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特許無効審判

2017-800015

安定な炭酸水素イオン含有薬液

審判番号
2017-800015
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2013-153420
登録番号
特許第5636075号(P5636075)
請求日
2017年01月30日
審決日
2021年06月09日
公報発行日
2021年10月29日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】ニプロ 株式会社
  • 【請求人代理人】特許業務法人朝日奈特許事務所
  • 【被請求人】国立大学法人 千葉大学
  • 【被請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
  • 【被請求人】扶桑薬品工業 株式会社
  • 【被請求人代理人】特許業務法人後藤特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 井上 典之
  • 審判官 藤原 浩子
  • 審判官 渕野 留香
分類
P1113.121-ZAA(A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第134条の2第6項、特許法第181条第2項、特許法第134条の2第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第135条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

上記当事者間の特許第5636075号「安定な炭酸水素イオン含有薬液」の特許無効審判事件についてされた平成30年10月12日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成30年(行ケ)第10165号、令和 2年 2月19日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5636075号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5、〔6、7〕、8、9、10、11、12、13、14について訂正することを認める。 特許第5636075号の請求項3ないし5、8ないし10、12ないし14に係る発明についての特許を無効とする。 特許第5636075号の請求項1、2、6、7、11に係る発明についての審判請求を却下する。 審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 特許第5636075号(以下「本件特許」という。)の請求項1~14に係る発明についての特許出願(特願2013-153420号)は、平成20年10月6日(優先権主張 平成19年10月5日 日本)を国際出願日とする特願2009-536137号の一部を、平成25年7月24日に新たな特許出願としたものであって、平成26年10月24日に特許権の設定登録がなされたものである。 2 これに対して、請求人は平成29年1月30日付けで、上記請求項1~14に係る発明についての特許を無効にすることを求めて、本件特許無効審判を請求し、被請求人は平成29年4月24日付けで審判事件答弁書及び訂正請求書を提出した。そして、平成29年8月8日に行われた口頭審理において、請求人は審判請求書、平成29年6月30日付け口頭審理陳述要領書(第1回)、平成29年7月25日付け口頭審理陳述要領書(第2回)及び口頭審理調書に添付のプレゼン資料に記載のとおりの陳述をし、被請求人は平成29年4月24日付け審判事件答弁書、平成29年6月27日付け口頭審理陳述要領書(第1回)、平成29年7月26日差出の口頭審理陳述要領書(第2回)及び平成29年8月8日付け上申書に沿って口頭審理調書に記載のとおりの陳述をした。その後、請求人は平成29年8月31日付けで上申書を提出した。 3 当審は、平成29年10月20日付けで被請求人に対して無効理由通知書を送付するとともに、同日付けで請求人に対して職権審理結果通知書を送付した。 そして、被請求人は平成29年11月24日付けで訂正請求書及び意見書を提出した。その後、請求人は平成29年12月27日付けで弁駁書を提出した。 4 当審は、請求人の提出した平成29年7月25日付け口頭審理陳述要領書(第2回)による請求の理由の補正について、許可しないとする平成30年3月8日付け補正許否の決定を行った上で、平成30年3月9日付けで審決の予告を行った。その後、被請求人は平成30年5月18日付けで訂正請求書及び意見書を提出し、請求人は平成30年7月18日付けで弁駁書(2)を提出した。 なお、平成29年4月24日付け訂正請求書による訂正の請求及び平成29年11月24日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法第134条の2第6項により、取り下げられたものとみなす。 5 当審は、平成30年10月12日付けで、「特許第5636075号の特許請求の範囲を平成30年5月18日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1~5]、[6~10]、[11~14]について訂正することを認める。特許第5636075号の請求項1~2、6~7、11に係る発明についての審判請求を却下する。特許第5636075号の請求項3~5、8~10、12~14に係る発明についての審判請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決(一次審決)をした。 6 請求人は、一次審決のうち、「特許第5636075号の請求項3~5、8~10、12~14に係る発明についての審判請求は、成り立たない。」との部分の取消しを求めて、平成30年11月20日に審決取消訴訟を提起し、知的財産高等裁判所において、令和2年2月19日に、「特許庁が無効2017-800015号事件について平成30年10月12日にした審決のうち,特許第5636075号の請求項3ないし5,8ないし10及び12ないし14に係る部分を取り消す。」との判決(以下「取消判決」という。)が言い渡された。 取消判決は、その後確定したため、当審は、特許法第181条第2項の規定により、一次審決のうち、特許第5636075号の請求項3~5とともに一群の請求項を構成する請求項1、2についての部分、請求項8~10とともに一群の請求項を構成する請求項6、7についての部分、及び、請求項12~14とともに一群の請求項を構成する請求項11についての部分を取り消して、更に審理を行うことを、請求人及び被請求人に令和3年1月6日付けで通知し、その後、令和3年1月12日付けで審決の予告をしたが、被請求人からは何ら応答はなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正請求の趣旨 平成30年5月18日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求は、その請求の趣旨を「特許第5636075号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」とするものである(なお、第2及び第3における下線は訂正箇所である。)