特許拒絶査定不服審判
2018-003890
画像予測符号化装置、画像予測符号化方法、画像予測復号装置、及び、画像予測復号方法
- 審判番号
- 2018-003890
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-084633外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月19日
- 審決日
- 2019年12月24日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社NTTドコモ
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】黒木 義樹
- 【請求人代理人】沖山 隆
- 【請求人代理人】深石 賢治
- 分類
- P18 .55 -Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法17条の2第3項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016- 84633「画像予測符号化装置、画像予測符号化方法、画像予測復号装置、及び、画像予測復号方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-165135〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)7月14日(優先権主張日 平成22年7月20日)を国際出願日とする特願2012-525384の一部を平成26年12月2日に出願した特願2014-244133号の一部を平成27年3月9日に出願した特願2015-045725号の一部を平成28年4月20日に出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年4月13日付け:拒絶理由通知
6月 9日 :意見書提出および手続補正
7月12日付け:最後の拒絶理由通知
9月14日 :意見書提出および手続補正
12月 8日付け:補正却下の決定および拒絶査定
平成30年3月19日 :拒絶査定不服審判請求および手続補正
5月16日 :前置報告
令和1年 5月24日付け:審尋
7月26日 :回答書提出
第2 特許請求の範囲の請求項に係る発明
本願の願書(平成28年4月20日出願)に添付された特許請求の範囲の請求項3に係る発明(以下、「当初請求項3発明」という。)、平成29年6月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3(以下、「補正前請求項3発明」という。)、平成30年3月19日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正後請求項1発明」という。)は、以下のとおりである。
符号A~Oは説明のため当審で付与したものであり、以下、発明特定事項(A)~発明特定事項(O)と称する。上記の各請求項において同じ記載内容の発明特定事項には同じ符号を付し、各手続補正の補正事項により補正された発明特定事項の符号には「’」を付した。下線は補正箇所である。
(当初請求項3発明)
【請求項3】
(A)複数の領域に分割して符号化された画像の圧縮データの中から、復号対象となる対象領域の信号の予測に用いる予測方法を指示する予測情報の符号化データと、残差信号の符号化データとを抽出するデータ解析手段と、
(B)前記予測情報の符号化データから動き情報を復元する予測情報復号手段であって、
(C)前記予測情報の符号化データから、前記対象領域を小分割する予測領域の数を示す予測ブロック分割タイプを復元し、
(D)前記予測ブロック分割タイプが、前記対象領域が第1の予測領域と第2の予測領域を含むことを示す場合に、
(E)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に、該第1の予測領域に隣接する隣接領域のうち画面内予測により生成された隣接領域を除く隣接領域に付随する復号済み動き情報を含む動き情報候補を利用するか否かを示す第1のマージ識別情報を復元し、
(F)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を復元し、
(G)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用することを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記動き情報候補から前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を特定する第1の選択情報を復元し、該第1の選択情報に基づいて前記第1の動き情報を復元し、
(H)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第2の予測領域の予測信号の生成に該第2の予測領域に隣接する隣接領域に付随する復号済み動き情報を利用するか否かを示す第2のマージ識別情報を復元し、
(I)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を復元し、
(J1)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用することを示す場合に、
(J4)前記予測情報の符号化データを更に復号して、
(J5)前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報を除く復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、
(J6)該第2の選択情報に基づいて前記第2の動き情報を復元する、
(B)該予測情報復号手段と、
(K)復元した予測情報に含まれる動き情報を保存する保存手段と、
(L)復元された前記第1の動き情報と前記第2の動き情報に基づいて、前記対象領域に含まれる前記第1の予測領域と第2の予測領域の各々の予測信号を生成する予測信号生成手段と、
(M)前記残差信号の符号化データから前記対象領域の再生残差信号を復元する残差信号復元手段と、
(N)前記予測信号と前記再生残差信号とに基づいて前記対象領域の画素信号を復元し、該画素信号を既再生信号として保存する記録手段と、
(O)を具備する画像予測復号装置。
(補正前請求項3発明)
【請求項3】
(A)複数の領域に分割して符号化された画像の圧縮データの中から、復号対象となる対象領域の信号の予測に用いる予測方法を指示する予測情報の符号化データと、残差信号の符号化データとを抽出するデータ解析手段と、
