特許拒絶査定不服審判
2025-009314
5G NRのリリース17のタイプIIポート選択コードブック用のCSI報告の方法
- 審判番号
- 2025-009314
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-561655
- 請求日
- 2025年06月16日
- 審決日
- 2026年04月06日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社NTTドコモ
- 【請求人代理人】インフォート弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 洋
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 松原 徳久
- 分類
- P18 .121-Z (H04B) / P18 .562-Z (H04B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第184条の12第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-561655「5G NRのリリース17のタイプIIポート選択コードブック用のCSI報告の方法」拒絶査定不服審判事件〔令和4年10月13日国際公開、WO2022/216550、令和6年4月4日国内公表、特表2024-515046〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2022年(令和4年)4月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2021年4月7日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。
令和 6年 5月23日 手続補正書
10月15日付け 拒絶理由通知書
12月19日 意見書
令和 7年 3月11日付け 拒絶査定
6月16日 審判請求書・手続補正書
7月24日付け 前置報告書
9月26日 上申書
以下では、令和7年3月11日付け拒絶査定を「原査定」といい、同年6月16日の手続補正書による補正を「本件補正」という。
第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
事案に鑑み、請求項1に係る本件補正について検討する。本件補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載を、それぞれ以下の(1)及び(2)に示す。
以下の(1)及び(2)を参照すると、本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明である「端末」について、「複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つを設定する上位レイヤシグナリングを受信する受信部」を有するとの限定を付加し、さらに、「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造は、前記複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つに対応する」との限定を付加するものであると認められる。
(1)本件補正前の請求項1の記載
本件補正前の請求項1の記載は、次のとおりである。
【請求項1】
プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部と、
前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、
前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御する、端末。
(2)本件補正後の請求項1の記載
本件補正後の請求項1の記載は、次のとおりである。なお、下線は補正箇所を示す。
【請求項1】
複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つを設定する上位レイヤシグナリングを受信する受信部と、
プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部と、
前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、
前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御し、
前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造は、前記複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つに対応する、端末。
2 本件補正の新規事項追加の有無
請求項1に係る本件補正は、前記1のとおり、「端末」について、「複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つを設定する上位レイヤシグナリングを受信する受信部」を有するとの限定を付加し、さらに、「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造は、前記複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つに対応する」との限定を付加するものである。
しかしながら、本願の国際出願日における明細書、請求の範囲若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文又は国際出願日における図面(図面の中の説明を除く。)(以下「翻訳文等」という。)には、「上位レイヤシグナリング」によって「複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つを設定する」ことについて記載がない。したがって、請求項1に係る本件補正により付加された事項は、翻訳文等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
よって、本件補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められず、特許法184条の12第2項において準用する同法17条の2第3項の規定に違反する。
