特許拒絶査定不服審判
2018-001216
遊技機
- 審判番号
- 2018-001216
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-199605外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月30日
- 審決日
- 2018年10月23日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ソフイア
- 【請求人代理人】荒船 良男
- 【請求人代理人】特許業務法人光陽国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A63F) / P18 .575-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-199605号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 9日出願公開、特開2015- 62635号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年9月26日の出願であって、平成27年12月3日に手続補正書が提出され、平成28年9月16日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月21日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年4月5日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月31日付けで、同年6月7日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成30年1月30日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月30日に提出された手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、平成28年11月21日付け手続補正により補正された本件補正前の請求項1の
「【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、当該遊技盤を収納する遊技機枠と、前記遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠と、により構成される遊技機において、
前記透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え、
前記遊技装置は、当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技態様に応じて移動可能に構成され、
前記遊技領域には、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され、
前記遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され、
当該遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となることを特徴とする遊技機。」
から、
「【請求項1】
遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、当該遊技盤を収納する遊技機枠と、前記遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠と、により構成される遊技機において、
前記透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え、
前記遊技装置は、
当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技状態に応じて移動可能に構成されるとともに、
当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され、
前記遊技領域には、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され、
前記遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され、
当該遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となることを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために審決にて付した。)。
2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「遊技装置」に関して、「遊技装置の少なくとも一部が」「移動可能に構成」されるのが、「遊技態様」に応じてなされるものから、遊技機における制御状態等である「遊技状態」に応じてなされるものへと限定すると共に、「遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され」ると限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書(以下「出願当初明細書」という。)の段落【0551】、【0553】、【0563】、【0565】、図面【図134】、【図135】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A~Jは、分説するため審決にて付した。)。
