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特許無効審判

2017-800093

審判番号
2017-800093
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2015-540127外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年07月14日
審決日
2020年02月12日
公報発行日
2020年10月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.537-ZDA(C11B) / P1113.536-ZDA(C11B) / P1113.161-ZDA(C11B) / P1113.113-ZDA(C11B) / P1113.121-ZDA(C11B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条民事訴訟法64条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条、特許法第134条の2第6項、特許法第184条の5第1項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6026672号発明「油組成物からの好ましくない成分の除去」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第6026672号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5、11-17〕、6、〔7、10〕、〔8、9〕、18、19について訂正することを認める。 特許第6026672号の請求項18、19に係る発明についての特許を無効とする。 特許第6026672号の請求項1ないし17に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その19分の17を請求人の負担とし、19分の2を被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第6026672号(以下、「本件特許」という。)に係る出願(特願2015-540127号)は、2013年(平成25年)10月31日(優先権主張 2012年11月2日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成28年10月21日に特許権の設定登録がされたものである。 以降の手続の経緯は、概略以下のとおりである。 平成29年 7月14日  :無効審判請求書(請求項1~19に対し) 及び甲第1~29号証の提出 同年 8月24日付け:手続補正指令(方式) 同年 9月14日  :審判請求書の手続補正書(請求の理由)、 審判請求書の手続補正書 (証拠方法、請求の理由、証拠説明書)、 甲第17号証(不鮮明頁(82~87頁) の是正) 及び甲第17号証の抄訳の提出 同年 9月22日付け:答弁指令、請求書副本及び手続補正書副本 (2通)の送達 平成30年 1月25日  :審判事件答弁書、乙第1~4号証 及び訂正請求書の提出 同年 2月 1日付け:手続補正指令(方式) 同年 3月 5日  :訂正請求書の手続補正書(請求の理由) の提出 同年 同月15日付け:答弁書副本の送付、並びに訂正請求書副本 及びその手続補正書副本の送付 同年 4月19日  :弁駁書及び甲第30~44号証の提出 同年 6月14日付け:弁駁書副本の送付 同年 同月29日付け:審理事項通知(両当事者あて) 同年 9月11日  :口頭審理陳述要領書(被請求人)、 乙第5~11号証及び参考資料1の提出 同年 同月12日付け:口頭審理陳述要領書(被請求人)副本 の送付 同年 同月25日  :口頭審理陳述要領書(請求人)、 甲第24号証(訳文追加) 及び甲第45~56号証の提出 同年10月 1日付け:口頭審理陳述要領書(請求人)副本の送付 同年 同月16日  :第1回口頭審理 同年11月13日  :上申書(被請求人)、 乙第11号証(抄訳追加)、 及び乙第12、13号証の提出 同年 同月 同日  :上申書(請求人)の提出 同年 同月15日付け:上申書(被請求人)副本の送付 同日付け:上申書(請求人)副本の送付 同年12月 4日  :上申書(被請求人)の提出 同年 同月 同日  :上申書(請求人) 及び甲第57号証の提出 平成31年 2月27日  :上申書(請求人) 及び甲第58~59号証の提出 令和 元年 5月30日付け:審決の予告 同年 9月 4日  :上申書(被請求人) 及び訂正請求書の提出 同年 同月11日付け:上申書(被請求人)副本 及び訂正請求書副本の送付 同年10月11日  :弁駁書 及び甲第60号証の提出 同年11月22日  :上申書(被請求人) 及び乙第14~20号証の提出 第2 訂正請求について 1.本件訂正請求 上記第1「手続の経緯」のとおり、被請求人から令和元年9月4日に訂正請求書が提出されて、本件特許請求の範囲の訂正の請求がされたので、特許法第134条の2第6項の規定により、平成30年3月5日提出の手続補正書により補正された平成30年1月25日提出の訂正請求書による訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。 2.請求の趣旨 令和元年9月4日に提出された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、「特許第6026672号の特許請求の範囲を、本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求める。」というものである。 3.訂正の内容 本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりに、請求項ごと又は一群の請求項ごとに、訂正後の請求項1~19について訂正することを求めるものであって、具体的には、一群の請求項をなす請求項1~17に係る下記(1)訂正事項1ないし(18)訂正事項18の訂正、請求項18に係る下記(19)訂正事項19の訂正、及び請求項19に係る下記(20)訂正事項20の訂正からなるものである。 なお、訂正事項1~訂正事項18に係る訂正前の請求項1~17は、請求項2~17が請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、上記訂正事項に係る訂正により、対応する訂正後の請求項1~17に訂正されるから、これらの訂正事項は一群の請求項1~17について請求されたものである。 また、被請求人は、訂正が認められる場合には、訂正後の請求項6、7、8、9、10については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 (1)訂正事項1 請求項1の(a)において、「ここで親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」(特許掲載公報の請求項1の3~4行)とあるのを、「ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み」と訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の(b)の「油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような」(特許掲載公報の請求項1の5~7行)を「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような」と訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1の(c)の「ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、親油性成分、特に好ましくない親油性成分が遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」(特許掲載公報の請求項1の8~10行)を「ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」と訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (4)訂正事項4 請求項1の(d)において、「ステップ(c)からの組成物をさらなる処理ステップに場合によってはかけるステップ」(特許掲載公報の請求項1の11~12行)とあるのを、「ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」と訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1の「ステップとを含み、」(特許掲載公報の請求項1の11~13行)の後に、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、」を加える訂正をする。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項1の「ステップ(c)前に、特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体を」(特許掲載公報の請求項1の14~15行)を、「ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を」と訂正する。請求項1の記載を引用する請求項2~5、11~17も、同様に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項2の「親水性成分が、タンパク質性化合物および場合によっては他の水溶性成分から選択される」を、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である」に訂正する。請求項2の記載を引用する請求項4、5、11~17も、同様に訂正する。 (8)訂正事項8 請求項3の「環境汚染物質が、ポリ塩化ビフェニル、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む」を、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である」に訂正する。請求項3の記載を引用する請求項4、5、11~17も、同様に訂正する。 (9)訂正事項9 請求項4の「多不飽和脂肪酸、特に多不飽和ω-3脂肪酸、より特定するとEPAおよびDHA」を、「多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHA」に訂正する。請求項4の記載を引用する請求項5、11~17も、同様に訂正する。 (10)訂正事項10 請求項6に「原油組成物が、トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸を原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、 「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加せず、 原油組成物が、トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリドを原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む、 方法。」 に訂正する。 (11)訂正事項11 請求項7に「水性流体処理ステップ(b)が、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、 「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 に訂正する。請求項7の記載を引用する請求項10も、同様に訂正する。 (12)訂正事項12 請求項8に「水性流体処理ステップ(b)が、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、 「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 ステップ(b)後に、油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含まず、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 に訂正する。請求項8の記載を引用する請求項9も、同様に訂正する。 (13)訂正事項13 請求項9に「塩基が、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」と記載されているのを、「塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%ある」に訂正する。 (14)訂正事項14 請求項10に「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%、好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2重量%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法」と記載されているのを、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%または2重量%である、請求項7に記載の方法」と訂正する。 (15)訂正事項15 請求項6、7、8、9、10の記載を引用する請求項11~17を、請求項6、7、8、9、10の記載を引用しないものに訂正する。 (16)訂正事項16 請求項14の「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHAを」を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを」に訂正する。請求項14の記載を引用する請求項17も、同様に訂正する。 (17)訂正事項17 請求項15の「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHAを」を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを」に訂正する。請求項15の記載を引用する請求項17も、同様に訂正する。 (18)訂正事項18 請求項16の「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHAを」を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを」に訂正する。請求項16の記載を引用する請求項17も、同様に訂正する。 (19)訂正事項19 請求項18の「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用であって、親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」(特許掲載公報の請求項18の1~5行)を、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用であって、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である」と訂正する。 (20)訂正事項20 請求項19において、「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物であって、親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」(特許掲載公報の請求項19の1~3行)とあるのを、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物であって、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である」と訂正する。 4.訂正の目的の適否 (1)訂正事項1 (1-1)「ここで親油性成分が」を「ここで・・・好ましくない親油性成分が」とする訂正について 訂正前の請求項1には、「(a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され、」と記載されていたところ、後段の「ここで親油性成分が」における「親油性成分」が、前段の「好ましくない親油性成分」を受けるものであり、本来は「好ましくない親油性成分」と記載されるべきものが、誤って「好ましくない」を省略して記載されたものであったことは、文脈上明らかである。また、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているから、上記請求項1の後段の、「ここで親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され、」という記載が、「好ましくない親油性成分」についての記載であったことは、本件明細書の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、訂正事項1のうち、請求項1における「ここで親油性成分が」を「ここで・・・好ましくない親油性成分が」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 (1-2)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 訂正事項1のうち、訂正前の請求項1に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正は、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (1-3)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」を加える訂正について 訂正事項1のうち、訂正前の請求項1に「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」を加える訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (1-4)「遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み」を加える訂正について 訂正事項1のうち、訂正前の請求項1に「遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み」を加える訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0039]に記載された「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (1-5)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項1の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2)訂正事項2 (2-1)「油組成物中に存在する」を「原油組成物中に存在する」とする訂正について 訂正前の請求項1には、「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと」と記載されていたところ、後段の「油組成物中に存在する」における「油組成物」が、前段の「原油組成物」を受けるものであり、本来は「原油組成物」と記載されるべきものが、誤って省略して記載されたものであったことは、文脈上明らかである。 よって、訂正事項2のうち、請求項1における「油組成物中に存在する」を「原油組成物中に存在する」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 (2-2)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 訂正事項2のうち、訂正前の請求項1の(b)における「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸」を「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正は、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (2-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項2の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3)訂正事項3 (3-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 訂正事項3のうち、訂正前の請求項1の(c)における「内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸」及び「遊離脂肪酸と共に」を、それぞれ「内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸」及び「炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に」とする訂正は、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3-2)「親油性成分、特に好ましくない親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 訂正事項3のうち、訂正前の請求項1の(c)における「親油性成分、特に好ましくない親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正は、ステップ(c)において、分離される「親油性成分」が、単に「親油性」であるだけでなく、「好ましくない親油性成分」であることを特定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (3-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項3の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4)訂正事項4 (4-1)「さらなる処理ステップ」を「多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップ」とする訂正について 訂正事項4のうち、訂正前の請求項1の(d)における「さらなる処理ステップ」を「多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップ」とする訂正は、さらなる処理の内容を、本件明細書の[0062]に記載されている「多不飽和脂肪酸の濃縮」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4-2)「場合によってはかける」を「かける」とする訂正について 訂正事項4のうち、訂正前の請求項1の(d)における「場合によってはかけるステップ」を「かけるステップ」とする訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「場合によっては」なる任意付加的/選択的記載を削除し、ステップ(d)が必ず含まれるステップであることを特定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (4-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項4の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (5)訂正事項5 訂正事項5の訂正は、訂正前の請求項1に、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、」という発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項5の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (6)訂正事項6 訂正前の請求項1には、「ステップ(c)前に、特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」と記載されていたところ、当該記載では、ステップ(c)前に油組成物に添加しないとされる「外部揮発性作業流体」が、「脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」ものに限られるのか、あるいはそれらに限られないすべての「外部揮発性作業流体」であるのかが判然としないから、訂正前の請求項1の上記記載は、技術的に不明瞭なものである。訂正事項6の訂正は、「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体」という記載から、「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」を削除することにより、ステップ(c)前に油組成物に添加しない「外部揮発性作業流体」の範囲を明らかにするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項6の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (7)訂正事項7 (7-1)「親水性成分が、タンパク質性化合物・・・から選択される」を削除する訂正について 訂正事項7のうち、訂正前の請求項2に記載されていた「親水性成分が、タンパク質性化合物・・・から選択される」を削除する訂正は、訂正事項1による請求項1の訂正(上記第2 4.(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」を参照。)により、訂正前の請求項1に「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」が加えられることに伴い、記載を整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (7-2)「および場合によっては他の水溶性成分」を削除する訂正について 訂正前の請求項2の「親水性成分がタンパク質性化合物および場合によっては他の水溶性成分から選択される」という記載では、「場合によっては他の水溶性成分」という記載が、どのような場合に「他の水溶性成分」が親水性成分の選択肢になり得るのかが判然とせず、親水性成分の範囲が不明瞭となっていた。訂正事項7のうち、訂正前の請求項2に記載されていた「および場合によっては他の水溶性成分」を削除する訂正は、「場合によっては」選択され得るものとされていた「他の水溶性成分」を、「親水性成分」の選択肢から削除することにより、親水性成分の選択肢を明確化し、同時に限定するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (7-3)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である」を加える訂正について 訂正事項7のうち、訂正前の請求項2に、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である」を加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (7-4)請求項4、5、11~17について 訂正後の請求項4、5、11~17は、訂正後の請求項2に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項7の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (8)訂正事項8 (8-1)「環境汚染物質が、ポリ塩化ビフェニル、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む」を削除する訂正について 訂正事項8のうち、訂正前の請求項3に記載されていた「環境汚染物質が、ポリ塩化ビフェニル、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む」を削除する訂正は、訂正事項1による請求項1の訂正(上記第2 4.(1)(1-2)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」を参照。)により、訂正前の請求項1における(好ましくない)親油性成分の選択肢が環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定されることに伴い、記載を整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (8-2)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である」を加える訂正について 訂正事項8のうち、訂正前の請求項3に、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である」を加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (8-3)請求項4、5、11~17について 訂正後の請求項4、5、11~17は、訂正後の請求項3に連動し て訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項8の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (9)訂正事項9 訂正前の請求項4には、「原油組成物が、多不飽和脂肪酸、特に多不飽和ω-3脂肪酸、より特定するとEPAおよびDHAを含む」と記載されていたところ、当該「特に」及び「より特定すると」という文言を含む記載では、請求項4に係る発明の原油組成物の含有成分が「多不飽和脂肪酸」であるのか、あるいはより特定された「多不飽和ω-3脂肪酸」又は「EPAおよびDHA」であるのかが不明瞭になっていた。訂正事項9の訂正は、上記記載を「原油組成物が、多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHAを含む」とすることで、「多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHA」が「多不飽和脂肪酸」の例示にすぎないことを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項5、11~17は、訂正後の請求項4に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項9の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (10)訂正事項10 (10-1)引用関係の解消について 訂正前の請求項6は、訂正前の請求項1~5のいずれか一項を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項10の訂正により、請求項1~5の記載を引用しない独立形式に改められるから、訂正事項10の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、他の請求項との引用関係を解消するために訂正後の請求項6に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項10の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号~同第3号に掲げる事項を目的とするものでもある。 (10-2)「トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸」を「トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド」とする訂正について 訂正前の請求項6には、「原油組成物が、トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸を・・・含む」と記載されていたところ、当該請求項6に対応する本件明細書の[0032]には、「例えば、原油組成物は、・・・トリグリセリドおよび/またはリン脂質、好ましくはトリグリセリドを含んでいてもよい」と記載されているから、上記訂正前の請求項6における「トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸」は、本来、「トリグリセリドおよび/またはリン脂質、特にトリグリセリド」と記載されるべきものが、誤って記載されたものであったことは明らかである。 また、上記訂正前の請求項6の「特に」という文言を含む記載では、請求項6に係る発明の原油組成物の含有成分についての特定が、「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」についてのものであるのか、あるいは「トリグリセリド」についてのものであるのかが不明瞭になっていたところ、訂正事項10の訂正は、「、特に」を「あるいは」とすることで、「トリグリセリド」が「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」の例示であることを明瞭にするものである。 よって、訂正事項10の上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (11)訂正事項11 (11-1)引用関係の解消について 訂正前の請求項7は、訂正前の請求項1~6のいずれか一項を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項11の訂正により、請求項1~6の記載を引用しない独立形式に改められるから、訂正事項11の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、他の請求項との引用関係を解消するために訂正後の請求項7に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項11の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号~同第3号に掲げる事項を目的とするものでもある。 (11-2)水性流体処理ステップ(ステップ(b))について 訂正前の請求項7には、「水性流体処理ステップ(b)が、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含む」ことが記載されていたが、訂正前の請求項7が引用する訂正前の請求項1~6のいずれにも「水性流体処理ステップ」という用語が記載されていなかったため、いずれのステップを指すのかが不明瞭になっていた。訂正事項11のうち、訂正前の請求項7における「水性流体処理ステップ(b)」を「ステップ(b)の水性流体処理ステップ」とする訂正は、当該ステップが訂正事項1による訂正後の請求項1に記載された「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の「水性流体処理ステップ」を指すことを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項11のうち、上記ステップ(b)の水性流体処理ステップに、「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、」を加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加することによって、ステップ(b)を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (11-3)請求項10について 訂正後の請求項10は、訂正後の請求項7に連動して訂正されるから、請求項10についての訂正事項11の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号~同第4号に掲げる事項を目的とするものである。 (12)訂正事項12 (12-1)引用関係の解消について 訂正前の請求項8は、訂正前の請求項1~6のいずれか一項を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項12の訂正により、請求項1~6の記載を引用しない独立形式に改められるから、訂正事項12の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。また、他の請求項との引用関係を解消するために訂正後の請求項8に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項12の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第1項ただし書第1号~同第3号に掲げる事項を目的とするものでもある。 (12-2)水性流体処理ステップ(ステップ(b))について 訂正前の請求項8には、「水性流体処理ステップ(b)が、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含む」ことが記載されていたが、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1~6のいずれにも「水性流体処理ステップ」という用語が記載されていなかったため、いずれのステップを指すのかが不明瞭になっていた。訂正事項12のうち、訂正前の請求項8における「水性流体処理ステップ(b)」を「ステップ(b)の水性流体処理ステップ」とする訂正は、当該ステップが訂正事項1による訂正後の請求項1に記載された「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の「水性流体処理ステップ」を指すことを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項12のうち、上記ステップ(b)の水性流体処理ステップに、「ステップ(b)後に、油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含まず、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、」を加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加することによって、ステップ(b)を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (12-3)請求項9について 訂正後の請求項9は、訂正後の請求項8に連動して訂正されるから、請求項9についての訂正事項12の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号~同第4号に掲げる事項を目的とするものである。 (13)訂正事項13 (13-1)「、特に」を「あるいは」とする訂正について 訂正前の請求項9には、「塩基が、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」と記載されていたところ、当該「特に」という文言を含む記載では、請求項9に係る発明における塩基が、「アルカリ金属水酸化物」全般であるのか、あるいは「水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム」に限られるのかが不明瞭になっていた。訂正事項13のうち、訂正前の請求項9における「、特に」を「あるいは」とする訂正は、上記記載を「塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」とすることで、「水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム」が「アルカリ金属水酸化物」の例示であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (13-2)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%であ」ることを加える訂正について 訂正事項13のうち、訂正前の請求項9に、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%であ」ることを加える訂正は、発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (14)訂正事項14 (14-1)引用請求項の減少について 訂正前の請求項10は、訂正前の請求項1~9のいずれか一項を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項14の訂正により、請求項7のみを引用するように記載が改められるから、訂正事項14の上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (14-2)遊離脂肪酸の量について 訂正前の請求項10には、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%、好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2重量%である」と記載されていたところ、当該「好ましくは」及び「最も好ましくは」という文言を含む記載では、請求項10に係る発明における油組成物中の遊離脂肪酸量が不明瞭になっていた。訂正事項14の訂正は、訂正後の請求項10における上記記載を、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%または2重量%である」とすることで、遊離脂肪酸の量は「1~3重量%または2重量%」であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。また、上記訂正のうち、「0.5重量%から5重量%、」を削除する訂正は、訂正後の請求項10が引用する訂正後の請求項7において、訂正事項11による請求項7の訂正(上記第2 4.(11)(11-1)「引用関係の解消について」及び4.(5)「訂正事項5」を参照。)により、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることが特定されることに伴い、記載を整合させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (15)訂正事項15 訂正前の請求項11~17はいずれも引用形式で記載され、訂正前の請求項6~10のいずれか一項を直接又は間接的に引用する場合を含んでいたところ、訂正事項15の訂正は、訂正後の請求項11~17において、訂正後の請求項6~10のいずれも引用しないものとすることにより、引用請求項数を減少させるものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (16)訂正事項16 訂正前の請求項14には、「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」することが記載されていたところ、当該「特に」という文言を含む記載では、請求項14に係る発明において「EPAおよび/またはDHA」が濃縮されることが必須であるのか、あるいはそれらに限られない「ω-3脂肪酸」が濃縮されればよいのかが不明瞭になっていた。訂正事項16の訂正は、請求項14における上記記載を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHA」とすることで、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項14に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項16の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (17)訂正事項17 訂正前の請求項15には、「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」することが記載されていたところ、当該「特に」という文言を含む記載では、請求項15に係る発明において「EPAおよび/またはDHA」が濃縮されることが必須であるのか、あるいはそれらに限られない「ω-3脂肪酸」が濃縮されればよいのかが不明瞭になっていた。訂正事項17の訂正は、請求項15における上記記載を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHA」とすることで、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項15に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項17の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (18)訂正事項18 訂正前の請求項16には、「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」することが記載されていたところ、当該「特に」という文言を含む記載では、請求項14に係る発明において「EPAおよび/またはDHA」が濃縮されることが必須であるのか、あるいはそれらに限られない「ω-3脂肪酸」が濃縮されればよいのかが不明瞭になっていた。訂正事項18の訂正は、請求項16における上記記載を、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHA」とすることで、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項16に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項18の訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (19)訂正事項19 (19-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 訂正事項19のうち、訂正前の請求項18における「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸」及び「遊離脂肪酸と共に」を、それぞれ「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸」及び「内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に」とする訂正は、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (19-2)「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 訂正前の請求項18には、「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分・・・を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用であって、親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される、使用」と記載されていたところ、最後に記載された「親油性成分」が、それ以前に記載された「好ましくない親油性成分」を受けるものであり、本来は「好ましくない親油性成分」と記載されるべきものが、誤って「好ましくない」を省略して記載されたものであったことは、文脈上明らかである。また、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているから、訂正前の請求項18の「親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」という記載が、「好ましくない親油性成分」についての記載であったことは、本件明細書の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、訂正事項19のうち、「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 (19-3)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 訂正事項19のうち、訂正前の請求項18に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正は、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (19-4)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正について 訂正事項19のうち、訂正前の請求項18に「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正は、訂正前の請求項18に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (20)訂正事項20 (20-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 訂正事項20のうち、訂正前の請求項19における「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸」を「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正は、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (20-2)「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 訂正前の請求項19には、「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物であって、親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される、油組成物」と記載されていたところ、後段に記載された「親油性成分」が、前段に記載された「好ましくない親油性成分」を受けるものであり、本来は「好ましくない親油性成分」と記載されるべきものが、誤って「好ましくない」を省略して記載されたものであったことは、文脈上明らかである。また、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているから、訂正前の請求項19の「親油性成分が、環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」という記載が、「好ましくない親油性成分」についての記載であったことは、本件明細書の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、訂正事項20のうち、「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 (20-3)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 訂正事項20のうち、訂正前の請求項19に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正は、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (20-4)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正について 訂正事項20のうち、訂正前の請求項19に「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正は、訂正前の請求項19に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 5.新規事項の有無 (1)訂正事項1 (1-1)「ここで親油性成分が」を「ここで・・・好ましくない親油性成分が」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(1)(1-1)「『ここで親油性成分が』を『ここで・・・好ましくない親油性成分が』とする訂正について」に記載したとおり、文脈上明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるから、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。また、上記第2 4.(1)(1-1)「『ここで親油性成分が』を『ここで・・・好ましくない親油性成分が』とする訂正について」に記載したとおり、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているところ、これらと同じ記載が当初明細書等の[0017]及び[0023]にも存在していたから、上記訂正が当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは、当初明細書等の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、上記訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (1-2)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(1)(1-2)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」に記載したとおり、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下、「明細書等」という。)に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (1-3)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」を加える訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」に記載したとおり、訂正前の請求項1に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (1-4)「遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み」を加える訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(1)(1-4)「『遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み』を加える訂正について」に記載したとおり、訂正前の請求項1に記載されていた「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0039]に記載された「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (1-5)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項1の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2 (2-1)「油組成物中に存在する」を「原油組成物中に存在する」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(2)(2-1)「『油組成物中に存在する』を『原油組成物中に存在する』とする訂正について」に記載したとおり、文脈上明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるから、当初明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2-2)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(2)(2-2)「『遊離脂肪酸』を『炭素数16から22の遊離脂肪酸』とする訂正について」に記載したとおり、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項2の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3 (3-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(3)(3-1)「『遊離脂肪酸』を『炭素数16から22の遊離脂肪酸』とする訂正について」に記載したとおり、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3-2)「親油性成分、特に好ましくない親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 上記訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「親油性成分、特に好ましくない親油性成分」という「特に」の文言を含む記載について、訂正前の[0020]における「好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップによって除去される」との記載、[0053]における「ストリッピング処理ステップは、油組成物中の好ましくない親油性成分の量を低減する蒸留または蒸発ステップである。」