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特許無効審判

2024-800049

クロライドチャンネルオープナーとしてのプロスタグランジンアナログ

審判番号
2024-800049
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2003-533944
登録番号
4786866
請求日
2024年04月03日
審決日
2026年01月30日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】沢井製薬 株式会社
  • 【請求人代理人】小松 陽一郎
  • 【請求人代理人】小山 秀
  • 【請求人代理人】中田 健一
  • 【請求人代理人】小松 栄二郎
  • 【参加人】ヴィアトリス製薬合同会社
  • 【参加人代理人】山内 真之
  • 【参加人代理人】石井 昭仁
  • 【参加人代理人】谷川原 淑恵
  • 【参加人代理人】篠崎 慎一郎
  • 【参加人代理人】出野 智之
  • 【参加人代理人】坪倉 道明
  • 【参加人代理人】安藤 健司
  • 【参加人代理人】城山 康文
  • 【被請求人】スキャンポ・ファーマ・アメリカズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
  • 【被請求人代理人】田村 啓
  • 【被請求人代理人】松谷 道子
  • 【被請求人代理人】落合 康
  • 【被請求人代理人】玄番 佐奈恵
  • 【被請求人代理人】坂田 啓司
  • 【被請求人代理人】林 康次郎
  • 【被請求人代理人】白江 雄介
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 新留 豊
  • 審判官 野田 定文
分類
P1123.121-YAA(A61K) / 標準データ:手続:無効 / 標準データ:123・121-YAA (A61K) / 標準データ:91・091-Y (A61K) / 標準データ:確定ステータス:1 維持(出訴無し)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第134条の2第3項、特許法第29条第1項第3号、特許法第135条、特許法第169条
データ出所
審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)

事件の表示

上記当事者間の特許第4786866号発明「クロライドチャンネルオープナーとしてのプロスタグランジンアナログ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第4786866号の特許請求の範囲を、令和6年10月1日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14について、訂正することを認める。 特許第4786866号の請求項1、2、4、6、8、11に係る発明についての本件審判の請求は成り立たない。 特許第4786866号の請求項10に係る発明についての本件審判の請求を却下する。 審判費用は、参加により生じた費用も含め、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第4786866号発明の特許請求の範囲の請求項1、2、4、6、8、10、11に記載された発明についての特許を無効とする 審判費用は、被請求人の負担とする との審決を求める。 2 答弁の趣旨 「訂正を認める。本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許権の設定の登録(登録名義人の表示の変更も含む。)までの 手続の経緯 本件無効審判の請求に係る特許第4786866号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2003-533944号)は、「スキャンポ・アーゲー」を出願人とし、2002年(平成14年)8月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2001年8月31日(以下「本件優先日」という。) 米国(US)、2002年4月15日 米国(US))を国際出願日(以下「本件出願日」という。)とする特許出願であって、平成23年7月22日に特許権(以下「本件特許権」という。)の設定の登録(請求項の数:14)がされた。 その後、令和6年2月28日受付で、本件特許の登録名義人の表示の変更がされ、「スキャンポ・アーゲー」から「スキャンポ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング」に変更された。 2 本件無効審判の請求後の手続の経緯 令和6年4月3日に、「沢井製薬株式会社」(以下「請求人」という。)より、本件特許の請求項1、2、4、6、8、10、11に係る発明の特許を無効とすることについて、特許無効審判の請求がされた。 その後、同年同月4日受付で、本件特許権について「ヴィアトリス製薬株式会社」に専用実施権が設定され、同年7月25日受付で、専用実施権者の表示の変更がされ、「ヴィアトリス製薬株式会社」から「ヴィアトリス製薬合同会社」に変更された。 さらに、令和7年12月16日受付で、特定承継により、本件特許の特許権者を「スキャンポ・ファーマ・アメリカズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー」(以下「被請求人」という。)とする特許権の移転がされた。 本件無効審判事件の主な手続の経緯及び提出された書面は、次のとおりである。なお、「甲1」、「乙1」及び「丙1」等は、請求人、被請求人及び後記の参加人(以下、これら三者をまとめて「当事者ら」という。)が提出した甲号証、乙号証及び丙号証を、それらの番号順に略称したものである。 令和6年 4月 3日 :審判請求書(甲1~5(枝番含む)を添付)の 提出(請求人) 同年10月 1日 :審判事件答弁書(乙1~3(枝番含む)を添付 )及び訂正請求書の提出(被請求人) 同年 同月25日 :参加申請書(ヴィアトリス製薬合同会社:特許 法第148条第3項の規定により、被請求人を 補助するための参加を申請)の提出 同年12月17日付け:参加許否の決定(ヴィアトリス製薬合同会社( 以下「参加人」という。)の参加を許可) 令和7年 1月31日付け:審理事項通知 同年 4月 1日 :口頭審理陳述要領書(甲6~17(枝番含む) を添付;以下「請求人陳述要領書」という。) の提出(請求人) 同年 同月 同日 :口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述要領 書」という。)の提出(被請求人) 同年 同月 同日 :上申書(丙1を添付)(以下「参加人上申書A 」という。)の提出(参加人) 同年 4月 7日 :甲18の提出(請求人) 同年 4月15日 :口頭審理(口頭審理調書が作成されている。) 同年 5月 7日 :上申書(甲19~28を添付;以下「請求人上 申書A」という。)の提出(請求人) 同年 同月 同日 :上申書(乙4~6を添付)(以下「被請求人上 申書A」という。)の提出(被請求人) 同年 同月 同日 :上申書(丙2を添付)(以下「参加人上申書B 」という。)の提出(参加人) 同年 同月30日 :上申書(甲29~31を添付)(以下「請求人 上申書B」という。)の提出(請求人) 同年 同月 同日 :上申書(乙7~9を添付)(以下「被請求人上 申書B」という。)の提出(被請請求人) 同年 同月 同日 :上申書(以下「参加人上申書C」という。)の 提出(参加人) 第3 訂正の請求について 1 訂正の請求の趣旨 令和6年10月1日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、 「特許第4786866号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~14について訂正することを求める。」 というものである。 2 訂正の内容 (1) 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載 ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 本件訂正前(本件特許の設定登録時)の本件特許の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 「【請求項1】 有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化1】 [図:0001435836000001.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化5】 [図:0001435836000002.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物である、組成物。 【請求書2】 哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である請求項1に記載の組成物であって、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、組成物。 【請求書3】 哺乳類対象における、嚢胞性線維症の処置用である請求項1に記載の組成物。 【請求書4】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書5】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16-モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書6】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書7】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書8】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書9】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書10】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1化合物または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書11】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。 【請求書12】 Aが式(V)で表される-COOHの官能性誘導体である請求項1から3のいずれかにに記載の組成物: -CONR’R”(V) [式中、R’およびR”は、水素、低級アルキル、アリール、アルキル-またはアリール-スルホニル、低級アルケニルまたは低級アルキニル]。 【請求書13】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1N-エチルアミドである、請求項12に記載の組成物。 【請求書14】 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αN-エチルアミドである、請求項12に記載の組成物。」 イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 なお、摘記中の下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。 「【請求項1】 有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化1】 [図:0001435836000003.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化2】 [図:0001435836000004.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、組成物。 【請求書2】 哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化3】 [図:0001435836000005.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化4】 [図:0001435836000006.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、組成物。 【請求書3】 哺乳類対象における、嚢胞性線維症の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化5】 [図:0001435836000007.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化6】 [図:0001435836000008.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1である、組成物。 【請求書4】 哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化7】 [図:0001435836000009.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化8】 [図:0001435836000010.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、 溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、組成物。 【請求書5】(削除) 【請求書6】 有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化9】 [図:0001435836000011.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化10】 [図:0001435836000012.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 ClCチャンネルがClC-2チャンネルである、組成物。 【請求書7】(削除) 【請求書8】 有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化11】 [図:0001435836000013.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化12】 [図:0001435836000014.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 ClCチャンネルがClC-2チャンネルであり、 溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、組成物。 【請求書9】(削除) 【請求書10】(削除) 【請求書11】 有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化13】 [図:0001435836000015.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化14】 [図:0001435836000016.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1である、組成物。 【請求書12】(削除) 【請求書13】(削除) 【請求書14】(削除)」 (2) 訂正事項 本件訂正の具体的な内容は、上記(1)アに示した本件訂正前の本件特許の特許請求の範囲の記載、上記(1)イに示した本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載、及び、本件訂正請求書の記載によれば、以下の訂正事項1~14からなるものであると認められる。 なお、摘記中の下線は本件訂正による記載の変更箇所を示す。 ア 訂正事項1 訂正事項1は、以下の訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなるものである。 (ア) 訂正事項1-1 特許請求の範囲の請求項1において、 「で表される化合物である、」 とあるのを、 「で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、」 に訂正する。 請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~14も同様に訂正する。 (イ) 訂正事項1-2 特許請求の範囲の請求項1において、記訂正事項1-1により訂正した特定事項 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、」 の後ろに、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、」 を追加する訂正をする。 請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~14も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である請求項1に記載の組成物であって、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、組成物。」 と請求項1の記載を引用して記載されているのを、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物が「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」であることを特定事項として追加して、 「哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化3】 [図:0001435836000017.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化4】 [図:0001435836000018.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、組成物。」 に訂正する。 請求項2の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4~14も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「哺乳類対象における、嚢胞性線維症の処置用である請求項1に記載の組成物。」 と請求項1の記載を引用して記載されているのを、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物が「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」であることを特定事項として追加して、 「哺乳類対象における、嚢胞性線維症の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化5】 [図:0001435836000019.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化6】 [図:0001435836000020.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1である、組成物。」 に訂正する。 請求項3の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項4~14も同様に訂正する。 エ 訂正事項4 訂正事項4は、以下の訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなるものである。 (ア) 訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項4に、 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」 と請求項1から3のいずれかの記載を引用して記載されているのを、請求項2の記載のみを引用するものとし、かつ、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物が「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」であることを特定事項として追加して、 「哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化7】 [図:0001435836000021.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化8】 [図:0001435836000022.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害であり、 該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、組成物。」 に訂正する。 (イ) 訂正事項4-2 特許請求の範囲の請求項4において、前記訂正事項4-1により訂正した特定事項 「該プロスタグランジン化合物が哺乳類対象においてClCチャンネルをオープンする、」 の後ろに、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、」 を追加する訂正をする。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に、 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」 と請求項1から3のいずれかの記載を引用して記載されているのを、請求項1の記載のみを引用するものとし、かつ、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物が「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」であること、及び、ClCチャンネルが「ClC-2チャンネル」であることを、特定事項として追加して、 「有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化9】 [図:0001435836000023.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化10】 [図:0001435836000024.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 ClCチャンネルがClC-2チャンネルである、組成物。」 に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 ク 訂正事項8 訂正事項8は、以下の訂正事項8-1及び訂正事項8-2からなるものである。 (ア) 訂正事項8-1 特許請求の範囲の請求項8に、 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」 と請求項1から3のいずれかの記載を引用して記載されているのを、請求項1の記載のみを引用するものとし、かつ、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物が「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」であること、及び、ClCチャンネルが「ClC-2チャンネル」であることを、特定事項として追加して、 「有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化11】 [図:0001435836000025.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化12】 [図:0001435836000026.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物であり、 13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1であり、 ClCチャンネルがClC-2チャンネルである、組成物。」 に訂正する。 (イ) 訂正事項8-2 特許請求の範囲の請求項8において、前記訂正事項8-1により訂正した特定事項 「ClCチャンネルがClC-2チャンネルである、」 の後ろに、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセリドとともに、ソフトカプセルにしてなる、」 を追加する訂正をする。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10を削除する。 サ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に、 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1である、請求項1から3のいずれかに記載の組成物。」 と請求項1から3のいずれかの記載を引用して記載されているのを、請求項1の記載のみを引用するものとし、かつ、独立形式に改めるとともに、プロスタグランジン化合物として示された二つの化合物のうち、13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1を削除して、 「有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルのオープン用組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): 【化13】 [図:0001435836000027.