特許拒絶査定不服審判
2024-010816
遊技機
- 審判番号
- 2024-010816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-175938
- 請求日
- 2024年07月01日
- 審決日
- 2025年01月14日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ソフイア
- 【請求人代理人】弁理士法人扶桑国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼川 康史
- 審判官 大浜 康夫
- 審判官 蔵野 いづみ
- 分類
- P18 .161-Z (A63F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条の2
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条の2、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-175938「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年 5月12日出願公開、特開2023- 65246〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和3年10月27日の出願であって、令和5年9月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月17日に意見書及び手続補正書が提出され、令和6年1月10日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年3月18日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同月28日付け(送達日:同年4月2日)で、同年3月18日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年7月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和6年7月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和6年7月1日にされた手続補正を却下する。
[理由]
1 本件補正について
令和6年7月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、令和5年11月17日にされた手続補正により補正された請求項1の記載を、以下のとおり、本件補正後の請求項1の記載に補正するものである(下線は、補正箇所を明示するために合議体が付した。)。
(本件補正前:令和5年11月17日にされた手続補正)
「【請求項1】
二次元コードからなる第1情報を表示する第1表示領域と、前記第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を表示する第2表示領域と、を備え、
前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であって、
当該遊技機の正面視となる第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重なり、前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易となり、
前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる、
遊技機。」
(本件補正後:令和6年7月1日にされた手続補正)
「【請求項1】
二次元コードからなる第1情報を印刷表示する第1表示領域と、前記第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を印刷表示する第2表示領域と、を備える遊技機において、
前記第1情報と前記第2情報はそれぞれ、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から同時に観察可能であり、
前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であって、
前記第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重なり、前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易となり、
前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる、
遊技機。」
2 補正の適否
(1) 本件補正
本件補正は、本件補正前の請求項1について、
(a)発明を特定するために必要な事項である「第1情報を表示する」、「第2情報を表示する」をそれぞれ、「第1情報を印刷表示する」、「第2情報を印刷表示する」と補正することで、「第1情報」、「第2情報」が「印刷表示」であるという限定を加えるとともに、
(b)発明を特定するために必要な事項である「第1情報」及び「第2情報」について、「前記第1情報と前記第2情報はそれぞれ、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から同時に観察可能であり」という限定を加え、
(c)上記(b)の限定に伴い、「遊技機」に関する「第1表示領域と」「第2表示領域と、を備え」という記載を、「第1表示領域と」「第2表示領域と、を備えた遊技機において」と書き改めるとともに、「第1の観察位置で」を修飾する「当該遊技機の正面視となる」という上記(b)の限定と重複する記載を省くことに併せて、「第1の観察位置で」を「前記第1の観察位置で」と書き改めるものである。
(2) 補正目的
上記(1)のとおり、本件補正は、本件補正前の発明特定事項に限定を加えることを含むものであって、本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