との記載、及び[0057]における「ステップ(c)において・・・遊離脂肪酸が好ましくない親油性成分と共に油組成物から除去される」との記載に基づいて、「好ましくない親油性成分」であることを特定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項3の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4 (4-1)「さらなる処理ステップ」を「多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップ」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(4)(4-1)「『さらなる処理ステップ』を『多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップ』とする訂正について」に記載したとおり、さらなる処理の内容を、本件明細書の[0062]に記載されている「多不飽和脂肪酸の濃縮」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4-2)「場合によってはかける」を「かける」とする訂正について 上記訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「場合によっては」なる任意付加的/選択的記載を削除し、ステップ(d)が必ず含まれるステップであることを特定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (4-3)請求項2~5、11~17について 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項4の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5 訂正事項5の訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた(b)「水性流体処理ステップ」について、訂正前の請求項8、10及び訂正前の[0043]、[0047]の記載に基づいて、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、」という発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項5の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6 訂正事項6の訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた「ステップ(c)前に、特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」という「特に」の文言を含む記載について、訂正前の[0052]における「本発明の方法は・・・ストリッピング処理ステップにおいて外部揮発性作業流体の添加を必要としない。」との記載に基づいて、「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」を削除することにより、ステップ(c)前に油組成物に添加しない「外部揮発性作業流体」の範囲を明らかにするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項2~5、11~17は、訂正後の請求項1に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項6の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7)訂正事項7 (7-1)「親水性成分が、タンパク質性化合物・・・から選択される」を削除する訂正について 上記訂正は、訂正事項1による請求項1の訂正(上記5.(1)(1-3)を参照。)により、訂正前の請求項1に「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」が加えられることに伴い、記載を整合させるものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7-2)「および場合によっては他の水溶性成分」を削除する訂正について 上記訂正は、訂正前の請求項2に記載されていた「親水性成分がタンパク質性化合物および場合によっては他の水溶性成分から選択される」という「場合によっては」の文言を含む記載について、訂正前の[0022]における「好ましくない親水性成分としては、タンパク質、ペプチドなどのタンパク質性化合物および他の水溶性成分が挙げられるが、・・・好ましい実施形態において、親水性成分はタンパク質やペプチドなどのタンパク質性化合物である。」との記載に基づいて、「場合によっては」選択され得るものとされていた「他の水溶性成分」を、「親水性成分」の選択肢から削除することにより、親水性成分の選択肢を明確化し、同時に限定するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7-3)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である」を加える訂正について 上記訂正は、訂正前の[0047]及び請求項10の記載に基づいて、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である」という発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7-4)請求項4、5、11~17について 訂正後の請求項4、5、11~17は、訂正後の請求項2に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項7の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (8)訂正事項8 (8-1)「環境汚染物質が、ポリ塩化ビフェニル、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む」を削除する訂正について 上記訂正は、訂正事項1による請求項1の訂正(上記5.(1)(1-2)を参照。)により、訂正前の請求項1における(好ましくない)親油性成分の選択肢が環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定されることに伴い、記載を整合させるものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (8-2)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である」を加える訂正について 上記訂正は、訂正前の[0047]及び請求項10の記載に基づいて、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である」という発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (8-3)請求項4、5、11~17について 訂正後の請求項4、5、11~17は、訂正後の請求項3に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項8の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (9)訂正事項9 訂正事項9の訂正は、上記第2 4.(9)「訂正事項9」に記載したとおり、訂正前の請求項4に記載されていた「原油組成物が、多不飽和脂肪酸、特に多不飽和ω-3脂肪酸、より特定するとEPAおよびDHAを含む」という「特に」及び「より特定すると」の文言を含む記載について、「特に」及び「より特定すると」の文言を削除することにより、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHA」が「多不飽和脂肪酸」の例示にすぎないことを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項5、11~17は、訂正後の請求項4に連動して訂正されるから、これらの請求項についての訂正事項9の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (10)訂正事項10 (10-1)引用関係の解消について 上記第2 4.(10)(10-1)「引用関係の解消について」に記載したとおり、訂正前の請求項6における他の請求項との引用関係を解消するために、訂正後の請求項6に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項10の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (10-2)「トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸」を「トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド」とする訂正について 上記訂正のうち、「トリグリセリド形および/またはリン脂質形」を「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」とする訂正及び「トリグリセリド形の脂肪酸」を「トリグリセリド」とする訂正は、上記第2 4.(10)(10-2)「『トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸』を『トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド』とする訂正について」に記載したとおり、本件明細書の[0032]における、「例えば、原油組成物は、・・・トリグリセリドおよび/またはリン脂質、好ましくはトリグリセリドを含んでいてもよい」との記載からみて、訂正前の請求項6における明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるから、当初明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 また、上記訂正のうち、「、特に」を「あるいは」とする訂正は、当該「特に」という文言を削除することにより、「トリグリセリド」が「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」の例示であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (11)訂正事項11 (11-1)引用関係の解消について 上記第2 4.(11)(11-1)「引用関係の解消について」に記載したとおり、訂正前の請求項7における他の請求項との引用関係を解消するために、訂正後の請求項7に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項11の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (11-2)水性流体処理ステップ(ステップ(b))について 訂正事項11のうち、訂正前の請求項7における「水性流体処理ステップ(b)」を「ステップ(b)の水性流体処理ステップ」とする訂正は、当該ステップが訂正事項1による訂正後の請求項1に記載された「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の「水性流体処理ステップ」を指すことを明瞭にするため、記載を整合させるものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正事項11のうち、訂正前の請求項7に、「水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、」を加える訂正は、訂正前の請求項7における「水性流体処理ステップ(b)が、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含む」との記載について、訂正前の[0042]における「水性流体処理ステップは塩基の使用を必要とせず、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させてもよい。相分離を改善するための例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸アンモニウムまたは他の塩などの塩を含有していてもよい水を使用しうる。」との記載に基づいて、上記発明特定事項を直列的に付加することによって、ステップ(b)を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (11-3)請求項10について 訂正後の請求項10は、訂正後の請求項7に連動して訂正されるから、請求項10についての訂正事項11の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (12)訂正事項12 (12-1)引用関係の解消について 上記第2 4.(12)(12-1)「引用関係の解消について」に記載したとおり、訂正前の請求項8における他の請求項との引用関係を解消するために、訂正後の請求項8に記載されることとなったステップ(a)~(d)等の具体的構成は、上記訂正事項1~6に係る訂正後の請求項1と同様の内容を含むものであるから、訂正事項12の上記訂正は、訂正事項1~6の訂正と同様に、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (12-2)水性流体処理ステップ(ステップ(b))について 訂正事項12のうち、訂正前の請求項8における「水性流体処理ステップ(b)」を「ステップ(b)の水性流体処理ステップ」とする訂正は、当該ステップが訂正事項1による訂正後の請求項1に記載された「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の「水性流体処理ステップ」を指すことを明瞭にするため、記載を整合させるものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 また、訂正事項12のうち、上記ステップ(b)の水性流体処理ステップに、「ステップ(b)後に、油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含まず、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、」を加える訂正は、訂正前の[0037]における「ステップ(b)は、水性流体処理ステップにかけるステップを含む。・・・その結果、好ましくない親水性成分を実質的に含まず」という記載、及び訂正前の請求項10の記載に基づいて、上記発明特定事項を直列的に付加することによって、ステップ(b)を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (12-3)請求項9について 訂正後の請求項9は、訂正後の請求項8に連動して訂正されるから、請求項9についての訂正事項12の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (13)訂正事項13 (13-1)「、特に」を「あるいは」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(13)(13-1)「『、特に』を『あるいは』とする訂正について」に記載したとおり、訂正前の請求項9に記載されていた「塩基が、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」という「特に」の文言を含む記載について、「特に」という文言を削除することにより、「水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム」が「アルカリ金属水酸化物」の例示であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (13-2)「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%であ」ることを加える訂正について 上記訂正は、訂正前の[0047]及び請求項10の記載に基づいて、訂正前の請求項9に、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%であ」るという発明特定事項を直列的に付加することによって、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (14)訂正事項14 (14-1)引用請求項の減少について 上記第2 4.(14)(14-1)「引用請求項の減少について」に記載したとおり、訂正前の請求項10が、訂正前の請求項1~9のいずれか一項を引用する形式で記載されていたところ、訂正事項14のうち、訂正前の請求項7を引用する部分を訂正後の請求項10とする訂正は、特許請求の範囲の減縮に当たるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (14-2)遊離脂肪酸の量について 上記第2 4.(14)(14-2)「遊離脂肪酸の量について」に記載したとおり、訂正事項14の訂正は、訂正前の[0047]及び請求項10に記載されていた「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%、好ましくは1~3重量%、最も好ましくは2重量%である」という「好ましくは」及び「最も好ましくは」の文言を含む記載について、当該「好ましくは」及び「最も好ましくは」という文言を削除し、さらに、「0.5重量%から5重量%、」という選択肢を削除することにより、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%または2重量%である」とすることで、遊離脂肪酸の量は「1~3重量%または2重量%」であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (15)訂正事項15 訂正事項15の訂正は、訂正後の請求項11~17において、訂正後の請求項6~10のいずれも引用しないものとすることにより、引用請求項数を減少させるものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (16)訂正事項16 訂正事項16の訂正は、上記第2 4.(16)「訂正事項16」に記載したとおり、訂正前の請求項14に記載されていた「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」するという「特に」の文言を含む記載について、当該「特に」という文言を削除することにより、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項14に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項16の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (17)訂正事項17 訂正事項17の訂正は、上記第2 4.(17)「訂正事項17」に記載したとおり、訂正前の請求項15に記載されていた「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」するという「特に」の文言を含む記載について、当該「特に」という文言を削除することにより、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項15に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項17の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (18)訂正事項18 訂正事項18の訂正は、上記第2 4.(18)「訂正事項18」に記載したとおり、訂正前の請求項16に記載されていた「ω-3脂肪酸、特にEPAおよび/またはDHA・・・を濃縮」するという「特に」の文言を含む記載について、当該「特に」という文言を削除することにより、「EPAおよび/またはDHA」が「ω-3脂肪酸」の例示であることを明瞭にするものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 訂正後の請求項17は、訂正後の請求項16に連動して訂正されるから、請求項17についての訂正事項18の訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (19)訂正事項19 (19-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(19)(19-1)「『遊離脂肪酸』を『炭素数16から22の遊離脂肪酸』とする訂正について」に記載したとおり、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (19-2)「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(19)(19-2)「『親油性成分』を『好ましくない親油性成分』とする訂正について」に記載したとおり、文脈上明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるから、当初明細書等に記載された事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。また、上記第2 4.(19)(19-2)に記載したとおり、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているところ、これらと同じ記載が当初明細書等の[0017]及び[0023]にも存在していたから、上記訂正が当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは、当初明細書等の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、上記訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (19-3)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(19)(19-3)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」に記載したとおり、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (19-4)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(19)(19-4)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、』を加える訂正について」に記載したとおり、訂正前の請求項18に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (20)訂正事項20 (20-1)「遊離脂肪酸」を「炭素数16から22の遊離脂肪酸」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(20)(20-1)「『遊離脂肪酸』を『炭素数16から22の遊離脂肪酸』とする訂正について」に記載したとおり、内部揮発性作業流体としての「遊離脂肪酸」を、本件明細書の[0037]、[0038]に典型的なものとして記載されている「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含むものに限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (20-2)「親油性成分」を「好ましくない親油性成分」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(20)(20-2)「『親油性成分』を『好ましくない親油性成分』とする訂正について」に記載したとおり、文脈上明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるから、当初明細書等に記載された事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。また、上記第2 4.(20)(20-2)に記載したとおり、本件明細書の[0017]には、「本発明は、ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分、例えば環境汚染物質およびコレステロールを除去することによって、」と記載され、[0023]には「好ましくない親油性成分としては、コレステロールおよび環境汚染物質・・・が挙げられているが、」と記載されているところ、これらと同じ記載が当初明細書等の[0017]及び[0023]にも存在していたから、上記訂正が当初明細書等に記載した事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは、当初明細書等の記載を参酌することによっても明らかである。 よって、上記訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (20-3)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(20)(20-3)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択される』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」に記載したとおり、(好ましくない)親油性成分の選択肢を、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (20-4)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、」を加える訂正について 上記訂正は、上記第2 4.(20)(20-4)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、』を加える訂正について」に記載したとおり、訂正前の請求項19に記載されていた「好ましくない親水性成分」を、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、明細書等に記載された事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 6.特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記訂正事項1~20の訂正は、上記第2 4.「訂正の目的の適否」及び同5.「新規事項の有無」に記載したとおり、訂正前の請求項に記載された発明特定事項により特定される発明の範囲を減縮するものであるか、文脈上明らかな誤記を本来の記載に訂正するものであるか、明瞭でない記載を単に明瞭化するものであるか、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、いずれも何ら新たな技術的事項を導入するものではなく、また、いずれも発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、上記訂正事項1~20の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 7.独立特許要件について 本件特許無効審判事件においては、訂正前のすべての請求項1~19が無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1~19に係る訂正事項1~20の訂正については、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 8.請求人の主張について (1)外部揮発性作業流体について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(7頁)において、本件訂正後の請求項1における「外部揮発性作業流体」について、「設定登録時の特許請求の範囲9では、『ステップ(c)前に、“特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体”を油組成物に添加しない』との構成要件が含まれていた。第2次訂正請求では、“特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体”が、『外部揮発性作業流体』に訂正された。 上記の構成要件は、いわゆる除くクレームであり、特許請求の範囲から特定の態様を除外する。除外される態様が狭く特定されると、反射的に、特許請求の範囲は拡張される。」と主張している。 しかし、上記第2 4.(6)「訂正事項6」に記載したとおり、上記「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」を削除する訂正は、訂正前の記載では判然としなかった「外部揮発性作業流体」の範囲を明らかにするという、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、削除された「特に」から始まる発明特定事項は、訂正前において「外部揮発性作業流体」を限定していた発明特定事項ではなく、例示として並記されていた事項であると解されるものである。 そうすると、上記「特に」から始まる発明特定事項を削除する訂正は、特許請求の範囲から特定の態様を除外する訂正ではないし、むしろ除外する「外部揮発性作業流体」を限定的に解釈することのないように明瞭化するものであるから、訂正後の特許請求の範囲が拡張されるものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (2)親油性成分及び内部揮発性作業流体について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(8~9頁)において、「仮に、好ましくない親油性・・・成分を臭素化難燃剤に特定することにより、その臭素化難燃剤を除去するのに効果的な組成物として、『外部揮発性流体』が限定されるのであれば、・・・特許請求の範囲は、拡張されたことになる」、「『外部揮発性作業流体』が、『内部揮発性作業流体』の特定に伴って限定されるのであれば・・・この点でも、特許請求の範囲は拡張される」、及び「被請求人の主張するとおり、第2訂正請求項1の『外部揮発性作業流体』との用語の意味が、第2次訂正請求によって限定的に解釈されるとすれば、・・・請求項1の拡張又は変更に当たる」と主張している。 しかし、仮に、「好ましくない親油性成分」及び「内部揮発性作業流体」の限定に伴って「外部揮発性作業流体」がそれに見合ったものに限定されることがあるとしても、訂正後の請求項1を全体として見れば、「好ましくない親油性成分」及び「内部揮発性作業流体」の限定に見合った範囲に過不足なく減縮されることになるから、特許請求の範囲が拡張されることにはならない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 9.訂正請求についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号乃至第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正は適法なものである。 また、被請求人は、訂正が認められる場合には、訂正後の請求項6、7、8、訂正後の請求項7の記載を引用する訂正後の請求項10、及び訂正後の請求項8の記載を引用する訂正後の請求項9については、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。 よって、訂正後の請求項〔1-5、11-17〕、6、〔7、10〕、〔8、9〕、18、19について訂正することを認める。 第3 本件特許に係る発明 上記第2「訂正請求について」に記載したとおりに本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~19に係る発明は、それぞれ、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。 なお、以下では、本件特許の請求項1~19のそれぞれに係る発明を、対応する請求項の番号を用いて、「本件発明1」などという。また、本件発明1~19をまとめて「本件発明」という。さらに、訂正した明細書を「本件明細書」という。 「[請求項1] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [請求項2] ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%である、請求項1に記載の方法。 [請求項3] ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が2重量%である、請求項1に記載の方法。 [請求項4] 原油組成物が、多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHAを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 [請求項5] 原油組成物が海産物油組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 [請求項6] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加せず、 原油組成物が、トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリドを原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む、 方法。 [請求項7] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [請求項8] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含み、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 ステップ(b)後に、油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含まず、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [請求項9] 塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムであり、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%ある、請求項8に記載の方法。 [請求項10] ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が1~3重量%または2重量%である、請求項7に記載の方法。 [請求項11] ステップ(c)において、遊離脂肪酸の少なくとも75重量%が除去される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 [請求項12] ステップ(c)後に、ストリッピングした油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.2から0.8重量%である、請求項1、2、3、4、5および11のいずれか一項に記載の方法。 [請求項13] ステップ(c)後に、ストリッピングした油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.1重量%以下である、請求項1、2、3、4、5および11のいずれか一項に記載の方法。 [請求項14] さらなる処理ステップが、ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して栄養添加物を提供し、または脂肪酸の全重量に対して少なくとも70重量%の含有量に濃縮して医薬品製剤を提供する、請求項1、2、3、4、5、11、12および13のいずれか一項に記載の方法。 [請求項15] さらなる処理ステップがω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して、健康補助食品または臨床栄養において使用するための組成物を提供する、請求項1、2、3、4、5、11、12および13のいずれか一項に記載の方法。 [請求項16] さらなる処理ステップがω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して、動物用飼料、特に魚飼料を提供する、請求項1、2、3、4、5、11、12および13のいずれか一項に記載の方法。 [請求項17] さらなる処理ステップが、 (i)遊離脂肪酸への加水分解ステップまたはモノエステルへのエステル化ステップ、 (ii)尿素錯体化ステップ、 (iii)分子蒸留ステップ、および/または (iv)エステル交換ステップ のうちの少なくとも1つを含む、請求項1、2、3、4、5、11、12、13、14、15および16のいずれか一項に記載の方法。 [請求項18] 内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用であって、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、使用。 [請求項19] 内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物であって、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物である、油組成物。」 第4 請求人の主張の概要及び証拠方法 1.請求の趣旨 請求人が主張する請求の趣旨は、「特許第6026672号を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」である。 2.審判請求書で請求人が主張する無効理由 請求人が審判請求書で主張する無効理由は、概略以下のとおりである。 なお、複数の理由を含む無効理由については、理解し易いように当審で無効理由を適宜分割し、枝番を付して表した。 (1)無効理由1(記載要件違反)(審判請求書第40頁) ア 無効理由1-1(明確性) 本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由1-2(実施可能要件) 本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 ウ 無効理由1-3(サポート要件) 本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(拡大先願:甲第1号証)(審判請求書第40頁) 本件の請求項1ないし7、10、11及び13ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3(進歩性:甲第2号証)(審判請求書第40、69~86頁) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(審判請求書に記載されるのは甲第5~20号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4(新規性及び進歩性:甲第3号証)(審判請求書第40、41、90~112頁) ア 無効理由4-1(新規性:甲第3号証) 本件の請求項1ないし7、10、11、14ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由4-2(進歩性:甲第3号証) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(審判請求書に記載されるのは甲第5~10、15、20~26、28号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (5)無効理由5(新規性及び進歩性:甲第4号証)(審判請求書第41、116~135頁) ア 無効理由5-1(新規性:甲第4号証) 本件の請求項1ないし7、10、11、14ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由5-2(進歩性:甲第4号証) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(審判請求書に記載されるのは、無効理由4を引用している箇所も踏まえると甲第5~10、15、20~26、28、29号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 3.審決の予告に記載した無効理由 令和元年5月30日付け審決の予告において、当審は、(i)平成30年1月25日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「第1訂正」という。)、(ii)平成30年4月19日に提出された弁駁書等における請求人の主張、及び(iii)請求人が平成30年11月13日に提出した上申書の別紙第1頁において、無効理由2に関し、請求項1~17及び20(第1訂正による訂正後の請求項。以下、本段落において同じ。)に関する主張は取り下げ、請求項18及び19に関する主張は維持すること、無効理由4-1に関し、請求項1~20に関する主張を取り下げること、無効理由5-1に関し、請求項1~17及び20に関する主張は取り下げ、請求項18及び19に関する主張は維持することを表明していることを踏まえて、請求人が主張する無効理由を以下のとおりに整理した。 なお、複数の理由を含む無効理由については、理解し易いように当審で無効理由を適宜分割し、枝番を付して表した。 (1)無効理由1(記載要件違反) ア 無効理由1-1(明確性) 本件の特許請求の範囲の記載(第1訂正による訂正後のもの。以下同様。)は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由1-2(実施可能要件) 本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 ウ 無効理由1-3(サポート要件) 本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(拡大先願:甲第1号証) 本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3(進歩性:甲第2号証) 本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第5~20、23、30~32、44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4-2(進歩性:甲第3号証) 本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28、30~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (5)無効理由5(新規性及び進歩性:甲第4号証) ア 無効理由5-1(新規性:甲第4号証) 本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由5-2(進歩性:甲第4号証) 本件の請求項1ないし20に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 4.本件訂正後の無効理由の対象請求項について (1)上申書における請求人の表明について 上記第4 3.「審決の予告に記載した無効理由」に記載した(iii)平成30年11月13日に提出した上申書の別紙第1頁において、請求人は、上記無効理由の取下げの表明に加え、「仮に、被請求人が、上記の無効理由の取下げ対象となる請求項の発明特定事項を全て含む請求項とする訂正(つまり、平成30年1月25日付け訂正請求と同じか又はさらに特許請求の範囲を減縮する訂正)を別途行う場合には、上記の無効理由の取下げを維持する」ことを表明している。 そこで、上記無効理由の取下げが、本件訂正後にも維持されるか、検討する。 (2)第1訂正発明 第1訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~20に係る発明(以下、対応する請求項の番号を用いて、それぞれ「第1訂正発明1」などという。まとめて「第1訂正発明」ということもある。)は、それぞれ、第1訂正による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~20に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。 なお、請求項の番号表示は、便宜上、「第1訂正請求項1」等の表示にそれぞれ変更した。 「[第1訂正請求項1] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親油性成分が、環境汚染物質から選択され、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、ここで水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物をさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [第1訂正請求項2] 好ましくない親水性成分が、タンパク質性化合物から選択される、請求項1に記載の方法。 [第1訂正請求項3] 環境汚染物質が、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む、請求項1に記載の方法。 [第1訂正請求項4] 原油組成物が、多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHAを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項5] 原油組成物が海産物油組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項6] 原油組成物が、トリグリセリド形および/またはリン脂質形あるいはトリグリセリド形の脂肪酸を原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項7] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親油性成分が、環境汚染物質から選択され、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、ここで水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物をさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [第1訂正請求項8] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親油性成分が、環境汚染物質から選択され、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、ここで水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物をさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ステップ(c)が、短行程蒸留、短行程蒸発、薄膜蒸留、薄膜蒸発、流下膜式蒸留、流下膜式蒸発または分子蒸留で実施され、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。 [第1訂正請求項9] 塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである、請求項8に記載の方法。 [第1訂正請求項10] ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%、1~3重量%または2重量%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項11] ステップ(c)において、遊離脂肪酸の少なくとも75重量%が除去される、請求項1から6および10のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項12] ステップ(c)後に、ストリッピングした油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.2から0.8重量%である、請求項1から6、10および11のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項13] ステップ(c)後に、ストリッピングした油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.1重量%以下である、請求項1から6、10および11のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項14] さらなる処理ステップが、ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して栄養添加物を提供し、または脂肪酸の全重量に対して少なくとも70重量%の含有量に濃縮して医薬品製剤を提供する、請求項1から6および10から13のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項15] さらなる処理ステップがω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して、健康補助食品または臨床栄養において使用するための組成物を提供する、請求項1から6および10から13のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項16] さらなる処理ステップがω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHAを、脂肪酸の全重量に対して少なくとも30重量%の含有量に濃縮して、動物用飼料、特に魚飼料を提供する、請求項1から6および10から13のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項17] さらなる処理ステップが、 (i)遊離脂肪酸への加水分解ステップまたはモノエステルへのエステル化ステップ、 (ii)尿素錯体化ステップ、 (iii)分子蒸留ステップ、および/または (iv)エステル交換ステップ のうちの少なくとも1つを含む、請求項1から6および10から16のいずれか一項に記載の方法。 [第1訂正請求項18] 内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用であって、好ましくない親油性成分が、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物から選択される、使用。 [第1訂正請求項19] 内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物であって、好ましくない親油性成分が、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物から選択される、油組成物。 [第1訂正請求項20] 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、ここで好ましくない親油性成分が、環境汚染物質から選択され、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップと、ここで水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、 (c)ステップ(b)後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと、 (d)ステップ(c)からの組成物をさらなる処理ステップにかけるステップと を含み、 ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%、1~3重量%または2重量%であり、 ステップ(c)が、短行程蒸留、短行程蒸発、薄膜蒸留、薄膜蒸発、流下膜式蒸留、流下膜式蒸発または分子蒸留で実施され、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 (3)本件発明と第1訂正発明との関係について 上記第2「訂正請求について」における検討等を踏まえ、本件発明1~19及び第1訂正発明1~20の発明特定事項について検討する。 ア 本件発明1~3について 本件発明1は、第1訂正発明1~3及び10の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 本件発明1に従属する本件発明2、3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 イ 本件発明4~6について 本件発明4~6は、第1訂正発明1~3及び10の発明特定事項に加え、それぞれ第1訂正発明4~6のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 ウ 本件発明7、10について 本件発明7は、第1訂正発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 本件発明7に従属する本件発明10は、本件発明7の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 エ 本件発明8、9について 本件発明8は、第1訂正発明1~3及び10の発明特定事項をすべて含み、さらに「ステップ(b)後に、油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含ま」ない点が限定された発明に当たる。 本件発明8に従属する本件発明9は、本件発明8の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 オ 本件発明11~17について 本件発明11~17は、第1訂正発明1~3及び10の発明特定事項に加え、それぞれ第1訂正発明11~17のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 カ 本件発明18、19について 本件発明18、19は、それぞれ第1訂正発明18又は19の発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たる。 キ 第1訂正発明8、9、20について 第1訂正発明8、9又は20の発明特定事項をすべて含む発明は、本件発明には含まれていない。 (4)無効理由2の対象請求項について 請求人は、無効理由2に関し、第1訂正による訂正後の請求項1~17及び20に関する主張は取り下げ、請求項18及び19に関する主張は維持すると表明している。 ここで、上記第4 4.(3)「本件発明と第1訂正発明との関係について」における検討を踏まえると、本件発明1~17については、第1訂正発明1~7、10~17のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たるから、無効理由2の主張は取り下げられていると解される。 また、本件発明18、19については、第1訂正発明18又は19の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たることから、無効理由2の主張は維持されていると解される。 (5)無効理由4-1の対象請求項について 請求人は無効理由4-1に関し、第1訂正による訂正後の請求項1~20に関する主張を取り下げることを表明している。 ここで、本件発明1~19については、第1訂正発明1~7、10~19のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たるから、無効理由4-1の主張は取り下げられていると解される。 (6)無効理由5-1の対象請求項について 請求人は、無効理由5-1に関し、第1訂正による訂正後の請求項1~17及び20に関する主張は取り下げ、請求項18及び19に関する主張は維持することを表明している ここで、本件発明1~17については、第1訂正発明1~7、10~17のいずれかの発明特定事項をすべて含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たるから、無効理由5-1の主張は取り下げられていると解される。 また、本件発明18、19については、第1訂正発明18又は19の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項が限定された発明に当たることから、無効理由5-1の主張は維持されていると解される。 5.本件訂正を踏まえた請求人が主張する無効理由 以上のことから、本件訂正を踏まえて請求人が主張する無効理由は、概略以下のように整理することができる。