特許無効審判
2017-800077
オニウム含有CMP組成物、およびそれらの使用方法
- 審判番号
- 2017-800077
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2009-527432
- 登録番号
- 特許第5385142号(P5385142)
- 請求日
- 2017年06月15日
- 審決日
- 2018年06月12日
- 公報発行日
- 2019年01月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】特許業務法人 津国
- 【被請求人】キャボット マイクロエレクトロニクス コーポレイション
- 【被請求人代理人】青木 篤
- 【被請求人代理人】三橋 真二
- 【被請求人代理人】古賀 哲次
- 【被請求人代理人】関根 宣夫
- 【被請求人代理人】木村 健治
- 審判長/審判官
- 審判長 平岩 正一
- 審判官 中川 隆司
- 審判官 栗田 雅弘
- 分類
- P1113.113-YAA(H01L) / P1113.121-YAA(H01L) / P1113.536-YAA(H01L) / P1113.537-YAA(H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第135条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第5385142号発明「オニウム含有CMP組成物、およびそれらの使用方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5385142号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり訂正することを認める。
特許第5385142号の請求項1-3、5-8、10、11、13-17、19に記載された発明についての審判の請求は、成り立たない。
特許第5385142号の請求項4、9、12及び18に係る発明についての審判請求を却下する。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本件特許第5385142号の請求項1ないし19に係る発明についての出願(以下、「本件特許出願」という。)は、2007年(平成19年)9月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年9月8日アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成25年10月11日にその発明についての特許権の設定登録(請求項の数19)がなされたものでる。
以後の本件に係る手続の経緯は以下のとおりである。
1.平成29年6月15日 本件無効審判の請求
2.平成29年10月10日 審判事件答弁書
3.平成29年10月10日 訂正請求
4.平成29年12月6日 審判事件弁駁書
5.平成30年2月21日 審理事項通知書
6.平成30年4月10日 口頭審理陳述要領書(請求人)
7.平成30年4月10日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
8.平成30年4月24日 口頭審理
第2.平成29年10月10日付け訂正請求について
平成29年10月10日付け訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)によれば、請求の趣旨及び内容は、それぞれ以下のとおりである。
1.本件訂正の趣旨
特許第5385142号の明細書、特許請求の範囲及び図面を本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項1ないし19について訂正することを求める。
2.本件訂正の内容
本件訂正における訂正事項は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「(b)ホスホニウム塩、スルホニウム塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のオニウム化合物と、」を、「(b)臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のオニウム化合物と、」に訂正するとともに、この訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項1の「該組成物は5以下のpHを有し、該ホスホニウム塩が、以下の式:
【化1】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有し、そして、
該スルホニウム塩が、以下の式:
【化2】
(式中、各R5、R6、およびR7は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基であり、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R5およびR6は、複素環が芳香族である場合、R7がないという条件で、硫黄、Sを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有する、CMP組成物。」を、 「該組成物は5以下のpHを有する、CMP組成物。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6の「(b)1グラム当たり0.4~20マイクロモルの少なくとも1種のホスホニウム塩と、」を、 「(b)臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、1グラム当たり0.4~20マイクロモルの少なくとも1種のホスホニウム塩と、」に訂正するとともに、この訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項6の「該組成物は5以下のpHを有し、該ホスホニウム塩が以下の式:
【化3】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有する、CMP組成物。」を、「該組成物は、5以下のpHを有する、CMP組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11の「該基材の表面を、請求項1のCMP組成物で磨耗させることを含む、基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。」を、 「半導体基材の表面を、請求項1のCMP組成物で磨耗させることを含む、該基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13の「該基材の表面を、請求項6のCMP組成物で磨耗させることを含む、基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。」を、 「半導体基材の表面を、請求項6のCMP組成物で磨耗させることを含む、該基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項14の「(a)半導体基材の表面と、研磨パッドおよび水性CMP組成物とを接触させる工程であって、 該CMP組成物は、5以下のpHを有し、そしてコロイドシリカと、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1種のオニウム化合物と、それらの水性キャリアーとを含む工程と、」を、 「(a)半導体基材の表面と、研磨パッドおよび水性CMP組成物とを接触させる工程であって、 該CMP組成物は、5以下のpHを有し、そしてコロイドシリカと、臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1種のホスホニウム塩と、それらの水性キャリアーとを含む工程と、」に訂正するとともに、この訂正に伴い、特許請求の範囲の請求項14の「の各ステップを含んで成り、該ホスホニウム塩が、以下の式:
【化4】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有し、そして、
該スルホニウム塩が、以下の式:
【化5】
(式中、各R5、R6、およびR7は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基であり、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R5およびR6は、複素環が芳香族である場合、R7がないという条件で、硫黄、Sを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)、CMP法。」を、 「の各ステップを含んで成る、CMP法。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
(10)訂正事項10
明細書の段落【0022】に記載された「硫酸イオン」、「リン酸イオン」及び「リン酸水素イオン」を削除する。
(11)訂正事項11
明細書の段落【0023】に記載された「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MPh3PBr)、「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3Br)」及び「臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HeXPh3PBr)」を、それぞれ「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)」及び「臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)」に訂正する。
(12)訂正事項12
明細書の段落【0045】に記載された「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3Br)」及び「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3Br)」を、それぞれ「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)」及び「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)」に訂正する。
(13)訂正事項13
訂正前の図4を図5に訂正し、同様に訂正前の図5を図4に訂正する。
3.訂正請求の適否(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更、及び、一群の請求項)
(1)訂正事項1について
訂正前の請求項1に係る特許発明は、「少なくとも1種のオニウム化合物」について、「ホスホニウム塩、スルホニウム塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された」ものであることを特定し、さらに「該ホスホニウム塩が、以下の式:
【化1】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有」することを特定している。