。 2 訂正事項 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「当該薬液が下記A液とB液を合して調製される、請求項1または2に記載の方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを35.0mEq/L以下となるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が下記A液とB液を合して調製される、方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する」 に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、請求項3に記載の方法」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が下記A液とB液を合して調製され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、方法」 に訂正する。 (なお、平成30年5月18日付け訂正請求書4頁24行~5頁15行「エ 訂正事項4」の項中で、 「当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたってでも不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、」 とあるのは、同訂正請求書に添付した特許請求の範囲の請求項4の対応箇所の記載からみて、 「当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、」 の誤記であると認める。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「pH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制される、請求項1~4のいずれかに記載の方法」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が下記A液とB液を合して調製され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、方法」 に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に 「配合工程が下記A液とB液を合する工程である、請求項6または7に記載の方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程である、方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する」 に訂正する。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に 「A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、請求項8に記載の方法」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、 オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程であり: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、方法」 に訂正する。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に 「pH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制される、請求項6~9のいずれかに記載の方法」 と記載されているのを、 「炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、 オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程であり: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、方法」 に訂正する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11を削除する。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12に 「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である、請求項11記載の薬液」 と記載されているのを、 「下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、薬液」 に訂正する。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13に 「A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、請求項11または12に記載の薬液」 と記載されているのを、 「下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、 A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、薬液」 に訂正する。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14に 「pH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制される、請求項11~13のいずれかに記載の薬液」 と記載されているのを、 「下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、薬液」 に訂正する。 3 訂正の適否 (1)訂正の目的及び特許請求の範囲の実質上の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1、2、6、7及び11は、それぞれ訂正前の請求項1、2、6、7及び11を削除するものである。 