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化14】 [図:0001435836000028.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1である、組成物。」 に訂正する。 シ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項12を削除する。 ス 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 セ 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (3) 「一群の請求項」及び「別の訂正単位とする求め」について ア 「一群の請求項」について 本件訂正前の請求項1~14において、請求項2~14は、請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1~14に対応する本件訂正後の請求項1~14は、特許法第134条の2第3項に規定する関係を有する「一群の請求項」である。 したがって、本件訂正は、訂正後の請求項1~14からなる一群の請求項について訂正の請求がされたものである。 イ 「別の訂正単位とする求め」について 本件訂正請求においては、訂正後の請求項2~14について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているところ、本件訂正後の請求項2、3、4、6、8及び11は、いずれも他の請求項の記載を引用しない独立形式で記載されており、本件訂正後の請求項5、7、9、10、12、13及び14は削除されている。 3 訂正の適否についての判断 以下では、本件訂正前の請求項1に記載された一般式(II)で表される化合物について、「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」として、構造式及び式中の置換基の定義を省略して表記することがある。 また、摘記中の下線は、特に注釈がなければ、当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を表す。 (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1-1による訂正は、請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定するものである。 また、訂正事項1-2による訂正は、請求項1に記載の「ClCチャンネルのオープン用組成物」を、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 ものに特定し、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものである。 したがって、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記アのとおり、訂正事項1による訂正は、請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される特定の一つの化合物に限定し、請求項1に記載の「ClCチャンネルのオープン用組成物」について、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について (ア) 訂正事項1-1について 本件特許の願書に添付した本件訂正前の特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の【請求項11】には、 「プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1である、」 と記載されており、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」といい、本件特許請求の範囲と併せて「本件明細書等」という。)の【0112】~【0152】、【0158】~【0162】には、「化合物1(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)」(「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」と同義と認められる。)を被験物質として試験を行った具体的な試験例1~6、8が記載されている。 したがって、訂正事項1-1による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 (イ) 訂正事項1-2について 本件明細書の【0070】には、 「経口投与のための固体組成物としては、錠剤、トローチ、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。・・・。さらに脂肪酸またはそのモノ、ジ、トリグリセリドなどの適当な溶媒に溶解させてソフトカプセルとしても良い。」 と記載されていることから、組成物について「脂肪酸のトリグリセライド」を「溶媒」とした「ソフトカプセル」とすることが、本件明細書に記載されているといえる。 したがって、訂正事項1-2による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 (ウ) まとめ 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項1-1及び訂正事項1-2からなる訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1の記載を引用するものであるところ、請求項2の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を、同請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記アのとおり、訂正事項2による訂正は、請求項2の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される特定の一つの化合物に限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項2による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 上記アのとおり、訂正事項2による訂正は、請求項2の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定するものであることろ、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1の記載を引用するものであるところ、請求項3の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を、同請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項3による訂正は、訂正前の請求項3が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記アのとおり、訂正事項3による訂正は、請求項3の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項3が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される特定の一つの化合物に限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項3による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 上記アのとおり、訂正事項3による訂正は、請求項3の記載について、訂正前の請求項1の記載を引用する部分を独立形式に改め、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」を、当該一般式(II)に包含される、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定するものであるところ、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項3による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 エ 独立特許要件について 訂正事項3による訂正は、本件審判請求がされていない本件訂正前の請求項3についてするものであって、上記アのとおり、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的として含むものであるから、本件訂正前の請求項3に対応する、本件訂正後の請求項3に記載されている事項により特定される発明(以下「本件訂正発明3」という。)については、同法同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)が課される。 そこで検討するに、本件訂正発明3は、本件訂正後の請求項11に記載されている事項により特定される発明(以下「本件訂正発明11」という。)と比較すると、本件訂正発明11の特定事項を全て備え、それに加えて更に「ClCチャンネルのオープン用組成物」が「哺乳類対象における、嚢胞性線維症の処置用である」ことを特定するという関係にあるところ、後記第8の2(1)で述べるとおり、本件訂正発明11は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件訂正発明11を更に特定した本件訂正発明3についても、これらの証拠によっては、同法同条同項の規定により特許を受けることができないものではないし、そのほかに同法第29条等に規定する特許要件に関して見直すべき新たな事情は存在せず、訂正事項3による訂正の結果、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件訂正後の請求項3の記載が、同法第36条第4項第1号及び第6項(第4号を除く。)に規定する要件を満たさなくなるものでもない。 したがって、訂正事項3による訂正後における特許請求の範囲の請求項3に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 よって、訂正事項3による訂正は、特許法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正の目的について (ア) 訂正事項4-1について 訂正事項4-1による訂正は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1~3のいずれかの記載を引用するものであるところ、請求項4の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分及び訂正前の請求項3の記載を引用する部分を削除し、訂正前の請求項2の記載のみを引用するものとし、同請求項2の記載を引用する部分を、訂正前の請求項2の記載及び同請求項2が引用する訂正前の請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1及び2の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項4-1による訂正は、訂正前の請求項4が引用する訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項4に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項4-1による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ) 訂正事項4-2について 訂正事項4-2による訂正は、請求項4に記載の「組成物」を、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 ものに特定し、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものである。 したがって、訂正事項4-2による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (ウ) まとめ 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記ア(ア)のとおり、訂正事項4-1による訂正は、請求項4の記載について、訂正前の請求項2の記載及び同請求項2が引用する訂正前の請求項1の記載を引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項4が引用する訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項4に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物」 を、特定の一つの化合物に限定するものであり、また、上記ア(イ)のとおり、訂正事項4-2による訂正は、請求項4に記載の「組成物」について、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものであって、これらの訂正事項による訂正は、いずれも発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項4による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項4による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について (ア) 訂正事項4-1について 上記ア(ア)のとおり、訂正事項4-1による訂正は、請求項4の記載について、訂正前の請求項2の記載及び同請求項2が引用する訂正前の請求項1の記載を引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項4が引用する訂正前の請求項2が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項4に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジン化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定するものであるところ、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項4-1による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (イ) 訂正事項4-2について 上記ア(イ)のとおり、訂正事項4-2による訂正は、請求項4に記載の「組成物」について、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 ものに特定するものであるところ、上記(1)ウ(イ)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項4-2による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ) まとめ 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項4-1及び訂正事項4-2からなる訂正事項4による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項5、7、9、10、12、13及び14について 訂正事項5、7、9、10、12、13及び14による訂正は、それぞれ請求項5、7、9、10、12、13及び14を削除するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、また、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項5、7、9、10、12、13及び14による訂正は、いずれも、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (6) 訂正事項6について ア 訂正の目的について 訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1~3のいずれかの記載を引用するものであるところ、請求項6の記載について、訂正前の請求項2又は3の記載を引用する部分を削除し、訂正前の請求項1の記載のみを直接的に引用するものとし、同請求項1の記載を引用する部分を、訂正前の請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項6に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することを含むものである。 さらに、訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記アのとおり、訂正事項6による訂正は、請求項6の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」について、当該一般式(II)に包含される、訂正前の請求項6に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物」 を、特定の一つの化合物に限定し、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項6による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 上記アのとおり、訂正事項6による訂正は、請求項6の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項6に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジフルオロ-プロスタグランジン化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することを含むものであるところ、この点については、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項6による訂正は、訂正前の請求項6が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定することも含むものであるところ、本件明細書の【0082】には、「本発明の化合物は、特にClC-2チャンネルをオープンするため、・・・」と記載されており、同【0112】~【0140】には、上記(1)ウ(ア)で述べた「化合物1」などの被験物質が「ClC-2チャンネルオープナー」であることを示す、具体的な試験例1~4が記載されているから、この点についても、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項6による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7) 訂正事項8について ア 訂正の目的について (ア) 訂正事項8-1について 訂正事項8-1による訂正は、訂正前の請求項8が訂正前の請求項1~3のいずれかの記載を引用するものであるところ、請求項8の記載について、訂正前の請求項2又は3の記載を引用する部分を削除し、訂正前の請求項1の記載のみを直接的に引用するものとし、同請求項1の記載を引用する部分を、訂正前の請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項8-1による訂正は、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項8に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することを含むものである。 さらに、訂正事項8-1による訂正は、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項8-1による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 (イ) 訂正事項8-2について 訂正事項8-2による訂正は、請求項8に記載の「組成物」について、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 ものに特定し、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものである。 したがって、訂正事項8-2による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (ウ) まとめ 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項8-1及び訂正事項8-2からなる訂正事項8による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記ア(ア)のとおり、訂正事項8-1による訂正は、請求項8の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項8に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物」 を、特定の一つの化合物に限定し、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定するものであり、また、上記ア(イ)のとおり、訂正事項8-2による訂正は、請求項8に記載の「組成物」について、当該組成物が含有する「溶媒」及び当該組成物の「剤型」を限定するものであって、これらの訂正事項による訂正は、いずれも発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項6による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項8による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について (ア) 訂正事項8-1について 上記ア(ア)のとおり、訂正事項8-1による訂正は、請求項8の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項8に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16モノまたはジハロゲン-プロスタグランジンE化合物」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することを含むものであるところ、この点については、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項8-1による訂正は、訂正前の請求項8が引用する訂正前の請求項1に記載の「ClCチャンネル」を、これに包含される「ClC-2チャンネル」に限定することも含むものであるところ、この点についても、上記(6)ウで述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項8-1による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (イ) 訂正事項8-2について 上記ア(イ)のとおり、訂正事項8-2による訂正は、請求項8に記載の「組成物」について、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 ものに特定するものであるところ、上記(1)ウ(イ)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項8-2による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (ウ) まとめ 上記(ア)及び(イ)のとおりであるから、訂正事項8-1及び訂正事項8-2からなる訂正事項8による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (8) 訂正事項11について ア 訂正の目的について 訂正事項11による訂正は、訂正前の請求項11が訂正前の請求項1~3のいずれかの記載を引用するものであるところ、請求項11の記載について、訂正前の請求項2又は3の記載を引用する部分を削除し、訂正前の請求項1の記載のみを直接的に引用するものとし、同請求項1の記載を引用する部分を、訂正前の請求項1の記載の内容を変更することなく、請求項間の引用関係を解消して、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き換えることを含むものである。 また、訂正事項11による訂正は、訂正前の請求項11が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項11に記載の二つの化合物: 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1」 について、そのうちの一方を削除し、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定することも含むものである。 したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」、及び、同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものであるかについて 上記アのとおり、訂正事項11による訂正は、請求項11の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項11が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項11に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1」 について、特定の一つの化合物に限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、訂正事項11による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 新規事項の追加の有無について 上記アのとおり、訂正事項11による訂正は、請求項11の記載について、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する部分のみを独立形式に改めて、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正前の請求項11が引用する訂正前の請求項1に記載の「一般式(II)のプロスタグランジン化合物」に包含される、訂正前の請求項11に記載の 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1または13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18-メチル-プロスタグランジンE1」 を、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 という特定の一つの化合物に限定するものであるところ、上記(1)ウ(ア)で述べたのと同様の理由により、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでなく、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項11による訂正は、特許法第134条の2第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (9) 訂正事項3以外の訂正事項による訂正の独立特許要件について 訂正事項1、2、4~14による訂正は、いずれも特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を訂正の目的として含むものであるが、本件特許無効審判事件においては、本件訂正前の請求項1、2、4、6、8及び11に係る発明の特許に対して、本件審判請求がされているから、本件訂正前の請求項1、2、4、6、8及び11に対応する、本件訂正後の請求項1、2、4、6、8及び11に記載されている事項により特定される発明については、特許法134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(「独立特許要件」)は課されない。 また、本件訂正前の請求項10に対して、本件審判請求がされているが、本件訂正前の請求項5、7、9、12、13及び14に対しては、本件審判請求がされていないところ、本件訂正後の請求項5、7、9、10、12、13及び14は削除されるから、独立して特許を受けることができるか否かを判断すべき対象が存在しない。 4 訂正の請求についてのまとめ 上記3のとおり、訂正事項1~14による訂正は、特許法134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、訂正事項2~4、6、8及び11による訂正は、同第4号に掲げる事項も目的とするものであり、全ての訂正事項による訂正は、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。また、訂正事項3による訂正は、同法第134条の2第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定にも適合するものである。 そして、上記2(3)イのとおり、本件訂正請求においては、訂正後の請求項2~14について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、それぞれ、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14について、訂正することを認める。 なお、請求人は、口頭審理において、本件訂正を認めることに異論はない旨を述べている(口頭審理調書)。 第4 本件訂正発明 上記第3の4のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の本件特許の請求項1~4、6、8及び11(以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等ということがある。)の記載は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6、8及び11に記載された、上記第2の2(1)イに摘記したとおりのものであり(請求項5、7、9、10、12~14は、本件訂正により削除される。)、本件訂正請求項1~4、6、8及び11に係る発明は、上記本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4、6、8及び11に記載されている事項により特定されるとおりのものと認める(以下、請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、これらを総称して「本件訂正発明」ということがある。)。 第5 当事者らの主張の概要及び当事者らが提出した証拠方法 1 請求人の主張の概要及び請求人が提出した証拠方法 (1) 請求人が主張する無効理由の概要 請求人は、審判請求書、請求人陳述要領書、口頭審理調書、請求人上申書A及び同上申書Bの記載からみて、次のア及びイに示す無効理由1及び2を主張しているものと認められ、証拠方法として、下記(2)に示す甲第1号証~甲第31号証(枝番を含む。)を提出している。 そして、次のアの無効理由1(甲3に基づく新規性欠如)について、請求人は、口頭審理において、本件訂正が認められる場合、当該無効理由を取り下げる旨を述べているところ(口頭審理調書)、上記第3の4とおり、本件訂正は認められるので、無効理由1は取り下げられた。 ア 無効理由1(甲3に基づく新規性欠如) 本件特許の請求項1、2、4、6、8、10、11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものでなく、上記請求項1、2、4、6、8、10、11に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 イ 無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1、2、4、6、8、10、11に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものでなく、上記請求項1、2、4、6、8、10、11に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 (2) 請求人が提出した証拠方法 請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 文献名の表記中の「○R」は「○」の中に「R」を表し、下線は当審合議体が付したものである。 <審判請求書に添付して提出された証拠方法> 甲1:特許登録原簿謄本(特許第4786866号)令和6年3月21日認証 (合議体注:本件特許の特許登録原簿である。) 甲2:特許第4786866号公報 (合議体注:本件特許の特許掲載公報である。) 甲3:特開平2-109号公報 甲4の1:S. J. Keely, et al., "Integrated Signaling Mechanism that Regulate Intestinal Chloride Secretion", Current Topics in Membranes, Volume 50, CAHPTER 7, p.249-256 (一部抜粋、抄訳 添付) (合議体注:乙6と同じ文献だが、提出された頁の範囲が異なる。 以下「甲4」とのみ略記する。) 甲4の2:Science Directのウェブページ出力物「Current Topics in Membranes Volume 50, 2000, Pages 249-299」と題する文書 (https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S10635 8230050009X) (合議体注:甲4の1の公開年を示すための証拠である。) 甲5:Raha Mohammad-Panah, et al., "ClC-2 Contributes to Native Chloride Secretion by a Human Intestinal Cell Line, Caco-2", THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, Vol.276, No.11, p.8306, Published JBC Papers in Press, November 28, 2000 (https://www.jbc.org/article/S0021-9258(19)32186-6/pdf) (一部抜粋、抄訳添付) <請求人陳述要領書に添付して提出された証拠方法> 甲6:新村出(編), 『広辞苑』, 第四版第五刷, 株式会社岩波書店, 1995年11月10日, 1672頁, 「ちょう【腸】」の項目 甲7:加藤勝治(編), 『縮刷 医学英和大辞典』, 第10版第10刷, 1980年9月20日, 株式会社南山堂, 523-524頁, 「enter(o)-」の項目 甲8:特開平3-130227号公報 甲9:A. Robert, et al., "ENTEROPOOLING ASSAY: A TEST FOR DIARRHEA PRODUCED BY PROSTAGLANDINS", PROSTAGLANDINS, Vol.11, No.5, May 1976, p.809-828 (https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0090698076 901891)(抄訳添付) 甲10の1:宮田広樹ほか, 「モルヒネ投与時の副作用対策で経口プロスタ グランジン製剤が有効であった症例 -癌疼痛治療における薬剤師の 役割(第3報)-」, 日本病院薬学会年会講演要旨集, 1998年, 418頁, 13P-7-42 (合議体注:以下「甲10」とのみ略記する。) 甲10の2:J-STAGEのウェブページ出力物「日本病院薬学会年会講演要旨 集」と題する文書 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsphcsyaku/8/0/8_418/_ article/-char/ja) (合議体注:甲10の1の掲載誌及び発行日(1998/08/17)等が掲載 されている。) 甲11:国際公開第01/27099号(抄訳添付) (合議体注:特表2003-511445号公報が対応) 甲12:中山信弘(著), 『特許法〔第5版〕』, 2023(令和5)年11月30日, 株式会社弘文堂, 148-149頁 甲13:新村出(編), 『広辞苑』, 第四版第五刷, 株式会社岩波書店, 1995年11月10日, 「ぞくせい【属性】」の項目 甲14:前田健, 「用途発明の意義-用途発明の効力と新規性の判断-」, パテント, Vol.72, No.12(別冊No.22), p.25-46 甲15:知的財産高等裁判所, 平成23年3月23日判決言渡, 平成22年 (行ケ)第10256号〔スーパーオキサイドアニオン分解剤〕 甲16:吉田広志, 判例評釈「公知の用途と区別ができないとして用途発明 が特許無効とされた事例」, 特許研究, No.75, 2023/3, p.60-74 甲17:特開昭53-050141号公報 <口頭審理前に単独で提出された証拠方法> 甲18:「アミティーザ○Rカプセル12μg」「アミティーザ○Rカプセ ル24μg」医薬品インタビューフォーム, 2018年9月改訂(第8版) <請求人上申書Aに添付して提出された証拠方法> 甲19:「口頭審理陳述概要」と題するプレゼンテーション資料 (合議体注:口頭審理における請求人のプレゼンテーション資料) 甲20:特許第2627914号公報 甲21:宮崎利夫ほか(編), 『薬の事典』, 初版第1刷, 2001年5月20日, 株式会社朝倉書店, 402-405頁, 「ミソプロストール」の項, 584-585頁, 「ジノプロストンベータデクス」の項 甲22:特開平5-221865号公報 甲23:仲村義平, 「用途発明における『物の未知の属性を発見する』こと の意味の考察」, パテント, 2014, Vol.67, No.3, p.102-110 (合議体注:乙5と同じ文献である。) 甲24:舘秀典, 「用途発明における特許性について-米国判例からの示唆 -」, 筑波法政, 2019年7年, 第79号, 1-25頁 甲25:吉田広志, 「パブリックドメイン保護の観点から考える用途発明の 新規性と排他的範囲の関係-知財高判平成29・2・28[乳癌再発の予 防ワクチン]を題材に-」, 特許研究, No.64, 2017/9, p.6-33 甲26:知的財産高等裁判所, 平成31年3月19日判決言渡, 平成30年 (行ケ)第10036号〔IL-17産生の阻害〕 甲27:知的財産高等裁判所, 令和7年2月13日判決言渡, 令和5年 (行ケ)第10093号〔運動障害治療剤〕 甲28:「ノウリアスト○R錠20mg」添付文書, 2022年4月改訂(第1版) <請求人上申書Bに添付して提出された証拠方法> 甲29:知的財産高等裁判所, 平成30年4月13日判決言渡, 平成28年 (行ケ)第10182号〔ピリミジン誘導体〕 甲30:知的財産高等裁判所, 平成20年6月4日判決言渡, 平成19年 (行ケ)第10269号〔癌の検出及び処理〕 甲31:知的財産高等裁判所, 平成25年7月11日判決言渡, 平成24年 (行ケ)第10297号〔経口投与製剤〕 2 被請求人の主張及び被請求人が提出した証拠方法 (1) 被請求人の主張の概要 被請求人は、審判事件答弁書、被請求人陳述要領書、被請求人上申書A及び同上申書Bの記載からみて、請求人が主張する上記1(1)ア及びイの無効理由1及び2は、いずれも理由がない旨の主張をしているものと認められ、証拠方法として、下記(2)に示す乙第1号証~乙第9号証(枝番を含む。)を提出している。 (2) 被請求人が提出した証拠方法 被請求人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 <審判事件答弁書に添付して提出された証拠方法> 乙1:「アミティーザ○Rカプセル12μg」「アミティーザ○Rカプセル 24μg」添付文書, 2018年9月改訂(第11版) 乙2:本多宣裕ほか, 「化学療法施行中のオピオイド使用による便秘に 対するルビプロストンの有用性」, 川崎医学会誌, 2018, 44(2), p.115-120 (https://igakkai.kms-igakkai.com/wp/wp-content/uploads/2018/ KMJ-J44(2)115.pdf) 乙3:稲次直樹, 「「慢性便秘症」に対する治療-新しい薬をどのように 使うか-」, (https://.oh-kinmui.jp/1509/) 乙3の1:大阪府保険医協会・勤務医フォーラム, 「臨床Update」, (https://oh-kinmui.jp/category/date0l/) (合議体注:乙3の公開年(2019年)を示すための証拠) <被請求人上申書Aに添付して提出された証拠方法> 乙4:「被請求人口頭審理資料」 (合議体注:口頭審理における被請求人のプレゼンテーション資料) 乙5:仲村義平, 「用途発明における『物の未知の属性を発見する』こと の意味の考察」, パテント, 2014, Vol.67, No.3, p.102-110 (合議体注:甲23と同じ文献である。) 乙6:Current Topics in Membranes, Volume 50, "Gastrointestinal Transport", CAHPTER 7, S. J. Keely, et al., "Integrated Signaling Mechanism that Regulate Intestinal Chloride Secretion", p.249-259, (抄訳添付) (合議体注:甲4と同じ文献だが、提出された頁の範囲が異なる。) <被請求人上申書Bに添付して提出された証拠方法> 乙7:無効2023-800077号の令和7年4月22日付け審決 乙8:特許第7333751号公報 乙9:特許第7395637号公報 3 参加人の主張及び証拠方法 (1) 参加人の主張の概要 参加人は、参加人上申書A、同上申書B及び同上申書Cの記載からみて、請求人が主張する上記1(1)ア及びイの無効理由1及び2は、いずれも理由がない旨の主張をしているものと認められ、証拠方法として、下記(2)に示す丙第1号証及び丙第2号証を提出している。 (2) 参加人が提出した証拠方法 参加人が提出した証拠方法は、以下のとおりである。 <参加人上申書Aに添付して提出された証拠方法> 丙1:葛谷文男ほか, 「プロスタグランジン(E1, E2) 及びその誘導体 の家兎大動脈平滑筋収縮並びに血小板凝集に及ぼす影響」, 日本老年医学会雑誌, 1978年, 15巻6号, 554-561頁 (https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics1964/15/6/15_ 6_554/_pdf/-char/ja) <参加人上申書Bに添付して提出された証拠方法> 丙2:「プロスタグランジンE1製剤 注射用アルプロスタジル アルファ デクス プロスタンディン○R注射用20μg」医薬品インタビュー フォーム, 2023年10月改訂(第2版) 第6 提出された証拠方法の記載事項 上記の第5の1(2)、2(2)及び3(2)に示した当事者らが提出した証拠方法のうち、請求人が主張する上記第5の1(1)イの無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)の判断に必要なものについて、それぞれの記載事項を以下に示す。 外国語で記載されている証拠方法については、当事者らが提出した抄訳又は翻訳文を参考にして、当審合議体による訳文にて記載事項を摘記した。 また、摘記事項中に付した下線及び枠囲みは、特に注釈がなければ、当審合議体によるものであり、「・・・」は摘記の省略を示し、空白行は行数に含めない。証拠方法中に行数の表示がある場合には、その表示に従った。 1 甲号証の記載事項 (1) 甲3の記載事項 ・摘記甲3a(特許請求の範囲) 「1.15-ケト-16-ハロゲン-プロスタグランジン類を有効成分として含有することを特徴とする下剤。 ・・・ 6.15-ケト-16-ハロゲン-プロスタグランジン類が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジン類である特許請求の範囲第1項記載の下剤。 7.プロスタグランジン類がプロスタグランジンE類である特許請求の範囲第1項記載の下剤。」 ・摘記甲3b(1頁右下欄下5行~3頁左上欄4行) 「従来技術および課題 プロスタグランジン類(以下、PG類と記す)はひとおよび動物の組織や臓器に含まれる多様な生理作用を示す一群の脂肪酸に与えられた名称である。PG類は下式で示されるプロスタン酸 [図:0001435836000029.jpg] を基本骨格とするが、合成品の中には上記骨格に修飾を加えたものも含まれる。PG類はその五員環構造により、 [図:0001435836000030.jpg] 等に分類される。また、5-6位の炭素結合が単結合であるPG1類: [図:0001435836000031.jpg] と5-6位の炭素が二重結合であるPG2類: [図:0001435836000032.jpg] さらに5-6位の炭素および17-18位の炭素が各々二重結合であるPG3類: [図:0001435836000033.jpg] とに分類される。 PG類には種々の薬理作用、例えば血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用等が認められている。 一方、ヒトまたは動物の代謝物中には、13-14位の炭素結合が飽和し、15位の炭素がカルボニル基の炭素であるPG類および13-14位の炭素結合が2重結合で15位の炭素がカルボニル基の炭素であるPG類の存在が確認されている。これら13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン類および15-ケト-プロスタグランジン類(以下、両者を単に15-ケト-PG類と云う)は、対応するPG類が生体内において、酵素による代謝反応によって自然に代謝産生される物質として知られている。これら15-ケト-PG類はPG類が有する種々の生理活性をほとんど示さず、薬理学的、生理学的に不活性な代謝物として報告されてきた(・・・)。 本発明者は、15-ケト-PG類の誘導体に関して、その薬理学的検討を行った結果、16位にハロゲン原子、特にフッ素原子を少なくとも1個以上置換した誘導体がエンテロプーリング試験等の結果から強い瀉下作用を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。」 (合議体注:「従来技術および課題」の下線は原文のとおり。) ・摘記甲3c(3頁左上欄5行~同頁左下欄12行) 「課題を解決するための手段 本発明は、15-ケト-16-ハロゲン-プロスタグランジン類(以下、15-ケト-16-ハロゲン-PG類という)を有効成分として含有することを特徴とする下剤に関する。 本明細書において15-ケト-PG類は以下の命名の仕方によって表記する。即ち、15-ケト-PG類は下記基本骨格: [図:0001435836000034.jpg] に基づき、この基本骨格のα鎖、ω鎖および5員環を構成する炭素の番号はこれをそのまま用いる。・・・ また、例えばPGD、PGE、PGFは、9位および/または11位の水酸基を有する化合物を言うが、本明細書では、9位および/または11位の水酸基に代えて他の基を有するものを包括してPG類と称し、その場合、9-デヒドロキシ-9-置換体あるいは11-デヒドロキシ-11-置換体の形で命名する。 本発明において用いられる15-ケト-PG類は、PG類の15位の炭素がカルボニル基を形成していればよく、5-6位の炭素結合が単結合である15-ケト-PG1類、二重結合がある15ケト-PG2類、5-6位の炭素結合および17-18位の炭素結合がいずれも二重結合である15-ケト-PG3類のいずれであってもよい。 すなわち、本発明において用いられる15-ケト-16-ハロゲン-PG類はその五員環構造にかかわらず、あるいは2重結合やその他の置換基の有無にかかわらず、16位にハロゲン原子、特にフッ素原子が少なくとも1個以上置換していればよい。 (合議体注:「課題を解決するための手段」の下線は原文のとおり。) ・摘記甲3d(3頁左下欄13行~4頁左上欄2行) 「一般に下剤は効力の差異から、軟らかいが形のある便を排泄させる緩下剤と水様性の便を排泄させる峻下剤に大別される。 下剤は次の3つの機序の1つあるいは2つ以上の組合せによって、便の水分含量を増加させ、腸内容物の移動を速めることにより作用する。 (i)水と電解質がその薬物の親水性または浸透圧のために腸内腔に保持され、そのために腸内容積が増し、間接的に移動が速くなる。 (ii)薬剤が腸粘膜に作用して電解質と水の正常な吸収総量を減少させ、水分量が増すために間接的に腸内容物の移動が速くなる。 (iii)薬剤がまず腸運動に作用して移動を速め、水と電解質の総吸収量は吸収される時間が減るために間接的に減少する。 本発明において用いられたエンテロプーリング試験は、主に(ii)の作用について検討されるもので、腸管内容物量を測定することにより、薬剤の腸管内水分貯留量への影響を判定する。本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類は、このエンテロプーリング作用を極めて強く発現する。しかしながら、(iii)の作用を判断するうえで1つの指標となる腸管収縮作用は、ほとんど示さないか、ごく軽微なものである。従って、本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類の下痢誘発作用は、主に腸粘膜に直接または間接的に作用して、腸壁から血管系への電解質、水の輸送能に影響を及ぼした結果、腸管からの水分吸収が低下をきたし、腸管内水分貯留量が増加し、腸内容物の移動が促進されるためと考えられる。」 ・摘記甲3e(4頁左上欄3行~同頁右下欄1行) 「本発明に用いる15-ケト-16-ハロゲンPG類は、塩であってもあるいはカルボキシル基がエステル化されていてもよい。塩としては生理学的に許容し得る塩、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩、・・・等であってよい。エステルとしては例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、インプロピル、t-ブチル、2-エチル-ヘキシル等の不飽和結合を有していてもよい直鎖または側鎖を有するアルキルエステル等;・・・が例示される。 好ましいエステルは例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、インプロピル、t-ブチル等の直鎖または側鎖を有する低級アルキルエステル;・・・である。 16位のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子を含み、特にフッ素原子が好ましい。 本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類は、その基本骨格上に不飽和結合を有していてもよい。また、原子または基によって置換されていてもよい。不飽和結合としては、例えば2-3位、5-6位あるいは17-18位の2重結合または5-6位の3重結合が例示される。