これに対して、訂正後の請求項1は、「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された」との記載により、訂正前の請求項1に係る発明において一般式で特定されている「少なくとも1種のオニウム化合物」を当該訂正前の請求項1に包含される具体的なオニウム化合物に限定するものである。すなわち、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、一般式で特定されている「少なくとも1種のオニウム化合物」という発明特定事項を概念的により下位の具体的な「オニウム化合物」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は、訂正前の請求項4、明細書の段落【0023】及び実施例の例1~3に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項2は、請求項4を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正前の請求項6に係る特許発明は、「少なくとも1種のホスホニウム塩」について、「該ホスホニウム塩が、以下の式:
【化3】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有」することを特定している。
これに対して、訂正後の請求項6は、「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された」との記載により、訂正前の請求項6に係る発明において一般式で特定されている「少なくとも1種のホスホニウム塩」を当該訂正前の請求項6に包含される具体的なホスホニウム塩に限定するものである。すなわち、訂正事項3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、一般式で特定されている「少なくとも1種のホスホニウム塩」という発明特定事項を概念的により下位の具体的なホスホニウム塩にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項3は、訂正前の請求項9、明細書の段落【0023】及び実施例の例1~3に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項9を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、請求項9を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項4は、請求項9を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(5)訂正事項5について
訂正後の請求項11は、訂正前の請求項11に「基材」と記載されていたのを、「半導体基材」に限定するものである。すなわち、訂正事項5は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5は、「基材」という発明特定事項を概念的により下位の「半導体基材」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項5は、訂正前の請求項14、明細書の段落【0014】【0016】及び【0036】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、請求項12を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項6は、請求項12を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項6は、請求項12を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(7)訂正事項7について
訂正後の請求項13は、訂正前の請求項13に「基材」と記載されていたのを、「半導体基材」に限定するものである。すなわち、訂正事項7は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項7は、「基材」という発明特定事項を概念的により下位の「半導体基材」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項7は、訂正前の請求項14、明細書の段落【0014】【0016】及び【0036】に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(8)訂正事項8について
訂正前の請求項14に係る特許発明は、「少なくとも1種のオニウム化合物」について、「ホスホニウム塩、スルホニウム塩、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された」ものであることを特定し、さらに「該ホスホニウム塩が、以下の式:
【化4】
(式中、各R1、R2、R3およびR4は、独立して、直鎖C1~C16アルキル、分枝鎖C3~C16アルキル、C6~C10アリール、直鎖C1~C16アルキル置換C6~C10アリール、および分枝鎖C3~C16アルキル置換C6~C10アリールから成る群から選択された置換または非置換炭化水素基である、該炭化水素基は、ヒドロキシル置換基、ハロ置換基、エーテル置換基、エステル置換基、カルボキシ置換基、およびアミノ置換基から成る群から選択された1種または2種以上の官能性置換基で置換されていることができる;R1およびR2は、複素環が芳香族である場合、R4がないという条件で、リン、Pを有する飽和、不飽和、または芳香族複素環を共に形成することができる;そしてX-は、ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。)を有」することを特定している。
これに対して、訂正後の請求項14は、「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1種のホスホニウム塩」との記載により、訂正前の請求項14に係る発明において一般式で特定されている「少なくとも1種のオニウム化合物」を当該訂正前の請求項14に包含される具体的なホスホニウム塩に限定するものである。すなわち、訂正事項8は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項8は、一般式で特定されている「少なくとも1種のオニウム化合物」という発明特定事項を概念的により下位の具体的な「ホスホニウム塩」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項8は、訂正前の請求項18、明細書の段落【0023】及び実施例の例1~3に基づいて導き出される構成であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(9)訂正事項9について
訂正事項9は、請求項18を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項9は、請求項18を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項9は、請求項18を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(10)訂正事項10について
訂正事項10は、明細書の段落【0022】に記載された「X-」の選択肢から2価又は3価のイオンである「硫酸イオン」、「リン酸イオン」及び「リン酸水素イオン」を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項10は、明細書の段落【0022】に記載された「X-」の選択肢から2価又は3価のイオンである「硫酸イオン」、「リン酸イオン」及び「リン酸水素イオン」を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項10は、明細書の段落【0022】に記載された「X-」の選択肢から2価又は3価のイオンである「硫酸イオン」、「リン酸イオン」及び「リン酸水素イオン」を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(11)訂正事項11について
訂正前の明細書の段落【0023】に記載された「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MPh3PBr)」、「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3Br)」及び「臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HeXPh3PBr)」は、図1及び2の記載から、それぞれ「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)」、「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)」及び「臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)」の誤記であることが明らかであり、よって訂正事項11は特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項11は、単に明細書中の誤記を訂正するものであり、実質的に記載の意味を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項11は、図1及び2の正しい記載に基づいて誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(12)訂正事項12について
訂正前の明細書の段落【0045】に記載された「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3Br)」及び「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3Br)」は、図1及び2の記載から、それぞれ「臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)」及び「臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)」の誤記であることが明らかであり、よって訂正事項12は特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項12は、単に明細書中の誤記を訂正するものであり、実質的に記載の意味を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項12は、図1及び2の正しい記載に基づいて誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(13)訂正事項13について
訂正前の明細書の段落【0015】、【0050】及び【0051】の記載から、訂正前の図4及び5がそれぞれ図5及び4の誤記であることは明らかであり、よって訂正事項13は特許法第134条の2第1項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項13は、単に図面の誤記を訂正するものであり、実質的に記載の意味を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
さらに、訂正事項13は、単に図面の誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
(14)一群の請求項