(B)前記予測情報の符号化データから動き情報を復元する予測情報復号手段であって、
(C)前記予測情報の符号化データから、前記対象領域を小分割する予測領域の数を示す予測ブロック分割タイプを復元し、
(D’)前記予測ブロック分割タイプが、前記対象領域を左側の第1の予測領域と右側の第2の予測領域とに垂直に2分割するタイプを示す場合に、
(E)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に、該第1の予測領域に隣接する隣接領域のうち画面内予測により生成された隣接領域を除く隣接領域に付随する復号済み動き情報を含む動き情報候補を利用するか否かを示す第1のマージ識別情報を復元し、
(F)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を復元し、
(G)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用することを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記動き情報候補から前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を特定する第1の選択情報を復元し、該第1の選択情報に基づいて前記第1の動き情報を復元し、
(H)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第2の予測領域の予測信号の生成に該第2の予測領域に隣接する隣接領域に付随する復号済み動き情報を利用するか否かを示す第2のマージ識別情報を復元し、
(I)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を復元し、
(J1)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用することを示し、
(J3)且つ、前記第2の予測領域の上側において該第2の予測領域に隣接する上側領域の動き情報が前記第1の動き情報と一致する場合に、
(J4)前記予測情報の符号化データを更に復号して、
(J5’)前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報と前記上側領域の動き情報とを除く復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、
(J6)該第2の選択情報に基づいて前記第2の動き情報を復元する、
(B)該予測情報復号手段と、
(K)復元した予測情報に含まれる動き情報を保存する保存手段と、
(L)復元された前記第1の動き情報と前記第2の動き情報に基づいて、前記対象領域に含まれる前記第1の予測領域と第2の予測領域の各々の予測信号を生成する予測信号生成手段と、
(M)前記残差信号の符号化データから前記対象領域の再生残差信号を復元する残差信号復元手段と、
(N)前記予測信号と前記再生残差信号とに基づいて前記対象領域の画素信号を復元し、該画素信号を既再生信号として保存する記録手段と、
(O)を具備する画像予測復号装置。
(補正後請求項1発明)
【請求項1】
(A)複数の領域に分割して符号化された画像の圧縮データの中から、復号対象となる対象領域の信号の予測に用いる予測方法を指示する予測情報の符号化データと、残差信号の符号化データとを抽出するデータ解析手段と、
(B)前記予測情報の符号化データから動き情報を復元する予測情報復号手段であって、
(C)前記予測情報の符号化データから、前記対象領域を小分割する予測領域の数を示す予測ブロック分割タイプを復元し、
(D’)前記予測ブロック分割タイプが、前記対象領域を左側の第1の予測領域と右側の第2の予測領域とに垂直に2分割するタイプを示す場合に、
(E)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に、該第1の予測領域に隣接する隣接領域のうち画面内予測により生成された隣接領域を除く隣接領域に付随する復号済み動き情報を含む動き情報候補を利用するか否かを示す第1のマージ識別情報を復元し、
(F)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を復元し、
(G)前記第1のマージ識別情報が前記動き情報候補を利用することを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記動き情報候補から前記第1の予測領域の予測信号の生成に用いる第1の動き情報を特定する第1の選択情報を復元し、該第1の選択情報に基づいて前記第1の動き情報を復元し、
(H)前記予測情報の符号化データを更に復号して、前記第2の予測領域の予測信号の生成に該第2の予測領域に隣接する隣接領域に付随する復号済み動き情報を利用するか否かを示す第2のマージ識別情報を復元し、
(I)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用しないことを示す場合に、前記予測情報の符号化データを更に復号して、第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を復元し、
(J1)前記第2のマージ識別情報が復号済み動き情報を利用することを示し、
(J2)復号済み動き情報の候補が複数存在し、
(J3’)且つ、前記第2の予測領域の上側において該第2の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報が前記第1の動き情報と一致する場合に、
(J4)前記予測情報の符号化データを更に復号して、
(J5’’)前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報と前記一部の領域の動き情報とを除く前記復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、
(J6)該第2の選択情報に基づいて前記第2の動き情報を復元する、
(B)該予測情報復号手段と、
(K)復元した予測情報に含まれる動き情報を保存する保存手段と、
(L)復元された前記第1の動き情報と前記第2の動き情報に基づいて、前記対象領域に含まれる前記第1の予測領域と第2の予測領域の各々の予測信号を生成する予測信号生成手段と、
(M)前記残差信号の符号化データから前記対象領域の再生残差信号を復元する残差信号復元手段と、
