特許拒絶査定不服審判
2018-002071
マイクロ皮膚剥離処置を行うトリートメントヘッド
- 審判番号
- 2018-002071
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-515927外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年02月14日
- 審決日
- 2019年03月25日
- 公報発行日
- 2019年09月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-Z (A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2017-515927「マイクロ皮膚剥離処置を行うトリートメントヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日国際公開、WO2016/046391、平成29年 9月28日国内公表、特表2017-528260〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月25日(パリ条約による優先権主張 平成26年9月25日(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月22日付けで特許請求の範囲について手続補正され、同年8月18日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年10月10日付けで意見書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成30年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。
第2 本願発明
本願の請求項1~15に係る発明は、平成29年3月22日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されたものと認められ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。
【請求項1】
「被験者の皮膚に対して位置付け可能な皮膚接触表面と、
該皮膚接触表面にある少なくとも1つの真空孔とを含み、
該少なくとも1つの真空孔は、真空を生成可能な経路を定め、
前記少なくとも1つの真空孔は、前記真空孔と前記皮膚接触表面との接合部によって定められる削摩エッジを有し、
該削摩エッジは、被験者の皮膚に対して作用するように構成され、
前記皮膚接触表面は、前記皮膚接触表面から突出する削摩要素を含まない、
トリートメントヘッド。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された事項を適用することにより、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開平9-98835号公報
引用文献2:登録実用新案第3131031号公報
第4 引用文献の記載事項及び引用発明等
1 引用文献1
(ア)引用文献1には、「吸引美容器用吸引口」に関し、図1~7とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】 吸引口(3)の上面に、所要の深さと間隔で複数の仕切り(1)及び吸引部(2)を設け、吸引口(3)の下部に内部が中空で通風口(5)を形成した挿入部(4)を設けることを特徴とする、吸引美容器用吸引口。」
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、吸引美容器の先端に差し込んで使用する吸引口に、複数のローラー又は磁石、放射線発生金属若しくは、筒形や円柱形に形成したものを使用して、吸引美容器の吸引による吸い出しを皮膚全体に容易に、満遍なく実施できるようにするとともに、マッサージ効果、磁石効果等の美容効果を更に高めるための、吸引美容器用吸引口に関するものである。」
「【0002】
【従来の技術】従来のものは図7で示したように、吸引カップ(10)を吸引美容器(11)に差し込んで使用しており、仕切りは無く全体が吸盤型に形成されたものであり、使用部位により所要な吸引カップを使い分けていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これは次のような欠点があった。
【0004】使用中の吸引力で皮膚が持ち上がり、本器が止まりやすくなるので、使用したい場所への移動がスムーズにいかなかった。