また、いずれの無効理由についても、審決の予告において判断が示されていたといえる。 (1)無効理由1(記載要件違反) ア 無効理由1-1(明確性) 本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由1-2(実施可能要件) 本件の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 ウ 無効理由1-3(サポート要件) 本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、同法同条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 (2)無効理由2(拡大先願:甲第1号証) 本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (3)無効理由3(進歩性:甲第2号証) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第5~20、23、30~32、44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (4)無効理由4-2(進歩性:甲第3号証) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28、30~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (5)無効理由5(新規性及び進歩性:甲第4号証) ア 無効理由5-1(新規性:甲第4号証) 本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由5-2(進歩性:甲第4号証) 本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 6.請求人が提示した証拠方法 <平成29年7月14日に提出した審判請求書に添付> 甲第1号証:国際公開第2013/172346号 甲第2号証:特表2005-532460号公報 甲第3号証:特開昭62-145099号公報 甲第4号証:国際公開第2012/002210号 甲第5号証:A. P. Bimbo, "Guidelines forcharacterizing food-grade fish oil", INFORM, 1998.05, vol.9, No.5, p.473-483 甲第6号証:V. Young, "Processing of oils andfats", Chemistry and Industry, 1978.09.16, vol.16, p.692-703 甲第7号証:V. F. Stout, W. B. Nilsson, J. Krzynowek, H.Schlenk, "Chapter 4 FRACTIONATION OF FISH OILS AND THEIR FATTYACIDS", Edited by M. E. Stansby, FISH OILS IN NUTRITION, Van NostrandReinhold, 1990, p.73, 78, 79,87,88 甲第8号証:T. Okada, M. T. Morrissey, "SeasonalChanges in Intrinsic Characteristics of Pacific Sardine (Sardinopssagax)", Journal of Aquatic Food Product Technology, The Haworth Press,Inc., 2007, vol.16, No.1, p.51-71 甲第9号証:R. G. Ackman, W. M. N. Ratnayake, "10Chemical and Analytical Aspects of Assuring an Effective Supply of Omega-3Fatty Acids to the Consumer", Edited by R. S. Lees, M. Karel, Omega-3Fatty Acids in Health and Disease, Marcel Dekker, Inc., 1990, p.215-233 甲第10号証:T. Okada, M. T. Morrissey, "Recoveryand Characterization of Sardine Oil Extracted by pH Adjustment", Journalof Agricultural and Food Chemistry, American Chemical Society, 2007, vol.55,p.1808-1813 甲第11号証:N. M. Bandarra, I. Batista, M. L. Nunes, J.M. Empis, W. W. Christie, "Seasonal Changes in Lipid Composition ofSardine (Sardina pilchardus)", Journal of Food Science, 1997, vol.62,No.1, p.40-42 甲第12号証:社団法人日本油化学協会編, "改訂三版 油脂化学便覧", 丸善株式会社, 平成2年2月28日, p.279-280 甲第13号証:A. P. Bimbo, "Fish Meal and Oil",Edited by R. E. Martin, E. P. Carter, G. J. Flick,Jr., L. M. Davis, Marine& Freshwater Products Handbook, Technomic Publishing Company, Inc., 2000,p.541-581 甲第14号証:C. Jacobsen, T. Rustad, N. S. Nielsen, E.Falch, S. Jansson, I. Storro(当審注:末尾の「o」は「スラッシュ付きのo」を「o」と表示したもの。),"Processing of marine lipids and factors affecting their quality when usedfor functional foods", The Nordic Network on Marine Functional Food(MARIFUNC), Norden Nordic Innovation centre, 2009.07, p.96-100 甲第15号証:N. A. Febrianto, T. A. Yang, "ProducingHigh Quality Edible Oil by using Eco-Friendly Technology: A Review",Advance Journal of Food Science and Technology, Maxwell ScientificOrganization, 2011, vol.3, No.4, p.317-326 甲第16号証:長崎民平, 和田泰, "特許から見た食用油脂", 油化学, 社団法人日本油化学会, 1970, vol.19, No.8, p.781-791 甲第17号証:倪培徳(当審注:「徳」は「心」の上に「-」の付いた字体。), 唐宝奎編著, "油料加工与操作技術問答"(当審注:「術」及び「問」は簡体字。), 化学工業出版社, 2009.10, p.9, 81-87 甲第18号証:"4.3 Overview of the different stagesof refining", Edited by W. Hamm, R. J. Hamilton, Edible Oil Processing,Sheffield Academic Press, 2000, p.83, 88 甲第19号証:社団法人日本油化学会編, "日本油化学会制定 基準油脂分析試験法 2003年版", 社団法人日本油化学会, 2003年, "2.3 2.3.1-1996 酸価 Acid Value", p.1, 2 甲第20号証:鹿山光編, "AA, EPA, DHA-高度不飽和脂肪酸", 初版, 恒星社厚生閣, 1995.09.30, p.1-4, "1.高度不飽和脂肪酸の精製分離技術", p.213-223, "11.AA, EPA, DHAの生理機能と利用" 甲第21号証:大木道則, 大沢利昭, 田中元治, 千原秀昭編, 化学大辞典, 第1版第6刷, 株式会社東京化学同人, 2001.06.01, p.1460, 2117,2118, 2244, 2473 甲第22号証:環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室, "関係省庁共通パンフレット ダイオキシン類", 2001年 甲第23号証:J. D. Joseph, "BIOMEDICAL TESTMATERIALS PROGRAM: PRODUCTION METHODS AND SAFETY MANUAL, NOAA TECHNICALMEMORANDUM NMFS SEFC -234", 米国商務省(U.S. DEPARTMENTOF COMMERCE),1989.10, p.4-6, 25, 33 甲第24号証:A. P. Bimbo, "Chapter 7 PROCESSING OFFISH OILS", Edited by M. E. Stansby, FISH OILS IN NUTRITION, Van NostrandReinhold, 1990, p.181-185, 194-225 甲第25号証の1:E. M. Brevik, A. Biseth, M. Oehme,"LEVELS OF POLYCHLORINATED DIBENZOFURANS AND DIBENZO-p-DIOXINS IN CRUDEAND PROCESSED FISH OILS IN RELATION TO ORIGIN AND CLEANING METHOD",Organohalogen Compounds database, Dioxin 20XX, 1990, vol.1, p.467-470 甲第25号証の2:甲第25号証の1の書誌事項 甲第26号証:R. F. Addison, R. G. Ackman, "Removalof Organochlorine Pesticides and Polychlorinated Biphenyls from Marine Oilsduring Refining and Hydrogenation for Edible Use", Journal of the AmericanOil Chemists' Society, 1974.05, vol.51, p.192-194 甲第27号証:長倉三郎, 井口洋夫, 江沢洋, 岩村秀, 佐藤文隆, 久保亮五編, "岩波理化学辞典 第5版", 第5版第4刷, 株式会社岩波書店, 2000年4月25日, p.686-687 甲第28号証:国際化学物質安全性カード ICSC番号:0034,DDTの項目 (http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0034c.html)のプリントアウト 甲第29号証:安田耕作, 福永良一郎, 松井宣也, "油脂製品の知識", 初版, 株式会社幸書房, 昭和52年8月25日, p.77 <平成29年9月14日に提出した審判請求書の手続補正書に添付> 甲第17号証:不鮮明頁(p.9, 81-87)の是正 <平成30年4月19日に提出した弁駁書に添付> 甲第30号証:島田哲夫, "総説 食用油脂の精製(当審注:「精」は旧字体。)技術の進歩", 日本食品工業学会誌, 日本食品工業学会, 1968.02, vol.15, No.2, p.88-94 甲第31号証:北原文雄著, 株式会社講談社サイエンティフィック編, "界面・コロイド化学の基礎", 第23刷, 株式会社講談社, 2017.07.20, p.146-147 甲第32号証:大矢晴彦監修, "高純度化技術体系 第3巻 高純度物質製造プロセス", 初版第1刷, 株式会社フジ・テクノシステム, 1997.12.12, p.433-438 甲第33号証:特公昭63-6600号公報 甲第34号証:国際公開第2010/050449号 甲第35号証:国際公開第2010/126136号 甲第36号証:竹内雍, 川井利長, 越智健二, 佐藤忠正共著, "解説 化学工学", 初版第13刷, 株式会社培風館, 1991.03.10, p.130-131 甲第37号証:B.Hjaltason, "NEW PRODUCTS, PROCESSINGPOSSIBILITIES, AND MARKETS FOR FISH OIL", Edited by S. keller,"MAKING PROFITS OUT OF SEAFOOD WASTES, Proceedings of the InternationalConference on Fish By-Products Anchorage, Alaska-April 25-27, 1990",Alaska Sea Grant College Program, 1990, report No.90-07, p.131-141 甲第38号証:"THE MERCK INDEX", TwelfthEdidion, Merck & Co., Inc., 1996, p.xiii, 1304, 369, 1094, 1095, 1620,1712 甲第39号証:ORGANISATION FOR ECONOMIC CO-OPERATION ANDDEVELOPMENT, "RISK REDUCTION MONOGRAPH NO.3: SELECTED BROMINATED FLAMERETARDANTS BACKGROUND AND NATIONAL EXPERIENCE WITH REDUCING RISK", OECDENVIRONMENT MONOGRAPH SERIES NO.102, 1995, p.1-5, 16, 17, 31, 33, 42, 129 甲第40号証:J. peltola, L. Yla-Mononen(当審注:「aのウムラウト」を「a」と表記した。),"Pentabromodiphenyl ether as a global POP", Nordic Council ofMinisters, 2001, p.1-6, 14, 17, 18, 21-25, 31, 46,47 甲第41号証:D. Santillo, P. Johnston, k. Brigden,"The presence of brominated flame retardants and organotin compounds industs collected from Parliament buildings from eight countries.",Greenpeace Research Laboratories Technical Note 03/2001, Greenpeace ResearchLaboratories, 2001.03, p.1-4 甲第42号証:M. Alaee, R. J. Wenning, "Thesignificance of brominated flame retardants in the environment: currentunderstanding, issues and challenges", Chemosphere, Elsevier Science Ltd.,2002, vol.46, p.579-582 甲第43号証:環境省環境管理局総務課 ダイオキシン対策室, "ダイオキシン類挙動モデルハンドブック", 平成16年3月, p.67-68 甲第44号証:欧州特許出願公開第0347509号公報 <平成30年9月25日に提出した口頭審理陳述要領書に添付> 甲第24号証:(訳文追加) 甲第45号証:社団法人日本化学会編, "第4版 実験化学講座1 基本操作I", 丸善株式会社, 平成2年11月5日, p.180-181 甲第46号証:緒形章, "化学実験操作法 上巻", 第30版, 株式会社南江堂, 昭和42年6月30日, p.230-233 甲第47号証:J. W. Zubrick, 上村明男訳,"研究室で役立つ 有機実験のナビゲーター 実験ノートのとり方からクロマトグラフィーまで",丸善株式会社, John Wiley & Sons, Inc., 共同出版, 2006, p.160-161 甲第48号証:長浜邦雄監修, "普及版 高純度化技術 第2巻 分離技術", 普及版初版, 株式会社フジ・テクノシステム, 2001.08.13, p.57-58, 62-64 甲第49号証:K. J. エアトウェーク, 小林通有訳, 分子蒸留と短行路蒸留, ケミカル・エンジニヤリング, 株式会社化学工業社, 1984, 1984年4月号, p.50-55 甲第50号証:F. Lee-Poy, "Cost-Effective In-PlantTreatment for Finished, Deodorized Fish Oil", RENDERING PROFITSPROCEEDINGS FROM THE OCTOBER 1987 FISH OIL SEMINAR, ALASKA FISHERIESDEVELOPMENT FOUNDATION, INC.(アラスカ水産業振興基金), executivesummary, 目次, p.47-80 甲第51号証:WRITTEWN STATEMENT OF ROBERT J. PAWLOWSKI(ロバート J.パウロフスキの陳述書), 2007.07.27 甲第52号証:長浜邦雄監修, "普及版 高純度化技術 第2巻 分離技術", 普及版初版, 株式会社フジ・テクノシステム, 2001.08.13, p.238-245 甲第53号証:国際化学物質安全性カード ICSC番号:0034,DDTの項目 (http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0034c.html)のプリントアウト 甲第54号証:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部, "PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン", 平成16年3月(平成16年7月改訂), 表紙, 目次, p.1-1ないし1-4 甲第55号証:D. R Lide, "CRC Handbook of Chemistryand Physics", 83rd edition, CRC Press LLC, 2002, p.3-1, 3-114, 3-310 甲第56号証:特許第5416861号公報 <平成30年12月4日に提出した上申書に添付> 甲第57号証:丸善出版株式会社, 公益社団法人日本化学会, "化学書資料館", 収録タイトルINDEX, "実験化学講座"の詳細頁 (https://www.chem-reference.com/shokai04.html)のプリントアウト <平成31年2月27日に提出した上申書に添付> 甲第58号証:平成30年(行ケ)第10027号 審決取消請求事件判決(平成31年1月28日判決言渡)の写し 甲第59号証:特許第3905538号特許原簿(平成31年2月25日付け)の写し <令和元年10月11日に提出した弁駁書に添付> 甲第60号証:国際公開第2012/111594号 以下、「甲第1号証」~「甲第60号証」をそれぞれ「甲1」~「甲60」という。まとめて、「甲号証」ということもある。 第5 被請求人の答弁の概要及び証拠方法 1.答弁の趣旨 被請求人の答弁の趣旨は、「訂正の請求を認める、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」である。 2.答弁の理由 被請求人は、下記の証拠方法を提示の上、請求人が主張する上記の無効理由は、いずれも理由がない旨を主張している。 3.被請求人が提示した証拠方法 <平成30年1月25日に提出した審判事件答弁書に添付> 乙第1号証:松村明監修, "大辞泉 増補・新装版", 第一版<増補・新装版>第一刷, 株式会社小学館, 1998.11.20, p.590 乙第2号証:甲第1号証の優先権証明書(特願2012-110809号の出願時の明細書、特許請求の範囲及び要約書) 乙第3号証:K. JULSHAMN, L. KARLSEN, O. R. BRAEKKAN,"REMOVAL OF DDT AND ITS METABOLITES FROM FISH OILS BY MOLECULARDISTILLATION", FISKERIDIREKTORATETS SKRIFTER SERIE TEKNOLOGISKEUNDERSOKELSER(当審注:「スラッシュ付きのO」を「O」と表記した。), DIRECTORATE OF FISHERIES, 1973, vol.5, No.15, p.2-11 乙第4号証:J. J. Olli, H. Breivik, O. Thorstad,"remival of presistent organic pollutantsnin fish oils using short-pathdistillation with a working fluid", Chemosphere, Elsevier Ltd., 2013,vol.92, p.273-278 <平成30年9月11日に提出した口頭審理陳述要領書に添付> 乙第5号証:欧州特許出願公開第0347509号明細書 乙第6号証:A. P. Bimbo, "Chapter 7 PROCESSING OFFISH OILS", Edited by M. E. Stansby, FISH OILS IN NUTRITION, Van NostrandReinhold, 1990, p.181-185, 194-225 乙第7号証:株式会社J-オイルミルズ, "植物油ができるまで", 株式会社J-オイルミルズのホームページの記事, p.1/3ないし3/3 乙第8号証:T. Okada, M. T. Morrissey, "Recovery andCharacterization of Sardine Oil Extracted by pH Adjustment", Journal ofAgricultural and Food Chemistry, American Chemical Society, 2007, vol.55,p.1808-1813 乙第9号証:A. P. Bimbo, "Fish Meal and Oil",Edited by R. E. Martin, E. P. Carter, G. J. Flick,Jr., L. M. Davis, Marine& Freshwater Products Handbook, Technomic Publishing Company, Inc., 2000,p.541-581 乙第10号証:V. Young, "Processing of oils andfats", Chemistry and Industry, 1978.09.16, vol.16, p.692-703 乙第11号証:N. A. Febrianto, T. A. Yang, "ProducingHigh Quality Edible Oil by using Eco-Friendly Technology: A Review", AdvanceJournal of Food Science and Technology, Maxwell Scientific Organization, 2011,vol.3, No.4, p.317-326 参考資料1:特開平2-19338号公報 <平成30年11月13日に提出した上申書に添付> 乙第11号証:(抄訳追加) 乙第12号証:米国農務省, 米国農務省の栄養素標準参照データベース(National Nutrient Database for Standard Reference)のパーム油(Oil, Palm)の項, 2018.04.01 (https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/299928?format=Full) 乙第13号証:米国農務省, 米国農務省の栄養素標準参照データベース(National Nutrient Database for Standard Reference)のパーム核油(Vegetable oil, palm Kernel)の項, 2018.04.01 (https://ndb.nal.usda.gov/ndb/foods/show/04513?format=Full) <令和元年11月22日に提出した上申書に添付> 乙第14号証:特許第5592570号公報 乙第15号証:特許第4582815号公報 乙第16号証:特許第5986348号公報 乙第17号証:無効2013-800118号の平成27年5月13日付け審決(写し) 乙第18号証:無効2013-800118号の平成30年1月18日付け審決(写し) 乙第19号証:特表2016-502573号公報 乙第20号証:国際公開第2014/068056号 以下、「乙第1号証」~「乙第20号証」をそれぞれ「乙1」~「乙20」という。まとめて、「乙号証」ということもある。 第6 当審の判断 1.無効理由1(記載要件違反)について (1)具体的理由 本件訂正を踏まえて請求人が主張する無効理由1(記載要件違反)は、本件審判請求書及び令和元年10月11日に提出された弁駁書の記載等からみて、具体的には以下のとおりである。 ア 無効理由1-1(明確性) (ア)「好ましくない親水性成分」について 本件発明1における「好ましくない親水性成分」が何を意味するのかが不明確である。本件明細書の[0022]には、タンパク質性化合物について言及はあるものの、「これらに限定されない」と記載されているから、タンパク質性化合物以外にいかなる成分が「好ましくない親水性成分」に該当するのか、本件明細書の記載を参酌しても不明確である。 また、「好ましくない」との用語は、比較の基準及び程度が不明確な表現であるから、「好ましくない親水性成分」の意味するものが不明確である。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は不明確である。 (イ)「外部揮発性作業流体」について 本件発明1においては「ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」ことが記載されているが、「外部揮発性作業流体」にどのような流体が該当するのかが不明確である。 被請求人は、「外部から加えられる揮発性作業流体」を意味すると主張し、「揮発性作業流体」という用語については、「脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を例示とする上位概念」を意味すると述べているが、「上位概念」としての「外部揮発性作業流体」にどのような流体が該当するのかは不明確である。 また、本件明細書の[0038]には、「作業流体は除去対象の親油性成分との関係において適切な揮発性を有する」と記載されていることから、「外部揮発性作業流体」が好ましくない親油性成分である環境汚染物質をストリッピング処理により分離するために使用されることが読み取れるとしても、「環境汚染物質」の用語が不明確であるため、「外部揮発性作業流体」の意味を明確に理解することができない。 さらに、本件発明1には「内部揮発性作業流体」について、「好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の・・・遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離される」等の記載があるが、「原油組成物」について「遊離脂肪酸」を含むこと以外は何らの特定もされておらず、「遊離脂肪酸」の由来についても何らの特定もされていないため、「内部揮発性作業流体」は、短鎖脂肪酸である酢酸から炭素数が15を超えるような長鎖脂肪酸までを含む概念として理解され、そうすると、上記「上位概念」としての「外部揮発性作業流体」と具体的な成分が重複するようにも解されるから、「外部揮発性作業流体」と対をなす用語として「内部揮発性作業流体」についての記載を参酌したとしても、「外部揮発性作業流体」にどのような流体が該当するのかは不明確である。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は不明確である。 (ウ)「環境汚染物質」について 審判請求書及び平成30年4月19日に提出された弁駁書においては、請求項1(第1訂正による訂正後の請求項1。以下、当段落において同様。)における「環境汚染物質」は極めて広い概念を有する用語であり、「重金属化合物」なども含まれることになるが、請求項1のステップ(c)のストリッピングでは重金属化合物は除くことができないから、訂正前の請求項1に記載された方法は不明確である旨、並びに同様の発明特定事項を含む請求項7、8、20及びこれらに従属する請求項2~6、9~17は不明確である旨が主張されていた。 本件訂正により、請求項1等に記載されていた「環境汚染物質」という文言は削除され、当該用語を含む請求項は存在しなくなったから、上記文言に基づく無効理由1-1(明確性)は、解消したものと認められる(下記1.(2)(ウ)「『環境汚染物質』について」を参照。)。 (エ)「内部揮発性作業流体として有効な量」について 本件発明1の「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸」は、「有効な量」がいかなる量か不明確である。 また、本件発明1のステップ(b)の記載によると、使用する塩基が2価又は3価の場合、「遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基」を使用すると、「遊離脂肪酸が部分中和されるステップ」とはならず、完全中和されてすべての遊離脂肪酸が原油組成物から分離されてしまう場合が含まれることになり、さらに、使用する塩基が1価の場合も、「遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量」の塩基を使用すると、遊離脂肪酸が完全中和されてすべての遊離脂肪酸が原油組成物から分離されてしまう場合が含まれることになるから、この点からみても、本件発明1の「有効な量の遊離脂肪酸」の意味するところは不明確である。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は不明確である。 (オ)「ステップ(d)」の「さらなる処理ステップ」について 本件発明1の「ステップ(d)」には、「さらなる処理ステップにかけるステップ」と記載されているが、いかなる処理を行うステップなのかが理解できない。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は不明確である。 なお、訂正前の請求項1に記載されていた「場合によっては」という文言は、本件訂正によって削除されたから、審判請求書において主張されていた当該文言に基づく無効理由1-1(明確性)は解消したものと認められる。 (カ)「ペルフルオロ化合物」について 審判請求書及び平成30年4月19日に提出された弁駁書においては、請求項3(第1訂正による訂正後の請求項3。以下、当段落において同様。)に「環境汚染物質」の選択肢の一つとして記載されている「ペルフルオロ化合物」は、本件明細書に具体的な説明がなく、用語の意味するところが不明確であるから、請求項3は不明確である旨、並びに同様の発明特定事項を含む請求項18、19及び請求項3に従属する請求項4~6、10~17は不明確である旨が主張されていた。 本件訂正により、請求項3等に記載されていた「ペルフルオロ化合物」という用語は削除され、当該用語を含む請求項は存在しなくなったから、上記用語に基づく無効理由1-1(明確性)は、解消したものと認められる(下記1.(2)(カ)「『ペルフルオロ化合物』について」を参照。)。 (キ)本件発明4について 本件発明4の「原油組成物が、多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHAを含む」という記載は、「多不飽和脂肪酸」が「多不飽和ω-3脂肪酸」を包含する上位概念であり、「多不飽和ω-3脂肪酸」が「EPAおよびDHA」を包含する上位概念であるにもかかわらず、それらが同列に記載されている点において不明確である。 よって、本件発明4、及び本件発明4に従属する本件発明5、11~17は不明確である。 (ク)本件発明6について 本件発明6の「トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド」という記載は、選択肢が不明確である。 よって、本件発明6は不明確である。 なお、審判請求書においては、訂正前の請求項6に記載されていた「トリグリセリド形」、「リン脂質形」、および「トリグリセリド形の脂肪酸」の個々の用語の意味するところが不明確である旨も主張されていたが、本件訂正により、上記「・・・形」という用語はいずれの請求項にも存在しなくなったから、上記「・・・形」という用語に基づく無効理由1-1(明確性)は解消したものと認められる。 (ケ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について 本件発明7のステップ(b)については、「水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸ナトリウムから選択される塩を含有し」と記載されているが、「相分離を改善」することができるこれらの塩の使用量は、具体的には特定されておらず、不明確である。また、本件明細書の[0082]の実施例2には「生成と洗浄の両ステップにおいて形成された乳濁液は、スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加しては300rpmで2分間撹拌することを繰り返して、破壊した。」と記載されているが、塩化ナトリウムの使用量は具体的には記載されていないから、塩の使用量については本件明細書の記載を参酌しても不明確である。 よって、本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10は不明確である。 (コ)本件発明9について 本件発明9の「塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」という記載は、「アルカリ金属水酸化物」が「水酸化ナトリウム」及び「水酸化カリウム」を包含する上位概念であるにもかかわらず、それらが同列に記載されている点において不明確である。 よって、本件発明9は不明確である。 (サ)本件発明14~16について 本件発明14~16の「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHA」という記載は、「ω-3脂肪酸」が「EPAおよび/またはDHA」を包含する上位概念であるにもかかわらず、それらが同列に記載されている点において不明確である。 よって、本件発明14~16は不明確である。 イ 無効理由1-2(実施可能要件) (ア)ステップ(c)について 本件発明1のステップ(c)においては、「内部揮発性作業流体として有効な量の・・・遊離脂肪酸」の存在下で、好ましくない親油性成分が、遊離脂肪酸とともに油組成物から分離されることが記載されている。 しかし、本件発明1における好ましくない親油性成分(臭素化難燃剤)には、揮発性の乏しいものも含まれることになる。 そうすると、揮発性の乏しい「好ましくない親油性成分」(臭素化難燃剤)は、本件発明1のステップ(c)のストリッピングで遊離脂肪酸と共に分離され得ないことが明らかである。 よって、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17を実施可能なように記載されていない。 なお、審判請求書においては、訂正前の請求項1のステップ(c)の「遊離脂肪酸」について、具体的な遊離脂肪酸が特定されていない旨、及び任意の「遊離脂肪酸」と「環境汚染物質」との組合せにおいて、「環境汚染物質」を「遊離脂肪酸」とともに分離することができるかどうか明らかでない旨も主張されていたが、本件訂正により、遊離脂肪酸は「炭素数16から22の遊離脂肪酸」であることが特定されたから、具体的な遊離脂肪酸が特定されていないことに基づく無効理由1-2(実施可能要件)は解消したものと認められる。 (イ)ステップ(b)について 本件明細書[0014]には、「本発明は、・・・親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する使用に関する。」と記載されているが、本件明細書には「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことについての定義が記載されておらず、何れの親水性成分をどの程度まで低減又は排除すればよいのかが明らかではないし、具体的な試験結果も記載されていない。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1のステップ(b)の「好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離されるステップ」を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとすることができない。本件発明18、19における「好ましくない親水性成分・・・を実質的に含まない」という発明特定事項も同様である。 よって、本件明細書は、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17を実施可能なように記載されていない。 なお、審判請求書においては、訂正前の本件請求項1のステップ(b)の「好ましくない親水性成分」について、本件明細書において具体的に定義されたものではないから、当業者は本件発明を実施することができない旨も主張されていたが、本件訂正により、「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物」であることが特定されたから、好ましくない親水性成分が特定されていないことに基づく無効理由1-2(実施可能要件)は解消したものと認められる。 (ウ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について 上記第6 1.(1)ア(ケ)「本件発明7のステップ(b)の『相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩』及び本件発明10について」に記載したとおり、本件発明7のステップ(b)には「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸ナトリウムから選択される塩を含有し」と記載されているが、本件明細書の[0082]の実施例2には「生成と洗浄の両ステップにおいて形成された乳濁液は、スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加しては300rpmで2分間撹拌することを繰り返して、破壊した。」と記載されているのみであり、塩化ナトリウムの使用量は具体的には記載されていない。 よって、本件明細書は、本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10を実施可能なように記載されていない。 ウ 無効理由1-3(サポート要件) (ア)ステップ(c)について 上記第6 1.(1)イ(ア)「ステップ(c)について」に記載したとおり、本件発明1における「好ましくない親油性成分」(臭素化難燃剤)には、揮発性の乏しいものが含まれている。 そうすると、当業者は揮発性の乏しい「好ましくない親油性成分」(臭素化難燃剤)を、本件発明1のステップ(c)のストリッピングで遊離脂肪酸と共に分離できるとは認識し得ないから、本件発明1は発明の課題を解決できると認識できる範囲にない。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができない。 なお、本件訂正により、遊離脂肪酸は「炭素数16から22の遊離脂肪酸」であることが特定されたから、具体的な遊離脂肪酸が特定されていないことに基づく無効理由1-3(サポート要件)は解消したものと認められる。 (イ)ステップ(b)について 本件発明の課題の一つとして、本件明細書の[0014]には、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことが記載されているが、本件明細書には、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことについての定義が記載されておらず、何れの親水性成分をどの程度まで低減または排除すればよいのか記載されていない。また、本件明細書に記載された実施例1及び2を参照しても、具体的にどのような成分がどの程度の量まで低減又は排除されたのかは記載されておらず、当該物質を除去した油組成物により、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」という課題を解決できたことを確認できる実験データも記載されていない。 そうすると、当業者は、本件明細書の記載から「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」という課題の具体的な内容を理解することができないし、実際の作用効果も確認できないことから、本件発明1~19は、当業者が上記課題を解決できることを認識できる範囲にあるとはいえない。 よって、本件発明1~19は発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができない。 なお、本件訂正により、「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物」であることが特定されたから、好ましくない親水性成分が特定されていないことに基づく無効理由1-3(サポート要件)は解消したものと認められる。 (ウ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について 上記第6 1.(1)ア(ケ)「本件発明7のステップ(b)の『相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩』及び本件発明10について」に記載したとおり、本件発明7のステップ(b)には「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸ナトリウムから選択される塩を含有し」と記載されているが、本件明細書の[0082]の実施例2には、「相分離を改善」することができるこれらの塩の使用量は、具体的には記載されていない。また、当該実施例2を参照しても、具体的にどのような成分がどの程度の量まで低減又は排除されたのかは記載されておらず、当該物質を除去した油組成物により、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」という課題を解決できることを確認できる実験データも記載されていない。 そうすると、本件明細書には塩の添加によりどのようにして相分離を改善するのかについて具体的な記載がされておらず、また、それにより「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」という課題を解決し得ると理解することもできないから、本件発明7は、当業者が上記課題を解決できることを認識できる範囲にあるとはいえない。 よって、本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10は発明の詳細な説明に実質的に記載されたものとすることができない。 (2)検討 ア 無効理由1-1(明確性) (ア)「好ましくない親水性成分」について 本件訂正(上記第2 4.(1)(1-3)「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり」を加える訂正について」を参照。)により、本件発明1のステップ(a)において、「好ましくない親水性成分」が、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定されたから、「好ましくない親水性成分」の意味するものが明確になった。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (イ)「外部揮発性作業流体」について (イ-1)本件明細書等の記載について 本件訂正(上記第2 4.(6)「訂正事項6」を参照。)により、訂正前の本件発明1のステップ(d)の「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む外部揮発性作業流体」という記載から、「特に脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」が削除されたことから、「外部揮発性作業流体」は、「脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸、炭化水素およびそれらの混合物を含む」ものに限られないことが明確になった。 また、本件明細書の[0038]には、「本発明の文脈において『作業流体』は、ストリッピング処理ステップにおいて原油組成物から好ましくない親油性成分を除去するのに効果的な組成物である。『内部作業流体』は出発材料中にすでに存在するが、一方『外部作業流体』は出発材料の処理中に何らかの段階で添加される。作業流体は除去対象の親油性成分との関係において適切な揮発性を有する。」と記載されていることから、「外部揮発性作業流体」は「除去対象の親油性成分」である「環境汚染物質」との関係において「適切な揮発性を有する」物質であり、「ストリッピング処理ステップにおいて原油組成物から好ましくない親油性成分」である「環境汚染物質」を「除去するのに効果的な組成物」であるといえるところ、本件訂正(上記第2 4.(1)(1-2)「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」を「臭素化難燃剤であり」とする訂正について」を参照。)により、「除去対象の親油性成分」である「環境汚染物質」が「臭素化難燃剤」であることが特定されたから、除去対象物との関係からも本件発明1における「外部揮発性作業流体」は明確になったといえる。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は明確である。 (イ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(23頁)において、「『臭素化難燃剤』は、化学構造を特定する用語ではなく、トリグリセリドよりも揮発性の高い化合物(例えば、BDE-47)から揮発性の乏しいポリマー(例えば、・・・臭素化ポリスチレン)まで、様々な範囲に及ぶ。そのため、どのような『外部揮発性作業流体』を選択すると、原油組成物の蒸留の際に臭素系難燃剤を・・・除去できるのか、明確ではない。以上のとおり、『臭素化難燃剤』の用語が不明確であり、その揮発性も様々であるため(蒸留によっておよそ除去できない物質も含まれる。)、『外部揮発性作業流体』も明確ではない。」と主張している。 しかし、本件訂正により、本件請求項1のステップ(a)において、原油組成物の含有成分が「好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む」ものであること、及び「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含」むことが特定されたことから、上記原油組成物は、本件明細書の[0002]に記載された「魚や海洋哺乳類のような有機体の脂肪組織」に含まれる油組成物を主に想定することができ、その中に含まれる臭素化難燃剤は、「人間の活動によって、・・・環境に広範囲に広がった」ものであり「食物連鎖を通じて蓄積され、捕食性動物およびヒトが特にそれらの弊害を受ける」ものであり、「とりわけ関心をもたれているのは、魚や海洋哺乳類のような有機体の脂肪組織に最終的に集まる脂溶性残留性環境汚染物質」に該当するものと理解することができる(必要であれば、被請求人が、平成30年9月11日に提出した口頭審理陳述要領書(7~8頁)を参照。)。 そうすると、臭素化ポリスチレン等の高分子量の臭素化難燃剤は、生物の細胞には取り込まれにくいという技術常識を参酌することにより、当業者は、原油組成物から除去される「臭素化難燃剤」の範囲及び適切な揮発性を有する「外部揮発性作業流体」を理解することができるといえる。 なお、本件明細書の[0023]においては、「臭素系難燃剤」という用語が記載されているが、本件発明1における「臭素化難燃剤」という用語も、本件発明が属する油組成物の技術分野において周知であり(もし必要であれば、乙14~乙16を参照。)、どちらも同じものを指す用語であることは明らかである。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ)「環境汚染物質」について (ウ-1)本件明細書等の記載について 本件訂正(上記第2 4.(1)(1-2)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」を参照。)により、「好ましくない親油性成分」が、訂正前の請求項1に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」るものから、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定され、「環境汚染物質」という文言は削除された。このため、「環境汚染物質」という用語に基づく無効理由1-1(明確性)は解消したものと認められ、訂正後の「好ましくない親油性成分」が「臭素化難燃剤」であるという発明特定事項は明確であると認められる。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は明確である。 (ウ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出された弁駁書(24~25頁)において、「第2訂正請求項1の『臭素化難燃剤』との用語は、不明確である」と主張しているが、上記第6 1.(2)ア(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、当業者であれば、「臭素化難燃剤」の範囲を理解することができ、その内容を把握することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (エ)「内部揮発性作業流体として有効な量」について (エ-1)本件発明1~17について 本件訂正(上記第2 4.(5)「訂正事項5」を参照。)により、本件発明1において「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることが特定されたから、本件発明1のステップ(b)に記載された「内部揮発性作業流体として有効な量」というのは、「0.5重量%から5重量%」であることが明確になった。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明2、3、6~10及びこれらに従属する本件発明4、5、11~17は明確である。 (エ-2)本件発明18、19について 本件発明18、19においては、「内部揮発性作業流体として有効な量」の炭素数16から22の遊離脂肪酸というのが、具体的にどのような量なのか特定されていない。 また、本件明細書の[0043]には、「別の実施形態において、ステップ(b)は部分脱酸、すなわち(原油組成物中の脂肪酸の全重量に対して)例えば最大で約10重量%、最大で約30重量%、最大で約50重量%、最大で約70重量%または最大で約90重量%の遊離脂肪酸の部分除去を行って実施される。」との記載があるが、技術的な観点からどの程度の遊離脂肪酸の部分除去が好ましいのか、理解することはできず、さらに、本件明細書の[0042]には、「一実施形態において、ステップ(b)は、脱酸すなわち遊離脂肪酸の相当量の除去を行うことなく(例えば、除去が0.3重量%未満)実施される。したがって、水性流体処理ステップは塩基の使用を必要とせず、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させてもよい。」と記載されているが、本件発明18、19において、具体的にどのような量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのかを上記記載から理解することはできない。 さらに、本件発明19は、「油組成物」自体に関する「物」の発明であり、本件発明1、6~8におけるステップ(c)「好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」のような処理にさらに付されるとは限らないものであるから、この点でも、本件発明19における「内部揮発性作業流体として有効な量」の炭素数16から22の遊離脂肪酸というのが具体的にどの程度の量を意味するのか理解し難い。 よって、本件発明18、19は不明確である。 (エ-3)本件発明1~17についての請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出された弁駁書(25頁)において、「第2訂正請求項1のステップ(b)には『ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み』との記載が加えられている。・・・等モル量を使用し、塩基が遊離脂肪酸と完全に反応する場合には、全ての遊離脂肪酸は原油組成物から分離されてしまう。その場合、第2次訂正請求で付加された『油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であり』の要件を満たすことができない。」と主張している。 しかし、本件発明1においては、「油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることが明確に特定されているのであるから、当業者は、本件発明1における塩基の量を、「等モル量以下」の要件と「油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」の要件の両方を満たす範囲内で設定することができるものと認められる。 したがって、本件発明1は明確であるといえる。本件発明2~17についても同様である。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (エ-4)本件発明18、19についての被請求人の主張について 被請求人は、令和元年9月4日に提出した上申書(14~15頁)において、「すでに答弁書でも述べたように、・・・本件明細書には分離を行う上で好適な遊離脂肪酸の部分除去量の範囲が明記され(段落0042、0043)、実施例では、この好適範囲で効率的に環境汚染物質が除去できることが実証されている。してみれば、当業者は、これらの記載から、『内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸』を容易に理解できる」と主張しており、また、平成30年9月11日に提出した口頭審理陳述要領書(6~7頁)において、「本件明細書には、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸の範囲が具体的に例示され(段落0047等。・・・)、この範囲で効率的に環境汚染物質を除去できることが実施例で実証されているから、当業者は、「内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸」を容易に理解できる(答弁書30頁も参照)。」、「粗魚油に含まれる遊離脂肪酸の量は様々であるから、水性流体処理ステップにおいて遊離脂肪酸の除去をほとんど行なわなくとも、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸の範囲となる場合もあり、効率的に環境汚染物質が除去できることが明細書の実施例で実証されている。したがって、当業者は、・・・『内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸』を容易に理解できる。」と主張している。 しかし、本件明細書の[0042]及び[0043]については、上記第6 1.(2)ア(エ)(エ-2)「本件発明18、19について」に記載したとおり、これらの記載を参酌しても、本件発明18、19において具体的にどのような量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのかを理解することはできない。 また、本件明細書の[0047]には、「好ましくは、水性流体処理ステップ(b)は、ステップ(b)後の油組成物中の遊離脂肪酸の含有量が約0.5重量%から約5重量%、好ましくは約1重量%から約3重量%、最も好ましくは約2重量%である条件下で実施される。」と記載されており、「約0.5重量%から約5重量%」等の数値範囲が「好ましい」とされる数値範囲であることは理解できるものの、例示でしかないから、本件発明18、19における「内部揮発性作業流体として有効な量」の遊離脂肪酸が、上記の好ましいとされる範囲に限定されていると解すべき理由はないし、[0047]の記載を参酌することにより、「内部揮発性作業流体として有効な量」が具体的な数値範囲に確定するものとも認められない。 さらに、「粗魚油に含まれる遊離脂肪酸の量は様々である」としても、そのことにより、本件発明18、19における「内部揮発性作業流体として有効な量」の遊離脂肪酸が明確に特定されることにはならないし、「内部揮発性作業流体として有効な量」の遊離脂肪酸が明確に特定される必要がなくなるものとも解されない。 