(N)前記予測信号と前記再生残差信号とに基づいて前記対象領域の画素信号を復元し、該画素信号を既再生信号として保存する記録手段と、
(O)を具備する画像予測復号装置。
第3 平成30年3月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年3月19日付けの手続補正(以下、「審判請求時補正」という)を却下する。
[理由]
1.審判請求時補正の概要
審判請求時補正は、平成29年6月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5を、審判請求時補正による特許請求の範囲の請求項1ないし3に補正するものであり、審判請求時補正は、「補正前請求項3発明」を「補正後請求項1発明」とする補正事項(以下、「審判請求時補正事項」という。)を含むものである。
審判請求時補正事項は、以下のア~ウの補正事項(以下、「補正事項ア」~「補正事項ウ」という。)を含むものである。
ア 発明特定事項(J1)の後に、発明特定事項(J2)の「復号済み動き情報の候補が複数存在し、」との記載を追加することにより限定する補正
イ 発明特定事項(J3)の「且つ、前記第2の予測領域の上側において該第2の予測領域に隣接する上側領域の動き情報が前記第1の動き情報と一致する場合に、」について、発明特定事項(J3’)の「且つ、前記第2の予測領域の上側において該第2の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報が前記第1の動き情報」と限定する補正
ウ 発明特定事項(J5’)の「前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報と前記上側領域の動き情報とを除く復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、」について、発明特定事項(J5’’)の「前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報と前記一部の領域の動き情報とを除く前記復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、」と限定する補正
2.審判請求時補正の適合性
補正事項ア~ウが本願出願当初の明細書若しくは図面(以下、「当初明細書等」という)に記載された事項の範囲内であるかどうかについて、以下に検討する。
(1)当初明細書等に記載された事項
当初明細書等には、画像符号化装置の予測情報符号器116、及び画像復号装置の予測情報復号器208について、以下の記載がある(下線は強調のため当審で付したものである。)。
ア ブロックマージングに用いる動き情報の候補の選出について
「【0067】
次に、予測情報符号化器116の処理について説明する。予測情報符号化器116は、まず、各予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補(対象予測領域の予測信号生成に用いる動き情報の候補)を対象予測ブロックに隣接するブロックの動き情報から選出する。ブロックマージングとは、対象予測ブロックの予測信号を隣接ブロックの動き情報を用いて生成することを示す。次に、予測情報符号化器116は、動き情報推定器114にて検出した動き情報と選出された動き情報の候補を比較し、ブロックマージングの実施の可否を判断する。そして、予測情報符号化器116は、ブロックマージングに用いる動き情報の候補の数とブロックマージングの実施の可否に応じて、ブロックマージング情報と動き情報のいずれか或いは両方を予測ブロック分割タイプと共にエントロピー符号化する。ブロックマージング情報は、隣接ブロックの動き情報を利用して対象予測ブロックの予測信号を生成するか否か、すなわちブロックマージングの実施の可否を指示するマージ識別情報(merge_flag)と対象予測ブロックに隣接する2つのブロックの動き情報のうち、いずれを用いて対象予測ブロックの予測信号を生成するかを示すマージブロック選択情報(merge_flag_left)にて構成される。
【0068】
各予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補が0個の場合にはこれら2つの情報、即ち、マージ識別情報及びマージブロック選択情報は符号化する必要がない。動き情報の候補が1個の場合には、マージ識別情報を符号化し、動き情報の候補が2個以上であり、ブロックマージングを実施する場合には、2つの情報、即ち、マージ識別情報及びマージブロック選択情報を符号化する。動き情報の候補が2個以上であっても、ブロックマージングを実施しない場合には、マージブロック選択情報の符号化は必要ない。
【0069】
図3は、一実施形態の予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補の選出処理を説明するための模式図である。図3は、図20の(B)に示すブロック301と同様に、符号化ブロックを縦に2分割する(左右の二つのブロックに分割する)予測ブロック分割タイプの例を示している。以降、このブロック301を例に説明するが、ブロック302、304、305、306、307でも同様の説明が可能である。
【0070】
動き情報の候補の選出は、以下の情報に基づいて実施する。
1)対象符号化ブロック内の符号化済み/復号済み予測ブロックの数
2)対象符号化ブロックの予測ブロック分割タイプ
3)対象予測ブロックに隣接するブロックの予測ブロック分割タイプ
4)対象符号化ブロック内の符号化済み/復号済み予測ブロックの動き情報
5)対象予測ブロックに隣接するブロックの動き情報と予測モード(画面内予測/画面間予測)
【0071】
図3の例では、1)と2)と4)と5)の情報を用いて、ブロックマージングに用いる動き情報の候補を選出する。
【0072】
まず、2)の情報より、対象符号化ブロック400内の予測ブロックの総数が予測ブロックT1とT2の2個であり、符号化ブロックが縦に2分割されることが分かる。次の予測ブロックが予測ブロックT1であるか予測ブロックT2であるかは、1)の情報より分かる。
【0073】
次の予測ブロックが予測ブロックT1(対象符号化ブロック内の符号化済み/復号済み予測ブロックの数が0)のときは、隣接ブロックAと隣接ブロックBの動き情報がブロックマージングの動き情報の候補となる(図面内の矢印は、隣接ブロックAとBの動き情報が、予測ブロックT1の予測信号の生成に用いる動き情報の候補であることを示す)。この際、隣接ブロックA又はBが画面内予測にて生成されたブロックや画面外のブロックである場合には、そのブロックの動き情報をブロックマージングの動き情報の候補から除外するようにしてもよい(擬似的に動き情報をデフォルト値とすることも可能。例えば、動きベクトルを0とし、参照画面番号を0とする)。また、2つの隣接ブロックAとBの動き情報が一致する場合には、一方の隣接ブロックの動き情報を候補から外すようにしてもよい。」
