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特許無効審判

2011-800159

発光ダイオード

審判番号
2011-800159
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2009-065948
登録番号
特許第4530094号(P4530094)
請求日
2011年09月05日
審決日
2015年04月16日
公報発行日
2018年04月27日
結論
訂正認容・請求不成立
当事者
  • 【請求人】エヴァーライト エレクトロニクス カンパニー リミテッド
  • 【請求人代理人】黒田 健二
  • 【請求人代理人】吉村 誠
  • 【被請求人】日亜化学工業 株式会社
  • 【被請求人代理人】鮫島 睦
  • 【被請求人代理人】言上 恵一
  • 【被請求人代理人】田村 啓
  • 【被請求人代理人】玄番 佐奈恵
  • 【被請求人代理人】古城 春実
  • 【被請求人代理人】牧野 知彦
  • 【被請求人代理人】加治 梓子
  • 【被請求人代理人】宮原 正志
審判長/審判官
  • 審判長 小松 徹三
  • 審判官 星野 浩一
  • 審判官 近藤 幸浩
分類
P1113.113-YA (H01L) / P1113.121-YA (H01L) / P1113.536-YA (H01L) / P1113.537-YA (H01L) / P1113.841-YA (H01L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第3項、特許法第134条の2第5項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第4項、特許法第44条第1項、特許法第134条の2第1項第1号、特許法第134条の3第5項、特許法第134条の3、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第4530094号「発光ダイオード」の特許無効審判事件についてされた平成26年5月1日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の決定(平成26年(行ケ)第10142号 平成26年12月1日)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯の概要 1 本件特許第4530094号の手続の経緯と、本件無効審判事件の手続の経緯の概要 平成 9年 7月29日 特願平10-508693号出願 (国内優先権主張 平成8年7月29日(特願平8-198585号) (以下、それぞれ、「第1優先日」、「第1優先権出願」         という。) 平成8年9月17日(特願平8-244339号) (以下、それぞれ、「第2優先日」、「第2優先権出願」         という。) 平成8年9月18日(特願平8-245381号) (以下、それぞれ、「第3優先日」、「第3優先権出願」         という。) 平成8年12月27日(特願平8-359004号) (以下、それぞれ、「第4優先日」、「第4優先権出願」         という。) 平成9年3月31日(特願平9-81010号) (以下、それぞれ、「第5優先日」、「第5優先権出願」         という。)) 平成14年 9月24日 第1世代分割出願(特願2002-27806             6号) 平成17年 5月19日 第2世代分割出願(特願2005-14709             3号) 平成18年 7月19日 第3世代分割出願(特願2006-19634             4号) 平成20年 1月 7日 第4世代分割出願(特願2008-269号              以下「原出願」という。) 平成21年 3月18日 本件出願(特願2009-65948号) 平成21年12月21日 手続補正書、意見書 平成22年 4月 2日 手続補正書、意見書 平成22年 5月 7日 特許査定 平成22年 6月18日 設定登録 平成22年 8月25日 特許公報発行 平成23年 9月 5日 無効審判請求 平成23年12月 9日 審判事件答弁書 平成24年 1月27日 審理事項通知 平成24年 3月15日 口頭審理陳述要領書(被請求人) 平成24年 3月16日 口頭審理陳述要領書(請求人) 平成24年 3月28日 上申書(被請求人) 平成24年 3月30日 口頭審理 平成24年 4月20日 上申書(請求人) 平成24年 5月 2日 上申書(被請求人) 平成24年 5月24日 上申書(請求人) 平成24年 6月12日 審決(請求不成立 以下「一次審決」という。             ) 平成24年10月18日 審決取消訴訟提起 (平成24年(行ケ)10362号) 平成25年 3月11日 訂正を認める審決の確定 (訂正審判2012-390168号) 平成25年 6月27日 判決(訂正を認める審決の確定により、一次審             決の取消し) 平成25年 8月19日 審理事項通知 平成25年 9月25日 口頭審尋 平成25年10月 9日 上申書(請求人) 平成25年10月17日 訂正を認める審決の確定の通知 平成25年12月10日 弁駁書 平成25年12月16日 同意確認通知 平成26年 1月 6日 回答書(被請求人) 平成26年 1月10日 補正許否の決定 平成26年 2月14日 審判事件答弁書 平成26年 5月 1日 審決(請求成立 以下「二次審決」という。) 平成26年 6月 9日 審決取消訴訟提起 (平成26年(行ケ)10142号) 平成26年12月 1日 決定(訂正審判2014-390128号が請             求されたことにより、平成23年法律第63号             改正前の特許法(以下「平成23年改正前特許             法」という。)181条2項による二次審決の             取消し) 平成26年12月 3日 通知書(同年12月5日発送) 平成26年12月15日 訂正請求(以下「本件訂正請求」という。) 平成27年 1月22日 弁駁書 付記:平成26年12月15日付け訂正請求は、平成26年12月3日付け通知書で指定した期間内に訂正の請求がされなかったため、平成23年改正前特許法第134条の3第5項の規定により、当該期間の末日である平成26年12月15日に、訂正審判2014-390128号の請求書に添付された明細書を援用した訂正の請求がされたものとみなしたものである(以下、訂正審判2014-390128号の「審判請求書」を「訂正請求書」といい、前記審判請求書に添付された「特許請求の範囲」、「明細書」をそれぞれ「訂正特許請求の範囲」、「訂正明細書」という。)。 2 本件特許第4530094号に係る他の審判事件の概要 (1) 無効2011-800021号 平成23年 2月 4日 無効審判請求 平成23年10月19日 審決(請求不成立) 平成23年11月24日 審決取消訴訟提起 (平成23年(行ケ)10391号) 平成24年 9月27日 判決(審決取消) 平成24年10月10日 上告・上告受理申立 平成25年 7月25日 無効審判請求、上告、上告受理申立の取下 (2) 無効2011-800079号 平成23年 5月23日 無効審判請求 平成24年 1月30日 審決(請求不成立) 平成24年 3月12日 確定 (3) 無効2012-800185号 平成24年11月 5日 無効審判請求 平成26年 1月20日 無効審判請求の取下 (4) 訂正2012-390168号 平成24年12月17日 訂正審判請求 平成25年 2月28日 審決(訂正認容) 平成25年 3月11日 確定 (5) 無効2013-800205号 平成25年10月31日 無効審判請求 平成25年11月22日 手続中止 (6) 訂正2014-390128号 平成26年 9月 3日 訂正審判請求 平成26年10月10日 上申書(本件の無効審判請求人が提出) 平成26年11月21日 上申書(本件の被請求人が提出) 平成26年12月 4日 上申書(本件の被請求人が提出) 平成26年12月15日 取下げ(平成23年改正前特許法134条の3             第4項の規定によるみなし取下げ。) 第2 訂正の請求 1 訂正の内容 平成26年12月15日付け訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の要旨は、本件特許第4530094号の明細書、および特許請求の範囲(当審注:訂正審判2012-390168号により訂正された明細書、および特許請求の範囲である。以下、それぞれ、「本件明細書」、「本件特許請求の範囲」という。)を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるものであり、訂正の内容は以下のとおりである(なお、下線部は訂正箇所である。)。 (1)訂正事項a 本件特許請求の範囲の請求項1において、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であることを特徴とする発光ダイオード。」 とあるのを、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、 前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード。」 と訂正する。 (2)訂正事項b 本件特許請求の範囲の請求項2ないし4を、削除する。 (3)訂正事項c 本件明細書の段落【0012】において、 「すなわち、本件第1発明に係る発光ダイオードは、窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であることを特徴とする。」 とあるのを、 「すなわち、本件第1発明に係る発光ダイオードは、窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする。」 と訂正する。 (4)訂正事項d 本件明細書の段落【0012】において、 「また、本件第2発明に係る発光ダイオードは、凹部内に配置された窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、前記凹部に充填されて前記LEDチップを覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、前記フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体を含むことを特徴とする。」 とあるのを、削除する。 (5)訂正事項e 本件明細書の段落【0033】、段落【0068】、段落【0102】、段落【0106】、段落【0109】、段落【0110】、段落【0111】、段落【0113】、段落【0114】、段落【0116】、段落【0117】、段落【0118】、段落【0119】、段落【0120】、および段落【0138】にそれぞれ記載された、「実施例1」をいずれも「参考例1」と訂正する。 (6)訂正事項f 本件明細書の段落【0033】、段落【0109】、および段落【0110】にそれぞれ記載された「参考例1」をいずれも、「参考例A」と訂正する。 (7)訂正事項g 本件明細書の段落【0033】、段落【0111】、および段落【0112】にそれぞれ記載された「実施例2」をいずれも、「参考例2」と訂正する。 (8)訂正事項h 本件明細書の段落【0113】に記載された「実施例3」をいずれも、「参考例3」と訂正する。 (9)訂正事項i 本件明細書の段落【0114】に記載された「実施例4」をいずれも、「参考例4」と訂正する。 (10)訂正事項j 本件明細書の段落【0033】、段落【0116】、および段落【0117】にそれぞれ記載された「実施例5」をいずれも、「参考例5」と訂正する。 (11)訂正事項k 本件明細書の段落【0033】、および段落【0118】にそれぞれ記載された「実施例6」をいずれも、「参考例6」と訂正する。 (12)訂正事項l 本件明細書の段落【0033】、および段落【0119】にそれぞれ記載された「実施例7」をいずれも、「参考例7」と訂正する。 (13)訂正事項m 本件明細書の段落【0120】に記載された「実施例8」をいずれも、「参考例8」と訂正する。 (14)訂正事項n 本件明細書の段落【0033】、および段落【0126】にそれぞれ記載された「参考例2」をいずれも、「参考例B」と訂正する。 (15)訂正事項o 本件明細書の段落【0138】に記載された「実施例12」をいずれも、「参考例12」と訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項aについて ア 訂正の目的 訂正事項aは、本件特許請求の範囲の請求項1に記載された発明特定事項である「互いに組成の異なる2種類以上」の「フォトルミネセンス蛍光体」について、「前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である」との限定を付加するものである。