特許拒絶査定不服審判
2018-000306
非円形孔を形成するための電極及び電解加工プロセス
- 審判番号
- 2018-000306
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-120420外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年01月11日
- 審決日
- 2019年01月07日
- 公報発行日
- 2019年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】荒川 聡志
- 【請求人代理人】小倉 博
- 【請求人代理人】田中 拓人
- 分類
- P18 .575-Z (B23H) / P18 .121-Z (B23H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-120420「非円形孔を形成するための電極及び電解加工プロセス」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月26日出願公開、特開2013-255989〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年6月7日(パリ条約による優先権主張 2012年6月8日(US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成29年4月13日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月18日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、同年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成30年1月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 平成30年1月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年1月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(以下、「補正事項1」という。下線は補正箇所を示したものであり、請求人が付したもの。)を含んでいる。
「少なくとも1つの通路を画定する導電性部材と、
前記導電性部材の側面を部分的に覆う絶縁被覆部と
を含む電解加工プロセス用の電極であって、
前記絶縁被覆部が、前記導電性部材の少なくとも1つの露出部分を覆わず、
前記少なくとも1つの露出部分は、前記導電性部材の長手方向軸にほぼ沿って延び、
前記絶縁被覆部は、前記導電性部材の露出前端部も覆わず、
前記導電性部材の前記露出前端部は、高さが0mm超2mm未満であって前記絶縁被覆部との間に段差を形成し、
前記少なくとも1つの露出部分は、約180度だけ離隔した第1及び第2の露出部分を含み、
前記導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の前記第1及び第2の露出部分から少なくとも1ミリメートル(1mm)のギャップhだけ離隔しており、
前記導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の残りの部分よりも小さい直径を有する、電極。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「少なくとも1つの通路を画定する導電性部材と、
前記導電性部材の側面を部分的に覆う絶縁被覆部と
を含む電解加工プロセス用の電極であって、
前記絶縁被覆部が、前記導電性部材の少なくとも1つの露出部分を覆わず、
前記少なくとも1つの露出部分は、前記導電性部材の長手方向軸にほぼ沿って延び、
前記絶縁被覆部は、前記導電性部材の露出前端部も覆わず、
前記導電性部材の前記露出前端部は、高さが0mm超2mm未満であり、
前記少なくとも1つの露出部分は、約180度だけ離隔した第1及び第2の露出部分を含み、
前記導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の前記第1及び第2の露出部分から少なくとも1ミリメートル(1mm)のギャップhだけ離隔しており、
前記導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の残りの部分よりも小さい直径を有する、電極。」
2 補正の適否
本件補正前は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「露出前端部」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献である特開2008-229842号公報(平成20年10月2日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。)。
a 段落【0010】
「図1に、電解加工(ECM)用電極100の例を示す。具体的には、図1では、電極100の第一の端部103から延びる第一セクション102と、電極100の第二の端部105から延びる第二セクション104とを有する中空電解加工用電極100の側面図1(a)、第一の端部103の端面図1(b)並びに第二の端部105の端面図1(c)を示す。例示的な実施形態では、電極100は実質的に円筒形であり、その内部を通して電解液を運ぶように構成されている。電解液は、加工すべき部材から金属を除去するための電気化学溶解用の媒質として働く。電解液は、また、加工域から溶解金属を除去する。当業者には自明であろうが、電極100は、所望の機能に基づいて適当な形状を有していればよい。さらに、例示的な実施形態では、電極100は、その周囲に延在する絶縁体106を含む。絶縁体106は、所望の寸法及び形状の冷却孔が得られるように、金属の溶解を所望の領域に限定する。」