3 本件補正についての請求人の主張について
請求人は、審判請求書にて、本件補正の根拠が明細書の翻訳文の【0005】、【0056】及び【0057】である旨を主張する。
しかしながら、【0005】には、Rel.15/16のタイプIIポート選択コードブックの拡張と、CSIがUEによって報告されることは記載されているが、複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つを上位シグナリングによって設定することは記載されていない。
また、【0056】及び【0057】には、上位レイヤによってRel.17のタイプIIポート選択コードブックが設定されることが記載されているが、複数種類のタイプIIポート選択コードブックの内の1つを上位シグナリングによって設定することは記載されていない。
よって、請求人の主張は採用できない。
4 本件補正についてのむすび
以上によれば、本件補正は、特許法184条の12第2項において準用する同法17条の2第3項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は上述のとおり却下されたため、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1(1)に示した請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。なお、後の参照の便宜のため、請求項1の記載にA~Dの記号を付して次のように分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部と、
B 前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、
C 前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御する、
D 端末。
第4 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、以下のとおりである。
1.(進歩性)この出願の請求項1~4に係る発明は、以下の文献1に記載された発明及び文献2に示される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
文献1.国際公開第2020/126960号
文献2.3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Radio Access Network; NR; Physical layer procedures for data (Release 16),3GPP TS 38.214 V16.0.0,2019年12月
第5 引用文献の記載内容
原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第2020/126960号(以下「引用文献」という。)の記載を以下の1に示し、引用文献に記載された発明(以下「引用発明」という。)を以下の2で認定する。
1 引用文献の記載
引用文献には、以下の記載がある。なお、訳は引用文献の日本語ファミリである特表2021-534615号公報を参考にして当審で作成した。引用文献の行数は欄外の数字に従い、訳文の段落番号は特表2021-534615号公報に従った。
(1)1頁6~10行
「The present disclosure relates to the field of wireless communications, and in particular, to methods and apparatuses for efficient feedback reporting for at least a New Radio- (NR-) based wireless communication network system, which feedback includes Channel State Information (CSI), and higher layer configuration and reporting for linear combination codebook.」
(当審訳:【0001】
本開示は、無線通信の分野に関し、特に、少なくとも新しい無線-(NR-)ベースの無線通信ネットワークシステムのための効率的なフィードバック報告のための方法および装置に関し、フィードバックは、チャネル状態情報(CSI)を含むとともに、上位層構成および線形結合コードブックについての報告を含む。)
(2)4頁18行~5頁10行
「BRIEF SUMMARY AND SOME DETAILED DESCRIPTION
In view of the drawbacks disclosed earlier, there is provided a communication device or a radio device or a user equipment (UE) and a method therein for providing a channel state information (CSI) feedback in a wireless communication system including at least the UE and a gNB or a radio network node. The UE comprising a processor and a memory, said memory containing instructions executable by said processor whereby said UE is operative by means of e.g. a transceiver to receive from a transmitter (e.g. the gNB or any suitable network node and/or radio communication device) a radio signal via a MIMO channel, where the radio signal contains DL reference signals according to a DL reference signal configuration. The UE is further operative, by means of e.g. the processor to:
