基材/ハードコート層/中間層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
フィルム基材/ハードコート層/中間層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層/中間層/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層/中間層/中屈折率層/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層/中間層/高屈折率層/低屈折率層
バックコート層/フィルム基材/ハードコート層/中間層/高屈折率層(導電性層)/低屈折率層
〔低屈折率層〕
まず、本発明の反射防止フィルムで好ましい低屈折率層について説明する。
【0098】
本発明における低屈折率層とは、ハードコート層の屈折率より低い層をいい、23℃、波長550nm測定で、屈折率が1.30~1.45の範囲であることが好ましい。
【0099】
低屈折率層の膜厚は、5nm~0.5μmであることが好ましく、10nm~0.3μmであることが更に好ましく、30nm~0.2μmであることが最も好ましい。
【0100】
(バインダー)
本発明の低屈折率層は、バインダーとしてカチオン重合性硬化樹脂を含有する。
【0101】
カチオン重合性硬化樹脂としては、エネルギー活性線照射や熱によってカチオン重合を起こして樹脂化するものであればいずれも使用できる。具体的には、エポキシ基、環状エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル化合物、ビニルオキソ基等が挙げられる。中でもエポキシ基やビニルエーテル基などの官能基を有する化合物が本発明においては、好適に用いられる。エポキシ基またはビニルエーテル基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3′,4′-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス-(6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル等が挙げられる。また、エポキシ化合物としては、ポリマー化合物も使用することができ、例えば、特開平7-247313号公報に開示されている手法で合成することができる。
(中略)
【0125】
その他、カチオン重合性硬化樹脂の重合を促進する化合物を用いることもでき、前記中間層に用いられるカチオン重合開始剤を使用することも好ましい。カチオン重合開始剤は、カチオン重合性硬化樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部の割合が好ましく、より好ましくは0.5~15質量部の割合で添加することが、低屈折率層形成組成物中での安定性、重合反応性等から好ましい。
(中略)
【0148】
本発明の低屈折率層には、外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含有することが好ましく、中でも該外殻層を有し内部が多孔質または空洞である粒子が中空シリカ系微粒子であることが好ましい。
(中略)
【0177】
このようにして得られた無機微粒子の屈折率は、1.42未満と低い。このような無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される。尚、中空シリカ系微粒子は触媒化成(株)から市販されているものも好ましく利用することができる。
(中略)
【0182】
低屈折率層は、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、インクジェット法等公知の方法を用いて、低屈折率層を形成する上記塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで形成される。」
ウ 「【0226】
(反射防止層の反射率)
反射防止フィルムの反射率(反射防止層の反射率)は、分光光度計、分光測色計により測定を行うことができる。その際、サンプルの測定側の裏面を粗面化処理した後、黒色スプレー、黒色アクリル板の貼り付け等して光吸収処理を行ってから、可視光領域(400~700nm)の反射光を測定する。
【0227】
本発明における反射防止フィルムとは反射率は低いほど好ましいが、可視光領域の波長における平均値が2.0%以下であることが、LCD等の画像表示装置の最表面に用いた場合の外光反射防止機能が好適に得られる点から好ましい。最低反射率は0.8%以下であることが好ましい。」
5 対比