訂正前の請求項1の記載を請求項2-5、11及び12は直接的または間接的に引用する関係にあるから、上記訂正事項1、2、5及び6に係る訂正は、一群の請求項〔1-5、11、12〕に対して請求されたものであり、訂正前の請求項6の記載を請求項7-10及び13は直接的または間接的に引用する関係にあるから、上記訂正事項3、4及び7に係る訂正は、一群の請求項〔6-10、13〕に対して請求されたものであり、また、訂正前の請求項14の記載を請求項15-19は直接的に引用する関係にあるから、上記訂正事項8及び9に係る訂正は、一群の請求項〔14-19〕に対して請求されたものである。
また、訂正事項10ないし12に係る訂正は、明細書の記載に関する訂正であり、訂正事項13に係る訂正は、図面の記載に関する訂正であるから、これらの訂正事項は、一群の請求項〔1-5、11、12〕、一群の請求項〔6-10、13〕及び一群の請求項〔14-19〕に対して請求されたものである。
4.訂正請求に対する結論
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
よって、本件訂正を認める。
第3.本件特許発明
本件訂正により訂正された請求項1ないし19に係る発明は、次のとおりのものである(以下、請求項の項番に従って、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明19」という。)。
「【請求項1】
(a)コロイドシリカと、
(b)臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のオニウム化合物と、
(c)(a)および(b)の水性キャリアーと、
を含んで成る、化学的機械的研磨(CMP)組成物であって、
該組成物は5以下のpHを有する、CMP組成物。
【請求項2】
該コロイドシリカが、組成物中に0.05~35wt%の範囲の量で存在する、請求項1のCMP組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のオニウム塩が、組成物1グラム当たり、0.04~200マイクロモルの範囲の量で、該組成物中に存在する、請求項1のCMP組成物。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
該pHが2~5の範囲にある、請求項1のCMP組成物。
【請求項6】
(a)0.1~10wt%のコロイドシリカと、
(b)臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、1グラム当たり0.4~20マイクロモルの少なくとも1種のホスホニウム塩と、
(c)(a)および(b)の水性キャリアーと、
を含んで成る、化学的機械的研磨(CMP)組成物であって、
該組成物は、5以下のpHを有する、CMP組成物。
【請求項7】
該コロイドシリカが、1~6wt%の範囲の量で、該組成物中に存在する、請求項6のCMP組成物。
【請求項8】
少なくとも1種のホスホニウム塩が、組成物1グラム当たり、1~10マイクロモルの範囲の量で、該組成物中に存在する、請求項6のCMP組成物。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
該pHが、2~5の範囲である、請求項6のCMP組成物。
【請求項11】
半導体基材の表面を、請求項1のCMP組成物で磨耗させることを含む、該基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。
【請求項12】
(削除)
【請求項13】
半導体基材の表面を、請求項6のCMP組成物で磨耗させることを含む、該基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法。
【請求項14】
半導体基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法であって、
該方法は:
(a)半導体基材の表面と、研磨パッドおよび水性CMP組成物とを接触させる工程であって、該CMP組成物は、5以下のpHを有し、そしてコロイドシリカと、臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された、少なくとも1種のホスホニウム塩と、それらの水性キャリアーとを含む工程と、
(b)少なくとも該半導体表面の一部分を磨耗させるのに充分な時間の間、該CMP組成物の一部分と、該パッドと該基材との間の該表面との接触を維持しながら、該研磨パッドと該基材との間で、相対的な動きを生じさせる工程と、
の各ステップを含んで成る、CMP法。
【請求項15】
該コロイドシリカが0.05~35wt%の範囲の量で、組成物中に存在する、請求項14のCMP法。
【請求項16】
少なくとも1種のホスホニウム塩が、組成物1グラム当たり、0.04~200マイクロモルの範囲の量で該組成物中に存在する、請求項14のCMP法。
【請求項17】
該CMP組成物のpHが、2~5の範囲である、請求項14のCMP法。
【請求項18】
(削除)
【請求項19】
該基材が、二酸化ケイ素を含む、請求項14のCMP法。」
第4.請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書において、「特許第5385142号の請求項1ないし請求項19に係る特許は、これを無効とする」との審決を求め、審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理を総合すると、請求人が主張する無効理由は、概略、次のとおりのものである。
1.無効理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件特許発明1ないし3、5ないし8、10ないし13は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
2.無効理由2(特許法第29条第2項)
(1)本件特許発明1ないし13は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件特許発明14ないし19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載されている技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
3.無効理由3(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明の記載が、マーカッシュ形式で特定された選択肢の陰イオンのすべてについて、本件特許発明1ないし19を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明したものではないから、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものである。したがって、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
4.無効理由4(特許法第36条第6項第1号)
本件特許の請求項1に関し、CMP組成物に含まれるオニウム塩の陰イオンX-は、「ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。」と特定されているが、オニウム塩の陰イオンの開示を本件特許発明1まで拡張できないから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものである。したがって、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項2ないし19も同様に、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
5.無効理由5(特許法第36条第6項第2号)
(1)本件特許の請求項1に関し、本件特許発明1の発明特定事項として、オニウム塩の陰イオンX-のマーカッシュ形式の選択肢として二価のイオンを含んでいるため、明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものである。したがって、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項2ないし19も同様に、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものであるから、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(2)本件特許の請求項11及び13に関し、本件特許発明11及び13の発明特定事項と記載された「該基材」が何を指すのか明確でないから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものである。したがって、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開2000-144109号公報
オニウム塩を含む水性CMP組成物及びこれを用いたCMP方法の発明が優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第2号証:特開2002-164308号公報
CMP方法を実施する目的、手順、対象物及び効果が優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第3号証:化学大辞典、株式会社東京化学同人発行、平成元年10月20日、第823ページ
コロイダルシリカとコロイドシリカが同一物を指すことが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第4号証:化学大辞典9、共立出版株式会社発行、平成元年8月15日、第708ページ、第802ないし805ページ
硫酸水素塩、リン酸二水素塩が水溶液中において酸性乃至弱酸性を示すこと及び燐酸水素塩が水溶液中において弱アルカリ性乃至中性を示すことが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第5号証:カーク・オスマー、エンサイクロペディアオブケミカルテクノロジー、ジョンワイリー・アンド・サンズ発行、昭和57年、第527ないし529ページ
水酸化ホスホニウムは強塩基であって、水中では本質的に100%イオン化していることが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第6号証:特表2005-501759号公報
水酸化ホスホニウムはホスホニウムイオンとヒドロキシドイオンとが完全にイオン化した化学構造を有することが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第7号証:ケミカル・コミュニケーション2006、アールエスシー・パブリッシング発行、平成18年6月4日、第2254ないし2256ページ
水酸化ホスホニウムは非常に安定で、酸との混合により対応する塩が容易に得られることが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第8号証:特公平7-5618号公報
水酸化ホスホニウムに弗化水素酸を反応させることにより、弗化ホスホニウム塩が得られることが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第9号証:オーストラリアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー2011、64、シーエスアイアールオー・パブリッシング発行、2011年11月23日、第1560ないし1567ページ