- estimate the MIMO channel between the gNB and the UE based on the received DL reference signals for the configured resource blocks,
- calculate, based on a performance metric, a precoder matrix, for a number of antenna ports of the gNB and configured subbands, the precoder matrix being based on two codebooks and a set of combination coefficients for complex scaling/combining one or more of vectors selected from a first codebook and a second codebook, wherein:
○ the first codebook contains one or more transmit-side spatial beam components of the precoder, and
○ the second codebook contains one or more delay components of the precoder, and
the UE is operative to report a CSI feedback and/or a PMI and/or a PMI/RI, used to indicate the precoder matrix for the configured antenna ports and resource blocks.」
(当審訳:【0015】
[簡単な概要およびいくつかの詳細な説明]
先に開示された欠点を考慮して、少なくともUEおよびgNBまたは無線ネットワークノードを含む無線通信システムにおいて、チャネル状態情報(CSI)フィードバックを提供するための通信デバイスまたは無線デバイスまたはユーザ機器(UE)およびその方法が提供される。前記UEはプロセッサとメモリとを備え、前記メモリは前記プロセッサによって実行可能な命令を含む。UEは、例えば、送信機(例えば、gNBまたは任意の適切なネットワークノードおよび/または無線通信装置)から、MIMOチャネルを介して無線信号を受信するためのトランシーバによって動作可能である。無線信号は、DL基準信号構成に従ってDL基準信号を含む。UEは、例えばプロセッサの手段によって、さらに以下のことをするように動作する:
・構成されたリソースブロックについての受信されたDL基準信号に基づき、gNBとUEとの間のMIMOチャネルを推定すること、
・性能メトリックに基づき、gNBのいくつかのアンテナポートおよび構成されたサブバンドのために、2つのコードブックと、第1コードブック及び第2コードブックから選択された1以上のベクトルを複素スケーリング/結合する結合係数の集合と、に基づくプリコーダ行列を計算すること、ここにおいて、
【0016】
○第1コードブックは、プリコーダの1つ以上の送信側空間ビーム成分を含み、そして、
○第2コードブックは、プリコーダの1つ以上の遅延成分を含み、そして、
UEは、構成されたアンテナポートとリソースブロックとのためのプリコーダ行列を示すために使用されるCSIフィードバックおよび/またはPMIおよび/またはPMI/RIを報告するように動作する。)
(3)6頁1~8行
「In accordance with some exemplary embodiments, the precoder matrix F(l)of the l-th transmission layer is represented by a three-stage structure F(l) = F1(l)F2(l)F3(l), where
- F1(l) contains U(l) selected beam components/beam vectors from the first codebook of the l-th layer for the 2N1N2 antenna ports,
- F2(l) contains Du(l) selected delay vectors from the second codebook of the u-th beam for the configured N3 subbands, where the number of delay vectors Du(l) per beam may be identical or different over the beams, and」
(当審訳:【0019】
いくつかの例示的な実施形態によれば、第l伝送層のプリコーダ行列F(l)は、3段階構造F(l)=F1(l)F2(l)F3(l)によって表され、ここで、
・F1(l)は、2N1N2アンテナポートのための第l層の第1コードブックからのU(l)個の選択されたビーム成分/ビームベクトルを含み、
【0020】
・F2(l)は、構成されたN3個のサブバンドのための第uビームの第2コードブックからのDu(l)個の選択された遅延ベクトルを含み、ここで、ビーム毎の遅延ベクトルの数Du(l)は、複数のビームにわたって同一であっても異なっていてもよく、そして、)
(4)20頁24~29行
「In accordance with embodiments, when the number of delay vectors to be reported is large compared to the subgroup size (N3), it is beneficial to associate each delay vector in a subgroup directly with a single bit of an N3-length bitmap and to report the bitmap instead of reporting the indices of the delay vectors. The number of feedback bits then accounts to N3 bits for reporting the bitmap and log2(O2) bits for the subgroup indication.」
(当審訳:【0074】