【0074】
次の予測ブロックが予測ブロックT2(対象符号化ブロック内の符号化済み/復号済み予測ブロックの数が1個)のときは、図3の(A)に示すように、隣接ブロックであるT1の動き情報はブロックマージングの動き情報の候補から除外される。これは、予測ブロックT1と予測ブロックT2は、本来異なる動き情報にて予測信号が生成されることを想定して2つに分割されているためである。つまり、これは、予測ブロックT1の動き情報と予測ブロックT2の動き情報が同じ動き情報となることを避けるためである。この処理により、予測ブロックT2のブロックマージングの動き情報が1個となるため、マージブロック選択情報の符号化に要するコストを削減できる(図面内の矢印は、隣接ブロックDの動き情報は予測ブロックT2の予測信号の生成に利用可能であることを示す)。
【0075】
さらに、上記4)と5)の情報に基づいて、予測ブロックT1と隣接ブロックDの動き情報を比較し、予測ブロックT1と隣接ブロックDの動き情報が一致する場合には、図3の(B)に示すように隣接ブロックDの動き情報もブロックマージングの動き情報の候補から除外される。この理由は、隣接ブロックDの動き情報を用いて予測ブロックT2の予測信号を生成した場合、予測ブロックT1とT2の動き情報が同じとなるためである。この処理により、予測ブロックT2のブロックマージングの動き情報が0個となり、マージ識別情報とマージブロック選択情報の符号化に要するコストが削減できる。」
図3には以下の図がある。
「
」
イ 予測情報復号器208の処理について
「【0096】
図7は、図3の処理を実現する予測情報復号器208のフローチャートである。
【0097】
最初に予測情報復号器208は、対象符号化ブロックの予測ブロック分割タイプを復号し、予測情報用メモリ115に保存する。同時に、予測情報復号器208は、復号した予測ブロック分割タイプに基づいて、対象符号化ブロック内の予測ブロック数Nを設定し、対象予測ブロック番号iを0にリセットする(ステップS251)。次に、予測情報復号器208は、対象予測ブロックが対象符号化ブロック内で最後に復号される予測ブロックであり、対象符号化ブロック内の予測ブロック数が2以上であるかを判断する(ステップS252)。例えば、N=2の場合では、i=1のとき、判定が可となり、処理はステップS258に進む。N=4(図20の(D))の場合では、i=3のとき、判定が可となる。判定が否の場合には処理はステップS253に進む。図3では、対象予測ブロックが予測ブロックT1のとき処理はステップS253に進み、対象予測ブロックが予測ブロックT2のとき処理はステップS258に進む。
【0098】
ステップS253では、マージ識別情報が復号される。ここで、マージ識別情報が可(merge_flag=1)であるときは、マージ識別情報は、動き情報の候補を用いて対象予測ブロックの予測信号を生成することを示す。一方、マージ識別情報が否(merge_flag=0)であるときは、復号した動き情報を用いて対象予測ブロックの予測信号を生成することを示す。次のステップS254では、予測情報復号器208は、マージ識別情報が動き情報の復号を指示しているか、つまりmerge_flagの値が0であるかを判定する。復号したmerge_flagの値が0の場合には、予測情報復号器208は、対象予測ブロックの予測信号を生成するための動き情報を復号し(ステップS257)、処理はステップS267に進む。merge_flagの値が1の場合には、予測情報復号器208は、ステップS266において、ブロックマージングに用いる動き情報の候補の数が2個であるかを判定し、候補の数が2個の場合にはマージブロック選択情報を復号し、処理はステップS256に進む(ステップS255)。対象予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補の数が1個の場合には、処理はステップS256に進む。ステップS256では、動き情報の候補の数が1個の場合には、予測情報復号器208は、その動き情報を対象予測ブロックの動き情報に決定する。動き情報の候補の数が2個の場合には、予測情報復号器208は、マージブロック選択情報にて指示される隣接ブロックの動き情報を対象予測ブロックの動き情報に決定する。
【0099】
ステップS258では、予測情報復号器208は、対象符号化ブロックの全ての復号済み動き情報と対象符号化ブロックに属さない隣接ブロックの動き情報が一致するかを判定する。このステップS258の説明は、N=2の場合には、図3に示す予測ブロックT1と隣接ブロックDの動き情報を比較することを意味する。また、このステップS258の説明は、N=4(図20の(D))の場合には、対象予測ブロックが右下の分割ブロックであり、それ以外の3つの予測ブロック(左上、右上、左下)の動き情報を比較することを意味する。判定が可(比較した動き情報が一致)の場合には、図3の(B)の例で示したように、対象予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補の数が0個となるため、予測情報復号器208は、ブロックマージング情報を復号せずに、対象予測ブロックの予測信号生成に用いる動き情報を復号し、処理はステップS267に進む(ステップS262)。一方、判定が否(比較した動き情報が不一致)の場合、処理はステップS265に進む。なお、N=4のときは、対象符号化ブロック内の、右上と左下のブロックの動き情報が対象予測ブロックの隣接ブロックとなる。そのため、3つの予測ブロック(左上、右上、左下)の動き情報が一致するときに対象予測ブロック(右下)にブロックマージングを適用することは、対象符号化ブロック内の4つの予測ブロックの予測信号が全て同じ動き情報で生成されることを意味する。そのため、N=4で3つの予測ブロック(左上、右上、左下)の動き情報が同じ場合には、対象予測ブロック(右下)の動き情報の候補を0個とする。
【0100】
ステップS265では、予測情報復号器208は、対象符号化ブロックの予測ブロック分割タイプが2分割のタイプであるかを判定し、判定が否の場合には処理はステップS253に進む(以降説明を割愛)。ステップS265の判定が可の場合には処理はステップS259に進み、予測情報復号器208はマージ識別情報を復号する。この場合、図3の(A)の例のように、対象予測ブロックのブロックマージングに用いる動き情報の候補の数が1個であるため、マージブロック選択情報の復号は不要である。