よって、被請求人の主張を採用することはできない。 (オ)「ステップ(d)」の「さらなる処理ステップ」について 本件訂正(上記第2 4.(4)(4-1)「『さらなる処理ステップ』を『多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップ』とする訂正について」を参照。)により、本件発明1において「さらなる処理ステップ」の内容が、本件明細書の[0062]に記載されている「多不飽和脂肪酸の濃縮」に限定されたから、「さらなる処理」の内容が明確になった。 よって、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (カ)本件発明3の「ペルフルオロ化合物」について 本件訂正(上記第2 4.(8)(8-1)「『環境汚染物質が、ポリ塩化ビフェニル、臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物を含む』を削除する訂正について」を参照。)により、本件発明1の訂正に伴って、訂正前の請求項3に記載されていた「ペルフルオロ化合物」という記載は削除され、当該用語に基づく不明確性は解消した。また、訂正後の請求項3における好ましくない親油性成分は、本件発明3が引用する本件発明1と同様のものであることが理解でき、発明特定事項は明確である。 よって、本件発明3、及び本件発明3に従属する本件発明4、5、11~17は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (キ)本件発明4について 本件訂正(上記第2 4.(9)「訂正事項9」を参照。)により、本件発明4は、「原油組成物が、多不飽和脂肪酸、多不飽和ω-3脂肪酸またはEPAおよびDHAを含む」と訂正されたところ、「多不飽和脂肪酸」、「多不飽和ω-3脂肪酸」、「EPAおよびDHA」それぞれの内容は明確に理解できることから、単に上位概念と下位概念が同列に記載されていることをもって、不明確であるとまではいえない。 よって、本件発明4、及び本件発明4に従属する本件発明5、11~17は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (ク)本件発明6について (ク-1)本件明細書等の記載について 本件訂正(上記第2 4.(10)(10-2)「『トリグリセリド形および/またはリン脂質形、特にトリグリセリド形の脂肪酸』を『トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド』とする訂正について」を参照。)により、訂正前の請求項6における「・・・形」という用語は、本件明細書の[0032]の記載に基づいて「トリグリセリド」及び「リン脂質」という用語に訂正され、明確なものとなった。訂正後の本件発明6における「トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド」は、「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」と「トリグリセリド」との間に重複するところは存するものの、選択肢の内容は明確に理解することができるようになったといえる。 よって、本件発明6は明確である。 (ク-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出された弁駁書(25~26頁)において、「第2訂正請求項6には、・・・「トリグリセリド」が繰り返されている。この両者の関係は不明確である。その結果、いずれの物質について、重量%が特定されているのかも不明確である。」と主張している。 しかし、上記のとおり、本件発明6の「トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリド」において、「トリグリセリドおよび/またはリン脂質」と「トリグリセリド」との間には、確かに選択肢が重複するところはあるものの、選択肢自体は明確であって、その重量%の特定については、各選択肢に対応する割合(例えば、「トリグリセリドおよびリン脂質」を含むのであれば、両者の合計の割合)であると明確に理解することができる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (ケ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について (ケ-1)本件明細書等の記載について 本件訂正(上記第2 4.(11)「訂正事項11」、同(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」及び同(2)「訂正事項2」を参照。)により、本件発明7におけるステップ(b)が、「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であることが特定され、さらに、「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物」であることも特定されたことから、本件発明7における「相分離」によって水性流体側に分離する「好ましくない親水性成分」が「タンパク質性化合物」であることが明らかになった。 また、本件明細書の[0082]~[0084]に記載された実施例2には、粗魚油を3回90℃の水で洗浄したこと、及び粗魚油の水による洗浄で形成された乳濁液に、「スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加」して、乳濁液を破壊したことが記載されているところ、当業者は親水性の「タンパク質性化合物」が上記のような水での洗浄により粗魚油から水相に移行すること、及び洗浄で形成された乳濁液に、「スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加」することにより、油相と水相とを分離できることを理解することができる。 そうすると、上記実施例2には、塩化ナトリウムの使用量は具体的には記載されていないが、本件発明7において親水性成分(タンパク質性化合物)及びステップ(b)において用いられる試薬(塩基なしの水性流体及び塩)が限定されていることと、実施例2の記載とを参酌することにより、当業者は本件発明7における「相分離を改善するための・・・塩」の使用量を理解することができるといえる。 よって、本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10は明確である。 (ケ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(26頁)において、本件明細書の[0082]の実施例2の記載は「曖昧な記載にすぎず、何ら定量的な指針を提供するものでもない。どのような量でも、理論的には『スプーン一杯』の繰り返しで表される。」と主張している。 しかし、[0082]の記載及び出願時の技術常識を参酌すると、本件発明7に記載された成分及び試薬の範囲で実施例2の工程を実行し、合理的な時間内で相分離が認められる塩の添加量を把握することは当業者にとって格別困難なこととは認められないから、本件発明7における「相分離を改善する」ことができる使用量について、当業者は明確に理解することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (コ)本件発明9について 本件訂正(上記第2 4.(13)(13-1)「『、特に』を『あるいは』とする訂正について」を参照。)により、本件発明9は、「塩基が、アルカリ金属水酸化物あるいは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムである」と訂正されたところ、「アルカリ金属水酸化物」、「水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム」それぞれの内容は明確に理解できることから、単に上位概念と下位概念が同列に記載されていることをもって、不明確であるとまではいえない。 よって、本件発明9は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (サ)本件発明14~16について 本件訂正(上記第2 4.(16)「訂正事項16」~同(18)「訂正事項18」を参照。)により、本件発明14~16は、「ω-3脂肪酸あるいはEPAおよび/またはDHA」と訂正されたところ、「ω-3脂肪酸」、「EPAおよび/またはDHA」それぞれの内容は明確に理解できることから、単に上位概念と下位概念が同列に記載されていることをもって、不明確であるとまではいえない。 よって、本件発明14~16は明確である。 なお、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書において、上記の点に特段の主張をしていない。 (シ)無効理由1-1(明確性)のまとめ 上記(エ-2)のとおり、本件発明18、19は不明確であるから、本件発明18、19に係る請求項18、19の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しないものである。 また、本件発明1~17に係る請求項1~17の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。 イ 無効理由1-2(実施可能要件) (ア)ステップ(c)について (ア-1)本件明細書等の記載について 上記第6 1.(2)ア(ウ)「『環境汚染物質』について」に記載したとおり、本件訂正(上記第2 4.(1)(1-2)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」を参照。)により、「好ましくない親油性成分」が、訂正前の請求項1に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」るものから、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定された。 また、本件訂正(上記第2 4.(3)「訂正事項3」及び同(5)「訂正事項5」を参照。)により、本件発明1におけるステップ(c)が、「好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」であること、及び「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることが特定された。 さらに、上記第6 1.(2)ア(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、本件明細書の[0002]等の記載を参酌すると、当業者は、原油組成物から除去される「臭素化難燃剤」の範囲及び適切な揮発性を有する「外部揮発性作業流体」を理解することができる。 加えて、[0080]~[0081]の実施例1及び[0085]の[表1]の実験データを参酌すると、「外部揮発性作業流体」を油組成物に添加することなく、遊離脂肪酸の存在下、所定の条件で短行程蒸留装置による蒸留を行うことにより、ダイオキシン等の環境汚染物質が低減されたことが読み取れるところ、下記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、技術常識を参酌すると、ダイオキシン類が蒸留により減少するような蒸留条件では、一般的な臭素化難燃剤(ポリ臭素化ジフェニルエーテル等)も蒸留により減少するといえる。 そうすると、当業者は、本件発明1のステップ(c)について、分離すべき成分(臭素化難燃剤)、共存させる内部揮発性作業流体(炭素数16から22の遊離脂肪酸)及びその分離開始時の含有量(0.5重量%から5重量%)を理解することができ、実施例の記載等を参酌して、臭素化難燃剤等の分離すべき成分を分離することができるから、本件発明1のステップ(c)を実施することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。 (なお、本件発明18、19において、「内部揮発性作業流体として有効な量」の遊離脂肪酸というのが、具体的にどのような量なのか特定されていない点については、上記第6 1.(2)ア(エ)(エ-2)「本件発明18、19について」を参照。) (ア-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(26~27頁)において、「『臭素化難燃剤』とは、臭素を含有し、難燃性の物質であり、揮発性の高い化合物から揮発性の乏しいポリマー(例えば、臭素化ポリスチレン)まで、様々な範囲に及ぶ。揮発性の乏しいポリマーである臭素化難燃剤は、ステップ(c)のストリッピングで遊離脂肪酸とともに揮発して分離されることなどあり得ない。BDEについても、・・・臭素置換の数の多い同族体の挙動は、明らかではない。 しかも、本件明細書は、臭素化難燃剤を除去する方法について、何らの実施例も示していない。」と主張している。 しかし、上記第6 1.(2)ア(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、本件訂正により、本件請求項1のステップ(a)において、原油組成物の含有成分が「好ましくない親水性成分、好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む」ものであること、及び「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤であり、遊離脂肪酸が炭素数16から22の遊離脂肪酸を含」むことが特定されたことから、上記原油組成物は、本件明細書の[0002]に記載された「魚や海洋哺乳類のような有機体の脂肪組織」に含まれる油組成物を主に想定することができ、その中に含まれる臭素化難燃剤としては、「人間の活動によって、・・・環境に広範囲に広がった」ものであり「食物連鎖を通じて蓄積され、捕食性動物およびヒトが特にそれらの弊害を受ける」ものであり、「とりわけ関心をもたれているのは、魚や海洋哺乳類のような有機体の脂肪組織に最終的に集まる脂溶性残留性環境汚染物質」に該当するものと理解することができる(必要であれば、被請求人が、平成30年9月11日に提出した口頭審理陳述要領書(7~8頁)を参照。)。 また、下記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、技術常識を参酌すると、当業者は、ダイオキシン類が蒸留により減少するような蒸留条件では、一般的な臭素化難燃剤(ポリ臭素化ジフェニルエーテル等)も蒸留により減少することを理解することができるといえる。 そうすると、当業者は、本件明細書に具体的な実施例の記載がなくとも、原油組成物から除去される「臭素化難燃剤」の範囲及び適切な揮発性を有する「外部揮発性作業流体」を理解することができ、本件発明1の方法を実施することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ)ステップ(b)について (イ-1)本件明細書等の記載について 上記第6 1.(2)ア(ア)「『好ましくない親水性成分』について」に記載したとおり、本件訂正(上記第2 4.(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」を参照。)により、本件発明1のステップ(b)において分離される「好ましくない親水性成分」が、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定された。 また、本件明細書の[0080]~[0081]に記載された実施例1においては、粗魚油に水酸化ナトリウム水溶液を添加、撹拌し、水相を取り除き、90℃の水で数回洗浄したことが記載され、[0082]~[0084]に記載された実施例2においては、粗魚油を3回90℃の水で洗浄したことが記載されているところ、当業者は親水性の「タンパク質性化合物」が上記のような塩基を含む水溶液又は水での洗浄により油組成物から除去されることを理解することができる。 そして、本件明細書の[0009]~[0010]及び[0013]~[0014]の記載を参酌すると、タンパク質性化合物を減少させることにより、ストリッピング処理ステップにおいて用いられるエバポレータの伝熱面に堆積する成分を減少させることができること、すなわち、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことができることも、当業者は理解することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。 (イ-2)請求人の主張について (イ-2-1)タンパク質性化合物について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(27~28頁)において、「本件明細書には、ステップ(b)の後のタンパク質性化合物の濃度について、具体的な記載はなく、残存するタンパク質性化合物の濃度とスケールとの相関について、具体的な検証はなされていない。・・・本件明細書には、タンパク質性化合物由来のスケールが実際に成長するのか、そのスケールの除去にどのような問題があるのか、具体的な検証はなされていない。」と主張している。 しかし、親水性の「タンパク質性化合物」は、一般的には、極性が高く、それに応じて沸点も高くなるものと当業者は理解することができるから、具体的な検証実験のデータが本件明細書に記載されていないとしても、当業者は、本件明細書の[0009]~[0010]に記載されたようにエバポレータの伝熱面におけるスケールの成長等の問題が生じること、[0011]~[0012]に記載されたようにストリッピングされた油中に崩壊したスケールが不純物として含まれることを避けるためには、時間と費用を要する清掃を行う必要があること、及び[0013]~[0014]に記載されたように油組成物中の親水性の「タンパク質性化合物」を洗い流すことにより、スケールの原因物質が減少し、スケールの増大が低減されることを、技術常識を参酌することにより理解することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-2-2)実施例1について また、請求人は上記弁駁書(28~29頁)において、本件明細書の実施例1の[0080]においては、「遊離脂肪酸のモル量を大きく上回る塩基を含む水溶液が用いられている」から「ステップ(b)について、本件明細書は具体的な実施例を示していない」と主張している。 ここで、本件明細書の実施例1の[0080]には、「粗魚油1200g」に「2%水酸化ナトリウム水溶液1.0l」を添加、撹拌し、さらに水洗浄等の処理を行った後、「得られた油は酸価3.5mgKOH/gであった。これは、原油中の遊離脂肪酸の約半分が除去されたことを意味する」と記載されているが、まず、粗魚油の酸価に着目すると、[0085]の[表1]の実験データには、「原油」の「ストリッピング前酸価」は「6.9mgKOH/g」であり(KOHの式量=56.1として、水素イオン濃度に換算すると0.12mmol/gであり、粗魚油1200g当たり水素イオンは144mmol含まれることになる。)、「部分精製された油」(当審注:実施例1に対応するものと認められる。)の「ストリッピング前酸価」は「3.50mgKOH/g」であった(水素イオン濃度に換算すると0.06mmol/gであり、処理後の魚油1200g当たり水素イオンは72mmol含まれることになる。)ことが記載されているから、粗魚油1200gに含まれていた遊離脂肪酸の約半分の72molの遊離脂肪酸が除去されていると解され、この点において[0080]の記載に特段の矛盾はない。 そして、72mmolの水素イオンが「水酸化ナトリウム水溶液1.0l」で中和されたと仮定すると、水溶液の密度を1.0、NaOHの式量を40.0として、0.072×40/1000×100=約0.3重量%の濃度の水溶液が用いられたと推測できること、及び[0043]における「水性流体処理ステップは、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させ、原油組成物中に存在する遊離脂肪酸を中和するステップを含む」という記載を参酌すると、当業者は、[0080]における「2%水酸化ナトリウム水溶液」が「0.2%水酸化ナトリウム水溶液」の誤記であると解するのが合理的であり、実施例1が本件発明1に対応する具体例であると容易に理解することができる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について (ウ-1)本件明細書等の記載について 本件訂正(上記第2 4.(11)「訂正事項11」、同(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」、同(2)「訂正事項2」及び同(5)「訂正事項5」を参照。)により、本件発明7におけるステップ(b)が、「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であることが特定され、さらに、「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物」であること、及び「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることも特定されたことから、ステップ(b)において油組成物から分離される成分が「タンパク質性化合物」であること、及びステップ(b)は、「炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物」、具体的には、「遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」である油組成物が得られるような条件の下で行われることが明らかになった。 また、本件明細書の[0082]~[0084]に記載された実施例2には、粗魚油を3回90℃の水で洗浄したこと、及び粗魚油の水による洗浄で形成された乳濁液に、「スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加」して、乳濁液を破壊したことが記載されているところ、当業者は親水性の「タンパク質性化合物」が上記のような水での洗浄により粗魚油から水相に移行すること、及び洗浄で形成された乳濁液に、「スプーン一杯の塩化ナトリウムを、相分離が合理的な時間内に認められるようになるまで、少しずつ添加」することにより、油相と水相とを分離できることを理解することができる。 さらに、本件明細書の[0085]の[表1]には、「原油」の「ストリッピング前酸価」は「6.9mgKOH/g」であり、「水洗された油」(当審注:実施例2に対応するものと認められる。)の「ストリッピング前酸価」は「6.70mgKOH/g」であったことが記載されているから、当業者は、上記の相分離を「水洗された油」に遊離脂肪酸が含まれるような条件の下で行うことができることを理解でき、加えて、上記[表1]の「水洗された油」の「ストリッピング後酸価」が「0.23mgKOH/g」まで減少し、かつダイオキシン等の含有量が低減されていることから、上記「水洗された油」をストリッピング処理することにより、遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体として機能することも理解することができる。 そうすると、実施例2には、塩化ナトリウムの使用量は具体的には記載されていないが、当業者は、本件発明7において特定された相分離すべき成分(タンパク質性化合物)、残すべき成分(炭素数16から22の遊離脂肪酸)及びその含有量(0.5重量%から5重量%)を指標として活用することにより、塩化ナトリウム等の塩を「少しずつ添加」し、本件発明7のステップ(b)の要件を満たす範囲で添加を終了することにより、本件発明7のステップ(b)を実施することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできない。 (ウ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(27~28頁)において、「本件明細書には、ステップ(b)の後のタンパク質性化合物の濃度について、具体的な記載はなく、残存するタンパク質性化合物の濃度とスケールとの相関について、具体的な検証はなされていない。・・・本件明細書には、タンパク質性化合物由来のスケールが実際に成長するのか、そのスケールの除去にどのような問題があるのか、具体的な検証はなされていない。」と主張している。 しかし、上記第6 1.(2)イ(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、具体的な検証実験のデータが本件明細書に記載されていないとしても、当業者は、本件明細書の[0009]~[0014]の記載及び技術常識を参酌することにより、「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことができると理解することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (エ)無効理由1-2(実施可能要件)のまとめ 以上のとおり、請求人の主張する無効理由1-2(実施可能要件)のいずれの理由によっても、本件明細書の発明の詳細な説明が、当業者が本件発明1~19を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないとすることはできず、特許法第36条第4項第1号の規定に適合しないということはできない。 ウ 無効理由1-3(サポート要件) (ア)ステップ(c)について (ア-1)本件明細書等の記載について 本件明細書の[0017]等の記載を参酌すると、本件発明1は「ストリッピング用の内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸を使用して、好ましくない親油性成分・・・を除去する」ことを課題の一つとする発明であると解される。 ここで、上記第6 1.(2)イ(ア)「ステップ(c)について」に記載したとおり、本件訂正(上記第2 4.(1)(1-2)「『環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され』を『臭素化難燃剤であり』とする訂正について」を参照。)により、「好ましくない親油性成分」が、訂正前の請求項1に記載されていた「環境汚染物質および/またはコレステロールから選択され」るものから、本件明細書の[0023]に記載された環境汚染物質の一つである「臭素化難燃剤」に限定された。 また、本件訂正(上記第2 4.(3)「訂正事項3」及び同(5)「訂正事項5」を参照。)により、本件発明1におけるステップ(c)が、「好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」であること、及び「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることが特定された。 さらに、上記第6 1.(2)ア(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、本件明細書の[0002]等の記載を参酌すると、当業者は、原油組成物から除去される「臭素化難燃剤」の範囲及び適切な揮発性を有する「外部揮発性作業流体」を理解することができる。 加えて、[0080]~[0081]の実施例1及び[0085]の[表1]の実験データを参酌すると、「外部揮発性作業流体」を油組成物に添加することなく、遊離脂肪酸の存在下、所定の条件で短行程蒸留装置による蒸留を行うことにより、ダイオキシン等の環境汚染物質が低減されたことが読み取れるところ、下記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、技術常識を参酌すると、ダイオキシン類が蒸留により減少するような蒸留条件では、一般的な臭素化難燃剤(ポリ臭素化ジフェニルエーテル等)も蒸留により減少するといえる。 そうすると、当業者は、本件発明1のステップ(c)に記載されたストリッピング処理、すなわち、内部揮発性作業流体(炭素数16から22の遊離脂肪酸)の共存下(0.5重量%から5重量%)で、油組成物をストリッピング処理することにより、好ましくない親油性成分(臭素化難燃剤)を分離することができることを理解することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件発明1、同様の発明特定事項を含む本件発明6~8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17が、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものではないとすることはできない。 (ア-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(29頁)において、「実施可能要件に関して述べたとおり、当業者は、遊離脂肪酸によって『臭素化難燃剤』全般を分離できるとは認識し得ない。」と主張している。 しかし、上記第6 1.(2)イ(ア)(ア-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、本件訂正、本件明細書の[0002]の記載及び技術常識を参酌すると、当業者は本件発明1~19の「臭素化難燃剤」が、内部作業流体として油中に自然に含まれている遊離脂肪酸により分離できるものと理解することができる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ)ステップ(b)について (イ-1)本件明細書等の記載について 本件明細書の[0014]等の記載を参酌すると、本件発明は「ストリッピング設備の伝熱面上におけるタンパク質、ペプチドなどの親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことを課題の一つとする発明であると解される。 ここで、上記第6 1.(2)イ(イ)「ステップ(b)について」に記載したとおり、本件訂正(上記第2 4.(1)(1-3)「『好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物であり』を加える訂正について」を参照。)により、本件発明1のステップ(b)において分離される「好ましくない親水性成分」が、本件明細書の[0022]に記載された好ましくない親水性成分の一つである「タンパク質性化合物」に限定された。 また、本件明細書の[0080]~[0081]に記載された実施例1においては、粗魚油に水酸化ナトリウム水溶液を添加、撹拌し、水相を取り除き、90℃の水で数回洗浄したことが記載され、[0082]~[0084]に記載された実施例2においては、粗魚油を3回90℃の水で洗浄したことが記載されているところ、当業者は親水性の「タンパク質性化合物」が上記のような塩基を含む水溶液又は水での洗浄により油組成物から除去されることを理解することができる。 そして、本件明細書の[0009]~[0010]及び[0013]~[0014]の記載を参酌すると、タンパク質性化合物を減少させることにより、ストリッピング処理ステップにおいて用いられるエバポレータの伝熱面に堆積する成分を減少させることができること、すなわち、「ストリッピング設備の伝熱面上におけるタンパク質、ペプチドなどの親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことができることも、当業者は理解することができるといえる。 そうすると、当業者は、本件発明1又は7のステップ(b)に記載された水性流体処理、すなわち、好ましくない親水性成分(タンパク質性化合物)を含有する原油組成物を、塩基を含む水性流体、又は塩基なしで水と接触させることにより、タンパク質性化合物を低減又は排除することができ、「ストリッピング設備の伝熱面上におけるタンパク質、ペプチドなどの親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことができることを理解することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件発明1、7、同様の発明特定事項を含む本件発明6、8、18、19及びこれらに従属する本件発明2~5、9~17が、発明の詳細な説明に実質的に記載されたものではないとすることはできない。 (イ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(29頁)において、「実施可能要件について述べたとおり、当業者は本件明細書の記載から「親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」との課題の内容及び本件第2訂正発明の作用効果を明確に理解することができないから、本件第2訂正発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲にない。」と主張している。 しかし、上記第6 1.(2)イ(イ)(イ-2)「請求人の主張について」に記載したとおり、本件訂正、本件明細書の[0009]~[0014]の記載、実施例1、2の記載及び技術常識を参酌すると、当業者は、本件発明1~19の「タンパク質性化合物」が、油組成物をストリッピング処理する際にエバポレータの伝熱面におけるスケール形性の原因の一つとなること、及び原油組成物を塩基を含む水性流体又は塩基なしで水と接触させることによりタンパク質性化合物が除去され、スケール形性のリスクが低減されることを理解することができる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ)本件発明7のステップ(b)の「相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩」及び本件発明10について (ウ-1)本件明細書等の記載について 本件明細書の[0014]等の記載を参酌すると、本件発明7は「ストリッピング設備の伝熱面上におけるタンパク質、ペプチドなどの親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことを課題の一つとする発明であると解される。 ここで、上記第6 1.(2)イ(ウ)「本件発明7のステップ(b)の『相分離を改善するための塩化ナトリウム、・・・から選択される塩』及び本件発明10について」に記載したとおり、本件訂正(上記第2 4.(11)「訂正事項11」、同(2)「訂正事項2」及び同(5)「訂正事項5」を参照。)により、本件発明7におけるステップ(b)が、「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であることが特定され、さらに、「好ましくない親水性成分がタンパク質性化合物」であること、及び「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」であることも特定されたことから、ステップ(b)において油組成物から分離される成分が「タンパク質性化合物」であること、及びステップ(b)は、「炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物」、具体的には、「遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%」である油組成物が得られるような条件の下で行われることが明らかになった。 また、本件明細書の[0082]~[0084]に記載された実施例2及び[0085]の[表1]の記載を参酌すると、当業者は本件発明7において特定された相分離すべき成分(タンパク質性化合物)、残すべき成分(炭素数16から22の遊離脂肪酸)及びその含有量(0.5重量%から5重量%)の範囲内で、実施例2と同様に塩化ナトリウム等の塩を「少しずつ添加」することにより、タンパク質性化合物を除去することを含む本件発明7のステップ(b)を実施することができ、それにより「ストリッピング設備の伝熱面上におけるタンパク質、ペプチドなどの親水性成分からのスケールのリスクを低減または排除する」ことができることを理解することができるといえる。 よって、請求人の主張する理由によっては、本件発明7、及び本件発明7に従属する本件発明10が発明の詳細な説明に実質的に記載されたものではないとすることはできない。 (ウ-2)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(29~30頁)において、「実施可能要件について述べたとおり、本件明細書の実施例には、塩化ナトリウムの使用量について具体的には記載されていない。つまり、本件明細書には、塩の添加によりどのようにして相分離を改善するかについて具体的な記載がされておらず、当業者はどのような量によって相分離という課題が解決するのか、認識し得ない。」と主張している。 しかし、上記のとおり、本件訂正により、ステップ(b)において相分離すべき成分(タンパク質性化合物)、残すべき成分(炭素数16から22の遊離脂肪酸)及びその含有量(0.5重量%から5重量%)並びに用いる試薬(塩基なしの水性流体及び塩)が限定されていることを参酌すると、実施例2に塩化ナトリウムの使用量が具体的に記載されていないとしても、当業者は塩の添加量を適宜に調整し、水相とともにタンパク質性化合物を除去することができると理解することができるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (エ)無効理由1-3(サポート要件)のまとめ 以上のとおり、請求人の主張する無効理由1-3(サポート要件)のいずれの理由によっても、本件発明1~19が発明の詳細な説明に実質的に記載されたものではないとすることはできず、いずれも特許法第36条第6項第1号の規定に適合しないということはできない。 2.無効理由2(拡大先願:甲第1号証)について 無効理由2は、本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。 (1)甲号証に記載された事項 ア 甲1に記載された事項 甲1(特願2012-110809号(国際公開第2013/172346号)には、以下の事項が記載されている。 なお、甲1は、本件特許に係る出願の出願日前の出願(特願2012-110809号、出願日:2012年5月14日、乙2号証)を優先権主張の基礎とする国際出願(PCT/JP2013/063425号、国際出願日:2013年5月14日)であって、本件特許に係る出願の出願後に国際公開され(国際公開第2013/172346号、国際公開日2013年11月21日)、その後特許法第184条の5第1項に規定する手続がされた(特願2013-5461173号、国内書面提出日2013年10月3日)ものであり、甲1の発明者は土居崎信滋、外3名であり、本件特許に係る出願の出願日における甲1の出願人は日本水産株式会社であり、いずれも本件特許に係る出願の発明者及び出願人と同一ではない。 以下において、甲1(国際公開第2013/172346号)には記載されているものの、甲1の優先権主張の基礎となる特願2012-110809号の明細書及び特許請求の範囲(乙2)には記載されていない箇所には「---」を付した。 (甲1-1)「[0007]本発明は、高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有する油脂からエチルエステルを製造する際に、油脂に含まれる環境汚染物質、特にダイオキシン類---を低減させる方法およびダイオキシン類---の含有量の少ないエチルエステルを提供することを課題とする。 課題を解決するための手段 [0008]本発明は、酸化、異性化など変性しやすい高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有する油脂の精製において、分子蒸留又は短行程蒸留を一定の条件で行うことにより、高度不飽和脂肪酸の変性を抑えながら、環境汚染物質を非常に低濃度に低減できることを見出し完成させたものである。この方法により、油脂中の環境汚染物質量を、ダイオキシン類の総含有量を毒性等量0.2pg-TEQ/g未満に低減することができる。さらにそれを原料とし、エチルエステルを得る。このエチルエステルを蒸留及びカラムクロマトグラフィ処理することにより、エチルエステル中のダイオキシン類をさらに低下することができる。」 (甲1-2)「[0014]本発明において、環境汚染物質とは、ポリ塩素化ビフェニル(PCB)、DDT、ポリ塩素化トリフェニル(PCT)、ジベンゾ-ダイオキシン(PCDD)およびジベンゾ-フラン(PCDF)、クロロフェノールおよびヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)、トキサフェン、ダイオキシン、臭素化難燃剤、ポリ芳香族炭化水素(PAH)、有機スズ化合物(例えばトリブチルスズ、トリフェニルスズ)有機水銀化合物(例えばメチル水銀)などを含む。これらが除去された程度の目安としては、除去しにくく、どこにでも存在する代表的なものとして、ダイオキシン類の合計量を毒性等量(pg-TEQ/g)の単位で表示した。」 (甲1-3)「[0018]本発明の方法の実施態様を以下に説明する。 原料油は水洗などの方法で脱ガム処理を施したものを用いるのが好ましい。水洗した原料油をそのまま上述の条件で分子蒸留又は短行程蒸留に付し、コレステロール、遊離脂肪酸、環境汚染物質などを留分として除去し、トリグリセリドを含む残留分を得る。この残留分はそのまま用いてもよいし、さらに活性炭、活性白土などによる脱色処理、水蒸気蒸留などによる脱臭処理をして用いることもできる。こうして製造した精製油脂は飼料、食品、サプリメントの成分として用いることができる。」 (甲1-4)「実施例4 [0030]イワシ原油(酸価6、EPA19%、DHA8%含有)を85℃の温水(対油5%)で水洗した後、短行程蒸留装置(SPD)KD1800(UIC GmbH社製、蒸留面18m2)を用い、短行程蒸留を行った。条件は、真空度0.7~1Pa、本体温度250℃、フィード量約2000kg/H(流速110(kg/h)/m2)であった。 原油と蒸留後(SPD油)の油中のダイオキシン類の測定結果をそれぞれ表5、6に示す。ダイオキシン類の総量を毒性等量で3.0pg-TEQ/gから0.014pg-TEQ/gに低下させることができた。また、蒸留後の油の酸価は0.2以下であり、脂肪酸組成に変化はなかった。」 [0031] [表5] [0032] [表6] 」 イ 甲2に記載された事項 甲2には、下記第6 3.(1)ア「甲2に記載された事項」に記載したとおり、摘示(甲2-1)~摘示(甲2-10)の事項が記載されている。 ウ 甲5に記載された事項 甲5には以下の事項が記載されている (甲5-1)「 」(第475頁表2) (当審仮訳:「 」) (甲5-2)「 」(第477頁表4) (当審仮訳:表4 商業的に入手可能ないくつかの海産油における典型的な脂肪酸,脂肪酸の100分率」) エ 甲24に記載された事項 甲24には以下の事項が記載されている。 (甲24-1)「 」(第183頁表7-2) (当審仮訳:「表7-2 主要な商業海洋油の主な脂肪酸(g/油100g)」 (甲24-2)「Pelura (1987) evaluated the change incholesterol and cholesterol esters during vacuum steam deodorization of arefined menhaden oil at various temperatures and found that cholesterol is notsignificantly distilled at temperatures below 200℃, butat 200℃ and higher distillation does occur, withincreasing removal from 200° to 250℃.・・・ He evaluated the change in chlorinated pesticidesand PCBs in menhaden oil at a number of temperatures and found reduction inPCBs, below detectable levels at a temperature of 175℃.He also reports that organochlorine and organophosphorous pesticides are easilyremoved, even under the mildest conditions.」(第218頁下から6行~第219頁8行) (当審仮訳:「ペルーラ(1987)は、様々な温度において、精製されたメンヘーデン油の真空スチーム脱臭の間のコレステロール及びコレステロールエステルの変化を評価し、コレステロールは200℃未満では有意に蒸留されないこと、しかし200℃以上では蒸留が起き、200℃から250℃にかけて除去が進むことを見出した。・・・ 彼は、数多くの温度において、メンヘーデン油中の塩素化殺虫剤及びPCBの変化を評価し、PCBは175℃で検出レベル未満に減少することを見出した。彼は、有機塩素化物及び有機リン化物が、温和な条件でも容易に除去されることも報告する。」) (甲24-3)「Vacuum Stripping Vacuum-stripping technology takes advantage of thefact that each chemical substance has a characteristic vapor pressure.・・・ The thin-film evaporator/molecular still techniquehas been successfully used for over 40 years for removal of free fatty acidsfrom fats and oils, distilling of fats and oils. deodorization of oils, andremoval of free cholesterol from fats and oils.・・・ In the National Institutes of Health/Department ofCommerce drug master files for fish oil ω3s the processfor the production of vacuumdeodorized fish oil is described. Partially refinedmenhaden oil is fed from 55-gal containers under nitrogen pressure through thefirst-stage feed pump to the first-stage still body.・・・Figure7-16 shows a cutaway view of the wiped-film glass molecular stii, showing theslotted wiper blades, drive, and internal condenser.・・・Theoil then enters the second stage, where carbon blades wipe the oil into a thinfilm and move it downwards. In this stage the oil is heated at 260℃ at 0.5 torr vacuum. The second stage contains an internal condenserheated to 150℃ by circulating heat exchange fluid. Inthis stage cholesterol, pesticides, and PCBs are volatilized and collected in atrap after the condenser. The nonvolatile triglycerides exit the second stage,pass through a stainless steel heat exchanger and a 150-mm Teflon filter, andafter cooling are collected in inert gas purged containers (U.S. Dept. ofCommerce 1989 in press).」(第219頁第9行~第220頁下から第5行) (当審仮訳:「真空ストリッピング 真空ストリッピング技術は、各化学物質が特徴的な蒸気圧を有するという事実を利用している。・・・ 薄膜蒸発機/分子蒸留機技術は、脂肪及び油からの遊離脂肪酸の除去、油脂の蒸留、油の脱臭、油脂からの遊離コレステロールの除去のため、40年にわたって成功裏に使用されてきた。・・・ 魚油ω-3のための国立衛生研究所/商務省ドラッグマスターファイルには、真空脱臭される魚油の製造プロセスが記載されている。ある程度精製されたメンヘーデン油が、窒素圧力下、55ガロンの容器から、第1段階のフィードポンプを通じて、第1ステージの蒸留機体へ供給される。・・・図7-16は、ワイプド-フィルム・ガラス分子蒸留機の切断面を示し、孔のあいたワイパーブレード、駆動部及び内部凝縮器を示す。・・・そして油は、第2ステージに入り、ここでカーボンブレードが油を拭いて薄膜とし、下方に移動する。このステージで、油は、0.5Torrの真空で260℃に加熱される。第2ステージは、熱交換媒体を循環させることによって150℃に加熱された内部凝縮器を含有する。このステージで、コレステロール、殺虫剤及びPCBが気化され、凝縮器の後のトラップに回収される。非揮発性のトリグリセリドは、第2ステージを出て、ステンレス鋼の熱交換器及び150mmテフロンフィルターを通過し、冷却後、不活性ガスでパージされた容器に回収される(米国商務省、1989、印刷中)。」 オ 甲39に記載された事項 甲39には以下の事項が記載されている。 (甲39-1)「It is estimated that effuluents frommanufacturing sites include these chemicals, even though no direct analysis hasbeen reported. High concentrations of tetrabromodiphenyl oxide (TeBDPO) in fish(118 mg/kg fat) have been found in Sweden. PBBs hae been detected in sedimentsand leachate from iandfill sites. TBBPA has been detected in fish near anindustrialized aera in Japan. Many kinds of brominatedflame retardants have been found in the environment, although availableinformation is geographically limited. While they are rarely found in water,DeBDPO, OBDPO, PeBDPO, TeBDPO, PBBs and TBBPA have been found in sediment. Asfor concentrations in wildlife, PBBs have been detected in fish, terrestrialand marine mammals, and birds in the United States and Europe. PeBDPO andTeBDPO have mainly been found in fish or shellfish in Japan and NorthernEurope. They have also been found in pooled samples of terrestrial and marinemammals in Sweden.」(第16頁14~25行) (当審仮訳:「直接の分析が報告されたことはないが、これらの化学物質を含む製造現場からの廃水がこれらの化学物質を含むと推定される。スウェーデンでは、魚中に高濃度のテトラブロモビフェニルオキサイド(TeBDPO)(118mg/kg 脂肪)が見出されている。PBBsは埋め立て地の堆積物及び浸出液中に検出されている。TBBPAは日本の工業化された地域近くの魚中に検出されている。 利用可能な情報は地理的に限定されているが、多くの種類の臭素化難燃剤が環境中に見出されている。それらはめったに水中には見出されないが、DeBDPO、OBDPO、PeBDPO、TeBDPO、PBBs及びTBBPAは堆積物中に見出されている。野生生物における濃縮のため、PBBsは米国及び欧州の魚、陸生及び海生哺乳類、並びに鳥で検出されている。PeBDPO及びTeBDPOは、主に日本及び北欧の魚類又は甲殻類で見出されている。それらは、スウェーデンの陸生及び海生哺乳類のプールされたサンプルにも見出されている。」) (甲39-2)「The brominated flame retardant industryproduces some 50 diferent chemicals (aromatics, aliphatics and alicyclics), ofwhich approximately 30 are in major commercial use (Table 1.3). Of these 30 substances,tetrabromobisphenol A (TBBPA) and decabromodiphenyl oxide (DeBDPO) are the mostsignificant. Other widely used producs include octabromodiphenyl oxide andpentabromodiphenyk oxide (from the polybrominated diphenyl oxide family whichincludes deca-), and tetrabromobisphenol A derivatives. While the productionand use of polybrominated bophenyls (PBBs) has all but ceased in some countriesdue to health and environmental concerns, decabromobiphenyl continues to beproduced (<2000 tonnes per year) in France. Other commercial brominatedflame retardant groupes of products are based on: phthalic anhydride,cycloaliphatic hydrocarbons, aliphatic alcohols, ethylene, phenol, and benzeneand/or styrene.」(第31頁下から15行~下から4行) (当審仮訳:「臭素化難燃剤産業はおよそ50の異なる化学物質(芳香族、脂肪族及び脂環族)を生産しており、そのおよそ30が主要な商業使用されているものである(表1.3)。 これらの30の物質のうち、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)及びデカブロモジフェニルオキサイド(DeBDPO)は最も重要である。他の広く使われている生産物には、オクタブロモジフェニルオキサイド及びペンタブロオジフェニルオキサイド(ポリ臭素化ジフェニルオキサイド類から、デカ-を含む)、並びにテトラブロモビスフェノールA誘導体が含まれる。ポリ臭素化ビフェニル(PBBs)の生産及び使用は、健康及び環境上の懸念のため、いくつかの国を除いてすべて中止されたが、フランスではデカブロモビフェニルが生産され続けている(2000トン未満/年)。他の商用臭素化難燃剤の生産物のグループは、次のものに基づく:フタル酸無水物、環状脂肪族炭化水素、脂肪族アルコール、エチレン、フェノール、ベンゼン及び/又はスチレン。」) カ 甲40に記載された事項 甲40には以下の事項が記載されている。 (甲40-1)「Persistent organic pollutants (POPs) aredescribed as chemicals which resist degradation, bioaccumulate, may betransported in the environment far from their suurces and have the potentioalto cause adverse effects on human health or the environment.」(第14頁3~6行) (当審仮訳:「残留性有機汚染物質(POP)は、分解に抵抗する化学物質として記載されており、生物濃縮し、それらの発生源から遠い環境に運ばれる場合があり、ヒトの健康または環境に有害な影響を生じる可能性がある。」) (甲40-2)「Commercial pentabromodiphenyl ether(pentaBDE) is a highly viscous liquid mixture of tri-, tetra- andpentabromodiphenyl ethers, hexabromodiphenyl ether and heptabromodiphenylethers. The major components of pentaBDE products are pentabromodiphenyl ether(BDE-99).」