「A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、
B 当該遊技盤を収納する遊技機枠と、
C 前記遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠と、
D により構成される遊技機において、
E 前記透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え、
F 前記遊技装置は、当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技状態に応じて移動可能に構成されるとともに、
G 当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され、
H 前記遊技領域には、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され、
I 前記遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され、
J 当該遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となることを特徴とする遊技機。」
(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本件の出願前に頒布された刊行物である特開2006-51111号公報(以下「刊行物」という。)には、遊技機に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は審決にて付した。以下同じ。)。
・記載事項
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技の雰囲気を盛り上げるため前側から視認できる位置に取付けられる可動部材を、細線状の形状記憶合金により構成される駆動源によって動作させるようにした遊技機に関するものである。」
(イ)「【0009】
遊技機、例えば、パチンコ遊技機にあっては、可変表示装置等の盤面部品が装着される遊技盤と、該遊技盤の前側に配置され透明板によりその前面を覆う透明板保持枠と、遊技の雰囲気を盛り上げるため前側から視認できる位置に取付けられて動作する可動部材とを備えたパチンコ遊技機であって、通電により長さ方向に変化する細線状の形状記憶合金により構成される駆動源を設け、該駆動源により前記可動部材を動作させるようにした。」
(ウ)「【0019】
以下、本発明に係る遊技機の実施の形態を図面に基づき説明する。本発明は、例えばスロットマシン、パチンコ遊技機、アレンジボール、雀球遊技機、パチスロ機等の遊技機に適用できるが、その内、パチンコ遊技機について説明する。
【0020】
図1は本発明に係るパチンコ遊技機の正面図である。パチンコ遊技機Aは、その外枠1に額縁状の内枠2が一側を軸着して回動自在に装着され、該内枠2の裏側に遊技盤3が配置固定される。また、内枠2の前面に前記遊技盤3の前面を覆う透明板保持枠4が装着され、その下方に前面板5が開閉自在に装着されている。透明板保持枠4には遊技盤3の遊技部3aが臨む窓開口6が開設され、該窓開口6に透明板であるガラス板7が平行に2枚装着されている。
【0021】
一方、前面板5の前面に打球発射部(図示せず。)へ供給するパチンコ球を貯留するため上部の球貯留皿8が装着される。また、内枠2の下部前面には、上部の球貯留皿8から溢れるパチンコ球を貯留する下部の球貯留皿9が装着され、その一側に灰皿10、また、その他側に遊技盤3の遊技部3aに打ち込まれるパチンコ球の打球力を調整する操作ハンドル11が設けられている。
【0022】
前記遊技盤3の前面であって、内側ガイドレール12aと外側ガイドレール12bとで囲われる遊技部3aには、以下に示すような多くの盤面部品が装着される。また、これら盤面部品は、遊技盤3に開設されそれぞれの大きさに合った取付口に装着されることになる。すなわち、遊技部3aのほぼ中央に表示部13aを備えた可変表示装置13が装着される。また、その下方にパチンコ球の入賞により前記表示部13aに表示される数字、記号、図柄等の情報aを変動させる始動入賞口14が配置される。この始動入賞口14は、パチンコ球が入賞し難い起立状態とパチンコ球が入賞し易い傾動状態とに変換自在な一対の開閉翼14a,14aが設けられている。更に、その下方に位置して前記変動した情報aが一定時間経過後に停止して特定の表示(例えば「777」)を示し、遊技者にとって有利な特別遊技状態になったとき、一定の条件の下で動作部材である開閉扉15aを所定回数開成させ一度に多くの入賞球が得られる入賞装置15が配置される。
【0023】
前記可変表示装置13の両側には、遊技盤3面にパチンコ球が通過し得る通過チャッカー16,16が装着される。各通過チャッカー16は、平面コ字型に成形され上下に開通する球通路16bを有すると共にその中に球検出器16aが配置されている。そして、パチンコ球が通過チャッカー16を通過するごとに、前記始動入賞口14の一対の開閉翼14a,14aを1回(所定の時間の間)開かせるようにしている。」
(エ)「【0049】
本発明では、前記透明板保持枠4の前面上部にも第4可動部材58が取り付けられている。最後に、図1と図10及び図11に基づきこの第4可動部材58について説明する。透明板保持枠4の一側上縁部に下縁が開放した膨出部59が設けられ、この膨出部59内は空洞状に成形されている。そして、その内部に前面が前側を向く、すなわち前面が遊技盤3面とほぼ平行である、横長の支持板60が配置される。支持板60には上下方向に蛇行して貫通する3本のガイド溝61が並設されている。