よって、訂正事項aは、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 イ 訂正の根拠(新規事項の有無) (ア)被請求人の主張(訂正請求書10-11頁) 窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと組み合わせて使用するフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体を用いることができることは、本件明細書の段落【0046】~【0064】などに記載されている。また、本件明細書の段落【0079】~【0086】には組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を用いる場合に、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を用いてよいこと(段落【0079】)、セリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を用いてよいこと(段落【0080】)等が記載されている。 よって、請求項1において、フォトルミネセンス蛍光体を、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体を含むものに特定する訂正を行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、平成23年改正前特許法第126条第3項に適合するものである。 (イ)請求人の主張(平成27年1月22日付け弁駁書2~5頁) 本件明細書の【0046】、【0064】、【0079】、【0084】記載によれば、「組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは記載されていない。したがって、請求項1において、フォトルミネセンス蛍光体を、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付活されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体を含むものに特定する訂正を行うことは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正ではなく、平成23年改正前特許法第126条第3項に適合しない。 (ウ)判断 a 本件明細書には、以下の記載がある。 (a)「【0046】 以下、本実施形態1の発光ダイオードの各構成部材について詳述する。 (フォトルミネセンス蛍光体) 本実施形態1の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、半導体発光層から発光された可視光や紫外線で励起されて、励起した光と異なる波長を有する光を発光するフォトルミネセンス蛍光体である。具体的にはフォトルミネセンス蛍光体として、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体である。本発明では、該蛍光体として、YとAlを含みセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体、又は、一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ce(但し、0≦r<1、0≦s≦1、Reは、Y、Gdから選択される少なくとも一種)であらわされる蛍光体を用いることが好ましい。…」 (b)「【0079】 発明の実施2. 本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。 この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。… 【0080】 (実施の形態2のフォトルミネセンス蛍光体) 実施の形態2の発光ダイオードに用いられるフォトルミネセンス蛍光体について詳細に説明する。実施の形態2においては、上述したように、フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。」 b 上記a(a)によれば、実施形態1の発光ダイオードに用いるフォトルミネセンス蛍光体として、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」が記載されている。そして、上記a(b)によれば、実施の形態2の発光ダイオードは、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を用いるものであるところ、「フォトルミネセンス蛍光体として組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたフォトルミネセンス蛍光体を使用した以外は、実施の形態1と同様に構成され、蛍光体の使用方法は実施の形態と同様である。」との記載がある。前記記載によれば、実施の形態2の発光ダイオードに用いるフォトルミネセンス蛍光体は、実施形態1の発光ダイオードに用いるフォトルミネセンス蛍光体であって、組成の異なる2種類以上の蛍光体、すなわち、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であって、組成の異なる2種類以上蛍光体であると認められる。してみると、訂正事項aは、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正と認められる。 c 請求人の主張について、以下、検討する。 請求人が引用する本件明細書の【0064】、【0079】、【0084】には、以下の記載がある(下線は当審が付加した。)。 (a)「【0064】 本願発明の発光ダイオードにおいては、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよい。これによって、蛍光発光中のRGBの波長成分を増やすことができ、これに、例えばカラーフィルターを用いることによりフルカラー液晶表示装置用としても利用できる。」 (b)「【0079】 発明の実施2. 本発明に係る実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子として発光層に高エネルギーバンドギャップを有する窒化ガリウム系半導体を備えた素子を用い、フォトルミネセンス蛍光体として、互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体、好ましくはセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体を含む蛍光体を用いる。これにより実施の形態2の発光ダイオードは、発光素子によって発光されるLED光の発光波長が、製造バラツキ等により所望値からずれた場合でも、2種類以上の蛍光体の含有量を調節することによって所望の色調を持った発光ダイオードを作製できる。この場合、発光波長が比較的短い発光素子に対しては、発光波長が比較的短い蛍光体を用い、発光波長が比較的長い発光素子には発光波長が比較的長い蛍光体を用いることで発光ダイオードから出力される発光色を一定にすることができる。 蛍光体に関して言うと、フォトルミネセンス蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を用いることもできる。但し、0<r≦1、0≦s≦1、Reは、Y、Gd、Laから選択される少なくとも一種である。これにより発光素子から放出された可視光域における高エネルギーを有する光が長時間高輝度に照射された場合や種々の外部環境の使用下においても蛍光体の変質を少なくできるので、発光色の色ずれや発光輝度の低下が極めて少なく、かつ高輝度の所望の発光成分を有する発光ダイオードを構成できる。」 (c)「【0084】 このようなフォトルミネセンス蛍光体は、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaの原料として酸化物、又は高温で容易に酸化物になる化合物を使用し、それらを化学量論比で十分に混合して原料を得る。又は、Y、Gd、Ce、La、Smの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈したものを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムとを混合して混合原料を得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウム等のフッ化物を適量混合して坩堝に詰め、空気中1350~1450℃の温度範囲で2~5時間焼成して焼成品を得、次に焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通すことで得ることができる。 本実施形態2において、組成の異なる2種類以上のセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は、混合して用いても良いし、それぞれ独立して配置(例えば、積層)して用いても良い。2種類以上の蛍光体を混合して用いた場合、比較的簡単に量産性よく色変換部を形成することができ、2種類以上の蛍光体を独立して配置した場合は、所望の色になるまで重ね合わせることにより、形成後に色調整をすることができる。また、蛍光体をそれぞれ独立して配置して用いる場合、LED素子に近いほうに、光をより短波長側で吸収発光しやすい蛍光体を設け、LEDより離れた所に、それよりも長波長側で吸収発光しやすい蛍光体を配置することが好ましい。これによって効率よく吸収及び発光させることができる。」 上記記載について検討すると、【0064】には、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上の(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体を混合して用いてもよいことが記載されている。しかしながら、該記載は、実施の形態2の発光ダイオードに用いても良い蛍光体として、(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体を挙げているのであって、実施の形態2の発光ダイオードに用いる蛍光体が(Y1-p-q-rGdpCeqSmr)3Al5O12フォトルミネセンス蛍光体に限られる旨の記載ではない。 また、【0079】には、実施の形態2の発光ダイオードに用いるフォトルミネッセンス蛍光体に用いることもできる蛍光体として、一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体が記載されている。しかしながら、該記載は、用いることができる蛍光体として一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体を挙げているのであり、実施の形態2の発光ダイオードに用いる蛍光体が一般式(Re1-rSmr)3(Al1-sGas)5O12:Ceで表されるセリウムで付活された蛍光体に限られる旨の記載ではない。 さらに、【0084】の記載は、【0083】で説明する「実施形態2に用いられるセリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)」の製造方法を説明する記載であるから、実施の形態2の発光ダイオードに用いる蛍光体の原料が、Y、Gd、Ce、La、Al、Sm及びGaに限られる旨の記載ではない。 してみると、請求人が指摘する記載事項は、何れも実施の形態2で用いることができる蛍光体を示すにとどまり、実施の形態2で使用する蛍光体を限定するものではない。そうすると、請求人が指摘する記載箇所に「Lu、Sc、La」と「In」を含むことが記載されていないことを理由にして、実施の形態2には「Lu、Sc、La」と「In」を含むフォトルミネッセンス蛍光体を用いることが記載されていないとすることはできない。 よって、請求人の主張は採用できない。 d 以上のとおり、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、平成23年改正前特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項に規定された要件を満たす。 ウ 訂正により実質上特許請求の範囲を拡張又は変更することの有無 訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、平成23年改正前特許法第134条の2第5項で準用する第126条第4項に規定された要件を満たす。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bに係る訂正は、請求項2ないし4を削除する訂正であるから、特許法第134条の2第1項第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。