【0005】吸引による吸い出し効果と、マッサージ効果が両立できていなかった。
【0006】吸盤型なので吸い出しは可能であるが、老化した皮膚のかき落としができないので、汚れを完全に落とすことができなかった。
【0007】吸引力で皮膚が持ち上がるので、本器の移動が思わしくないばかりでなく、吸引が局部的となるので、血液がうっ血して充血しやすかった。
【0008】吸引だけでは局部的な汚れの吸い込みは可能であるが、しわの中の汚れは落としにくかった。
【0009】本発明は、従来の技術の有するこのような欠点を除くためになされたものであり、その目的とするところは、吸引美容器の先端に差し込んで使用する吸引口に、複数の仕切りとローラー又は磁石、放射線発生金属若しくは筒形に形成したもの等を使用して、吸引美容器のマッサージ効果、磁石効果等の美容効果を更に高めたものを提供することである。」
「【0021】本発明は以上のような構造で、これを使用するときは、挿入部(4)を吸引美容器(11)に挿入し、あらかじめ洗顔で軽く汚れを落とし、濡らされている肌に吸引部(2)を当て、使用部位に応じた方法で使用する。」
「【0022】
【発明の効果】本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果をあげることができる。
【0023】本発明は、吸引部に複数の仕切りを設けたので使用中局部的な皮膚の吸い上げが無くなり、全体をバランスよく吸い上げることができるので、移動もスムーズにできる。
【0024】本発明は、吸引部の複数の仕切りが、吸い上げられた皮膚に押し当てられたまま移動することができるので、吸い出し効果と複数の仕切りによる、マッサージ効果の両立が可能となり、美容効果が増大した。
【0025】本発明に設けられた仕切りにより、老化した角質のかき落とし除去が容易となり、皮膚の洗浄効果が倍増する。
【0026】複数の仕切りで吸引がバランスよくなったので、局部的な吸い上げで生ずる血液の、うっ血による充血が無くなった。
【0027】本発明は、吸引した状態で仕切りの一部が、しわを押し広げ、角質を、かき落としながら吸引するので、しわの中の汚れも完全に除去できる。」
(イ)上記摘記事項及び図面から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているといえる。
A 引用文献1に記載された技術は、老化した角質のかき落とし除去を行うことができる吸引美容器用吸引口に関する(【0001】、【0025】、【0027】)ものであって、老化した角質のかき落とし除去を容易とすることを課題(【0006】、【0008】、【0009】)とすること。
B 吸引美容器用吸引口は、皮膚に当てることができる(【0021】)吸引口3の上面を備えること(【請求項1】)。
C 吸引口3の上面は、所要の深さと間隔で設けられた複数の仕切り1及び吸引部2からなること(【請求項1】、【図1】)。
D 吸引部2は、吸引美容器の吸引による皮膚の吸い出しを実施できるよう通風口5と連通されていること(【請求項1】、【0001】)。
E 吸引部2は、仕切り1との連結部を備えること(【請求項1】、【図1】)。
F 仕切り1は、吸い上げられた皮膚に押し当てられたまま移動するとともに、老化した角質をかき落とし除去するように構成されたものであること(【0024】、【0025】、【0027】)。
(ウ)上記(ア)、(イ)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「皮膚に当てることができる吸引口3の上面と、
該吸引口3の上面は、所要の深さと間隔で設けられた複数の仕切り1及び吸引部2からなり、
該吸引部2は、吸引美容器の吸引による皮膚の吸い出しを実施できるよう通風口5と連通されており、
また、該吸引部2は、仕切り1との連結部を備え、
前記仕切り1は、吸い上げられた皮膚に押し当てられたまま移動するとともに、老化した角質をかき落とし除去するように構成された、
吸引美容器用吸引口。」
2 引用文献2
(ア)引用文献2には、「皮膚の角質層除去器具」に関し、図1~6とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本考案は、主としてヒトの皮膚の角質層除去器具に関し、詳しくは踵などに生じる皮膚の角質化した部分を効率よく除去できる皮膚の角質層除去器具に関するものである。」
「【0009】