【0050】
前記支持板60の上縁中央部に上方へ延びる吊下板62が一体に設けられ、この吊下板62が膨出部59内に固定される鉛直な摺動部材63内にその両側から保持されて配置される。また、吊下板62の一側面に上下方向に沿ってラック歯部64が成形される。一方、膨出部59の内面一側に一対の支持突起56,56が突設され、これら支持突起56,56の先端に螺子66,66により可逆回転自在な駆動モータ67が取着される。この駆動モータ67の駆動軸67aには前記ラック歯部64と噛合する歯車68が固着されている。そして、駆動モータ67の駆動により前記支持板60が上下動して膨出部59の下端開口59aから出没することになる。
【0051】
支持板60の前面に、前記各ガイド溝61に対応してそれぞれ第4可動部材58,58,58が配置される。各第4可動部材58は方形平板状に成形され、その前面に火の玉の図柄が描かれている。また、裏側には前記ガイド溝61に嵌入するピン69が突設される。更に、各第4可動部材58と前記吊下板62の上端にほぼ水平に配置固定される第3導電部70との間にそれぞれ駆動源71,71,71である細線状の形状記憶合金が配設される。これら形状記憶合金はコイル状に巻回され、通常では伸びており、その両端間に電圧を印加し通電したとき収縮して元の状態に縮むように記憶されている。前記各駆動源71は、所定位置に配置された制御基板72に配線73により電気的に接続されている。
【0052】
そして、遊技中にリーチ状態になったとき、第1可動部材23a,23bである柳の木がゆらゆらと揺れると同時に、駆動モータ67が作動し支持板60が下降して下端開口59aから各第4可動部材58である火の玉が出現する。次に、その下端位置で各駆動源71に電圧がそれぞれ時間を異ならせて断続的に印加され通電し、各第4可動部材58である火の玉が各ガイド溝61に沿って上下・左右に揺れ、恰も火の玉が揺れて彷徨う如き雰囲気を醸し出しす。これにより前記第1可動部材23a,23bである柳の木が揺れ、また、第2可動部材39である眉毛体39aや眼体39cが動作するのに伴い第4可動部材58である火の玉が彷徨う様から、これら相乗効果により遊技の興趣が一段と高まることになる。
【0053】
本発明では、遊技盤3の各盤面部品に第1乃至第3可動部材23a,23b、39、57を取付け、透明板保持枠4に第4可動部材58を取り付けるようにしたが、この他に、上部の球貯留皿8や下部の球貯留皿9、更には前面板5に前記可動部材を取着するようにしても良い。すなわち、遊技機、特にパチンコ遊技機には種々の形状のものがあることから、前記可動部材の取付位置は、それら前側から視認できる位置であれば良い。」
・認定事項
(オ)「本発明に係るパチンコ遊技機の正面図」である【図1】の図示内容に基づくと、刊行物には、「遊技盤3の遊技部3aには、パチンコ球が通過する釘が装着されている」ことが示されていると認められる。
(カ)上記【0049】、【0050】、【0052】の記載事項、「本発明に係るパチンコ遊技機の正面図」である【図1】、及び「透明板保持枠の膨出部部位の側面断面図」である【図10】の図示内容に基づくと、刊行物には、「第4可動部材58及び支持板60が、ガラス板7の前面であって、遊技球が通過する領域に重なる位置に、ガラス面7と隙間を空けて移動可能に配置されている」ことが示されていると認められる。
上記(ア)~(エ)の記載事項、上記(オ)及び(カ)の認定事項、並びに、図面の図示内容を総合すると、刊行物には次の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されていると認められる(a~jは、本件補正発明のA~Jに対応させて付与した。)。
「a パチンコ球が打ち込まれる遊技部3aが前面である遊技盤3(【0021】、【0022】)と、
b 外枠1に軸着して回動自在に装着され、裏側に遊技盤3が配置固定される、額縁状の内枠2(【0020】、【図1】)と、
c 遊技盤3の遊技部3aが臨む窓開口6が開設され、該窓開口6に透明板であるガラス板7が平行に2枚装着されている、透明板保持枠4(【0020】、【図1】)と、
d により構成されるパチンコ遊技機(【0019】)において
e 透明板保持枠4の一側上縁部に下縁が開放した膨出部59が設けられ、その内部に横長の支持板60が配置され、支持板60の上縁中央部に上方へ延びる吊下板62が一体に設けられ、支持板60の前面に、第4可動部材58,58,58が配置され、支持板60を上下動させる駆動モータ67を備え(【0049】~【0051】、【図1】、【図10】)、
f 遊技中にリーチ状態になったとき、駆動モータ67が作動し支持板60が下降して、透明板保持枠4の一側上縁部に設けられた膨出部59の下端開口59aから各第4可動部材58である火の玉が出現する(【0049】~【0052】、【図1】、【図10】)ように構成されるとともに
g’遊技部3aのほぼ中央に表示部13aを備えた可変表示装置13が装着され、その下方に始動入賞口14が配置され、更に、その下方に位置して一定の条件の下で動作部材である開閉扉15aを所定回数開成させ一度に多くの入賞球が得られる入賞装置15が配置され、可変表示装置13の両側には、通過チャッカー16,16が装着(【0022】、【0023】、【図1】)され、
h 遊技盤3の遊技部3aには、パチンコ球が通過する釘や多くの盤面部品が装着(【0021】~【0023】、【図1】、認定事項(オ))され、