実施形態によれば、報告されるべき遅延ベクトルの数がサブグループサイズ(N3)と比較して大きい場合、サブグループの各遅延ベクトルをN3長ビットマップの単一ビットに直接に関連付けることが有益であるとともに、遅延ベクトルの指標を報告する代わりにビットマップを報告することが有益である。フィードバックビットの数は、つまり、ビットマップを表示するためにN3ビットを占め、サブグループ表示のためにlog2(O2)ビットを占める。)
(5)21頁7~27行
「In accordance with some exemplary embodiments, in addition to the report of the delay indicator (if reported), the UE may indicate the selected delay vectors associated with the non-zero combining coefficients per beam, or K selected combining coefficients (corresponding to the coefficients with the highest amplitude/power) for the 2U beams in the report. In such a case, the delay vectors of each beam are associated with a Du(l)-length bitmap, where Du(l) is the number of configured delay vectors of the u-th beam. Each bit in the bitmap is associated with a single delay of the max[Du(l)], ∀u common delay vectors. For example, the first bit may be associated with the first common delay vector, the second bit with the second common delay vector and so on. The UE report then contains for the u-th beam a length-Du(l) bitmap for indicating the selected delay vectors associated with the non-zero combining coefficients or the K selected combining coefficients. When a delay/delay vector is common to all beams and is associated with only zero-valued combining coefficients, the corresponding combining coefficients are not reported and not indicated by the bitmap. The corresponding index is removed from the delay indicator reported to the gNB. Similarly, when a beam vector is only associated with zero-valued combining coefficients, the corresponding combining coefficients are not reported and not indicated by the bitmap. For example, when the u-th beam is only associated with zero-valued combining coefficients,the Du(l)-length bitmap associated with the u-th beam and the corresponding combining coefficients are not reported.」
(当審訳:【0077】
いくつかの例示的な実施形態によれば、遅延インジケータ(報告される場合)の報告に加えて、UEは、ビーム毎の非ゼロ結合係数に関連する選択された遅延ベクトルを示すか、または、報告内の2U個のビームのための(最高振幅/パワーを有する係数に対応する)K個の選択された結合係数を示すことができる。この場合、各ビームの遅延ベクトルは、Du(l)長のビットマップに関連付けられ、ここで、Du(l)は、第uビームの構成された遅延ベクトルの数である。ビットマップ内の各ビットは、max[Du(l)],∀u個の共通遅延ベクトルの単一の遅延に関連付けられる。例えば、第1ビットは、第1共通遅延ベクトルに関連付けられ、第2ビットは、同様に第2共通遅延ベクトルに関連付けられる。UE報告は、つまり、第uビームについて、非ゼロ結合係数またはK個の選択された結合係数に関連する選択された遅延ベクトルを示すためのDu(l)長のビットマップを含む。遅延/遅延ベクトルが全てのビームに共通であって、ゼロ値の結合係数のみに関連付けられる場合、対応する結合係数は報告されず、ビットマップによって示されない。対応する指標は、gNBに報告される遅延インジケータから除去される。同様に、ビームベクトルがゼロ値の結合係数のみに関連付けられる場合、対応する結合係数は報告されず、ビットマップによって示されない。例えば、第uビームがゼロ値の結合係数のみに関連付けられる場合、第uビームに関連するDu(l)長のビットマップおよび対応する結合係数は報告されない。)
(6)50頁23行~51頁21行
「Reporting on PUCCH/PUSCH - UCI design
In accordance with some exemplary embodiments, the CSI report is a part of the uplink control information (UCI) to be transmitted by the UE in the physical uplink control channel (PUCCH) or physical uplink shared channel (PUSCH). The CSI report may comprise two parts: a part-1 CSI report and a part-2 CSI report. The part-1 CSI report has a fixed payload size and contains at least one of the following parameters:
- an indication of the values (K1) of non-zero combining coefficients per layer, or a subset of layers,
- an indication of the total number of non-zero reference polarization-specific amplitude values for the layers,
- an indication of the selected number of common delays per layer or a set of layers, and
- an indication of the selected number of spatial beams per layer or a set of layers.
The part-2 CSI report includes the two precoding matrix identifiers PMI(i1) and PMI(i2), where PMI(i1) contains the U(l) selected spatial beam indices for the selected subgroups from the first codebook and the selected subgroup indices (q1,i = 0, ... , O1,i - 1), i = 1,2 per layer, or a subset of layers, and per dimension of the antenna array. In addition, PMI(i1) contains a number of delay identifiers indicating the common delay vectors selected by the UE from an orthogonal subgroup from the second codebook per layer or a subset of layers and the bitmap(s) per layer or a subset of layers for indicating the indices of the selected K1 non-zero coefficients to be reported per layer, and
- in the case of quantization scheme (5), the strongest coefficient indicator, which indicates the position of the strongest combining coefficient (which is not reported) associated with the stronger polarization per layer or a subset of layers, and a polarization-specific common amplitude value which is associated with the combining coefficients of the weaker polarization per layer or a set of layers.」
(当審訳:【0215】
[PUCCH/PUSCHについての報告-UCI設計]
いくつかの例示的な実施形態によれば、CSI報告は、物理アップリンク制御チャネル(PUCCH)または物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)においてUEによって送信されるべきアップリンク制御情報(UCI)の一部分である。CSI報告は、2つの部分、第1部分CSI報告および第2部分CSI報告を含んでもよい。第1部分CSI報告は、固定されたペイロードサイズを有し、以下のパラメータのうちの少なくとも1つを含む:
【0216】
・層毎または層サブセット毎の、非ゼロ結合係数の値(K1)の表示
・複数層についての非ゼロ基準偏波特有振幅値の総数の表示
・層毎または層セット毎の、共通遅延の選択された数の表示
【0217】
・層毎または層セット毎の、空間ビームの選択された数の表示。
第2部分CSI報告は、2つのプリコーディング行列識別子PMI(i1)およびPMI(i2)を含み、ここで、PMI(i1)は、第1コードブックから選択されたサブグループについてのU(l)個の選択された空間ビーム指標と、層毎または層サブセット毎、およびアンテナアレイの次元毎の選択されたサブグループ指標(q1,i=0,...,O1,i-1),i=1,2とを含む。加えて、PMI(i1)は、層毎または層サブセット毎に第2コードブックからの直交サブグループからUEによって選択された共通遅延ベクトルを示すいくつかの遅延識別子と、層毎に報告されるべき選択されたK1個の非ゼロ係数の指標を示すための層毎または層サブセット毎のビットマップと、を含み、そして、
【0218】
・量子化スキーム(5)の場合には、層毎または層サブセット毎のより強い偏波に関連する(報告されていない)最強結合係数の位置を示す最強係数インジケータと、層毎または層セット毎のより弱い偏波の結合係数に関連する偏波特有共通振幅値と、を含む。)
2 引用発明の認定
前記1の記載によれば、引用文献には、以下の引用発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、引用発明に記号a1~jを付して次のように分説し、「構成a1」のようにして参照する。
a1 NR-ベースの無線通信ネットワークシステムのための効率的なフィードバック報告のための装置であって、(【0001】)
a2 フィードバックは、チャネル状態情報(CSI)を含むとともに、線形結合コードブックについての報告を含み、(【0001】)
b UEは、2つのコードブックと、第1コードブック及び第2コードブックから選択された1以上のベクトルを結合する結合係数の集合と、に基づくプリコーダ行列を計算し、(【0015】)