・・・ PG類にはPGD、PGE、PGFなど9位および/または11位の炭素に水酸基を有する化合物を含むが、本明細書では、9位および/または11位の水酸基に代えて、ヒドロキシアルキル基またはアルキル基を有する化合物もPG類に包含されたものとして扱う。・・・」 ・摘記甲3f(4頁右下欄下5行~5頁右下欄下5行) 「本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類は上記した化合物の異性体を包含する。これらの異性体の例は、11位の水酸基と15位のカルボニル基間の互変異性体、あるいは光学異性体、幾何異性体等が例示される。例えば、 [図:0001435836000035.jpg] 上に示した11位の水酸基と15位のカルボニル基間の互変異性現象は、13-14位が飽和し、16位にフッ素原子を有する化合物の場合、特に顕著であり、これらはケト-へミアセタール平衡混合物として存在することが示唆されている。 ・・・ 15-ケト-16-ハロゲン体の製造法としては、例えば合成チャートに示すように市販の(-)のコーリーラクトンを出発原料とし、これをコリンズ酸化してアルデヒドを得、これにジメチル(3-ハロゲン-2-オキソアルキル)ホスホネートアニオンを反応させて、σ、β-不飽和ケトンを得、これの二重結合を還元してケトンを得、該ケトンのカルボニル基をアルコールに還元した後シリルエーテルとして保護する。次いで脱p-フェニルベンゾイル化によってアルコールを得、新たに生じた水酸基をジヒドロピランで保護し、テトラヒドロピラニルエーテルとする。これによって、ω鎖が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16-ハロゲン-アルキル基であるPG類の前駆体を得る。・・・ ・・・ 上記テトラヒドロピラニルエーテルを原料として、 [図:0001435836000036.jpg] であるPG1類を得るには、 [図:0001435836000037.jpg] であるPG2類と同様にし、得られた化合物の5-6位の二重結合を接触還元し、次いで、保護基を外すことにより得ることができる。・・・」 ・摘記甲3g(6頁左下欄7行~6頁右下欄下5行) 「本発明において用いられる15-ケト-16ハロゲン-PG類は、その五員環の構造にかかわらず、あるいは2重結合やその他の置換基の有無にかかわらず、16位にハロゲン原子、特にフッ素原子が少なくとも1個以上置換することによって、エンテロプーリング作用の発現性が著しく向上するが、特に好ましい15-ケト-16-ハロゲン-PG類としては、5-6位の炭素結合が2重結合であるものあるいは炭素数が20~22の15-ケト-16-ハロゲン-PG類である。また別の好ましい一群は、五員環上の9位にケトンを、11位に水酸基を有する、いわゆるPGEタイプの15-ケト-16-ハロゲン-PG類である。 PGは一般に種々の薬理作用を有することが認められているが、例えばPGE、PGFは腸管刺激作用に伴う腸管収縮作用は強いがエンテロプーリング作用が軽微であるのでPGEあるいはPGFを下剤として使用することは腸管収縮に伴う腹痛などの副作用のため、不可能である。 一方、本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類はエンテロプーリング作用が極めて強く発現し、腸管からの水分の吸収が阻害される。一方、本物質はPGE、PGFの有する腸管収縮作用を持たないか、あるいは有していても極めて軽微なため、腹痛等の腸管収縮に伴う腹部の不快感を発現することなく下痢を生じさせる。さらに、腸管内輸送能の促進作用が顕著であり、下痢症状からの回復もすみやかであるので、下剤として極めて有用である。」 ・摘記甲3h(6頁右下欄下4行~7頁左下欄2行) 「本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類は、動物およびヒト用の薬剤として使用してもよく、通常、全身的あるいは局所的に経口、座剤、浣腸などの方法で使用される。投与量は動物、ヒト、年令、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、好ましくは0.001~1000μg/kgである。 本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。・・・ 経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含んでいてもよく、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水、エタノール、オリーブ油、ココナッツ油等の植物油等を含んでいてもよい。この組成物は不活性な希釈剤以外に潤滑剤、懸濁剤、のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤等を含有していてもよい。また、この液体組成物を軟カプセルにそのまま封入して用いることもできる。」 ・摘記甲3i(7頁左下欄下6行~13頁下欄) 「以下、実施例をあげて本発明を説明する。 合成例 I.15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステルの合成 ・・・ (6)15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステルの合成: [図:0001435836000038.jpg] 16R,S-フルオロ-15-ケト-11-(テトラヒドロピラニル)オキシ-PGE2メチルエステル(0.125g)を酢酸-THF-水(4:1:2)混合溶媒に溶解し、45℃に3時間保った後、常法処理して得た粗生成物をクロマトグラフィー(ベンゼン-酢酸エステル=1:1)し、15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステルを得た。 ・・・ II.15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2の合成 ・・・ (3)15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2の合成: [図:0001435836000039.jpg] 16R,S-フルオロ-15-ケト-11-(テトラヒドロピラニル)オキシ-PGE2(0.25g)を酢酸-THF-水(4:1:2)混合溶媒に溶解し、45℃に3時間保った。常法処理して得た粗生成物をシリカゲル(Mallinckrodt社,CC-4)を用いてクロマトグラフィー(ヘキサン-酢酸エチル=3.5:1)し、15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2を得た。 ・・・ III.15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステルの合成 ・・・ (6)15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステルの合成: [図:0001435836000040.jpg] 9,11-ビス(テトラヒドロピラニル)オキシ-16R,S-フルオロ-15-ケト-PGE2αメチルエステル(0.245g)を酢酸-THF-水(3:1:1)混合溶媒に溶解し、45℃に4時間保った。常法処理して得た粗生成物をクロマトグラフィー(ヘキサン-酢酸エチル1:2)し、15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステルを得た。 ・・・ [図:0001435836000041.jpg] [図:0001435836000042.jpg] [図:0001435836000043.jpg] [図:0001435836000044.jpg] 」 (合議体注:標題に付された下線は原文のとおり。) ・摘記甲3j(14頁左上欄1行~15頁右下欄末行) 「実施例1(エンテロプーリング作用) 雄性ラット(Crj Wister Rat、体重180g~240g)を1群5匹用いた。水のみを与え、24時間絶食後、被検薬を懸濁した蒸留水を5ml/kg投与し、30分後に頚椎脱臼法にて致死せしめた。開腹して腸管内容物量の一匹当りの平均値を算出し、コントロール群を100%としたときの増減をその比率を表わし、腸管内容物量を50%増量せしめた投与量をED50とした。結果を表-1に示す。 実施例2(腸管収縮作用) 雄性ラット(体重300~400g)から回腸を摘出し、Tyrode液中につるした。回腸が安定するまで15~20分間休止させた後、アセチルコリン1×10-4g/mlで数回収縮させた。同じ大きさの収縮が2回得られた後、被検薬を1分ごとに累積投与した。被検薬の収縮はアセチルコリン1×10-4g/mlの収縮を100%とした比率で表わし、5%の収縮を示す濃度をED50値とした。結果を表-1に示す。 実施例3(腸管輸送能) ラット(Crj:W系雄5週令、体重120~140g)を用いた。動物を一夜絶食後、被検薬を経口投与し、30分後5%活性炭(5%アラビアゴムに懸濁)を経口投与した。20分後に屠殺、小腸を摘出し、小腸の全長(幽門部から回盲部まで)と炭末の到達先端まで長さを測定し、輸送率(%)を求めた。 対照群の輸送率に対し投薬群のそれが有意に促進するかどうかを検定した。結果を表-1に示す。 実施例4(瀉下作用;ラット) ラット(Slc;W系雄6週令、体重135~155g)を絶食せずに用いた。動物を1匹づつ床敷紙を敷いた隔絶箱に入れ、最初1時間程度無処理のまま観察を行い、下痢便排出動物を除外し、正常固型便排出動物のみを使用した。 被検薬の効果判定は経口投与後1~2時間毎に6時間にわたって行った。糞便の判定は固型にて床敷紙に付着しないものを正常便とみなし、付着するものはすべて下痢便とみなし、1個でも下痢便の認められたものは瀉下効果あり(+)と判定した。 成績は使用総動物に対する下痢便排出動物数の比で表わした。この方法により最終的な瀉下有効率よりED50を算出した。結果を表-1に示す。 [図:0001435836000045.jpg] * +: ED50<10-6M ±: 10-6M≦ED50≦10-4M -: ED50>10-4M ** -: 10mg/kgで対照と差なし +: 1~10mg/kgで対照より輸送能が有意に上昇 ++: 1mg/kgより低濃度で対照より輸送能が有意に上昇 被検薬 1:プロスタグランジンE2 2:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- プロスタグランジンE2メチルエステル 3:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- プロスタグランジンE2 実施例5(瀉下作用;ヒト) 健常男子10名のボランティアを用い、1群5名として2群にわけた。1群には試験区として被検薬2を20μg含むココナッツ油200μlを、もう1群には対照区としてココナッツ油200μlのみを経口投与した。 試験区では、5名中4名が投与から2~5時間目に腹部膨満感をうったえ、軟便から水様性の下痢症状を呈した。なお、この時、腹痛時の副作用をうったえるものはなく、他の臨床諸見も特に異常は認められなかった。また、投与後8時間目では、上記4名も含め、腹部の不快感もなく、特に異常は認められなかった。 対照区では、5名全員、投与から8時間を経過しても特に異常は認められなかった。 実施例6 下記の被験薬についてエンテロプーリング作用(実施例1と同様)および腸管収縮作用(実施例2と同様)を求めた。結果を表-2、表-3および表-4に示す。 [図:0001435836000046.jpg] 被験薬 4:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- PGE2エチルエステル 5:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- 20-メチル-PGE2メチルエステル 6:15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2 7:15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステル 8:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGE2メチルエステル [図:0001435836000047.jpg] 被験薬 9:13,14-ジヒドロ15-ケト-16R,S-フルオロ-Δ2- PGA1 (合議体注:「ジヒドロ15-ケト-」との表記は、「ジヒドロ-15-ケト-」の明らかな誤記と認める。) 10:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- Δ2-PGA1メチルエステル 11:PGA1 [図:0001435836000048.jpg] 被験薬 12:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- PGF2α 13:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ- PGF2αメチルエステル 14:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ- PGF2αメチルエステル 15:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ-20 -メチル-PGF2αメチルエステル 16:13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-16R,S- フルオロ-PGF2α 17:13,14-ジヒドロ-15-ケト-20-エチル-16R,S- フルオロ-PGF2αメチルエステル 18:15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステル 19:PGF2α 」 ・摘記甲3k(17頁左下欄下6行~右下欄12行) 「発明の効果 本発明で用いられる15-ケト-16-ハロゲン-PG類は、顕著なエンテロプーリング作用を有し、腸管収縮に伴う腹痛などの副作用を示さない。また、腸管輸送能の促進作用も顕著であり、実際に動物やヒトにおいても顕著な瀉下作用を有する。さらに下痢症状からの回復もすみやかであるので、緩下剤、峻下剤などの下剤として有用である。 従って、本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類は、便秘の治療あるいは予防のみならず、ヘルニアや心臓血管系の疾患を有する患者が排便時に息まないために、あるいは直腸肛門疾患を有する患者の便を軟らかくするために用いることもできる。また、検査や外科手術の前に腸内容を空虚にするために、あるいは薬物中毒や食中毒の際、腸内から有害な物質を洗い出すために用いることもできる。」 (合議体注:「発明の効果」の下線は原文のとおり。) (2) 甲4及び乙6の記載事項 甲4と乙6は同じ文献であるが、甲4は249頁から256頁までが提出されているのに対し、乙6は表紙と書誌事項の頁及び249頁から259頁までが提出されているところ、甲4と乙6で重複して提出された部分については、請求人及び被請求人による訳文を参考にした当審合議体による訳文にて記載事項を摘記し、乙6のみで提出された部分についても、便宜のため、ここで被請求人による訳文を参考にした当審合議体による訳文にて記載事項を摘記する。なお、原文における空白行の表示は省略した。 ・摘記甲4(乙6)a(表紙、249頁の標題、同頁本文下8行~250頁3行) 「胃腸輸送 分子生理学 ・・・ 第7章 腸管クロライド分泌を調節する統合シグナル伝達機構 ・・・ I.序論 腸上皮は、腸管の内側を覆っている連続した細胞の単層である。この上皮の主要な機能は、腸管腔への又はそこからのイオン及び水の吸収及び分泌である。通常の状況では、正味の吸収が優勢であり、これにより毎日腸を通過する大量の水分の保持が可能となる。1日あたり9リットルの水分の摂取量のうち、便として失われるのは約2%にすぎないことを考慮すると、上皮層が当該機能を実行する効率は驚異的である。しかし、腸は、優れた吸収能力に加え、分泌能力も備えている。腸での分泌は、通常、内腔中の適切な水分の環境を維持するために必要である。・・・」 ・摘記甲4(乙6)b(251頁1~2行、同頁22~32行、252頁29~36行) 「II.腸上皮の組織、構造、及び機能 ・・・ クロライドなどのようなイオンの一定方向の輸送を可能にする上皮細胞の二つの必須の特徴は、機能的極性、及び、互いに細胞間のタイトジャンクションを形成する能力である(・・・)。機能的極性とは、上皮細胞の頂端膜側と基底膜側の領域の間におけるタンパク質の非対称的な分布を意味する。イオン輸送機構を構成するチャンネル、ポンプ、共輸送体の局在における非対称性により、上皮の頂端膜側と基底膜側の間に電気化学的勾配を確立することができ、次いでイオンの一定方向の輸送が可能になる。イオン輸送タンパク質に加え、上皮細胞は、頂端膜側及び基底膜側の表面に様々な分泌促進物質に対する受容体も差次的に発現している。・・・ ・・・。環状ヌクレオチド、タンパク質キナーゼ、カルシウム、リン脂質などを含む多くの細胞内セカンドメッセンジャーは、細胞骨格の変化及び傍接合部環の収縮を含む機構を介して、タイトジャンクションの透過性を調節すると考えられている(・・・)。細胞内セカンドメッセンジャーのレベルの変化に応じてタイトジャンクションが開くことは、経上皮のイオンと水の流れの程度を決定するうえで重要な事象である。なぜなら、タイトジャンクションが開くと、イオン及び水分の輸送に対する細胞間バリアが劇的に減少する可能性があるからである。」 ・摘記甲4(乙6)c(252頁37行~253頁6行) 「III.上皮クロライド分泌の基礎 上皮細胞を横断する水の分泌は、最終的にはイオンの能動輸送により駆動される受動的プロセスである。小腸及び結腸では、クロライドが水分の分泌を駆動する主要なイオンである。典型的には、クロライドイオンが経細胞的に腸管腔内に分泌され、これにより主にナトリウムイオンなどの陽イオンがタイトジャンクションを通る傍細胞経路で受動拡散するための電気化学的勾配が生じる。その結果、上皮の頂端側に塩が蓄積し、続いて等張性を維持するために浸透圧勾配に沿ってタイトジャンクションを通って水が流出する。」 ・摘記甲4(乙6)d(253頁7~12行) 「A.クロライド分泌機構の構成要素 ほかの全てのイオン輸送機構と同様に、腸上皮を横断するクロライド分泌は、複数のイオン輸送経路の協調的な作用によって起こり、これらの経路が一体となってクロライド分泌機構を構成している。四つの主要なイオン輸送経路が関与している:Na+/K+/2Cl-共輸送体、Na+/K+ ATPaseポンプ、K+チャンネル、及び、Cl-チャンネルである。」 ・摘記甲4(乙6)e(253頁13行、同頁37行~254頁14行) 「1.Na+/K+/2Cl- 共輸送体(NKCC) ・・・ NKCCの活性は、タンパク質の細胞質側カルボキシ末端とアミノ末端のリン酸化状態を変化させるキナーゼ活性とホスファターゼ活性との動的平衡によって調節されているようである。浸透圧ストレスと血管作動性腸管ペプチド(VIP)などのような細胞内cAMPを上昇させるホルモン作動物質のいずれもが、このタンパク質のリン酸化を増加させることが実証されている(・・・)。NKCCのリン酸化を担う特定のタンパク質キナーゼは未だ同定されていないものの、ホルモン刺激及び浸透圧刺激が腸上皮での当該タンパク質を活性化するシグナル伝達経路が、ある程度、集中しているようである。サメの直腸腺及びT84細胞の研究において、ホルモン刺激による共輸送体の活性化が、少なくとも部分的に、頂端側のクロライドチャンネルの開口によって媒介されることが実証されている(・・・)。これに続く細胞質内Cl-濃度の低下が浸透圧感受性タンパク質キナーゼを活性化し、当該キナーゼがNKCCをリン酸化して活性化すると考えられている。頂端膜側のクロライドチャンネルと基底膜側のNKCCとの間の、このような直接的なクロストークが、クロライドの流出と流入を緊密に同期させることによる細胞内の電解質組成の維持に寄与している。」 ・摘記甲4(乙6)f(254頁34行~255頁12行) 「2.Na+/K+ ATPase 腸管上皮を横断するイオン及び水分の輸送には、適切な浸透圧勾配を生成し維持するためのエネルギーが必要である。このエネルギーは、通常、ATPaseポンプから得られる。その名が示すとおり、これらの輸送タンパク質は、ATPの加水分解で得られるエネルギーを利用して、電気化学的勾配に逆らってイオンを輸送する。腸管でのクロライドの分泌の原動力は、全ての腸管上皮細胞の基底膜側に局在するNa+/K+ ATPaseポンプの活動により得られる。Na+/K+ ATPaseは、細胞内に2個のK+イオンを異動させる代わりに、細胞から3個のNa+イオンを吸い出すことにより、細胞内のNa+イオン濃度を低く維持する働きをする。このポンプ活性は、細胞からの陽イオンの純損失をもたらすため、細胞外に対して細胞内に電気陰性の電位を生じさせる。このNa+/K+ ATPaseポンプの活性は、クロライドの分泌に関して主に二つの結果をもたらす。第一に、細胞内のNa+の濃度を低く維持し、それによりNKCClを介した基底膜を横断するNa+の取り込みのための濃度勾配を形成する。したがって、電気化学的平衡を超えて、細胞内にCl-を積み込むための適切な濃度勾配を作り出すことから、これはCl-分泌機構の重要な部分である。第二に、このNa+/K+ ATPaseを介したNa+の排出により細胞内に形成される負の電位は、Cl-の流出が起こるための適切な電気的勾配を維持する上で重要である。」 ・摘記甲4(乙6)g(255頁23行~256頁5行) 「3.K+チャンネル K+チャンネルは、腸管上皮細胞の頂端膜側と基底膜側の両方に存在しており、結腸由来の組織及び細胞株において最も広範に研究されてきた(・・・)。基底膜側のK+チャンネルは、Cl-分泌機構において重要であり、腸管上皮には少なくとも二つのサブタイプが存在することが知られている:一つはcAMPによって活性化され、Ba2+による遮断に感受性であり、もう一つは細胞内Ca2+によって活性化され、Ba2+への感受性が比較的低い(・・・)。後者のCa2+-活性化K+チャンネルは、最近クローニングされた中間コンダクタンスで内向整流性K+チャンネルであるhIK1と複数の特性を共有している(・・・)。これらのチャンネルは、基底膜側のNa+/K+ ATPaseポンプ及びNKCC1を介して細胞内に蓄積したK+の排出経路として機能する。基底膜側チャンネルを介したK+の排出は、NKCC1を介したCl-取り込みの駆動力を増大させるだけでなく、細胞を過分極状態に維持するのにも役立ち、そのためクロライド分泌の勾配が増大する。T84結腸上皮細胞の基底膜では、cAMP-活性化K+コンダクタンスとは異なり、細胞内Ca2+の変化にも依存しない、3番目のタイプのK+チャンネルが同定されている(・・・)。この大コンダクタンスチャネルは、アラキドン酸によって活性化され、細胞内Ca2+とcAMPに依存しないメカニズムにより少なくとも部分的に腸上皮のクロライド分泌を刺激すると思われる炎症性メディエーターであるアデノシンに反応して、クロライド分泌を媒介することに関与している可能性がある(・・・)。」 ・摘記甲4(乙6)h(256頁13行~末行) 「4.Cl-チャンネル 腸上皮の頂端膜に存在するチャンネルは、クロライドの排出経路を提供しており、一定方向の分泌が起こるために不可欠である。分泌上皮には、cAMP-活性化チャンネル、Ca2+-活性化チャンネル、外向整流性クロライドチャンネル(ORCC)、及び、ClCチャンネルを含む、複数の種類のクロライドチャンネルが存在することが知られている。クロライドチャンネルであるORCC及びClCファミリーのメンバーは、腸上皮で発現していることが知られており、細胞容積の調節に関与していると考えられている(・・・)。しかしながら、現在のところ、これらのチャンネルの調節や、それらの経上皮のCl-及び水分の分泌への寄与に関するデータはほとんどない。対照的に、cAMP-依存性ホルモンに応答してCl-の流出を媒介する、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)チャンネルは、おそらくイオンチャンネルの中で最も精力的に研究されているものである。このタンパク質をコードする遺伝子の変異は、腸を含む多くの臓器におけるクロライド輸送の異常を引き起こす遺伝性疾患である嚢胞性線維症の原因となる。正常なCFTRチャンネルは、Cl>Br>Iの順のイオン選択的性を有し、線形コンダクタンスは8~10pSである。CFTRの構造は十分に解明されている(・・・)。CFTRは、1480アミノ酸からなる170kDaのポリペプチド鎖として構成され、二つの膜貰通ドメインを持ち、それぞれが六つの膜貰通配列で構成されている。これらの領域は、このドメイン内の点変異がチャンネルのイオン選択性を変化させることから、実際のチャンネル細孔を形成しているようである。CFTRはまた、二つの細胞質ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)を有しており、このことから、ATP結合カセット(ABC)タンパク質ファミリーに分類されている。これらのドメインによるATPへの結合及びその加水分解は、チャンネルのゲーティングに必須である(・・・)。しかしながら、CFTRを介したCl-の排出に必要なエネルギーは、基底膜側のNa+/K+ ATPaseにより確立される電気化学的勾配に由来するため、CFTRそれ自身によるATPの加水分解から得られるエネルギーが、Cl-分泌に必要かどうかは明確にされていない(・・・)。」 ・摘記乙6i(256頁末行~257頁13行) 「CFTRは、調節性のNBDに加えて、長い細胞質のRドメインを有しており、その欠失により、このチャンネルは恒常的に活性化する(・・・)。Rドメインは、陽イオンチャンネルにおける「ボール・アンド・チェーン」モデルと同様の態様で、細胞質側のチャンネル細孔をブロックすることにより機能すると考えられている。Rドメインにはタンパク質キナーゼAによるリン酸化を受ける複数のコンセンサス部位が含まれている(・・・)。Rドメインは、リン酸化されると、その構造に変化が生じ、ATPの存在下で、チャネルのオープンに繋がる(・・・)。