本考案は、前記従来技術における問題点を解決するためになされたもので、構造簡単にして特段の技術を要することなく、自由にかつ安全に角質層の除去が行える皮膚の角質層除去器具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本考案による皮膚の角質層除去器具は、
硬質な材料で適宜幅の平板に形成された基板に、相互に干渉しない間隔で複数の切削孔が穿設され、その各切削孔の内周縁部が刃先を形成していることを特徴とするものである(第1考案)。
【0011】
前記考案において、前記基板は、表面に微小な砥粒が付着されている研削層を備えているのがよい(第2考案)。
【考案の効果】
【0012】
本考案においては、硬質材料で形成される基板に設けられた孔の内周縁部を刃として使用するようにされるので、皮膚面に盛り上がって生じている角質層に基板をあてがって引くことにより、複数設けられる孔の内縁部全周がすべて切削刃として機能するから、いずれかの孔縁によって角質層が削られ、一度に大きく切り込まれないので、深削りすることなく削り落とすことができる。したがって、目的部位の皮膚面の形状に合わせて基板を角質層にあてがい引くようにすれば、その基板面が即ガイド面となって滑らせることで、その移動方向に対応した孔内縁部分が切削刃先として機能し、角質層を削ることができる。
【0013】
このように、本考案によれば、平板に設けた孔の内縁を刃先として使用する構成とされているので、その刃先に方向性が求められないので、処置しようとする肢体の任意の部位に対応して基板を押付け摺動させることにより、深削りすることなく徐々に角質層を削り取ることができ、取扱が容易であるという利点がある。また、孔の内縁が刃先となっているので、通常の取扱で皮膚を損傷することがなく安全であり、構造的にも簡単な形状であるから安価に提供できるという効果を奏する。
【0014】
また、第2考案の構成を採用することにより、切削と同時にあてがっている基板面付着の砥粒によって切削部位の周面を削るとともに表面の荒れを平滑化することができ、効率よく処置できるという効果を奏する。」
「【0018】
前記基板2は、肉厚を1mm程度の鋼板で、その幅寸法がヒト(成人)の肢体(足や腕部)の最小幅寸法よりも狭い幅寸法で適宜長さにて柄部3aが一体に形成されたもので、先端部2a(柄部3aと反対側)の幅方向両側に丸みを付けた形状にされている。
【0019】
この基板2に設けられる切削孔4は、処置しようとする皮膚の角質層に対して押し当てたとき、その切削孔4の内部に角質層aが食み出し得る程度の孔寸法(具体的には、直径が5mm以上)の丸孔に形成されている。そして、この切削孔4は、例えば長手方向に所要の間隔で複数、千鳥配列で複数列に設けられている。なお、切削孔4の間隔については相互に干渉しない寸法とされ、基板2が剛性を維持できる状態に設定されるのが好ましい。
【0020】
また、前記基板2については、ステンレス鋼で形成され、穿設された前記切削孔4の内周縁部5が刃先として機能するように熱処理を施してある。したがって、焼入れ容易なステンレス鋼(例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼 SUS420J2、SUS410など)で形成されているのが好ましい。熱処理を施して前記刃先の切れ味を維持できるようにしておけば、長期間切削機能が維持できる。
【0021】
また、前記基板2としては、その構成材料としてステンレス鋼以外の鋼板、あるいはセラミック、熱硬化性樹脂などで形成することもできる。ただし、非金属材料で形成する場合、強度維持ならびに切削孔部に形成するエッジ(刃先部)を確保するために必要な肉厚とすることが望ましい。
【0022】
このように構成される本実施形態の角質層除去器具1は、使用に際して、基板2の表面を処置しようとする角質層aの表面に押し当ててそのまま前後に摺動すると、角質層aの表層a′の一部が基板2に設けられる切削孔4の内部に図2に二点鎖線で示されるように押し込まれる。この状態で基板2が摺動することにより、切削孔4の内周縁部5が切削刃先となってその切削孔4内に食み出した角質層aの表層a′の一部分を削り取る。この際、切削孔4の進行方向に対向する内周縁部5(エッジ部分)によって角質部分が削られることになる。・・・」
(イ)上記摘記事項及び図面から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているといえる。
A 引用文献2に記載された技術は、皮膚の角質化した部分を効率よく除去できる皮膚の角質層除去器具に関するものであって(【0001】)、構造簡単にして特段の技術を要することなく、自由にかつ安全に角質層の除去が行える皮膚の角質層除去器具を提供することを課題とすること(【0009】)。