【0101】
次のステップS260では、予測情報復号器208は、マージ識別情報が動き情報の復号を指示しているか、つまりmerge_flagの値が0であるかを判定する。復号したmerge_flagの値が0の場合には、予測情報復号器208は、対象予測ブロックの予測信号を生成するための動き情報を復号し(ステップS262)、処理はステップS267に進む。merge_flagの値が1の場合には、処理はステップS261に進む。ステップS261では、動き情報の候補が1個であるため、図3の(A)に示すように、予測情報復号器208は、隣接ブロックDの動き情報を対象予測ブロックの動き情報に決定し、処理はステップS267に進む。
【0102】
ステップS267では、復元した予測ブロックの動き情報を予測情報用メモリ115に保存する。続いて、ステップS263にて、予測情報復号器208は、対象符号化ブロック内のすべての予測ブロックの復号が終了したか(i=N-1であるか)を判定し、i=N-1のときは、この対象符号化ブロックの予測情報復号処理を終了し、iN-1のときには、ステップS264にてiを更新し(i=i+1)、次の予測ブロックの動き情報復号処理のためステップS252に戻る。」
図7には以下の図がある。
「
」
ウ 予測領域の上側において予測領域に隣接する、複数の上側領域の動き情報について
「【0119】
図12は、符号化ブロック400と隣接ブロック402が同様に縦に2分割されているが、分割形状が異なる場合の例を示している。この例でも、図12の(A)の予測ブロックT1(ブロックT1a及びT1bを含むブロック)と図12の(B)の予測ブロックT2(ブロックT2a及びT2bを含むブロック)が3個の隣接ブロックを有する。図12の(A)のT1については、図11の処理フローを図7のステップS256に適用することにより、予測ブロックT1を仮想的に縦に2分割したT1aとT1bに、それぞれブロックBaとBbの動き情報を設定したブロックマージングを実施することが可能となる。また、図12の(B)のT2については、次に説明する図13の処理フローを図7のステップS261に適用することで、予測ブロックT2を仮想的に縦に2分割したT2aとT2bに、それぞれブロックBaとBbの動き情報を設定したブロックマージングを実施することが可能となる。この際、仮想ブロック毎に第2のマージ識別情報を伝送し隣接ブロックの動き情報で仮想ブロックの予測信号を生成するか、動き情報を符号化/復号するかを識別するようにしてもよい。
【0120】
なお、予測ブロックT2を分割せずに、予測ブロックT2のブロックマージングに用いる動き情報の候補をブロックBaの動き情報とブロックBbの動き情報の2個とし、ブロックBaの動き情報及びブロックBbの動き情報のうち一つをT2の予測信号の生成に用いる動き情報として選択するようにしてもよいが、その場合には、図7のフローを下記のように拡張する必要がある。
1.図4のステップS158と図7のステップS259の後に、「隣接ブロックの予測ブロック分割タイプを取得し、予測ブロックに隣接するブロックの数を導出する」フローを追加。
2.図4のステップS159と図7のステップS260を「選択候補の動き情報が2個以上」に変更。
3.図4のステップS159と図7のステップS260の後にブロック選択情報の符号化/復号を行うステップを追加。」
図12には以下の図がある。
「
」
エ 図7のフローチャートを、段落【0120】の1.、2.、3.の記載に従い拡張したものが、平成30年3月19日付け審判請求書の「【請求の理由】」の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)補正が適法である理由」の「イ 上記(A)の指摘に対する意見」において添付された、下記【参考図1】である。
「
」
オ 上記(1)のアの記載、及び図3(A)(B)におけるT1、T2、A、B、Dの位置から、ブロックマージングに用いる動き情報の候補を選出することについて、以下のことがいえる。
(ア) 符号化ブロックが縦に2分割される予測ブロックT1とT2について、次の予測ブロックが左側の予測ブロックT1のときは、予測ブロックT1の左側の隣接ブロックAと上側の隣接ブロックBの動き情報がブロックマージングの動き情報の候補となり、2つの隣接ブロックAとBの動き情報が一致する場合には、一方の隣接ブロックの動き情報をブロックマージングの動き情報の候補から外すようにしてもよい。
(イ) 次の予測ブロックが右側の予測ブロックT2のときは、左側の予測ブロックT1と予測ブロックT2の動き情報が同じ動き情報となることを避けるため、左側の隣接ブロックであるT1の動き情報はブロックマージングの動き情報の候補から除外され、さらに、左側の予測ブロックT1と上側の隣接ブロックDの動き情報が一致する場合には、隣接ブロックDの動き情報もブロックマージングの動き情報の候補から除外される。
上記イ、ウ、エ、及び図12(A)(B)におけるT1、T2、Ba、Bbの位置から、以下のことがいえる。
(ウ) 予測ブロックT2のブロックマージングに用いる動き情報の候補を予測ブロックT2の上側の隣接ブロックBaの動き情報と、予測ブロックT2の上側に隣接し、かつブロックBaの右側に隣接するブロックBbの動き情報の2個とし、ブロックBaの動き情報及びブロックBbの動き情報のうち一つをT2の予測信号の生成に用いる動き情報として選択するようにしてもよい。
(エ) 参考図1のステップS259において、マージ識別情報を復号した結果、以下の処理を行う。
(エ-1) ステップS260(変更(2))において選択候補の動き情報が2個以上存在する場合、ブロック選択情報を復号する。
(エ-2) 一方、ステップS260(変更(2))において選択候補の動き情報が1個の場合、ステップS262において、予測情報復号器208は、対象予測ブロックの予測信号を生成するための動き情報を復号する。
(2)発明特定事項(J2)が当初明細書に記載された事項であるかどうかの検討
上記(1)の(エ)、(エ-1)によれば、マージ情報を復号した結果、選択候補の動き情報が2個以上ある場合、すなわち「復号済み動き情報の候補が複数存在」する場合について記載されている。
そうすると、発明特定事項(J2)については、当初明細書等に記載されているといえる。
(3)発明特定事項(J3’)、(J5’’)に関する検討