したがって、訂正事項1、2、6、7及び11はいずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 イ 訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項3のうち、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに、訂正前の請求項1に記載された「オルトリン酸イオンを0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上となるように配合」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項2に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明定事項を、「オルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを35.0mEq/L以下となるように配合」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項3の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項4のうち、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2の記載を引用する訂正前の請求項3の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項1に記載された「オルトリン酸イオンを0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上となるように配合」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項2に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項5は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1~4のいずれかの記載を引用して記載されており、訂正前の請求項4が訂正前の請求項3の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項5のうち、訂正前の請求項1の記載を引用する訂正前の請求項2の記載を引用する訂正前の請求項3の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項1に記載された「オルトリン酸イオンを0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上となるように配合」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項2に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項8は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項6又は7の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項7が訂正前の請求項6の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項8のうち、訂正前の請求項6の記載を引用する訂正前の請求項7の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項6に記載された「オルトリン酸イオン濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項7に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 カ 訂正事項9は、訂正前の請求項9が訂正前の請求項8の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項8が訂正前の請求項6又は7の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項9のうち、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7の記載を引用する訂正前の請求項8を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項6に記載された「オルトリン酸イオン濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項7に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 キ 訂正事項10は、訂正前の請求項10が訂正前の請求項6~9のいずれかの記載を引用して記載されており、訂正前の請求項9が訂正前の請求項8の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項8が訂正前の請求項6又は7の記載を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項10のうち、訂正前の請求項6を引用する訂正前の請求項7を引用する訂正前の請求項8を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項6に記載された「オルトリン酸イオン濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項7に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項10は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ク 訂正事項12は、訂正前の請求項12が訂正前の請求項11の記載を引用して記載されていたものであるところ、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項11に記載された「オルトリン酸イオンの濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項12に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項12は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ケ 訂正事項13は、訂正前の請求項13が訂正前の請求項11又は12の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項12が訂正前の請求項11を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項13のうち、訂正前の請求項11を引用する訂正前の請求項12の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項11に記載された「オルトリン酸イオンの濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項12に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオンの濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項13は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 コ 訂正事項14は、訂正前の請求項14が、請求項11~13のいずれかの記載を引用して記載されており、訂正前の請求項13が訂正前の請求項11又は12の記載を引用して記載されており、訂正前の請求項12が訂正前の請求項11を引用して記載されていたものであるところ、訂正前の請求項14のうち、訂正前の請求項11を引用する訂正前の請求項12の記載を引用するものを、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとし、さらに訂正前の請求項11に記載された「オルトリン酸イオンの濃度が0.31mg/dL(無機リン濃度換算)以上であり、」という発明特定事項を限定した、訂正前の請求項12に記載された「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)である」という発明特定事項を、「オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、」という発明特定事項にすることで、オルトリン酸イオンの濃度範囲に加え、さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び炭酸水素イオンの濃度範囲を限定して、特許請求の範囲を減縮しようとするものである。 