ホスホニウムヒドロキシドの水溶液を対応する無機酸と中和させることにより、各種のホスホニウム無機塩が得られることが事実であることを立証するためのもの。
甲第10号証:分析証明書(I)、2017年6月5日、ゴドフリー・ウェイド、ワン・ホンギュ
ホスホニウム塩が、弱酸性水溶液中、硼酸の存在下においても変化を受けることなく、解離したイオンとして安定に存在することを立証するためのもの。
甲第11号証:分析証明書(II)、2017年6月5日、ゴドフリー・ウェイド、ワン・ホンギュ
ホスホニウムヒドロキシドと硼酸によるホスホニウム塩が、幅広いpHの弱酸性水溶液中、解離したイオンとして安定に存在することを立証するためのもの。
甲第12号証:オーガニック・ケミカルズ、カタログ2004-2005、No.37の抜粋、東京化成工業株式会社発行、平成16年
優先日直前に市販され入手可能なホスホニウム塩試薬のうち、およそ半分(53%)を占める数のホスホニウム塩が臭化物塩であることが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第13号証:オーガニック・ケミカルズ、カタログ2006-2007、No.38の抜粋、東京化成工業株式会社発行、平成18年
優先日直前に市販され入手可能なホスホニウム塩試薬のうち、およそ半分(48%)を占める数のホスホニウム塩が臭化物塩であることが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
甲第14号証:特開平11-116948号公報
優先日前にカチオン系のアルキル化合物とアニオン系のシリカ粒子とを組み合わせて使用することは技術常識であったことを立証するためのもの。
第5.被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書において「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書、口頭審理を総合すると、概略次のとおり主張している。
1.請求人の主張する無効理由1(特許法第29条第1項第3号) について
本件特許発明1ないし3、5ないし8、10ないし13は、甲第1号証に記載された発明ではない。
2.請求人の主張する無効理由2(特許法第29条第2項) について
(1)本件特許発明1ないし13は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明14ないし19は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載されている技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3.請求人の主張する無効理由3(特許法第36条第4項第1号)について
発明の詳細な説明の記載は、本件特許発明1ないし19を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明したものであるから、特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではない。
4.請求人の主張する無効理由4(特許法第36条第6項第1号)について
本件特許の請求項1ないし19は、特定のホスホニウム塩に限定されているものであるから、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。
5.請求人の主張する無効理由5(特許法第36条第6項第2号)について
(1)本件特許の請求項1ないし19は、特定のホスホニウム塩に限定され、明確なものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
(2)本件特許の請求項11に関し、本件特許発明11の発明特定事項と記載された「該基材」は「半導体基材」と限定され、明確なものであるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。
[証拠方法]
乙第1号証:特公平5-65445号公報
オニウム塩はシリカとは組み合わせて使用すべきではないことが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
乙第2号証:特開2005-101545号公報
オニウム塩はシリカとは組み合わせて使用すべきではないことが優先日前に公知であったことを立証するためのもの。
第6.当審の判断
事案に鑑み無効理由3、無効理由4,無効理由5、無効理由2、無効理由1の順に判断する。
1.無効理由3(特許法第36条第4項第1号)
発明の詳細な説明の記載が、マーカッシュ形式で特定された選択肢の陰イオンのすべてについて、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明したものではないことについて
(1)判断
本件訂正により、本件特許発明1に係るオニウム化合物は、実質的に実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種」のホスホニウム化合物を意味することとなった。
また、本件特許発明6及び14に係るホスホニウム塩は、実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のホスホニウム塩」に限定された。
したがって、発明の詳細な説明の記載が、本件特許発明1、本件特許発明1を引用する本件特許発明2、3、5及び11、また、本件特許発明6、本件特許発明6を引用する本件特許発明7、8、10及び13、並びに、本件特許発明14、本件特許発明14を引用する本件特許発明15ないし17及び19を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明したものではないとはいえない。
(2)請求人の主張
請求人は、「本件特許明細書段落[0045]~[0055]の実施例の例1~3には、水酸化テトラブチルホスホニウムの記載があるが、前記した理由によりヒドロキシルイオンが実質的に存在し得ないことに鑑みれば、これはCMP組成物を調製するための原料を記載したものにすぎず、酸性のCMP組成物に含まれる成分としての実施の態様を示すものとは認識できないことを指摘しておく。」(審判請求書第8ページ第8ないし12行)旨の主張をする。
しかしながら、明細書の段落【0045】及び【0053】には、水酸化テトラブチルホスホニウムが実施例の原料として記載されていることは明らかであって、発明の詳細な説明の記載が、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に説明したものではないとはいえないから、請求人の主張を採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由3によって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19についての特許を無効とすることはできない。
2.無効理由4(特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19に関し、CMP組成物に含まれるオニウム塩の陰イオンX-は、「ヒドロキシルイオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸水素イオン、リン酸二水素イオン、リン酸水素イオン、スルファミン酸イオン、および過塩素酸塩イオンからなる群から選択される。」と特定されているが、オニウム塩の陰イオンの開示を本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19まで拡張できないことについて
(1)判断
本件訂正により、本件特許発明1に係るオニウム化合物は、実質的に実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種」のホスホニウム化合物を意味することとなった。
また、本件特許発明6及び14に係るホスホニウム塩は、実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のホスホニウム塩」に限定された。
そして、「ホスホニウム化合物」や「ホスホニウム塩」を「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種」のものとすることにより、本件特許明細書の段落【0046】並びに【図1】及び【図2】に示されるような熱酸化物に対する高い除去速度を得ることができるものであるから、同段落【0008】に記載されるような「二酸化ケイ素等の半導体材料で、有用な除去速度を示す」という課題を解決することができるものである。
したがって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19のオニウム化合物やホスホニウム塩は、実施例に記載された特定のホスホニウム化合物やホスホニウム塩に限定され、熱酸化物に対する高い除去速度を得るという課題を解決できるのであるから、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19が、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
(2)請求人の主張
請求人は、「また、図1及び図2より、本件特許発明のCMP組成物は、従来のCMP組成物といえる『アンモニウム塩』を含有するCMP組成物の『熱酸化物(二酸化ケイ素)の除去速度』と同等であるから、『従来のCMP組成物と比較して、二酸化ケイ素の急速な除去までもを提供する。』とは言えないから、図1からは、『実施例において水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)が臭化物イオンを有するホスホニウム塩と同様の発明の効果を奏することについても明確に示されている(図1)。』とは言えない。したがって、本件特許発明1、6及び14に係るホスホニウム塩は、『本件特許の実施例において具体的に開示され、その作用効果がサポートされている特定のホスホニウム塩に限定』されているとは言えない。」(口頭審理陳述要領書第20ページ第1行ないし第10行)旨の主張をする。
しかしながら、図1及び図2から、実施例に記載された特定のホスホニウム化合物やホスホニウム塩が酸化物に対する高い除去速度を得ていることが理解できるから、「『従来のCMP組成物と比較して、二酸化ケイ素の急速な除去までもを提供する。』とは言えない」旨の請求人の主張を採用することはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由4によって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19についての特許を無効とすることはできない。
3.無効理由5(特許法第36条第6項第2号)
3-1.本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19の発明特定事項として、オニウム塩の陰イオンX-のマーカッシュ形式の選択肢として二価のイオンを含んでいるため、明確でないことについて
(1)判断
本件訂正により、本件特許発明1に係るオニウム化合物は、実質的に実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種」のホスホニウム化合物を意味するものとなった。