発明特定事項(J3’)、(J5’’)を検討するにあたり、予め「前記第2の予測領域」、「前記第1の動き情報」について検討する。
「前記第2の予測領域」とは、発明特定事項(A)における「復号対象となる対象領域」を、発明特定事項(D’)における「左側の第1の予測領域と右側の第2の予測領域とに垂直に2分割」にした場合の「右側」の「予測領域」にあたる。
また、「前記第1の動き情報」とは、発明特定事項(F)における「前記第1の予測領域」、すなわち、発明特定事項(D’)における「左側」の「予測領域」の「予測信号の生成に用いる第1の動き情報」である。
そうすると、発明特定事項(J3’)は、発明特定事項(j3’)
「且つ、復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域の上側において、該右側の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報が、復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と一致する場合に」
と読み替えることができる。
また、発明特定事項(J5’’)は、発明特定事項(j5’’)
「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と該右側の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報とを除く前記復号済み動き情報の候補から、前記右側の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、」
と読み替えることができる。
以上の読み替えを行った上で、発明特定事項(j3’)、(j5’’)が当初明細書に記載された事項であるかどうかについて検討する。
(4)発明特定事項(j3’)、(j5’’)が当初明細書に記載された事項であるかどうかの検討
上記(1)オの(ア)(イ)によれば、符号化ブロックが縦に2分割される予測ブロックT1とT2について、左側の予測ブロックが予測ブロックT1であり、右側の予測ブロックが予測ブロックT2であるといえる。
また、上記(1)オの(ウ)によれば、予測ブロックT2の上側に隣接するブロックBaとブロックBbの動き情報があることいえる。
ここで、左側の予測ブロックT1の動き情報と、上側に隣接するブロックBaまたはBbの少なくともいずれか一方の動き情報が一致する場合は生じうるものであり、この場合が発明特定事項(j3’)の場合に相当する。
以上のことから、発明特定事項(j3’)については、当初明細書等に記載されているといえ、発明特定事項(j3’)の元となる発明特定事項(J3’)についても同様に、当初明細書等に記載されているといえる。
一方、(1)オの(ア)(イ)によれば、予測ブロックが予測ブロックT2である場合には、左側の予測ブロックT1の動き情報はブロックマージングの動き情報の候補から除外され、左側の予測ブロックT1と上側の隣接ブロックDの動き情報が一致する場合には、隣接ブロックDの動き情報もブロックマージングの動き情報の候補から除外されるといえる。
してみると、左側の予測ブロックT1の動き情報と、上側に隣接するブロックBaまたはBbの少なくともいずれか一方の動き情報が一致する場合、すなわち、発明特定事項(j3’)を満たす場合、は、T1に加えてT1と動き情報が一致するBaまたはBbの少なくとも一方が動き情報の候補から除外される。
このとき、右側の予測領域に隣接する複数の上側の領域が2箇所しかないことから、発明特定事項(j5’’)において、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち」、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と該右側の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報とを除く」と、復号済み動き情報の候補は多くても1つしかなく、復号済み動き情報を特定するための選択情報を復元することはない。
以上のことから、発明特定事項(j3’)が満たされる場合、発明特定事項(j5’’)の「前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元」することはない。
また、当初明細書等の他の箇所に、上記発明特定事項(j5’’)に関連する事項であって、上記(1)オの(ア)~(エ)以外の内容を含み、かつ上記発明特定事項(j5’’)が明細書等に記載されていた事項であるということを裏付ける記載を見いだすことができない。
したがって、発明特定事項(j5’’)に関して、当初明細書等には記載も示唆もなく、当初明細書等の記載から自明に導き出せる事項であるともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり、発明特定事項(j5’’)の元となる発明特定事項(J5’’)についても同様に、当初明細書等には記載も示唆もなく、当初明細書等の記載から自明に導き出せる事項であるともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
3. まとめ
以上のとおり、発明特定事項(J2)、(J3’)、(J5’’)を具備するようにする補正を含む審判請求時補正は、本願出願時の明細書等に記載した事項内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
4. 審判請求人の主張について
請求人は、平成30年3月19日付け審判請求書の「【請求の理由】」の「3.本願発明が特許されるべき理由」の「(2)補正が適法である理由」の「イ 上記(A)の指摘に対する意見」および「ウ 上記(B)の指摘に対する意見」において、次の(イ)および(ウ)の主張(以下、「主張イ」、「主張ウ」という。)をしている。
(イ)段落0074、段落0075の記載から、段落0075に記載された処理が、「予測ブロックT1の動き情報と予測ブロックT2の動き情報とが同じとなることを防止することを目的とした処理であり、予測ブロックT2のブロックマージングに用いる動き情報の候補を選出する際の基本方針としての位置付けを有するものであることは明白である」、したがって、発明特定事項(J3’)の場合に、候補から「前記一部の領域の動き情報」が除かれることは、段落0074、0075及び0120等の記載から自明な事項である。