チャンネルの閉鎖は、Rドメインを脱リン酸化するホスファターゼによって引き起こされ、これによりチャンネルは静止状態に戻る(・・・)。 細胞内cAMP濃度の上昇によるPKAの活性化が、CFTR活性化への主要な刺激であるが、このチャンネルの調節には、他にもいくつかの因子が関与しているようである。」 ・摘記乙6j(258頁14行~259頁18行) 「B.まとめ 上述したように、腸管におけるCl-分泌機構を構成する個々の輸送タンパク質は十分に解明されている。これらのタンパク質の協調的かつ同期した作用により、上皮の基底膜側から頂端膜側へのCl-イオンの電気的輸送が可能となる(図1)。要約すると、Cl-は、二つのCl-イオンを一つのK+イオン及び一つのNa+イオンとともに細胞内に移動させる、基底膜側のNa+/K+/2Cl- 共輸送体(NKCC1)によって、細胞内に蓄積される。Cl-の取り込みのためのエネルギーは、Na+を電気化学的勾配に逆らって細胞外へ排出し、代わりにK+を細胞内へ取り込む、基底膜側のNa+/K+ ATPaseポンプから得られる。この輸送体の作用により、細胞質内のNa+濃度が細胞外の環境と比較して低く維持され、その結果、共輸送体を介したNa+の取り込みのための濃度勾配が形成される。二つのK+イオンを細胞に取り込む代わりに、細胞から三つのNa+イオンを排出することから、Na+/K+ ATPaseの作用は、細胞内を細胞外に対してより電気的に陰性にする。NKCC1及びNa+/K+ ATPaseを介して細胞内に取り込まれたカリウムは、基底膜側にある調節されたK+チャンネルを介して排出され得るため、細胞質内に蓄積しない。このように、NKCC1、Na+/K+ ATPase、及び、K+チャネルの協調的な作用によって、細胞内のCl-濃度は、電気化学的平衡を超えて上昇し、細胞内は細胞外に対して、より電気的陰性となる。これにより、頂端膜側に存在する調節されたクロライドチャネルがオープンした際に、Cl-が細胞外に排出されるのに好適な濃度勾配が形成される。Cl-が細胞を横断して分泌されると、Na+及び水が、タイトジャンクションを介した受動的な傍細胞流によって、それに続くことになる。」 ・摘記乙6k(258頁、図1) 「 [図:0001435836000049.jpg] 図1 クロライド分泌機構。腸管上皮細胞を横断するクロライドの経上皮分泌は、非対称に配置された複数の輸送タンパク質の協調的な活動によって達成される。基底膜側では、クロライドの取り込みは、NKCC1によって行われる。これは二次能動輸送であり、Na+/K+ ATPaseによって確立された細胞内ナトリウム濃度の低下によって駆動される。カリウムは分子レベルでの同定が未だ完全にはされていない基底膜側のK+チャンネルを介して再循環する。頂端膜側では、cAMP-調節性のCFTRクロライドチャンネル又はカルシウム-活性化クロライドチャンネル(CaCC)を介して、クロライドが細胞外へ排出され得る。」 ・摘記乙6l(259頁19~39行) 「IV.腸管Cl-分泌の調節 腸管上皮を横断するCl-分泌は、複数の輸送タンパク質の協調的な活動に依存しているため、このプロセス全体が、この輸送機構の構成要素のいずれかの機能的活性を変化させる因子によって調節されている可能性がある。輸送体の機能の急激な変化は、タンパク質と直接相互作用するシグナル、又は、そのリン酸化状態や膜挿入レベルの変化を誘導するシグナルにより引き起こされる可能性がある。長期的な変化は、輸送体タンパク質の発現を増加又は減少させる因子により引き起こされる可能性がある。一般的に、Cl-分泌の調節に関与するメカニズムは、二つのクラスに分けることができる。 第1のクラスの調節機構は、細胞間的な性質を持ち、神経細胞、免疫細胞、腸内分泌細胞及び線維芽細胞から放出される、多様な化学的メディエーターを含み、これらは全て腸管粘膜内で上皮層に近接して存在している。第2のクラスの調節機構は、上皮細胞自体の中に存在しており、通常は細胞膜上の特異的受容体を介して、細胞外刺激が上皮細胞と相互作用する際に活性化される、セカンドメッセンジャー及びシグナル伝達経路から構成される。したがって、受容体は、上皮細胞が細胞外環境の状態に関する情報を受け取るポイントとみなすことができ、一方、受容体結合型セカンドメッセンジャー系は、この情報が処理され細胞内に伝達されるメカニズムを表している。」 (3) 甲5の記載事項 請求人による抄訳を参考にした当審合議体による訳文にて甲5の記載事項を摘記する。 ・摘記甲5a(8306頁左欄1~27行) 「ClCクロライドチャネルスーパーファミリーに属する、ClC-2は、特定の上皮組織において発現していることが既に確認されている。これらの知見は、ClC-2が、嚢胞性線維症に罹患し、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子を欠損した、上皮組織において、クロライド輸送の障害を補い得るとの推測を後押しした。しかしながら、ClC-2チャネルの発現と上皮からのクロライド分泌を結びつける直接的な証拠は存在しなかった。本研究では、ヒト小腸をモデル化した細胞株であるCaco-2細胞株に、ClC-2転写産物及びタンパク質が内因的に存在することを示す。アンチセンス戦略を用い、パッチクランプ電気生理学により測定したCaco-2細胞における天然のクロライドの流れにClC-2が寄与することを示す。アンチセンスClC-2がトランスフェクトされたCaco-2細胞の単層は、モックトランスフェクト単層よりも少ないクロライド分泌(ヨウ化物の流出としてモニター)を示した。このことは、ClC-2がヒト腸管上皮によるクロライド分泌に寄与し得るということを示す初めての直接的な分子的証拠である。さらに、共焦点顕微鏡によるClC-2の局在の解析により、ClC-2が、この上皮における特異的な位置からの、すなわち、タイトジャンクション複合体の頂端膜側からの分泌に寄与していることが明らかとなった。したがって、これらの研究は、嚢胞性線維症などの腸管のクロライド分泌に影響を与える疾患に対する治療標的としてClC-2を検討するための必要な根拠を提供する。」 ・摘記甲5b(8306頁右欄8~31行) 「くわえて、Schwiebertら(6)は、嚢胞性線維症(CF)成人患者由来の気道上皮細胞にClC-2様の電流れが存在することを報告し、ClC-2を介したクロライド輸送がCF気道上皮におけるCFTRクロライドチャネルの欠陥又は欠損を補い得る可能性を示唆した。さらに、ClC-2のメッセージが、cftr-ノックアウトマウス由来の腸管上皮組織で検出可能であることから、Jooら(7)もまた、ClC-2がCF罹患の腸管におけるクロライド輸送のバイパス経路を提供する可能性を示唆した。これらの興味深い観察にもかかわらず、ClC-2が本来のクロライド分泌に寄与することを示唆する直接的な分子的証拠は存在しなかった。 本研究では、ヒト小腸上皮をモデル化した細胞株であるCaco-2細胞株のクロライド分泌におけるClC-2の役割を評価した(8,9)。免疫蛍光法及び共焦点顕微鏡を用いて、ClC-2タンパク質がCaco-2細胞の細胞膜に内因的に発現していることを確認した。さらに、完全に分化した単層細胞において、ClC-2が細胞間タイトジャンクションの頂端膜側に特異的に局在することを示した。アンチセンス戦略を用いて、内因的に発現したClC-2が単一のCaco-2細胞の細胞膜を横断する電流を媒介すること、そして、最終的に、ClC-2がCaco-2細胞の単層を横断する天然の陰イオン分泌に寄与し得ることを明らかにした。」 (4) 甲9の記載事項 請求人による抄訳を参考にした当審合議体による訳文にて甲9の記載事項を摘記する。なお、原文における空白行の表示は省略した。 ・摘記甲9a(809頁、標題、要約) 「エンテロプーリングアッセイ: プロスタグランジンにより生じる下痢のテスト ・・・ 要 約 プロスタグランジンの下痢誘発特性をテストするアッセイ(エンテロプーリングアッセイ)について説明する。絶食させたラットに経口又は皮下でプロスタグランジンを投与し、30分後に屠殺する。小腸全体を摘出し、その内容物を試験管に回収する。この腸内の液体の量が多いほど、プロスタグランジンの下痢誘発性が高い。このアッセイは、簡便、迅速、定量的であり、下痢の予測が可能である。プロスタグランジンの相対的な下痢誘発活性を等級分けしたり、この作用を阻害する可能性のある薬剤をテストしたりするのにも利用できる。 小腸への液体の蓄積は「エンテロプーリング」と呼ばれている。これは、(a)血液から管腔へ排出される液体と、(b)より程度は小さいものの、既に管腔内に存在していたが、プロスタグランジンによって吸収が阻害された液体の一部との、合計である。エンテロプーリングの程度は、小腸から大腸への液体の移行量にも依存する。我々の結果は、高用量のプロスタグランジンの投与後に観察される下痢が、腸管運動亢進ではなく、小腸への大量の液体の蓄積によるものであるという仮説を支持する。この液体は、その後、大腸へ運ばれて、最終的に下痢として排出される。 プロスタグランジン以外の薬剤についても、エンテロプーリング作用をテストした。ヒマシ油、高張液、及び胆汁酸塩などの下剤は、エンテロプーリングを引き起こした。」 (合議体注:「要約」の下線は原文のとおり。) ・摘記甲9b(810頁1~27行) 「 序 論 下痢は、プロスタグランジンの最も一般的な副作用であるかもしれない。適切な用量で投与された幾つかのプロスタグランジンによって、動物(ラット、マウス、イヌ、サル)に下痢を引き起こし得るが、その結果を定量的に満足に表現することはできない。先行する研究では、幾つかのプロスタグランジンを、上腸間膜動脈内投与(イヌに対し、PGA1、PGE1、PGF2α)(1,2)、静脈内投与(ヒトに対し、PGF2α)(3)、又は小腸腔内直接投与[(ヒトに対し、PGE1)(4,5)及びイヌ(2)]することによって、管腔内への液体(水及び電解質)の蓄積が誘発されることが示されている。・・・。腸管内の液体の蓄積の機序は、局所的な環状AMPの生成の促進に関与しているようであり(6)、このことが、次に、(a)血液から小腸管腔への水及び電解質の分泌を促進し、そして、(b)腸管による水分及び電解質の吸収を減少させると考えられる。小腸に蓄積した液体は大腸へ移行し、後に下痢として排出される。 我々は、プロスタグランジン投与後に小腸内に蓄積する液体の量が、下痢の定量的アッセイとして利用できるのではないかと考えた。そのような定量的アッセイの開発に至った一連の研究を紹介する。本報告では、小腸の管腔内に液体が蓄積するプロセスを「エンテロプーリング」と呼ぶ。・・・。」 (合議体注:「序論」の下線は原文のとおり。) ・摘記甲9c(810頁下9行~811頁15行) 「 方法及び結果 1. 16,16-ジメチルPGE2の小腸、盲腸、及び、大腸の重量への影響 理論的根拠. プロスタグランジンは特定の用量で可視的な下痢を引き起こし得るため、消化管の一部は管腔内容物の増加により重量が増加する可能性がある。そうであれば、消化管の特定区間の重量測定により、プロスタグランジンの下痢誘発特性を定量的に測定できる。 方法. 16,16-ジメチルPGE2(8)を、0.5mg/kgの用量で給餌したラットに経口投与した。その後、餌と水を撤去し、投与後15分から5時間の間に各群を屠殺した。各群10匹のラットを用いた。小腸全体(幽門から回盲部移行部まで)、盲腸及び大腸を、それぞれ別々に摘出し、内容物の流出を防ぐために、各切片の両端をクリップで固定し、分析天秤で重量を測定した。 結果. ・・・、このプロスタグランジンは、(a)小腸の重量を増加させ、(b)盲腸の重量には、2時間で50%減少させことを除き、ほとんど影響を与えず、(c)大腸の重量を、初めに増加させた後に、減少させた。下痢は投与1時間後に起こった。」 (合議体注:「方法及び結果」、「1.」標題、「理論的根拠」、「方法」及び「結果」の下線は、原文のとおり。) ・摘記甲9d(811頁下17行~813頁18行) 「2. 16,16-ジメチルPGE2の(小腸重量ではない)小腸内容物への影響 理論的根拠. 小腸重量の増加は、腸管腔内への液体の流入のみによるものと推定されたので、小腸全体の重量ではなく、腸内容物の体積を測定した。この手順は、小腸を慎重に切断して分析天秤で重量を測定するよりも、はるかに簡便かつ迅速であるだけでなく、下痢の原因と推測される液体それ自体のみを測定するため、より正確かつ特異的であると考えられる。 方法. 小腸内の食物残渣を最小限に抑え、それにより測定の精度をさらに向上させるため、動物を一晩絶食させた。16,16-ジメチルPGE2を0.5mg/kgで経口投与し、各群12匹の動物を1時間後に屠殺した。 ・・・ 小腸を幽門及び回盲部の接合部で切断し、粘稠な液体(対照群)及び非常に水っぽい液体(プロスタグランジン処理群)からなる、その内容物を、指で小腸全長を搾るようにして採取し、目盛り付き試験管に集めた。液体の体積を記録した。 結果. 16,16-ジメチルPGE2投与によって、腸内液体の量は3.75倍増加した(対照群:0.88±0.10ml、16,16-ジメチルPGE2群:3.3±0.23ml、P<0.01)。 結論. 16,16-ジメチルPGE2の単回経口投与によって、小腸内へ急激かつ顕著な液体の流入が生じ、その量は正確に測定可能であり統計的解析に供した。小腸管腔内への液体の蓄積を「エンテロプーリング」と呼ぶ。その総量は、(a)血液から管腔へ移行した体液と、(b)既に管腔内に存在していたが、プロスタグランジンによって吸収が抑制された体液の一部との、合計である。」 (合議体注:「2.」標題、「理論的根拠」、「方法」、「結果」及び「結論」の下線は、原文のとおり。) ・摘記甲9e(816頁下14行~817頁7行) 「6. PGE2の16,16-ジメチルPGE2との比較 方法. PGE2及び16,16-ジメチルPGE2を、様々な用量で経口投与し、30分後に動物を屠殺した。・・・。 結果. ・・・。このことから、16,16-ジメチルPGE2は、エンテロプーリング刺激においてPGE2の200倍の効力を有し、おそらく、その数倍の下痢誘発性を有するといえる。16,16-ジメチルPGE2により生じた腸液の最大量も、PGE2により生じた量より多かった。投与から屠殺までの30分間には、下痢は起こらなかった。 結論. 16,16-ジメチルPGE2の腸管液最大量がPGE2より大きかった事実は、前者の半減期が長いためであり得る。PGE2の分解が速いため、この類似体はPGE2よりも長時間で腸管液を生成させ続けるのかもしれない。別の可能性としては、16,16-ジメチルPGE2がPGE2よりも本質的に活性が高いことが考えられる。」 (合議体注:「6.」標題、「方法」、「結果」及び「結論」の下線は、原文のとおり。) ・摘記甲9f(817頁下18行~819頁末行) 「7. 様々なプロスタグランジンのエンテロプーリング作用 理論的根拠. 前節で開発したアッセイは、16,16-ジメチルPGE2で信頼性の高い定量結果を示したために、より広範なプロスタグランジンをテストした。経口投与の30分後に動物を屠殺した。各群に6匹のラットを用いた。 結果. a. アナログ以外のプロスタグランジンの効果. 図4に示す結果は、用いられたプロスタグランジンが、特に5mg/kgの投与量において、主に三つのカテゴリーに分類されることを示す:高いエンテロプーリング活性を示すもの[PGE2、PGC2(9)、PGB2]、中程度の活性であるもの(PGA1、PGA2、PGF2α)、弱い活性であるもの[PGF2β、PGD2(10)]。表3は、これらのプロスタグランジンを、効力の高い順にリストしている。それぞれに示されている用量は、1.75mlの腸液の蓄積を刺激する用量である(プロスタグランジン投与後の腸液の最大量は約3.5mlであるため、これはおよそED50に相当する)。 b. メチルプロスタグランジンの効果. ・・・。15(S)-15-メチルPGE2メチルエステルと、16,16-ジメチルPGE2とは、ほぼ同等のエンテロプーリング作用を示したが、15(R)-15-メチルPGE2メチルエステルは、活性が低かった(図5)。F2β系列では、15(S)-15-メチルは、15(R)-15-メチルよりも、わずかに強力であった(図6)。F2β系列での15(S)及び15(R)の閾値用量は、それぞれ0.1及び1mg/kgであった。16,16-ジメチルPGE2及び15(S)-15-メチルPGE2メチルエステルは、100μg/kgで下痢を起こしたが、15(R)-15-メチルPGE2メチルエステルは、25mg/kgでも下痢を起こさなかった。 結論. このアッセイは、エンテロプーリング作用に関して複数のプロスタグランジンを区別できる。表3は、テストした全てのプロスタグランジンの相対的な効力を示している。 表3 様々なプロスタグランジンの相対的なエンテロプーリング活性 ---------------------------------- 投与量(mg/kg) PGE2の何倍活性 ---------------------------------- A.類似体でないPG: PGE20.1 1 PGC2 0.25 1/2 PGB2 1 1/6 PGA1 5 1/33 PGA2 5 1/33 PGF2α 5 1/33 PGF2β 12.5 1/83 PGD2 25 1/166 B.PG類似体: 16,16-diMe E20.0005 200 15(S)-15-Me E20.0005 200 15(R)-15-Me E20.005 30 15(S)-15-Me F2β 0.5 1/3 15(R)-15-Me F2β 1.1 1/7 ---------------------------------- 全てのPGは1mlのエタノール水溶液で経口投与した。 30分後に腸液を採取した。 投与量は、1.75mlの腸液の蓄積を刺激するプロスタグランジンの量を示す。」 (合議体注:「7.」「a.」「b.」標題、「理論的根拠」、「方法」、「結果」及び「結論」の下線は、原文のとおり。) ・摘記甲9g(825頁本文1~11行、同頁本文18行~826頁25行、827頁1~22行) 「 考 察 本報告の研究は、経口又は皮下投与された幾つかのプロスタグランジンがラットの小腸管腔内に液体を蓄積させることを示している。これは、「エンテロプーリング」(「エンテロ」=腸管、「プール」=液体の貯留)と呼ばれており、「排泄」、「分泌」、「滲出」又は「濾過」よりも適切な用語である。なぜなら、収集される腸管液の量は、二つのプロセス:血液から腸管腔への体液の移動、及び、より程度は小さいものの、腸管腔内に既に存在していた液体の吸収の抑制、の結果だからである。・・・。イヌにおいて、静脈内投与されたPGA1及びPGE1は、タウロコール酸刺激による胆汁の分泌を促進したが、セクレチン刺激によるものは促進しなかった(13)。一方、静脈内投与されたPGE1(14)、及び、静脈内投与又は十二指腸内投与された16,16-ジメチルPGE2(15)は、イヌの膵液分泌量を著しく減少させた。 プロスタグランジンのこの特性は、それらの下痢誘発活性を簡便に定量するアッセイとして利用できる。このアッセイには次の利点がある:単回経口投与のための試料量が少量で済み、30分で結果が得られ、極めて定量的かつ正確(液量ml単位)であり、効果が用量依存的である。得られたデータは統計解析に供することができる。このアッセイでは、用量反応曲線の作成が可能であり、種々のプロスタグランジンの比較も行うことができる。 下痢が発生するまで動物を十分長い期間飼育した研究において、エンテロプーリングアッセイが下痢を予測できることが明らかとなった。小腸内の液体の蓄積は実際の下痢に先行する。これは、プロスタグランジンによる下痢は、液体[主に水及び電解質からなる(2,4)]が小腸内で急激かつ大量に蓄積し、それが大腸へ運ばれ、最終的に水様便として排出されることによって引き起こされることを示している。しかし、エンテロプーリングの発生は、下痢が必ず起こることを意味しない。プロスタグランジンの投与量が少ない場合には、エンテロプーリングの程度も低く、小腸腔内に蓄積した液体は、小腸及び/又は大腸により再吸収される可能性が高い。その結果、大腸下部まで到達する液体の量が不十分となり、下痢として排出される必要が生じない。 ・・・ 腸管運動亢進は、以下の理由により、プロスタグランジンによる下痢において、あったとしても、軽微な役割しか果たしていないと思われる。(a)E型プロスタグランジンは、ラットの小腸の縦走平滑筋をインビトロで収縮させるが、モルモットなどの他の種では、この作用は一定でないか又は生じない (16)。(b)イヌでは、PGE1は胃幽門及び腸管の運動を(刺激するのでなく)抑制するが、PGF2αは腸管運動を亢進させる(17)。(c)ヒトへのPGE1の経口投与後、数時間以内に、腹部疝痛、下痢、腸管通過時間の短縮が認められた(18)。通過時間への影響が主に腸管運動亢進によるものか、それとも、逆に腸管内の液体量の著しい増加によるものかは、判別できなかった。(d)ヒトにおけるPGF2αの静脈内投与は、空腸及び回腸の腔内への水及び電解質の正味の分泌を誘導する一方で、運動活動(分節性圧力波)を減少させた(3)。 蠕動運動は、おそらく水様性の内容物を腸管内へ運搬し、その排出を促進する。しかしながら、運動亢進が生じた場合でも、下痢の発生に必要な変化である腸内容物の液化は起こらない。」 (5) 甲10の記載事項 ・摘記甲10a(418頁) 「 [図:0001435836000050.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (6) 甲11の記載事項 請求人による抄訳及び甲11に対応する特表2003-511445号公報の記載を参考にした当審合議体による訳文にて記載事項を摘記する。 ・摘記甲11a(1頁23行~2頁9行) 「発明の概要 本発明の目的は、薬理活性を有する特定の二環式化合物及びグリセリドを含有する新規な組成物、及び当該二環式化合物をグリセリドと混合することによる二環式化合物を安定性化するための方法、を提供することである。 本発明の別の目的は、薬理学的活性を有する新規な化合物を提供することである。 本発明者は、新規な二環式化合物の安定性を改善することを研究し、当該二環式化合物及びグリセリドを含有する組成物が上記目的を達成し得ることを見出した。」 ・摘記甲11b(10頁22行~13頁6行) 「以下に示す式(互変異性体II)で表される二環式化合物においては、その互変異性体である13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン化合物(互変異性体I)と平衡状態で存在し得ることが知られている(・・・。) [図:0001435836000051.jpg] ・・・ 本発明の化合物の好ましい具体例には、以下に示す化合物1及び2が含まれる: 化合物1: [図:0001435836000052.jpg] 7-[(1R、3R、6R、7R)-3-(1,1-ジフルオロペンチル)-3-ヒドロキシ-2-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-8-オン-7-イル]ヘプタン酸 化合物2 ・・・ 本発明の化合物は、気管支拡張薬などのような薬理学的活性を有する。」 ・摘記甲11c(34頁4~11行) 「本発明の組成物は、常套の手段により、適宜、製剤化することができる。それらは、経口投与用製剤、坐剤、注射剤、点眼剤又は軟膏剤などの局所投与用製剤などに適した剤形であり得る。特に、カプセル剤などの経口投与用製剤及び点眼剤などの局所投与用組成物の形態が好ましい。」 (7) 甲12の記載事項 ・摘記甲12a(148頁11~16行) 「 [図:0001435836000053.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) ・摘記甲12b(149頁10~19行) 「 [図:0001435836000054.jpg] 」 (合議体注:マーキングは請求人による。) (8) 甲14の記載事項 ・摘記甲14a(38頁本文下8~2行) 「 [図:0001435836000055.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) ・摘記甲14b(42頁2~7行) 「 [図:0001435836000056.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (9) 甲15の記載事項 ・摘記甲15a(21頁8~14行) 「 [図:0001435836000057.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (10) 甲16の記載事項 ・摘記甲16a(65頁左欄16行~末行) 「 [図:0001435836000058.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (11) 甲17の記載事項 ・摘記甲17a(1頁左下欄13行~2頁左上欄下8行) 「 [図:0001435836000059.jpg] [図:0001435836000060.jpg] [図:0001435836000061.jpg] 」 (合議体注:下線は請求人による。) ・摘記甲17b(2頁左上欄下7行~同頁左下欄10行) 「 [図:0001435836000062.jpg] [図:0001435836000063.jpg] [図:0001435836000064.jpg] 」 (合議体注:下線は請求人による。) ・摘記甲17c(2頁左下欄17行~同頁右下欄下2行) 「 [図:0001435836000065.jpg] [図:0001435836000066.jpg] 」 (合議体注:下線は請求人による。) (12) 甲19の記載事項 ・摘記甲19a(4頁(スライド7)) 「(2) 本件訂正発明11の化合物(=具体的構造が本件優先日前に公知(甲11))である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」と、甲3発明の化合物である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(被験薬8)の構造式(図2) [図:0001435836000067.jpg] 」 (13) 甲20の記載事項 ・摘記甲20a(2頁左欄14~31行) 「 [図:0001435836000068.