(第18頁2~6行) (当審仮訳:「市販のペンタブロモジフェニルエーテル(ペンタBDE)は、トリ-、テトラ-及びペンタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル並びにヘプタブロモジフェニルエーテルの高粘度液体混合物である。ペンタBDE製品の主な成分は、2,2',4,4'-テトラブロモジフェニルエーテル(BDE-47)及び2,2',4,4',5-ペンタブロモジフェニルエーテル(BDE-99)である。」) (甲40-3)「Evidence from environmental data Concentrations of the major pentaBDE congeners increase as thetrophic level rises in the biota of the same region, showing tha pentaBDE isbiomagnified (results from Baltic Sea sprat, herring and salmon by Burreuet.al. 1999 and from Atlantic biota by Burreau et al. 2000). Tetrabrominatedand pentabrominated diphenyl ethers show the highest biomagnification potentialof all PBDEs stuied. Increasing levels of pentaBDE congeners with risingtrophic position can be obserbed for the data in biota from around the world. According to results from pooled Bltic Sea herring samples (Haglundet al. 1997) and sprat samples (Stranman et al. 1999; see Figure 2),concentrations of pentaBDE congeners increase with the age of marine fish,indicating bioaccumulation and high resistance to metabolic transformation.」(第21頁20~末行) (当審仮訳:「環境データからの証拠 主要なペンタBDE同族体の濃度は、同じ領域の生物相において栄養段階が上昇するにつれて増大し、このことは、ペンタBDEが生物濃縮されていることを示している(Burreauら1999による、バルト海のスプラット、ニシン及びサーモンからの結果、及びBurreauら2000による、大西洋の生物相からの結果)。四臭素化及び五臭素化されたジフェニルエーテルは、研究されたすべてのPBDEのうちで最高の生物蓄積能力を示す。栄養段階の増大に伴うペンタBDE同族体のレベルの増加が、世界中の生物相のデータにおいて観測される。 プールしたバルト海のニシンのサンプル(Haglundら1997)およびスプラットのサンプル(Strandmanら1999;図2を参照のこと)からの結果によれば、ペンタBDE同族体の濃度は、海洋性の魚類の年齢とともに増大し、これは、生物蓄積および代謝的変換に対する高い耐性を示している。」) キ 甲41に記載された事項 甲41には以下の事項が記載されている。 (甲41-1)「Environmental distribution Most of the available date concerning thedistribution of brominated flame retardants in the environment relate to thePBBs and, more recently, the PBDEs. Early concerns regarding the widespreadpresence of PBDEs in the environment were raised in the late 1980s and early1990s(Loganathan et al. 1995). Nylund et al.(1992) identified two of the lowerbrominated groups of PBDEs, tetra- and penta-BDEs, in sediments from the BalticSea and described an increase in concentrations over time, in contrast with thegradually declining levels of PCBs. Around the same time, Andersson andWartanian (1992) noted the presence of PBDEs in the tissues of Baltic seals,and both Sellstrom et al. (1993) and Jansson et al. (1993) stressed theubiquitous nature of these compounds as contaminants in biota from the Swedishenvironment. De Boer (1989) reported the presence of PBDEs incod liver oil from the North Sea, recording the presence of these compoundsalready in archived samples from 1977, and describing a clear spatial trend forincreasing levels of contamination from Northern to Central to Southern NorthSea. Later reports have confirmed the presence of PBDEs, especially the lowerbrominated tetra-, penta- and hexa-BDE. in the tissues of carp from BuffaloRiver, New York (Loganathan et al. 1995), as well as in fish from the GreatLakes (Asplund et al. 1999a) and in Baltic salmon (Asplund et al. 1999b).Particularly high levels of PBDEs have been recorded in sediments and fishtissues downstream from a flame retardant manufacturing plant in UK (Allchin etal. 1999), as well as downstream from a number of textile companies usingcommercial formulations in Sweden (Sellstrom et al. 1998). The work of de Boeret al. (1998) on tissues from stranded sperm whales provided a strongindication that PBDEs, as well as PBBs, had reached the deep oceans where theseanimals feed. Analyses of stranded whitebeaked dolphins, minke whale andharbour seals by de Boer et al. (1998), and of pilot whales from the FaroeIsland by Lindstrom et al. (1999) confirmed the widespread occurrence of PBDEsin marine mammals. The presence of PBDEs in biota of the Canadian Arctic hasalso recently been confirmed (Alaee et al. 1999). Analysis of temporal trendsin PBDE concentration in beluga from the SE Baffin region (Stern and Ikonomou2000) indicates an approximate 6-fold increase in concentrations over theperiod 1982-1997. During this period, a decline in predominance of tri- andtetra-BDEs and an increase in significance of penta- and hexa-BDEs has alsooccurred, possibly reflecting a market shift towards higher brominatedcongeners. The lower brominated PBDEs, especially tetra- and penta-BDEs, arehighly bioaccumulative in marine organisms. Gustaffson et al. (1999) reportedthat the bioaccumulation potentials for BDE-47 (tetra-) and BDE-99 (penta-) inblue mussels were even greater than those for PCBs of equivalent lipophilicity.More recently, Burreau et al. (2000) have suggested the partial metabolism ofBDE-47 to yet more lipophilic metabolites as a contributory mechanism to itshigh propensity to bioconcentrate in fish tissues. De Boer and Dao (1993)estimated biomagnification factors for PBDEs from fish to marine mammals of10-30.」 (第3頁15行~第4頁7行) (当審仮訳:「環境分布 臭素化難燃剤の環境中での分布に関する利用可能なデータの大半は、PBBに関し、より最近では、PBDEに関する。環境中でのPBDEの広範な存在に関する初期の懸念は、1980年代の終わり及び1990年代の初めに持ち上がった(ロガナサンら、1995年)。ニランドら(1992年)は、バルチック海からの堆積物中のPBDEの低級臭素化群のうち2つ、テトラ-及びペンタ-PBDを同定し、PCBのレベルが徐々に低下しているとのは対照的に、時間と共に濃度が増加していることを記載した。同じころ、アンダーソン及びウォータニアン(1992年)は、バルチックアザラシの組織中のPBDEの存在を指摘し、セルストロムら(1993年)及びヤンソンら(1993年)の両方とも、これらの化合物が汚染物としてスチューデンの環境中の生態系のどこにでも存在する性質を強調した。 デ・ボーア(1989年)は、北海からのタラ肝油中にPBDEが存在することを報告し、1977年から保管された試料中に既にこれらの化合物の存在が存在することを記録し、北海の北部から中央へ、そして南部へ汚染のレベルが増加するという明らかな空間的な傾向を記載した。後の報告は、ニューヨークのバッファロー川からの鯉の組織(ロガナサンら、1995年)並びに五大湖からの魚(アスプランドら、1999年a)及びバルチック・サーモン中に、PBDE、特に低級臭素化テトラ-、ペンタ及びヘキサ-BDEの存在を確認した。特に高いレベルのPBDEは、連合王国において難燃剤製造プラントの下流(アルキンら、1999年)及びスウェーデンにおいて商業的な処方を使用する多くの織物会社の下流(セルストロームら、1998年)の堆積物及び魚組織中に記録された。動けなくなったマッコウクジラの組織に関するボーアら(1998年)の業績は、PBDE及びPBBがこれらの動物が食品を採る深海に達していることを強く示す。ボーアらによる動けなくなったハナジロカマイルカ、ミンククジラ及びゼニガタアザラシの分析(1998年)及びリンドストロムらによるフェロー諸島のゴンドウクジラの分析は、海洋哺乳類にPBDEが広く生じることを確認した。カナダ北極圏の生態系にPBDEが存在することも、近年、確かめられた(アラエら、1999年)SEバフィン地域からのシロチョウザメ中のPBDE濃度の時間的な分析は(スターンおよびイコノモウ、2000年)、1982年から1997年の期間にわたって濃度が約6倍に増加したことを示す。この期間、トリ-及びテトラ-BDEの優位の減少と、ペンタ-及びヘキサ-BDEの深刻さの増大も生じ、おそらく、高級臭素化同族体への市場のシフトを反映している。低級臭素化PBDE、特にテトラ-及びペンタ-BDEは、海洋生物に非常に生物濃縮しやすい。グスタフソンら(1999年)は、ムラサキガイ中のBDE-47(テトラ-)及びBDE-99(ペンタ-)の生物濃縮の可能性は、同等の脂溶性のPCBのそれよりも大きいことを報告した。より最近では、ビュローらは(2000年)、魚組織中に生体濃縮する(bioconcentrate)高い傾向に寄与するメカニズムとして、BDE-47の部分代謝によってより脂溶性の代謝物となることを示唆した。デ・ボーア及びダオ(1993年)は、魚から海洋哺乳類へPBDEが生物蓄積する因子を10-30と見積もった。」) ク 甲42に記載された事項 甲42には以下の事項が記載されている。 (甲42-1)「In recent years, scientists andenvironmental regulatory agencies in North America and Europe have raised newconcerns about the presence of PBDEs in the environment. Deep sediment core samplescollected from the Bornholm Deep. located in the southern Baltic Sea andanalyzed by Nylund et al. (1992) indicate, in contrast to other persistentorganic pollutants such as PCBs, dioxins, and DDT, that PBDE levels haveincreased exponentially since the late 1970s. And, nearly every environmentalmonitoring program conducted during the past decade has shown sharplyincreasing levels of PBDEs in wildlife, particularly in Nordic countries wherethis trend sharply contrasts with a general decrease in the occurrence ofdioxins,PCBs and some chlorinated pesticides in marinemammals and aquatic wildlife (Bergman, 2000; Hooper and McDonald, 2000). Theseobservations are particularly troubling since PBDEs (BDE-47,-99,-100 and -153, in particular), similarto the dioxins and PCBs,are highly lipophilic compoundsand readily bioaccumulate through the food web (Sellstrom et al.,1993).」(第580頁左欄3~23行) (当審仮訳:「近年、北米及びヨーロッパの科学者及び環境規制当局は、環境中のPBDEの存在に関し新たな懸念を提起した。南バルチック海に位置するボルンホルム海淵で採取されニルンドら(1992年)によって分析された深部堆積物コア試料は、PCB、ダイオキシン及びDDTなど他の持続的な有機汚染物とは対照的に、PBDEのレベルは、1970年代後半以降、指数関数的に増加したことを示す。そして、過去10年間に行われた環境モニタリングプログラムのほとんど全ては、特にノルディック諸国での野生動物中のPBDEが急に増加したことを示しており、この傾向は、海洋哺乳類及び水性野生生物でのダイオキシン、PCB及びいくつかの塩素化殺虫剤の存在が全般的に減少していることに対して、非常に対照的である(バーグマン、2000年;フーパー及びマクドナルド、2000年)。PBDE(とりわけ、BDE-47,-99,-100及び-153)は、ダイオキシン及びPCBと同様に非常に脂溶性の化合物であり、食物網を通じて容易に蓄積するため、これらの観察は、とりわけ厄介である。」) (2)乙号証に記載された事項 ア 乙4に記載された事項 乙4には以下の事項が記載されている。 (乙4-1)「Removal of persistent organic pollutants infish oils using short-path distillation with a working fluid」(第273頁論文タイトル) (当審仮訳:「作業流体を使用したショートパス蒸留による魚油中の残留性有機汚染物質の除去」) (乙4-2)「 」(第274頁表1) (当審仮訳:「 」) (乙4-3)「 」(第275頁表2) (当審仮訳:「 」) (乙4-4)「Materials and methods 2.1 Decontamination process Two fish oils were subject toa short-pasth distillation process, with a working fluid, described by Breivikand Thorstad (2005) in order to remove persistent organic environmentalpollutants (POPs). The decontamination was caried out in industrial scaleequipment at Epax AS, Alesund, Norway. ・・・ The processing cinditions areshown in table 1. The processing conditions for oil 1 and 2 varied by lowertemperature and probably higher pressure (i.e. lower vacuum) in thedistillation column for oil 2. The results for oil 2 may therefore not be fullyrepersentative for the method. The fish oil 1 (Vedde sildeoljefabrikkAS) was based on 17% Blue Whiting (Micromesistius poutassou), 49% herring(Clupea harengus) (NVG herring), 17% caperin (Mallotus villosus) (JanMayen/Iceland) and 17% by-products from herring (Norwegian sea).」(第275頁左欄表下16行~下から2行) (当審仮訳:「2 材料及び方法 2.1 除染プロセス 二種の魚油は、残留性有機環境汚染物質(POPs)を除去するため、Breivik and Thorstad (2005年)に記載されている作業流体を使用したショートパス蒸留のプロセスによって処理された。除染は、ノルウェーのオーレスンに所在するEpax ASの工業規模の設備を使用して行われた。・・・ 処理条件を表1に示す。油1及び2の処理条件は、油2のための蒸留塔内では、より低温及び、おそらくより高圧(すなわち、より低真空度)により変動した。したがって、油2についての結果は、この方法について完全に典型的なものとはいえないかもしれない。 魚油1(Vedde sildeoljefabrikk AS)は、ブルーホワイティング (Micromesistius poutassou)17%、ニシン (Clupeaharengus) (NVG herring)49%、カペリン (Mallotus villosus)(Jan Mayen/Iceland) 17%、及びニシン(ノルウェー海)の副産物17%に由来するものであった。」) (乙4-5)「 」(第275頁表3) (当審仮訳:「 」) (乙4-6)「 」(第276頁表4) (当審仮訳:「 」) (乙4-7)「 」(第277頁表6) (当審仮訳:「 」) (3)甲1に記載された発明 ア 甲1発明1 摘示(甲1-4)の実施例4において、摘示(甲1-1)の「本発明は、酸化、異性化など変性しやすい高度不飽和脂肪酸を構成脂肪酸として含有する油脂の精製において、分子蒸留又は短行程蒸留を一定の条件で行うことにより、高度不飽和脂肪酸の変性を抑えながら、環境汚染物質を非常に低濃度に低減できる」との記載、及び摘示(甲1-3)の「水洗した原料油をそのまま上述の条件で分子蒸留又は短行程蒸留に付し、コレステロール、遊離脂肪酸、環境汚染物質などを留分として除去し、トリグリセリドを含む残留分を得る。」との記載によれば、実施例4の「短行程蒸留」は、ダイオキシン類(摘示(甲1-2)に記載された環境汚染物質)を除去するためのものであるが、実際には、ダイオキシン類(環境汚染物質)を遊離脂肪酸と共に除去するためのものであるといえる。 また、実施例4では、イワシ原油からダイオキシン類および遊離脂肪酸が除去されるのであるから、イワシ原油は遊離脂肪酸およびダイオキシン類を含んでいるといえる。 さらに、実施例4における、85℃の温水(対油5%)で水洗した後のイワシ原油は、短行程蒸留における供給材料として使用されるものであるから、上記「実施例4」から、「85℃の温水(対油5%)で水洗した後のイワシ原油の、短行程蒸留における供給材料としての使用」の発明を読み取ることができるといえる。 以上をまとめると、甲1には、 「遊離脂肪酸およびダイオキシン類を含み、85℃の温水(対油5%)で水洗した後のイワシ原油の、ダイオキシン類を遊離脂肪酸と共に除去するための短行程蒸留における供給材料としての使用」(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。 イ 甲1発明2 上記「実施例4」から、「85℃の温水(対油5%)で水洗した後のイワシ原油」も読み取ることができるといえる。 そして、上記2.(2)ア「甲1発明1」で述べたことも考慮すると、甲1には、 「遊離脂肪酸およびダイオキシン類を含み、85℃の温水(対油5%)で水洗した後のイワシ原油」(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。 (4)本件発明18について ア 本件発明18と甲1発明1との対比 本件発明18と甲1発明1とを対比すると、甲1発明1の「遊離脂肪酸」、「ダイオキシン類」、「イワシ原油」及び「短行程蒸留」は、それぞれ本件発明18の「遊離脂肪酸」、「好ましくない親油性成分」、「油組成物」及び「ストリッピング処理ステップ」に相当する。 また、甲1発明1では、イワシ原油に外部から特に、流体を添加していないから、甲1発明1の油組成物は、本件発明18と同様に「外部揮発性作業流体」を実質的に含むものではない。 そうすると、本件発明18と甲1発明1とは、 「遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1-1> 遊離脂肪酸について、本件発明18では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲1発明1では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点2-1> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲1発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点3-1> 好ましくない親油性成分が、本件発明18では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲1発明1では、ダイオキシン類である点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点1-1について (イ-1)「内部揮発性作業流体として有効な量」及び「炭素数16から22の遊離脂肪酸」について 上記第6 1.(2)ア(エ)「『内部揮発性作業流体として有効な量』について」の(エ-2)「本件発明18、19について」に記載したとおり、本件発明18における炭素数16から22の遊離脂肪酸の「内部揮発性作業流体として有効な量」という発明特定事項は、具体的にどのような量なのか特定されていない点で不明確なものであるから、炭素数16から22の遊離脂肪酸の含有量の具体的な数値に基づいて、本件発明18と甲1発明1とを対比することはできない。 しかし、甲1の実施例4(摘示甲1-4)には、イワシ原油(酸価6)を85℃の温水(対油5%)で水洗いした後、・・・短行程蒸留を行った」ところ、「ダイオキシン類の総量を毒性等量で3.0pg-TEQ/gから0.014pg-TEQ/gに低下させることができ」、「蒸留後の油の酸価は0.2以下」であったことが記載されている。 魚油に含まれる遊離脂肪酸は、油脂の加水分解によって生じた高級脂肪酸であり、例えば甲5(摘示甲5-2)及び甲24(摘示表24-1)に記載されているように炭素数14~22の長鎖脂肪酸であるから、「炭素数16から22の遊離脂肪酸」が主要な成分として存在する。また、そのような高級脂肪酸は水には溶解しないから、短行程蒸留前の水洗いによっては減少はしておらず、したがって、短行程蒸留は遊離脂肪酸の存在下で行われているといえる。さらに、当該遊離脂肪酸は、外部からイワシ原油に添加されたものではないから、「内部」の成分である。 そして、短行程蒸留後の酸価は6から0.2以下に減少しているから、短行程蒸留の条件下で遊離脂肪酸はダイオキシン類とともに蒸発除去されたことが明らかであるから、ダイオキシン類及びその他の蒸留成分の蒸発除去において、「炭素数16から22の遊離脂肪酸」は揮発性作業流体として有効に機能したといえる。 なお、甲1発明1の短行程蒸留において臭素化難燃剤が除去されていることについては、下記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおりである。 そうすると、甲1発明1における水洗後のイワシ原油は、臭素化難燃剤の除去において「内部揮発性作業流体として有効な量」の「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を含有するものといえるから、相違点1-1は実質的な相違点ではない。 (イ-2)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年1月25日に提出した答弁書(42頁)において、「甲1号証には、イワシ原油の水洗処理が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で行われていることは、記載も示唆もされていないから、この点は実質的な相違点である」と主張しており、令和元年9月4日に提出した上申書(26頁)においても、「すでに答弁書42~43頁及び口頭審理陳述要領書28頁で述べたのと同様の理由から・・・いずれも実質的な相違点である」と主張している。 しかし、甲1に被請求人が主張するような明示的な記載がないとしても、上記のとおり、甲1の実施例4(摘示甲1-4)に記載された、イワシ原油(酸価6)に含まれる遊離脂肪酸は「炭素数16から22の遊離脂肪酸」を主要な成分として含むものであり、当該イワシ原油(酸価6)を85℃の温水(対油5%)で水洗いする処理は遊離脂肪酸を減少させる処理とは認められず、かつ、水洗い後の油組成物に含まれる遊離脂肪酸は短行程蒸留において揮発性作業流体として機能したと理解することができるから、明示的な記載がないことをもって実質的な相違点とすることはできない。 よって、請求人の主張は採用できない。 ウ 相違点2-1について (ウ-1)「好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物」について 甲1の実施例4(摘示甲1-4)には、イワシ原油(酸価6)を85℃の温水(対油5%)で水洗いしたことが記載されているところ、一般に、水洗いすれば、イワシ原油に含まれる親水性成分であるタンパク質性化合物は水相に溶解し、除去されるものと解される。 そうすると、甲1発明1における水洗後のイワシ原油は、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を実質的に含まないものといえるから、相違点2-1は実質的な相違点ではない。 (ウ-2)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年1月25日に提出した答弁書(42~43頁)において、「甲1号証には、親水性成分に関する記載も示唆も存在しないから、この点は実質的な相違点であ」る旨を主張しており、令和元年9月4日に提出した上申書(26頁)においても、「すでに答弁書42~43頁及び口頭審理陳述要領書28頁で述べたのと同様の理由から・・・いずれも実質的な相違点である」と主張している。 しかし、甲1に被請求人が主張するような明示的な記載がないとしても、上記のとおり、甲1の実施例4(摘示甲1-4)に記載された、イワシ原油(酸価6)を85℃の温水(対油5%)で水洗いする処理は、親水性成分であるタンパク質性化合物を除去する処理に当たると理解することができるから、明示的な記載がないことをもって実質的な相違点とすることはできない。 よって、被請求人の主張は採用できない。 エ 相違点3-1について (エ-1)イワシ原油に臭素化難燃剤が含まれることについて 甲39~甲42(摘示甲39-1~摘示甲42-1)には、臭素化難燃剤が北米、欧州、日本等、世界各地の魚介類等の海洋生物に含まれていることが記載されており、生物濃縮され(摘示甲39-1、甲40-1、甲40-3、甲41-4、甲42-1)、代謝、分解に対する耐性を有している(摘示甲40-1、甲40-3)ことも記載されているから、本件特許に係る出願の優先日当時、ほとんどすべての精製前の海産油には、臭素化難燃剤が含まれていたといえる。そうすると、甲1発明1における「イワシ原油」には、明示的に記載された「ダイオキシン類」だけでなく、臭素化難燃剤も含まれていたといえる。 (エ-2)臭素化難燃剤が「好ましくない親油性成分」であることについて 甲39(摘示甲39-1)には、テトラブロモビフェニルオキサイド(TeBDPO)が脂肪1kg当たり118mgの濃度で蓄積されていることが記載されており、また、甲39(摘示甲39-2)に記載されたテトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、デカブロモジフェニルオキサイド(DeBDPO)、ポリ臭素化ジフェニルオキサイド類等、甲40(摘示甲40-2)に記載されたペンタブロモジフェニルエーテル(ペンタBDE)同族体、甲41(摘示甲41-1)及び甲42(摘示甲42-1)に記載されたPBDEは、いずれも臭素化された芳香族炭化水素系化合物であるから、これらの臭素化難燃剤は親油性の化合物であるといえる。 また、例えば甲40(摘示甲40-1)に記載されているように、これらの化合物がヒトの健康に有害な影響を与える可能性があることも、本件特許に係る出願の優先日当時において周知の技術的事項であったといえる。 そうすると、甲1発明1における「イワシ原油」にも含まれている「臭素化難燃剤」は、「好ましくない親油性成分」の一種であるといえる。 (エ-3)臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて 甲1の実施例4(摘示甲1-4)には、「短行程蒸留装置(SPD)KD1800(UIC GmbH社製、蒸留面18m2)を用い、短行程蒸留を行った。条件は、真空度0.7~1Pa、本体温度250℃、フィード量約2000 kg/H(流速110(kg/h)/m2)であった」ことが記載されている。 ここで、本件特許に係る出願の優先日後に公開された文献であるが、「作業流体を使用したショートパス蒸留による魚油中の残留性有機汚染物質の除去」(摘示乙4-1)について記載された乙4には、処理条件(摘示乙4-2)が、揮発性作業流体(魚油からの低分子量エチルエステル再蒸留画分)7%、伝熱面3m2、流量350l/h、真空度0.03mbar(3Pa)未満、蒸留器からの残油の温度約220℃という同じ条件下における、魚油1(摘示乙4-4)のダイオキシン類(PCDD及びPCDF)の減少量(摘示乙4-5及び乙4-6)及び臭素化難燃剤(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)の減少量(摘示乙4-7)が記載されており、ダイオキシン類が蒸留により減少する条件下では、一般的な臭素化難燃剤であるポリ臭素化ジフェニルエーテルも蒸留により減少することが読み取れる。 また、甲1の実施例4(摘示甲1-4)の短行程蒸留は、真空度0.7~1Paで行われる真空蒸留(真空ストリッピング)の一種であるところ、甲24(摘示甲24-3)に記載されているように、真空ストリッピング技術は、各化学物質が温度に依存する特徴的な蒸気圧を有するという事実に基づき、蒸気圧の相対的な違いを利用して組成物(液相)から特定の物質を気相に分離する技術であるから、ある温度で特定の物質が液相から気相に分離される場合、当該物質よりも蒸気圧が高い(沸点が低い、あるいは揮発性が高い)物質も、同じ条件で気相に分離されることになり、魚油の蒸留においても同様に、蒸気圧の高い成分から蒸留されるものと解される。 そうすると、ダイオキシン類が蒸留により減少している(摘示甲1-4)甲1の実施例4の蒸留条件では、乙4の記載を参酌すると、一般的な臭素化難燃剤であるポリ臭素化ジフェニルエーテルも蒸留により減少するといえる。 (エ-4)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年9月11日に提出した口頭審理陳述要領書(28頁)において、「すでに答弁書23-24頁などで述べたように、臭素化難燃剤の量を低減させる発明につき、甲1号証は特許法第29条の2の引例とはならない」、「本件発明18では、好ましくない親油性成分が臭素化難燃剤および/またはペルフルオロ化合物から選択されるのに対して、甲1発明(使用)では、ダイオキシン類である点で相違する」と主張し、また、平成30年1月25日に提出した答弁書において、「甲1号証の優先権主張の基礎となる出願である特願2012-110809の出願当初の明細書(乙2号証)には、臭素化難燃剤の量の低減に関する記載はなく、甲1号証の臭素化難燃剤に関する実施例8に該当する記載も存在しない・・・。 したがって、臭素化難燃剤の量を低減させる発明・・・につき、甲1号証は特許法第29条の2の引例に該当しない」と主張しており、令和元年9月4日に提出した上申書(26頁)においても、「すでに答弁書42~43頁及び口頭審理陳述要領書28頁で述べたのと同様の理由から・・・いずれも実質的な相違点である」と主張している。 しかし、上記第6 2.(4)エ(エ-1)「イワシ原油に臭素化難燃剤が含まれることについて」~同(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、甲1の優先権主張の基礎となる出願の出願当初の明細書にも記載されている実施例4に基づく甲1発明1は、実質的に臭素化難燃剤の量を低減させている発明に相当するから、「実施例8」が乙2に記載されていないとしても、甲1に臭素化難燃剤の量を低減させる発明が記載されていないとはいえない。 よって、被請求人の主張は採用できない。 (エ-5)相違点3-1のまとめ 以上のことから、甲1発明1における油組成物は、好ましくない親油性成分の一つとして、短行程蒸留(ストリッピング処理ステップ)において除去される臭素化難燃剤を含むものであるといえる。 そうすると、相違点3-1は実質的な相違点ではない。 オ 本件発明18についてのまとめ 以上のとおり、相違点1-1~相違点3-1は、いずれも実質的な相違点ではない。 そうすると、本件発明18は甲1発明1と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではない。 (5)本件発明19について ア 本件発明19と甲1発明2との対比 本件発明19と甲1発明2とを対比すると、甲1発明2の 「ダイオキシン類」及び「イワシ原油」は、それぞれ本件発明19の「好ましくない親油性成分」及び「油組成物」に相当する。また、甲1発明2では、温水で洗浄した後のイワシ原油に、外部から特段流体を添加していないから、甲1発明2は、本件発明19と同様に「外部揮発性作業流体」を実質的に含むものではない。 そうすると、本件発明19と甲1発明2とは、 「遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点4-1> 遊離脂肪酸について、本件発明19では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲1発明2では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点5-1> 油組成物について、本件発明19では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれていないのに対し、甲1発明2では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれていないのか不明である点。 <相違点6-1> 好ましくない親油性成分が、本件発明19では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲1発明2では、ダイオキシン類である点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点4-1~相違点6-1について 相違点4-1~相違点6-1は、それぞれ上記第6 2.(4)ア「本件発明18と甲1発明1との対比」に記載した相違点1-1~相違点3-1と実質的に同じ内容であるから、同イ「相違点1-1について」~同エ「相違点3-1について」における説示と同様のことがいえる。 そうすると、相違点4-1~相違点6-1は、いずれも実質的な相違点ではない。 ウ 本件発明19についてのまとめ よって、本件発明19は甲1発明2と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではない。 (6)無効理由2(拡大先願:甲第1号証)についてのまとめ 以上のとおり、本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 3.無効理由3(進歩性:甲第2号証)について 無効理由3は、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲第5~20、23、30~32、44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。 (1)甲号証に記載された事項 ア 甲2に記載された事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2-1)「[特許請求の範囲] [請求項1] 環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物中の該環境汚染物質の量を低減させるための方法であって: - 揮発性作業流体を該混合物に添加する過程であって、該揮発性作業流体が、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸および炭化水素のうちの少なくとも1つを含む過程;および - 該混合物が添加された該揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される過程であって、食用であるかまたは化粧品中に用いるための該脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が、該揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程 を含むことを特徴とする方法。 [請求項2] 前記揮発性作業流体が、前記脂肪または油混合物から分離されるべき環境汚染物質と揮発性が本質的に等しいかまたはより少ない、請求項1記載の方法。 [請求項3] 前記揮発性作業流体が、前記環境汚染物質を含有する食用であるかまたは化粧品中に用いるための前記脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される、請求項1記載の方法。 ・・・ [請求項17] 少なくとも1つの前記ストリッピング処理過程が、薄膜蒸発法、分子蒸留、またはショートパス蒸留、あるいはこれらの任意の組合せのうちの1つである、請求項1記載の方法。」 (甲2-2)「[技術分野] [0001] 本発明は、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物中の環境汚染物質の量を低減するための方法に関する。本発明は、揮発性環境汚染物質低減作業流体にも関する。さらに本発明は、上記の方法に従って調製される健康サプリメント、医薬品、化粧品および動物飼料製品に関する。」 (甲2-3)「[課題を解決するための手段] [0014] 本発明の第1の態様に従って、この、およびその他の目的は、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油(環境汚染物質を含有する)を含む混合物中の環境汚染物質の量を低減するための方法であって、以下の:揮発性作業流体を該混合物に添加する過程であって、該揮発性作業流体が脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、遊離脂肪酸および炭化水素のうちの少なくとも1つを含む過程、および該混合物を添加された該揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付す過程であって、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が該揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程を包含する方法を用いて達成される。本明細書中で、「ある量」とは、いくつかの環境汚染物質の95~99%までの量の低減、即ち脂肪または油組成物からの特定汚染物質および/または毒性成分の実質的な除去を包含すると解釈される。」 (甲2-4)「[0022] 本方法のもう1つ別の好ましい実施形態では、該揮発性作業流体は、環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成され、即ち、該脂肪または油それ自体が遊離脂肪酸を含有する。ここで、該油または脂肪中の遊離脂肪酸は、該揮発性作業流体として作用する。さらに、油または脂肪中の遊離脂肪酸もまた、当該方法において内部作業流体として部分的に作用することにより(または該作業流体の活性部分であることにより)、ストリッピング工程における付加的効果に寄与し得る。上記のこのような油または脂肪は、例えばサイレージ油あるいは長期間保存または運搬された油であり得るであろう。これは、揮発性作業流体が、ストリッピング工程前に油もしくは脂肪混合物に添加され得るか、および/または、環境汚染物質もしくは毒性成分を含有する脂肪もしくは油混合物中に含まれ得る、ということを意味する。このように、本発明は驚くべきことに、低品質の油として普通は分類される油を精製するために非常に効率的である。 [0023] 該ストリッピング法のもう1つ別の好ましい実施形態では、該揮発性作業流体は、高含量の遊離脂肪酸を伴う少なくとも1つの海産油、例えば魚油(低品質海産油)の混合物中に含まれる遊離脂肪酸により構成され、この場合、該油混合物中の該遊離脂肪酸は作業流体として作用する。さらに、それにより同時にそして同一の方法において、該海産油中の環境汚染物質の量を減少させ、遊離脂肪酸の量を低減することが可能である。」 (甲2-5)「[0056] [定義] 本明細書中で用いる場合、環境汚染物質という用語は、好ましくは、毒性成分および/または殺虫剤、例えばポリ塩素化ビフェニル(PCB)、DDTおよびその代謝産物、海洋環境中に見出され、潜在的に有害であるかおよび/または有毒であると同定された有機化合物;ポリ塩素化トリフェニル(PCT)、ジベンゾ-ダイオキシン(PCDD)およびジベンゾ-フラン(PCDF)、クロロフェノールおよびヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)、トキサフェン、ダイオキシン、臭素化難燃剤、ポリ芳香族炭化水素(PAH)、有機スズ化合物(例えばトリブチルスズ、トリフェニルスズ)ならびに有機水銀化合物(例えばメチル水銀)を意味する。 [0057] 本明細書中で用いる場合、油および脂肪という用語は、トリグリセリドおよびリン脂質形態のうちの少なくとも1つでの脂肪酸を意味する。一般に、該ストリッピング工程における出発原料が海産油である場合、該油は魚またはその他の海洋性供給源からの、そしてトリグリセリドの形態で脂肪酸、例えば多価不飽和脂肪酸を含有するそのまままたは部分的に処理された油のいずれかであってもよい。典型的には、このような海産油中の各々のトリグリセリド分子は、飽和、一価不飽和または多価不飽和であるか、あるいは長鎖または短鎖である異なる脂肪酸エステル部分を、多かれ少なかれ無作為に含有するであろう。 さらに、植物油または脂肪の例は、コーン油、パーム油、ナタネ油、ダイズ油、ヒマワリ油およびオリーブ油である。さらに、該脂肪または油は、上記のようにストリッピング工程における出発原料を構成する前に、1つまたはいくつかの過程において前処理されてもよい。このような前処理過程の一例は、脱臭工程である。該脂肪または油は、1つまたはいくつかのこのような前処理過程において、および/または本発明による処理過程において、食用のものであってもよいということも留意される。」 (甲2-6)「[0061] さらに、本明細書中で用いる場合、ストリッピングという用語は、液体流から気体化合物を除去し、分離しまたは(強制的に)追い出すための一般的方法を含むものと解釈される。さらに、本明細書中で好ましい「ストリッピング処理過程」という用語は、1つ以上の蒸留除去または蒸留方法、例えばショートパス蒸留、薄膜蒸留(薄膜ストリッピングまたは薄膜(蒸気)ストリッピング)、薄膜降下式蒸留および分子蒸留、ならびに蒸発法により、油または脂肪中の環境汚染物質の量を低減させるための方法/工程に関するものである。 [0062] 本明細書中で用いる場合、「低品質の油」という用語は好ましくは、栄養目的ではあまり有用でなくなる大量の遊離脂肪酸を該油が含み、そしてこのような油における従来のアルカリ精製は複雑且つ経費が掛かる、ということを意味する。さらに、本明細書中で用いる場合、鉱油という用語は、鉱油製品、例えば蒸留工程からの画分および白色スピリット(精油)を含むものと解釈される。本明細書中で用いる場合、炭化水素は、主に炭素および水素から構成される比較的大型の分子である有機化合物を含むものと解釈される。それらは、窒素、リン、イオウおよび塩素等の原子も含み得る。」 (甲2-7)「[実施例1] [0082] 次に、以下の実施例により本発明を例証するが、本発明はこれらに限定されない。これらの実施例は単に例証のために説明され、本方法の多数のその他の変形(バリエーション)が用いられてもよい。以下の実施例は、分子蒸留による魚油の異なる精製からの、いくつかの結果を要約するものである。 [0083] [実験室での実験のための設備および条件] 以下の実施例1~3では、デカクロロビフェニル0.60mg/kgを、汚染物質モデル物質として魚油組成物に添加した。デカクロロビフェニル中の高い塩素含量により、この化合物が、環境汚染物質、例えばPCB、DDTおよびその代謝物、トキサフェン、ダイオキシンおよび臭素化難燃剤より、低揮発性であることが確実になる。 [0084] 別記しない限り、全ての実施例において、圧力は0.001mbarであった。しかしながら、これは圧力指標の下限であり、実際の圧力は変化するであろう。それが、実施例によって結果が多少(やや)変動する理由である。蒸留設備が安定な条件下に作動している場合、有意の変動は予測されない。しかしながらこれは、一定の圧力が本発明を実行するための非常に強力な条件ではない、ということを指摘するものである。」 (甲2-8)「[0099] いくつかの場合において、一定のコレステロールレベルが、魚油のいくつかの適用、例えば魚飼料、特に仔稚魚用飼料に、有益であり得る。これらの適用において、汚染物質のみの優先的除去を実施することは重要である。」 (甲2-9)「[0102] [実施例6:サーモン油] 本実施例では、大西洋産の(アトランティック)サーモンからの新鮮な副産物からの油を、本発明に従って加工処理した。本発明の方法は、揮発性作業流体を油混合物に添加し、そしてさらに該混合物を、添加された該揮発性作業流体とともに分子蒸留処理過程に付す過程を包含する。8%の作業流体((揮発性作業流体):(サーモン油)の比は、ここでは約8:100である)を該油に添加し、圧力1×10-3mbar、温度180℃、および混合物流速600mL/時で、蒸留工程を実施した。 [0103] 臭素化難燃剤、PCBおよびいくつかの塩素化殺虫剤の量に関して、それぞれ蒸留の前および後に、該油混合物の試料を分析した(以下の表5および6参照)。 [0104] [表5] [0105] [表6] 」 (甲2-10)「[0116] [実施例9:遊離脂肪酸の除去] 魚飼料の生産のために購入された魚油を、実施例1に与えられたのと同一の条件下に分子蒸留工程により蒸留し、この出発原料である油は、6.8mgKOH/gの酸価を有していた。4.3重量%に相当する留出物の除去後、残留油の酸価は0.2mgKOH/gへと減少し、そして該出発原料である油中の環境汚染物質の量が低減された。 [0117] 同一の蒸留手順において、20.5mgKOH/gの酸価を有する油を蒸留した。10.6%の留出物の除去後、該酸価は約1.0mgKOH/gへと減少し、該出発原料である油中の環境汚染物質の量が低減された。 ・・・ [0119] したがって本実施例は、油または脂肪中の遊離脂肪酸が作業流体として作用するため、高含量の遊離脂肪酸を有する脂肪または油(低品質油または脂肪)を少なくとも含む混合物中の環境汚染物質の量を低減させるためのストリッピング工程は有効である、ということを示す。さらに、該油または脂肪中の遊離脂肪酸は、該ストリッピング工程における内部作業流体として一部作用することにより(または該作業流体の活性部分であることにより)、該ストリッピング工程における更なる効果にも寄与する。 [0120] 脂肪または油中の環境汚染物質の量を低減するために、該環境汚染物質を含有する該油または脂肪に、同様の量の適切な遊離脂肪酸を含有する揮発性作業流体を添加することにより、同一のストリッピング効果が得られるということも、当業者は見出すであろう。」 イ 甲5に記載された事項 甲5には、上記第6 2.(1)ウ「甲5に記載された事項」に記載したとおり、摘示(甲5-1)~摘示(甲5-2)の事項が記載されている。 ウ 甲6に記載された事項 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6-1)「 」(第693頁左欄図1) (当審仮訳:「 図1 油の精製ステージ」) (甲6-2)「 」(第693頁右欄表1) (当審仮訳:「表1 油脂の精製-ユニットプロセス ・・・ 」) (甲6-3)「Degumming ‘Gums’and‘Degumming’are words loosely applied toimpurities shown in Table 1 and their removal. They are present in the oil atbetween 0・03 and 3・0 per centand are complex molecules wide in variety so that they can be insoluble,soluble or in colloidal form in oil. They have been broadly separated intohydratable and non-hydratable types.・・・ Degumming extraction most oils are subjected towater or steam tratment followed by centrifuging which removes most of thehydratable gums. The non-hydratable variety is usually attacked by treating theoil under vacuum wuth 0・05-0・5per cent by weight of an acid, for example phosphoric or citric acid, inconcentrated form. Intimate contact between oil and acid is essential, andrequires between 5 and 30min at about 80℃ dependingupon the quantities involved.」(第693頁左欄図下6行~右欄表下6行) (当審仮訳:「脱ガム 「ガム」及び「脱ガム」は、表1に示された不純物及びそれらの除去に緩やかに適用される語である。それらは油中に0.03から3.0%存在し、多種多様な複雑な分子であり、油中で不溶性、可溶性、又はコロイド形態であり得る。それらは大まかに水和型及び非水和型に分けられている。・・・ 抽出の間、大半の油は、水又は蒸気処理に付され、次いで遠心分離(大半の水和性ガムを除去する)が行われる。非水和性の種類は、通常、濃縮された形態で、真空下において0.05~0.5重量%の酸(例えば、リン酸又はクエン酸)での処理により攻撃される。油と酸とをよく接触させることは重要であり、関連する品質に応じて、5~30分の間及び約80℃が求められる。」) エ 甲13に記載された事項 甲13には、以下の事項が記載されている。 (甲13-1)「The processing steps used include:winterization to remove low melting point triglycerides for clarity at lowmelting point triglycerides for clarity at low temperatures and better dryingproperties; degumming to remove phosphatides and proteinaceous materials;neutralization to remove free fatty acids and some pigments; and bleaching toremove pigments, oxidation products, trace metals, and soaps (Bimbo, 1990a,1990c).」(第571頁右欄下から8行~末行) (当審仮訳:「使用される処理工程は以下を含む:低温での清澄性及びより良い乾燥性のために低融点トリグリセリドを除去するためのウィンタリゼーション;リン脂質及びタンパク質性物質を除去するための脱ガム;遊離脂肪酸及びいくつかの色素を除去するための中和;並びに色素、酸化生成物、微量金属、及び石鹸を除去するための漂白(Bimbo、1990a、1990c)。」) オ 甲14に記載された事項 甲14には、以下の事項が記載されている。 (甲14-1)「 」(第98頁図2) (当審仮訳:「 図2.精製及び脱臭プロセス」) カ 甲15に記載された事項 甲15には、以下の事項が記載されている。 (甲15-1)「According to Greyt and Kellens (2000),degumming process was intended to remove the phosphatides and mucilaginousmaterial from crude oil by means washing with water, dilute acid or sometimesdilute NaOH.」