(ウ)当初明細書の段落0120は、具体例として上側領域の個数が2つ(ブロックBa,Bb)である場合を例示しているが、上側領域の個数が3つ以上の場合にも上述同様の処理を実行可能であることは自明である。すなわち、段落0075に記載された上記基本方針を踏まえれば、3つ以上の上側領域のうちの一部の領域の動き情報が予測ブロックT1(第1の予測領域)の動き情報と一致する場合に、当該一部の領域の動き情報が選択候補(復号済み動き情報の候補)から除外される一方で、残りの複数の上側領域の動き情報(予測ブロックT1の動き情報と一致しない動き情報)が選択候補に含まれ得ることは自明である。
そこで、上記主張イ、ウについて検討する。
(1)主張イについて
上記2.(4)において検討したとおり、ブロックマージングの動き情報の候補から「前記一部の領域の動き情報」が除かれることは当審においても認めており、このとき、右側の予測領域に隣接する複数の上側の領域が2箇所しかないことから、発明特定事項(j5’’)において、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち」、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と該右側の予測領域に隣接する複数の上側領域のうちの一部の領域の動き情報とを除く」と、復号済み動き情報の候補は多くても1つしかなく、復号済み動き情報を特定するための選択情報を復元することはない。
すなわち、発明特定事項(J5’’)における「前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元」することは当初明細書等には記載されておらず、かつ当初明細書等の記載から当業者にとって自明の事項であるということはできない。
(2)主張ウについて
予測ブロック分割タイプについて、明細書段落【0057】には以下の記載がある。
「【0057】
予測ブロック分割タイプ選択器113は、符号化処理の対象となる対象領域(対象符号化ブロック)を予測処理が行われる予測領域に分割する。例えば、符号化ブロック毎に図20の(A)~(H)の何れかを選択して当該符号化ブロックを小分割する。分割された領域を予測領域(予測ブロック)と呼び、図20の(A)~(H)の各分割方法を予測ブロック分割タイプと呼ぶ。予測ブロック分割タイプの選択方法は限定されるものではない。例えば、ラインL102を経由して入力された対象符号化ブロックの信号に対して各小分割を実施し、後述する予測処理や符号化処理を実際に実施して、符号化ブロックの原信号と再生信号との間の符号化誤差信号電力と符号化ブロックの符号化に要する符号量から算出されるレート歪値が最小となる分割タイプを選択する方法などが利用できる。対象符号化ブロックの予測ブロック分割タイプはラインL113aとラインL113bとラインL113cを経由してそれぞれ、予測情報用メモリ115と動き情報推定器114と予測信号生成器103に出力される。」
また、図20には以下の図がある。
「
」
しかしながら、これらを見ても、図20(A)~(H)の各予測ブロック分割タイプの選択方法が限定されないことがいえるにすぎず、図20(A)~(H)以外の予測分割タイプとして、上側領域の個数が3つ以上の場合が存在するような予測ブロック分割タイプ(例えば、隣接ブロック402のうち図12(B)の予測ブロックT2(図12(B)のブロックT2a及びT2bを含むブロック)の上側に隣接する部分を3つ以上に分割するような予測ブロック分割タイプ)は、当初明細書等に記載されておらず、また当初明細書等の記載から自明であるとはいえない。
さらに、上側領域が3つ以上の場合が存在するような予測ブロック分割タイプに関連する事項が、当初明細書等の他の箇所に記載されていた事項であるか、または当初明細書等の記載から自明であることを示す根拠は見いだせない。
なお、上記主張イ、ウに関して、令和1年5月24日付けで審尋したところ、これに対する令和1年7月26日の回答書において、審判請求人からは上記補正が適法であることの根拠については何らの回答もなく、特許請求の範囲の発明特定事項(J5’’)の一部分を削除することを含む補正を行う機会を求める旨の回答がなされたのみであった。
したがって、審判請求人の主張は採用できない。
第4 本願発明について
1 本願発明
平成30年3月19日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年6月9日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであり、そのうち、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2に示した「補正前請求項3発明」と記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 本件補正
平成29年6月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし5を、本件補正による特許請求の範囲の請求項1ないし5に補正するものであり、本件補正は、「当初請求項3発明」を「本願発明」とするものであり、以下のエ~カの補正事項(以下、補正事項エ」~「補正事項カ」という)を含むものである(下線は補正箇所を示す。)。
(エ) 発明特定事項(D)における「予測ブロック分割タイプ」を、発明特定事項(D’)として「対象領域を左側の第1の予測領域と右側の第2の予測領域とに垂直に2分割するタイプを示す場合」とする補正
(オ) 発明特定事項(J1)の後に、本件補正後の請求項3の発明特定事項(J3)「且つ、前記第2の予測領域の上側において該第2の予測領域に隣接する上側領域の動き情報が前記第1の動き情報と一致する」場合という事項を追加する補正
(カ) 発明特定事項(J5)における「前記第1の動き情報を除く復号済み動き情報の候補」を、発明特定事項(J5’)として「前記第1の動き情報と前記上側領域の動き情報とを除く復号済み動き情報の候補」とする補正
3 原査定における拒絶の理由
原査定は、本件補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないという拒絶の理由を含むものである。
補正後の請求項3の発明特定事項(J1)、(J3)、(J4)、(J5’)及び(J6)は、当初明細書等には記載されていない。
すなわち、以下の点は、当初明細書等には記載されていない。
(iii)発明特定事項(J1)及び(J3)(上述の通り、上側領域の動き情報が第1の動き情報と一致する場合には、そもそも、第2のマージ識別情報は送られていない)。