i、j 第4可動部材58及び支持板60が、ガラス板7の前面であって、パチンコ球が通過する領域に重なる位置に、ガラス面7と隙間を空けて移動可能に配置(認定事項(カ))された、パチンコ遊技機。」
(3)対比
本件補正発明と刊行物発明とを、分説に従い対比する。
(a)刊行物発明の「パチンコ球」は、本件補正発明の「遊技球」に相当する。また、刊行物発明の「遊技部3a」は、パチンコ球(遊技球)が打ち込まれて流下することが明らかであるから、本件補正発明の「遊技領域」に相当する。そうすると、刊行物発明の「a パチンコ球が打ち込まれる遊技部3aが前面である遊技盤3」は、本件補正発明の「A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤」に相当する。
(b)刊行物発明の内枠2には遊技盤3が配置固定されており、刊行物発明の「内枠2」は、本件補正発明の「遊技盤を収納する遊技機枠」に相当する。
(c)刊行物発明の透明板保持枠4は、遊技盤3の遊技部3aが臨む、その窓開口6において、透明板であるガラス板7を保持しており、刊行物発明の「透明板保持枠4」は、本件補正発明の「遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠」に相当する。
(d)刊行物発明の「パチンコ遊技機」は、本件補正発明の「遊技機」に相当する。
(e)刊行物発明の「第4可動部材58」、「膨出部59」、「支持板60」、「吊下板62」、「駆動モータ67」等からなる装置(以下「可動装置」という。)は、遊技中にリーチ状態になったときに作動するものであるから、本件補正発明の「遊技装置」に相当し、透明板保持枠4の前面上部に取り付けられている。従って、刊行物発明の、この透明板保持枠4の前面上部に、可動装置を備えている構成は、本件補正発明の「透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え」ている構成に相当する。
(f)刊行物発明の「第4可動部材58」及び「支持板60」は、【図10】から明らかなように、ガラス板7の前方に、移動可能であって、刊行物発明の「遊技中にリーチ状態になったとき、駆動モータ67が作動し支持板60が下降して、透明板保持枠4の一側上縁部に設けられた膨出部59の下端開口59aから各第4可動部材58である火の玉が出現する」構成は、本件補正発明の「遊技装置は、当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技状態に応じて移動可能に構成される」という構成に相当する。
(g’)刊行物発明の始動入賞口14や入賞装置15や通過チャッカー16は遊技部3aのほぼ中央に装着された可変表示装置13の下方や両側に配置されており、上記した可動装置が、その「第4可動部材58」及び「支持板60」が移動したか否かにかかわらず、各入賞口と前後に重ならない位置に配設されていることは明らかである。そうすると、刊行物発明の構成g’と、本件補正発明の構成とは、「G’当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され」ている点で共通する。
(h)刊行物発明の遊技盤3の遊技部3aには釘や多くの盤面部品が装着され、それらの部材が遊技球が通過可能な所定の領域を形成していることは明らかである。この点に関し、本件補正発明の実施の形態では、遊技球転動通路42が、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域として記載されているものの、出願当初明細書の段落【0558】には、遊技球転動通路42は、筒状や溝状の部材により構成する必要はなく、例えば、遊技領域に釘を配設して形成してもよい旨の記載がなされており、刊行物発明も本件補正発明と同様、遊技領域に釘を配設し、遊技球が通過可能な領域を形成している。そうすると、刊行物発明の「遊技盤3の遊技部3aに、パチンコ球が通過する釘や多くの盤面部品が装着され」ている構成は、本件補正発明の「遊技領域に、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され」ている構成に相当する。
(i)刊行物発明の、膨出部59の下端開口59aから出現した第4可動部材58及び支持板60が、遊技盤3の遊技球が通過する領域と重なる位置まで移動していることは明らかであり、刊行物発明の「第4可動部材58及び支持板60が、パチンコ球が通過する領域に重なる位置に、移動可能に配置され」ている構成は、本件補正発明の「遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され」ている構成に相当する。
(j)刊行物発明の、第4可動部材58及び支持板60が、ガラス面7と隙間を空けて配置されており、この隙間があることで、遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、遊技球が通過する領域を通過する遊技球が視認可能となることは明らかであり、刊行物発明の「第4可動部材58及び支持板60が、ガラス板7の前面であって、ガラス面7と隙間を空けて移動可能に配置され」ている構成は、本件補正発明の「遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となる」構成に相当する。
よって、上記(a)~(j)によれば、本件補正発明と刊行物発明は、