(第322頁右欄35~39行) (当審仮訳:「Greyt及びKellens(2000)によれば、脱ガム処理は、水、希酸又は場合により希NaOHによる洗浄により粗油からホスファチド及び粘質物質を除去することを目的としていた。」) キ 甲16に記載された事項 甲16には、以下の事項が記載されている。 (甲16-1)「2・1 脱ガム 油脂中に含まれるホスファチドなどのガム質の除去を目的として行なわれる工程で,通常脱酸工程に先だって行なわれる。一般的な脱ガム方法としては,水あるいは酸の水溶液を添加混合し,沈殿したガムを除くか,除かずそのままで,アルカリ精製を行なって,生成したセッケンにガム質を吸着あるいは包含させて除去する方法がある。」(第782頁左欄20~27行) ク 甲17に記載された事項 甲17には、以下の事項が記載されている。 (甲17-1)「 」(第9頁) (当審仮訳:「10.搾油原料中にリン脂質が存在すると、製油生産にどのような影響を及ぼす? ・・・原油中では、リン脂質がソーダ化、脱色、脱臭に直接に影響するため、脱ガムの製造工程、特に物理的な精製過程で取り除き尽くさなければならない。」) ケ 甲18に記載された事項 甲18には、以下の事項が記載されている。 (甲18-1)「4.3.1 Degumming Degumming is the treatment of crude oils with water, dilute acids(phosphoric or citric acid) and , sometimes, dilute NaOH to remove thephosphatides and mucilaginous material from the crude oil.」(第83頁図下8~11行) (当審仮訳:「4.3.1 脱ガム 脱ガムは、粗油からリン脂質及び粘質物質を除去するための、水、希酸(リン酸又はクエン酸)及び、場合により、希NaOHによる粗油の処理である。」) (甲18-2)「In some acid-degumming process, sodiumhydroxide solution is added to convert the free phosphatides into theirwater-soluble sodium salts. The degree of neutralization of the acid is ofcritical importance for the efficiency of the degumming process. If the degreeof neutralization is too low, the viscosity of the phosphatides is rather high,which often makes the contimuous discharge from a centrifugal separatorprobkematical. On the other hand, too high a degree of neutralization willresult in soap formation and increased oil losses due to emulsification. 」(第88頁5~12行) (当審仮訳:「いくつかの酸-脱ガムプロセスでは、遊離リン脂質をその水溶性ナトリウム塩に変換するために、水酸化ナトリウム溶液が添加される。酸の中和の程度は、脱ガムプロセスの効率のために決定的に重要である。中和の程度が低すぎれば、リン脂質の粘度はかなり高く、それはしばしば遠心分離機からの連続的な排出を問題のあるものにする。他方、高すぎる中和の程度は、石鹸の形成及び乳化による油の損失の増大をもたらす。」) コ 甲30に記載された事項 甲30には、以下の事項が記載されている。 (甲30-1)「2.脱ガム 原油中に含まれるコロイド状懸濁物,ガム質類はアルカリ脱酸工程で油脂と石鹸溶液間のエマルジョン形成を促進する。このため脱酸工程に先立って脱ガム工程を実施することにより,脱酸工程の中性油損失を防ぎ,使用アルカリ量を節約し,副産フーツから生じる脂肪酸の性質を向上し,さらには良好な品質の中性油をえることができる。 脱ガム処理は原油からガム質を遊離させ,膨張凝固させるために,水和,加熱,薬品添加などの方法によって行なわれる。 (1)水和による脱ガム 長期間貯蔵した原油は加水しただけでは脱ガムすることが困難なので,比較的新鮮な状態で処理する必要がある。加水量はあらかじめ実験により求めるが,通常は原油の1~3%を添加し,75~80℃に加熱する。最近水の代りに蒸気を吹き込む方式も発達してきた。また従来バッチ式静置法が採用されていたが,遠心分離機を利用するDe Laval方式あるいはDuozon使用のPodbielniak方式が普及してきた。 (2)加熱による脱ガム ・・・ (3)酸による脱ガム 硫酸,塩酸,リン酸,硝酸などの無機酸あるいは酢酸,酒石酸などの有機酸を添加して脱ガムする。脱ガム機構は明らかではないが,これら添加した酸が非水和ホスファチドからCa,Mgを除去して水和ホスファチドとする作用をすると考えられている。・・・ (4)その他の脱ガム ガム質の少ない油脂に有効な方法として活性白土,活性炭などの吸着剤を使用する法,魚鯨油を2%程度の塩化ナトリウム,塩化カルシウムなどの塩類水溶液で洗浄する法,その他ギ酸アミド,グリセリン,グリコール,第三リン酸ナトリウムなどの薬品を用いる法などがある。」(第88頁右欄下から8行~第89頁左欄下から8行) (甲30-2)「3.脱酸 脱酸工程は遊離脂肪酸の除去を目的とするが,同時に原油中のガム質,色素などの不純物を除去する脱ガム,脱色作用も起こる。 (1)アルカリによる脱酸 一般にカセイソーダを使用しているが,炭酸ナトリウム,アンモニアなどが比較検討されている。」(第89頁左欄下から7行~最下行) (甲30-3)「(2)蒸留による脱酸 真空蒸留による脱酸は原理的に可能であるが,コスト高,遊離脂肪酸以外の不純物の残留,高温による色素の固定化など問題があって実用化は遅れていた。」(第90頁右欄8~11行) サ 甲48に記載された事項 甲48には、以下の事項が記載されている。 (甲48-1)「1.分離プロセスの構成 高純度化のための分離プロセスには,天然資源を工業用素材とするために高純度化するときに用いられる精製プロセス,さらに,その素材を原料にして,別の高付加価値の物質を製造するときに未反応物を回収したり,製品を高純度化するための分離精製プロセスがある。 ・・・ 1.1前精製工程 図1において,原料は製造プロセスの目的によって異なる。石油精製工業や金属精錬工業の場合は自然から発掘された天然資源が原料であり,それを精製して製品とする。 ・・・ 化学工業の場合は,一般に,他者の汎用製品を購入して,それを原料として使用する場合が多い。 しかし,市場で得られる汎用の原料の中には微量の不純物が含まれている。・・・自社のプロセスに適合する目的の原料が妥当な価格で得られる場合には,自社側には前精製工程は必要ない。 しかしながら,特別な条件を付けるとかなり高価になる場合,あるいは,入手先がいちじるしく制限されるなどで,多少の不純物を含む原料を使用した方が有利である場合,さらに,積極的に社内外の安価な副産物を原料として使用したほうが経済的に有利である場合など,主として経済的な理由から自社で予備精製してから,反応工程の原料として使用されることがある。 このような場合では前精製工程をもつことになる。前精製工程のプロセスはケース・バイ・ケースであるが,一般には蒸留や吸着のような簡単なプロセスが多い。前精製工程で精製された原料は次の反応工程に入る。」(第57頁左欄12行~第58頁左欄9行) (2)甲2に記載された発明 ア 甲2発明1 摘示(甲2-2)の記載によれば、甲2には、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物中の環境汚染物質の量を低減するための方法に関する発明が記載されており、その態様は、摘示(甲2-3)に第1の態様として記載される、揮発性作業流体を混合物に添加する態様と、摘示(甲2-4)の段落[0022]にもう1つ別の好ましい実施形態として記載される、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸を揮発性作業流体(「内部作業流体」)とする態様である。 そして、摘示(甲2-1)の[請求項3]は、摘示(甲2-4)に記載されている、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸を揮発性作業流体(すなわち「内部揮発性作業流体」)とする態様に対応しているといえるから、甲2には、摘示(甲2-1)で、[請求項1]を引用する[請求項3]として、 「環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物中の該環境汚染物質の量を低減させるための方法であって: 内部揮発性作業流体が、該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成され、 該混合物が該内部揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される過程であって、該脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が、該内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程を含むことを特徴とする方法。」(以下、「甲2発明1」という。)が記載されているといえる。 イ 甲2発明2 甲2発明1において、ストリッピング処理過程に付す食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油は、ストリッピング処理過程における供給材料として使用されていることになる。 そうすると、甲2発明1の、ストリッピング処理過程に付す食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油に着目すると、甲2には、 「環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物であって、内部揮発性作業流体が、該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される該混合物の、該混合物が該内部揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される過程であって、該脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が、該内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程における供給材料としての使用。」(以下、「甲2発明2」という。)も記載されているといえる。 ウ 甲2発明3 甲2発明1において、ストリッピング処理過程に付す食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油に着目すると、甲2には、 「環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物であって、内部揮発性作業流体が、該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される該混合物。」(以下、「甲2発明3」という。)も記載されているといえる。 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲2発明1との対比 本件発明1と甲2発明1とを対比すると、 甲2発明1の「食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物」、「該脂肪または油」及び「該混合物」は、本件発明1の「油組成物」又は「原油組成物」に相当し、 甲2発明1の「環境汚染物質」は、「脂肪又は油中に含まれる遊離脂肪酸により構成され」る「内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される」ものであると特定されていることを参酌すると、親油性の物質といえるから、本件発明1の「好ましくない成分」又は「好ましくない親油性成分」に相当し、 甲2発明1の「食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物中の該環境汚染物質の量を低減させるための方法」は、本件発明1の「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」に相当し、 甲2発明1の「該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸」との記載によれば、「該脂肪または油」は、環境汚染物質および遊離脂肪酸を含んでいるといえ、さらに、「該脂肪または油」をストリッピング処理過程に付すには、「該脂肪または油」を用意するステップがあることは明らかであるから、このステップは、本件発明1のステップ(a)と、「(a)好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップ」の点で共通し、 甲2発明1の「該混合物が該内部揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される過程であって、該脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が、該内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程」は、本件発明1のステップ(c)と、「(c)前のステップ後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップ」の点で共通し、 甲2発明1では、脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸を内部揮発性作業流体とするもので、外部からストリッピング処理過程にて、環境汚染物質と一緒に混合物から分離される流体(外部揮発性作業流体)を添加するものでないから、本件発明1と、「ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」点で一致している。 そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、 「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (c)前のステップ後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと を含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1-2> 原油組成物について、本件発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれているのに対し、甲2発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれているのか不明な点。 <相違点2-2> 好ましくない親油性成分が、本件発明1では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲2発明1では、環境汚染物質との特定に留まる点。 <相違点3-2> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲2発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点4-2> 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法が、本件発明1では、「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」を含み、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲2発明1では、この様なステップを含んでいるのか不明な点。 <相違点5-2> ステップ(c)における内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸が、本件発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲2発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点6-2> 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法が、本件発明1では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を含んでいるのに対し、甲2発明1では、この様なステップを含んでいるのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点4-2について 事案に鑑み、まず、相違点4-2について検討する。 (イ-1)甲2の記載について 本件発明1のステップ(b)には、「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させ」る工程が含まれており、それによって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和され」、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲2には、ストリッピング処理前の油組成物を「塩基を含む水性流体」と接触させることは明示的に記載されておらず、まして、水性流体に含まれる塩基の量を「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下」とし、それによって「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和される」ようにすることについては、記載も示唆もされていない。 また、甲2には、ストリッピング処理前の油組成物を「水性流体」と接触させることは明示的に記載されていないことから、実質的に(タンパク質性化合物である)「好ましくない親水性成分」を原油組成物から分離することも記載されていない。 さらに、甲2の実施例9(摘示甲2-10)には、「魚飼料の生産のために購入された魚油を、実施例1に与えられたのと同一の条件下(当審注:摘示2-7を参照すると、圧力0.001mbarの条件と解される。)に分子蒸留工程により蒸留し」たことが記載されているから、分子蒸留工程の前に特段の前処理は行われていないと解され、他の実施例を参照しても、分子蒸留工程前の魚油に「塩基を含む水性流体」との接触を含む前処理を行うことは記載も示唆もされていない。 (イ-2)脱ガム処理について 甲2(摘示2-5)には、「該脂肪または油は、上記のようにストリッピング工程における出発原料を構成する前に、1つまたはいくつかの過程において前処理されてもよい。このような前処理過程の一例は、脱臭工程である。」と記載されている。そこで、「前処理」の一つとして、当業者が上記相違点4-2に係るステップ(b)に相当する処理を行うことに容易に想到し得るか検討する。 請求人は、審判請求書(73~76頁)において、甲5(摘示甲5-1)、甲6(摘示甲6-1~甲6-3)、甲13(摘示甲13-1)、甲14(摘示甲14-1)、甲15(摘示甲15-1)、甲16(摘示甲16-1)及び甲17(摘示甲17-1)を例示し、油脂の精製において脱ガム処理を行うことは周知であったと主張し、また、審判請求書(80~81頁)において、甲15(摘示甲15-1)及び甲18(摘示甲18-1~甲18-2)を例示し、脱ガム処理としては、水、希酸、又は希NaOHにより洗浄する方法が本件優先日当時に知られていたと主張し、平成30年4月19日に提出した弁駁書(41~44頁)においても同様の主張をしている。さらに、上記弁駁書(48頁)において、甲30(摘示甲30-1)を海産油の精製における脱ガムについて記載された公知例として追加している。 そこで、上記甲号証の記載について順次検討する。 (イ-2-1)遊離脂肪酸の除去について 甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)には、脱ガム処理が、粗製の油脂に含まれる不純物のうち、リン脂質、糖、タンパク質性化合物、微量金属等を除去するための手段であることが記載されており、また、甲6(摘示甲6-1)には、脱ガム処理が物理精製による脱酸の前処理としても行われ得る処理であることが記載されている。 しかし、甲5及び甲6の上記摘示には、脱ガム処理が遊離脂肪酸を除去するための手段であることは記載されておらず、遊離脂肪酸は次工程であるアルカリ精製(中和)で除去されることが記載されている。また、上記の他の甲号証にも、脱ガム処理が遊離脂肪酸の除去を目的とする工程であることは記載されていないし、油脂に含まれる遊離脂肪酸がトリグリセリドの加水分解によって生じた高級脂肪酸であることに鑑みると、水又は希酸により洗浄する一般的な脱ガム処理の方法では、遊離脂肪酸は除去されないことも化学的な性質から明らかである。 (イ-2-2)希NaOHについて 甲15(摘示甲15-1)及び甲18(摘示甲18-1)には、脱ガム処理の方法の一つとして希NaOHにより洗浄する方法が記載されているが、甲18(摘示甲18-2)には、希NaOHを使用する目的は遊離リン脂質をその水溶性ナトリウム塩に変換することにあることが記載されており、高すぎる中和の程度は、石鹸の形成及び乳化による油の損失をもたらすことも記載されているから、仮に脱ガム処理が希NaOHにより洗浄する方法で行われるとしても、脱ガム処理は遊離脂肪酸を中和して除去することを目的とする工程ではなく、むしろ、遊離脂肪酸が中和されて石鹸が形成されることは望ましくないことと理解されていたと解するのが相当である。 (イ-2-3)親水性成分について 甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)には、脱ガム処理の次工程に当たるアルカリ精製で除去される不純物の一つとして「水溶性物質」が記載されているから、周知の脱ガム処理だけでは、粗製の油脂からタンパク質性化合物を含む「水溶性物質」がすべて除去されることはないと解される。 また、甲30(摘示甲30-2、摘示甲30-3)には、「脱ガム」に引き続いて行われる「脱酸」(アルカリによる脱酸)工程において、「脱酸工程は・・・原油中のガム質、色素などの不純物を除去する脱ガム、脱色作用も起こる」こと、及び(アルカリを用いない)「真空蒸留による脱酸は・・・遊離脂肪酸以外の不純物の残留・・・など問題があって実用化は遅れていた」ことが記載されているから、甲30の記載からも、甲5及び6に記載されたように、周知の脱ガム処理だけでは、粗製の油脂からガム質及び共存する水溶性物質(タンパク質性化合物)がすべて除去されることはないと理解できる。 これに対して、本件発明1のステップ(b)では原油組成物から「好ましくない親水性成分」である「タンパク質性化合物」が分離されるのであるから、周知の脱ガム処理と、本件発明1の「ステップ(b)」の「好ましくない親水性成分」を分離する工程とは、除去対象物が異なる別異の処理工程であると理解することができる。 (イ-2-4)加水量について 実際、甲6(摘示甲6-2)には、脱ガム処理で除去されるリン脂質等の不純物が油中に0.03~3.0%含まれること、及び甲30(摘示甲30-1)には、脱ガムにおける加水量は、通常は原油の1~3%であり、75~80℃に加熱することが記載されているから、脱ガム処理は、油中に含まれるリン脂質の量に見合った量の水を添加し、ガム質として除去する工程として理解することができる。 (イ-2-5)脱ガム処理についてのまとめ 以上の点をまとめると、上記甲号証に記載された周知の「脱ガム処理」は、仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないといえる。 (イ-3)甲2との組合せについて 甲2には、「『低品質の油』という用語は好ましくは、栄養目的ではあまり有用でなくなる大量の遊離脂肪酸を該油が含み、そしてこのような油における従来のアルカリ精製は複雑且つ経費が掛かる、ということを意味する」(摘示甲2-6)こと、及び「本発明は驚くべきことに、低品質の油として普通は分類される油を精製するために非常に効率的である。・・・該揮発性作業流体は、高含量の遊離脂肪酸を伴う少なくとも1つの海産油、例えば魚油(低品質海産油)の混合物中に含まれる遊離脂肪酸により構成され・・・同時にそして同一の方法において、該海産油中の環境汚染物質の量を減少させ、遊離脂肪酸の量を低減することが可能である」(摘示甲2-4)ことが記載されているから、甲2発明1の方法は、遊離脂肪酸を除去するための複雑かつ経費がかかるアルカリ精製を行わずとも、ストリッピング処理によって遊離脂肪酸を除去することができる点を有利な作用効果の一つとする発明であると理解できるから、甲2発明1におけるストリッピング処理の前に、遊離脂肪酸を中和、除去する工程を追加することは、甲2において積極的に動機付けられることとはいえない。 そうすると、一般に、油脂の精製において脱ガム処理が周知であり、甲2発明1におけるストリッピング処理の前処理の一つとして脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおり、当該脱ガム処理は「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないのであるから、上記相違点4-2に係る本件発明1の「ステップ(b)」に相当する構成には至らないし、かつ、甲2発明1は、ストリッピング処理の前に遊離脂肪酸を除去する動機付けを欠くものであるから、脱ガム処理を「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理に変更することに想到し得るものとも認められない。 (イ-4)請求人の主張について 請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(10~21頁)において、「無効理由に共通する技術的事項」として、「水性流体処理ステップ」に関する主張をしており、さらに同弁駁書(44~46頁)において、ステップ(b)における遊離脂肪酸濃度等について主張をしているので、以下検討する。 なお、上記弁駁書より前に請求人がした主張と重なる主張についても、併せて検討する。 (イ-4-1)水性流体処理ステップに関する本件明細書の記載について 請求人は、上記弁駁書(10~12頁)において、「『水性流体処理ステップ』とは、原油組成物を、水を主成分とする流体で処理するステップ全般を指すと解さざるを得ない」、「脱ガムも、油相に水相を加えて混合し、遠心分離によって水相を分離する操作なのだから、[0048]に記載された方法に相当する」と主張している。 ここで、本件発明1のステップ(b)は、「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含」むものである。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-2)(イ-2-1)「遊離脂肪酸の除去について」に記載したとおり、一般に、脱ガム処理は遊離脂肪酸を除去する工程とは認められない。 また、上記第6 3.(3)イ(イ-2)(イ-2-2)「希NaOHについて」に記載したとおり、仮に、脱ガム処理が、甲15(摘示甲15-1)、甲18(摘示甲18-1)に記載されたような粗油を希NaOHにより洗浄する方法で行われるとしても、その目的は遊離リン脂質を水溶性ナトリウム塩に変換することにあり、遊離脂肪酸については、中和されて石鹸が形成されることは望ましくないことと認識されていたといえるから(摘示甲18-2)、希NaOH水溶液を使用する脱ガム処理が、遊離脂肪酸の一部を除去する工程に相当するとはいえない。 さらに、上記第6 3.(3)イ(イ-2)(イ-2-3)「親水性成分について」に記載したとおり、周知の脱ガム処理と、本件発明1の「ステップ(b)」の「好ましくない親水性成分」を分離する工程とは、除去対象物が異なるものと理解することができる。 そうすると、周知の脱ガム処理は、本件発明1のステップ(b)とは異なる処理であると解することができるものであり、本件明細書の[0048]に記載された方法に相当するとはいえないものである。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-2)粗魚油の精製の技術常識について 請求人は、上記弁駁書(12~13頁)において、「本件第2次訂正発明のステップ(c)(ストリッピング処理ステップ)は、上記の一般的な精製プロセスのうち、(iv)脱酸及び(v)脱臭を一つの工程で行う場合に当たる。上記の一般的な精製プロセスにおいて、(iv)脱酸及び(v)脱臭より前に水相を使用する工程は、(ii)脱ガムのみである。以上のとおり、粗魚油の精製プロセスの技術常識を考慮すると、さらに、本件第2次訂正発明の水性流体処理ステップが脱ガムを含むことがわかる」と主張している。 ここで、本件発明1のステップ(b)は、「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含」むものである。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-2)(イ-2-1)「遊離脂肪酸の除去について」に記載したとおり、甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)には、脱ガム処理の目的が、粗製の油脂に含まれる不純物のうち、リン脂質、糖、タンパク質性化合物、微量金属等の除去であることが記載されており、遊離脂肪酸の除去は脱ガム処理の目的に含まれていない。また、遊離脂肪酸の除去を目的とする処理は、脱ガムとは別の「アルカリ精製(中和)」、「脱臭」又は「真空ストリッピング又は薄膜蒸留」であることが記載されている。 さらに、上記第6 3.(3)イ(イ-2)(イ-2-3)「親水性成分について」に記載したとおり、周知の脱ガム処理と、本件発明1の「ステップ(b)」の「好ましくない親水性成分」を分離する工程とは、除去対象物が異なるものと理解することができ、実際、甲30(摘示甲30-3)に記載されているように、周知の脱ガム処理に引き続いて「真空蒸留による脱酸」を行う場合には、脱ガム処理で除去されなかった「遊離脂肪酸以外の不純物の残留」の問題が生じるのであるから、本件発明1の方法とは異なると解される。 そうすると、「(iv)脱酸及び(v)脱臭より前に水相を使用する工程は、(ii)脱ガムのみである」といっても、「遊離脂肪酸が部分中和され」、「(タンパク質性化合物である)原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分」が分離されることを含む本件発明1のステップ(b)が、周知の脱ガムを含むとはいえない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-3)脱ガム及び脱酸で除去される水溶性成分について 請求人は、上記弁駁書(14~15頁)において、「脱ガムにおいて、水溶性又は水和性の成分は、水相に除去される」、「脱ガムは、原油組成物が最初に水相と接触する機会にあたる。したがって、水溶性又は水和性の成分の大半は、脱ガムによって除去される」、「科学的な意味では、本件明細書でも、原油組成物を水相と接触させるという慣用的な脱ガムと同一の工程が行われている。したがって、除去される成分も、何れの用語を用いるのかにかかわらず、同一である」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-4)(イ-4-2)「粗魚油の精製の技術常識について」に記載したとおり、周知の脱ガム処理は、本件発明1のステップ(b)のような「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないのであるから、本件発明1のステップ(b)は、周知の脱ガム処理と同一の処理であるとはいえない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-4)脱ガムで使用される水相について 請求人は、上記弁駁書(15~16頁)において、「脱ガムには、(i)水で行われる場合・・・(ii)希酸・・・で行われる場合及び(iii)希NaOH水溶液で行われる場合がある(甲15・・・甲18・・・)。・・・(i)ないし(iii)は、粗魚油及び脱ガムの目的に応じて使い分けられており、何れについても、当業者が選択する動機付けがある」と主張している。 しかし、甲2には、脱ガムを(iii)希NaOH水溶液で行うことの動機付けとなる目的は記載されていない。むしろ、上記第6 3.(3)イ(イ-3)「甲2との組合せについて」に記載したとおり、甲2発明1の方法は、遊離脂肪酸を除去するための複雑かつ経費がかかるアルカリ精製を行わずとも、ストリッピング処理によって遊離脂肪酸を除去することができる点を有利な作用効果の一つとする発明であると理解できるから、甲2発明1におけるストリッピング処理の前に、遊離脂肪酸を中和、除去する工程を追加することは、甲2において動機付けられるものではない。 また、仮に、脱ガム処理が甲15(摘示甲15-1)、甲18(摘示甲18-1)に記載されたような希NaOHにより洗浄する方法で行われるとしても、上記第6 3.(3)イ(イ-4)(イ-4-1)「水性流体処理ステップに関する本件明細書の記載について」に記載したとおり、脱ガムは、遊離脂肪酸を中和して除去することを目的とする工程ではなく、むしろ、遊離脂肪酸が中和されて石鹸が形成されることは望ましくないことと理解されていたのであるから(摘示甲18-2)、本件発明1のステップ(b)とは異なる処理であるといえる。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-5)脱ガムとアルカリ精製とは連続して行われることがあることについて 請求人は、上記弁駁書(16~17頁)において、「アルカリ水溶液を使用するという点で、希アルカリでの脱ガムと、アルカリ精製とは共通する。実際、脱ガムとアルカリ精製とは連続して行われることがある(甲16・・・)」、「目的に応じて、脱ガムにおいて部分的にアルカリ精製(つまり、部分中和)を行うことが合理的である」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-4)(イ-4-2)「粗魚油の精製の技術常識について」に記載したとおり、甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)には、脱ガム処理の目的が、粗製の油脂に含まれる不純物のうち、リン脂質、糖、タンパク質性化合物、微量金属等の除去であることが記載されており、遊離脂肪酸の除去は脱ガム処理の目的に含まれていない。また、遊離脂肪酸の除去を目的とする処理は、脱ガムとは別の「アルカリ精製」、「脱臭」又は「真空ストリッピング又は薄膜蒸留」であることが記載されている。 そうすると、「脱ガムとアルカリ精製とは連続して行われることがある」としても、両者は別の工程として認識されていたのであるから、甲5及び甲6を参酌しても、当業者が「脱ガムにおいて部分的にアルカリ精製(つまり、部分中和)を行うことが合理的である」ことに容易に想到し得るとは認められないし、甲2及び他の証拠の記載を参酌しても、そのようなことに容易に想到し得るものとは認められない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-6)脱ガムにおいて希NaOHにより遊離脂肪酸を部分中和する利点について(その1:風味について) 請求人は、上記弁駁書(17~20頁)において、「脱ガムにおいて部分中和が生じる程度に希NaOHを使用することには、以下の積極的な利点がある」、「脱酸として、アルカリ精製に代えてストリッピング(つまり、蒸留)が行われる場合、脱酸においてアルカリ成分との反応によって不純物を除去又は不活性化する機会が失われる。そこで、・・・脱ガムの際に希NaOHを使用する動機付けがある」と主張している。 また、請求人は、平成30年12月4日に提出した上申書(1~2頁)において、「無効理由3ないし5の主引用発明(甲2号証、甲3号証及び甲4号証の何れに記載された発明)では、脱酸の手段として、蒸留が使用されている。 遊離脂肪酸の除去が主として蒸留によって行われる場合でも、粗魚油の品質によっては、その前段(例えば、脱ガム)において、アルカリ成分を添加すること(その結果、遊離脂肪酸の一部を予め除去すること)が望ましい。・・・ ・・・製品の風味に影響する因子の除去又は不活性化をするためには、蒸留の前段である脱ガムにおいて、アルカリ成分を添加することが望まれる(弁駁書67-68頁)。その場合のアルカリ成分の量は、アルカリ精製の場合と比較して少量で足りる。」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-3)「甲2との組合せについて」に記載したとおり、甲2発明1の方法は、遊離脂肪酸を除去するための複雑かつ経費がかかるアルカリ精製を行わずとも、ストリッピング処理によって遊離脂肪酸を除去することができる点を有利な作用効果の一つとする発明であると理解できるから、甲2発明1におけるストリッピング処理の前に、遊離脂肪酸を中和、除去する工程を追加することが、甲2において動機付けられるものではない。 また、甲2(摘示甲2-5)には、ストリッピング工程の前処理過程の一例として「脱臭工程」が記載されているところ、当該脱臭工程は、「製品の風味に影響する因子を除去」する方法の一つと解されるものであるから、仮に当業者が甲2発明1において「製品の風味に影響する因子を除去」することに思い至ることがあるとしても、甲2に直接記載されている「脱臭工程」に代えて、甲2並びに上記甲5、6、13~18及び30に特段記載されていない、脱ガム処理におけるアルカリ成分の添加による方法を採用することが動機付けられるものとは認められない。 さらに、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」において検討した甲5、6、13~18及び30には、脱ガム処理が「製品の風味に影響する因子の除去又は不活性化」を目的とする工程であることは記載されていないから、脱ガム処理においてアルカリ成分を添加することが一般的なことであるとは認められない。 そうすると、仮に、脱ガムでの中和に請求人の主張するような利点があるとしても、甲2発明1の方法において、さらに「脱ガムでの部分中和」の工程を加えることは、当業者が容易に想到し得ることとは認められない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-7)脱ガムにおいて希NaOHにより遊離脂肪酸を部分中和する利点について(その2:プラントの安定稼働について) 請求人は、上記弁駁書(17~20頁)において、「脱ガムにおいて部分中和が生じる程度に希NaOHを使用することには、以下の積極的な利点がある」、「脱ガムでの部分中和には、後続のストリッピング処理に供する粗魚油中の遊離脂肪酸濃度を一定にそろえ、プラントを安定に稼働させることができるというメリットがある」と主張している。 また、請求人は、平成30年4月19日に提出した弁駁書(67頁)において、「後段の蒸留工程の安定化及びその負荷の軽減のため、脱ガム処理の際に添加するNaOHにより、遊離脂肪酸濃度を下げて一定に揃えることが望ましい。」と主張し、さらに、平成30年12月4日に提出した上申書(2頁)において、「もっとも、・・・天然由来の原料では、その品質の変動は避けがたい。その場合には、原料を受け入れた後に、前精製工程に付すことが一般的である(甲48号証57-58頁;請求人の口頭審理陳述要領書7-8頁)。・・・粗魚油については、品質の劣る(つまり、遊離脂肪酸濃度が高く、その一方で価格面では有利な)粗魚油を購入し、遊離脂肪酸濃度を一定値に揃えてから精製に付すことは、工業的には当然に行われることである。」と、証拠を追加して主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-3)「甲2との組合せについて」に記載したとおり、甲2(摘示甲2-4)には、甲2発明1の方法が「低品質の油として普通は分類される油を精製するために非常に効率的である」と記載されており、遊離脂肪酸を除去するための複雑かつ経費がかかるアルカリ精製を行わず、ストリッピング処理によって遊離脂肪酸を除去することを有利な作用効果の一つとして認識しているから、甲2発明1において低品質の魚油を粗魚油として使用する場合であっても、遊離脂肪酸の濃度をストリッピング処理以外の工程を付加することにより調整することは、甲2の記載から動機付けられることとはいえない。 また、甲48(摘示甲48-1)は石油精製工業や金属精錬工業などを含む天然資源を原料とする精製工程全般について記載された文献であるが、魚油の精製については具体的に記載されていないから、魚油の技術分野における技術常識を示す文献とは言い難く、ストリッピング前の魚油中の遊離脂肪酸の濃度を調整する具体的な方法を示唆するものともいえない。そうすると、甲48を参照しても、甲2発明1において、ストリッピング前の魚油中の遊離脂肪酸濃度を一定値に揃えることが技術常識からみて明らかであるとはできない。また、請求人が主張するようなアルカリ成分の添加により遊離脂肪酸濃度を下げるという具体的な方法が示唆されているともいえないから、甲2発明1において、ストリッピング処理の前処理の一つとして当該アルカリ成分の添加工程を追加することは、当業者が容易に想到し得たこととは認められない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (イ-4-8)NaOHによる遊離リン脂質の水溶性ナトリウム塩への変換の際に遊離脂肪酸の部分中和は必然的に起こることについて 請求人は、上記弁駁書(20~21頁)において、「遊離リン脂質を水溶性ナトリウム塩に変換する場合でも、その変換を確実にするためには、等モル量を超えた希NaOHが必要である。その結果、必然的に、遊離脂肪酸の部分中和が起きる。したがって、本件第2次訂正発明1・・・は、通常の希NaOHによる脱ガムを包含している」と主張している。 また、請求人は、平成30年9月25日に提出した口頭審理陳述要領書(6頁)において、「希NaOH水溶液を使用する場合には、遊離脂肪酸の一部が脱ガムでも除去される。」と主張し、また、平成30年12月4日に提出した上申書(2頁)において、「脱ガムにおいて、リン脂質を水溶性ナトリウム塩に変換するためには、水酸化ナトリウムの添加が望まれる。その際、水溶性ナトリウム塩への変換を確実にするため、リン脂質よりもやや過剰な水酸化ナトリウムを添加すると、過剰分の水酸化ナトリウムにより、遊離脂肪酸濃度の中和が必然的に生じる(弁駁書44-45頁)。」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-3)「甲2との組合せについて」に記載したとおり、甲2発明1の方法は、遊離脂肪酸を除去するための複雑かつ経費がかかるアルカリ精製を行わずとも、ストリッピング処理によって遊離脂肪酸を除去することができる点を有利な作用効果の一つとする発明であると理解できるから、甲2発明1におけるストリッピング処理の前に、遊離脂肪酸を中和、除去する工程を追加することは、甲2において必然的なことではなく、したがって、遊離脂肪酸濃度の中和が必然的に生じるものではない。 また、上記第6 3.(3)イ(イ-4)(イ-4-1)「水性流体処理ステップに関する本件明細書の記載について」に記載したとおり、脱ガムは、遊離脂肪酸を中和して除去することを目的とする工程ではなく、むしろ、遊離脂肪酸が中和されて石鹸が形成されることは望ましくないことと理解されていたところ(摘示甲18-2)、甲2の記載を参酌しても、甲2発明1の方法を実施するに際し、過剰な水酸化ナトリウムを添加する条件で脱ガム処理を行う必然性は認められず、したがって、遊離脂肪酸濃度の中和が必然的に生じるものではない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-4-9)ステップ(b)の遊離脂肪酸濃度について 請求人は、上記弁駁書(44~46頁)において、「甲2発明1に対し、希NaOHによる脱ガムの周知技術又は甲33号証の技術(不純物の除去又は不活性化のためにアルカリ処理による部分中和を行う技術)を適用して、分子蒸留前の遊離脂肪酸濃度を0.5-5重量%の範囲内とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張している。 しかし、甲2発明1と、希NaOHによる脱ガムの周知技術との組合せについては、上記第6 3.(3)イ(イ-4)(イ-4-1)「水性流体処理ステップに関する本件明細書の記載について」~同(イ-4-8)「NaOHによる遊離リン脂質の水溶性ナトリウム塩への変換の際に遊離脂肪酸の部分中和は必然的に起こることについて」において検討したとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。 また、請求人は無効理由4-2の証拠として甲33を提示しているが、下記第6 4.(3)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」に記載したとおり、甲33に記載された事項(下記第6 4.(1)イ「甲33に記載された事項」の摘示甲33-1~甲33-3を参照。)は、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載した、「仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、『遊離脂肪酸が部分中和され』て除去される処理には当たらない」こと((イ-2-1)「遊離脂肪酸の除去について」、(イ-2-2)「希NaOHについて」)、「脱ガム処理は、油中に含まれるリン脂質の量に見合った量の水を添加し、ガム質として除去する工程」であること((イ-2-4)「加水量について」)、「周知の脱ガム処理だけでは、粗製の油脂からガム質及び共存する水溶性物質(タンパク質性化合物)がすべて除去されることはない」こと((イ-2-3)「親水性成分について」)、という理解と矛盾するものではない。 そうすると、甲33の記載を参酌しても、甲2発明1におけるストリッピング処理の前に、遊離脂肪酸を中和、除去する工程を追加することは、甲2において積極的に動機付けられることにはならないし、仮に、甲2発明1におけるストリッピング処理の前処理の一つとして周知の脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、当該脱ガム処理は「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないのであるから、上記相違点4-2に係る本件発明1の「ステップ(b)」に相当する構成には至らない。 よって、請求人の主張を採用することはできない。 (イ-5)相違点4-2についてのまとめ 以上のことから、上記相違点4-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5、6、13~18及び30等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由3の証拠として提出した他の周知技術(甲7~12、19、20、23、31、32及び44等)を参酌しても、上記相違点4-2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明1についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (4)本件発明2~5、11~17について 本件発明2~5、11~17は、本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明2~5、11~17と甲2発明1とは、少なくとも上記第6 3.(3)ア「本件発明1と甲2発明1との対比」に記載した<相違点1-2>~<相違点6-2>の点で相違し、同イ「相違点4-2について」に記載したとおり、相違点4-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5、11~17は、いずれも甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (5)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、「原油組成物が、トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリドを原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む」ことが限定された発明である。 そうすると、本件発明6と甲2発明1とは、少なくとも上記第6 3.(3)ア「本件発明1と甲2発明1との対比」に記載した<相違点1-2>~<相違点6-2>の点で相違し、同イ「相違点4-2について」に記載したとおり、相違点4-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (6)本件発明7について ア 本件発明7と甲2発明1との対比 本件発明7は、ステップ(b)の「水性流体処理ステップ」の内容が異なることを除いて、本件発明1と同じ発明特定事項により特定される方法の発明である。そこで、上記第6 3.(3)ア「本件発明1と甲2発明1との対比」を踏まえて、本件発明7と甲2発明1とを対比すると、両者は、 「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法であって、 (a)好ましくない親油性成分および遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (c)前のステップ後の油組成物を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップであり、好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるステップと を含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点7-2> 原油組成物について、本件発明7では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれているのに対し、甲2発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物が含まれているのか不明な点。 <相違点8-2> 好ましくない親油性成分が、本件発明7では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲2発明1では、環境汚染物質との特定に留まる点。 <相違点9-2> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲2発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点10-2> 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法が、本件発明7では、「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップであり、原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」を含み、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲2発明1では、この様なステップを含んでいるのか不明な点。 <相違点11-2> ステップ(c)における内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸が、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲2発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点12-2> 油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法が、本件発明7では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を含んでいるのに対し、甲2発明1では、この様なステップを含んでいるのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点10-2について 事案に鑑み、まず、相違点10-2について検討する。 (イ-1)甲2の記載について 本件発明7のステップ(b)には、「原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させ」る工程が含まれており、当該「水性流体」は「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」するものであり、上記「水性流体と接触させ」る工程によって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲2には、ストリッピング処理前の油組成物を「実質的に塩基なしで水性流体と接触させ」ることは明示的に記載されておらず、まして、水性流体を「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」するものとすることについては、記載も示唆もされていない。 また、甲2には、ストリッピング処理前の油組成物を「水性流体」と接触させることは明示的に記載されていないことから、実質的に(タンパク質性化合物である)「好ましくない親水性成分」を原油組成物から分離することも記載されていない。 さらに、甲2の実施例9(摘示2-10)及び他の実施例を参照しても、分子蒸留工程前の魚油に「実質的に塩基なしで水性流体と接触させ」る前処理を行うことは記載も示唆もされていない。 (イ-2)脱ガム処理について 甲2(摘示2-5)には、「該脂肪または油は、上記のようにストリッピング工程における出発原料を構成する前に、1つまたはいくつかの過程において前処理されてもよい。このような前処理過程の一例は、脱臭工程である。」と記載されている。そこで、「前処理」の一つとして、当業者が上記相違点10-2に係るステップ(b)に相当する処理を行うことに容易に想到し得るか検討する。 請求人は、審判請求書及び平成30年4月19日に提出した弁駁書において、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおり主張しており、また、上記弁駁書(47~48頁)において、「原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させることは、一般的な脱ガム処理であり、・・・ストリッピング工程の前に脱ガム処理を行うことは当業者が容易に想到し得た」、「無機塩の追加は、ガム質の分離のための解乳化剤(エマルジョンブレーカー)との観点から、当業者が容易に想到し得た事項である。実際に、海産油の精製における脱ガムに塩化ナトリウムなどの無機塩を使用した公知例も存在する(甲30号証37頁左欄「(4)その他の脱ガム」(当審注:摘示甲30-1を参照。))。この公知例は、解乳化の周知技術の適用例である」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」の(イ-2-3)「親水性成分について」、及び上記第6 3.(3)イ(イ-4)「請求人の主張について」の(イ-4-3)「脱ガム及び脱酸で除去される水溶性成分について」等に記載したとおり、甲5、6、13~18及び30等の証拠に基づいて検討しても、周知の「脱ガム処理」は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないといえる。 (イ-3)甲2との組合せについて そうすると、一般に、油脂の精製において脱ガム処理が周知であり、甲2発明1におけるストリッピング処理前の油組成物の前処理の一つとして脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、当該脱ガム処理は「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないのであるから、依然として上記相違点10-2に係る本件発明7の「ステップ(b)」の構成には至らない。 (イ-4)請求人の主張について 上記第6 3.(3)イ(イ-4)「請求人の主張について」に記載したとおり、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(10~21頁)において、「第2 無効理由に共通する技術的事項」として、「水性流体処理ステップ」に関する主張をしており、また、同弁駁書(50頁)において、ステップ(b)について「遊離脂肪酸の炭素数及び重量%に限定がなされている。しかし、相違点II-2について述べたとおり、これらの限定部分は実質的な相違点ではない。」と主張しているが、本件発明1及び7に共通する主張については、上記第6 3.(3)イ(イ-4)「請求人の主張について」に記載したとおりである。 また、請求人は、上記弁駁書(50頁)において、「相違点ii、v及びxiは、審判請求書・・・(79-80頁)及び弁駁書・・・(47-49頁)で述べたとおり、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張しているが、当該審判請求書及び平成30年4月19日に提出した弁駁書(47~48頁)における請求人の主張については、上記第6 3.