b 段落【0011】
「例示的な実施形態では、絶縁体106は、第一セクション102の外周を包囲するが、第二セクション104の外周には部分的にしか延在しない。具体的には、例示的な実施形態では、絶縁体106は、第二セクション104の第一の側面108とその反対側の第二の側面110にしか延在しない。したがって、第二セクション104は、互いに相対して位置し、絶縁されずに露出された部分112を2箇所含む。別の実施形態では、絶縁体106及び非絶縁部112は、第二セクション104において本明細書に記載の機能を電極100が果たすことのできる任意の配置に配設される。さらに、例示的な実施形態では、非絶縁部112は、電極100に沿ってL1の長さに延在する。当業者には自明であろうが、非絶縁部112は、電極100に沿って、本明細書に記載の機能を電極100が果たすことのできる任意の長さL1に延在し得る。また、当業者には自明であろうが、非絶縁部112の構成、数、寸法及び長さは、電極100の所望の機能及び/又は動作結果に基づいて種々選択し得る。」
c 段落【0012】
「作動に際して、電解液を通して電極100と電極100で加工する部材とに電流が流れる。絶縁体106は、電極100の非絶縁部112及び非絶縁電極チップ116から放電を起こす。非絶縁部112の構成、数、寸法及び長さは種々選択できるので、非絶縁部112の構成、数、寸法及び長さを変更すれば非絶縁部112及びチップ116からの放電量を変えることができる。」
d 段落【0013】
「図2に、例示的なタービン翼形部202での冷却孔200の形成に用いられる電極100を示す。具体的には、図2では、翼形部202の外表面204から翼形部202の内表面206に向かって挿入した電極100の側面図2(a)並びに加工時の電極の第二の端部105の方向から観た端面図2(b)を示す。」
e 段落 【0014】
「図3に、加工プロセスが完了し、冷却孔200が形成された翼形部202を示す。具体的には、図3では、冷却孔200を含む翼形部202の側面図3(a)、冷却孔入口207の断面図3(b)並びに冷却孔出口208の断面図3(c)を示す。」
f 段落【0015】
「加工プロセスに際して、第一セクション102は、矢印210で示すように、外表面204から内表面206に向かって挿入される。例示的な実施形態では、電極100は、外表面204に対して、特に限定されないが、0°、90°その他0°~90°の間の任意の傾斜角を始めとして、様々な角度で挿入できる。一部の電流212は翼形部202と電極チップ116との間で発生し、一部の電流214は非絶縁部112と翼形部202との間で発生する。第一セクション102を翼形部202内に並進させると、電流212によって翼形部202からの金属の除去が促進され、冷却孔200を形成し始める。具体的には、第一セクション102の挿入によって翼形部202に実質的に円形の断面が形成される。例示的な実施形態では、金属は電気化学的溶解によって除去され、冷却孔200を形成する。当業者には自明であろうが、代替的な実施形態では、電極100は、第一セクション102によって翼形部202に非円形断面が画成されるような形状に形成してもよい。」
g 段落【0016】
「第二セクション104を翼形部202に挿入すると、電極100から放電される電流214によって、翼形部202からの、さらに具体的には第一セクション102によって形成された略円形断面からの金属の除去が促進される。このような追加の金属除去によって、翼形部202に楕円形断面が形成される。具体的には、非絶縁部112から放電される電流214によって楕円形断面が画成される。当業者には自明であろうが、非絶縁部112の配置を変更すれば、第二セクション104で画成される断面の形状を変えることができる。翼形部202への第二セクション104の挿入に伴って、第二セクション104から放電される電流214に暴露される翼形部202の部分に画成される断面は大きくなる。その結果、例示的な実施形態では、外表面204に画成される冷却孔200の断面積は、電極チップ116から放電される電流212にしか暴露されない翼形部202の部分に画成される冷却孔200の断面積よりも広い。」
h 図1
図1からは、電極チップ116が電極100の前端部に配置されていること、露出された非絶縁部112と電極チップ116とが第1セクション102の長さ分だけ離隔していることが見て取れる。
(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
a 上記記載事項(ア)aには、内部を通して電解液を運ぶように構成された中空電解加工用電極100が記載されている。
b 上記記載事項(ア)a及びbには、中空電解加工用電極100のうち、第一セクション102の外周を包囲するが、第二セクション104の外周には部分的にしか延在しない絶縁体、中空電解加工用電極100の第二セクション104において、2箇所に互いに相対して位置し、電極100に沿って、任意の長さL1に延在し得る、絶縁されずに露出された非絶縁部112が記載されている。