また、本件特許発明6及び14に係るホスホニウム塩は、実施例において具体的に開示された「臭化テトラフェニルホスホニウム(Ph4PBr)、臭化メチルトリフェニルホスホニウム(MePh3PBr)、臭化エチルトリフェニルホスホニウム(EtPh3PBr)、臭化ブチルトリフェニルホスホニウム(BuPh3PBr)、臭化ヘキシルトリフェニルホスホニウム(HexPh3PBr)、臭化ベンジルトリフェニルホスホニウム(BzPh3PBr)、臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)、水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された少なくとも1種のホスホニウム塩」に限定された。
したがって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19において、オニウム塩の陰イオンX-のマーカッシュ形式の記載はなくなったので、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19が明確でないとはいえない。
(2)請求人の主張
請求人は、「また、本件特許明細書には、『陰イオン』である『ヒドロキシルイオン』と『臭化物イオン』に関する効果の相違が示されておらず、CMP組成物の原料として、『水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)』及び『臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)』を異なる選択肢とすることの技術的意義が不明である。」(口頭審理陳述要領書第21ページ第5行ないし第9行)旨の主張をする。
しかしながら、「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)」及び「臭化テトラブチルホスホニウム(Bu4PBr)」を異なる選択肢とすることの技術的意義と、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19が明確であるか否かとは無関係であるから、請求人の主張を採用することはできない。
3-2.本件特許発明11及び13の発明特定事項として記載された「該基材」が何を指すのか明確でないことについて
(1)判断
本件特許発明11の発明特定事項である「該基材」は、本件訂正により、「半導体基材」と限定され、基材が何であるかが明確となり、本件特許発明11の記載及び本件特許発明11を引用する本件特許発明13の記載も明確となった。
3-3.まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19は、明確でないとはいえず、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。
したがって、無効理由5によって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19についての特許を無効とすることはできない。
4.無効理由2(特許法第29条第2項)
4-1.本件特許発明1に対して
(1)甲第1号証
甲第1号証(特開2000-144109号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア.「【請求項1】(a)粒径が0.001~1μmの砥粒0.1~15重量%、(b)酸化剤0.5~15重量%、(c)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアリールアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラアリールホスホニウムヒドロキシドより選ばれた水酸基を有する化合物と無機酸とを反応させて得られたオニウム塩0.1~10重量%、および(d)無機酸または有機酸、を含有するpH1~6の水性研磨剤スラリー。
【請求項2】 オニウム塩が、弗酸塩、硼酸塩、硫酸塩および燐酸塩より選ばれたオニウム化合物である、請求項1に記載の研磨剤スラリー。」
イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、集積回路や半導体の製造の際に、単一工程で金属膜や絶縁層膜を研磨するに用いる化学機械研磨(CMP)用スラリーに関する。」
ウ.「【0003】この半導体ウエハを製造する過程において、絶縁層を削除し、金属層を表面に平坦に露出させるためにウエハ表面を化学機械研磨(CMP研磨)することが行われる。例えば、窒化チタン層およびタングステン膜の金属層、二酸化珪素、窒化珪素等の絶縁膜を有し、銅、アルミニウム等の配線を有するウエハの化学機械研磨においては、通常、アルミナ、シリカ、酸化セリウム等の砥粒、酸化剤、例えば過酸化水素、硝酸鉄、アンモニウムセリウムナイトレート、酸および純水を含有するpHが1~6の研磨剤スラリーが使用される。」
エ.「【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、保存安定性に優れ、研磨速度の速い水性研磨剤スラリーの提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、(a)粒径が0.001μmの砥粒0.1~15重量%、(b)酸化剤0.5~15重量%、(c)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアリールアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラアリールホスホニウムヒドロキシドより選ばれた水酸基を有する化合物と無機酸とを反応させて得られたオニウム塩0.1~10重量%、および(d)無機酸または有機酸、を含有するpH1~6の水性研磨剤スラリーを提供するものである。」
オ.「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
砥粒(a):研磨剤スラリ-中の砥粒としては、コロイダルシリカ、ヒュ-ムドシリカ等の二酸化ケイ素、ベ-マイト、アルミナ、アルミナゾル、ヒュ-ムドアルミナ等のアルミニウム酸化物、酸化セリウム、炭化珪素および酸化クロミウムが挙げられる。これら砥粒は平均粒径が0.001~1.0μm 、好ましくは0.02~0.5μmの粒子であり、ニッケルイオン、銅イオン等で表面が変成されていてもよい。好ましくは、コロイダルシリカ、ヒュ-ムドシリカ、ベ-マイト、アルミナが使用される。
【0011】研磨剤スラリ-中に占める(a)成分の砥粒の固形分含有量は、砥粒の種類、用途により異なるが、0.1~20重量%、好ましくは0.5~10重量%、より好ましくは1~3重量%である。0.1重量%未満では実用的な研磨速度が得られない。20重量%を超えても効果のより向上は望めず、多く用いるのは経済的に不利である。」
カ.「【0013】オニウム塩(c):オニウム塩は、研磨速度を向上させるとともに、研磨剤スラリ-の貯蔵安定性に寄与する。オニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアリ-ルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラアリ-ルホスホニウムヒドロキシドより選ばれた水酸基を有する化合物と無機酸とを反応させて得られる。原料の無機酸としては、弗酸、硼酸、硫酸および燐酸が挙げられる。」
キ.「【0015】同じく、原料のテトラアリ-ルアンモニウムヒドロキシドとしては、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラナフチルアンモニウムヒドロキシド、テトラクロロフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシドが挙げられる。同様に、オニウム塩を構成するテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドとしては、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルエチルホスホニウムニウムヒドロキシド、トリエチルメチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルブチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルブチルホスホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルブチルホスホニウムヒドロキシドおよびトリエチルベンジルホスホニウムヒドロキシドが挙げられ、テトラアリールホスホニウムヒドロキシドとしては、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラナフチルホスホニウムヒドロキシド、テトラクロロフェニルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルホスホニウムヒドロキシドが挙げられる。このオニウム塩は、研磨剤スラリー中、0.1~10重量%用いられる。通常、砥粒(a)1重量部に対し、0.04~5重量部、好ましくは0.1~2重量部の割合で用いられる。
【0016】無機酸、有機酸(d):無機酸、有機酸は、研磨剤スラリーを等電点から遠ざけるためにスラリーのpHを1~6に調整するために加えられるとともに、金属の酸化物を形成させて研磨速度を向上させる作用をする。かかる無機酸としては、研磨速度向上の面からフッ化水素酸、硫酸、硝酸、燐酸、硼酸、フルオロ珪酸、塩酸等の強酸が好ましい。
【0017】水性媒体:分散媒としては、水単独、または水を主成分(分散媒中、70~99重量%)とし、アルコール、グリコール等の水溶性有機溶媒を副成分(1~30重量%)として配合したものが使用できる。」
ク.「【0027】実施例2
0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水 88重量部に、平均粒径0.3μmのアルミナ 3重量部、硝酸第二鉄 5重量部、硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド 0.4重量部、テトラメチルアンモニウム水素マレエ-ト 0.3重量部、ラウリルアルコ-ルポリオキシエチレンエ-テル 1重量部、ポリエチレングリコ-ル(分子量 300) 2重量部、二フッ化水素アンモニウム 0.2重量部の混合物をホモジナイザ-で混合し、さらに弗化水素水素酸を加えてpH 1.5の研磨剤スラリ-を調製した。
【0028】このようにして得た研磨剤スラリ-を3時間放置した後、厚み6000オングストロ-ムのタングステンとチタンブランケットのウエハ、およびテトラエチルオルトシリケ-トをプラズマ放電にて二酸化珪素(SiO2)膜を形成させたパイロットテストピ-スを、実施例1と同じ条件で化学機械研磨を行った。タングステンの研磨速度は、2300オングストロ-ム、チタンの研磨速度は1240オングストロ-ム、二酸化珪素(SiO2)の研磨速度は110オングストロ-ムであった。」
ケ.「【0033】本発明の研磨剤スラリーは貯蔵安定性に優れ、半導体デバイスウエハの研磨剤スラリーとして用いたときは、向上したタングステン対二酸化珪素除去選択性を有し、かつ、タングステン、チタンの研磨速度が向上する。」