B 皮膚の角質除去器具において、平板に形成された基板に複数個の切削孔が穿設され、該切削孔の内周縁部を切削刃とすること(【0010】、【0017】)。
C 基板は皮膚にあてがわれるものであること(【0012】)。
D 基板の表面には、その表面から突出する、角質層を除去する要素を含まないこと(【0010】、【0012】、【0013】に係る第1考案と、【0011】、【0014】に係る基板表面に砥粒が付着した第2考案とを対比した場合の第1考案の構成、また【0018】、【0020】、【0021】の基板の構成についての記載)。
(ウ)上記(ア)、(イ)より、引用文献2には、次の事項(以下、「引用文献2事項」という。)が記載されていると認めることができる。
「皮膚の角質除去器具において、角質層を除去するために構成された部分として、皮膚にあてがわれる基板に穿設した複数の切削孔の内周縁部に切削刃を設けるとともに、前記基板の表面から突出する角質層を除去する要素を含まない構成としたこと。」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「吸引口3の上面」は、その文言の意味、機能または構成等からみて、本願発明の「皮膚接触表面」に相当する。以下同様に「皮膚に当てることができる」は「被験者の皮膚に対して位置付け可能な」に、「吸引部2」は「真空孔」に、「吸引美容器の吸引による皮膚の吸い出しを実施できるよう通風口5と連通されており」は「真空を生成可能な経路を定め」に、「連結部」は「接合部」に、「老化した角質をかき落とし除去」は「被験者の皮膚に対して作用」に、「吸引美容器用吸引口」は「トリートメントヘッド」に、それぞれ相当することは明らかである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、
「被験者の皮膚に対して位置付け可能な皮膚接触表面と、
該皮膚接触表面にある少なくとも1つの真空孔とを含み、
該少なくとも1つの真空孔は、真空を生成可能な経路を定め、
前記少なくとも1つの真空孔は、前記真空孔と前記皮膚接触表面との接合部を有し、
被験者の皮膚に対して作用するように構成され、た
トリートメントヘッド。」
である点で一致するものの、以下の点で相違する。
(相違点)
被験者の皮膚に対して作用するように構成された、トリートメントヘッドの部分について、本願発明では、真空孔と皮膚接触表面との接合部によって定められる削摩エッジであって、皮膚接触表面から突出する削摩要素は含まないのに対し、引用発明では、吸引口3の上面に吸引部2とともに所要の深さと間隔で複数設けられた仕切り1であるが、該仕切り1は、吸引部2と吸引口3の上面との接合部によって定められる削摩エッジを備える構成であるか否か明らかでなく、また、吸引口3の上面から突出する削摩要素を含まないといえるか否か明らかでない点。
2 判断
(1)相違点の検討
相違点について検討すると、
皮膚の角質除去器具に係る引用文献2には、引用文献2事項が記載されているところ、その文言の意味、機能または構成等からみて、引用文献2事項の「切削刃」は、本願発明の「削摩エッジ」といえる。
そして、吸引美容器用吸引口に係る引用発明は、吸引による吸い出しやマッサージに加え、老化した角質のかき落とし除去を行うものであるから、引用発明と引用文献2事項とは、皮膚の角質除去装置という同一の技術分野に属するものであり、また、引用発明の複数の仕切り1及び吸引部2を設けた吸引口3の上面と、引用文献2事項の複数の切削孔を穿設した基板とは、いずれも皮膚に当接されて角質を除去する機能を備えた部分、すなわち被験者の皮膚に対して作用するように構成された部分である。
してみると、同一の技術分野に属し、同一の機能を備えた引用文献2事項をふまえて、引用発明の被験者の皮膚に対して作用するように構成された部分の具体的構成として、吸引部2が備える仕切り1との連結部を削摩エッジとするとともに、吸引口3の上面から突出する削摩要素を含まないものとして、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことといえる。
また、本件明細書に記載された本願発明の効果をみても、引用発明及び引用文献2事項が奏する効果からみて、それらの単なる総和を上回るような格別な効果が生じたということはできない。
(2)請求人の主張についての検討
請求人の主張及びそれらに対する検討は、以下のとおりである。
(ア)引用発明の角質除去は仕切り1によって行われるので、エッジ状の内周縁部で角質除去を行う引用文献2事項を適用する動機づけがない。