(iv)発明特定事項(J1)、(J3)及び(J4)(上述の通り、上側領域の動き情報が第1の動き情報と一致する場合には、そもそも、マージは行わないのであるから、第2の選択情報も復元されていない)。
(v)発明特定事項(J3)の場合に、発明特定事項(J5’)の「前記第2の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、前記第1の動き情報と前記上側領域の動き情報とを除く復号済み動き情報の候補から、前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する」という事項(上述の通り、上側領域の動き情報が第1の動き情報と一致する場合には、そもそも、マージは行われていない)。
第5 本件補正に対する当審の判断
1 当初明細書等に記載された事項
当初明細書等における、画像符号化装置の予測情報符号器116、及び画像復号装置の予測情報復号器208についての記載は、上記「第3 平成30年3月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]の2(1)のとおりである。
2 発明特定事項(J3)、(J5’)に関する検討
発明特定事項(J3)、(J5’)を検討するにあたり、予め「前記第2の予測領域」、「前記第1の動き情報」について検討する。
「前記第2の予測領域」とは、発明特定事項(A)における「復号対象となる対象領域」を、発明特定事項(D’)における「左側の第1の予測領域と右側の第2の予測領域とに垂直に2分割」にした場合の「右側」の「予測領域」にあたる。
また、「前記第1の動き情報」とは、発明特定事項(F)における「前記第1の予測領域」、すなわち、発明特定事項(D’)における「左側」の「予測領域」の「予測信号の生成に用いる第1の動き情報」である。
そうすると、発明特定事項(J3)は、発明特定事項(j3)
「且つ、復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域の上側において該右側の予測領域に隣接する上側領域の動き情報が復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と一致する場合に」
と読み替えることができる。
また、発明特定事項(J5’)は、発明特定事項(j5’)
「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち、復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と該右側の予測領域に隣接する上側領域の動き情報とを除く復号済み動き情報の候補から、前記右側の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元し、」
と読み替えることができる。
以上の読み替えを行った上で、発明特定事項(j3)、(j5’)が当初明細書に記載された事項であるかどうかについて検討する。
3 発明特定事項(j3)、(j5’)が当初明細書に記載された事項であるかどうかの検討
上記「第3 平成30年3月19日付けの手続補正についての補正の却下の決定」の「2.審判請求時補正の適合性」の(1)オの(ア)(イ)によれば、符号化ブロックが縦に2分割される予測ブロックT1とT2について、左側の予測ブロックが予測ブロックT1であり、右側の予測ブロックが予測ブロックT2であるといえる。
また、同(1)オの(イ)によれば、予測ブロックT2の上側に隣接するブロックDの動き情報があることいえる。
ここで、左側の予測ブロックT1の動き情報と、上側に隣接するブロックDの動き情報が一致する場合は生じうるものであり、この場合が発明特定事項(j3)の場合に相当する。
以上のことから、発明特定事項(j3)については、当初明細書等に記載されているといえ、発明特定事項(j3)の元となる発明特定事項(J3)についても同様に、当初明細書等に記載されているといえる。
一方、同(1)オの(ア)(イ)によれば、予測ブロックが予測ブロックT2である場合には、左側の予測ブロックT1の動き情報はブロックマージングの動き情報の候補から除外され、左側の予測ブロックT1と上側の隣接ブロックDの動き情報が一致する場合には、隣接ブロックDの動き情報もブロックマージングの動き情報の候補から除外されるといえる。
このとき、発明特定事項(j5’)において、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の右側の予測領域に隣接する複数の隣接領域に付随する復号済み動き情報のうち」、「復号対象となる対象領域を垂直に2分割した場合の左側の予測領域の動き情報と該右側の予測領域に隣接する上側領域の動き情報とを除く」と、右側の予測領域に隣接する領域は存在しないことから、復号済み動き情報の候補は存在しないので、復号済み動き情報を特定するための選択情報を復元することはない。
以上のことから、発明特定事項(j3)が満たされる場合、発明特定事項(j5’)の「前記第2の予測領域の予測信号の生成に用いる第2の動き情報を特定する第2の選択情報を復元」することはない。
また、当初明細書等の他の箇所に、上記発明特定事項(j5’)に関連する事項であって、同(1)オの(ア)(イ)以外の内容を含み、かつ上記発明特定事項(j5’)が明細書等に記載されていた事項であるということを裏付ける記載を見いだすことができない。
したがって、発明特定事項(j5’)に関して、当初明細書等には記載も示唆もなく、当初明細書等の記載から自明に導き出せる事項であるともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであり、発明特定事項(j5’)の元となる発明特定事項(J5’)についても同様に、当初明細書等には記載も示唆もなく、当初明細書等の記載から自明に導き出せる事項であるともいえず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。
4 まとめ
以上を総合すると、発明特定事項(J3)、(J5’)を具備するようにする補正を含む本件補正は、当初明細書等に記載した事項内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
第6 むすび
以上のとおり、平成29年6月9日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないとの理由は依然として解消していない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2018-003890