上記記載事項を総合し、技術常識を踏まえて整理すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「(a)アルミナと、
(b)硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドと、
(c)0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水と、
を含んで成る、化学機械研磨用研磨剤スラリーであって、
該スラリーは1.5のpHを有する、化学機械研磨用研磨剤スラリー。」(以下、「甲第1号証に記載された発明1」という。)
(2)対比
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明1とを対比すると、甲第1号証に記載された発明1における「0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水」は、本件特許発明1における「(a)および(b)の水性キャリアー」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明1における「アルミナ」は、本件特許発明1における「コロイドシリカ」と同様に「砥粒」の一種である。
さらに甲第1号証に記載された発明1における「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は、本件特許発明1における「オニウム化合物」に相当し、甲第1号証に記載された発明1における「テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は、本件特許発明1における「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)」と同様に「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシド」の一種である。
そして、甲第1号証に記載された発明1における「1.5のpH」は、本件特許発明1における「5以下のpH」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明1における「化学機械研磨用研磨剤スラリー」は、本件特許発明1における「化学的機械的研磨(CMP)組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明1の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「(a)砥粒と、
(b)テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物と、
(c)(a)および(b)の水性キャリアーと、
を含んで成る、化学的機械的研磨(CMP)組成物であって、
該組成物は5以下のpHを有する、CMP組成物。」
<相違点1>
「砥粒」が、本件特許発明1においては、「コロイドシリカ」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明1においては、「アルミナ」である点。
<相違点2>
「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」が、本件特許発明1においては「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)からなるオニウム化合物」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明1においては、「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」である点。
(3)相違点の判断
まず、相違点1について検討する。
甲第1号証には、段落【0010】に「研磨剤スラリ-中の砥粒としては、コロイダルシリカ、ヒュ-ムドシリカ等の二酸化ケイ素、ベ-マイト、アルミナ、アルミナゾル、ヒュ-ムドアルミナ等のアルミニウム酸化物、酸化セリウム、炭化珪素および酸化クロミウムが挙げられる。・・・中略・・・好ましくは、コロイダルシリカ、ヒュ-ムドシリカ、ベ-マイト、アルミナが使用される。」というように「砥粒」の一種として、「コロイダルシリカ(本件特許発明における「コロイドシリカ」に相当。)」が記載されている。しかしながら、甲第1号証には、実施例として具体的に示された化学機械研磨用研磨剤スラリー(本件特許発明における「CMP組成物」に相当。)について、「砥粒」として「コロイダルシリカ」を用いることは全く示されていない以上、「アルミナ」に代えて、単に多数例示されているだけの砥粒の中から、「コロイダルシリカ」だけを選択することは、その動機も不明であるから、当業者にとり容易であるとまではいえない。
そうすると、甲第1号証に記載された発明1から相違点1に係る本件特許発明1における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
次に、相違点2について検討する。
甲第1号証には、段落【0013】に「オニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアリ-ルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドおよびテトラアリ-ルホスホニウムヒドロキシドより選ばれた水酸基を有する化合物と無機酸とを反応させて得られる。原料の無機酸としては、弗酸、硼酸、硫酸および燐酸が挙げられる。」と記載されている。また、段落【0015】に「同様に、オニウム塩を構成するテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドとしては、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、ジメチルジエチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルエチルホスホニウムニウムヒドロキシド、トリエチルメチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルブチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルブチルホスホニウムヒドロキシド、ジエチルメチルブチルホスホニウムヒドロキシドおよびトリエチルベンジルホスホニウムヒドロキシドが挙げられ」というように「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」として、「テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(本件特許発明における「水酸化テトラブチルホスホニウム」に相当。)からなるオニウム化合物」を使用することが記載されている。しかしながら、甲第1号証には、実施例として具体的に示された化学機械研磨用研磨剤スラリーについて、「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」として「テトラブチルホスホニウムヒドロキシド」を用いることは全く示されていない以上、「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」に代えて、単に多数例示されているだけの「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」の中から、「テトラブチルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」だけを選択することは、その動機も不明であるから、当業者にとり容易であるとまではいえない。
そうすると、甲第1号証に記載された発明1から相違点2に係る本件特許発明1における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
そして、さらに検討すると、ここでは相違点1と相違点2を分けて検討したが、そもそも相違点1における「砥粒」と、相違点2における「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」の組み合わせの総数を考えると、組み合わせの候補となる「砥粒」の数と、組み合わせの候補となる「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」の数との積で表わされる多数の組み合わせが存在するから、その多数の組み合わせの中から、相違点1に係る「コロイダルシリカ」と相違点2に係る「テトラブチルホスホニウムヒドロキシドからなるオニウム化合物」との組み合わせを選択することは、当業者といえども容易であるとはいえない。
また、請求人が提出した甲第14号証(特開平11-116948号公報)の段落【0068】の「〔例1〕 スラリーのタングステンに対する性能を評価するため、化学機械的ポリシングスラリーを準備した。5.3重量%のシリカの水溶液、硝酸第2鉄の形態での53ppmの鉄、3.75重量%の過酸化水素及び0.05重量%のマロン酸から成る標準化学機械的ポリシングスラリーを準備した。シリカは、例3に記載されているスラリー成分と混ぜ合わす前に、事前に分散した。」との記載、同段落【0071】の【表1】のスラリー番号17の添加剤が「cetyltrimethyl ammoniumu hydroxide」(セチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)であることによれば、シリカとアンモニウム塩とを同時に使用することは従来から知られていたともいえるが、コロイドシリカとホスホニウム塩とを同時に使用することが従来から知られていたとまではいえない。
そして、本件特許発明1は、相違点1及び相違点2に係る発明特定事項を有することにより段落【0008】に記載されるような「二酸化ケイ素等の半導体材料で、有用な除去速度を示す」という課題を解決することができるものである。
そうすると、甲第1号証に記載された発明1から相違点1及び相違点2に係る本件特許発明1における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)請求人の主張
請求人は、「オニウム塩」が「臭化テトラブチルホスホニウム」等の「臭化物」である場合について、「そして、甲第1号証には、『無機酸』が記載されており、『臭化水素酸』をCMP組成物の原料として用いることが容易であることは、審判請求書第33頁第11行~第34頁第13行の『(ii) 陰イオンX-が臭化物イオン又はヨウ化物イオンである場合』において述べたとおりである。本件特許の図1及び図2の結果に基づけば、スルホニウム塩の陰イオンを具体的な『臭化物イオン』とすることによる効果は、当業者の予測を超えた顕著なものであるとは言えない。よって、甲第1号証において、シリカと、臭化物であるオニウム塩とを組み合わせて使用することは当業者が適宜なし得る事項である。」(口頭審理陳述要領書第8ページ第8ないし12行)旨の主張をする。
しかしながら、甲第1号証には、CMP組成物の原料として「臭化水素酸」を使用することの記載や示唆はなく、甲第1号証において、「オニウム塩」を「臭化テトラブチルホスホニウム」等の「臭化物」とすることが当業者にとって容易であるとはいえないから、請求人の主張を採用することはできない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由2によって、本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。