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (14) 甲21の記載事項 ・摘記甲21a(403頁左欄下9行~404頁左欄25行) 「 [図:0001435836000069.jpg] [図:0001435836000070.jpg] ・・・ [図:0001435836000071.jpg] ・・・ [図:0001435836000072.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) ・摘記甲21b(584頁右欄8行~585頁左欄末行) 「 [図:0001435836000073.jpg] ・・・ [図:0001435836000074.jpg] ・・・ [図:0001435836000075.jpg] 」 (合議体注:枠囲みは請求人による。) (15) 甲22の記載事項 ・摘記甲22a 「【0053】例 8 【化20】 [図:0001435836000076.jpg] (±)メチル-20-エチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエートは、(±)メチル 11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエートをつくるための上記教示に大体従って、適当なオメガ側鎖中間体を用いてつくった。」 (合議体注:「例 8」の下線は原文のとおり。) ・摘記甲22b 「【0112】例28 ・・・。一般にプロスタグランジンはヒトで下痢の副作用を引き起こすので、これら化合物の下痢惹起作用もラットで評価し、この副作用を引き起こす力価を決定した。表17に示すデータは、ラットの50%に下痢を引き起こすに要する用量として規定したED50値である。・・・。これらのラット(N=6~12)にプロスタグランジンを対数関数的用量で経口投与した。投与直後、これらのラットをケージに戻し、薬剤処理後の8時間で下痢症状の有無を測定した。・・・。これらのデータは、(±)メチル-20-エチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエートが、望ましくない下痢の副作用とは基本的に無関係であることを示す。 【0113】 【表17】 [図:0001435836000077.jpg] 」 (16) 甲26の記載事項 ・摘記甲26a(71頁15~20行) 「したがって,本件特許発明1における「T細胞によるインターロイキン-17(IL-17)産生を阻害するため」という用途は,従来から知られていたTh1誘導によるT細胞刺激とは異なる,IL-23によるT細胞の処理により引き起こされるIL-17の産生を阻害することを用途とするものであるから,甲5発明の「T細胞を処理するため」とは明確に異なるものであり,相違点5は,実質的な相違点であると認められる。」 ・摘記甲26b(72頁18~23行) 「すべての炎症性疾患においてIL-17濃度が上昇するものではないし,特定の炎症性疾患においてもすべての患者のIL-17濃度が上昇するものではないと認められるから,本件特許発明1の組成物を医薬品として利用する場合には,特にIL-17を標的として,その濃度の上昇が見られる患者に対して選択的に利用するものということができる。」 2 乙号証の記載事項 乙号証のうち、乙6は、甲4と同じ文献であり、乙6の記載事項は、上記1(2)で既に摘記したとおりである。 (1) 乙4の記載事項 ・摘記乙4a(2頁(スライド4)) 「請求人が提出した証拠でPGE1化合物を示すものは甲10(オルノプロスチル)のみ ・・・ [図:0001435836000078.jpg] 」 (2) 乙8の記載事項 ・摘記乙8a 「【請求項1】 α-リポ酸又はその誘導体を含有する、ヒト抗菌ペプチド産生促進剤であって、前記ヒト抗菌ペプチドは、カテリシジン、ディフェンシンファミリー、及びカルプロテクチンからなる群より選ばれる少なくとも1つである、剤。」 ・摘記乙8b 「【0018】 <ヒト抗菌ペプチド産生促進作用> 本発明の剤は、ヒト抗菌ペプチド産生促進作用を有する。本明細書において、ヒト抗菌ペプチドとは、ヒトの体内で産生される抗菌ペプチドであり、具体的には例えば、ヒトの粘膜、好ましくはヒトの口腔組織由来の抗菌ペプチドである。本発明の剤は、口腔疾患の原因菌、例えば、歯周病原因菌(例えば、・・・)、口臭原因菌(例えば、・・・)、う蝕原因菌(例えば、・・・)及びカンジダ菌に対して抗菌作用を有するヒト抗菌ペプチドの産生促進作用を有する。そのため、本発明によれば、ヒト抗菌ペプチドの増加による歯周病、口臭、う蝕、カンジダ菌感染症等口腔疾患の予防又は改善を意図した口腔用組成物、飲食品、医薬品、医薬部外品への応用が期待できる。」 (3) 乙9の記載事項 ・摘記乙9a 「【請求項1】 下記式(I)で表される化合物及びその薬理学的に許容される塩から選ばれる1つ以上の化合物を有効成分として含有するヒアルロニダーゼ阻害剤。 【化1】 ・・・」 ・摘記乙9b 「【発明の効果】 【0011】 本発明によれば、ヒアルロニダーゼを阻害することでヒアルロン酸の分解が抑制され、保湿能の保持やシワの防止が期待できる。 【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明のヒアルロニダーゼ阻害剤とは、ヒアルロニダーゼによるヒアルロン酸の分解、消化、断片化等を減少させる効果を有する剤である。」 3 丙号証の記載事項 (1) 丙1の記載事項 ・摘記丙1a(論文タイトル) 「プロスタグランジン(E1,E2)及びその誘導体の家兎大動脈平滑筋収縮並びに血小板凝集に及ぼす影響」 ・摘記丙1b(554頁左欄1行~末行) 「 緒 言 ・・・ 著者らは2)さきにノルアドレナリン(以下NAと略す)が家兎摘出大動脈標本において平滑筋の収縮作用を示す事及びNAとレシチンとはin vitroで結合する事を報告した.今回はプロスタグランジンE1(以下PGE1又はG-511と略す)及びプロスタグランジンE2(以下PGE2又はG512と略す)並びにその誘導体の家兎摘出大動脈平滑筋の収縮に及ぼす影響を観察し,同時に血小板凝集に対する影響をも観察し比較した.」 ・摘記丙1c(554頁右欄1行~555頁左欄下8行) 「 実験方法 (1) 家兎大動脈摘出標本における平滑筋収縮作用に及ぼすプロスタグランジン並びにその誘導体の影響に関する実験方法. ・・・ ・・・.NA,ヒスタミンおよびセロトニンなどの作動薬は累積的に適用し,被検薬処置後の収縮が一定した所で作用させ,各作動薬の収縮に対する被検薬の影響を観察した.プロスタグランジン及びその誘導体としては下記の4種類を用いた. [図:0001435836000079.jpg] (2) 血小板凝集に及ぼすプロスタグランジン並びにその誘導体の影響に関する実験方法.」 ・摘記丙1d(560頁左欄2~23行) 「 総括考按 ・・・,今回は大動脈平滑筋の収縮という現象を一つの目安としてプロスタグランジンの作用を比較した.この様な目安をおいた時,上記4被験薬はそれぞれ異なった力価を示した(・・・).即ちプロスタグランジンE2は最もそれ自身による大動脈平滑筋収縮作用が強いと同時にNAとの拮抗も強かった.次いでGNo-1142,747-1,プロスタグランジンE1の順であった.一方血小板の凝集に対するこれら薬剤の影響は前述の如く,大動脈平滑筋収縮並びにNAなどの作用との拮抗力価とはいささか異なっていた.即ちNA凝集に対してプロスタグランジンE2は増強作用を示したのに対して,プロスタグランジンE1は抑制を示し,747-1及びGNo-1142は非常に強い抑制作用を持つ事がわかった.特にGNo-1142はその作用が強かった.ADP凝集に対しては747-1及びGNo-1142ともに強い抑制作用を示したが,プロスタグランジンE1(G-511)はさほど効果を示さなかった.プロスタグランジンE2(G-512)は逆に自分自身で血小板凝集を惹起する事がわかった.」 (2) 丙2の記載事項 ・摘記丙2a(2頁) 「 [図:0001435836000080.jpg] 」 ・摘記丙2b(3頁) 「 [図:0001435836000081.jpg] 」 第7 本件明細書の記載事項 本件明細書(甲2を参照。)の記載事項のうち、請求人が主張する無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)の判断に必要な事項を以下に摘記する。摘記事項中の下線は、当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。 ・摘記本a 「【技術分野】 【0001】 本発明は、クロライドチャンネルをオープンするための方法に関する。より具体的には、本発明はクロライドイオンの輸送を調節することができる化合物に関する。 【背景技術】 【0002】 クロライドイオン(Cl-)は、水/電解質輸送、分泌、細胞容積の調節などを司るのみならず、細胞応答を左右する因子として重要な役割を演じることが知られている。 【0003】 例えば、クロライドイオンの細胞内外への移動は、同時に水や電解質の輸送を伴うため、細胞容積の調節に働く。このため、細胞の急激な容積変化を伴う成長・分裂、プログラム細胞死においてクロライドイオンは重要な役割を演じることが示唆されている。 【0004】 脳においては、神経細胞内のクロライドイオンレベルを低く保つことで中枢神経系に抑制性の制御が働くことが知られており、クロライドイオンが不安や痙攣の抑制、睡眠、記憶、概日リズムの調節などに重要な役割を演じることも知られている。 【0005】 腸管においては、クロライドイオンが下痢や便秘等の病態と深く関わっており、モルヒネなどのオピオイドの投与によってクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌に異常が起こると、難治性の便秘が引き起こされることも知られている。クロライドイオンのバランスの異常による疾患としては、この他に、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、不安、不眠症、嚢胞性繊維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などが知られている。 【0006】 クロライドチャンネルは、クロライドイオンを輸送するイオントランスポート膜タンパク質である。様々な種類のクロライドチャンネルが神経、筋、上皮などの細胞膜に存在し、様々な生理機能や細胞防御機構に関与していることが報告されている。 【0007】 例えば、CFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)と名付けられたクロライドチャンネルは、嚢胞性線維症(cystic fibrosis)の原因究明の過程で発見された。嚢胞性線維症は、白色人種において最もよく知られた常染色体性劣性の遺伝性疾患で、原因となる遺伝子の変異は、CFTR遺伝子に起こり、気道、膵臓、腸管、汗腺、消化管などの上皮細胞にあるCFTRの機能の欠失により、クロライドイオンの透過性が低下するために起こることが知られている。 【0008】 また、シビレエイの発電器官によりクローニングされてClC-0と名付けられたクロライドチャンネルはその後、大きなファミリー(ClCファミリー)を形成することが明らかになった。ClCファミリーの例としては、哺乳類の骨格筋に存在するClC-1、様々な臓器の上皮に存在するClC-2、海馬、小脳などに分布するClC-3、ClC-4、肺、腎臓などにあるClC-5、脳、精巣、骨格筋、腎臓などにあるClC-6、ClC-7、また腎臓だけに特異的にみられるClCK-1、ClCK-2などがあり、ClC-1の異常によって先天性筋強直症が、ClC-5の異常によって遺伝性腎結石症などの疾患が起こることが知られている。 【0009】 したがって、クロライドチャンネルをオープンし、クロライドイオンの輸送を促進することができる化合物は、様々な細胞の機能や防御機構に重要な役割を演じると考えられ、何らかの原因でクロライドイオンの透過性が低下し、細胞内外のクロライドイオンのバランスに異常をきたした結果生じる病態の処置に有用であると考えられる。」 ・摘記本b 「【0010】 プロスタグランジン類(以後プロスタグランジンはPGとして示す)はヒトおよび他の哺乳類の組織または器官に含有され、広範囲の生理学的活性を示す有機カルボン酸の1群である。天然に存在するPG類(天然PG類)は一般的に、式(A)に示すプロスタン酸骨格を有する。 【化1】 [図:0001435836000082.jpg] 【0011】 一方天然PG類の幾つかの合成アナログは修飾された骨格を持っている。天然PG類は5員環部分の構造特性によって、PGA類、PGB類、PGC類、PGD類、PGE類、PGF類、PGG類、PGH類、PGI類およびPGJ類に分類され、さらに炭素鎖部分の不飽和の数と位置によって以下の3タイプに分類される。 (下付1)・・・13,14-不飽和-15-OH (下付2)・・・5,6-および13,14-ジ不飽和-15-OH (下付3)・・・5,6-、13,14-および17,18-トリ不飽和-15-OH。 【0012】 さらに、PGF類は9位の水酸基の配置によってα(水酸基がアルファー配置である)およびβ(水酸基がベータ配置である)に分類される。 【0013】 PGE1、PGE2およびPGE3は血管拡張、血圧降下、胃液分泌減少、腸管運動亢進、子宮収縮、利尿、気管支拡張および抗潰瘍活性をもつことが知られている。・・・。 【0014】 PGE1及びPGF2αが家兎回腸においてクロライドイオンの分泌を刺激することや(Nature vol.238, 26-27, 1972、・・・)、PGE2がヒト空腸のクロライドイオンの分泌を誘発することが報告されている(Gastroenterology vol.78, 32-42, 1980、・・・)。また、PGE2が子宮内膜上皮細胞のクロライドイオンの輸送を調節することが報告されている(Journal of Physiology vol.508, 31-47, 1998、・・・)。一方で、嚢胞性線維症の患者において血小板のクロライドの輸送がPGE1に応答しなかったことや(European Journal of Clinical Chemistry and Clinical Biochemistry vol.33, No.6, 329-335, 1995、・・・)、プロスタグランジンアナログ(ミソプロストール(misoprostol))が、嚢胞性線維症の患者においてクロライドの分泌を促進しなかったことも報告されている(American Journal of Human Genetics Vol.67, No.6, 1422-1427, 2000、・・・)。 【0015】 さらに、PGE2がウサギのハウスキーピングの基底外膜のクロライドチャンネルをオープンすることが報告されている(Journal of Biological Chemistry, 270(32) 1995、・・・)。また、PGE2とPGF2αがCFTRを介してマウスの子宮内膜上皮細胞におけるクロライドコンダクタンスを活性化することが報告されている(Biology of Reproduction, 60(2) 1999)。 【0016】 しかしながら、プロスタグランジン化合物がクロライドチャンネル、特にClCチャンネルに対してどのような作用を示すかについては知られていない。」 ・摘記本c 「【0017】 (発明の開示) 本発明者は、鋭意研究の結果、プロスタグランジン化合物がクロライドチャンネル、特にClCチャンネルをオープンすることを見出し、本発明を完成するに至った。 ・・・ 【0019】 また、本発明は有効量のプロスタグランジン化合物を含む、ClCチャンネルをオープンするための医薬組成物に関する。特に、本発明は、有効量のプロスタグランジン化合物を含む、哺乳類対象におけるクロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置のための医薬組成物に関する。 ・・・ 【0021】 (発明の詳細な記載) 本発明のPG化合物の命名に際しては、前記式(A)に示したプロスタン酸の番号を用いる。 ・・・ 【0029】 本発明において用いられる特に好ましい化合物は、式(II)で表される: 【化4】 [図:0001435836000083.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 【化5】 [図:0001435836000084.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ]。 ・・・ 【0056】 上記式・・・(II)における環、および、α-および/またはω-鎖の配置は、天然PG類の配置と同じであっても異なっていてもよい。・・・。 【0057】 本発明において、13と14位が飽和し、15位がケト(=O)であるPG化合物は、11位のヒドロキシと15位のケト間のへミアセタール形成により、ケト-ヘミアセタール平衡を生ずる場合がある。 【0058】 例えば、X1およびX2の両方がハロゲン原子、特にフッ素原子の場合、化合物は互変異性体、二環式化合物を含むことが確認されている。 ・・・ 【0060】 さらに、本発明に用いられる15-ケト-PG化合物には、二環式化合物およびそのアナログまたは誘導体が含まれる。 【0061】 二環式化合物は下記式(III)で表される: 【化6】 [図:0001435836000085.jpg] [式中、・・・]。」 ・摘記本d 「【0070】 経口投与のための固体組成物としては、錠剤、トローチ、舌下錠、カプセル、丸剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。・・・。さらに脂肪酸またはそのモノ、ジ、トリグリセリドなどの適当な溶媒に溶解させてソフトカプセルとしても良い。・・・。 ・・・ 【0079】 本発明の化合物は、クロライドチャンネル、特にClCチャンネルをオープンするため、様々な細胞の機能や防御機構の調節が可能となる。特に、クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状の処置に適用することができる。 【0080】 本明細書において用いられる「ClCチャンネルをオープンする」という語は、Cl-電流、Cl-分泌、Cl-輸送をClCチャンネルをオープンすることにより活性化、促進または調節することを含む。 【0081】 クロライドの透過性の低下に関連する症状としては、例えば、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、嚢胞性繊維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0082】 本発明の化合物は、特にClC-2チャンネルをオープンするため、ClC-2チャンネル以外のクロライドチャンネルの機能が低下することにより起こる疾患(例えば嚢胞性繊維症、先天性筋強直症、遺伝性腎結石症など)の処置に有用である。」 ・摘記本e 「【0084】 以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。 【実施例】 ・・・ 【0112】 (試験例1) (方法) 全細胞パッチクランプ法を用いて化合物1(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1)と化合物2(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18(S)-メチル-PGE1)の組換えhClC-2クロライドチャンネルに対する効果を評価した。この試験例においては、それぞれの化合物の、ヒトClC-2(hClC-2)を形質移入されたヒト上皮腎臓(HEK)細胞に対する効果を調べ、その結果を非-形質移入HEK細胞と比較した。 【0113】 ClC-2形質移入ヒト上皮腎臓(HEK)細胞を調製し、使用した。・・・。・・・から得たHEK-293細胞を、・・・哺乳類発現ベクターpcDNA3.1(GIBCO/Invitrogen)中のHis-およびT7-タグ付加したヒトClC-2cDNAで、37℃で5時間、無血清培地中で形質移入した。・・・。生存細胞を拡張させ、Cl-電流とClC-2mRNAの発現を確認するため試験し、ClC-2mRNAを発現する細胞を凍結保存した。・・・ 【0114】 全細胞パッチクランプ測定において、電流は+40mVから-140mVの間の、最初の保持電位-30mVから開始して20mVずつ増加する電圧固定パルス(1500m秒持続)によって誘発した。電流をパルスの開始から50-100m秒後に測定した。・・・ ・・・ 【0116】 化合物1と化合物2は1%DMSO中最終濃度1μMで用いた。 【0117】 (結果) 表1に示すように、1%DMSOは対照電流に対して影響を及ぼさなかった。hClC-2(対照)を形質移入されたHEK細胞におけるCl電流は、1μMの化合物1および1μMの化合物2によって活性化された。化合物1も化合物2も非-形質移入細胞におけるCl電流を増加させなかった。 【0118】 これらの研究により、化合物1と化合物2がClC-2チャンネルオープナーであることが示された。 【0119】 【表1】 [図:0001435836000086.jpg] 【0120】 N.S.:有意差無し 化合物1:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1((-)-7-[(2R,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタン酸) 化合物2:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18(S)-メチル-PGE1((-)-7-{(4aR,5R,7aR)-2-[(3S)-1,1-ジフルオロ-3-エチルペンチル]-2-ヒドロキシ-6-オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル}ヘプタン酸)」 ・摘記本f 「【0121】 (試験例2) (方法) 健康な個体由来のヒト気道細胞系であり、ClC-2および嚢胞性線維症膜貫通レギュレーター(Cystic Fibrosis Transmembrane Regulator)である、Clチャンネル(CFTR)を含む16HBE14o-細胞;および嚢胞性線維症患者由来のヒト気道細胞系であり、機能的形態のClC-2および欠陥形態のCFTR(△F508CFTR)を含むCFBE41o-細胞を用いた。両方の細胞を・・・培養した。・・・ 【0122】 短絡回路電流測定を用いて空気-水の界面で増殖させた細胞の分極した集密培養物におけるCl輸送を評価した。・・・。被験化合物の添加後の短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm2)に対して標準化し△Isc/cm2として報告した。 【0123】 16HBE14o-およびCFBE41o-細胞における短絡回路電流測定は・・・に記載のように行った。・・・ 【0124】 化合物1および化合物2を最終濃度1μMにて用いた。・・・ 【0125】 (結果) 表2に示すように、1μMの化合物1は16HBE14o-細胞における短絡回路電流を増加させた。化合物1による活性化の程度は、9.56±0.095μA/cm2であった。化合物2も16HEB14o-細胞において短絡回路電流を11.6±1.3μA/cm2増加させた。1%DMSOによる負の効果は大きく、およそ-10.5±2.0μA/cm2であった。DMSOにより短絡回路電流が大幅に減少したにもかかわらず、化合物1と化合物2の正味の効果はこれら細胞で正であった。 【0126】 表2に示すように、1μMの化合物1はCFBE41o-細胞における短絡回路電流を5.0±0.04μA/cm2増加させた。1%DMSOは短絡回路電流を-5.7±1.8μA/cm2減少させた。DMSOによる大きな負の効果にかかわらず、化合物1はCFBE細胞におけるCl電流において正味の正の増加をもたらした。 【0127】 これらの結果は化合物1と化合物2はともに16HBE14o-細胞におけるClチャンネルのオープナーであり、化合物1はCFBE41o-細胞におけるhClC-2のオープナーであることを示す。 【0128】 【表2】 [図:0001435836000087.jpg] ・摘記本g 「【0129】 (試験例3) (方法) AS-HBEは、CFTRの最初の131ヌクレオチドをアンチセンス方向に発現するヒト気管支上皮(HBE)細胞系(アンチセンスCFTR16HBE14o-細胞、HBE-AS;AS-HBEとも称される)である。その結果、AS-HBE細胞はCFTR転写産物を欠き、機能性のCFTRを欠く。しかしながら、AS-HBE細胞はその起源である親細胞系、16HBE14o-細胞と同様に機能性のClC-2を発現する。AS-HBE細胞を・・・最小必須培地(MEM; GIBCO/Invitrogen、Carlsbad、CA)に維持した。細胞を・・・で増殖させた。 【0130】 試験例2に記載したのと同様にして、AS-HBE細胞における短絡回路電流測定を行った。短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm2)に対して標準化し、△Isc/cm2として報告した。 【0131】 被験化合物は最終濃度250nMで用いた。 【0132】 (結果) 表3はAS-HBE細胞における短絡回路電流に対する被験化合物の効果を示す。結果は本発明の化合物が有効なClC-2チャンネルオープナーであることを示す。 【0133】 【表3】 [図:0001435836000088.jpg] 【0134】 化合物1および2:試験例1を参照されたい。 