(6)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおりである。 請求人は、上記弁駁書(21頁)において、「解乳化剤としての塩の必要性」について主張しているので、さらに検討する。 なお、上記弁駁書より前に請求人がした主張と重なる主張についても、併せて検討する。 (イ-4-1)解乳化剤としての塩の必要性について 請求人は、上記弁駁書(21頁)において、「原油中のガム質は、エマルジョン化(乳化)性を有する(甲6・・・甲30・・・)。・・・脱ガムでは、・・・油相と水相とがエマルジョンを形成すると、両者の分離が困難となってしまう。・・・無機塩が解乳化剤として作用し、エマルジョンを破壊することは、技術常識であった(甲31・・・)。したがって、脱ガムにおいて無機塩を使用することは、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張している。 また、請求人は、令和元年4月19日に提出した弁駁書(48~49頁)において、「脱ガムは、魚油に水相を加え、水相にガム質を移動させた後、2つの相の比重差を利用して両者を分離する手法であるところ、油相と水相とがエマルジョンを形成すると、両者の分離が困難となってしまう。したがって、リン脂質によるエマルジョン化(乳化)を防ぐ必要がある。 ・・・無機塩を添加してエマルジョンを破壊する(解乳化)することは、本件優先日当時、技術常識であった(甲31号証146頁)。また無機塩を添加して有機相と水相の分離を促進させることも一般的に行われていた(甲44号証5頁)。相違点・・・は、解乳化剤としての無機塩の周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得た事項である。」と主張している。 しかし、無機塩を添加して有機相と水相の分離を促進させることが一般的に行われていたことであり、実際に甲30(摘示甲30-1)に記載されているように、魚鯨油の脱ガム処理の一手法として「2%程度の塩化ナトリウム・・・などの塩類水溶液で洗浄する法」が公知であることが認められるとしても、上記第6 3.(5)イ(イ-2)「脱ガム処理について」の(イ-2-3)「親水性成分について」等に記載したとおり、周知の脱ガム処理は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないと解されるから、仮に脱ガム処理を「塩化ナトリウム・・・などの塩類水溶液で洗浄する」方法で行うことに当業者が思い至ることができたとしても、依然として上記相違点10-2に係る本件発明7の「ステップ(b)」に相当する構成には至らない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (イ-5)相違点10-2についてのまとめ 以上のことから、上記相違点10-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5、6、13~18、30、31及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由3の証拠として提出した他の周知技術(甲7~12、19、20、23及び32等)を参酌しても、上記相違点5-2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明7についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (7)本件発明8、9について 本件発明8は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、ステップ(b)後に、「油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含ま」ないことが限定された発明である。 また、本件発明9は、本件発明8を引用し、本件発明8の発明特定事項がさらに限定された発明である。 そうすると、本件発明8、9と甲2発明1とは、少なくとも上記第6 3.(3)ア「本件発明1と甲2発明1との対比」に記載した<相違点1-2>~<相違点6-2>の点で相違し、同イ「相違点4-2について」に記載したとおり、相違点4-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (8)本件発明10について 本件発明10は、本件発明7を引用しており、本件発明7の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明10と甲2発明1とは、少なくとも上記第6 3.(6)ア「本件発明7と甲2発明1との対比」に記載した<相違点7-2>~<相違点12-2>の点で相違し、同イ「相違点10-2について」に記載したとおり、相違点10-2に係る発明特定事項については、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲2発明1及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (9)本件発明18について ア 本件発明18と甲2発明2との対比 本件発明18と甲2発明2とを対比すると、 甲2発明2の「食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物」、「該脂肪または油」及び「該混合物」は、本件発明18の「油組成物」に相当し、 甲2発明2の「環境汚染物質」は、「脂肪又は油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される」「内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される」ものであると特定されていることを参酌すると、親油性の物質といえるから、本件発明18の「好ましくない親油性成分」に相当する。 甲2発明2の「環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物であって、内部揮発性作業流体が、該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される該混合物」との記載によれば、上記「脂肪または油」は、上記「環境汚染物質」に加えて、「内部揮発性作業流体」として「遊離脂肪酸」を含んでいるといえ、さらに、甲2発明2は、「該内部揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される」ことからみて、外部からストリッピング処理過程にて、環境汚染物質と一緒に該混合物から分離される流体(外部揮発性作業流体)を添加するものでないといえるから、 甲2発明2の上記記載は、本件発明18の「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」と、「内部揮発性作業流体として遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、外部部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」の点で共通する。 甲2発明2の「該混合物が該内部揮発性作業流体とともに少なくとも1回のストリッピング処理過程に付される過程であって、該脂肪または油中に存在するある量の環境汚染物質が、該内部揮発性作業流体と一緒に該混合物から分離される過程」は、本件発明18の「好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」と、「好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」の点で共通する。 甲2発明2の「供給材料としての使用」は、本件発明18の「供給材料としての使用」に相当する。 そうすると、本件発明18と甲2発明2とは、 「内部揮発性作業流体として遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点13-2> 遊離脂肪酸について、本件発明18では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲2発明2では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点14-2> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲2発明2では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点15-2> 好ましくない親油性成分が、本件発明18では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲2発明2では、環境汚染物質との特定に留まる点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点14-2について 事案に鑑み、まず、相違点14-2について検討する。 (イ-1)甲2の記載について 上記第6 3.(3)イ(イ-1)「甲2の記載について」及び同3.(6)イ(イ-1)「甲2の記載について」に記載したとおり、甲2にはストリッピング処理前の油組成物を「水性流体」と接触させることは明示的に記載されていないことから、実質的に「親水性成分」を原油組成物から分離することも記載されていない。 さらに、甲2の実施例9(摘示2-10)及び他の実施例を参照しても、分子蒸留工程前の魚油に「水性流体と接触させ」る前処理を行うことは記載も示唆もされていない。 (イ-2)脱ガム処理について 請求人は、審判請求書(85頁)において、「本件発明1について述べたとおり、本件優先日当時には、油脂の精製における脱ガム処理の重要性が当業者に認識されており・・・油脂の精製工程の最初の段階で脱ガム工程を行うことは技術常識となっていた。 ・・・上記の技術常識に基づいてストリッピング工程の前に脱ガム処理を行い、ストリッピング工程の供給材料を好ましくない親水性成分を含まないものとすることを、当業者は容易に想到し得た。」と主張しており、また、令和元年10月11日に提出した弁駁書(53~54頁)において、「第2において詳述したとおり、本件第2訂正発明の水性流体処理ステップは、一般的な脱ガムも含む概念と解さざるをえず、・・・したがって、当業者は、甲2発明2と脱ガム処理とを組み合わせることにより、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を実質的に含まない油組成物に容易に到達し得た」と主張している。 しかし、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」及び同3.(6)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」に記載したとおり、甲5、6、13~18、30、31及び44等の証拠に基づいて検討しても、周知の「脱ガム処理」は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分」をストリッピング処理前の油組成物から分離する処理には当たらないといえる。 (イ-3)甲2との組合せについて そうすると、一般に、油脂の精製において脱ガム処理が周知であり、甲2発明2におけるストリッピング処理前の油組成物の前処理の一つとして脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、当該脱ガム処理は「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分」を油組成物から分離する処理には当たらないのであるから、依然として上記相違点14-2に係る「好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まない」油組成物の構成には至らない。 (イ-4)請求人の主張について 請求人は、平成30年4月19日に提出した弁駁書(54頁)及び平成30年9月25日に提出した口頭審理陳述要領書(6頁)においても、脱ガム処理について主張しているが、上記第6 3.(9)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおり、周知の「脱ガム処理」は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分」をストリッピング処理前の油組成物から分離する処理には当たらないから、仮に甲2発明2と脱ガム処理との組合せに当業者が思い至ることができたとしても、依然として上記相違点14-2に係る「好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まない」油組成物の構成には至らない。 よって、請求人の主張は採用できない。 (イ-5)相違点14-2についてのまとめ 以上のことから、上記相違点14-2に係る発明特定事項については、甲2発明2及び周知技術(甲5、6、13~18、30、31及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由3の証拠として提出した他の周知技術(甲7~12、19、20、23及び32等)を参酌しても、上記相違点8-2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明18についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は甲2発明2及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (10)本件発明19について ア 本件発明19と甲2発明3との対比 本件発明19と甲2発明3とを対比すると、甲2発明3の「食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物」、「該脂肪または油」及び「該混合物」は、本件発明19の「油組成物」に相当する。 また、甲2発明3の「環境汚染物質を含有する、食用であるかまたは化粧品中に用いるための脂肪または油を含む混合物であって、内部揮発性作業流体が、該環境汚染物質を含有する該脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸により構成される該混合物」との記載によれば、「内部揮発性作業流体」は、「脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸」という親油性の物質であって、「環境汚染物質」を脂肪または油中から分離するための作業流体であるといえるから、上記「環境汚染物質」は、本件発明19の「好ましくない親油性成分」に相当する。 さらに、甲2発明3は、脂肪または油中に含まれる遊離脂肪酸を内部揮発性作業流体とするものであり、外部から、ストリッピング処理過程にて環境汚染物質と一緒に分離される流体(外部揮発性作業流体)を添加するものではない。 そうすると、本件発明19と甲2発明3とは、 「内部揮発性作業流体として遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点16-2> 遊離脂肪酸について、本件発明19では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲2発明2では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点17-2> 油組成物が、本件発明19では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲2発明3では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点18-2> 好ましくない親油性成分が、本件発明19では、臭素化難燃剤であるのに対し、甲2発明3では、環境汚染物質との特定に留まる点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点17-2について 事案に鑑み、まず、相違点17-2について検討する。 相違点17-2は、上記第6 3.(9)ア「本件発明18と甲2発明2との対比」に記載した相違点14-2と実質的に同じ内容であるから、同イ「相違点14-2について」に記載したとおりである。 よって、相違点17-2に係る発明特定事項については、甲2発明3及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由3の証拠として提出した他の周知技術(甲7~12、19、20、23及び32等)を参酌しても、上記相違点17-2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明19についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明19は甲2発明3及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (11)無効理由3(進歩性:甲第2号証)についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~19は、いずれも甲第2号証に記載された発明及び周知技術(甲5~20、23、30~32及び44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものではない。 4.無効理由4-2(進歩性:甲第3号証)について 無効理由4-2は、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28、30~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。 (1)甲号証に記載された事項 ア 甲3に記載された事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3-1)「2.特許請求の範囲 1.魚油を分子蒸留し、得られた揮発性成分を溶剤で結晶化せしめることを特徴とするコレステロールの分離精製法。 2.溶剤がヘキサン、メタノール、アセトン、酢酸エチルから選ばれた有機溶剤である特許請求の範囲第1項記載のコレステロールの分離精製法。」(第1頁左下欄特許請求の範囲) (甲3-2)「3.発明の詳細な説明 〔産業上の利用分野〕 本発明はコレステロールの分離精製法に関し、更に詳細には、魚油から効率よくコレステロールを分離精製する方法に関する。 〔従来の技術およびその問題点〕 近年、魚油から分離されるコレステロールは、養魚飼料添加物、化粧品原料、医薬品原料あるいは液晶原料として需要が盛んになってきた。 従来、魚油からコレステロールを得るには、魚油を苛性ソーダ等のアルカリ水溶液と混合後、遠心分離してセッケン層と油層(脱酸油)に分離して得られるセッケン層を原料とする方法が行われていた。・・・ しかしながら、この方法は工程が多く操作が煩雑であると共に、遠心分離による分離性を向上させるために加熱が不可欠であるため加水分解が惹起し、またセッケン層と油層を完全に分離することが困難なため脱酸油及びコレステロールの収率が低いという欠点があつた。 〔問題点を解決するための手段〕 斯かる実状において、本発明者は鋭意研究を行った結果、魚油を分子蒸留すれば容易に脱臭された脱酸油と揮発性成分とに分離することかでき、しかもこの揮発性成分中には高濃度(約35%)でコレステロールが含まれているので、これから簡単な操作でコレステロールを高収率で収得できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は魚油を分子蒸留し、得られた揮発性成分を溶剤で結晶化せしめることを特徴とするコレステロールの分離精製法を提供するものである。」(第1頁左下欄12行~第2頁左上欄第12行) (甲3-3)「本発明方法を実施するには、まず魚油を分子蒸留し、揮発成分を得る。魚油としては、煮取法、圧搾法、アルカリ分解法、自己消化法、溶剤抽出法等通常の採油方法により得たものが好ましく、特に、公知の手段により脱ガム処理されているものが好ましい。また、魚油原料の魚としては、いわし、さば、さんま、にしん、メンヘーデン、すけとうたら、まだら等の魚類;オキアミ等の甲殻類;スルメイカ、ムラサキイカ等の頭足類等が挙げられる。また分子蒸留は、薄膜流下式、遠心式等の装置を用い、真空度1×10-3~1×10-2mmHgで、温度200~250℃に加熱する条件でおこなわれる。この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分と共に、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に濃縮される。なお、上記加熱温度が200℃より低い場合はコレステロールの収率が悪くなり、また250℃を超えた場合は魚油中のトリグリセライドの揮発が起り、脱酸油の収率が悪くなる。」(第2頁左上欄第13行~右上欄第11行) (甲3-4)「〔発明の効果〕 叙上の如く、本発明方法によれば、魚油から簡単な操作で高収率にてコレステロールを分離精製できると共に、更に分子蒸留によって得られる一方の脱酸油は、酸価、不ケン化物含量の何れにおいても従来品に比べて1/2であり、またコレステロール含量も極めて低く、しかも魚油特有の不快臭もないという利点を有する。」(第2頁右上欄19行~左下欄6行) (甲3-5)「〔実施例〕 次に実施例を挙げて説明する。 実施例 (I)脱ガム処理した沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)15Kgを下記条件下分子蒸留処理を行つた。 装置:遠心式分子蒸留装置 MS380型(日本車輌(株)製、蒸発皿半径380mm) 加熱温度:220℃ 試料油流量:20L/H 蒸発皿回転数 2,000rpm 真空度 5×10-2mmHg この結果、残留区分として14.5Kgの脱酸イワシ油*、および、揮発性留分として0.45Kgの常温で半固体の油状物(コレステロール含量35.0%)が得られた。なお、ここで得られた脱酸イワシ油の収率も97%で、従来法の90-95%に比べ高い収率であった。 * 脱酸イワシ油は、酸価0.2不ケン化物含量0.6%、コレステロール含量0.5%であり、従来法による数値と較べ、いずれも約1/2と低く、また魚油特有の不快臭のない良質のものであった。」(第2頁左下欄7行~右下欄第11行) イ 甲33に記載された事項 甲33には、以下の事項が記載されている。 (甲33-1)「アルカリ精製法は古くから油脂の精製法として用いられ、現在でも広汎に採用されている精製法である。この方法を大豆原油などガム質を多く含む油脂に適用するときにはまず脱ガム処理が施される。脱ガム処理は通常水あるいは酸類その他の薬品類を原油に加えてガム質を水和、析出させ、遠心分離等でこれらガム質を油から分離することによつて行なわれる。 しかしながら一般にこの脱ガム工程のみではガム質は十分には除ききれず、一部はなお油中に残存する。次いでこの脱ガム油を必要によりリン酸処理などの酸処理を施したのち、これにアルカリ水溶液を加えて遊離脂肪酸を中和させるいわゆる脱酸工程に移るのであるが、ここではアルカリは中和と同時に、油中に残存するガム質をケン化ならびに水和、析出させる働きを有している。 このアルカリ処理を経て油中のガム質は十分に除かれるので、以降油中のガム質が油の品質に悪影響を及ぼすことはまずなくなる。」(第1頁右欄8~26行) (甲33-2)「一方水蒸気精製法では原油をそのままあるいは脱ガム処理して直ちに脱色、脱臭(脱酸を兼ねた)を行うので、アルカリ精製の場合のような付着ロス、鹸化ロス、洗浄ロス等は発生しないうえ、排水も全く生じないから、これらの面ではアルカリ精製法に比べて極めて有利な方法といえる。しかしながら、アルカリ精製法の場合のよりに残存ガム質を更に十分に除去する工程がないので、水蒸気精製法による場合には脱ガス処理を十分に行い、ガム質を油中に殆ど残存させないことが必要不可欠である。しかしながら前記の程度に脱ガムを行うことは実際にはかなり難しく、酸類、塩類等各種の脱ガム剤を種々用いても必らずしも常に十分な脱ガムが行えるとは限らなかつた。その上たとえガム質の除去は十分で、脱色、脱臭後の製品は見た目には正常と思われる場合でも、その製品の風味、特に油を加熱したときに生ずる風味(いわゆる加熱臭のため)は著しく劣るケースが少なからずあり、この点でも未解決の問題を含んでいる。 また本来ガム質を多く含まない油脂、例えばパーム油、ラード等の場合にも、製品の風味、加熱臭等は水蒸気精製法によるものがアルカリ精製法によるものよりも劣る場合が多い。このような観点からみると、アルカリの使用は残存ガム質の除去ばかりでなく、製品の風味に影響するその他の因子の除去あるいは不活性化に極めて役立つているであろうと推定される。」(第2頁左欄30行~右欄13行) (甲33-3)「イ 原油の脱ガム これは常法による脱ガム工程であり、方法、条件などは通常行われている方法と同じである。脱ガム剤としては通常の水(生蒸気も含む)のほかに有機、無機の酸類、アルカリ等通常脱ガム剤として知られているものはいずれも使用でき、使用する量は原油の種類、性状により通常0.01~5%(対油重量)である。これら脱ガム剤により水和、析出したガム質は、常法により遠心分離等で油から分離される。この工程では後の工程への負荷を減らす意味から、可能な限りガム質を除去しておくことが望ましい。ただし処理すべき原油中のガム質の量やその性質によつてはこの工程を省略し、次のロまたは(2)の工程から始めてもよい。」(第3頁左欄6~21行) (2)甲3に記載された発明 ア 甲3発明1 摘示(甲3-1)の「特許請求の範囲」及び摘示(甲3-2)の「〔産業上の利用分野〕」の記載によれば、甲3は「コレステロールの分離精製法に関し、更に詳細には、魚油から効率よくコレステロールを分離精製する方法に関する」ものであるが、摘示(甲3-3)の「この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分と共に、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に濃縮される。なお、上記加熱温度が・・・250℃を超えた場合は魚油中のトリグリセライドの揮発が起こり、脱酸油の収率が悪くなる。」との記載や、摘示(甲3-4)の「更に分子蒸留によって得られる一方の脱酸油は、酸価、不ケン化物含量の何れにおいても従来品に比べて1/2であり、またコレステロール含量も極めて低く、しかも魚油特有の不快臭もないという利点を有する。」及び摘示(甲3-5)の「脱酸イワシ油は、酸価0.2不ケン化物含量0.6%、コレステロール含量0.5%であり、従来法による数値と較べ、いずれも約1/2と低く、また魚油特有の不快臭のない良質のものであった」との記載によれば、甲3には、魚油からコレステロールを分離精製した後の「脱酸油(脱酸イワシ油)」の取得も意図しているといえる。 ここで、摘示(甲3-5)の「実施例」のうち、「脱酸油(脱酸イワシ油)」の取得に着目すると、甲3には、 「(I)脱ガム処理した沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)15Kgを分子蒸留処理し、揮発性留分として0.45Kgの常温で半固体の油状物(コレステロール含量35.0%)を除去した、残留区分として14.5Kgの脱酸イワシ油(酸価0.2不ケン化物含量0.6%、コレステロール含量0.5%)の脱酸イワシ油を得る方法。」(以下、「甲3発明1」という。)が記載されているといえる。 イ 甲3発明2 甲3発明1において、分子蒸留処理に付す脱ガム処理した沿岸イワシ粗油は、分子蒸留処理における供給材料として使用されていることになる。 そうすると、甲3発明1の、分子蒸留処理に付す脱ガム処理した沿岸イワシ粗油に着目すると、甲3には、 「脱ガム処理した沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)の、分子蒸留処理における供給材料としての使用。」(以下、「甲3発明2」という。)も記載されているといえる。 ウ 甲3発明3 甲3発明1において、分子蒸留処理に付す脱ガム処理した沿岸イワシ粗油に着目すると、甲3には、 「脱ガム処理した沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)。」(以下、「甲3発明3」という。)も記載されているといえる。 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明1との対比 本件発明1と甲3発明1とを対比すると、 甲3発明1の「沿岸イワシ粗油」は、本件発明1の「油組成物」又は「原油組成物」に相当し、 甲3発明1の「分子蒸留処理」は、本件発明1の「ストリッピング処理ステップ」に相当し、 脱ガム処理は、油を水又は蒸気と接触させ、遠心分離するという操作が行われる(例えば、甲6(摘示甲6-3))ものであるから、甲3発明1の「脱ガム処理」は、水を用いる処理である点で本件発明1の「水性流体処理ステップ」と共通するとともに、甲3発明1は、本件発明1のステップ(b)と、「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の点で共通するステップを有しているといえ、 摘示(甲3-3)の「この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分と共に、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に濃縮される。」との記載によれば、甲3発明1の「沿岸イワシ粗油」は、本件発明1の「遊離脂肪酸」に相当する「脂肪酸」を含むものであり、また、沿岸イワシ粗油を分子蒸留処理するには、分子蒸留処理前に沿岸イワシ粗油を用意するステップがあることは明らかであるから、甲3発明1は、本件発明1のステップ(a)と、「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップ」の点で共通するステップを有しているといえ、 甲3発明1は、分子蒸留処理の際に脂肪酸が蒸留されるものであるから、甲3発明1は、本件発明1のステップ(c)と、「(c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップ」の点で共通し、 甲3発明1では、分子蒸留処理の前に何の流体も沿岸イワシ粗油に添加していないから、本件発明1と、「ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」点で一致している。 そうすると、本件発明1と甲3発明1とは、 「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップを含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1-3> 方法について、本件発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのに対し、甲3発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのか不明な点。 <相違点2-3> 原油組成物が、本件発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲3発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点3-3> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲3発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点4-3> ステップ(b)について、本件発明1では、「炭素数16から22の遊離脂肪酸」が「内部揮発性作業流体」とされていると共に、「原油組成物中に存在する(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であり、「ここでステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲3発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体であるのか不明であると共に、この様なステップを含むのか不明な点。 <相違点5-3> ステップ(c)について、本件発明1では、「(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離される」のに対し、甲3発明1では、臭素化難燃剤である好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるのか不明な点。 <相違点6-3> 方法について、本件発明1では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を有するのに対し、甲3発明1では、この様なステップを有するのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点2-3について 事案に鑑み、まず、相違点2-3について検討する。 例えば、油脂の精製について記載された甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)を参照すると、沿岸イワシ粗油にはリン脂質、タンパク質性化合物等の不純物が含まれていることが明らかであり、また、上記第6 2.(4)エ(エ-1)「イワシ原油に臭素化難燃剤が含まれることについて」及び同(エ-2)「臭素化難燃剤が『好ましくない親油性成分』であることについて」に記載したとおり、沿岸イワシ粗油には臭素化難燃剤等の「好ましくない親油性成分」が含まれていたといえる。 そうすると、相違点2-3は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点4-3について (ウ-1)甲3の記載について(脱ガム処理について) 上記相違点4-3に係る本件発明1のステップ(b)には、「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させ」る工程が含まれており、それによって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和され」、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲3発明1は沿岸イワシ粗油の「脱ガム処理」を含む方法であるところ、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」に記載したとおり、甲5、6、15、17及び30等の証拠に基づいて検討しても、周知の「脱ガム処理」は、仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないといえる。 また、上記証拠に加えて、請求人は無効理由4-2の証拠として甲33を提示しているが、甲33には、「脱ガム剤としては通常の水・・・のほかに有機、無機の酸類、アルカリ等通常脱ガム剤として知られているものはいずれも使用でき、使用する量は原油の種類、性状により通常0.01~5%(対油重量)である」こと(摘示甲33-3)、及び「一般にこの脱ガム工程のみではガム質は十分に除ききれ」ないこと(摘示甲33-1)が記載されているところ、これらの記載は、上記第6 3.(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」に記載した、「仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、『遊離脂肪酸が部分中和され』て除去される処理には当たらない」こと((イ-2-1)「遊離脂肪酸の除去について」、(イ-2-2)「希NaOHについて」)、「脱ガム処理は、油中に含まれるリン脂質の量に見合った量の水を添加し、ガム質として除去する工程」であること((イ-2-4)「加水量について」)、「周知の脱ガム処理だけでは、粗製の油脂からガム質及び共存する水溶性物質(タンパク質性化合物)がすべて除去されることはない」こと((イ-2-3)「親水性成分について」)、という理解と矛盾するものではないから、甲33の記載を参酌しても、甲3発明1の「脱ガム処理」は、仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないといえる。 (ウ-2)甲3との組合せについて 甲3(摘示甲3-2)には、従来の技術及びその問題点について、「従来、魚油からコレステロールを得るには、魚油を苛性ソーダ等のアルカリ水溶液と混合後、遠心分離してセッケン層と油層(脱酸油)に分離して得られるセッケン層を原料とする方法が行われていた。・・・しかしながら、この方法は工程が多く操作が煩雑であると共に、遠心分離による分離性を向上させるために加熱が不可欠であるため加水分解が惹起し、またセッケン層と油層を完全に分離することが困難なため脱酸油及びコレステロールの収率が低いという欠点があつた。」と記載され、当該課題を解決するため、甲3発明1は、「魚油を分子蒸留すれば容易に脱臭された脱酸油と揮発性成分とに分離することかでき、しかもこの揮発性成分中には高濃度(約35%)でコレステロールが含まれているので、これから簡単な操作でコレステロールを高収率で収得できることを見出し、本発明を完成した」ものであることが記載されている。 そうすると、甲3発明1の方法は、魚油に含まれる遊離脂肪酸を、「苛性ソーダ等のアルカリ水溶液と混合後、遠心分離してセッケン層と油層(脱酸油)に分離」する方法に代えて、魚油を「分子蒸留」する方法を採用したことにより、「操作が煩雑」で「脱酸油及びコレステロールの収率が低い」いう従来技術の課題を解決した発明であると理解できるから、甲3発明1における分子蒸留の前に、遊離脂肪酸を「アルカリ水溶液と混合後、遠心分離」して脱酸油を得る工程を追加することは、甲3において積極的に動機付けられることとはいえない。 そうすると、一般に、油脂の精製において脱ガム処理が周知であり、甲3発明1における分子蒸留の前処理の一つとして脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、上記第6 4.(3)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」に記載したとおり、当該脱ガム処理は「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないのであるから、上記相違点4-3に係る本件発明1の「ステップ(b)」に相当する構成には至らないし、かつ、甲3発明1は、分子蒸留の前に遊離脂肪酸を除去する動機付けを欠くものであるから、脱ガム処理を「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理に変更することに想到し得るものとも認められない。 (ウ-3)請求人の主張について 請求人は、審判請求書(90~93頁)等において、本件発明1と甲2発明1との対比において主張していることと同様の主張をしているが、上記第6 3.(3)イ(イ-4)「請求人の主張について」における検討を踏まえると、請求人の主張はいずれも採用できない。 また、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(69~70頁)において、ステップ(b)の遊離脂肪酸濃度等について、「甲3発明1に対し、希NaOHによる脱ガムの周知技術又は甲33号証の技術(不純物の除去又は不活性化のためにアルカリ処理による部分中和を行う技術)を適用して、相違点III-3の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張している。 しかし、甲3発明1と、希NaOHによる脱ガムの周知技術との組合せについては、上記第6 4.(3)ウ「相違点4-3について」に記載したとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ-4)相違点4-3についてのまとめ 以上のことから、上記相違点4-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲5、6、15、17、30及び33等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由4-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、31、32、34、35及び39~44等)を参酌しても、上記相違点4-3に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 エ 本件発明1についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (4)本件発明2~5、11~17について 本件発明2~5、11~17は、本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明2~5、11~17と甲3発明1とは、少なくとも上記第6 4.(3)ア「本件発明1と甲3発明1との対比」に記載した<相違点1-3>~<相違点6-3>の点で相違し、同ウ「相違点4-3について」に記載したとおり、相違点4-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5、11~17は、いずれも甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (5)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、「原油組成物が、トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリドを原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む」ことが限定された発明である。 そうすると、本件発明6と甲3発明1とは、少なくとも上記第6 4.(3)ア「本件発明1と甲3発明1との対比」に記載した<相違点1-3>~<相違点6-3>の点で相違し、同ウ「相違点4-3について」に記載したとおり、相違点4-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (6)本件発明7について ア 本件発明7と甲3発明1との対比 本件発明7は、ステップ(b)の「水性流体処理ステップ」の内容が異なることを除いて、本件発明1と同じ発明特定事項により特定される方法の発明である。そこで、上記第6 4.(3)ア「本件発明1と甲3発明1との対比」を踏まえて、本件発明7と甲3発明1とを対比すると、両者は、 「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップを含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点7-3> 方法について、本件発明7は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのに対し、甲3発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのか不明な点。 <相違点8-3> 原油組成物が、本件発明7では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲3発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点9-3> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲3発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点10-3> ステップ(b)について、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体とされていると共に、「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であり、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲3発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体であるのか不明であると共に、この様なステップを含むのか不明な点。 <相違点11-3> ステップ(c)について、本件発明7では、「(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離される」のに対し、甲3発明1では、臭素化難燃剤である好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるのか不明な点。 <相違点12-3> 方法について、本件発明7では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を有するのに対し、甲3発明1では、この様なステップを有するのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点8-3について 事案に鑑み、まず、相違点8-3について検討する。 上記第6 4.(3)イ「相違点2-3について」に記載したとおり、沿岸イワシ粗油にはリン脂質、タンパク質性化合物等の不純物が含まれていることが明らかであり、また、沿岸イワシ粗油には臭素化難燃剤等の「好ましくない親油性成分」が含まれていたといえる。 そうすると、相違点8-3は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点10-3について (ウ-1)甲3の記載について(脱ガム処理について) 本件発明7のステップ(b)には、「原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させ」る工程が含まれており、当該「水性流体」は「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」するものであり、上記「水性流体と接触させ」る工程によって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲3発明1は沿岸イワシ粗油の「脱ガム処理」を含む方法であるが、上記第6 3.(6)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」、同(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」及び第6 4.(3)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」~同(ウ-3)「請求人の主張について」に記載したとおり、甲5、6、15、17、30、31、33及び44等の証拠に基づいて検討しても、周知の「脱ガム処理」は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないといえる。 また、甲3(摘示甲3-3)には、分子蒸留に供する魚油について、「魚油としては、煮取法、圧搾法、アルカリ分解法、自己消化法、溶剤抽出法等通常の採油方法により得たものが好ましく、特に、公知の手段により脱ガム処理されているものが好ましい」ことが記載されているが、「脱ガム処理」以外に列記されている採油方法も、いずれも上記本件発明7の「ステップ(b)」に相当する水性流体処理を含むものとは認められない。 よって、甲3の記載に基づいて、当業者が相違点10-3に係る発明特定事項を採用することが動機付けれられるものではない。 (ウ-2)請求人の主張について 請求人は、平成30年4月19日に提出した弁駁書(84~85頁)等において、本件発明7と甲2発明1との対比において主張していること(47~49頁)と同様の主張をしており、また、令和元年10月11日に提出した弁駁書(73~74頁)において、ステップ(b)について、「前述のとおり、脱ガムでは、酸又はアルカリなしの水相も使用される・・・甲30・・・。脱ガムを塩基なしの水相で行う場合、脱ガムによっても遊離脂肪酸濃度は変わらない。・・・本件第2次訂正発明7の濃度範囲(0.5-5重量%)は、・・・脱ガムによって当然に実現するものにすぎない」、「甲3発明1に解乳化剤としての無機塩の周知技術を適用して、塩化ナトリウムなどの無機塩を添加することは、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張している。 しかし、上記第6 3.(6)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」における検討を踏まえると、請求人の主張はいずれも採用できない。 (ウ-3)相違点10-3についてのまとめ 以上のことから、上記相違点10-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲5、6、15、17、30、31、33及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由4-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、32、34、35及び39~43等)を参酌しても、上記相違点10-3に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 エ 本件発明7についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (7)本件発明8、9について 本件発明8は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、ステップ(b)後に、「油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含ま」ないことが限定された発明である。 また、本件発明9は、本件発明8を引用し、本件発明8の発明特定事項がさらに限定された発明である。 そうすると、本件発明8、9と甲3発明1とは、少なくとも上記第6 4.(3)ア「本件発明1と甲3発明1との対比」に記載した<相違点1-3>~<相違点6-3>の点で相違し、同ウ「相違点4-3について」に記載したとおり、相違点4-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8、9は、いずれも甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (8)本件発明10について 本件発明10は、本件発明7を引用しており、本件発明7の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明10と甲3発明1とは、少なくとも上記第6 4.(6)ア「本件発明7と甲3発明1との対比」に記載した<相違点7-3>~<相違点12-3>の点で相違し、同ウ「相違点10-3について」に記載したとおり、相違点10-3に係る発明特定事項については、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲3発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (9)本件発明18について ア 本件発明18と甲3発明2との対比 本件発明18と甲3発明2とを対比すると、甲3発明2の「沿岸イワシ粗油」、「分子蒸留処理」は、それぞれ、本件発明18の「油組成物」、「ストリッピング処理ステップ」に相当する。 また、摘示(甲3-3)の「この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分と共に、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に濃縮される。」との記載によれば、甲3発明2の「沿岸イワシ粗油」は、本件発明18の「遊離脂肪酸」に相当する「脂肪酸」を含むものである。 さらに、甲3では、沿岸イワシ粗油に分子蒸留処理の前に何の流体も添加していないから、甲3発明2の沿岸イワシ粗油は、外部揮発性作業流体を実質的に含んでいない。よって、甲3発明2の「沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)」は、本件発明18の「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」と、「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」の点で共通している。 加えて、甲3発明2は、分子蒸留処理の際に脂肪酸が蒸留されるものであるから、甲3発明2の「分子蒸留処理」は、本件発明18の「好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」と、「遊離脂肪酸を油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」の点で共通する。 甲3発明2の「供給材料としての使用」は、本件発明18の「供給材料としての使用」に相当する。 そうすると、本件発明18と甲3発明2とは、 「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、遊離脂肪酸を油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点13-3> 遊離脂肪酸について、本件発明18では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲3発明2では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点14-3> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲3発明2では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点15-3> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲3発明2では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点16-3> ストリッピング処理ステップについて、本件発明18では、(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのものであるのに対し、甲3発明2では、(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのものであるのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点14-3について 事案に鑑み、まず、相違点14-3について検討する。 (イ-1)甲3の記載について(脱ガム処理について) 上記第6 4.(3)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」及び同(6)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」に記載したとおり、甲3発明2の「脱ガム処理」は、甲5、6、15、17、30、31、33及び44等の証拠に基づいて検討しても、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分」を沿岸イワシ粗油から分離する処理には当たらないといえる。 (イ-2)請求人の主張について 請求人は、審判請求書(111~112頁)等において、「本件明細書において、親水性成分の分離について、特殊な手法が用いられているわけではない。・・・本件発明18の『好ましくない親水性成分を実質的に含まない』とは、粗魚油の通常の脱ガム処理によって得られる状態も包含するものと解さざるを得ない。」と主張しており、また、令和元年10月11日に提出した弁駁書(78~79頁)において、「相違点XI-3に関して詳述したとおり、脱ガムは、好ましくない水溶性又は水和性成分を除去することを目的として行われる工程であるのだから、甲3発明2のイワシ粗油も、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を実質的に含まない」と主張している。 しかし、上記第6 4.(3)ウ(ウ-3)「請求人の主張について」及び同(6)ウ(ウ-2)「請求人の主張について」における検討を踏まえると、請求人の主張はいずれも採用できない。 (イ-3)相違点14-3についてのまとめ 以上のことから、上記相違点14-3に係る発明特定事項については、甲3発明2及び周知技術(甲5、6、15、17、30、31、33及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由4-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、32、34、35及び39~43等)を参酌しても、上記相違点14-3に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明18についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明18は甲3発明2及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (10)本件発明19について ア 本件発明19と甲3発明3との対比 本件発明19と甲3発明3とを対比すると、甲3発明3の「沿岸イワシ粗油」は、本件発明19の「油組成物」に相当する。 