(3) 新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の【0201】~【0208】、【0215】、【0287】、【図13】~【図16】の記載からみて、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
3 本願補正発明の独立特許要件についての検討
上記2(2)のとおり、本件補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(1) 本願補正発明
本願補正発明を次のとおりのものと認定する(記号A~Fは、分説のため合議体が付した。)。
「【請求項1】
A 二次元コードからなる第1情報を印刷表示する第1表示領域と、前記第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を印刷表示する第2表示領域と、
B を備える遊技機において、
C 前記第1情報と前記第2情報はそれぞれ、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から同時に観察可能であり、
D 前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であって、
E 前記第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重なり、前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易となり、
F 前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる、
B 遊技機。」
(2) 先願
ア 記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献等1として引用された、本願の出願日前の特許出願であって、本願の出願後に出願公開された特願2020-155332(特開2022-49227)(出願日:令和2年9月16日、出願公開日:令和4年3月29日、出願人:株式会社藤商事、発明者:井上 孝司)(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、「遊技機」(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は合議体が付した。)。
「【0008】
以下、発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1~図26は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示している。図1及び図2において、遊技機本体1は、外枠2と、この外枠2の前側に配置された前枠3とを備えている。前枠3は、左右方向一端側、例えば左端側に配置された上下方向の第1ヒンジ4を介して外枠2に開閉自在及び着脱自在に枢着されており、左右方向における第1ヒンジ4と反対側、例えば右端側に設けられた施錠手段5によって外枠2に対して閉状態で施錠可能となっている。
・・・
【0074】
また図4,図9等に示すように、遊技盤16の前面側には、遊技領域23の外側の所定位置、例えば右下部に、遊技機に関する情報が表示された証紙141が配置されている。この証紙141は、台形と長方形とを上下に結合したような略六角形で、上部側の第1情報表示領域141aには、管理記号142、管理番号143、二次元コード144等が表示され、下部側の第2情報表示領域141bにはメーカー名(第1情報)145が表示されている。
【0075】
証紙141は、遊技盤16におけるベース板54の前面側に装着されたレール形成部材146に装着されている。即ち、レール形成部材146は、図8に示すように、ベース板54の盤面に沿って設けられた平板部146aと、その平板部146aの上縁側にそって設けられた前向き突出状のレール部146bとを一体に備え、レール部146bの上面側、即ち遊技領域23側の面がガイドレール55を形成しており、平板部146aの前面側に証紙141が貼付されている。なお、レール形成部材146の平板部146aに証紙貼付部材を着脱可能に装着し、その証紙貼付部材に証紙141を貼付してもよいし、ベース板54の前面に証紙141を直接貼付してもよい。
【0076】
また証紙141は、図8,図9に示すように、その上部側の一部分のみが窓孔24a内に位置し、それ以外の下部側は窓孔24aよりも外側(下側)、即ち上装飾カバー31の後側に位置している。これにより、上部側の第1情報表示領域141aに表示された管理記号142、管理番号143及び二次元コード144については、正面視においても、ガラスユニット50を構成する前後のガラス板(透明板)50aを介して視認可能であるが、下部側の第2情報表示領域141bに表示されたメーカー名145については、前側の上装飾カバー(遮蔽部)31に遮られて正面視では視認不可能となっている。
【0077】
但し、証紙141の前側には、ガラス板50a及び上装飾カバー31との間に空間が設けられているため、図8に示すように正面視から目線をずらし、窓孔24aの内側から下向きに証紙141をのぞき込むことにより、第2情報表示領域141bに表示されたメーカー名145についても視認可能となる。以上のように構成することにより、遊技領域23が左下方に拡張されて証紙141をより外側(下側)に配置しなければならないにも拘わらず、証紙141に表示された情報の視認性を十分に確保することが可能である。
【0078】