4-2.本件特許発明2、3、5及び11に対して
本件特許発明2、3、5及び11は、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。
上記4-1.のとおり、本件特許発明1が、甲第1号証に記載された発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件特許発明1に対してさらなる発明特定事項を付加した本件特許発明2、3、5及び11もまた、甲第1号証に記載された発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件特許発明2、3、5及び11についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、無効理由2によって、本件特許発明2、3、5及び11についての特許を無効とすることはできない。
4-3.本件特許発明6に対して
(1)甲第1号証
上記4-1.(1)の甲第1号証の記載事項を総合し、技術常識を踏まえて整理すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「(a)3重量部のアルミナと、
(b)0.4重量部の硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドと、
(c)0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水と、
を含んで成る、化学機械研磨用研磨剤スラリーであって、
該スラリーは1.5のpHを有する、化学機械研磨用研磨剤スラリー。」(以下、「甲第1号証に記載された発明2」という。)
(2)対比
本件特許発明6と甲第1号証に記載された発明2とを対比すると、甲第1号証に記載された発明2における「0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水」は、本件特許発明6における「(a)および(b)の水性キャリアー」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明2における「アルミナ」は、本件特許発明6における「コロイドシリカ」と同様に「砥粒」の一種である。
ここで、甲第1号証に記載された発明2における「3重量部のアルミナ」は、「砥粒」の一種であるアルミナを「3重量部」含有するものであるが、化学機械研磨用研磨剤スラリー全体からみれば、「3重量部のアルミナ」は「約3wt%のアルミナ」であるといえる。
そうすると、砥粒の含有量に関し、甲第1号証に記載された発明2における「3重量部」は、本件特許発明6における「0.1~10wt%」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明2における「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は、本件特許発明6における「ホスホニウム塩」に相当し、甲第1号証に記載された発明2における「テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は、本件特許発明6における「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)」と同様に「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシド」の一種である。
ここで、甲第1号証に記載された発明2における「0.4重量部の硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は、「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩」の一種である硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドを「0.4重量部」含有するものであるが、化学機械研磨用研磨剤スラリー全体からみれば、「0.4重量部の硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」は「約0.4wt%の硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」であるといえる。
更に検討すると、硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドの分子量に関し、硼酸の分子量が61.8であり、テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドの分子量が108.121であることから、硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドの分子量は169.121であるとする。
そうすると、分子量169.121の硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドは、1グラム当たり23.7マイクロモル存在すれば0.4wt%という含有量を満たすといえるから、「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩」の含有量に関し、甲第1号証に記載された発明2における「0.4重量部」は、本件特許発明6と同様に換算すれば「23.7マイクロモル」となる。
そして、甲第1号証に記載された発明2における「1.5のpH」は、本件特許発明6における「5以下のpH」に相当する。
また、甲第1号証に記載された発明2における「化学機械研磨用研磨剤スラリー」は、本件特許発明6における「化学的機械的研磨(CMP)組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明6と甲第1号証に記載された発明2の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「(a)0.1~10wt%の砥粒と、
(b)テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩と、
(c)(a)および(b)の水性キャリアーと、
を含んで成る、化学的機械的研磨(CMP)組成物であって、
該組成物は5以下のpHを有する、CMP組成物。」
<相違点3>
「砥粒」が、本件特許発明6においては、「コロイドシリカ」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明2においては、「アルミナ」である点。
<相違点4>
「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩」が、本件特許発明6においては「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)からなるホスホニウム塩」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明2においては、「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」である点。
<相違点5>
本件特許発明6においては、「ホスホニウム塩」の含有量が「1グラム当たり0.4~20マイクロモル」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明2においては、「ホスホニウム塩」がの含有量が「1グラム当たり0.4~20マイクロモル」ではない点。
(3)相違点の判断
相違点3及び相違点4について検討すると、上記4-1.(3)で検討した相違点1及び相違点2の判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明2から相違点3及び相違点4に係る本件特許発明6における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、相違点5について検討するまでもなく、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明6についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由2によって、請求項6に係る発明についての特許を無効とすることはできない。
4-4.本件特許発明7、8、10及び13に対して
本件特許発明7、8、10及び13は、本件特許発明6に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。
上記4-3.のとおり、本件特許発明6が、甲第1号証に記載された発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件特許発明6に対してさらなる発明特定事項を付加した本件特許発明7、8、10及び13もまた、甲第1号証に記載された発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件特許発明7、8、10及び13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、無効理由2によって、本件特許発明7、8、10及び13についての特許を無効とすることはできない。
4-5.本件特許発明14に対して
(1)甲第1号証
上記4-1.(1)の甲第1号証の記載事項を総合し、技術常識を踏まえて整理すると、甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「半導体デバイスウエハを研磨するための化学機械研磨(CMP)方法であって、
該方法は:
半導体デバイスウエハの表面と、化学機械研磨用研磨剤スラリーとを接触させる工程であって、該化学機械研磨用研磨剤スラリーは、1.5のpHを有し、そしてアルミナと、硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシドと、0.1μmカ-トリッジフィルタを通過した水とを含む工程を含んで成る、化学機械研磨法。」(以下、「甲第1号証に記載された発明3」という。)
(2)甲第2号証
甲第2号証(特開2002-164308号公報)には、次の事項が図面と共に記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化学的機械的研磨用スラリーに関し、特に半導体装置の製造において、埋め込み金属配線の形成時に用いる研磨液として好適な化学的機械的研磨用スラリーに関する。に半導体装置の製造において、埋め込み金属配線の形成時に用いる研磨液として好適な化学的機械的研磨用スラリーに関する。」
イ.「【0054】本発明の研磨用スラリーを用いたCMPは、例えば次のようにして行うことができる。絶縁膜が形成され、その絶縁膜に所定のパターン形状を持つ凹部が形成され、その上に金属膜が成膜された基板を容易する。この基板をスピンドル等のウェハキャリアに設置する。この基板の金属膜表面を、回転プレート等の定盤上に貼り付けられた研磨パッドに所定の圧力をかけて接触させ、基板と研磨パッドの間に研磨用スラリーを供給しながら、ウェハと研磨パッドを相対的に動かして(例えば両方を回転させて)研磨する。研磨用スラリーの供給は、別途に設けた供給管から研磨パッド上へ供給してもよいし、定盤側から研磨パッド表面へ供給してもよい。必要により、パッドコンディショナーを研磨パッドの表面に接触させて研磨パッド表面のコンディショニングを行ってもよい。