そして、訂正事項bに係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しないので、平成23年改正前特許法第134条の2第5項で準用する第126条第3項及び第4項に規定された要件を満たす。 (3)訂正事項c、dについて 訂正事項c、dに係る訂正は、訂正事項1、2に係る訂正に伴って特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるものである。そして、上記訂正事項1、2と同様の理由により、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。したがって、平成23年改正前特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とし、同条第5項で準用する第126条第3項及び4項に規定された要件を満たす訂正である。 (4)訂正事項e~oについて 訂正事項e~oに係る訂正は、訂正事項1、2に係る訂正に伴って特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるものであり、「実施例1」を「参考例1」に訂正し、以下同様に、「参考例1」を「参考例A」に、「実施例2」を「参考例2」に、「実施例3」を「参考例3」に、「実施例4」を「参考例4」に、「実施例5」を「参考例5」に、「実施例6」を「参考例6」に、「実施例7」を「参考例7」に、「実施例8」を「参考例8」に、「参考例2」を「参考例B」に、「実施例12」を「参考例12」に訂正するするものである。してみると、訂正事項e~oに係る訂正は、何れも明瞭でない記載の釈明を目的とし、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。したがって、平成23年改正前特許法第134条の2第1項ただし書第3号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とし、同条第5項で準用する第126条第3項及び4項に規定された要件を満たす訂正である。 (5)まとめ したがって、本件訂正は、平成23年改正前特許法第134条の2第1項並びに同条第5項で準用する特許法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、適法な訂正と認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、訂正後の請求項1に記載した次のとおりのものと認められる。 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、 前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード。」 本件訂正発明を、以下のとおり、構成要件に分説する。 A: 窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、 B: 該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 C: 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 D: 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 E: かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、 F: 前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である G: ことを特徴とする発光ダイオード。」 第4 請求人が主張する無効理由の概要及び証拠方法 平成25年12月10日付け弁駁書において、審判請求書で主張した無効理由1~3(甲1に基づく進歩性欠如)及び無効理由4(甲2に基づく進歩性欠如)を撤回(前記弁駁書の「第3(1)」参照。)し、前記弁駁書で追加した無効理由(下記の無効理由7~9)は、平成26年1月10日付け補正許否の決定により認められている。したがって、請求人が主張する無効理由は、以下の無効理由5~無効理由9である。 1 特許法第36条第6項第1号に規定する要件違反(以下「無効理由5」という。) ア 本件訂正請求前の主張(審判請求書27~29頁、平成24年3月16日付け口頭審理陳述要領書15~16頁、平成25年12月10日付け弁駁書63~64頁) 特許請求の範囲は、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmから選択された少なくとも1つの元素と、Al、Ga及びInから選択された少なくとも1つの元素とを含み、セリウムで付活されたガーネット系蛍光体に限定されないフォトルミネッセンス蛍光体が含まれるように記載されている。よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 本件訂正請求後の主張(平成27年1月22日付け弁駁書9~10頁) 本件訂正明細書には、「組成の異なる2種以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは、記載されていない。したがって、本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」は、発明の詳細な説明に記載されていない。 2 特許法第36条第4項の規定に反する実施可能要件違反(以下「無効理由6」という。) ア 本件訂正請求前の主張(審判請求書29頁、平成24年3月16日付け口頭審理陳述要領書15~16頁、平成25年12月10日付け弁駁書64~65頁) 実施例1と参考例1の蛍光体を同時に用いた場合、出願時の技術常識を考慮しても、本件明細書に実施可能に記載されている特定の実施の形態(実施例1)を、請求項に係る発明の外延に含まれる他の部分(参考例1)についての実施にまで拡張することができない。よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 イ 本件訂正請求後の主張(平成27年1月22日付け弁駁書10頁) 本件訂正明細書には、「組成の異なる2種以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」と「Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは、記載されていない。したがって、本件訂正明細書の発明の詳細な説明は、課題を解決できる発明を製造でき使用できるように記載されていない。 3 甲16に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(以下「無効理由7」という。) (1)分割要件違反について ア 本件訂正請求前の主張(平成25年12月10日付け弁駁書4~22頁) (ア)原出願(第4世代分割出願)には、使用する「フォトルミネセンス蛍光体」が、特定組成の蛍光体に限られる発明は記載されているが、特定の組成の蛍光体に限定されない発明は記載されていない。 (イ)分割出願が特許として登録され、その後、訂正請求がされたとしても、分割出願の要件を満たすためには、訂正前の発明が原出願の範囲内にあることが必要である。すなわち、分割要件違反があったにもかかわらず特許登録された場合、その後の訂正によって分割要件違反を解消することはできず、分割出願の出願日は、原出願日に遡及することはなく、現実の出願の日と認定される。 イ 本件訂正請求後の主張(平成27年1月22日付け弁駁書5~9頁) 原出願(第4世代分割出願)の明細書には、「組成の異なる2種以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは記載されていない。 (2)甲16に基づく新規性・進歩性欠如(平成25年12月10日付け弁駁書22~25頁) 本件訂正発明は、本件特許の出願(平成21年3月18日)前である平成20年7月10日に頒布された原出願の公開公報である特開2008-160140号公報(甲16)に記載された発明(以下「甲16発明」という。)と同一である。また、仮に本件訂正発明と甲16発明との間に相違点があるとしても、本件訂正発明は甲16発明に基いて当業者が容易に想到することができるものである。 よって、その特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してされたものである。 4 優先権の利益を享受できないことに基づく無効理由 (1)優先権について ア 本件訂正請求前の主張(平成25年12月10日付け弁駁書26~32頁) 第1~第5優先権出願には、組成が限定されていないフォトルミネセンス蛍光体を2種類以上用いることを示す記載はない。本件発明1については、優先権明細書には記載されていないことが明らかであるから、優先権の利益は享受されない。 また、第1~第5優先権出願には、いずれも、Lu及びScを含むイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体は記載されていない。よって、本件発明2は、優先権の利益は享受されない。 イ 本件訂正請求後の主張(平成27年1月22日付け弁駁書10~12頁) 第1~5優先権出願では、「組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」と「Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素」のうち、「Lu、Sc」と「In」を含むことは記載されていない。したがって、本件訂正発明については、優先権の利益を享受できない。 (2)甲25に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(以下「無効理由8」という。平成25年12月10日付け弁駁書32~49頁、平成27年1月22日付け弁駁書12~13頁) 本件訂正発明は、本件特許の原出願の出願日(平成9年7月29日)より前の平成8年11月に頒布された甲25号証に記載された発明(以下「甲25発明」という。)であり、又は、上記文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができないものである。 (3)甲26の1に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(以下「無効理由9」という。平成25年12月10日付け弁駁書49~62頁、平成27年1月22日付け弁駁書13頁) 本件訂正発明は、本件特許の原出願の出願日(平成9年7月29日)より前の1997年(平成9年)4月に頒布された甲26号証の1に記載された発明(以下「甲26発明」という。)であり、又は、上記文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができない。 5 証拠方法 甲第1号証 特開平5-152609号公報 甲第2号証 特開平7-99345号公報 甲第3号証 特開平7-176794号公報 甲第4号証 特開平8-7614号公報 甲第5号証 特公昭49-1221号公報 甲第6号証 「白色LED特許網の構築について」と題する被請求人ホー       ムページ掲載のプレスリリース 甲第7号証 特開平10-107325号公報 甲第8号証の1 「カーオーディオのLCD用高輝度白色バックライト」       (「電子技術」38巻7号) 甲第8号証の2 「電子技術」38巻6号(次号予告) 甲第9号証 特開平9-27642号公報 甲第10号証 蛍光体ハンドブック 甲第11号証 特開2000-286455号公報 甲第12号証 特公昭52-40959号公報 甲第13号証 平成21年12月21日付意見書 甲第14号証 検測服務報告(MEASUREMENT SERVICE        REPORT) 甲第15号証 電子メール 甲第16号証 特開2008-160140号公報 甲第17号証 知的財産高等裁判所平成24年9月27日判決 甲第18号証 知財高裁平成21年(行ケ)第10065号 平成22年        4月14日判決 甲第19号証 東京高裁平成14年(行ケ)第188号判決 甲第20号証 特許願(平成8年特願第198585号) 甲第21号証 特許願(平成8年特願第244339号) 甲第22号証 特許願(平成8年特願第245381号) 甲第23号証 特許願(平成8年特願第359004号) 甲第24号証 特許願(平成9年特願第081010号) 甲第25号証 第264回蛍光体同学会講演予稿「白色LEDの開発と応 用」 甲第26号証 P.Schlotter他「Luminescence conversion of blue light emitting diodes」(Applied Physics A, April 1997,Volume64,Issue 4,pp 417‐ 418) 甲第27号証 特開平1-260707号公報 甲第28号証 Yuichi SATO他「Full-Color Fluorescent Display Devices Using a Near-UV Light-Emitting Diode」 (Jpn.J.Appl.Phys.Vol.35(1996) pp.L838‐L839 Part 2,No.7A, 1July 1996) 甲第29号証 特開平6-296043号公報 甲第30号証 平成21年10月15日付拒絶理由通知書 甲第31号証 BASF Aktiengesellschaft,Germany 甲第32号証 特開2001-77433号公報 第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法 1 特許法第36条第6項第1号に規定する要件違反(無効理由5)について (1)本件訂正請求前の主張に対して(訂正請求書12頁) 訂正後の請求項1に係る発明は、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体(以下、「特定組成の蛍光体」という。)