また遊技盤16上の所定位置には、図9に示すように、証紙141に表示されたメーカー名145とは別にメーカー名(第2情報)147が表示されている。このメーカー名147は、大入賞ユニット58の前面板112等、正面視で視認可能な位置に表示されている。これにより、配置位置の制約によって証紙141に表示された情報の一部(ここではメーカー名)が正面視で視認できないにも拘わらず、実質的にそれらと同等の情報を全て正面視で視認可能となる。なお、第2情報の一例としてのメーカー名147の表示位置は証紙141に近い方が望ましいが、遊技盤16上に限らず前枠3の前面側等でもよいし、上皿33の上面側等、正面視では視認できない位置であっても、他の部材に邪魔されることなく視認可能な位置であればよい。また、第2情報はメーカー名そのものである必要はなく、メーカーを示すロゴ等、証紙141に表示されたメーカー名145に関連する(対応する)情報であればよい。
・・・
【0144】
例えば、正面視では管理記号142の一部のみが視認可能(視認困難)で、その他の管理番号143、二次元コード144、メーカー名145は視認不可能であり、正面視から目線をずらすことによってそれらの全ての情報が視認可能となる(視認性が向上する)ように構成してもよい。また、正面視では証紙141に表示されている全ての情報が視認不可能であり、正面視から目線をずらすことによってそれらの全ての情報が視認可能となる(視認性が向上する)ように構成してもよい。また、正面視では管理記号142、管理番号143、二次元コード144の全体が視認可能で、メーカー名145についてはその一部のみが視認可能(視認困難)であり、正面視から目線をずらすことによってメーカー名145の全体が視認可能となる(視認性が向上する)ように構成してもよい。」
「
[図:0001421266000001.jpg]
」
イ 認定事項
(ア) 認定事項1
【0074】には、「この証紙141は、台形と長方形とを上下に結合したような略六角形で、上部側の第1情報表示領域141aには、管理記号142、管理番号143、二次元コード144等が表示され、下部側の第2情報表示領域141bにはメーカー名(第1情報)145が表示されている。」と記載され、遊技機に配置される「証紙」とは遊技機を管理するための情報を表示するものであることが遊技機業界の常識であることから、二次元コード144は、読取対象を遊技機の流通に関わる業者、設置されたホールの従業員等とする情報であると認められる。
(イ) 認定事項2
【0144】には、「例えば、正面視では管理記号142の一部のみが視認可能(視認困難) で、その他の管理番号143、二次元コード144、メーカー名145は視認不可能であり、正面視から目線をずらすことによってそれらの全ての情報が視認可能となる(視認性が向上する)ように構成してもよい。」と記載されており、「例えば」という記載を伴うから、「管理記号142」を一例として示し、証紙141に表示される情報の一部について、正面視で視認可能(視認困難)であるが、正面視から目線をずらすことによってそれらの全ての情報が視認可能となる情報があることを表したものである。
してみれば、「管理記号142」のみならず、証紙141に表示される他の情報である「その他の管理番号143」、「二次元コード144」、「メーカー名145」のいずれの情報も、同様に、情報の一部が正面視で視認可能(視認困難)であるが、正面視から目線をずらすことによってそれらの全ての情報が視認可能となる情報であるといえるから、先願明細書等には、正面視では二次元コード144の一部が視認可能であり、正面視から目線をずらすことによって全ての情報が視認可能となることが記載されていると認められる。
ウ 先願発明
上記アに摘記した先願明細書等の記載事項、及び上記イに記載した認定事項から、先願明細書等には、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる(符号a等は、本願補正発明の符号A等に概ね対応させて合議体が付した。また、引用箇所の段落番号を併記した。以下、符号を付した事項を「先願発明構成a」等という。)。
「a 証紙141に二次元コード144が表示された第1情報表示領域141a(【0074】)、
b を備えるパチンコ機(【0008】)において、
c 遊技盤16におけるベース板54の盤面に沿って設けられた平板部146aの前面側に証紙141が貼付されており(【0075】)、正面視では二次元コード144の一部が視認可能であり(認定事項2)、
d 二次元コード144は、読取対象を遊技機の流通に関わる業者、設置されたホールの従業員等とする情報であり(認定事項1)、
e 証紙141は、上装飾カバー31の後側に位置しており(【0076】)、正面視では二次元コード144の一部が視認可能であり、正面視から目線をずらすことによって全ての情報が視認可能となる(認定事項2)、
b パチンコ機(【0008】)。」
(3) 周知技術
ア 引用文献2に記載の事項及び引用文献2に記載の技術
(ア) 引用文献2に記載の事項
周知技術の例として引用する、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2017-100019号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
「【0012】
(第1実施形態)
以下、パチンコ遊技機(以下、単に「パチンコ機」という)の一実施形態(第1実施形態)を、図面に基づいて詳細に説明する。ここで、図1はパチンコ機10の正面図であり、・・・」
「【0129】
さらに、前面枠セット14の前面には、ARアプリのダウンロード先を示す二次元コードがプリントされたコードシール408が貼着されている。このため、遊技者は、携帯電話で二次元コードを読み取り、ARアプリをダウンロードすることができる。従って、遊技者がARアプリの入手先を探す手間を省くことができ、遊技者は、オブジェクト画像407を撮影してみようと思い立ってから比較的スムースにオブジェクト画像407を合成した画像を撮影できる状態とすることができる。」
「
[図:0001421266000002.jpg]
」
(イ) 引用文献2に記載の技術
上記(ア)で摘記した【0012】には、「図1はパチンコ機10の正面図」と記載されていることから、図1はパチンコ機を正面から見た図であり、コードシール全体が視認可能であることが示されている。