したがって、訂正事項14は、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)新規事項追加の有無 ア 訂正事項1、2、6、7、11について 訂正事項1、2、6、7、11は、それぞれ訂正前の請求項1、2、6、7、11を削除するものであるから、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、特許請求の範囲又は図面と併せて「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 イ 訂正事項3~5、8~10、12~14について 審決を取り消す旨の判決の拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な事実認定及び法律判断にわたる(最三小平成4年4月28日判決、民集46巻4号245頁)。 したがって、当審の審理及び審決は、取消判決の判断、特に、以下の判示事項に拘束されるものである(なお、下線は、当審が付したものがある。当審が引用する取消判決の頁行は、知的財産高等裁判所ウェブサイトに掲載された判決におけるものである。以下、同様。)。 「第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について … (2)訂正の適否について 原告は,訂正事項AないしDに係る本件訂正は,新規事項の追加に当たり,特許法134条の2第9項において準用する同法126条5項の要件に適合しない旨主張するので,以下において判断する。 … ウ 小括 以上によれば,訂正事項AないしDに係る本件訂正は,本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものと認められるから,特許法134条の2第9項において準用する同法126条5項に規定する訂正要件に適合するから,原告の前記主張は理由がない。」(取消判決51頁下から2行~1行、81頁下から8行~84頁7行) 上記取消判決において定義された訂正事項Aは、訂正事項3及び8に、訂正事項Bは、訂正事項4、5、9及び10に、訂正事項Cは、訂正事項12に、訂正事項Dは、訂正事項13及び14に、それぞれ対応するから、訂正事項3~5、8~10、12~14は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 4 独立特許要件 請求項1~14のうち、特許無効審判の請求がされていない請求項はないので、訂正事項1~14に関して、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件は課されない。 5 別の訂正単位とする求めについて 訂正前の請求項1~5は、請求項2~5が訂正事項1に係る訂正前の請求項1を引用する関係にあるから、請求項1~5を訂正の請求の対象とする訂正事項1~5は、一群の請求項についてされたものであるところ、訂正後の請求項3、4、5については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされている。 訂正前の請求項6~10は、請求項7~10が訂正事項6に係る訂正前の請求項6を引用する関係にあるから、請求項6~10を訂正の請求の対象とする訂正事項6~10は、一群の請求項についてされたものであるところ、訂正後の請求項8、9、10については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされている。 訂正前の請求項11~14は、請求項12~14が訂正事項11に係る訂正前の請求項11を引用する関係にあるから、請求項11~14を訂正の請求の対象とする訂正事項11~14は、一群の請求項についてされたものであるところ、訂正後の請求項12、13、14については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とする求めがなされている。 6 訂正の適否についてのまとめ 上記のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4、5、〔6、7〕、8、9、10、11、12、13、14について訂正することを認める。 第3 本件訂正発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~14に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下、請求項の番号に従い「本件訂正発明1」等という。なお、下線部は訂正箇所である。)。 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 (削除) 【請求項3】 炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを35.0mEq/L以下となるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が、下記A液とB液を合して調製される、方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する。 【請求項4】 炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が、下記A液とB液を合して調製され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、方法。 【請求項5】 炭酸水素イオン、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンを含有する血液浄化用薬液にオルトリン酸イオンを2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)、ナトリウムイオンを132~143mEq/L、カリウムイオンを3.5~5.0mEq/L、カルシウムイオンを2.5mEq/L、マグネシウムイオンを1.0mEq/L、炭酸水素イオンを32.0mEq/Lとなるように配合したことを特徴とする、当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成を実質的に抑制する方法であって、 当該薬液が、下記A液とB液を合して調製され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、方法。 