を用いる技術手段を備えるように訂正されたから、訂正明細書の発明の詳細に記載したものになった。したがって、訂正後の請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)本件訂正請求後の主張に対して 請求人の主張は、訂正明細書には、実施形態2が「Lu、Sc、La」と「In」を含む蛍光体を用いる旨の記載がないことを根拠とする主張であるところ、被請求人は、上記「第2 2(1)イ(ア)」のとおり、訂正明細書に前記記載がある旨主張している。 2 特許法第36条第4項の規定に反する実施可能要件違反(無効理由6)について (1)本件訂正請求前の主張に対して(訂正請求書12~13頁) 訂正後の請求項1に係る発明は、特定組成の蛍光体を用いる技術手段を備えるように訂正されたから、訂正後の請求項1に係る発明は、二次審決において指摘された、光、熱、水分等により劣化する課題を解決できるものになり、本件明細書の発明の詳細な説明の欄は、それらの課題を解決できる発明を製造でき、使用できるように記載されている。したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 (2)本件訂正請求後の主張に対して 請求人の主張は、訂正明細書には、実施形態2が「Lu、Sc、La」と「In」を含む蛍光体を用いる旨の記載がないことを根拠とする主張であるところ、被請求人は、上記「第2 2(1)イ(ア)」のとおり、訂正明細書に前記記載がある旨主張している。 3 甲16に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(無効理由7)について (1)分割要件違反について ア 本件訂正請求前の主張に対して (ア)請求項1において、フォトルミネセンス蛍光体を特定組成の蛍光体に限定する訂正を行つた。この訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、原出願明細書に包含された発明となり、本件特許は、特許法第44条第1項所定の要件を満たすものになった(訂正請求書11~12頁)。 (イ)本件特許が分割要件を充足しているかどうかは、特許出願がされたとみなされる訂正後の発明について判断すべきことは当然である。請求人の主張(分割要件違反があったにもかかわらず特許登録された場合、その後の訂正によって分割要件違反を解消することはできない旨の主張)は失当である(平成26年2月14日付け審判事件答弁書30~53頁)。 イ 本件訂正請求後の主張に対して 請求人の主張は、訂正明細書には、実施形態2が「Lu、Sc、La」と「In」を含む蛍光体を用いる旨の記載がないことを根拠とする主張であるところ、被請求人は、上記「第2 2(1)イ(ア)」のとおり、訂正明細書に前記記載がある旨主張している。 (2)甲16に基づく新規性・進歩性欠如について(訂正請求書11~12頁) 本件訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、原出願明細書に包含された発明となり、本件特許は、特許法第44条第1項所定の要件を満たすものになった。したがって、原出願の公開公報は公知文献とならず、原出願の公開公報によって、訂正後の請求項1に係る発明の新規性が否定されることはない。 4 優先権の利益を享受できないことに基づく無効理由 (1)優先権について(平成26年2月14日付け審判事件答弁書53~56頁) 本件発明1は第1優先権出願(甲20)の全体に記載した事項の範囲内のものであって、第1優先権出願に基づく優先権の利益を享受できるものである。 また、審査基準第IV部 第2章4.1に記載された部分優先の考え方に従えば、本件発明2ないし4のうち、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体の部分については、第1優先権出願(甲20)を基礎とする優先権の効果が認められる。 (2)甲25に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(無効理由8)について(平成26年2月14日付け審判事件答弁書57~66頁) 本件訂正発明は、甲25により、新規性および進歩性は否定されない。 (3)甲26に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(無効理由9)について(平成26年2月14日付け審判事件答弁書66~74頁) 本件訂正発明は、甲26により、新規性および進歩性は否定されない。 5 証拠方法 被請求人が提出した乙号証は、以下のとおりである。 乙第1号証 日亜化学工業株式会社、第二部門 LED技術本部 第四技術部      、第一課 木谷素久氏による、平成23年7月1日付、報告書 乙第2号証の1 2008年、佐久間健著「サイアロン系蛍光体と発光素子ヘ        の応用」第1章(第6-8頁) 乙第2号証の2 東京大学学術機関リポジトリ 検索結果(http:// repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/ 2261/15750) 乙第3号証 LED照明ハンドブック、LED照明推進協議会編、平成18      年7月1日、オーム社発行 乙第4号証 無効2011-800079の審決 乙第5号証 入門エポキシ樹脂(新高分子文庫25)、室井宗一、石村秀一      共著、高分子刊行会、1988年6月20日、第1版 乙第6号証 無効2011-800021の取下通知 乙第7号証 平成26年1月30日付東京地裁平成23年(ワ)第3879      9号事件判決 乙第8号証 徳島大学大学院 森賀俊広教授意見書 乙第9号証 京都大学大学院法学研究科 松田一弘教授意見書 乙第10号証 イノベーション・ファクター研究センター 宮原諄二氏意見       書 乙第11号証 「半導体評価技術」、河東田隆編著、1989年2月28日       発行、産業図書株式会社 乙第12号証 京都大学大学院法学研究科 松田一弘教授意見書 乙第13号証 一橋大学 相澤英孝教授意見書 乙第14号証 北海道大学大学院法学研究科 吉田広志教授意見書 乙第15号証 甲26号証の1の翻訳(甲26号証の1の抄訳として添付さ       れたものに記載されていない部分の翻訳) 第6 無効理由についての判断 1 無効理由5について 本件訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、特定組成の蛍光体を用いる技術手段を備えるものとなった。そうすると、特許請求の範囲が特定組成の蛍光体に限定されない旨の請求人の本件訂正前の主張は採用できない。 また、発明の詳細な説明の記載が「組成の異なる2種以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」が、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは、上記「第2 2(1)イ(ウ)」に判断したとおりである。よって、請求人の本件訂正請求後の主張も採用できない。 したがって、無効理由5は理由がない。 2 無効理由6について 本件訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、特定組成の蛍光体を用いる技術手段を備えるものとなった。そうすると、訂正後の請求項1に係る発明は、光、熱、水分等により劣化する課題を解決できるものであり、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が訂正後の請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものと認められる。よって、請求人の本件訂正前の主張は採用できない。 また、発明の詳細な説明の記載は、「組成の異なる2種以上のフォトルミネセンス蛍光体を組み合わせ」る場合における「フォトルミネセンス蛍光体」が、「Lu、Sc、La」と「In」を含むことは、上記「第2 2(1)イ(ウ)」に判断したとおりである。よって、本件訂正請求後の請求人の主張も採用できない。 したがって、無効理由6は理由がない。 3 無効理由7について (1)分割要件違反について 本件訂正により、訂正後の請求項1に係る発明は、特定組成の蛍光体を用いる技術手段を備えるものとなり、原出願明細書に包含された発明となった。したがって、本件特許は、特許法第44条第1項所定の要件を満たすから、適法になされた分割出願と認められる。 (2)甲16に基づく新規性・進歩性欠如について 上記(1)のとおり、本件特許は、適法になされた分割出願と認められる。したがって、本件特許は、もとの特許出願の時(平成9年7月29日)にしたものとみなされるから、原出願の公開公報(甲16)は特許法第29条第1項第3号に規定する「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当しない。よって、無効理由7は理由がない。 4 優先権の利益を享受できないことに基づく無効理由 (1)優先権の効果について 本件訂正発明のうち第1優先権出願~第5優先権出願の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、それぞれ「第1優先権出願明細書等」などという。)に記載された発明については、優先権主張の効果が及ぶところ、被請求人は、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体の部分については、第1優先権出願を基礎とする優先権の効果が認められる旨主張する。そこで、第1優先権出願から優先権の効果が及ぶか否かについて検討する。 ア 本件訂正発明について 本件訂正発明は、上記第3で認定したとおりであり、構成要件Fは、「前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体」がそれぞれ含む元素について、「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含」んでおり、かつ、「Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含」む蛍光体であることを、選択肢の形式で表現している。 また、本件訂正明細書に記載された実施例10は、一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体を含有するものである。 イ 第1優先権出願明細書等に記載された発明について (ア)第1優先権出願明細書等には、以下の記載がある(当審注:下線は、当審が付加した。)。 a 特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップと、該LEDチップからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を有する発光ダイオードであって、 前記LEDチップの発光スペクトルのピークが400nmから530nmの発光波長を有すると共に、前記フォトルミネセンス蛍光体がRE3(Al,Ga)5O12:Ceであることを特徴とする発光ダイオード。 但し、REは、Y、Gd、Smから選択される少なくとも一種である。」 b 発明の実施の態様についての記載 「【0017】 …LEDチップ202からの発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの発光光との混色により白色系などが発光可能な発光ダイオードとすることができる。…」 c 発明の実施の態様の蛍光体についての記載 「【0019】 さらに、フォトルミネセンス蛍光体の含有分布は、混色性や耐久性にも影響する。