そして、【0129】には、「前面枠セット14の前面には、ARアプリのダウンロード先を示す二次元コードがプリントされたコードシール408が貼着されている。」と記載されている。
これらを併せみると、引用文献2には、以下の技術が記載されていると認められる。
「前面枠セット14の前面には、ARアプリのダウンロード先を示す二次元コードがプリントされたコードシール408が貼着されており、パチンコ機10を正面視した状態で二次元コード全体が視認可能である」という技術(【0012】、【0129】)。
イ 引用文献等3に記録された事項及び引用文献等3に開示された技術
本願の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、引用文献等3([新台]P春夏秋冬GLB10万円で10回当てたら勝てる?パチンコ諭吉実践さらば養分[甘デジ]虎#20,youtube[online][video],2020年2月5日,主に0分55秒~1分03秒を参照。URL,https://www.youtube.com/watch?v=MTqjHu_IIDU)に係るYouTubeの動画を視聴することで、引用文献等3には、次の事項が記録されていると認定することができる。
(ア) 認定事項
引用文献等3において、動画の下側に、「[新台]P春夏秋冬GLB10万円で10回当てたら勝てる?パチンコ諭吉実践さらば養分[甘デジ]虎#20」と表示され、その下方に「2020/02/05」と表示されていることが看取される。
以上から、引用文献等3には、「P春夏秋冬」という機種のパチンコ機(以下単に「パチンコ機」ということがある。)を撮影した動画が記録され、当該動画が2020年2月5日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったと認められる。
そして、引用文献等3に係る動画の0分53秒から1分03秒にかけて、次の事項が看取される。
a パチンコ機の中央に各種の演出等が表示されている表示装置が配置され、表示装置の周辺には釘が配置されていることから「P春夏秋冬」という機種のパチンコ機は遊技領域を備えており(画像(a))(認定事項3-1)、
b 遊技領域の上部にパネルが配置され、そのパネルには「春夏秋冬」の文字が表示され、その右側には「機種情報はこちら」との文字とともに二次元コードが印刷表示されており、パチンコ機の正面視において二次元コードの全体が視認可能であることが看取される(画像(b)、画像(c))(認定事項3-2)。
(a) 0分53秒
[図:0001421266000003.jpg]
(b) 0分55秒
[図:0001421266000004.jpg]
(c) 1分03秒
[図:0001421266000005.jpg]
(イ) 引用文献等3に開示された技術
上記(ア)の認定事項3-1~認定事項3-2からみて、引用文献等3には以下の技術が開示されていると認められる。
「遊技領域の上部にパネルを配置し、パネルには「機種情報はこちら」との文字とともに二次元コードが印刷表示されており、パチンコ機の正面視において二次元コードの全体が視認可能である(認定事項3-2)、「P春夏秋冬」という機種のパチンコ機(認定事項3-1)。」
ウ 周知技術
上記ア~イから、「パチンコ機の技術分野において、パチンコ機に読取対象を遊技者とした二次元コードを印刷表示する領域を備え、パチンコ機の正面視において二次元コードの全体が視認可能であるという技術」は周知技術であると認められる(以下「周知技術」という。)。
(4) 対比
分説に従い、本願補正発明と先願発明とを対比する。
ア 特定事項Aについて
先願発明構成aの「二次元コード144」、「第1情報表示領域141a」はそれぞれ、本願補正発明の「二次元コードからなる第1情報」、「第1表示領域」に相当し、また、証紙に二次元コードを印刷表示することは技術常識であることを考慮すると、先願発明構成aと本願補正発明の特定事項Aとは、二次元コードからなる第1情報を印刷表示する第1表示領域を備えた点で共通する。
イ 特定事項Bについて
先願発明構成bの「パチンコ機」は本願補正発明の「遊技機」に相当する。
してみれば、先願発明構成bは、本願補正発明の特定事項Bに相当する構成を備える。
ウ 特定事項Cについて
(ア)先願発明構成cの「正面視」とは、証紙141を証紙141の正面となる視点から見ることであり、また、証紙141は、遊技盤16におけるベース板54の盤面に沿って設けられた平板部146aの前面側に貼付されていることから、証紙141の正面となる視点から見ることは、パチンコ機をその正面となる視点から見ることにほかならない。
(イ)そして、上記アの対比及び上記(ア)の事項を踏まえると、先願発明構成cの「正面視では二次元コード144の一部のみが視認可能であ」ることは、本願補正発明の特定事項Cと、「第1情報」は、「少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から」「観察可能であ」る点で共通する。
エ 特定事項Dについて
先願発明構成dにおいて、「読取対象を遊技機の流通に関わる業者、設置されたホールの従業員等とする情報」は読取対象を遊技者としないことが遊技機業界の常識であり、また上記アの対比を踏まえると、「二次元コード144は、読取対象を遊技機の流通に関わる業者、設置されたホールの従業員等とする情報であ」ることは、本願補正発明の「前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であ」ることに相当する。
してみれば、先願発明構成dは、本願補正発明の特定事項Dに相当する構成を備える。
オ 特定事項Eについて
(ア)先願発明構成eの「上装飾カバー31」は、本願補正発明の「前面構成部品」に相当する。そして、上記ウの対比を踏まえると、先願発明構成eの「正面視では二次元コード144の一部が視認可能であ」ることは、本願補正発明の「前記第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重な」ることに相当する。