また、摘示(甲3-3)の「この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分と共に、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に濃縮される。」との記載によれば、甲3発明3の「沿岸イワシ粗油」は、本件発明19の「遊離脂肪酸」に相当する「脂肪酸」を含むものである。 さらに、甲3では、沿岸イワシ粗油に分子蒸留処理の前に何の流体も添加していないから、甲3発明3のイワシ粗油は、外部揮発性作業流体を実質的に含んでいない。 よって、甲3発明3の「沿岸イワシ粗油(酸価3.8,不ケン化物含量2.0%,コレステロール含量1.8%)」は、本件発明19の「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」と、「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」の点で共通している。 そうすると、本件発明19と甲3発明3とは、 「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点17-3> 遊離脂肪酸について、本件発明19では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲3発明3では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点18-3> 油組成物が、本件発明19では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲3発明3では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点19-3> 油組成物が、本件発明19では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲3発明3では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点18-3について 事案に鑑み、まず、相違点18-3について検討する。 相違点18-3は、上記第6 4.(9)ア「本件発明18と甲3発明2との対比」に記載した相違点14-3と実質的に同じ内容であるから、同イ「相違点14-3について」に記載したとおりである。 よって、相違点18-3に係る発明特定事項については、甲3発明3及び周知技術(甲5、6、15、17、30、31、33及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由4-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、32、34、35及び39~43等)を参酌しても、上記相違点18-3に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 ウ 本件発明19についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明19は甲3発明3及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (11)無効理由4-2(進歩性:甲第3号証)についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1~19は、いずれも甲第3号証に記載された発明及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28、30~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものではない。 5.無効理由5-1(新規性:甲4号証)及び無効理由5-2(進歩性:甲第4号証)について 無効理由5-1は、本件の請求項18、19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。 無効理由5-2は、本件の請求項1ないし19に係る発明についての特許は、各請求項に係る発明が、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第2、5~10、15、17、20~26、28~35、39~44号証等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、同法同条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである、というものである。 (1)甲4に記載された事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4-1)「[0001]本発明は、乳化化粧料に関する。詳しくは、コレステロールを含有しながら、べたつきが少なく、のびが良い、使用感触の軽い乳化化粧料に関する。 背景技術 [0002]コレステロールはリポタンパク、生体膜の構成成分として必須であるため、ほとんどすべての動物組織中に認められる。そしてその用途は、飼料添加物、香粧品原料、液晶原料、医薬原料など多岐にわたっている。このうち香粧品原料、液晶原料、医薬原料として用いられる場合は、特に純度の高いコレステロールが要求される。 コレステロールは化粧品成分としては、油剤、エモリエント剤、皮膚コンディショニング剤、乳化剤、親油性増粘剤として使われている。角質層に潤いを与え、肌を柔らかくする成分としても、広く使用されている(特許文献1、2等)。 コレステロールとしては、羊毛脂を原料とするラノリンコレステロール、牛、豚の脳脊髄から抽出するもの、魚由来のものが知られている(特許文献3)。化粧料分野では、ラノリンコレステロールが最も広く利用されている。」 (甲4-2)「発明が解決しようとする課題 [0004]本発明は、コレステロールを含有しながら、べたつきがなくさらっとした軽い使用感触の、乳化タイプの化粧料を提供することを課題とする。コレステロールは角質層に潤いを与え、肌を柔らかくする成分としてクリームなどに用いられる。しっとりするのは良いが、使用時にべたつきがあると感じられることがあり、さっぱりした使用感に仕上げたい化粧料には添加しにくい場合があった。 課題を解決するための手段 [0005]化粧品に用いられるコレステロールはほとんどが、ラノリン由来のコレステロールである。本願はあまり利用されていなかった魚由来のコレステロールの性質を調べる中で、主成分は同じコレステロールであるが、由来が異なるとその物性に差があることを見出し、本発明を完成させた。」 (甲4-3)「[0008]本発明において、魚由来コレステロールとは、魚類から得られるコレステロールである。通常、魚油の精製工程においてコレステロール画分を得、それを精製することによって得られる。 ・・・ [0009]あるいは、魚油原料を分子蒸留し、得られた揮発性成分をヘキサン、メタノール、アセトン、酢酸エチルなどの溶剤で結晶化する方法で得る方法もある。この方法は、まず魚油原料を分子蒸留し、揮発成分を得る。魚油としては、煮取法、圧搾法、アルカリ分解法、自己消化法、溶剤抽出法等通常の採油方法により得たものが好ましく、特に公知の手段により脱ガム処理されているものが好ましい。また、魚油の原料魚としては、イワシ、サバ、サンマ、ニシン、メンヘーデン、スケトウダラ、マダラ等の魚類、オキアミ等の甲殻類、スルメイカ、ムラサキイカ等の頭足類などが例示される。 ・・・ 分子蒸留は薄膜流下式、遠心式等の装置を用い、真空度1×10-3~1×10-2mmHgで、温度200~250℃で加熱する条件で行われる。この分子蒸留工程では、脂肪酸や臭気成分とともに、魚油中の主要不ケン化物であるコレステロールが効率よく揮発性留分に凝縮される。次に、得られた揮発性成分を、溶剤を用いて結晶化せしめる。結晶化に用いられる溶剤としては、ヘキサン、メタノール、アセトン、酢酸エチル等の有機溶剤が挙げられる。 [0010]本発明のコレステロールとして好ましいのは、粗魚油に含まれるコレステロールを蒸留にて分取し、ヘキサンにてコレステロールを93~96面積%の純度で含有するように精製したものである。具体的には、イワシなどの粗魚油を水洗し脱水した後、短行程真空蒸留装置により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得る。続いて、この蒸留成分を分子蒸留にかけ、遊離脂肪酸を蒸留成分として除去し、コレステロールを残渣として得る。」 (甲4-4)「[0013]以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。 魚由来コレステロールの製造 本実施例で用いた魚由来コレステロールは、以下の製法で製造した。 イワシの粗魚油を水洗し脱水した後、短行程真空蒸留装置により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得る。トリグリセリドを主成分とする魚油本体は残渣として別途利用される。続いて、この蒸留成分を分子蒸留にかけ、遊離脂肪酸を蒸留成分として除去し、コレステロールを残渣として得る。コレステロールはフリー体のものとエステル体のものとが混ざっているので、ケン化反応を行い、フリー体に統一させる。コレステロールをヘキサン抽出し結晶化させ、ヘキサンを溶媒として再結晶することにより93~96面積%の純度のコレステロールが得られる。」 (2)甲4に記載された発明 ア 甲4発明1 甲4は、摘示(甲4-2)の段落[0005]の「本願はあまり利用されていなかった魚由来のコレステロールの性質を調べる中で、主成分は同じコレステロールであるが、由来が異なるとその物性に差があることを見出し、本発明を完成させた。」との記載、及び摘示(甲4-3)の段落[0008]の「本発明において、魚由来コレステロールとは、魚類から得られるコレステロールである。通常、魚油の精製工程においてコレステロール画分を得、それを精製することによって得られる。」との記載によれば、甲4は、魚由来のコレステロールを利用するため、魚油の精製工程においてコレステロール画分を得、それを精製することに関するものであるが、摘示(甲4-4)の「イワシの粗魚油を水洗し脱水した後、短行程真空蒸留装置により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得る。トリグリセリドを主成分とする魚油本体は残渣として別途利用される。」との記載によれば、甲4には、魚油からコレステロールを分離精製した後の「トリグリセリドを主成分とする魚油本体」の取得も意図しているといえる。 ここで、甲4の摘示(甲4-4)の「実施例」を、「トリグリセリドを主成分とする魚油本体」の取得に着目して見ると、上記「実施例」には、 「イワシの粗魚油を水洗し脱水した後、短行程真空蒸留により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を分離して、トリグリセリドを主成分とする魚油本体を得る方法。」(以下、「甲4発明1」という。)が記載されているといえる。 イ 甲4発明2 甲4発明1において、短行程真空蒸留に付す水洗し脱水したイワシの粗魚油は、短行程真空蒸留における供給材料として使用されていることになる。 そうすると、甲4発明1の、短行程真空蒸留に付す水洗し脱水したイワシの粗魚油に着目すると、甲4には、 「水洗し脱水したイワシの粗魚油の、短行程真空蒸留における供給材料としての使用。」(以下、「甲4発明2」という。)も記載されているといえる。 ウ 甲4発明3 甲4発明1において、短行程真空蒸留に付す水洗し脱水したイワシの粗魚油に着目すると、甲4には、 「水洗し脱水したイワシの粗魚油。」(以下、「甲4発明3」という。)も記載されているといえる。 (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明1との対比 本件発明1と甲4発明1とを対比すると、甲4発明1の「イワシの粗魚油」は、本件発明1の「油組成物」又は「原油組成物」に相当し、甲4発明1の「短行程真空蒸留」は、本件発明1の「ストリッピング処理ステップ」に相当する。 また、甲4発明1の「水洗し脱水」は、本件発明1の「水性流体処理ステップ」と、水を用いる処理である点で共通するとともに、甲4発明1は、本件発明1の(b)と、「(b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップ」の点で共通するステップを有しているといえる。 さらに、甲4発明1は、短行程真空蒸留により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得るものであるから、甲4発明1の「イワシの粗魚油」は、「遊離脂肪酸」を含むものであり、また、イワシの粗魚油を短行程真空蒸留するには、短行程真空蒸留前にイワシの粗魚油を用意するステップがあることは明らかであるから、甲4発明1は、本件発明1のステップ(a)と、「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップ」の点で共通するステップを有しているといえる。 また、甲4発明1は、短行程真空蒸留の際に遊離脂肪酸が蒸留されるものであるから、甲4発明1は、本件発明1のステップ(c)と、「(c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップ」の点で共通する。 加えて、甲4発明1では、短行程真空蒸留の前に何の流体もイワシの粗魚油に添加していないから、本件発明1と、「ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない」点で一致している。 そうすると、本件発明1と甲4発明1とは、 「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップを含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点1-4> 方法について、本件発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのに対し、甲4発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのか不明な点。 <相違点2-4> 原油組成物が、本件発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲4発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点3-4> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲4発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点4-4> ステップ(b)について、本件発明1では、「炭素数16から22の遊離脂肪酸」が「内部揮発性作業流体」とされていると共に、「原油組成物中に存在する(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であり、「ここでステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を、原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させて、それによって原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和されるステップを含み、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲4発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体であるのか不明であると共に、この様なステップを含むのか不明な点。 <相違点5-4> ステップ(c)について、本件発明1では、「(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離される」のに対し、甲4発明1では、臭素化難燃剤である好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるのか不明な点。 <相違点6-4> 方法について、本件発明1では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を有するのに対し、甲4発明1では、この様なステップを有するのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点2-4について 事案に鑑み、まず、相違点2-4について検討する。 例えば、油脂の精製について記載された甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)を参照すると、イワシの粗魚油にはリン脂質、タンパク質性化合物等の不純物が含まれていることが明らかであり、また、上記第6 2.(4)エ(エ-1)「イワシ原油に臭素化難燃剤が含まれることについて」及び同(エ-2)「臭素化難燃剤が『好ましくない親油性成分』であることについて」に記載したとおり、イワシの粗魚油には臭素化難燃剤等の「好ましくない親油性成分」が含まれていたといえる。 そうすると、相違点2-4は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点4-4について (ウ-1)甲4の記載について 本件発明1のステップ(b)には、「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下の塩基を含む水性流体と接触させ」る工程が含まれており、それによって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和され」、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲4(摘示甲4-4)には、「イワシの粗魚油を水洗し脱水した」ことは記載されているが、短行程真空蒸留装置による蒸留前の粗魚油を「塩基を含む水性流体」と接触させることは明示的に記載されておらず、まして、水性流体に含まれる塩基の量を「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下」とし、それによって「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和され」、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」るようにすることについては、記載も示唆もされていない。 よって、甲4の記載に基づいて、当業者が相違点4-4に係る発明特定事項を採用することが動機付けれられるものではない。 (ウ-2)脱ガム処理について 甲4(摘示甲4-3)には、分子蒸留する魚油原料について、「魚油としては、煮取法、圧搾法、アルカリ分解法、自己消化法、溶剤抽出法等通常の採油方法により得たものが好ましく、特に公知の手段により脱ガム処理されているものが好ましい」と記載されているが、列記されている採油方法は、いずれも粗魚油を「塩基を含む水性流体」と接触させる方法ではないと解され、まして、塩基の量を「原油組成物中の遊離脂肪酸のモル量に対して等モル量以下」とし、それによって「原油組成物中に存在する遊離脂肪酸が部分中和され」、「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」るようにする工程を含むものではない。 また、「脱ガム処理」については、上記第6 3.(6)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」、同(3)イ(イ-2)「脱ガム処理について」~同(イ-4)「請求人の主張について」及び第6 4.(3)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」~同(ウ-3)「請求人の主張について」に記載したとおり、甲5、6、15、17、30及び33等の証拠に基づいて検討しても、仮に希NaOHにより洗浄する方法が採用される場合であっても、「遊離脂肪酸が部分中和され」て除去される処理には当たらず、かつ、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理にも当たらないのであるから、甲4発明1における「水洗し脱水」する処理とは異なり、かつ、仮に、甲4発明1において脱ガム処理とアルカリ成分の添加を共に行うことに当業者が思い至ることができたとしても、依然として上記相違点4-4に係る本件発明1の「ステップ(b)」に相当する構成には至らない。 (ウ-3)請求人の主張について 請求人は、審判請求書(129頁)等において、無効理由3と同様の主張をしており、また、平成30年4月19日に提出した弁駁書(103頁)において、上記に加えて「後段の蒸留工程の安定化及びその負荷の軽減のため、脱ガム処理の際に添加するNaOHにより、遊離脂肪酸濃度を下げて一定に揃えることが望ましい」と主張しているが、上記第6 3.(3)イ(イ-4)「請求人の主張について」における検討を踏まえると、請求人の主張はいずれも採用できない。 また、請求人は、令和元年10月11日に提出した弁駁書(92~94頁)において、ステップ(b)の遊離脂肪酸濃度等について、「甲4発明1に対し、希NaOHによる脱ガムの周知技術又は甲33号証の技術(不純物の除去又は不活性化のためにアルカリ処理による部分中和を行う技術)を適用して、相違点III-4の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得た事項である」と主張している。 しかし、甲4発明1と、希NaOHによる脱ガムの周知技術との組合せについては、上記第6 4.(3)ウ(ウ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。 (ウ-4)相違点4-4についてのまとめ 以上のことから、上記相違点4-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲5、6、15、17、30及び33等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由5-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、29、31、32、34、35及び39~44等)を参酌しても、上記相違点4-4に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 エ 本件発明1についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (4)本件発明2~5、11~17について 本件発明2~5、11~17は、本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明2~5、11~17と甲4発明1とは、少なくとも上記第6 5.(3)ア「本件発明1と甲4発明1との対比」に記載した<相違点1-4>~<相違点6-4>の点で相違し、同ウ「相違点4-4について」に記載したとおり、相違点4-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5、11~17は、いずれも甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (5)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、「原油組成物が、トリグリセリドおよび/またはリン脂質あるいはトリグリセリドを原油組成物の少なくとも50重量%、60重量%、70重量%、80重量%または90重量%の範囲で含む」ことが限定された発明である。 そうすると、本件発明6と甲4発明1とは、少なくとも上記第6 5.(3)ア「本件発明1と甲4発明1との対比」に記載した<相違点1-4>~<相違点6-4>の点で相違し、同ウ「相違点4-4について」に記載したとおり、相違点4-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6は、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (6)本件発明7について ア 本件発明7と甲4発明1との対比 本件発明7は、ステップ(b)の「水性流体処理ステップ」の内容が異なることを除いて、本件発明1と同じ発明特定事項により特定される方法の発明である。そこで、上記第6 5.(3)ア「本件発明1と甲4発明1との対比」を踏まえて、本件発明7と甲4発明1とを対比すると、両者は、 「(a)遊離脂肪酸を含む原油組成物を用意するステップと、 (b)原油組成物を水性流体処理ステップにかけるステップと、 (c)ステップ(b)後の油組成物を遊離脂肪酸の存在下でストリッピング処理ステップにかけるステップを含み、 ステップ(c)前に、外部揮発性作業流体を油組成物に添加しない、 方法。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点7-4> 方法について、本件発明7は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのに対し、甲4発明1は、「油組成物中の好ましくない成分の量を低減する方法」であるのか不明な点。 <相違点8-4> 原油組成物が、本件発明7では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲4発明1では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物、及び好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点9-4> 原油組成物に含まれる遊離脂肪酸が、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのに対し、甲4発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸を含むのか不明な点。 <相違点10-4> ステップ(b)について、本件発明7では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体とされていると共に、「原油組成物中に存在する好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で原油組成物から分離されるステップ」であり、「ここで、ステップ(b)の水性流体処理ステップが、原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させるステップを含み、水性流体が、相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有し、ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」る(以下、まとめて「ステップ(b)」ということがある。)のに対し、甲4発明1では、炭素数16から22の遊離脂肪酸が内部揮発性作業流体であるのか不明であると共に、この様なステップを含むのか不明な点。 <相違点11-4> ステップ(c)について、本件発明7では、「(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離される」のに対し、甲4発明1では、臭素化難燃剤である好ましくない親油性成分が内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から分離されるのか不明な点。 <相違点12-4> 方法について、本件発明7では、「(d)ステップ(c)からの組成物を多不飽和脂肪酸を濃縮するさらなる処理ステップにかけるステップ」を有するのに対し、甲4発明1では、この様なステップを有するのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点8-4について 事案に鑑み、まず、相違点8-4について検討する。 上記第6 5.(3)イ「相違点2-4について」に記載したとおり、イワシの粗魚油にはリン脂質、タンパク質性化合物等の不純物が含まれていることが明らかであり、また、イワシの粗魚油には臭素化難燃剤等の「好ましくない親油性成分」が含まれていたといえる。 そうすると、相違点8-4は実質的な相違点ではない。 ウ 相違点10-4について (ウ-1)甲4の記載について 本件発明7のステップ(b)には、「原油組成物を実質的に塩基なしで水性流体と接触させ」る工程が含まれており、当該「水性流体」は「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」するものであり、上記「水性流体と接触させ」る工程によって「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」こと、及び「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られ」、「ステップ(b)後に、油組成物中の遊離脂肪酸の量が0.5重量%から5重量%であ」ることが特定されている。 これに対して、甲4(摘示甲4-4)には、「イワシの粗魚油を水洗し脱水した」ことは記載されているが、当該水洗工程において「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」する「水性流体」を用いることは記載も示唆もされていない。 また、甲4(摘示甲4-3)には、分子蒸留する魚油原料について、「魚油としては、煮取法、圧搾法、アルカリ分解法、自己消化法、溶剤抽出法等通常の採油方法により得たものが好ましく、特に公知の手段により脱ガム処理されているものが好ましい」と記載されているが、列記されている採油方法は、いずれも粗魚油を「相分離を改善するための塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウムおよび硝酸アンモニウムから選択される塩を含有」する「水性流体」と接触させる方法ではないと解される。 (ウ-2)脱ガム処理について さらに、上記甲4(摘示甲4-3)に記載された「脱ガム処理」については、上記第6 4.(6)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」に記載したとおり、甲5、6、15、17、30、31、33及び44等の証拠に基づいて検討しても、周知の「脱ガム処理」は、「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないといえる。 (ウ-3)甲4との組合せについて そうすると、一般に、油脂の精製において脱ガム処理が周知であり、甲4の記載(摘示甲4-3)に基づいて甲4発明1における「イワシの粗魚油を水洗し脱水」することに加え、周知の脱ガム処理を組み合わせることに当業者が思い至ることができたとしても、上記第6 5.(6)ウ(ウ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおり、当該脱ガム処理は「(タンパク質性化合物である)好ましくない親水性成分が・・・原油組成物から分離される」処理には当たらないのであるから、依然として上記相違点10-4に係る本件発明7の「ステップ(b)」の構成には至らない。 (ウ-4)請求人の主張について 請求人は、平成30年4月19日に提出した弁駁書(107頁)等において、本件発明1と甲4発明1との対比(102~104頁)、及び無効理由4-2(甲3発明1との対比)において主張していること(84~85頁)と同様である旨の主張をしており、また、令和元年10月11日に提出した弁駁書(97~98頁)において、ステップ(b)について、無効理由4-2(甲3発明1との対比、73~74頁)と同様の主張をしているが、上記第6 4.(6)ウ(ウ-1)「甲3の記載について(脱ガム処理について)」~同(ウ-2)「請求人の主張について」における検討を踏まえると、請求人の主張はいずれも採用できない。 (ウ-5)相違点10-4についてのまとめ 以上のことから、上記相違点10-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲5、6、15、17、30、31、33及び44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。また、請求人が無効理由5-2の証拠として提出した他の周知技術(甲2、7~10、20~26、28、29、32、34、35及び39~43等)を参酌しても、上記相違点10-4に係る発明特定事項に当業者が容易に想到し得たとは認められない。 エ 本件発明7についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7は甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (7)本件発明8、9について 本件発明8は、本件発明1と同じ発明特定事項を備え、さらに、ステップ(b)後に、「油組成物が好ましくない親水性成分を実質的に含ま」ないことが限定された発明である。 また、本件発明9は、本件発明8を引用し、本件発明8の発明特定事項がさらに限定された発明である。 そうすると、本件発明8、9と甲4発明1とは、少なくとも上記第6 5.(3)ア「本件発明1と甲4発明1との対比」に記載した<相違点1-4>~<相違点6-4>の点で相違し、同ウ「相違点4-4について」に記載したとおり、相違点4-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8、9は、いずれも甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (8)本件発明10について 本件発明10は、本件発明7を引用しており、本件発明7の発明特定事項をさらに限定した発明である。 そうすると、本件発明10と甲4発明1とは、少なくとも上記第6 5.(6)ア「本件発明7と甲4発明1との対比」に記載した<相違点7-4>~<相違点12-4>の点で相違し、同ウ「相違点10-4について」に記載したとおり、相違点10-4に係る発明特定事項については、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に想到し得た事項ではない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲4発明1及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (9)本件発明18について ア 本件発明18と甲4発明2との対比 本件発明18と甲4発明2を対比すると、甲4発明2の「イワシの粗魚油」、「短行程真空蒸留」は、それぞれ、本件発明18の「油組成物」、「ストリッピング処理ステップ」に相当する。 また、甲4発明1では、短行程真空蒸留により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得ていることを参酌すると、甲4発明2の「イワシの粗魚油」は、「遊離脂肪酸」を含むものである。 さらに、甲4では、イワシの粗魚油に短行程真空蒸留の前に何の流体も添加していないから、甲4発明2のイワシの粗魚油は、外部揮発性作業流体を実質的に含んでいない。よって、甲4発明2の「水洗し脱水したイワシの粗魚油」は、本件発明18の「内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸および好ましくない親油性成分を含み、好ましくない親水性成分および外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」と、「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」の点で共通している。 加えて、甲4発明2は、短行程真空蒸留の際に遊離脂肪酸が蒸留されるものであるから、甲4発明2の「短行程真空蒸留」は、本件発明18の「好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」と、「遊離脂肪酸を油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップ」の点で共通する。 甲4発明2の「供給材料としての使用」は、本件発明18の「供給材料としての使用」に相当する。 そうすると、本件発明18と甲4発明2とは、 「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物の、遊離脂肪酸を油組成物から除去するためのストリッピング処理ステップにおける供給材料としての使用」 の点で一致し、以下の点で一応相違しているといえる。 <相違点13-4> 遊離脂肪酸について、本件発明18では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲4発明2では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点14-4> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲4発明2では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点15-4> 油組成物が、本件発明18では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲4発明2では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 <相違点16-4> ストリッピング処理ステップについて、本件発明18では、(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのものであるのに対し、甲4発明2では、(臭素化難燃剤である)好ましくない親油性成分を内部揮発性作業流体としての炭素数16から22の遊離脂肪酸と共に油組成物から除去するためのものであるのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点13-4について (イ-1)「内部揮発性作業流体として有効な量」について 上記第6 1.(2)ア(エ)「『内部揮発性作業流体として有効な量』について」の(エ-2)「本件発明18、19について」に記載したとおり、本件発明18における炭素数16から22の遊離脂肪酸の「内部揮発性作業流体として有効な量」という発明特定事項は、具体的にどのような量なのか特定されていない点で不明確なものであるから、炭素数16から22の遊離脂肪酸の含有量の具体的な数値に基づいて、本件発明18と甲4発明2とを対比することはできない。 しかし、甲4の実施例(摘示甲4-4)には、イワシの粗魚油を水洗し脱水したものを、短行程真空蒸留装置により蒸留したところ、「遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分」が得られ、トリグリセリドを主成分とする魚油本体が残渣として残ったことが記載されている。 魚油に含まれる遊離脂肪酸は、油脂の加水分解によって生じた高級脂肪酸であり、例えば甲5(摘示甲5-2)及び甲24(摘示表24-1)に記載されているように炭素数14~22の長鎖脂肪酸であるから、「炭素数16から22の遊離脂肪酸」が主要な成分として存在する。また、そのような高級脂肪酸は水には溶解しないから、短行程真空蒸留前の水洗によっては減少はしておらず、したがって、短行程真空蒸留は遊離脂肪酸の存在下で行われているといえる。また、当該遊離脂肪酸は、外部からイワシの粗魚油に添加されたものではないから、「内部」の成分である。 さらに、蒸留成分に「遊離脂肪酸」及び「コレステロール」が含まれていたのであるから、短行程真空蒸留の条件下で遊離脂肪酸はコレステロールとともに蒸発除去されたことが明らかであり、そうすると、コレステロール等の蒸留成分の蒸発除去において、遊離脂肪酸は揮発性作業流体として有効に機能したといえる。 なお、甲4発明2の短行程真空蒸留において臭素化難燃剤が除去されていることについては、下記第6 5.(9)エ「相違点16-4について」に記載したとおりである。 そうすると、甲4発明2における水洗後のイワシの粗魚油は、「内部揮発性作業流体として有効な量」の炭素数16から22の遊離脂肪酸を含有するものといえるから、相違点13-4は実質的な相違点ではない。 (イ-2)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年1月25日に提出した答弁書(87~88頁)において、「甲4号証には、イワシの粗魚油の水洗・脱水処理において、魚油から好ましくない親水性成分が、内部揮発性作業流体として有効な量の遊離脂肪酸を含む油組成物が得られるような条件の下で分離されることなど、一切記載されていないから、この点は実質的な相違点である」と主張しており、令和元年9月4日に提出した上申書(29頁)において、「すでに答弁書87~89頁で述べたのと同様の理由から、・・・いずれも実質的な相違点であり、しかもこれらの相違点に想到することは容易でない」と主張している。 しかし、甲4に被請求人が主張するような明示的な記載がないとしても、上記のとおり、甲4の実施例(摘示甲4-4)に記載されたイワシの粗魚油を水洗し脱水する処理は、遊離脂肪酸を減少させる処理とは認められず、かつ、水洗い後の油組成物に含まれる遊離脂肪酸は短行程真空蒸留において揮発性作業流体として機能したと理解することができるから、明示的な記載がないことをもって実質的な相違点とすることはできない。 よって、被請求人の主張は採用できない。 ウ 相違点14-4及び相違点15-4について (ウ-1)「好ましくない親水性成分」について 上記第6 5.(3)イ「相違点2-4について」に記載したとおり、例えば、油脂の精製について記載された甲5(摘示甲5-1)及び甲6(摘示甲6-2)を参照すると、イワシの粗魚油にはリン脂質、タンパク質性化合物等の不純物が含まれていることが明らかである。 (ウ-2)好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないことについて 甲4の実施例(摘示甲4-4)には、イワシの粗魚油を水洗し脱水したことが記載されているところ、一般に、水洗いすれば、イワシの粗魚油に含まれる親水性成分は水相に溶解し、除去されるものと解される。 そうすると、甲4発明2における水洗後のイワシの粗魚油は、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を実質的に含まないものといえる。 (ウ-3)イワシの粗魚油に臭素化難燃剤が含まれることについて 上記第6 5.(3)イ「相違点2-4について」、同2.(4)エ(エ-1)「イワシ原油に臭素化難燃剤が含まれることについて」及び同(エ-2)「臭素化難燃剤が『好ましくない親油性成分』であることについて」に記載したとおり、甲39~甲42の記載を参酌すると、本件特許に係る出願の優先日当時、ほとんどすべての精製前の海産油には、臭素化難燃剤が含まれていたといえる。そうすると、甲4発明2における「イワシの粗魚油」には、臭素化難燃剤が含まれていたといえる。 (ウ-4)臭素化難燃剤が「好ましくない親油性成分」であることについて 上記第6 2.(4)エ(エ-2)「臭素化難燃剤が『好ましくない親油性成分』であることについて」に記載したとおり、甲39~甲42の記載を参酌すると、臭素化難燃剤は親油性の化合物であり、ヒトの健康に有害な影響を与える可能性があるものといえる。 そうすると、甲4発明2における「イワシの粗魚油」にも含まれている「臭素化難燃剤」は、「好ましくない親油性成分」の一種であるといえる。 (ウ-5)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年1月25日に提出した答弁書(88頁)において、「甲4号証には、親水性成分に関する記載は存在しないから、この点は実質的な相違点であ」る旨、及び「甲4号証での水洗・脱水処理を行う目的はリン脂質の除去であ」る旨を主張しており、令和元年9月4日に提出した上申書(29頁)において、「すでに答弁書87~89頁で述べたのと同様の理由から、・・・いずれも実質的な相違点であり、しかもこれらの相違点に想到することは容易でない」と主張している。 しかし、甲4に被請求人が主張するような明示的な記載がないとしても、上記のとおり、甲4の実施例(摘示甲4-4)には、イワシの粗魚油を水洗し脱水したことが記載されているから、イワシの粗魚油に含まれる親水性成分は水相に溶解し、除去されるものと解される。また、上記第6 5.(3)ウ(ウ-2)「脱ガム処理について」及び同(6)ウ(ウ-2)「脱ガム処理について」に記載したとおり、甲4発明2における水洗・脱水処理は、リン脂質等を除去する周知の脱ガム処理とは異なる処理であると解されるから、親水性成分が除去されていないとまではいえない。 よって、被請求人の主張は採用できない。 (ウ-6)相違点14-4及び相違点15-4についてのまとめ そうすると、甲4発明2における水洗後のイワシの粗魚油は、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含み、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を実質的に含まないものといえるから、相違点14-4及び相違点15-4は、いずれも実質的な相違点ではない。 エ 相違点16-4について (エ-1)臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて 上記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、甲24(摘記甲24-3)によれば、真空ストリッピング技術においては、ある温度で特定の物質が液相から気相に分離される場合、当該物質よりも蒸気圧が高い(沸点が低い、あるいは揮発性が高い)物質も、同じ条件で気相に分離されることになり、魚油の蒸留においても同様に、蒸気圧の高い成分から蒸留されると理解できる。そこで、甲4の実施例(摘示4-4)において蒸留されるコレステロール及びその他の蒸留成分の蒸気圧の関係について検討する。 まず、上記第6 2.(4)エ(エ-3)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、本件特許に係る出願の優先日後に公開された文献であるが、乙4の記載を参酌すると、ダイオキシン類が蒸留により減少する条件下では、一般的な臭素化難燃剤であるポリ臭素化ジフェニルエーテルも蒸留により減少することが理解できる。 また、甲2(摘示2-9)には、大西洋産の(アトランティック)サーモンからの新鮮な副産物からの油を分子蒸留処理過程(揮発性作業流体:サーモン=約8:100、圧力1×10-3mbar、温度180℃、混合物流速600mL/時)に付し、臭素化難燃剤、PCB及び塩素化殺虫剤の量に関して、それぞれ蒸留の前及び後に試料を分析した結果が記載されており、臭素化難燃剤とPCBの両者共に油から蒸留されたことが読み取れる。 さらに、甲24(摘示24-2)には、精製されたメンヘーデン油の真空スチーム脱臭において、コレステロールは200℃未満では有意に蒸留されないこと、しかし200℃以上では蒸留が起き、200℃から250℃にかけて除去が進むこと、PCBは175℃で検出レベル未満に減少することが記載されており、水蒸気脱臭ではあるが、PCBはコレステロールよりも温和な条件で除去されることが理解できる。 さらにまた、甲24(摘示24-3)には、ある程度精製されたメンヘーデン油の、ワイプド-フィルム・ガラス分子蒸留器を用いた真空脱臭において、0.5Torrの真空で260℃に加熱される駆動部と150℃に加熱された内部凝縮器とを有する第2ステージで、コレステロール、殺虫剤及びPCBが気化し、凝縮器の後のトラップに回収されたことが記載されており、コレステロールとPCBの両者共に油から蒸留されたことが理解できる。 加えて、甲43(摘示甲43-1及び摘示甲43-2)には、ダイオキシン類とPCBが室温(25℃)で同程度の蒸気圧を有することが読み取れる。 そこで、これらの証拠に記載された事実を参酌すると、コレステロールは真空蒸留又は真空水蒸気蒸留において200~260℃の温度で蒸留されること(甲24)、PCBは、コレステロールが有意に蒸留されない175℃で検出レベル未満に減少するからコレステロールを上回る揮発性を有する物質であること(甲24)、PCBとダイオキシン類(甲43)、ダイオキシン類と臭素化難燃剤(乙4)、及び臭素化難燃剤とPCB(甲2)は、同時に蒸留される程度に近接した蒸気圧(揮発性)を有することを理解することができる。 そうすると、甲4の実施例(摘示甲4-4)においては、「短行程真空蒸留装置により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得」たことが記載されているから、コレステロールよりも揮発性の高い臭素化難燃剤も蒸留され、油組成物から除去されているといえる。よって、相違点16-4は実質的な相違点ではない。 (エ-2)被請求人の主張について 被請求人は、平成30年1月25日に提出した答弁書(88頁)において、「訂正発明18では、臭素化難燃剤・・・から選択される好ましくない親油性成分が油組成物から除去されるのに対して・・・甲4発明(使用)では、コレステロールが有用物として魚油から精製分離される点で相違する。 コレステロールを有用物(つまり、好ましい親油性成分)として分離精製する発明に係る構成を、好ましくない親油性成分・・・除去に適用しようとする動機付けはないから、この相違点に係る構成に想到することは容易でない」と主張している。 しかし、上記第6 5.(9)ウ「相違点14-4及び15-4について」に記載したとおり、甲4発明2のイワシの粗魚油は好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むものであり、同エ(エ-1)「臭素化難燃剤が油組成物から除去されることについて」に記載したとおり、当該イワシの粗魚油に含まれる臭素化難燃剤はコレステロールよりも揮発性が高いものであるから、遊離脂肪酸とともにコレステロールが蒸留される条件下では、コレステロールとともに蒸留されるといえ、そうすると、被請求人の主張する点は相違点ではない。 また、甲4(摘示甲4-4)には、「トリグリセリドを主成分とする魚油本体は残渣として別途利用される」ことが記載されているから、甲4発明2の蒸留残渣である魚油本体も有用物であり、別途利用の妨げとなる臭素化難燃剤を除去することに当業者が想到し得ないとまではいえない。 さらに、甲4(摘示甲4-4)には、「蒸留成分を分子蒸留にかけ、遊離脂肪酸を蒸留成分として除去し、コレステロールを残渣として得」たことが記載されているから、コレステロールとともに臭素化難燃剤が蒸留されていても、当業者はさらなる分子蒸留を行うことによりコレステロールから分離することができると理解することができる。 よって、被請求人の主張は採用できない。 (エ-3)相違点16-4のまとめ 以上のことから、相違点16-4は実質的な相違点ではない。 オ 本件発明18についてのまとめ 以上のとおり、相違点13-4~相違点16-4は、いずれも実質的な相違点ではない。 そうすると、本件発明18は甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではない。 また、仮に相違する点があるとしても、甲4発明2及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。 (10)本件発明19について ア 本件発明19と甲4発明3との対比 本件発明19と甲4発明3を対比すると、甲4発明3の「イワシの粗魚油」は、本件発明19の「油組成物」に相当する。 また、甲4発明1では、短行程真空蒸留により、遊離脂肪酸、コレステロールを主成分とする蒸留成分を得ていることを参酌すると、甲4発明3の「イワシの粗魚油」は、「遊離脂肪酸」を含むものである。 さらに、甲4では、イワシの粗魚油に短行程真空蒸留の前に何の流体も添加していないから、甲4発明3のイワシの粗魚油は、外部揮発性作業流体を実質的に含んでいない。 そうすると、本件発明19と甲4発明3とは、 「遊離脂肪酸を含み、外部揮発性作業流体を実質的に含まない油組成物」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 <相違点17-4> 遊離脂肪酸について、本件発明19では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのに対し、甲4発明3では、内部揮発性作業流体として有効な量の炭素数16から22の遊離脂肪酸が含まれているのか不明な点。 <相違点18-4> 油組成物が、本件発明19では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのに対し、甲4発明3では、好ましくない親水性成分であるタンパク質性化合物を含まないのか不明な点。 <相違点19-4> 油組成物が、本件発明19では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのに対し、甲4発明3では、好ましくない親油性成分である臭素化難燃剤を含むのか不明な点。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点17-4~相違点19-4について 相違点17-4~相違点19-4は、それぞれ上記第6 5.(9)ア「本件発明18と甲4発明2との対比」に記載した相違点13-4~相違点15-4と実質的に同じ内容であるから、同イ「相違点13-4について」及び同ウ「相違点14-4及び相違点15-4について」における説示と同様のことがいえる。 そうすると、相違点17-4~相違点19-4は、いずれも実質的な相違点ではない。 ウ 本件発明19についてのまとめ よって、本件発明19は甲4に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではない。 また、仮に相違する点があるとしても、甲4発明3及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。 (11)無効理由5-1(新規性:甲4号証)及び無効理由5-2(進歩性:甲第4号証)についてのまとめ 以上のとおり、本件発明18及び19は、いずれも甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではないか、又は、甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。 よって、本件の請求項18及び19に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 また、本件発明1~17は、いずれも甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲2、5~10、15、17、20~26、28~35及び39~44等)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではない。 よって、本件の請求項1ないし17に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものではないから、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効とすべきものではない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本件発明18及び19についての特許は、無効理由1-1、無効理由2、無効理由5-1及び無効理由5-2により無効にすべきものである。 一方、請求人が主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、本件発明1~17についての特許を無効にすべきものとすることはできないし、また、他に無効とすべき理由も見当たらない。 本件審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条及び第64条の規定により、これを19分し、その17を請求人が負担すべきものとし、その余を被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-800093

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    同じ当事者: 日本水産 株式会社
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  • 2016-800057無効審判 / 2018-05-07 / 請求不成立液晶媒体
    共通の条文: 民事訴訟法61条、民事訴訟法64条、特許法169条2項
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    共通の条文: 民事訴訟法61条、民事訴訟法64条、特許法169条2項
  • 2024-800166無効審判 / 2026-07-15 / 請求不成立エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵…
    共通の条文: 民事訴訟法61条、特許法169条2項
  • 2025-800050無効審判 / 2026-07-15 / 請求不成立エアロゾル発生物品内でセグメントとして使用するためのエアロゾル発生物品および低抵…
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