c 上記記載事項(ア)c、f及びhには、電極の前端部に配置されている非絶縁電極チップ116と、露出された非絶縁部112とが第1セクション102の長さ分だけ離隔していることが記載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「内部を通して電解液を運ぶように構成された中空電解加工用電極100であって、中空電解加工用電極100のうち、第一セクション102の外周を包囲するが、第二セクション104の外周には部分的にしか延在しない絶縁体、中空電解加工用電極100の第二セクション104において、2箇所に互いに相対して位置し、電極100に沿って、任意の長さL1に延在し得る、絶縁されずに露出された非絶縁部112、電極の前端部に配置されており、露出された非絶縁部112との間で第1セクション102の長さ分だけ離隔した非絶縁電極チップ116を有する電極」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献である特開平7-40146号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与)。
a 【請求項1】
「導電性のワークピースに均一な径の孔を穿孔するための形状管電解加工方法において、
導電性の管をワークピースに向かって進めつつ、その導電性の管を通して電解液を該ワークピースに注ぐとともにその電解液を介してその導電性の管と該ワークピースの間に定電流を流すことによって孔全体に亘って均一に該ワークピースから導電性材料を溶出させて該ワークピースに穿孔することを特徴とする方法。」
b 段落【0014】
「【実施例】
図1は本発明の方法を実施するのに適した形状管電解加工装置の一例の概略図である。・・・」
c 段落【0015】
「図2に示すように、管状電極10は金属管12と誘電材料のコーテイング14とからなっている。金属管12の先端13にはコーテイングが施されておらず、先端13とワークピースWの間に電解槽が形成されるようになっている。管状電極10の先端13は斜めに切られており、その角度∝は11°であるのが望ましい。金属管12に誘電材料のコーテイング14を施すことによって、ワークピースWから電解液E内に溶出した金属イオンが管状電極10に付着するのを防止することができる。またこのコーテイングによって穿孔を金属管12の先端付近のみに制限することができる。金属管12の誘電材料のコーテイングが施されていない部分には金属が付着する可能性があるが、定電流電源32の極性を定期的に逆転させることによって付着物を除去することができる。一般には管状電極10を0.1から30秒間作動させた後、0.05から3.0秒間、極性を逆転させる。」
d 段落【0018】
「本発明の形状管電解加工方法は、304ステンレス、321ステンレス、414ステンレス、インコーネル合金718、インコーネル合金625、インコーネル合金X-750、インコーネル合金825等の様々な導電性材料に穿孔するのに使用することができる。長さ/直径比(アスペクト比)300:1まで、直径0.5から6.4mmの範囲で610mmまでの深さの孔を開けることができる。楕円形等の形状の場合は、最小幅が0.5mm以上で、長軸と短軸の比が3:1である必要がある。」
e 図2
図2からは、金属管12の先端13にはコーティングが施されておらず、斜めにテーパ形状に突出していることが見て取れる。
(イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術が記載されていると認められる。
a 上記記載事項(ア)a及びbには、ワークピースに均一な径の孔を穿孔する形状管電解加工装置が記載されている。
b 上記記載事項(ア)c及びeには、金属管12の先端13にはコーティングが施されておらず、管状電極10の先端13は斜めにテーパ形状に突出していることが記載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「先端にはコーテイングが施されておらず、先端が斜めにテーパ形状に突出している管状電極により、ワークピースに均一な径の孔を電解加工すること」(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)
(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「内部を通して電解液を運ぶように構成された中空電解加工用電極100」は、本件補正発明の「少なくとも1つの通路を画定する導電性部材」に相当する。
(イ)引用発明の「中空電解加工用電極100のうち、第一セクション102の外周を包囲するが、第二セクション104の外周には部分的にしか延在しない絶縁体」は、本件補正発明の「導電性部材の側面を部分的に覆う絶縁被覆部」に相当する。
(ウ)引用発明の「中空電解加工用電極100の第二セクション104において、2箇所に互いに相対して位置し、電極100に沿って、任意の長さL1に延在し得る、絶縁されずに露出された非絶縁部112」は、本件補正発明の「絶縁被覆部が、前記導電性部材の少なくとも1つの露出部分を覆わず、前記少なくとも1つの露出部分は、前記導電性部材の長手方向軸にほぼ沿って延びる」構成及び「少なくとも1つの露出部分は、約180度だけ離隔した第1及び第2の露出部分を含」む構成に相当する。
(エ)引用発明の「電極の前端部に配置されている非絶縁電極チップ116」は、本件補正発明の「絶縁被覆部は、前記導電性部材の露出前端部も覆わ」ない構成に相当する。
(オ)引用発明の「露出された非絶縁部112との間で第1セクション102の長さ分だけ離隔した非絶縁電極チップ116を有する電極離隔した非絶縁電極チップ116」は、本件補正発明の「導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の前記第1及び第2の露出部分からギャップhだけ離隔」している構成に相当する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「少なくとも1つの通路を画定する導電性部材と、前記導電性部材の側面を部分的に覆う絶縁被覆部とを含む電解加工プロセス用の電極であって、前記絶縁被覆部が、前記導電性部材の少なくとも1つの露出部分を覆わず、前記少なくとも1つの露出部分は、前記導電性部材の長手方向軸にほぼ沿って延び、前記絶縁被覆部は、前記導電性部材の露出前端部も覆わず、前記少なくとも1つの露出部分は、約180度だけ離隔した第1及び第2の露出部分を含み、前記導電性部材の前記露出前端部は、前記導電性部材の前記第1及び第2の露出部分からギャップhだけ離隔している電極。」