本件発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「化合物(C1-2)」は、その化学構造からみて、本件発明の「化学式1」「で表わされる脂環式エポキシ樹脂前駆体」に相当する。また、引用発明の「化合物(C1-1)」は、その化学構造からみて、本件発明の「化学式2で表わされる脂環式エポキシ樹脂前駆体」に相当する。
(2)引用発明の「カチオン重合開始剤」は、技術的にみて、本件発明の「重合開始剤」に相当する。
(3)引用発明の「硬化性組成物」は、「硬化性化合物」としての「化合物(C1-1)又は化合物(C1-2)である成分(C)」(本件発明でいうところの「脂環式エポキシ樹脂前駆体」)及び「カチオン重合開始剤」を攪拌・混合することにより得た組成物である。そして、引用発明の「硬化性組成物」を硬化して得られる「硬化樹脂」は、「反射防止フィルムに使用できる」ものであり、反射防止フィルムは、技術的にみて、基材フィルム上に反射防止層を形成してなるものであるから、引用発明の「硬化樹脂」を使用して反射防止フィルムとするにあたり、基材フィルム上に「硬化樹脂」を硬化して得られる反射防止層を形成することは明らかである。
そうすると、引用発明の「硬化性組成物」は、本件発明の「反射防止層用樹脂組成物」に相当する。また、引用発明の「硬化性組成物」は、本件発明の「化学式1および/又は化学式2で表わされる脂環式エポキシ樹脂前駆体と重合開始剤を含む」という要件を満たしている。
(4)引用発明の「硬化樹脂」は、「硬化性組成物を硬化して得られるもの」であるから、「硬化性組成物」から形成されるものであるといえる。そうすると、引用発明の「硬化樹脂」は、本件発明の「反射防止層」に相当するとともに、「反射防止層用樹脂組成物から形成される」という構成を具備する。また、「反射防止層」は、「反射防止フィルム」をなす光学装置として機能するものであることも勘案すると、引用発明の「硬化樹脂」は、本件発明の「反射防止層を用いた光学装置」に相当するものともいえる。
(5)以上より、本件発明と引用発明とは、
「光学装置であって、化学式1および/又は化学式2で表わされる脂環式エポキシ樹脂前駆体と重合開始剤を含む反射防止層用樹脂組成物から形成される反射防止層を用いた光学装置。
【化1】
[ 上記式( 1 ) 中、- X - は- O - 、- S - 、- S O - 、- S O 2 - 、- C H 2 - 、- CH ( C H 3) - 、または- C ( C H 3 ) 2 - を表す。]
【化2】
」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]「反射防止層」が、本件発明は、「反射率が3%以下」であるのに対し、引用発明はこのように特定されたものではない点。
6 判断
上記[相違点]について検討すると、引用発明の「硬化樹脂」は、「反射防止フィルムに使用できる」ものである。そして、引用文献2の記載事項アの段落【0030】には、「フィルム基材上に、ハードコート層を塗布し、その上に反射防止層との結合用下地層としてカチオン重合開始剤を主成分とする中間層を設け、その上層にカチオン重合性硬化樹脂を含む反射防止層を塗布した反射防止フィルム」と記載されており、段落【0031】には、「本発明の構成によれば、高温高湿耐久試験前後の耐薬品性と密着性、耐擦傷性、高透明性及び高生産性を達成することができる。」と記載されている。また、記載事項イの段落【0094】には、「反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して積層されている」こと、段落【0101】には、カチオン重合性硬化樹脂として、「エポキシ基やビニルエーテル基などの官能基を有する化合物」が好適に用いられること、段落【0125】に、「カチオン重合開始剤を使用すること」、段落【0148】に、「低屈折率層には、外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を少なくとも1種類以上含有すること」、段落【0177】に、「無機微粒子は、多孔質粒子内部の多孔性が保持されているか、内部が空洞であるので、屈折率が低くなるものと推察される」こと、段落【0182】に、「低屈折率層は、・・・等公知の方法を用いて、低屈折率層を形成する上記塗布組成物を塗布し、塗布後、加熱乾燥し、必要に応じて硬化処理することで形成される」ことが記載され、記載事項ウの段落【0227】には、反射防止フィルムの反射率について、「可視光領域の波長における平均値が2.0%以下であることが、LCD等の画像表示装置の最表面に用いた場合の外光反射防止機能が好適に得られる点から好ましい。」と記載されている。そうすると、耐薬品性と密着性、耐擦傷性、高透明性及び高生産性を達成することができる反射防止フィルムとして、カチオン重合性硬化樹脂及びカチオン重合開始剤を含む反射防止層を塗布して硬化した反射防止フィルムであって、外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子を含有させることにより、その反射率の可視光領域の波長における平均値が2.0%以下となるように屈折率を調整した低屈折率層を有する反射防止フィルムは、本願の出願前において、当業者に知られていたといえる。