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、 オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程である、方法: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する。 【請求項9】 炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、 オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程であり: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、方法。 【請求項10】 炭酸水素イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびオルトリン酸イオンを配合する工程を含む、血液浄化用薬液を製造する方法であって、 オルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され、 配合工程が下記A液とB液を合する工程であり: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液とB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、方法。 【請求項11】 (削除) 【請求項12】 下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が35.0mEq/L以下であり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、薬液。 【請求項13】 下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有し、 A液とB液のいずれもが酢酸イオンを含有しない、薬液。 【請求項14】 下記A液とB液を合して調製される血液浄化用薬液であって、調製後の薬液におけるオルトリン酸イオン濃度が2.3~4.5mg/dL(無機リン濃度換算)であり、ナトリウムイオン濃度が132~143mEq/Lであり、カリウムイオン濃度が3.5~5.0mEq/Lであり、カルシウムイオン濃度が2.5mEq/Lであり、マグネシウムイオン濃度が1.0mEq/Lであり、炭酸水素イオン濃度が32.0mEq/Lであり、そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され: A液:ナトリウムイオン、炭酸水素イオンおよび水を含有する溶液; B液:カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび水を含有する溶液; ただし、A液とB液の少なくとも一方がさらにカリウムイオンを含有し、A液およびB液の少なくとも一方がオルトリン酸イオンを含有する、薬液。」 第4 請求人の主張の概要 請求人は、請求の趣旨を「特許第5636075号の特許請求の範囲の請求項1~14に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、証拠方法として甲第1号証~甲第9号証(以下「甲1」等という。)を提出するとともに、以下の無効理由1~無効理由3-2(以下「請求人無効理由1」~「請求人無効理由3-2」という。)を主張する。 なお、請求人が提出した平成29年7月25日付け口頭審理陳述要領書(第2回)5頁下から5行~7頁10行には、本件特許発明はいわゆる明確性要件に違反するものであるとの主張が記載されているが、上記「第1 手続の経緯」の「4」に示したとおり、平成30年3月8日付け補正許否の決定により、ここで主張される無効理由について請求の理由の補正は許可しないとされた。 [請求人無効理由1](実施可能要件違反及びサポート要件違反) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであり、また、本件特許の特許請求の範囲の記載は、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項1~14に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。 [請求人無効理由2](新規性欠如及び進歩性欠如) 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲2に記載された発明(引用発明1)であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲2に記載された発明(引用発明1)及び甲2~甲3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 [請求人無効理由3-1](新規性欠如及び進歩性欠如) 請求項1~2、5~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲3に記載された発明(引用発明2-1)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項1~2、5~7に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲3に記載された発明(引用発明2-1)及び甲2~甲3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 [請求人無効理由3-2](新規性欠如及び進歩性欠如) 請求項3~5に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲3に記載された発明(引用発明2-2)であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、請求項3~5に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 請求項1~14に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である甲3に記載された発明(引用発明2-2)及び甲2~甲3の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1~14に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 [証拠方法] ・甲1:本件特許の出願手続において提出された平成25年5月31日提出の意見書 ・甲2:国際公開第2004/108059号 ・甲3:国際公開第2006/041409号 ・甲3の1:国際公開第2006/041409号の抄訳 ・甲4:最新 臨床検査のABC 生涯教育シリーズ70、日本医師会雑誌、平成18年10月15日、第135巻・特別号(2)、S199~S207頁、表紙、奥付 <以上、審判請求書に添付> ・甲5:試験報告書 混合液の安定性試験、ニプロ株式会社医薬品研究所 城内豊、2017年7月21日 <以上、平成29年7月25日付け口頭審理陳述要領書(第2回)に添付> ・甲6:森口武史 他、「急性血液浄化法の進歩:概論」、日本臨牀、2004年、62巻 増刊号5、397~402頁 ・甲7:篠崎正博 他、「急性血液浄化法 徹底ガイド[新装版]」、株式会社総合医学社、平成19年8月17日、36~41頁 ・甲8:特開2005-28108号公報 ・甲9:特開平11-197240号公報 <以上、平成30年7月18日付け弁駁書(2)に添付> 第5 被請求人の主張の概要 被請求人は、答弁の趣旨を「本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」とし、証拠方法として乙第1号証(以下「乙1」という。)