【相違点1】
導電性部材の露出前端部が、本願発明1は、高さが0mm超2mm未満であって絶縁被覆部との間に段差を形成するのに対して、引用発明では露出前端部の具体的構成が明らかでない点。
【相違点2】
導電性部材の露出前端部と、導電性部材の第1及び第2の露出部分とが離隔しているギャップhが、本願発明1は、少なくとも1ミリメートル(1mm)であるのに対して、引用発明では具体的な距離が明示されていない点。
【相違点3】
導電性部材の露出前端部が、本願発明1は、導電性部材の残りの部分よりも小さい直径を有するのに対して、引用発明では露出前端部の具体的構成が明らかでない点。
(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1について
本願請求項1を引用する請求項2には「テーパが付いている」と記載されているのであるから、本願発明は、図1の形状の電極が実施例であることは明らかである。
ここで、導電性部材12の縦断面の形状が示されていないので、具体的な形状は明らかでないが、図2及び段落【0016】の「円形管」の記載からして、円形管である導電性部材の先端がテーパ状となっているものと理解できる。すなわち、本願発明の導電性部材12の縦断面の形状は、引用文献2の図2に示された金属管12の形状と同様のテーパを有しているものと理解できる。
そして、引用文献2のように導電性の電極を絶縁被覆部より突出させることは、当該技術分野においては周知であり(例えば、特開2011-161527号公報の段落【0024】、図2等、特開2002-307249号公報の段落【0016】、図3等)、引用発明において、円形の孔を穿孔する先端部の形状として、従来周知の形状を選択することに格別の困難性は認められず、引用文献2に示された形状を適用することに格別な困難性はない。
さらに、引用文献2では、孔の直径として0.5~6.4mmと記載され、テーパの角度が11°であることから、突出量が2mm未満となるのは明らかであり、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用した際に、突出量を2mm未満とすることは十分に想到し得る事項に過ぎない。
なお、審判請求人は、審判請求書において、「電解加工プロセスで形成される孔の短軸のサイズを低減し、孔の長軸対短軸のサイズ比を増大させることができるという技術的が得られる(本願明細書段落0020)。」と主張している。
しかしながら、発明の詳細な説明には、「段差」を設けることについての具体的な記載はなく、図面に示されるのみである。その結果、発明の詳細な説明には「段差」と「電解加工プロセスで形成される孔の短軸のサイズを低減し、孔の長軸対短軸のサイズ比を増大させることができるという技術的効果」との関係についても開示されていない(段落【0020】には、サイズ比についての記載はあるが、この記載は、導電性部材12の露出前端部20が、導電性部材12の残りの部分よりも小さい直径を有することや、導電性部材12の露出前端部20にテーパを付けることに関するもので、段差による効果について開示するものではない。
よって、「段差」が形成されることが限定されることで、出願人の主張する技術的効果に対して、当業者の予測を超えるような寄与があるものとは認められない。
イ 相違点2について
引用発明を実施するにあたり、ギャップhをある程度の長さを有するように実施することは当然であり、ギャップhを1mm以上の長さとすることに格別の困難性は認められない。
ウ 相違点3について
引用文献2記載の技術的事項における先端が斜めにテーパ形状に突出している管状電極は、導電性部材の残りの部分よりも当然に小さい直径であり、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用した際に、導電性部材の露出前端部が、導電性部材の残りの部分よりも小さい直径を有するように構成することに格別の困難性は認められない。
エ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものに過ぎず、格別顕著なものということはできない。
オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年1月11日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-9に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2008-229842号公報
引用文献2:特開平7-40146号公報
引用文献3:特開2011-62811号公報
3 引用文献等
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1ないし2及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・検討
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「露出前端部」の「段差」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、並びに上記引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2018-000306