(イ)上記ウの対比及び上記(ア)の対比を踏まえると、先願発明構成eの「正面視から目線をずらすことによって全ての情報が視認可能となる」ことは、本願補正発明の、「前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易とな」ることに相当する。
してみれば、先願発明構成eは、本願補正発明の特定事項Eに相当する構成を備える。
以上によれば、本願補正発明と先願発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
カ 一致点及び相違点
(一致点)
「A’二次元コードからなる第1情報を印刷表示する第1表示領域
B を備える遊技機において、
C’ 前記第1情報は、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から観察可能であり、
D 前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であって、
E 前記第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重なり、前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易となる、
B 遊技機。」
である点で一致し、次の相違点で相違する。
(相違点)
・相違点1(特定事項A)
本願補正発明では、「第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を印刷表示する第2表示領域」を備えているのに対し、先願発明構成aでは、そのような構成を備えていない点。
・相違点2(特定事項C)
本願補正発明では、「前記第1情報と前記第2情報はそれぞれ、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から同時に観察可能であ」るのに対し、先願発明構成cでは、「正面視では二次元コード144の一部が視認可能であ」るものの、「第2情報」を備えていない点。
・相違点3(特定事項F)
本願補正発明では、「前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる」のに対し、先願発明では、そのような構成を備えていない点。
(5) 判断
相違点1~相違点3は、いずれも「第2情報」の表示に関連するものであるから、まとめて検討する。
ア 上記(3)ウで示したとおり、パチンコ機の技術分野において、パチンコ機に読取対象を遊技者とした二次元コードを印刷表示する領域を備え、パチンコ機の正面視において二次元コードの全体が視認可能であるという技術は、本願の出願時において周知である。
ここで、上記周知技術の「読取対象を遊技者とした二次元コード」、「二次元コードを印刷表示する領域」はそれぞれ、本願補正発明の「第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報」、「第2情報を印刷表示する第2表示領域」に相当し、上記周知技術の「パチンコ機の正面視において二次元コードの全体が視認可能である」ことは、本願補正発明の「第2情報」は、「少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から」「観察可能」であること、「前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易」であることに相当する。
そうすると、先願発明に上記周知技術を付加することは、周知技術の単なる付加であって、新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
イ 上記アによれば、相違点1~相違点3は、実質的な相違点ではなく、本願補正発明は、先願発明と実質同一である。
ウ 請求人の主張について
請求人は審判請求書において、本願補正発明の効果として、次のとおり主張している。
「一方で、印刷表示された二次元コードは、遊技者による遊技に関わらず常時表示されるものであることから、表示契機から読取対象を感得することができない。したがって、二次元コードを印刷表示する遊技機は、観察者に対して読取対象となる二次元コードを自然に感得させるためにその余の手段を要することから、周知技術を適用する余地がない。」
しかし、読取容易な位置に遊技者を対象とした「印刷表示された二次元コード」を備えることは、上記(3)ウに示すように周知技術であり、また、請求人が主張する「読取対象となる二次元コードを自然に感得させる」との効果は、上記周知技術が付加された先願発明においても得られることは明らかである。
したがって、請求人の上記主張を採用することができない。
(6) 小括
したがって、本願補正発明は、先願発明と同一の発明であり、先願明細書等に記載された発明である。また、本件出願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また本件の出願の時に、本件の出願人と先願の出願人とが同一でもない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 補正の却下の決定についてのむすび
上記3において検討したことからみて、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和5年11月17日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。
本願発明
「【請求項1】
A’二次元コードからなる第1情報を表示する第1表示領域と、前記第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を表示する第2表示領域と、を備え、
D 前記第1情報は、読取対象を遊技者としない情報であって、
E’当該遊技機の正面視となる第1の観察位置で当該第1情報の少なくとも一部に前面構成部品が重なり、前記第1の観察位置から前記前面構成部品との重なりの大きさが異なる第2の観察位置へと観察位置を変えることで当該第1情報が読取容易となり、