引用発明と引用文献2に記載された反射防止フィルムとは、耐久性及び光学特性に優れた反射防止フィルムを得ようとするものである点で共通するものである。したがって、引用発明の硬化樹脂に、引用文献2に記載された「外殻層を有し内部が多孔質または空洞の粒子」を含有させて屈折率を調整し、反射率について本件発明の条件を満足する「反射防止フィルム」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
次に、効果について検討すると、本願の明細書の段落【0007】における「本発明によれば、短時間で硬化が可能であり耐熱性や耐久性に優れる反射防止層用樹脂組成物と、これを用いることにより高い歩留まりで特性の良好な反射防止層及びこれを用いた光学装置を提供することが可能となる。」との記載に基づけば、本件発明の効果は、短時間で硬化が可能であり耐熱性や耐久性に優れる反射防止層用樹脂組成物を用いることにより高い歩留まりで特性の良好な反射防止層及びこれを用いた光学装置を提供することにあるといえる。
一方、引用文献1には、段落【0017】に、「本発明の硬化性組成物は、硬化させる前は低粘度で流動性が高く、金型等への流し込みが容易であり、カチオン重合することにより速やかに硬化樹脂を形成することができる。そのため、作業効率に優れる。また、140℃、2分間の加熱処理により、60%を超える優れた硬化率で硬化させることができる。そのため、加熱処理後の硬化樹脂を離型して更にアニール処理等の加熱処理を施す場合は、該加熱処理による硬化収縮の影響を最小に留めることができ、設計値からの形状誤差を極めて小さく、また硬化収縮による応力歪みや割れの発生を抑制することができる。」と記載されている。また、段落【0018】に、「得られる硬化樹脂は、高アッベ数を有するため光のにじみ(色収差)がなく、高い光学特性(光線透過率、屈折率、アッベ数等)、物理特性(耐熱性、柔軟性、耐水性等)を有するとともに、例えば260℃程度の高温条件下においても前記光学特性及び物理特性が変化しにくいという特性を有する。」と記載されている。これらの記載に基づけば、引用発明は、「カチオン重合することにより速やかに硬化樹脂を形成することができる」、つまり、短時間で硬化が可能なものである。また、引用発明は、「作業効率に優れる」ものであるから、効率的に光学部材を作製することが可能なものである。さらに、引用発明は、「260℃程度の高温条件下においても前記光学特性及び物理特性が変化しにくい」ものであるから、耐熱性や耐久性に優れるといえる。したがって、本件発明の効果は、引用発明から期待される効果の範囲内のものに過ぎない。
なお、本願の段落【0039】には、「本発明の反射防止膜用樹脂組成物は、前述のように短時間で硬化が可能であるため、効率的に反射防止層を作製することが可能となり、その結果高い寸法精度が要求される光学装置用の部材として使用することが出来る。」とも記載されている。そして、本願の段落【0040】の「これらの表示装置に所定の屈折率を有する樹脂組成物を用いて所定の厚みで層を作製すること、または凹凸を形成することで、反射防止層とすることができる。」との記載を参照すれば、「高い寸法精度」には、「所定の厚みで層を作製すること」が含まれる。そうしてみると、仮に段落【0039】に記載された事項を本件発明の効果と解することができたとしても、そのような効果は、引用発明から期待される効果の範囲内のものに過ぎない。
なお、本件発明は、反射防止層が、その少なくとも一方の表面に凹凸構造を有する構成を具備していないものであるから、段落【0039】における「高い寸法精度」が「凹凸構造」を形成することと限定解釈することはできない。仮に、「高い寸法精度」が「凹凸構造」を形成することであったとしても、引用文献1の段落【0017】には、「設計値からの形状誤差を極めて小さく、また硬化収縮による応力歪みや割れの発生を抑制することができる。」とも記載されている。当該記載に基づけば、引用発明は、表面に凹凸を有する周知の反射防止層に適用した場合にも、高い寸法精度が要求される光学部品として使用することができるものである。
以上より、本件発明の効果は、引用文献1の記載に基づいて当業者が予測できた範囲のものであって、格別なものということはできない。
7 むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記引用発明、引用文献1及び引用文献2の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-006541