「A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、
B 当該遊技盤を収納する遊技機枠と、
C 前記遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠と、
D により構成される遊技機において、
E 前記透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え、
F 前記遊技装置は、当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技状態に応じて移動可能に構成されるとともに、
G’当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され、
H 前記遊技領域には、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され、
I 前記遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され、
J 当該遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となることを特徴とする遊技機。」
の点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1](構成G)
本件補正発明は、遊技装置が、遊技装置が移動したか否かにかかわらず、遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配設されているのに対して、刊行物発明は、本件補正発明の遊技装置に相当する、可動装置が遊技領域の左上部に配設されている点。
(4)判断
上記相違点1に係る遊技装置、すなわち可動装置の配置に関して、刊行物の【0053】には、「 ・・・遊技機、特にパチンコ遊技機には種々の形状のものがあることから、前記可動部材の取付位置は、それら前側から視認できる位置であれば良い。」と記載され、可動部材の配置について、前側から視認できる位置である限り、取付位置の変更が可能であることが示唆されており、他方、特に可動装置が、刊行物の【図1】に示されるような、遊技領域の左上部に限定して取り付けなければならない理由も見当たらない。
従って、刊行物発明の可動装置を遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配置変更し、本件補正発明のように構成することに格別の困難性があるとは認められず、その取付位置の選択肢のなか、特に遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配置したという点に格別の発明性があるとも認められない。
よって、刊行物発明において、上記相違点1に係る本件補正発明の構成Gとすることは当業者が容易になし得たものである。
(5)請求人の主張について
請求人は、平成30年1月30日付けの審判請求書において、「本願発明は「前記遊技装置は、当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され、」という構成(以下「構成(A)」という)を備えています。それにより「遊技装置に邪魔されることなく、遊技球の発射勢の調整や遊技球の入賞の確認を行うことができる」、「遊技装置に邪魔されることなく、不正遊技を監視することができる」という格別の効果を奏することができます。
これに対し、引用文献1(特開2006-51111号公報)及び引用文献2(特願2012-282495号(特開2014-124303号))には、構成(A)についての記載や示唆がありません。
遊技領域の左側にはガイドレールに沿って打球発射装置から発射された遊技球を遊技領域まで誘導する誘導路が設けられており、この誘導路の終端部分は、遊技領域の左上部に位置しています。本願発明において、遊技装置は、遊技領域の左上部と前後に重ならないため、遊技者や遊技店の店員は、遊技装置に邪魔されることなく誘導路の終端部分付近を視認することができます。
遊技者は、打球発射装置から発射された遊技球が遊技領域へ到達するか否か確認しながら発射勢を調整します。すなわち、遊技球の発射勢の調整には、誘導路の終端部分付近を視認する必要があります。したがって、本願発明の場合、遊技装置が遊技領域の左上部と前後に重なる場合に比べて、誘導路の終端部分付近が視認しやすいため、遊技球の発射勢が調整しやすくなっています。
また、遊技店の店員は、糸付き玉ゴト等の不正遊技を監視するために、誘導路の終端部分付近を視認する必要があります。糸付き玉ゴトとは、遊技球に取り付けた釣り糸を操作して、当該遊技球を入賞口へ複数回入賞させる不正や、当該遊技球を遊技領域に止めてその上流側の遊技領域に遊技球を多量に停止させて(所謂ブドウ玉にして)、特定の入賞口への案内路を形成して遊技球を流れ込ませる不正などであります。釣り糸が取り付けられた遊技球は、通常の遊技球と同様に打球発射装置から発射されて誘導路を通過して遊技領域に到達するため、遊技球が遊技領域の何れの位置に到達していても、誘導路の終端部分付近を確認することで、遊技球に取り付けた釣り糸を発見することができます。そして、本願発明の場合、遊技装置が遊技領域の左上部と前後に重なる場合に比べて、誘導路の終端部分付近が視認しやすいため、糸付き玉ゴトの監視が行いやすくなっています。 ・・・」(3-2 本願発明が特許されるべき理由 <理由1>)と主張する。
そこで、請求人の上記主張について検討する。