すなわち、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部やモールド部材の表面側からLEDチップに向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度が高い場合は、外部環境からの水分などの影響をより受けにくく水分による劣化を抑制しやすい。… … 【0020】 本願発明のフォトルミネセンス蛍光体は、特にLEDチップと接する或いは近接して配置され放射照度として(Ee)=3W・cm-2以上10W・cm-2以下においても高効率に十分な耐光性有する発光ダイオードとすることができる。 【0021】 本願発明に用いられるフォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造のため、熱、光及び水分に強く、励起スペクトルのピークが450nm付近にさせることができる。… … 【0028】 本願発明の発光ダイオードにおいてこのようなフォトルミネセンス蛍光体は、2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよい。即ち、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてRGBの波長成分を増やすことができる。…」 d 発明の実施の態様のLEDについての記載 「【0029】 (LEDチップ102、202、702) 本願発明に用いられるLEDチップとは、RE3(Al,Ga)5O12:Ce蛍光体を効率良く励起できる窒化物系化合物半導体が挙げられる。…」 e 発明の実施の態様のコーティング部についての記載 「【0038】 (コーティング部101) 本願発明に用いられるコーティング部101とは、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものでありLEDチップの発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。…」 f 発光ダイオードの模式的断面図である図1は、以下のものである。 (イ)第1優先権出願明細書等に記載された発明 上記aによれば、 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップと、該LEDチップからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を有する発光ダイオードであって、前記LEDチップの発光スペクトルのピークが400nmから530nmの発光波長を有すると共に、前記フォトルミネセンス蛍光体がRE3(Al,Ga)5O12:Ce(但し、REは、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種である。)である発光ダイオード。」 が記載されている。 そして、上記b~eの記載によれば、発明の実施の態様として、 フォトルミネセンス蛍光体は、LEDチップと接して配置されること、 LEDチップからの発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの発光光との混色により白色系などが発光可能であること、 コーティング部は、マウント・リードのカップに設けられるものであり、LEDチップの発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有され、前記コーティング部の具体的材料としてはエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂が用いられること、 フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部の表面側からLEDチップに向かってフォトルミネセンス蛍光体の分布濃度が高いこと、 フォトルミネセンス蛍光体は、2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよく、即ち、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよいこと、 前記フォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造であること、 が記載されている。 さらに、上記d、eの記載を踏まえてfの図1を見ると、コーティング部101がLEDチップ102を覆っていることが理解できる。 してみると、第1優先権出願明細書等には、 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップと、 該LEDチップからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を有する発光ダイオードであって、 前記LEDチップの発光スペクトルのピークが400nmから530nmの発光波長を有すると共に、 前記フォトルミネセンス蛍光体がRE3(Al,Ga)5O12:Ce(但し、REは、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種である。)である発光ダイオードであって、 コーティング部は、マウント・リードのカップに設けられるものであり、LEDチップを覆い、LEDチップの発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体を含有し、前記コーティング部の具体的材料としてはエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂が用いられ、 前記フォトルミネセンス蛍光体は、LEDチップと接して配置され、 LEDチップからの発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの発光光との混色により白色系などが発光可能であり、 前記フォトルミネセンス蛍光体の分布濃度は、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部の表面側からLEDチップに向かって高く、 前記フォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造の2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよく、即ち、Al、Ga、Y及びGdやSmの含有量が異なる2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ceフォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよい、 発光ダイオード。」(以下「第1優先権出願発明」という。) が記載されている。 (ウ)対比 本件訂正発明と第1優先権出願発明を対比する。 a 本件訂正発明の「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップ」は、第2優先権出願発明の「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップ」に相当する。 b 本件訂正発明の「該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂」と、第1優先権出願発明の「コーティング部は、マウント・リードのカップに設けられるものであり、LEDチップを覆い、LEDチップの発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有され、前記コーティング部の具体的材料としてはエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐候性に優れた透明樹脂が用いられ」ることを対比する。 第1優先権出願発明の「コーティング部」は、「LEDチップを覆い」、「LEDチップの発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体を含有し」、「透明樹脂が用いられ」るものであるから、両者は相当関係にある。。 c 本件訂正発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオード」と、第1優先権出願発明の「LEDチップからの発光と、その発光によって励起されたフォトルミネセンス蛍光体からの発光光との混色により白色系などが発光可能であ」る「発光ダイオード」を対比すると、両者は相当関係にある。 d 本件訂正発明の「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」いることと、第1優先権出願発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体の分布濃度は、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部の表面側からLEDチップに向かって高」いことを対比すると、両者は相当関係にある。 e 本件訂正発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である」ことと、第1優先権出願発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体は、ガーネット構造の2種類以上のRE3(Al,Ga)5O12:Ce(但し、REは、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種である。)フォトルミネセンス蛍光体を混合させてもよい」ことを対比する。 第1優先権出願の明細書等には、実施例として、【0051】に(Y1.2Gd0.8)Al3O12:Ce(当審注:一般式と整合しないので、(Y1.2Gd0.8)3Al5O12:Ceの誤記と認められる。)、【0057】に(Y0.39Gd0.57Ce0.03Sm0.01)3Al5O12蛍光体が記載されていることを考慮すると、第1優先権出願発明の「RE3(Al,Ga)5O12:Ce(但し、REは、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種である。)フォトルミネセンス蛍光体」は、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種の元素を含み、且つ、Al,Gaから選択される少なくとも一種の元素を含むCeで付括されたガーネット系蛍光体を意味するものと解される。 してみると、両者は、「前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である」点で一致する。 f 以上のことから、両者は、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、 前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である発光ダイオード。」 の点で一致する。 (エ)実施例について 本件訂正明細書には、実施例10に「一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体」が記載されている。ここで、「一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ce」の蛍光体と、「一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ce」の蛍光体は、何れも第1優先権出願発明の「RE3(Al,Ga)5O12:Ce(但し、REは、Y,Gd,Smから選択される少なくとも一種である。)」に含まれるが、第1優先権出願の明細書等には、「一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体」を含む実施例は記載されていない。 (オ)小括 以上のことから、本件訂正発明のうち、「前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」を備える発明は、文言上、第1優先権出願発明と同一であるが、技術事項で対比すると、第1優先権出願発明に実施例10を追加する関係にあると言える。そこで、第2優先権出願について検討する。 ウ 第2優先権出願明細書等に記載された発明について (ア)第2優先権出願明細書等には、以下の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。)。 a 「【請求項1】 発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であるLEDチップと、該LEDチップからの発光の少なくとも一部を吸収し波長変換して発光するフォトルミネセンス蛍光体と、を有する発光装置であって、 前記LEDチップの主発光ピークが400nmから530nm内であると共に、前記フォトルミネセンス蛍光体がY3(Al,Ga)5O12:Ceである第1の蛍光体と、RE3Al5O12:Ceであって第1の蛍光体の主発光波長よりも長波長側に主発光波長がある第2の蛍光体とであることを特徴とする発光装置。 