を提出するとともに、本件特許には請求人が主張する無効理由1~3-2は存在しない旨を主張する。 [証拠方法] ・乙1:試験報告書 A液・B液混合後の安定性試験、徳岡庄吾、2017年4月21日 <以上、審判事件答弁書に添付> 第6 当審が通知した無効理由の概要 平成29年4月24日付け訂正請求により訂正された請求項4~5、9~10、13~14に係る特許に対して当審が平成29年10月20日付けで通知した無効理由(以下「職権無効理由」という。)は、概要、次のとおりである。 [職権無効理由1](明確性要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであって、請求項4~5、9~10、13~14に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。 [職権無効理由2](実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであって、請求項4~5、9~10、13~14に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。 [職権無効理由3](サポート要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものであって、請求項4~5、9~10、13~14に係る特許は、同法第123条第1項第4号に該当し無効とすべきものである。 第7 無効理由についての当審の判断 当審は、職権無効理由1~3及び請求人無効理由1~3-2を判断したところ、請求人無効理由3-2(進歩性欠如)のみに理由があると判断する。 請求人無効理由3-2(進歩性欠如)についての判断は、以下のとおりである。 1 取消判決について 取消判決において、請求人無効理由3-2(進歩性欠如)について、以下のとおり判示された。 「第2 事案の概要 … 3 本件審決の理由の要旨 … (2) 「請求人無効理由3-2」に関し,本件審決が甲3の「実施例4」の記載に基づいて認定した甲3に記載された発明(以下,このうち,即時使用溶液の発明を「引用発明2-2-1’」と,即時使用溶液の調製方法の発明を「引用発明2-2-2’」という。),本件審決が認定した本件訂正発明3ないし5,8ないし10と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点並びに本件訂正発明12ないし14と引用発明2-2-1’の一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア 引用発明2-2-1’ (ア) 「以下の表9に従って調製された,第一単一溶液と第二単一溶液との体積比20:1で混合して使用される対の単一溶液。 1)ナトリウムは,NaCl,NaHCO3,およびNa2HPO4として添加する。 2)塩化物は,NaCl,KCl,CaCl2,MgCl2,およびHClとして添加する。 3)リン酸塩は,Na2HPO4として添加するが,2つの単一溶液を混合した後は,主としてHPO42-として存在する。しかし,H2PO4-およびPO33-も,これらのイオンの間の平衡により存在する。各々のイオンの濃度はpHに依存する。 4)一部の重炭酸塩は,混合の間にCO2に変換されるが故に溶液から出ていくので,重炭酸塩の量は過剰投与される。」の発明 (イ) 引用発明2-2-1’における第一単一溶液および第二単一溶液を20:1の体積比で混合した即時使用溶液中の各イオンの濃度(mM)を「Eq/L」又は「mg/dL」の単位に換算すると,次のとおりである。 「オルトリン酸イオン濃度    3.72mg/dL (=1.20(オルトリン酸イオンのモル濃度)×30.97(Pのモル質量)/10dL)」 「ナトリウムイオン濃度   140.0mEq/L (=140.0(Na1+のモル濃度)×1(Na1+の原子価)」 「カリウムイオン濃度      4.0mEq/L (=4.0(Ka1+のモル濃度)×1(Ka1+の原子価)」 「カルシウムイオン濃度     2.50mEq/L (=1.25(Ca2+のモル濃度)×2(Ca2+の原子価)」 「マグネシウムイオン濃度    1.2mEq/L (=0.6(Mg2+のモル濃度)×2(Mg2+の原子価)」 「炭酸水素イオン濃度     30.0mEq/L (=30.0(HCO3-のモル濃度)×1(HCO3-の原子価)」 イ 引用発明2-2-2’ (ア) 「以下の表9に従った,第一単一溶液と第二単一溶液との体積比20:1で混合して使用される,対の単一溶液の調製方法。 1)ナトリウムは,NaCl,NaHCO3,およびNa2HPO4として添加する。 2)塩化物は,NaCl,KCl,CaCl2,MgCl2,およびHClとして添加する。 3)リン酸塩は,Na2HPO4として添加するが,2つの単一溶液を混合した後は,主としてHPO42-として存在する。しかし,H2PO4-およびPO33-も,これらのイオンの間の平衡により存在する。各々のイオンの濃度はpHに依存する。 4)一部の重炭酸塩は,混合の間にCO2に変換されるが故に溶液から出ていくので,重炭酸塩の量は過剰投与される。」の発明 (イ) 引用発明2-2-2’における第一単一溶液および第二単一溶液を20:1の体積比で混合した即時使用溶液中の各イオンの濃度(mM)を「Eq/L」又は「mg/dL」の単位に換算すると,前記ア(イ)のとおりである。 ウ 本件訂正発明3と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 (一致点(甲3-2-1)) オルトリン酸イオン濃度の点。 (一致点(甲3-2-2)) ナトリウムイオン濃度の点。 (一致点(甲3-2-3)) カリウムイオン濃度の点。 (一致点(甲3-2-4)) カルシウムイオン濃度の点。 (一致点(甲3-2-5)) 炭酸水素イオン濃度の点。 (イ) 相違点 (相違点(甲3-1-a'')) 本件訂正発明3では「当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈澱の形成を実質的に抑制する」ことが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-1-b'')) 本件訂正発明3は「血液浄化用薬液」に関する発明であるのに対し,引用発明2-2-2’は「対の単一溶液」,又は,それら第一単一溶液及び第二単一溶液を体積比20:1で「混合した即時使用溶液」に関する発明である点。 (相違点(甲3-1-c'')) 本件訂正発明3ではA液およびB液のいずれも水を含有するものであることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-1-d'')) 本件訂正発明3において調製される「血液浄化用薬液」のマグネシウムイオン濃度は1.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-2’における「混合した即時使用溶液」のマグネシウムイオン濃度は1.2mEq/Lと算出される点。 エ 本件訂正発明4と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4))に加え,以下の点で一致する。 (一致点(甲3-2-6)) 酢酸イオンを含有しない点。 (イ) 相違点 相違点(甲3-1-a'')ないし(甲3-1-d'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-1-e'')) 本件訂正発明4において調製される「血液浄化用薬液」の炭酸水素イオン濃度は32.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-2’における「混合した即時使用溶液」の炭酸水素イオン濃度は30.0mEq/Lと算出される点。 オ 本件訂正発明5と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4)と同じ。 (イ) 相違点 相違点(甲3-1-b'')ないし(甲3-1-e'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-1-a''')) 本件訂正発明5では「当該薬液の調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈澱の形成を実質的に抑制する」ことが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 カ 本件訂正発明8と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-5)と同じ。 (イ) 相違点 (相違点(甲3-2-a'')) 本件訂正発明8では「当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈澱の形成が実質的に抑制され」ることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-2-b'')) 本件訂正発明8は「血液浄化用薬液」に関する発明であるのに対し,引用発明2-2-2’は「対の単一溶液」,又は,それら第一単一溶液及び第二単一溶液を体積比20:1で「混合した即時使用溶液」に関する発明である点。 (相違点(甲3-2-c'')) 本件訂正発明8ではA液およびB液のいずれも水を含有するものであることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-2-d'')) 本件訂正発明8において製造される「血液浄化用薬液」のマグネシウムイオン濃度は1.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-2’における「混合した即時使用溶液」のマグネシウムイオン濃度は1.2mEq/Lと算出される点。 キ 本件訂正発明9と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4),(甲3-2-6)と同じ。 (イ) 相違点 相違点(甲3-2-a'')ないし(甲3-2-d'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-2-e'')) 本件訂正発明9において製造される「血液浄化用薬液」の炭酸水素イオン濃度は32.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-2’における「混合した即時使用溶液」の炭酸水素イオン濃度は30.0mEq/Lと算出される点。 ク 本件訂正発明10と引用発明2-2-2’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4)と同じ。 (イ) 相違点 相違点(甲3-2-b'')ないし(甲3-2-e'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-2-a'')) 本件訂正発明10では「当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈澱の形成が実質的に抑制され」ることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-2’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 ケ 本件訂正発明12と引用発明2-2-1’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-5)と同じ。 (イ) 相違点 (相違点(甲3-3-a'')) 本件訂正発明12では「当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈澱の形成が実質的に抑制され」ることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-1’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-3-b'')) 本件訂正発明12は「血液浄化用薬液」の発明であるのに対し,引用発明2-2-1’は「対の単一溶液」,又は,それら第一単一溶液及び第二単一溶液を体積比20:1で「混合した即時使用溶液」の発明である点。 (相違点(甲3-3-c'')) 本件訂正発明12ではA液およびB液のいずれも水を含有するものであることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-1’ではそれに対応する発明特定事項がない点。 (相違点(甲3-3-d'')) 本件訂正発明12の「血液浄化用薬液」のマグネシウムイオン濃度は1.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-1’における「混合した即時使用溶液」のマグネシウムイオン濃度は1.2mEq/Lと算出される点 コ 本件訂正発明13と引用発明2-2-1’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4),(甲3-2-6)と同じ。 (イ) 相違点 相違点(甲3-3-a'')ないし(甲3-3-d'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-3-e'')) 本件訂正発明13の「血液浄化用薬液」の炭酸水素イオン濃度は32.0mEq/Lであるのに対し,引用発明2-2-1’における「混合した即時使用溶液」の炭酸水素イオン濃度は30.0mEq/Lと算出される点。 