F 前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる、
B 遊技機。」
2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、次のものを含むものである。
1.(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
●理由1について
・請求項1
・引用文献等1~3
<引用文献等一覧>
1.特願2020-155332号(特開2022-049227号)
2.特開2016-000099号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2013-106851号公報(周知技術を示す文献)
3 引用文献
(1) 先願
原査定において、引用文献等1として引用された特許出願は、上記第2[理由]3(2)アに記載した先願であり、その願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明は、上記第2[理由]3(2)ウに先願発明として示したとおりである。
(2) 周知技術
ア 引用文献2に記載の事項及び引用文献2に記載の技術
(ア) 引用文献2に記載の事項
「【0292】
図24(b)は、装飾図柄表示装置208に表示された会員登録の表示画面を示す図である。
【0293】
この会員登録画面では、会員登録用の二次元コードQ1を表示し、パスワード入力画面へ誘導する。なお、ユーザーメニューの初期画面でもパスワード入力を選択することができるため、ユーザーメニューの初期画面へ戻るようにしてもよい。
【0294】
図24(b)に示す会員登録用の二次元コードQ1には、図16に示すサーバS側の、初回登録のための登録ページのURLが含まれているが、後述する個人識別情報(ID)等の個別の情報は含まれておらず、再発行可能なものである。会員登録用の二次元コードQ1は、パスワード取得のためのものである。」
(イ) 引用文献2に記載の技術
引用文献2には、以下の技術が記載されていると認められる。
「装飾図柄表示装置208に会員登録用の二次元コードQ1を表示するという技術」(【0292】、【0293】)。
イ 引用文献3に記載の事項及び引用文献3に記載の技術
(ア) 引用文献3に記載の事項
「【0067】
「ダーウィンメニュー」において、遊技者の演出操作装置5bの操作によって「新規登録」が選択されると、遊技機100は、サーバ500のURLを含む第1の二次元コードを生成する。そして、図7(b)に示すように、遊技機100では、生成された第1の二次元コードが演出図柄表示装置104に表示される(ステップS1、ステップS2参照)。
この第1の二次元コードを情報端末300で読み取ってサーバ500にアクセスすることで、ダーウィン機能の事前登録(新規登録)を行うことができる(ステップS3、ステップS4参照)。」
(イ) 引用文献3に記載の技術
引用文献3には、以下の技術が記載されていると認められる。
「遊技者の演出操作装置5bの操作によってサーバ500のURLを含む第1の二次元コードが演出図柄表示装置104に表示される」という技術(【0067】)。
ウ 周知技術
上記ア~イから、「パチンコ機の技術分野において、パチンコ機の図柄表示装置に読取対象を遊技者とした二次元コードを表示するという技術」は周知技術であると認められる(以下「周知技術1」という。)。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2(1)において検討したとおり、本願補正発明における、
(a)「第1情報」、「第2情報」が「印刷表示」であるという限定を省き、
(b)「第1情報」及び「第2情報」について、「前記第1情報と前記第2情報はそれぞれ、少なくともその一部が当該遊技機の正面視となる第1の観察位置から同時に観察可能であり」という限定を省き、
(c)上記(b)の限定を省くことに伴い、「第1表示領域と」「第2表示領域と、を備えた遊技機において」という記載を「第1表示領域と」「第2表示領域と、を備え」と書き改めるとともに、「第1の観察位置で」を修飾する「当該遊技機の正面視となる」という上記(ii)の限定と重複する記載を戻すことに併せて、「前記第1の観察位置で」を「第1の観察位置で」と書き改めるものである。
そうすると、上記第2の3(4)における検討内容からみて、本願発明と先願発明とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点)
・相違点1(特定事項A’)
本願発明では、「第1情報と異なる二次元コードからなる第2情報を表示する第2表示領域」を備えているのに対し、先願発明のaでは、そのような構成を備えていない点。
・相違点2(特定事項F)
本願発明では、「前記第2情報は、前記第1の観察位置から前記前面構成部品と重なることなく読取容易となる」のに対し、先願発明では、そのような構成を備えていない点。
相違点1及び相違点2は、いずれも「第2情報」の表示に関連するものであるから、まとめて検討する。
パチンコ機の技術分野において、パチンコ機の図柄表示装置に読取対象を遊技者とした二次元コードを表示するという技術は上記引用文献2、3に記載されるとおり、当業者における周知技術であり、そうすると、先願発明に上記周知技術1を付加することは、周知技術の単なる付加であって、新たな効果を奏するものではないから、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
よって、本願発明は、先願発明と実質同一である。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と同一の発明であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一ではなく、また、本願の出願の時に、本願の出願人と先願の出願人とが同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-010816