【検討】 上記(1)で検討したとおり、両者を組み合わせる動機は十分に存在する。
(イ)皮膚を吸い上げて処理する引用文献1と、皮膚に押し当てて処理する引用文献2とは皮膚処理メカニズムが異なるから、両者を組み合わせることは技術的に両立しない。
【検討】 上記(ア)で指摘したとおり、引用発明も引用文献2事項もいずれも皮膚が当接する面に設けた孔の中に、皮膚の柔軟性を利用して皮膚を食み出させて処理するものである点で共通しており、食み出させるための具体的手段が真空(負圧)であるか、押し当てであるかの違いにすぎない。また、真空(負圧)であるか、押し当てであるかの違いにより、角質を除去するための具体的構成すなわちエッジの構成が特段異なると解すべき理由もない。
(ウ)皮膚の持ち上がり(局部的な皮膚の吸い上げ)をなくすことにより課題を解決する引用文献1に、角質層が切削孔4内に食み出す引用文献2を適用することには、阻害要因がある。
【検討】 引用文献1では、【0002】において、従来技術として図7に示す吸引カップを示し、それに続く【0003】~【0008】において、当該従来技術の問題点として、吸引力による皮膚の持ち上がりが好ましくない旨記載しており、【0023】、【0026】の局部的な皮膚の吸い上げも同様に従来技術の問題点を指していることは明らかといえる。そして、当該従来技術の問題点を解決するために、実施例においては、吸引口3の上面に、所要の深さと間隔で複数の仕切りと吸引部を設けたものであって、その効果として、【0023】「本発明は、吸引部に複数の仕切りを設けたので使用中局部的な皮膚の吸い上げが無くなり、全体をバランスよく吸い上げることができるので、移動もスムーズにできる。」、【0024】「本発明は複数の仕切りが、吸い上げられた皮膚に押し当てられたまま移動することができる」と記載されている。そして、実施例の皮膚の「吸い上げ」について検討すると、当該「吸い上げ」は、吸引口3に接続された吸引美容器の吸引が、吸引口3の上面に所要の深さと間隔で設けられた仕切り1と仕切り1の間、すなわち吸引部2を介して、皮膚にもたらされることによるものといえる。そして、仕切り1と仕切り1との間隔、すなわち吸引部2のサイズについての記載はないものの、皮膚の柔軟性をふまえれば、吸引された皮膚が吸引部2の中で吸い上げられ、引用文献2と同様に食み出していると考えるのが自然である。そして、これは、【0024】「本発明は複数の仕切りが、吸い上げられた皮膚に押し当てられたまま移動することができ」、【0025】「仕切りにより、老化した角質のかき落とし除去が容易となり」、【0027】「吸引した状態で仕切りの一部が、しわを押し広げ、角質を、かき落としながら吸引するので、しわの中の汚れも完全に除去できる。」との記載とも整合するものである。
なお、当該皮膚の吸い上げ、すなわち食み出しは、吸引口3の上面に所要の深さと間隔で設けられた仕切り1と仕切り1の間、すなわち仕切り1により区切られた複数の吸引部2の範囲内で生じるものであって、従来技術で問題とされた、吸引カップが当接する範囲内全体で一体的に生じる、持ち上がりあるいは局部的な吸い上げとは、明らかに異なるものというべきである。
(エ)本願明細書に真空孔内で生成される真空がないと削摩エッジの削摩作用は生じないことが記載されているから、切削孔内に真空を生成しない引用文献2を参照する動機が存在せず、阻害さえされているから、引用発明から出発して引用文献2事項を参照することは後知恵である。
【検討】 この主張の意味するところは必ずしも明らかとはいえないが、本願明細書は、皮膚接触表面32から突出する突起がなく(【0072】)、真空孔の小軸寸法を0.5mm~5mmとする(【0069】)ことを前提として、真空がないと削摩エッジの削摩作用は生じないと記載しているにすぎず、皮膚に押しつけることを前提とした引用文献2事項が角質除去機能を有しないことを示唆するものとも解せない。そして、引用発明に引用文献2事項を組み合わせる動機づけ、阻害要因の存否等については、上記(ア)~(ウ)の検討の通りである。
よって、請求人の主張はいずれも理由がないから、採用することができない。
(3)小括
以上のとおり、本願発明は引用発明及び引用文献2事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができるものでない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
以上
審決本文(J-PlatPat)
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