c UEは、プリコーダ行列を示すために使用されるCSIフィードバックおよびPMIを報告するように動作し、(【0016】)
d プリコーダ行列F(l)は、F(l)=F1(l)F2(l)F3(l)によって表され、(【0019】)
e F2(l)は、第2コードブックからのDu(l)個の選択された遅延ベクトルを含み、(【0020】)
f 報告されるべき遅延ベクトルの数がサブグループサイズ(N3)と比較して大きい場合、サブグループの各遅延ベクトルをN3長ビットマップの単一ビットに直接に関連付け、ビットマップを報告し、(【0074】)
g 第uビームがゼロ値の結合係数のみに関連付けられる場合、ビットマップは報告されず、(【0077】)
h CSI報告は、第1部分CSI報告および第2部分CSI報告を含み、(【0215】)
i1 第2部分CSI報告は、2つのプリコーディング行列識別子PMI(i1)およびPMI(i2)を含み、(【0217】)
i2 PMI(i1)は、第2コードブックからの直交サブグループから選択された共通遅延ベクトルを示すいくつかの遅延識別子と、報告されるべき選択されたK1個の非ゼロ係数の指標を示すためのビットマップと、を含む、(【0217】)
j 装置。
第6 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 発明特定事項Dについて
事案に鑑み、先に発明特定事項Dについて対比する。
発明特定事項Dは「端末。」というものである。
引用発明の「装置」(構成a1)と「UE」(構成c)とは、CSIをフィードバックするものである(構成a2、c)から、同じものであると解され、明らかに本願発明の「端末」に相当する。
よって、本願発明と引用発明とは、「端末」である点で一致する。
2 発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは「プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部と、」というものである。
引用発明の「PMI(i1)およびPMI(i2)」(構成i1)は、本願発明の「プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)」に相当し、引用発明の「CSI報告」(構成h)は、本願発明の「チャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告」に相当する。
引用発明では、「CSI報告は、…第2部分CSI報告を含み」(構成h)、「第2部分CSI報告は、…PMI(i1)およびPMI(i2)を含」む(構成i1)から、「CSI報告」は、「PMI(i1)およびPMI(i2)」を含んでおり、本願発明の「プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告」に相当する。
引用発明では、「UEは、プリコーダ行列を示すために使用されるCSIフィードバックおよびPMIを報告するように動作」する(構成c)から、CSIフィードバックおよびPMI報告をする動作を制御する部分を有することは自明であり、この部分を「制御部」と呼ぶことは任意である。
以上によれば、本願発明と引用発明とは、「プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部」を有する点で一致する。
3 発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、」というものである。
引用発明は「UEは、プリコーダ行列を示すために使用されるCSIフィードバックおよびPMIを報告するように動作」するもの(構成c)である。
(1)引用発明の「CSIフィードバック」(構成c)は、「CSI報告」(構成h)と同じであり、「CSI報告は、…第2部分CSI報告を含み」(構成h)、「第2部分CSI報告は、…PMI(i1)…を含み」(構成i1)、「PMI(i1)は、…ビットマップ…を含」む(構成i2)から、「CSIフィードバック」動作を行うと、「ビットマップ」が「PMI(i1)」の一部として報告されると解される。
そして、引用発明は、「CSIフィードバック」を行う部分を有することが自明であり、この部分を「送信部」と呼ぶことは任意である。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「ビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有」する点で一致する。
(2)引用発明の「第2コードブック」(構成b、e、i2)は、本願発明の「タイプIIポート選択コードブック」に対応するものであり、両者は「コードブック」である点で共通する。
ここで、引用発明の「PMI(i1)」が「第2コードブックからの直交サブグループから選択された共通遅延ベクトルを示すいくつかの遅延識別子…を含」む(構成i2)こと、「PMI(i1)」が「第2部分CSI報告」に含まれること(構成i1)に鑑みると、引用発明の「第2コードブック」は、CSIのコードブックであるといえる。
よって、本願発明の「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック」と引用発明の「第2コードブック」とは、「前記CSIの」「コードブック」である点で共通するものの、本願発明のコードブックは「タイプIIポート選択」コードブックであるのに対し、引用発明の第2コードブックは、「タイプIIポート選択」コードブックであるとは特定されていない点で相違する。
(3)引用発明の「2つのプリコーディング行列識別子PMI(i1)およびPMI(i2)」(構成i1)は、「プリコーダ行列を示すために使用される…PMI」(構成c)のことと解され、引用発明の「プリコーダ行列」は、「F(l)=F1(l)F2(l)F3(l)によって表され」る(構成d)。
そして、引用発明では、「F2(l)は、第2コードブックからのDu(l)個の選択された遅延ベクトルを含」む(構成e)から、「F2(l)」は、「第2コードブック」が「遅延ベクトル」を含むという構造に関する行列であるといえる。したがって、「プリコーダ行列F(l)」(構成d)も「第2コードブック」の構造に関する行列であると解される。
よって、引用発明の「プリコーダ行列F(l)」は、本願発明の「コードブック構造に関する行列」に相当する。