サ 本件訂正発明14と引用発明2-2-1’の一致点及び相違点 (ア) 一致点 一致点(甲3-2-1)ないし(甲3-2-4)と同じ。 (イ) 相違点 相違点(甲3-3-b'')ないし(甲3-3-e'')に加え,以下の点で相違する。 (相違点(甲3-3-a''')) 本件訂正発明14では「当該薬液調製後少なくとも27時間にわたってpH7.5以上でも不溶性微粒子や沈澱の形成が実質的に抑制され」ることが発明特定事項とされているのに対し,引用発明2-2-1’ではそれに対応する発明特定事項がない点。」(取消判決2頁11行、11頁5行、同頁下から4行~20頁下から4行) 「第4 当裁判所の判断 … 2 取消事由2-1-1(甲3を主引用例(実施例4に基づくもの)とする本件訂正発明12の進歩性の判断の誤り)(請求人無効理由3-2関係)について … (2) 本件優先日当時の技術常識及び周知技術について … イ 透析液及び補充液の組成に係る技術常識又は周知技術 前記アの記載事項を総合すれば,本件優先日当時,〔1〕(当審注:〇の中に1)市販されている透析液及び補充液は,「急性血液浄化」のための血液濾過(透析)用に使用され得ること,〔2〕(当審注:〇の中に2)市販されている透析液及び補充液の組成は,ナトリウムイオン,カリウムイオン,カルシウムイオン,マグネシウムイオン,炭酸水素イオンを含むものであり,これらの電解質は,極めて狭い範囲で血中濃度を維持することが求められるため,一定の濃度が設定されていること,〔3〕(当審注:〇の中に3)市販されている透析液及び補充液において,ナトリウムイオン濃度を「140~143mEq/L」,カルシウムイオン濃度を「2.5~3.5mEq/L」,マグネシウムイオン濃度を「1.0~1.5mEq/L」,炭酸水素イオン濃度を「30mEq/L」前後の範囲の中で調整することは,技術常識又は周知であったものと認められる。 (3) 相違点の容易想到性について ア 相違点(甲3-3-b'')について (ア) … 以上の点に照らすと,甲3に接した当業者においては,甲3記載の実施例4(引用発明2-2-1’)において,当該「医療溶液」を「血液浄化用薬液」にすることを試みる動機付けがあるものと認められる。 したがって,当業者は,引用発明2-2-1’において,相違点(甲3-3-b'')に係る本件訂正発明12の構成とすることを容易に想到することができたものと認められる。 これと異なる本件審決の判断は,誤りである。 (イ) … イ 相違点(甲3-3-d'')について (ア) … そうすると,甲3に接した当業者は,引用発明2-2-1’における上記即時使用溶液のマグネシウムイオン濃度を市販されている透析液及び補充液の上記数値範囲内の「1.0mEq/L」(相違点(甲3-3-d'')に係る本件訂正発明12の構成)にすることを容易に想到することができたものと認められる。 したがって,これと異なる本件審決の判断は,誤りである。 (イ) … ウ 相違点(甲3-3-a'')について (ア) … 以上の本件訂正発明12の特許請求の範囲(請求項12)の記載及び本件明細書の記載を総合すると,本件訂正発明12の「そして当該薬液調製後少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制され」との構成は,本件訂正発明12のA液及びB液の成分組成及びそれらのイオン濃度を請求項12に記載されたものに特定することによって実現されるものと理解できる。 (イ) … 以上によれば,本件訂正発明12の「少なくとも27時間にわたって不溶性微粒子や沈殿の形成が実質的に抑制される」という構成は,引用発明2-2-1’において,相違点(甲3-3-b'')及び(甲3-3-d'')に係る本件訂正発明12の構成とした場合に,自ずと備えるものと認められる。 したがって,引用発明2-2-1’において,相違点(甲3-3-a'')に係る本件訂正発明12の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものと認められる。 したがって,これと異なる本件審決の判断は,誤りである。 (ウ) … … (5) 小括 以上によれば,本件訂正発明12は,甲3記載の引用発明2-2-1’に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 したがって,原告主張の取消事由2-1-1は理由がある。」(取消判決59頁下から2行、84頁10行~110頁下から6行) 「3 取消事由2-1-2(甲3を主引用例(実施例4の記載に基づくもの)とする本件訂正発明13及び14の進歩性の判断の誤り)(請求人無効理由3-2関係)について (1) 本件訂正発明13について … エ まとめ 以上によれば,本件訂正発明13は,甲3記載の引用発明2-2-1’に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 (2) 本件訂正発明14について … エ まとめ 以上によれば,本件訂正発明14は,甲3記載の引用発明2-2-1’に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 (3) 小括 以上によれば,原告主張の取消事由2-1-2は理由がある。」(取消判決110頁下から5行~114頁下から6行) 「4 取消事由2-1-3(甲3を主引用例(実施例4の記載に基づくもの)とする本件訂正発明3ないし5,8ないし10の進歩性の判断の誤り)(請求人無効理由3-2関係)について … そうすると,本件訂正発明3ないし5,8ないし10は,前記2及び3で説示したところと同様の理由により,甲3記載の引用発明2-2-2’に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから,これと異なる本件審決の判断は誤りである。 以上によれば,原告主張の取消事由2-1-3は理由がある。」(取消判決114頁下から5行~115頁12行) 2 判断 上記1で判示を摘記した取消判決は、行政事件訴訟法第33条第1項の規定により、本件特許無効審判事件について、当審を拘束する。 そして、本件訂正発明3~5、8~10、12~14は、取消判決がなされたときから訂正されていない。 したがって、本件訂正発明3~5、8~10、12~14は、取消判決で判示されたとおり、甲3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求人無効理由3-2(進歩性欠如)は理由がある。 第8 むすび 以上のとおりであるから、請求人無効理由3-2(進歩性欠如)は理由があり、本件訂正後の請求項3~5、8~10、12~14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 また、請求項1、2、6、7、11に係る発明についての審判請求は、本件訂正により、その対象が存在しないものとなったため、特許法第135条の規定により却下する。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-800015

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