但し、REは、Y,Gd,Laから選択される少なくとも一種である。」 (イ)「【0053】 (実施例2) 発光素子として発光ピークが450nmのGaInN半導体を用いた。… 【0055】 銀メッキした銅製リードフレームの先端にカップを有するマウント・リードにLEDチップをエポキシ樹脂でダイボンディングした。LEDチップの各電極とマウント・リード及びインナー・リードと、をそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的導通を取った。 【0056】 一方、フォトルミネセンス蛍光体は、緑色系及び赤色系をそれぞれ必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して形成させた。 【0057】 形成された組成がY3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceであり緑色系が発光可能な第1の蛍光体と(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceであり赤色系が発光可能な第2の蛍光体をそれぞれ40重量部、エポキシ樹脂100重量部をよく混合してスリラーとさせた。このスリラーをLEDチップが配置されたマウント・リード上のカップ内に注入させた。注入後、フォトルミネセンス蛍光体が含有された樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうしてLEDチップ上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材が形成された。なお、コーティング部材には、LEDチップに向かってフォトルミネセンス蛍光体が徐々に多くしてある。その後、さらにLEDチップやフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成させた。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させた。こうして形成された発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色していた。 【0058】 こうして得られた白色系が発光可能な発光ダイオードの色度点、色温度、演色性指数を測定した。それぞれ、色度点(x=0.32,y=0.34)、色温度6000K、Ra(演色性指数)=72、発光光率は10lm/wであった。さらに耐侯試験として室温60mA通電、室温20mA通電、60℃90%RH下で20mA通電の各試験においてもフォトルミネセンス蛍光体に起因する変化は観測されず通常の青色系発光ダイオードと寿命特性に差がないことが確認できた。」 (イ)実施例について 上記(ア)bの記載によれば、第2優先権出願の明細書等には、実施例2として、組成がY3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceであり緑色系が発光可能な第1の蛍光体と(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceであり赤色系が発光可能な第2の蛍光体を含む発光ダイオードが記載されている。 (ウ)判断 以上によれば、本件訂正明細書等に記載された実施例10は、第2優先権出願の明細書等に記載されているものと認められる。 エ むすび 以上によれば、本件訂正発明のうち、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなっており、 かつ、前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上であり、 前記互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である発光ダイオード。」 の発明は、文言上、第1優先権出願明細書等に記載されており、その実施例10は、第2優先権出願明細書等に記載されているものと認められる。 したがって、本件訂正発明のうち、第1優先権出願に記載された上記発明についての第29条の規定の適用については、本件特許は、遅くとも第2優先権出願の時にされたものとみなす。 (2)甲25に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(無効理由8)について ア 甲25には、図面とともに以下の記載がある。 (ア)「3.白色LEDの製法 今回開発した白色LEDの製作プロセスを図1に示す。LEDチップとしては、InGaN系の青色SQW-LEDを用いた。また蛍光体は、Y2O3、Al2O3、Gd2O3、Ga3O3、CeO2の原料粉末を所定量ずつ混合したものを、1400℃ 程度の高温で焼成し、乾燥、分級などの処理をして合成した。ランプの組立の際、リードフレームのカップ底面にマウントしたLEDチップに対し、蛍光体を表面に薄くコーティングした。さらにチップを外部環境から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂で周囲を封止した。」 (イ)「4. 基本特性の評価 4.1 白色LEDの構造 図2に今回作成した白色LEDの構造図を示す。 基本的な構造についてはInGaNを使った青色LEDランプ2)と同じであるが、蛍光体をLEDチップ表面に薄く塗布している点が大きく異なっている。 LEDから放出された光は、蛍光体層の中に入射して層内で何回かの吸収と散乱を繰り返した後、外部へ取り出される。 LEDの発光は、図3に示されるような465nmをピークとする青色光であり半値幅30nmの非常に鋭いスペクトルをもっている。 この青色光の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され、蛍光体から淡黄緑色の蛍光(fuorescence)が発せられる。 放出された蛍光もやはり蛍光体層の中で吸収と散乱を受けながら外部へ取り出される。 結局最終的に外部へ取り出される光は、LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた図4のようなスペクトルになる。 スペクトルを見てわかるように、蛍光体から放出される光は約550nmをピークとする非常に幅広いスペクトルを示し、青~緑~赤の各成分をバランスよく含んだものとなっている。」 (ウ)「4.2 蛍光体の評価 今回白色LEDに使用した蛍光体は(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され、P46蛍光体Y3A15012:Ceと類縁関係にあたる。P46はフライングスポットスキャナなど特殊用途に使用されている長寿命・短残光の蛍光体である。10)11) 母体材料は、一般にYAG(ヤグ)として知られるY3Al5012(イットリウムアルミニウムガーネット)のYサイト、Alサイトの一部をGd、Gaでそれぞれ置換したもので、ガーネット構造の非常に安定な酸化物である。 図5にこの蛍光体の粉末X線回折図を示す。 表2は今回実験に使用した蛍光体の一覧である。 輝度や効率については、置換量=0のY3A15012:Ceの値を100として規格化した。 表2の丸1~丸6に対応する蛍光体について、青色LEDの発光波長に相当する460nmの光で励起した時の発光スペクトルを図6に示す。 図から、Y3Al5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(丸2、丸3)、YをGdで置換すると長波長側へ(丸4、丸5、丸6)へ、置換量に応じて連続的に発光波長が移動することがわかる。 図7は丸1~丸6の蛍光体の励起スペクトルである。 254nmや366nmなどのHg輝線ではほとんど励起されず、460nmの青色光による励起効率が最も高い。 すなわち青色LEDと組み合わせて白色光を作るうえで非常に都合のよい特性をもっていることがわかる。 GaやGdの置換量の変化にともなう励起ピーク波長の移動は、発光波長の場合と同様な傾向を示すことがこの図から見てとれる。」 (エ)「4.3 白色LEDの評価 表2の丸1~丸7に対応する蛍光体とピーク波長465nmの青色LEDを組み合わせてできる白色LEDの色再現範囲を図8に示す。 白色LEDの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点を結ぶ直線上に位置するので、丸1~丸7の蛍光体を使用することで色度図中央の広範な白色領域をすべてカバーすることができる。 図9は、LEDチップ上に塗布する蛍光体のコーティング量を変えてLEDの発光色変化を調べたものである。 予想された通りコーティング分散量を増やすと蛍光体の発光色へ、逆に減らすと青色LEDの発光色へと近づいていった。 白色LEDの電気光学特性については、光度3cd、発光出力2mW、効率5.01m/Wで、色調は(x,y)=(0.29,0.30)の純白色、色温度8000K、平均演色評価数Ra=85であった(半値角15°の配光特性のランプにおいて、順電流20mA、周囲温度25℃の場合の測定値)。また短残光の蛍光体を用いているため応答速度は120nsecと速かった。 LEDの明るさや見え方は流す電流値やカバーしているレンズの形状によって変えることができる。 図10は白色LEDの電流-相対光度特性を示すもので、電流の増加にしたがって光度も比例的に増えていくことがわかる。 図11はランプのレンズ形状を変えて配光特性を調べたもので、広い角度まで光を散らして視野角を広げたり、光を集光してビーム状にすることができることが確認できた。」 (オ)図1、図2は、以下のとおりである。 イ 甲25発明の認定 (ア)上記ア(ア)によれば、 リードフレームのカップ底面にLEDチップをマウントし、 LEDチップに対し、蛍光体を表面に薄くコーティングし、 チップを外部環境から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂で周囲を封止した白色LEDであって、 前記LEDチップは、InGaN系の青色SQW-LEDである、 白色LED。」 が開示されている。 (イ)図1の白色LEDの製作プロセスによれば、YAG蛍光体を樹脂に分散し、蛍光体コーティングすることが理解できる。そうすると、「LEDチップに対し、蛍光体を表面に薄くコーティング」することは、蛍光体を樹脂に分散し、LEDチップの表面に薄くコーティングすることである。 (ウ)上記ア(ウ)によれば、蛍光体は、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され、Y3Al5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(丸2、丸3)、YをGdで置換すると長波長側へ(丸4、丸5、丸6)へ、置換量に応じて連続的に発光波長が移動することが記載されている。 (エ)上記(イ)の記載によれば、LEDの発光は、465nmをピークとする青色光であり、この青色光の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され、蛍光体から淡黄緑色の蛍光が発せられ、LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた光が外部へ取り出される。 (オ)以上によれば、甲25には、 「リードフレームのカップ底面にLEDチップをマウントし、 蛍光体を樹脂に分散し、LEDチップの表面に薄くコーティングし、 チップを外部環境から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂で周囲を封止した白色LEDであって、 前記LEDチップは、InGaN系の青色SQW-LEDであり、 蛍光体は、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され、Y3Al5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(丸2、丸3)、YをGdで置換すると長波長側へ(丸4、丸5、丸6)へ、置換量に応じて連続的に発光波長が移動し、 前記LEDの発光は、465nmをピークとする青色光であり、この青色光の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され、蛍光体から淡黄緑色の蛍光が発せられ、LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた光が外部へ取り出される、 白色LED。」(以下「甲25発明」という。) が記載されている。 ウ 特許法第29条の刊行物該当性 上記イによれば、甲25発明が有する蛍光体は、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表されるから、甲25の蛍光体は、YとGdの元素を含んでおり、かつ、AlとGaの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である。 