【0055】以上に説明した本発明の研磨用スラリーは、バリア金属膜が溝や接続孔等の凹部を有する絶縁膜上に形成され、その上にこの凹部を埋め込むように全面に導電性金属膜が形成された基板をCMP法により研磨して、埋め込み配線やビアプラグ、コンタクトプラグ等の電気的接続部を形成する場合に最も効果的に用いることができる。絶縁膜としては、シリコン酸化膜、BPSG膜、SOG膜が挙げられる。導電性金属膜としては、銅、銀、金、白金、チタン、タングテン、アルミニウム、これらの合金からなる膜を挙げることができる。バリア金属膜としては、タンタル(Ta)やタンタル窒化物、タンタル窒化シリコン等のタンタル系金属膜、チタン(Ti)やチタン窒化物等のチタン系金属膜、タングステン(W)やタングステン窒化物、タングステン窒化シリコン等のタングステン系金属膜を挙げることができる。中でも、本発明の研磨用スラリーは、導電性金属膜が銅系金属膜(銅膜又は銅を主成分とする銅合金膜)である場合においてより効果的に用いることができ、特に、導電性金属膜が銅系金属膜であり且つバリア金属膜がタンタル系金属膜である場合に効果的に用いることができる。」
ウ.「【0074】
【発明の効果】 以上の説明から明らかなように、本発明の研磨用スラリーを用いてCMPを行うことにより、高い研磨速度で、すなわち高スループットで、且つディッシングやエロージョンを抑制し、信頼性の高い電気的特性に優れた埋め込み型の電気的接続部を形成することができる。」
(3)対比
本件特許発明14と甲第1号証に記載された発明3とを対比すると、本件特許発明6と甲第1号証に記載された発明2との対比と同様の相当関係を有する。
これに加えて、甲第1号証に記載された発明3における「半導体デバイスウエハ」は、本件特許発明14における「半導体基材」に相当し、また、甲第1号証に記載された発明3における「化学機械研磨(CMP)方法」は、本件特許発明14における「化学的機械的研磨(CMP)方法」に相当し、さらに、甲第1号証に記載された発明3における「化学機械研磨用研磨剤スラリー」は、本件特許発明14における「水性CMP組成物」に相当する。
そうすると、本件特許発明14と甲第1号証に記載された発明3の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「半導体基材を研磨するための化学的機械的研磨(CMP)方法であって、
該方法は:
半導体基材の表面と、水性CMP組成物とを接触させる工程であって、該水性CMP組成物は、5以下のpHを有し、そして砥粒と、テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩と、それらの水性キャリアーとを含む工程
を含んで成る、CMP法。」
<相違点6>
「砥粒」が、本件特許発明14においては、「コロイドシリカ」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明3においては、「アルミナ」である点。
<相違点7>
「テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドからなるホスホニウム塩」が、本件特許発明14においては「水酸化テトラブチルホスホニウム(Bu4POH)からなるホスホニウム塩」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明3においては、「硼酸テトラメチルフォスホニウムヒドロキシド」である点。
<相違点8>
本件特許発明14においては「半導体基材の表面と、研磨パッドおよび水性CMP組成物とを接触させることを含む工程と、少なくとも該半導体表面の一部分を磨耗させるのに充分な時間の間、該CMP組成物の一部分と、該パッドと該基材との間の該表面との接触を維持しながら、該研磨パッドと該基材との間で、相対的な動きを生じさせる工程との各ステップを含んで成る」のに対して、甲第1号証に記載された発明3においては、これらのステップを含むかどうか明らかでない点。
(4)相違点の判断
相違点6及び相違点7について検討すると、上記4-1.(3)で検討した相違点1及び相違点2の判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明3から相違点6及び相違点7に係る本件特許発明14における発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得るとはいえない。
したがって、相違点8について検討するまでもなく、本件特許発明14は、甲第1号証に記載された発明3及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件特許発明14は、甲第1号証に記載された発明3及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本件特許発明14についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由2によって、本件特許発明14についての特許を無効とすることはできない。
4-6.本件特許発明15ないし17及び19に対して
本件特許発明15ないし17及び19は、本件特許発明14に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。
上記4-5.のとおり、本件特許発明14が、甲第1号証に記載された発明3及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、本件特許発明14に対してさらなる発明特定事項を付加した本件特許発明15ないし17及び19もまた、甲第1号証に記載された発明3及び甲第2号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本件特許発明15ないし17及び19についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではない。
よって、無効理由2によって、本件特許発明15ないし17及び19についての特許を無効とすることはできない。
5.無効理由1(特許法第29条第1項第3号)
5-1.本件特許発明1に対して
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明1は、前記4.4-1.(1)のとおりである。
(2)対比
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明1とを対比すると、前記4.4-1.(2)のとおりの相違点1及び相違点2がある。
(3)相違点の判断
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明1とは相違点1及び相違点2を有するから、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明1ではない。
(4)請求人の主張
請求人は、「しかしながら、甲第1号証の段落0010には『・・・研磨剤スラリー中の砥粒としては、・・・好ましくは、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、ベーマイト、アルミナが使用される。』と記載され、これらが均等に使用可能である旨が教示されている。」(審判事件弁駁書第3ページ第13ないし16行)及び「平成29年6月15日付け提出の無効審判請求書第37乃至38頁等において指摘したようにテトラアルキルホスホニウムヒドロキシドは甲第1号証に記載されている。テトラアルキルホスホニウムヒドロキシドは水酸化テトラアルキルホスホニウムと同義であり、水酸化テトラブチルホスホニウムを包含するものである。」(審判事件弁駁書第3ページ第23ないし27行)と主張している。
しかしながら、コロイダルシリカとテトラブチルホスホニウム(ヒドロキシド水酸化テトラブチルホスホニウム)とを同時に使用する実施例や比較例が甲第1号証に記載されていない以上、本件特許発明1が甲第1号証に記載されているとはいえないから請求人の主張は採用できない。
(5)まとめ
以上のとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明1ではないから、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由1によって、本件特許発明1についての特許を無効とすることはできない。
5-2.本件特許発明2、3、5及び11に対して
本件特許発明2、3、5及び11は、本件特許発明1に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。
したがって、本件特許発明2、3、5及び11と甲第1号証に記載された発明1とを対比すると、前記4.4-1.(2)のとおりの相違点1及び相違点2があるから、本件特許発明2、3、5及び11は、甲第1号証に記載された発明1ではない。
よって、本件特許発明2、3、5及び11についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由1によって、本件特許発明2、3、5及び11についての特許を無効とすることはできない。
5-3.本件特許発明6に対して
(1)甲第1号証
甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明2は、前記4.4-1.(1)及び4-3.(1)のとおりである。
(2)対比
本件特許発明6と甲第1号証に記載された発明2とを対比すると、前記4.4-3.(2)のとおりの相違点3ないし相違点5がある。
(3)相違点の判断
本件特許発明6と甲第1号証に記載された発明2とは相違点3ないし相違点5を有するから、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明2ではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明2ではないから、本件特許発明6についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由1によって、本件特許発明6についての特許を無効とすることはできない。
5-4.本件特許発明7、8、10及び13に対して
本件特許発明7、8、10及び13には、本件特許発明6に対して、さらなる発明特定事項を付加したものである。
したがって、本件特許発明7、8、10及び13と甲第1号証に記載された発明2とを対比すると、前記4.4-3.(2)のとおりの相違点3ないし相違点5があるから、本件特許発明7、8、10及び13は、甲第1号証に記載された発明2ではない。
よって、本件特許発明7、8、10及び13についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反するものではない。
したがって、無効理由1によって、本件特許発明7、8、10及び13についての特許を無効とすることはできない。
第7.むすび
以上のとおり、無効理由1ないし5によって、本件特許発明1ないし3、5ないし8、10、11、13ないし17及び19についての特許を無効とすることはできない。
また、本件特許発明4、9、12及び18は、訂正により削除されたので、本件特許発明4、9、12及び18についての特許に対する無効審判請求は不適法な請求であり、その補正をすることができないものであるから、特許法第135条の規定により却下する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-800077