(4)引用発明では、「F2(l)は、第2コードブックからのDu(l)個の選択された遅延ベクトルを含み」(構成e)、「各遅延ベクトルをN3長ビットマップの単一ビットに直接に関連付け、ビットマップを報告し」(構成f)、「ビットマップ」は「報告されるべき選択されたK1個の非ゼロ係数の指標を示すための」ものである(構成i2)から、引用発明の「ビットマップ」は、「プリコーダ行列F(l)」に含まれる「遅延ベクトル」のうち「報告されるべき選択されたK1個の非ゼロ係数」を識別するものと解される。
そうすると、引用発明の「ビットマップ」は、本願発明の「行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップ」に相当する。
(5)前記(1)~(4)を総合すると、本願発明と引用発明とは、「前記CSIのコードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有」する点で共通するものの、本願発明のコードブックは「タイプIIポート選択」コードブックであるのに対し、引用発明の第2コードブックは、「タイプIIポート選択」コードブックであるとは特定されていない点で相違する。
4 発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは「前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御する、」というものである。
引用発明では、「第uビームがゼロ値の結合係数のみに関連付けられる場合、ビットマップは報告され」ない(構成g)。これは、引用発明において予め定義されたルールであると解される。
そして、引用発明においてビットマップを報告するか否かは、CSIフィードバックの制御に他ならないから(前記3(1))、この制御は、CSI報告の制御を行う制御部(前記2)で行われるのが当然である。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御する」点で一致する。
5 一致点及び相違点
前記1~4を総合すると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりと認められる。
〈一致点〉
「プリコーディング行列インジケータ(PMI:precoding matrix indicator)を含むチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)報告を制御する制御部と、
前記CSIのコードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、
前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御する、端末。」である点。
〈相違点〉
本願発明のコードブックは「タイプIIポート選択」コードブックであるのに対し、引用発明の第2コードブックは、「タイプIIポート選択」コードブックであるとは特定されていない点。
第7 判断
前記第6、5に示した相違点を踏まえ、本願発明の引用発明に対する進歩性の有無を判断する。
1 相違点についての判断
引用発明は「NR-ベースの無線通信ネットワークシステムのための効率的なフィードバック報告のための装置であ」り(構成a1)、NRすなわち5G NRの規格に基づくものである。
そして、5G NRの規格では、CSIのコードブックとして、タイプIIポート選択コードブックが規定されていることは技術常識である(必要なら原査定の拒絶の理由で引用された文献2(3GPP TS 38.214 V16.0.0)の「5.2.2 Channel state information」内の「5.2.2.2.4 Type II Port Selection Codebook」等を参照)。
したがって、引用発明のコードブックを、5G NRの規格で規定されたタイプIIポート選択コードブックとすることは、当業者が容易になし得たことと認められる。
2 効果についての判断
本願発明の効果は、引用発明及び技術常識に比して格別とは認められない。
3 請求人の主張についての判断
請求人は、本願発明の進歩性について、審判請求書にて、概略、以下のように主張する。
〈請求人の主張〉
引用文献1(当審注:この審決における引用文献に対応。)に開示されているのは、遅延構成を示すビットマップであって、本願で規定しているビットマップとは相違する。
引用文献1、2、3(当審注:引用文献2は原査定の拒絶の理由で引用された文献2に対応。引用文献3は、原査定の付記で言及されたもの。)には、「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップを前記PMIの一部として報告する送信部と、を有し、」(発明特定事項B)、「前記制御部は、予め定義されたルールに基づいて前記ビットマップを報告しないように制御し、」(発明特定事項C)、「前記CSIのタイプIIポート選択コードブック構造は、前記複数種類のタイプIIポート選択コードブックのうちの1つに対応する」(以下「発明特定事項α」という。)という特徴を有する本件発明が開示されておらず、引用文献1、2、3からは、本願発明における上記顕著な効果を奏し得ず、引用文献1、2、3からは、本件発明が想到容易ではない。
上記主張について判断する。
発明特定事項αは本件補正により追加された事項であり、前記第2のとおり本件補正は却下されたから、この点についての主張は採用できない。
また、発明特定事項Cについては、前記第6、4のとおりであり、採用できない。
そして、発明特定事項Bについては、前記第6、3及び前記1のとおりである。請求人は、引用文献に開示されているのは遅延構成を示すビットマップであって本願発明のビットマップとは相違すると主張するが、引用文献に開示されているのは、CSIフィードバックに含まれるPMIに含まれるビットマップであり(前記第6、3(1))、PMIはプリコーダ行列を示すものであってプリコーダ行列は第2コードブックの構造に関する行列であり(前記第6、3(3))、ビットマップはプリコーダ行列に含まれる遅延ベクトルのうち報告されるべき非ゼロ係数を識別するものである(前記第6、3(4))から、本願発明の発明特定事項Bにおける「コードブック構造に関する行列内のどの係数が報告されるかを識別するビットマップ」に相当するものである。よって、発明特定事項Bについての主張は採用できない。
したがって、請求人の主張は採用できない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-009314