ここで、上記(1)エによれば、「互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である」発明についての特許法第29条の規定の適用については、遅くとも第2優先日(平成8年9月17日)に出願したものとみなされる。 甲25号証は、平成8年11月29日に東京大学生産技術研究所で開催された蛍光体同学会講演予稿であり、その頒布日(平成8年11月29日以降と解される)は、第2優先日(平成8年9月17日)以降である。したがって、甲第25号証は、特許法第29条第1項第3号の「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当しない。したがって、無効理由8は、理由がない。 念のため、甲25に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由を、以下に検討しておく。 エ 対比 本件訂正発明と甲25発明を対比する (ア)甲25発明の「InGaN系の青色SQW-LED」は、本件訂正発明の「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップ」に相当する。 (イ)本件訂正発明の「該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、…フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂」と、甲25発明の「蛍光体を樹脂に分散し、LEDチップの表面に薄くコーティング」したものを対比する。 はじめに、本件訂正発明の「コーティング樹脂」の技術的な意味を発明の詳細な説明の記載を参酌して検討する。 本件訂正明細書には以下の記載がある。 「【0077】 (コーティング部101) コーティング部101は、モールド部材104とは別にマウント・リードのカップに設けられるものであり、本実施の形態1では、発光素子の発光を変換するフォトルミネセンス蛍光体が含有されるものである。コーティング部の具体的材料としては、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーンなどの耐侯性に優れた透明樹脂や硝子などが適する。また、フォトルミネセンス蛍光体と共に拡散剤を含有させても良い。具体的な拡散剤としては、チタン酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素等を用いることが好ましい。 さらに、蛍光体をスパッタリングにより形成する場合、コーティング部を省略することもできる。この場合、膜厚を調整したり蛍光体層に開口部を設けることで混色表示が可能な発光ダイオードとすることができる。 【0078】 (モールド部材104) モールド部材104は、発光素子102、導電性ワイヤー103、フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部101などを外部から保護する機能を有する。本実施形態1では、モールド部材104にさらに拡散剤を含有させることが好ましく、これによって発光素子102からの指向性を緩和させることができ、視野角を増やすことができる。また、モールド部材104は、発光ダイオードにおいて、発光素子からの発光を集束させたり拡散させたりするレンズ機能を有する。従って、モールド部材104は、通常、凸レンズ形状、凹レンズ形状さらには、発光観測面から見て楕円形状やそれらを複数組み合わせた形状に形成される。また、モールド部材104は、それぞれ異なる材料を複数積層した構造にしてもよい。モールド部材104の具体的材料としては、主としてエポキシ樹脂、ユリア樹脂、シリコーン樹脂などの耐候性に優れた透明樹脂や硝子などが好適に用いられる。…」 「【0127】 (実施例10) 実施例10の発光ダイオードは、リードタイプの発光ダイオードである。 実施例10の発光ダイオードでは、参考例9と同様にして作製した450nmのIn0.05Ga0.95Nの発光層を有する発光素子を用いた。そして、銀メッキした銅製のマウントリードの先端のカップに発光素子をエポキシ樹脂でダイボンディングし、発光素子の各電極とマウント・リード及びインナー・リードとをそれぞれ金線でワイヤーボンディングし電気的に導通させた。 【0128】 一方、フォトルミネセンス蛍光体は、一般式Y3(Al0.5Ga0.5)5O12:Ceで表される緑色系が発光可能な第1の蛍光体と一般式(Y0.2Gd0.8)3Al5O12:Ceで表される赤色系が発光可能な第2の蛍光体とをそれぞれ以下のようにして作製して混合して用いた。すなわち、必要なY、Gd、Ceの希土類元素を化学量論比で酸に溶解した溶解液を蓚酸で共沈させた。これを焼成して得られる共沈酸化物と、酸化アルミニウム、酸化ガリウムと混合して混合原料をそれぞれ得る。これにフラックスとしてフッ化アンモニウムを混合して坩堝に詰め、空気中1400°Cの温度範囲で3時間焼成してそれぞれ焼成品を得た。焼成品を水中でボールミルして、洗浄、分離、乾燥、最後に篩を通して所定の粒度の第1と第2の蛍光体を作製した。 【0129】 以上のようにして作製された第1の蛍光体及び第2の蛍光体それぞれ40重量部を、エポキシ樹脂100重量部に混合してスラリーとし、このスラリーを発光素子が配置されたマウント・リード上のカップ内に注入した。注入後、注入されたフォトルミネセンス蛍光体を含有する樹脂を130℃1時間で硬化させた。こうして発光素子上に厚さ120μのフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング部材を形成した。なお、このコーティング部材は、発光素子に近いほどフォトルミネセンス蛍光体の量が徐々に多くなるように形成した。その後、さらに発光素子やフォトルミネセンス蛍光体を外部応力、水分及び塵芥などから保護する目的でモールド部材として透光性エポキシ樹脂を形成した。モールド部材は、砲弾型の型枠の中にフォトルミネセンス蛍光体のコーティング部が形成されたリードフレームを挿入し透光性エポシキ樹脂を混入後、150℃5時間にて硬化させて形成した。このようにして作製された実施例10の発光ダイオードは、発光観測正面から視認するとフォトルミネセンス蛍光体のボディーカラーにより中央部が黄色っぽく着色されていた。」 上記記載によれば、本件明細書における「コーティング樹脂」は、マウントリードのカップに設けられる樹脂を意味するものであって、コーティング部等を外部から保護し、レンズ機能を有するモールド部材(樹脂)とは別の部材であると解される。 そこで検討すると、甲25発明の「蛍光体を樹脂に分散し、LEDチップの表面に薄くコーティング」したものは、本件訂正発明の「該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、…フォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂」に相当する(なお、甲25発明の「チップを外部環境から保護するために集光レンズを兼ねたエポキシ樹脂」は、本件訂正明細書に記載の「モールド部材」(当審注:本件訂正発明では特定されていない。)に相当し、本件訂正発明の「コーティング樹脂」とは別の部材である。)。 また、甲25発明において、「前記LEDの発光…の一部は散乱を繰り返す内に蛍光体に吸収され、蛍光体から淡黄緑色の蛍光が発せられ」ることは、本件訂正発明の「フォトルミネセンス蛍光体」が「該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光する」ことに相当する。 (ウ)甲25発明の「LEDの青色光と淡黄緑色の蛍光を足し合わせた光が外部へ取り出される、白色LED」は、本件訂正発明の「前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオード」に相当する。 (エ)本件訂正発明の「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」と、引用発明の「(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceの組成式で表され」る蛍光体を対比すると、両者は、「Yの元素を含んでおり、かつ、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」の点で一致する。 (オ)以上のことから、本件訂正発明と甲25発明は、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 前記フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体であることを特徴とする発光ダイオード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:本件訂正発明は、「前記コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」いるのに対し、甲25発明は、LEDチップの表面にコーティングする樹脂に蛍光体を分散しているものの、蛍光体の濃度がLEDチップに向かって高くなるものか否か明らかでない点。 相違点2:Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体が、本件訂正発明では、「互いに組成の異なる2種類以上」であるのに対し、引用発明では、そのように特定されるものか否か明らかでは無い点。 オ 判断 (ア)相違点1について 引用発明は、「蛍光体を樹脂に分散し、LEDチップの表面に薄くコーティングし」ているところ、蛍光体を樹脂に分散した場合、蛍光体の分布は、蛍光体を分散する樹脂、形成温度、粘度や蛍光体の形状、粒度分布などに応じて変わることを踏まえると、引用発明は、蛍光体の濃度分布を何ら特定するものではない。そして、蛍光体の濃度分布をLEDチップに向かって高くすることは、甲号証の何れにも記載されていない。してみると、引用発明において、蛍光体の濃度分布をLEDチップに向かって高くし、上記相違点1に係る本件訂正発明の発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到しうるものではない。 請求人は、「蛍光体をLEDチップの表面に塗布するということは、…、LEDチップの表面に、塗布した蛍光体が付着する構成であることを意味している。かかる構成は、被請求人が乙1の2頁において、ロットAとしているタイプ(蛍光体が完全に沈降しているもの)と同等であることは明らかであるからである。」と主張する。 しかしながら、図2を見ても、請求人が主張する様なLEDチップの表面に蛍光体を薄く塗布したものは看取できないし、また、LEDチップは極めて小さなものである(例えば、甲7には、「【0066】…発光素子として350μm角のLEDチップを形成させた。」、「【0067】…収納部は直径600μmであり、深さが200μmの円柱である。また、反射部は収納部の上端部から45度の角度を持って形成され200μmの高さを持っている。」と記載されていることから、LEDチップや該LEDチップを収納するカップの大きさは、何れも1mm以下の極めて小さなものと認められる。)ことを考慮すると、「蛍光体をLEDチップ表面に薄く塗布」あるいは「LEDチップに対し、蛍光体を表面に薄くコーティング」することは、LEDチップを収納するカップ内に蛍光体を充填した状態であることが推認できる。したがって、甲25には、請求人が主張する構成が記載されているとすることはできない。 (イ)相違点2について 甲25号証には、「白色LEDの発光色は、青色LED起源の色度点と蛍光体起源の色度点を結ぶ直線上に位置するので、丸1~丸7の蛍光体を使用することで色度図中央の広範な白色領域をすべてカバーすることができる。」との記載があり、また、「Y3Al5012のAlをGaで置換すると短波長側へ(丸2、丸3)、YをGdで置換すると長波長側へ(丸4、丸5、丸6)へ、置換量に応じて連続的に発光波長が移動する」との記載がある。色度図上の白色領域内の所望の色度点の発光色を得る際、甲25号証に接した当業者でれば、Y3Al5012のAlをGaに置換する置換量、あるいは、YをGdで置換する置換量を調整して所望の色度点の発光色を得るものと解される。そうすると、「互いに組成の異なる2種類以上」の蛍光体を使用することは、容易であるとは言えない。 カ 小括 以上のとおり、甲25は、特許法第29条第1項第3号に規定する刊行物に該当しない。また、本件訂正発明は、甲25発明と同一ではないし、また、甲25発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものではない。よって、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定により、本件特許を無効とすることはできない。 (4)甲26-1に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由(無効理由9)について ア 甲26-1には、図とともに以下の記載がある。 (ア) 「青色発光GaN/6H-SiCチップを主要光源として用いて緑色、黄色、赤色及び白色発光LEDを作成した。」(417頁左欄1~3行) (イ) 「ベースとなっている物理の原理は、有機ルミネセンス色素分子には一般的なルミネセンスダウンコンバージョン(ストークスシフト)の原理である。無機変換体であるY3Al5O12:Ce3+(4f1)を用いて、白色発光LEDも実現されている。」(417頁左欄4~8行)」 (ウ) 「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードは現在市販されている。例えば、サファイア(α-A12O3)基板、λmax=450nmの日亜[1]製SQWダイオードや、炭化ケイ素(6H-SiC)基板、λmax=430nmのCree[2]製「青色チップ」がある。これらの主要光源を効率的なポンプとして使用し、後に低エネルギーで光子発光させる有機系及び無機系のルミネセンス材料を励起できることを示していく。このようなルミネセンス変換(LUCO)の原理を図1に示す。今回は、有機色素分子を包含するエポキシ樹脂基体に埋め込まれ、標準的LED技術により透明エポキシ樹脂内に封入された反射体カップに接合されたCree製LEDチップを使用する。」(417頁左下欄3~右欄10行) (エ) 「当然ながら、青色発光LEDのルミネセンスダウンコンバージヨンの原理は、有機系ルミネセンス材料に限られるものではない。LUCO LEDの応用には、広範囲の無機系蛍光材料を同様に検討すべきである。一例として、Cree製「青色チップ」を主要光源とし、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体を用いて、白色発光LUCO LEDを実現した(図5、図6)。詳細については、他の機会に伝えることとする。」(418頁左欄6行~下3行)」 イ 甲26発明の認定 上記記載を踏まえて図1を見ると、窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体、反射カップ、エポキシ樹脂基体、エポキシレンズを備える白色発光LEDが看取できる。 上記によれば、エポキシ樹脂基体は、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体を包含する。 上記によれば、窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードは、反射カップに接合される。 図1によれば、エポキシ樹脂は、反射カップに接合された窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードを封入する。 してみると、甲26には、以下の発明が記載されている。 「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体、反射カップ、エポキシ樹脂、エポキシレンズを備える白色発光LEDであって、 前記エポキシ樹脂は、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体を包含し、 前記エポキシ樹脂は、反射カップに接合された窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードを封入し、 前記エポキシレンズは、前記窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体、反射カップ、エポキシ樹脂を覆う、 白色発光LED。」(以下「甲26発明」という。) ウ 甲26-1の特許法第29条の刊行物該当性 上記イによれば、甲26発明が有する蛍光体は、「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」であるから、甲26発明と対比すべき本件訂正発明のフォトルミネセンス蛍光体の組成は、Yの元素を含んでおり、かつ、Alの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である。ここで、甲26発明には、互いに組成の異なる2種類以上の変換体を使用することは記載されていないが、甲25に記載の蛍光体と同様の蛍光体を用いるものと解したとしても、上記(2)ウと同様に、「互いに組成の異なる2種類以上のフォトルミネセンス蛍光体はそれぞれ、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である」発明についての特許法第29条の規定の適用については、遅くとも第2優先日(平成8年9月17日)に出願したものとみなされる。 一方、甲26号証は、1997年4月1日に頒布された刊行物であるから、上記第2優先日後に頒布された刊行物である。したがって、甲第26号証は、特許法第29条第1項第3号の「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物」に該当しない。したがって、無効理由9は、理由がない。 念のため、甲26に基づく新規性・進歩性欠如の無効理由を、以下に検討しておく。 エ 対比 本件訂正発明と甲26発明を対比する。 (ア)甲26発明の「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード」は本件訂正発明の「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップ」に相当する。 (イ)甲26発明において、「エポキシ樹脂は、反射カップに接合された窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオードを封入」するから、甲26発明の「エポキシ樹脂」は、本件訂正発明の「該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂」に相当する。 (ウ)甲26発明の「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」は、本件訂正発明の「該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体」に相当する。 (エ)甲26発明における、「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード」と「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」を備える「白色発光LED」は、技術常識を考慮すれば、「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」に吸収されずに通過した「窒化ガリウム(GaN)系青色発光ダイオード」の光と、「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」により変換された光とが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードである。 (オ)本件訂正発明の「Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」と甲26発明の「黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」を対比すると、「Yの元素を含んでおり、かつAlの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体」の点で一致する。 (カ)以上のことから、本件訂正発明と甲26発明は、 「窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDチップと、該LEDチップを直接覆うコーティング樹脂であって、該LEDチップからの第1の光の少なくとも一部を吸収し波長変換して前記第1の光とは波長の異なる第2の光を発光するフォトルミネセンス蛍光体が含有されたコーティング樹脂を有し、 前記フォトルミネセンス蛍光体に吸収されずに通過した前記第1の光の発光スペクトルと前記第2の光の発光スペクトルとが重なり合って白色系の光を発光する発光ダイオードであって、 フォトルミネセンス蛍光体は、Y、Lu、Sc、La、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を含んでおり、かつ、Al、Ga及びInからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素を含んでなるCeで付括されたガーネット系フォトルミネセンス蛍光体である発光ダイオード。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:コーティング樹脂中のフォトルミネセンス蛍光体の濃度が、本件訂正発明では、「前記コーティング樹脂の表面側から前記LEDチップに向かって高くなって」いるのに対し、甲26発明では、そのようになっているのか否か不明な点。 相違点2:本件訂正発明では、「前記フォトルミネセンス蛍光体は互いに組成の異なる2種類以上」であるのに対し、甲26発明では1種類である点。 オ 判断 (ア)相違点1について 甲26発明は、「前記エポキシ樹脂は、黄色発光Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体を包含し」ているところ、前記変換体を樹脂に分散した場合、変換体の分布は、変換体を分散する樹脂、形成温度、粘度や変換体の形状、粒度分布などに応じて変わることを踏まえると、甲26発明は、変換体の濃度分布を何ら特定するものではない。そして、変換体の濃度分布をLEDチップに向かって高くすることは、甲号証の何れにも記載されていない。してみると、甲26発明において、変換体の濃度分布をLEDチップに向かって高くし、上記相違点1に係る本件訂正発明の発明特定事項を備えることは、当業者が容易に想到しうるものではない。 請求人は、「本件特許出願時に通常用いられていたエポキシ樹脂の密度よりも、Y3Al5O12:Ce3+の密度の方が大きいことから、甲26-1において、エポキシ樹脂に添加された緑色及び赤色の発光色素が自然と沈降することも明らか」(平成25年12月10日付け弁駁書)と主張する。しかしながら、上記のとおり、変換体の濃度分布は、形成条件等に応じて変わるものであるから、請求人の上記主張は採用できない。 (イ)相違点2について 甲26発明の「Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」は黄色発光であるところ、青色LEDと黄色発光の蛍光とで構成される白色LEDにおいて、組成の異なる蛍光体を更に備えることは、何れの甲号証にも記載されておらず、当業者が容易に想到しうるものとは言えない。 請求人は、蛍光体を2種類用いることは周知技術であると主張し、甲26~甲28号証を提示する。確かに、甲26には、青色発光LEDと緑色及び赤色の発光色素をで白色発光のLUCO LEDを作成することが、甲27には、LEDの発光色と二色の染料により加色混合の三原色(赤、緑、青)を構成する白色発光装置が、甲28号証には、近UVLEDと青色、緑色、赤色蛍光体を用いて三原色と白色を得ることが開示されている。しかしながら、甲26発明の「Y3Al5O12:Ce3+(4f1)変換体」は黄色発光の変換体であるところ、黄色発光の蛍光体と他の蛍光体を組み合わせることは、何れの甲号証にも記載されていない。してみると、甲26発明と、甲26~甲28に記載された周知技術を組み合わせて容易に発明をすることができたものとは言えない。 よって、請求人の主張は採用できない。 カ 以上のとおり、甲26は、特許法第29条に規定する刊行物に該当しない。また、本件訂正発明は、甲26発明に基づいて当業者が容易に発明をすることできたものではない。よって、特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項の規定により、無効とすることはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本件訂正発明についての特許は、特許法第36条4項1号及び同条6項1号の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第4号に該当するものでもない。 また、本件訂正発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当するものでもない。 したがって、請求人が主張する無効理由5~9によっては、本件訂正発明についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2011-800159

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