請求人が主張する「前記遊技装置は、当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され、」という構成、すなわち、本件補正発明の構成Gのうち、「前記遊技装置は、当該遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配設され、」という構成は、相違点1として認定した。
しかし上記(4)において検討したように、相違点1については、刊行物発明の可動装置を遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配置変更し、本件補正発明のように構成することに格別の困難性があるとは認められず、その取付位置の選択肢のなか、特に遊技領域の左上部と前後に重ならない位置に配置したという点に格別の発明性があるとも認められない。
そして、「遊技装置に邪魔されることなく、遊技球の発射勢の調整を行うことができる」、「遊技装置に邪魔されることなく、不正遊技を監視することができる」という効果は、その取付位置に応じて自ずと奏されるものであって、可動装置をどの位置に取り付けるかは、視認可能とすべき必要性等に応じて、当業者であれば容易に選択し得る程度の設計的な事項であると認められ、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
(6)独立特許要件のむすび
以上のように、本件補正発明は、刊行物発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。
4 本件補正についてのむすび
上記1~3より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、平成28年11月21日付け手続補正書の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 [理由] 1」に本件補正前の請求項1として記載した、次のとおりのものである(記号A~Iは、審決にて付した。)。
「A 遊技球が流下する遊技領域を形成する遊技盤と、
B 当該遊技盤を収納する遊技機枠と、
C 前記遊技領域を前方から覆う透明部材を保持する透明部材保持枠と、
D により構成される遊技機において、
E 前記透明部材保持枠の前面側に、遊技装置を備え、
F 前記遊技装置は、当該遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技態様に応じて移動可能に構成され、
G 前記遊技領域には、遊技球が通過可能な所定の遊技球通過領域が形成され、
H 前記遊技球通過領域は、前記遊技装置が移動したときに当該遊技装置と前後に重なる位置に形成され、
I 当該遊技機にて遊技を行う遊技者の視線の方向によって、前記遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能となる
ことを特徴とする遊技機。」
2 原査定の拒絶の理由の概要
●理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
●理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由3.(拡大先願) ・・・省略・・・
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1、2について
・請求項1
・引用文献等1
・備考
引用文献1の特に段落0049-0052、図1、10等を参照されたい。ここで、遊技者が、第4可動部材58の右側から覗き込むことで、遊技球通過領域を通過する遊技球が視認可能であることは自明である。
●理由3について ・・・省略・・・
<最後の拒絶理由通知とする理由>
この拒絶理由通知は、最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶理由のみを通知するものである。
<引用文献等一覧>
1.特開2006-51111号公報(新たに引用された文献)
2.特願2012-282495号(特開2014-124303号)(新たに引用された文献)
3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(前記「第2 [理由] 3(2)」における「刊行物」に対応する。)の記載事項及び刊行物発明の認定は、前記「第2 [理由] 3(2)刊行物」に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由]2 補正の適否」で検討した、本件補正発明を特定するために必要な事項である「遊技装置」に関して、「遊技装置の少なくとも一部が、前記透明部材の前方へ遊技状態に応じて移動可能に構成され」るとの構成のうちの、「遊技態様に応じて」を「遊技状態に応じて」とする限定、及び、「遊技装置が移動したか否かにかかわらず、前記遊技領域の左上部及び前記遊技領域に設けられた各入賞口と前後に重ならない位置に配設され」るとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3 独立特許要件 (3)対比、(4)判断」において検討したとおり、刊行物発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、原査定で引用した刊行物発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
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2018-001216