化合物3:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1N-エチルアミド(N1-エチル-7-[(2,4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタンアミド) 化合物4:15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1 化合物5:2-デカルボキシ-2-(2-カルボキシエチル)-13,14-ジヒドロ-15-ケト-16、16-ジフルオロ-20-エチル-PGE1イソプロピルエステル(イソプロピル(-)-9-[(4aR,5R,7aR)-2-(1,1-ジフルオロヘプチル)-2-ヒドロキシ-6-オキソぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ノナノエート) 化合物6:PGF2α 化合物7:PGI2-Na ・摘記本h 「【0135】 (試験例4) (方法) 試験例1に記載の方法に従って、全細胞パッチクランプ測定を行った。 【0136】 被験化合物によって誘導される電流の増加は被験化合物の添加後の対照からのpA/pFの変化(△pA/pF)として報告した。 【0137】 被験化合物は最終濃度100nMにて用いた。 【0138】 (結果) 表4は被験化合物のClC-2を形質移入されたHEK細胞におけるClC-2活性化に対する効果を示す。結果は本発明の化合物が有効なClC-2チャンネルオープナーであることを示す。 【0139】 【表4】 [図:0001435836000089.jpg] 【0140】 化合物1および2:試験例1を参照されたい。 化合物8:13,14-ジヒドロ-16,16-ジフルオロ-PGE1 ・化合物9:13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGF1αN-エチルアミド(N1-エチル-7-[(2,4aR,5R,6S,7aR)-2-(1,1-ジフルオロペンチル)-2,6-ジヒドロキシぺルヒドロシクロペンタ[b]ピラン-5-イル]ヘプタンアミド) ・摘記本i 「【0141】 (試験例5) (方法) 密着結合している集密単層由来のヒト腸細胞系である、T84細胞を用いた。該細胞系は短絡回路電流(Isc)を用いたCl-輸送の研究に広く用いられている。これら細胞はCFTRとClC-2との両方を含む。 【0142】 T84ヒト腸上皮細胞を・・・増殖させた。・・・ 【0143】 試験例2の記載と同様にして、T84細胞における短絡回路電流測定を行った。短絡回路電流における変化(△Isc)をフィルター面積(0.3cm2)に対して標準化し、△Isc/cm2として報告した。 【0144】 化合物1を最終濃度50nMにて用いた。 【0145】 (結果) 表5はT84細胞における短絡回路電流に対する化合物1の効果を示す。結果は、化合物1がヒト腸細胞系、T84においてCl-輸送を活性化したことを示す。 【0146】 【表5】 [図:0001435836000090.jpg] 【0147】 化合物1:試験例1を参照されたい。 ・摘記本i 「【0148】 (試験例6) (方法) 少なくとも16時間絶食させたWistar系雄性ラット(6週齢、体重180~210g)に、化合物1(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1)の1、10あるいは100μg/kgを5mL/kgの容量で経口投与した。対照群には、媒体(0.5%エタノール・0.01%ポリソルベート80含有蒸留水)を同容量経口投与した。投与30分後に動物をエーテル麻酔下で開腹した。十二指腸起始部と回腸末端部をそれぞれ糸で結紮後、腸管を摘出した。各動物の腸内液をそれぞれ集めた後、10,000×g、5分間遠心した。上清を分取後、腸液上清中のクロライドイオン濃度をクロライドカウンター(・・・)を用い測定した。対照群と化合物1各用量投与群間の比較にDunnett検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。 【0149】 (結果) 各群の腸液内クロライドイオン濃度を表6に示す。化合物1の1、10及び100μg/kgの投与により、腸液内クロライドイオン濃度は、用量依存的に増加した。化合物1の1μg/kg投与群から対照群と比較し有意な腸液内クロライドイオン濃度の増加が認められた。 【0150】 以上の結果は、腸管において化合物1がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。 【0151】 【表6】 [図:0001435836000091.jpg] 【0152】 Dunnett検定:対照群と比較し、** P<0.01 ・摘記本j 「【0153】 (試験例7) (方法) 雄性ウイスターラット(6週齢、体重:180~210g)に、化合物2(13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-18(S)-メチル-プロスタグランジンE1)の100μg/kgを1日3回7日間経口投与した。対照群(n=7)には、同容量の媒体(0.01%ポリソルベート80、0.5%エタノール含有蒸留水)を投与した。投与最終日の翌朝(最終投与の約17時間後)、エーテル麻酔下でラットの総胆管内にポリエチレンカテーテル(PE10、Becton Dickinson and Company)を挿入した。ラットをボールマンケージに収容後1時間放置し麻酔から覚醒させた。カテーテル挿入1~2時間後の1時間に排出された胆汁を採取後、胆汁中クロライドイオン濃度をクロライドカウンター(・・・)を用い測定した。対照群と化合物2投与群間の比較にStudentのt検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。 【0154】 (結果) 各投与群の胆汁内クロライドイオン濃度を表7に示す。化合物2投与群の胆汁中クロライドイオン濃度は、対照群と比較し有意に増加した。 【0155】 以上の結果は、肝臓において化合物2がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。 【0156】 【表7】 [図:0001435836000092.jpg] 【0157】 Studentのt検定:対照群と比較し、* p<0.05 ・摘記本k 「【0158】 (試験例8) (方法) 雄性白色家兎に、生理食塩液、点眼液媒体、化合物1の0.0001%点眼液あるいは0.001%点眼液を、30μL/眼の容量で点眼した。点眼前(0時間)および点眼2、4、6、および8時間後に、キャピラリーピペットを用い、下眼瞼の結膜嚢内から涙液5μLを採取した。採取した涙液を蒸留水で5倍に希釈した後、クロライドカウンター(・・・)を用い、クロライドイオン濃度を測定した。対照群と化合物1各用量投与群間の比較にStudentのt検定法およびWilcoxon検定法を用いた。p値0.05未満を統計的有意差ありと判定した。 【0159】 (結果) 各投与群の涙液中のクロライドイオン濃度を表8に示す。涙液中のクロライドイオン濃度は、対照群と比べ、化合物1の投与により濃度依存的に増加した。対照群と比較し、0.0001%化合物1点眼液群では点眼後4および8時間後に、0.001%化合物1点眼液群では点眼後2、4および8時間後に、それぞれ有意な涙液中クロライドイオン濃度の増加が認められた。 【0160】 以上の結果は、点眼により眼において化合物1がクロライドチャンネルをオープンすることにより、クロライドイオンの輸送を積極的に促進することを示している。 【0161】 【表8】 [図:0001435836000093.jpg] 【0162】 Studentのt検定:対照群と比較し、#p<0.05、 ##p<0.01 Wilcoxon検定:対照群と比較し、[#]p<0.05、 [##]p<0.01 」 第8 無効理由についての当審の判断 当審合議体は、本件訂正請求項1、2、4、6、8、11に係る特許は、請求人が主張する無効理由2(甲3を主引例とする進歩性欠如)及び請求人が提出した証拠によっては、無効とすることはできないものと判断する。 その具体的な理由は、以下のとおりである。 1 甲3(主引例)に記載された発明及び技術的事項、並びに、本件優先日当時の技術常識 (1) 甲3(主引例)に記載された発明及び技術的事項 ア 甲3発明 甲3には、請求項1に、 「15-ケト-16-ハロゲン-プロスタグランジン類を有効成分として含有することを特徴とする下剤。」 が記載され、請求項6に、 「15-ケト-16-ハロゲン-プロスタグランジン類が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジン類である特許請求の範囲第1項記載の下剤。」 が記載され、請求項7に、 「プロスタグランジン類がプロスタグランジンE類である特許請求の範囲第1項記載の下剤。」 が記載されており(摘記甲3a)、これら下剤の具体例が示されているものと解される実施例6において、「被験薬8」である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」について、「エンテロプーリング作用」及び「腸管収縮作用」の試験の結果が記載されていることから(摘記甲3j)、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 ≪甲3発明≫ 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステルを有効成分として含有する下剤。」 なお、当事者らは、いずれも、甲3発明を上記のとおり認定することを、口頭審理において認めている(口頭審理調書)。 イ 甲3に記載された技術的事項 甲3には、甲3発明に関連する下記(ア)の技術的事項が記載されていると認められる。また、当該技術的事項と甲3発明との関係は下記(イ)のとおりである。 (ア) 従来技術、並びに、有効成分の構造、効果及び好ましい態様について a 従来、「プロスタグランジン類(PG類)」には、「種々の薬理作用、例えば血管拡張、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激作用、腸管筋刺激作用、抗潰瘍作用等」が認められているのに対して、「15-ケト-PG類」(「13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン類」又は「15-ケト-プロスタグランジン類」)は、「PG類が有する種々の生理活性をほとんど示さず、薬理学的、生理学的に不活性な代謝物」として報告されてきたという背景技術があるなかで、甲3の発明者は、「15-ケト-PG類の誘導体」について、「16位にハロゲン原子、特にフッ素原子を少なくとも1個以上置換した誘導体」が、「エンテロプーリング試験等の結果から強い瀉下作用を発現する」ことを見出し、発明を完成するに至ったとされている(摘記甲3b)。 b 甲3において、「本発明」とされる「下剤」が含有する有効成分の「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」は、「塩」であっても、「カルボキシル基がエステル化」されていてもよく(摘記甲3e)、「15-ケト-PG1類」、「15-ケト-PG2類」及び「15-ケト-PG3類」のいずれであってもよく、「五員環構造にかかわらず、あるいは2重結合やその他の置換基の有無にかかわらず、16位にハロゲン原子、特にフッ素原子が少なくとも1個以上置換していればよい」とされ(摘記甲3c)、当該16位のハロゲン原子(特にフッ素原子)の少なくとも1個以上の置換によって、「エンテロプーリング作用の発現性が著しく向上する」とされている(摘記甲3g)。そして、「特に好ましい15-ケト-16-ハロゲン-PG類」は、「5-6位の炭素結合が2重結合であるものあるいは炭素数が20~22の15-ケト-16-ハロゲン-PG類」であり(以下「5-6位の炭素結合が2重結合」であるものを「態様α」といい、「炭素数が20~22」であるものを「態様β」ということがある。)、「別の好ましい一群」は、「五員環上の9位にケトンを、11位に水酸基を有する、いわゆるPGEタイプの15-ケト-16-ハロゲン-PG類」である(以下「五員環上の9位にケトンを有し11位に水酸基を有するPGEタイプ」のものを「態様γ」ということがある。)、とされている(摘記甲3g)。 c 一般に、「下剤」は、次の「3つの機序」の一つ又はその組合せにより、「便の水分含量を増加」させ、「腸内容物の移動を速めること」により作用するものであり、その「3つの機序」とは、 「(i)水と電解質がその薬物の親水性または浸透圧のために腸内腔に保持され、そのために腸内容積が増し、間接的に移動が速くなる。」、 「(ii)薬剤が腸粘膜に作用して電解質と水の正常な吸収総量を減少させ、水分量が増すために間接的に腸内容物の移動が速くなる。」、及び、 「(iii)薬剤がまず腸運動に作用して移動を速め、水と電解質の総吸収量は吸収される時間が減るために間接的に減少する。」 であるとされ、「エンテロプーリング」試験は、「主に(ii)の作用について検討されるもの」であり、「腸管収縮」作用は、「(iii)の作用の1つの指標となるもの」であるとされている(摘記甲3d)。また、「エンテロプーリング」試験とは、「腸管内容物量を測定することにより、薬剤の腸管内水分貯留量への影響を判定する」ものとされており(摘記甲3d)、実施例では、腸管内容物を50%増量せしめた被検薬の投与量をED50(mg/kg)として評価している(摘記甲3j)。 d PG類は、「一般に種々の薬理作用を有する」ことが認められているところ、「腸管刺激作用に伴う腸管収縮作用は強いがエンテロプーリング作用が軽微であるのでPGEあるいはPGFを下剤として使用することは腸管収縮に伴う腹痛などの副作用のため、不可能である」とされ、すわなち、一般にPGE又はPGFは、上記cの「(ii)の作用」は軽微だが、同「(iii)の作用」が強く、当該作用に伴う腹痛などの副作用があるため、下剤として使用することは不可能であるとされていた(摘記甲3g)。 これに反して、「本発明15-ケト-16-ハロゲン-PG類」は、「エンテロプーリング作用が極めて強く発現」する一方で、「腸管収縮作用を持たないか、あるいは有していても極めて軽微」であるため、すわなち、上記cの「(ii)の作用」が強く発現する一方で、上記cの「(iii)の作用」がないか極めて軽微であるため、「腹痛等の腸管収縮に伴う腹部の不快感を発現することなく」下痢を生じさせるものであり(摘記甲3g)、「顕著なエンテロプーリング作用を有し、腸管収縮に伴う腹痛などの副作用を示さない」とされている(摘記甲3k)。 e 上記a~dによれば、従来、「15-ケト-PG類」は、PG類が有する種々の生理活性をほとんど示さない、不活性な代謝物とされていたところ、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」は、下痢を生じさせる「エンテロプーリング作用」(主に上記cの「(ii)の作用」による)が強い一方で、腹痛などの副作用を生じさせる「腸管収縮作用」(上記cの「(iii)の作用」を判断する指標の一つ)がないか極めて軽微である、下剤の有効成分であり、その構造としては、上記bに示した「態様α」、「態様β」又は「態様γ」のいずれかの条件を満たす化合物が、好ましいとされているものと認められる。 f 「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の製造法に関する一般的な説明とともに(摘記甲3f)、合成例として、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステル」(合成例I、後記の被検薬7の化合物)、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2」(合成例II、後記の被検薬6の化合物)、及び、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステル」(合成例III、後記の被検薬18の化合物) を製造した例が示され、四つの合成チャート(I~IV)が示されており(摘記甲3i)、実施例1、2及び6において、上記bの「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の好ましい態様のうち、「態様β」の条件並びに「態様α」及び/又は「態様γ」の条件を満たす、被検薬2~10、12~18の化合物は、比較例である天然のPGである「プロスタグランジンE2」(「PGE2」)(被検薬1)、「PGA1」(被検薬11)及び「PGF2α」(被検薬19)よりも、「エンテロプーリング作用」(上記cの「(ii)の作用」に関係する。)が強い一方で、「腸管収縮作用」(上記cの「(iii)の作用」に関係する。)は弱いことが、ラットを用いた具体的な試験の結果により示され(摘記甲3j)、被検薬2及び3の化合物は、「PGE2」(被検薬1)と比較して、腸管輸送能及び瀉下作用にも優れていることが、ラットを用いた具体的な試験の結果により示され(実施例3及び4、摘記甲3j)、被検薬2の化合物は、ヒトにおいても瀉下作用を有し、副作用がなかったことが、具体的な試験の結果により示されている(実施例5、摘記甲3j)。 (イ) 甲3発明と上記(ア)の技術的事項との関係 a 甲3発明における「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(甲3の実施例6の「被験薬8」の化合物。以下「甲3PGE2化合物」ともいうことがある。)は、「5-6位の炭素結合が2重結合」であり、「炭素数が21」であり、「五員環上の9位にケトンを有し11位に水酸基を有するPGEタイプ」であると認められるから、上記(ア)bの「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の好ましい態様である、「態様α」、「態様β」及び「態様γ」の条件を全て満たしている化合物である。 b 「甲3PGE2化合物」(「被験薬8」の化合物)は、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の具体例として甲3に記載された被験薬2~10、12~18の化合物の中で、最も優れた「エンテロプーリングED50」値(「0.0002mg/kg」)を示し、「腸管収縮」の程度も「±」であって(実施例6、表-2、摘記甲3j)、その程度が「+」である比較例の「被験薬1:プロスタグランジンE2」(実施例2、表-1、摘記甲3j)よりも腹痛などの副作用が小さい化合物と認められるから、「甲3PGE2化合物」は、下痢を生じさせる「エンテロプーリング作用」(上記(ア)cの「(ii)の作用」に関係する。)が非常に強いが、「腸管収縮」(上記(ア)cの「(iii)の作用」に関係する。)に伴う腹痛などの副作用が小さい、特に優れた化合物であるといえる。 c そして、「甲3PGE2化合物」(被験薬8の化合物)は、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」のその他の具体例である、被験薬2~7、9、10、12~18の化合物、特に、被験薬8の化合物との構造の違いが少ない被験薬2又は14の化合物(被験薬2の化合物は、16位がジフルオロではなくモノフルオロ置換である点でのみ、被検薬14の化合物は、五員環構造がPGE2類ではなくPGF2α類である点でのみ、それぞれ、被検薬8の化合物と構造が異なる。)と比べると、「エンテロプーリングED50」値が一桁以上も低いことから、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」には、これに該当する化合物であっても、そのエンテロプーリング作用が相当程度に異なるものが含まれていると認められる。 (2) 本件優先日当時の技術常識について 上記第6に摘記した証拠方法の記載事項によれば、本件優先日当時の技術常識として、以下のことが認められる。 ア プロスタグランジン類(PG類)について (ア) PG類の構造及び分類(以下「技術常識A」という。) 摘記甲3b、摘記甲17a及び摘記甲20aの記載によれば、「プロスタグランジン類(PG類)」は、次の式で示されるプロスタン酸: [図:0001435836000094.jpg] (構造式は、摘記甲3cによる。) を基本骨格とする一群の脂肪酸又はその誘導体であって、その部分的な化学構造の特徴に基づいて分類されており、五員環構造の違いによって、「PGA類」、「PGB類」、「PGC類」、「PGD類」、「PGE類」、「PGF類」及び「PGJ類」などに分類され、例えば、五員環構造が [図:0001435836000095.jpg] (構造式は、摘記甲17aによる。) であるものが「PGE類」であり、側鎖部分のα鎖及び/又はω鎖の特定の位置の炭素原子間の二重結合の数により、 「PG1」(二重結合が13-14位に一つ)、 「PG2」(二重結合が5-6位及び13-14位に二つ)、 「PG3」(二重結合が5-6位、13-14位及び17-18位に三つ)に分類され、例えば、 「PGE類」であって側鎖部分が「PG1」であるものが「PGE1(プロスタグランジンE1)類」と表記されるものであり、 「PGE類」であって側鎖部分が「PG2」であるものが「PGE2(プロスタグランジンE2)類」と表記されるものである。 上記のとおり、「PG1」、「PG2」及び「PG3」の違いは、側鎖部分の炭素原子間の二重結合の数及び位置に基づくものであるが、当該二重結合の部分が単結合等に変換された誘導体の場合、側鎖部分の炭素原子間に二重結合が一つも存在していなくても、例えば「PGE1」との表記を含むことがある。また、例えば、甲3発明における「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(「甲3PGE2化合物」)は、次の化学構造: [図:0001435836000096.jpg] (摘記甲19a)を有するものであり、炭素原子間の二重結合が5-6位に一つのみ存在し、「PGE2」の特徴となる構造の一部(13-14位の二重結合)を有していないが、「PGE2」との表記を含んでいる。 (イ) PG類の薬理作用について a PG類の一般的な薬理作用と下剤作用(以下「技術常識B」という。) 本件優先日当時において、PG類には、一般的に、平滑筋刺激作用、血管拡張作用(血圧降下)作用、抗脂肪分解作用、起炎作用、血小板凝集作用、子宮筋刺激(子宮収縮)作用、腸管筋刺激(腸蠕動増加)作用、抗潰瘍作用などの種々の薬理作用又は生物活性が認められていた(摘記甲3b、摘記甲17b)。 そして、PG類は、腸管筋刺激(腸蠕動増加)作用により、望ましくない腹痛や下痢などの副作用を引き起こす問題があるとされていた一方(摘記甲3g、摘記甲20a、摘記甲21a、摘記甲21b、摘記甲22b)、この作用によりPG類を下剤や便秘薬にも使用できるとされており(摘記甲10a、摘記甲17b)、また、PG類の副作用である下痢は、腸管運動亢進ではなく、小腸への大量の液体の蓄積(エンテロプーリング)によるとの説もあるが(摘記甲9a、g)、いずれにしても、PG類の下剤作用は、副作用としての下痢の誘発に基づくものと考えられていた。 b PG類の構造と薬理作用の関係 (a) 甲9に記載された化合物について 甲9には、種々のプロスタグランジンの下痢誘発特性をテストするためのアッセイ(エンテロプーリングアッセイ)について記載され、高用量のプロスタグランジンの投与後に観察される副作用としての下痢は、腸管運動亢進ではなく、小腸への大量の液体の蓄積によるものとの仮説を支持する結果が得られた旨が記載されており(摘記甲9a、b、g)、特に、「16,16-ジメチルPGE2」及び「15(S)-15-メチルPGE2メチルエステル」が、高いエンテロプーリング作用(PGE2の200倍)及び下痢誘発性を有する一方で、後者の光学異性体である「15(R)-15-メチルPGE2メチルエステル」のエンテロプーリング作用は、PGE2の30倍にとどまることが記載されている(摘記甲9e、f)。 (b) 甲10に記載された化合物について 甲10には、PGE1誘導体からなるPGE1製剤であって、以下の構造を有するものと解される「オルノプロスチル」が、腸管蠕動運動亢進のための薬剤として投与され、モルヒネ製剤の副作用である便秘等を改善したことが記載されている(摘記甲10a)。 [図:0001435836000097.jpg] (構造式は、摘記乙4aによる。) (c) 甲11に記載された化合物について 甲11には、「本発明の化合物」の好ましい具体例の一つとして、次の構造式: [図:0001435836000098.jpg] を有する「化合物1」(「7-[(1R、3R、6R、7R)-3-(1,1-ジフルオロペンチル)-3-ヒドロキシ-2-オキサビシクロ[4.3.0]ノナン-8-オン-7-イル]ヘプタン酸」)が記載され、「本発明の化合物」が気管支拡張薬などのような薬理学的活性を有するという一般的な記載があるが(摘記甲11b)、当該化合物の薬理活性の裏付けとなるような試験結果等は記載されておらず、当該化合物を含む組成物が「経口投与用製剤、坐剤、注射剤、局所投与用製剤」等の製剤の形態として使用できる旨の一般的な事項が記載されている(摘記甲11a、c)。 また、甲11には、以下に示す式(互変異性体II)で表される二環式化合物においては、その互変異性体である13,14-ジヒドロ-15-ケト-プロスタグランジン化合物(互変異性体I)と平衡状態で存在し得ることが知られていることが記載されており(摘記甲11b)、 [図:0001435836000099.jpg] 上記の「化合物1」は二環式化合物であるところ、その互変異性体は、本件明細書の摘記本c【0057】~【0061】及び摘記本e【0120】の記載を参照すると、本件訂正発明の組成物における有効成分である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」と同じ化合物であることが認められる。 (d) 甲22に記載された化合物について 甲22には、一般にプロスタグランジンは下痢の副作用を引き起こすが、次の式: [図:0001435836000100.jpg] で表される、「(±)メチル-20-エチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエート」が、望ましくない下痢の副作用とは基本的に無関係であることを示す、ラットを用いた試験結果が記載されている(摘記甲22a、b)。 (e) 丙1に記載された化合物について 丙1は、プロスタグランジンE1、E2及びその誘導体の家兎大動脈平滑筋収縮並びに血小板凝集に及ぼす影響について記載しており、以下の構造を有する「プロスタグランジンE1」、「プロスタグランジンE2」、「747-1」及び「GNo-1142」が、大動脈平滑筋の収縮について、それぞれ異なる力価を示した一方で、血小板凝集については、ノルアドレナリン(NA)による凝集に対して、「プロスタグランジンE2」は「増強作用」を示したが、「プロスタグランジンE1」は逆に「抑制作用」を示し、「747-1」及び「GNo-1142」については「非常に強い抑制作用」を示したことが記載されている(摘記丙1a~d)。 [図:0001435836000101.jpg] ここで、上記の「a)プロスタグランジンE1(G-511)」の構造式においては、2-3位の炭素結合が「二重結合」(Δ2)として表記されているが、当該部分は「単結合」として表記すべきところを明らかに誤記したものであると認める(摘記丙2a~bを参照。)。 (f) PG類の構造と薬理作用との関係のまとめ(以下「技術常識C」という。) 上記(a)~(e)の事項、及び、甲3についての上記(1)イ(イ)cの事項によれば、PG類であるからといって、全てが同様の生理活性を有しているというわけではなく、むしろ、僅かな構造の違いによって、生理活性が大きく異なる場合があるものと認められる。 例えば、甲9に記載されたPGE2誘導体である「16,16-ジメチルPGE2」及び「15(S)-15-メチルPGE2メチルエステル」は、PGE2の200倍の高いエンテロプーリング作用及び下痢誘発性を有する一方で、後者の光学異性体である「15(R)-15-メチルPGE2メチルエステル」のエンテロプーリング作用は、PGE2の30倍にとどまり、甲10に記載されたPGE1誘導体である「オルノプロスチル」は、腸管蠕動運動亢進のための薬剤として投与され、下剤効果といえる便秘改善効果を示したとされているのに対し、甲22に記載された「(±)メチル-20-エチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエート」は、その構造からみて、PGE1誘導体であるといえるが、望ましくない下痢の副作用とは基本的に無関係であることが実証されている。 また、丙1には、ノルアドレナリン(NA)による血小板凝集について、「プロスタグランジンE2」及び「プロスタグランジンE1」が、それぞれ「増強作用」と「抑制作用」という全く逆の生理活性を示したことが記載されている。 イ 腸管におけるイオンと水の吸収と分泌、及びクロライドチャンネルとの関係(以下「技術常識D」という。) 甲4(乙6)及び甲5の記載によれば、腸管におけるイオンと水の吸収と分泌及びそれらとクロライドチャンネルの関係について、本件優先日当時の技術常識として、次の(ア)~(オ)の事項が認められる。 (ア) 腸上皮におけるイオンと水の吸収と分泌の位置付け 腸上皮の主要な機能は、腸管腔での「イオン」及び「水」の「吸収」及び「分泌」であり、通常の状況では正味の「吸収」が優勢で、1日9リットルの水の摂取量のうち便として失われるのは約2%にすぎないところ、腸上皮から腸管腔への「水」の「分泌」も行われ、腸での「分泌」は、通常、内腔中の適切な「水分」の環境を維持するために必要とされるとされている(摘記甲4(乙6)a)。 (イ) 腸上皮におけるイオンと水の分泌の機序 上皮細胞を横断する「水」の「分泌」は、イオンの能動輸送により駆動される受動的プロセスであり、小腸及び結腸では、「クロライド」が「水分」の「分泌」を駆動する主要なイオンとされ、「クロライドイオン」が経細胞的に腸管腔内に「分泌」され、これにより主に「ナトリウムイオン」などの「陽イオン」がタイトジャンクションを通る傍細胞経路で受動拡散するための「電気化学的勾配」が生じ、その結果、上皮の頂端側に「塩」が蓄積し、続いて等張性を維持するために浸透圧勾配に沿ってタイトジャンクションを通って「水」が流出することになる(摘記甲4(乙6)c)。 (ウ) クロライド分泌機構の構成要素及びそれらの作用機序 イオン輸送機構を構成するチャンネル、ポンプ、共輸送体の局在における非対称性により、上皮の頂端膜側と基底膜側の間に電気化学的勾配を確立することができ、次いで「イオン」の一定方向の輸送が可能になる(摘記甲4(乙6)b)。 腸上皮を横断する「クロライド」の「分泌」は、複数のイオン輸送経路の協調的な作用によって起こり、これらの経路が一体となってクロライド分泌機構を構成しているところ、この機構には四つの主要なイオン輸送経路が関与しており、それらは「Na+/K+/2Cl-共輸送体(NKCC)」、「Na+/K+ ATPaseポンプ」、「K+チャンネル」及び「Cl-チャンネル」である(摘記甲4(乙6)d、e)。 「Na+/K+/2Cl- 共輸送体(NKCC)」、「Na+/K+ ATPase」及び「K+チャネル」の協調的な作用によって、細胞内のCl-濃度は、電気化学的平衡を超えて上昇し、細胞内は細胞外に対し、より電気的陰性となり、これにより、頂端膜側に存在する調節された「クロライドチャネル」がオープンした際に、Cl-が細胞外に排出されるのに好適な濃度勾配が形成され、Cl-が細胞を横断して分泌されると、Na+及び「水」が、タイトジャンクションを介した受動的な傍細胞流により、それに続いて分泌される(摘記乙6j)。 (エ) ClCチャンネルについて 腸上皮の頂端膜に存在するチャンネルは、クロライドの排出経路を提供しており一定方向の分泌が起こるために不可欠であるところ、分泌上皮には、「cAMP-活性化チャンネル」、「Ca2+-活性化チャンネル」、「外向整流性クロライドチャンネル(ORCC)」及び「ClCチャンネル」を含む、複数の種類のクロライドチャンネルが存在し、クロライドチャンネルである「ORCC」及び「ClCファミリー」のメンバーは、腸上皮で発現していることは知られおり、細胞容積の調節に関与していると考えられているが、これらのチャンネルの調節や、それらの経上皮のCl-及び「水分」の分泌への寄与に関するデータはほとんどない(摘記甲4(乙6)h)。 また、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)チャンネルについても、Cl-の流出を媒介するイオンチャンネルとしてよく知られている(摘記甲4(乙6)h)。 (オ) ClC-2チャンネルについて ClCクロライドチャネルスーパーファミリーに属する「ClC-2チャンネル」は、特定の上皮組織において発現しており、腸管上皮のタイトジャンクション複合体の頂端膜側からのクロライドの分泌に寄与している可能性がある(摘記甲5a、b)。 2 無効理由2(進歩性欠如)について 上記第3及び第4のとおり、本件特許の請求項5、7、9、10、12~14は本件訂正により削除されている。また、これらの請求項以外の本件訂正後の請求項1~4、6、8及び11は、上記第2の2(1)イに摘記したとおり、いずれも独立形式で記載されているが、本件訂正発明1~4、6及び8は、いずれも本件訂正発明11の特定事項を全て備えており、それに加えて更に別の特定事項によって限定されているという関係にある。 これらのことに鑑み、本件審判請求がされていない本件訂正前の請求項3に対応する本件訂正発明3以外の本件訂正発明1、2、4、6、8及び11のうち、まず、本件訂正発明11について検討する。 (1) 本件訂正発明11について ア 対比 本件訂正発明11と上記1(1)アで認定した甲3発明とを対比する。 甲3発明における、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(「甲3PGE2化合物」) は、 [図:0001435836000102.jpg] の化学構造を有する化合物であり(摘記甲19a)、本件訂正発明11における「一般式(II)」に包含される化合物であって、当該一般式(II)中の「L」、「M」及び「A」が、それぞれ「オキソ」、「ヒドロキシ」及び「-COOH」の「官能性誘導体(メチルエステル)」であり、同式中の「B」、「X1」、「X2」、「R1」、「R2」及び「R3」が、それぞれ「-CH2-CH2-」、「ハロゲン(フルオロ)」、「ハロゲン(フルオロ)」、「非置換の二価の不飽和の炭素数6の直鎖の脂肪族炭化水素(---CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH2-)」、「単結合」及び「低級アルキル(-CH2-CH2-CH2-CH3)」である「プロスタグランジン化合物」に相当する。 そして、上記「甲3PGE2化合物」は、本件訂正発明11における、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」(以下「本件PGE1化合物」ともいう。その化学構造を示すと、 [図:0001435836000103.jpg] (摘記甲19a)である。) とは、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物」 である限りにおいて一致する。 甲3発明における「下剤」は、「甲3PGE2化合物」を有効成分として「含有」するものであることから、「組成物」に該当するものと認められ、本件訂正発明11における「ClCチャンネルのオープン用組成物」とは、「組成物」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件訂正発明11と甲3発明の間には、次の一致点及び相違点があると認められる。 <一致点> 「プロスタグランジン化合物を含む、組成物であって、該プロスタグランジン化合物が下記一般式(II): [図:0001435836000104.jpg] [式中、LおよびMは、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、ヒドロキシ(低級)アルキルまたはオキソ(ただし、LおよびMの基のうちの少なくとも1つは、水素以外の基であり、5員環は少なくとも1つの二重結合を有していてもよい); Aは、-CH2OH、-COCH2OH、-COOHまたはそれらの官能性誘導体; Bは、-CH2-CH2- Zは、 [図:0001435836000105.jpg] (ここでR4およびR5は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシまたはヒドロキシ(低級)アルキルであり、ただし、R4およびR5が同時にヒドロキシおよび低級アルコキシであることはない) X1およびX2は、水素、低級アルキルまたはハロゲン(ただし、X1およびX2の少なくとも一方はハロゲンである); R1は、非置換またはハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、オキソ、アリールまたは複素環で置換された、二価の飽和または不飽和の低~中級の脂肪族炭化水素残基であり、脂肪族炭化水素における少なくとも1の炭素原子は任意に酸素、窒素または硫黄によって置換されていてもよい; R2は、単結合または低級アルキレン;そして、 R3は、低級アルキル、低級アルコキシ、シクロ(低級)アルキル、シクロ(低級)アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、複素環または複素環オキシ] で表される化合物であり、 該プロスタグランジン化合物が13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物である、組成物。 」 <相違点1> 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE化合物」が、 本件訂正発明11では、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」 であるのに対して、 甲3発明では、 「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」 である点。 <相違点2> 本件訂正発明11の組成物は、「有効量」のプロスタグランジン化合物を含むものであり、その用途が「ClCチャンネルのオープン用」であるのに対して、甲3発明は、含まれるプロスタグランジン化合物の量が規定されておらず、その用途が「下剤」である点。 なお、当事者らは、いずれも、本件訂正発明11と甲3発明の一致点及び相違点を上記のとおりに認定することを、口頭審理において認めているが、請求人は、相違点2は実質的な相違点ではない旨を主張している(口頭審理調書)。 イ 相違点についての判断 (ア) 相違点1について a 本件訂正発明11における「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」(本件PGE1化合物)と、 甲3発明における「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE2メチルエステル」(甲3PGE2化合物)は、 化学構造式として並べて示すと、次のとおりである(両化学構造式は、摘記甲19aによる。)。 本件PGE1化合物 甲3PGE2化合物 [図:0001435836000106.jpg] 両者の化合物は、いずれも五員環上の9位にケト基を有し11位に(R)水酸基を有しているから、ともに「PGE」誘導体に該当するところ、次の(a)及び(b)の2点において、化学構造に相違する部分が存在する。 (a) α鎖の5-6位の炭素結合が、「甲3PGE2化合物」では「二重結合」であるのに対して、「本件PGE1化合物」では「単結合」である点。 (b) α鎖の1位のカルボキシル基が、「甲3PGE2化合物」では「メチルエステル」であるのに対して、「本件PGE1化合物」では「遊離酸」である点。 以下、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」の上記の2点の構造が相違する部分をいずれも変換して、「本件PGE1化合物」とし、当該化合物を有効成分することを当業者が容易になし得たか否かについて検討する。 b 甲3には、「本発明」とされる「下剤」が含有する有効成分の「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」(摘記甲3b)の態様に関する一般的な説明として、次の(a)~(d)の事項が記載されている。 (a) 「塩」であってもよく、「メチル」等の低級アルキルにより「カルボキシル基がエステル化」されていてもよいこと(摘記甲3e)。 (b) 15-ケト-PG1類、15ケト-PG2類、15-ケト-PG3類のいずれであってもよく、五員環構造にかかわらず、二重結合及びその他の置換基の有無にかかわらず、16位にハロゲン原子、特にフッ素原子が少なくとも1個以上置換していれば、エンテロプーリング作用の発現性が著しく向上すること(摘記甲3c、g)。 (c) 特に好ましいものとして、 「態様α」:「5-6位の炭素結合が2重結合」であるもの、 「態様β」:「炭素数が20~22」であるもの、 又は、 「態様γ」:「五員環上の9位にケトンを有し11位に水酸基を有するPGEタイプ」であるもの、 が挙げられること(摘記甲3g)、上記1(1)イ(ア)b及びeを参照)。 (d) 13-14位の二重結合が単結合とされ、16位にフッ素原子が二つ置換した、「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジン類」を用い得ること(摘記甲3a「請求項6」)。 c 上記1(1)イ(ア)fにて述べたように、甲3には、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の合成例として、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2メチルエステル」(合成例I、後記の被検薬7の化合物)、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGE2」(合成例II、後記の被検薬6の化合物)、及び、 「15-ケト-16R,S-フルオロ-PGF2αメチルエステル」(合成例III、後記の被検薬18の化合物) の三つの具体的な製造例が記載され、四つの合成チャート(I~IV)が記載され(摘記甲3i)、下剤の効果に係る試験の結果が示された実施例1~6において、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の具体例として被検薬2~10、12~18の化合物が用いられたことが記載されている(摘記甲3j)。 しかし、5-6位の炭素結合が「単結合」であって、かつ、1位のカルボキシル基が「遊離酸」である化合物については、五員環構造がPGE類とは異なる(上記「技術常識A」を参照。)「PGA1類」である「被験薬9」の「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16R,S-フルオロ-Δ2-PGA1」だけである。そして、甲3における上記b(a)~(d)の「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の態様についての一般的な説明を参照しても、上記a(a)及び(b)で述べた「甲3PGE2化合物」との2点の化学構造に相違する部分を有する「本件PGE1化合物」に係る構成を、「甲3PGE2化合物」に適用することが、当然に想定され得るものであるとはいえない。 d ここで、甲3に記載された被検薬2~10、12~18の化合物の構造を更に確認すると、全ての化合物が「炭素数が20~22」であるから、上記「態様β」の条件を満たしており、そのうち、「五員環上の9位にケトンを有し11位に水酸基を有するPGEタイプ」という上記「態様γ」の条件も満たしているのは、被検薬2~8の化合物であるところ、これら全てが「5-6位の炭素結合が2重結合」という上記「態様α」の条件も満たす「PGE2類」であり、5-6位の炭素結合が「単結合」である「PGE1類」に該当する化合物は一つもない。 また、被検薬2~10、12~18の化合物のうち、5-6位の炭素結合が「単結合」であるものは、上記cで述べた被験薬9の化合物のほかには、同化合物と1位のカルボキシル基が「メチルエステル」である点のみ異なる被検薬10の化合物だけであるが、これら二つの化合物は、いずれも「PGA1類」であり、2-3位の炭素結合が「二重結合」(Δ2)に変換されている化合物である。 そして、被検薬12~18の化合物は、いずれも「5-6位の炭素結合が2重結合」という上記「態様α」の条件を満たす「PGF2α類」である。 そうすると、甲3には、「本件PGE1化合物」のように側鎖部分の炭素結合に二重結合が一つもないPG類の具体例は、全く記載されていないことが認められる。 e 「甲3PGE2化合物」(被験薬8の化合物)は、上記1(1)イ(イ)a~bで述べたように、好ましい態様である「態様α」、「態様β」及び「態様γ」の条件を全て満たし、実施例における具体的な下剤の効果に係る試験の結果においても、被験薬2~10、12~18の化合物の中で、最も優れた「エンテロプーリングED50」値(「0.0002mg/kg」)を示す「エンテロプーリング作用」(上記1(1)イ(ア)cの「(ii)の作用」に関係する。)が非常に強い化合物であって、かつ、腹痛などの副作用をもたらすとされる「腸管収縮作用」(上記1(1)イ(ア)cの「(iii)の作用」に関係する。)も小さい点において、特に優れた化合物であるといえるから、その構造を敢えて変換するという積極的な動機は見いだせない。 f 仮に、同様の効果を期待して、甲3発明の有効成分である「甲3PGE2化合物」の構造を変換することを想到し得たとしても、上記b(a)~(d)の甲3における「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の態様に関する一般的な説明によれば、構造を変換し得る部分としては、側鎖部分の炭素結合における二重結合の数及び位置、五員環構造、16位に置換するハロゲン原子の数及び種類、1位のカルボキシル基のエステルの有無及び種類、他の置換基の導入など、多くの選択肢があるところ、上記d~eで述べた甲3に記載された具体的な化合物の構造を参照すると、「PGE1類」に該当する化合物も、PGA類やPGF類も含め側鎖部分の炭素結合に二重結合が一つもないPG類も、全くないことから、甲3の記載に基づいて、「甲3PGE2化合物」を、敢えて好ましい態様の一つである「5-6位の炭素結合が2重結合」という「態様α」の条件を満たさなくなるように、5-6位の炭素結合を「二重結合」から「単結合」に変換したうえ、さらに1位のカルボキシル基部分を「メチルエステル」から「遊離酸」に変換し、側鎖部分の炭素結合に二重結合が一つもない「本件PGE1化合物」の特定構造を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 以下、甲3以外の証拠も参照して、相違点1に係る構成の採用の容易性について更に検討する。 g 甲9には、「16,16-ジメチルPGE2」及び「15(S)-15-メチルPGE2メチルエステル」がPGE2の200倍の高いエンテロプーリング作用及び下痢誘発性を有し、「15(S)-15-メチルPGE2メチルエステル」はPGE2の30倍のエンテロプーリング作用を有することが記載されているが(摘記甲9e、f)、これらの化合物は、全てPGE2誘導体(5-6位と13-14位の二つの二重結合が存在するPGE類(上記「技術常識A」を参照。))であって、PGE1誘導体ではないし、15位にケト基を有するものでもなく、16位に一つ又は二つの置換基を有するが、それらはメチル基であってフルオロではない。 そして、甲9には、PGE1の誘導体は全く記載されておらず、15位をケト基とすることも、16位をフルオロ置換とすることも、何ら記載されていない。 そうすると、甲9の記載事項は、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」に代えて、「本件PGE1化合物」を採用する動機付けとなるものではない。 h 甲10には、PGE1に特有の箇所(13-14位)に二重結合を有するPGE1誘導体であり、以下の構造を有するものと解される「オルノプロスチル」: [図:0001435836000107.jpg] (構造式は、摘記乙4aによる。) について、モルヒネ製剤の副作用である便秘等の改善に有効である旨が記載されている(摘記甲10a)。 しかしながら、当該化合物は、15位がケト基でなく、16位のハロゲン原子の置換もないから、甲3に記載の「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の特徴である構造を有していないし、13-14位の炭素結合が「二重結合」であるから、当該箇所の炭素結合が「単結合」である「甲3PGE2化合物」とも「本件PGE1化合物」とも、構造が異なる化合物である。 そうすると、甲10の記載事項は、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」に代えて、「本件PGE1化合物」を採用する動機付けとなるものではない。 i 上記1(2)ア(イ)b(c)で述べたとおり、甲11に記載の次の構造式: [図:0001435836000108.jpg] の二環式化合物である「化合物1」の互変異性体は、本件訂正発明の組成物における有効成分である「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-プロスタグランジンE1」と同じ化合物であると認められるから、「本件PGE1化合物」は本件優先日前に自体既知の化合物であったといえる。 しかしながら、甲11には、当該「化合物1」の有用性について、PG類の従来の一般的な薬理学的活性である「気管支拡張」などが挙げられているだけであって(摘記甲11b)、当該化合物を「下剤」や「便秘の処置」の用途とすることは、記載も示唆もされていない。 そうすると、甲19の記載事項は、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」に代えて、「本件PGE1化合物」を採用する動機付けとなるものではない。 j 甲22には、PGE1誘導体である「(±)メチル-20-エチル-11α,16-ジヒドロキシ-16-メチル-9-オキソプロスト-13E-エン-1-オエート」が、望ましくない下痢の副作用とは基本的に無関係であることが記載されているから、当該化合物は下剤として使用できないものといえる。 そうすると、甲22の記載事項は、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」に代えて、「本件PGE1化合物」を採用する動機付けとなるものではない。 k 上記「技術常識A」のとおり、PG類は、五員環構造、並びに、側鎖部分の炭素結合間の二重結合の数及び位置により分類されるところ、上記「技術常識B」のとおり、PG類は下剤作用を有するものが多いものの、望ましくない副作用としての下痢の誘発に基づくものであり、必ずしも便秘改善作用として当業者に肯定的に認識されていたとはいえないし、また、上記「技術常識C」のとおり、PG類の全てが同様の生理活性を有しているわけではなく、むしろ、僅かな構造の違いによって、生理活性が大きく異なる場合があり、例えば、同じ「PGE類」であっても、5-6位の炭素結合が「二重結合」か「単結合」かしか違わない「PGE2」と「PGE1」が、全く逆の生理活性を示す場合もあることから、甲3発明において、有効成分である「甲3PGE2化合物」を「本件PGE1化合物」に変更したとしても、必ずしも同様の下剤作用が得られると予測することもできない。 l 以上のとおり、甲3発明における有効成分を「甲3PGE2化合物」から「本件PGE1化合物」に変更し、相違点1に係る本件訂正発明11の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (イ) 相違点2について a 相違点2が実質的な相違点であること (a) 本件訂正発明11における「ClCチャンネルのオープン」の意義 α 本件訂正発明11の組成物は、「本件PGE1化合物」を含み、その用途を「ClCチャンネルのオープン用」と特定するものであるところ、「ClCチャンネルをオープンする」とは、本件明細書の記載によれば、「Cl-電流、Cl-分泌、Cl-輸送をClCチャンネルをオープンすることにより活性化、促進または調節すること」を含むものである(摘記本d【0080】)。 β 本件明細書の記載によれば、「クロライドイオン(Cl-)」は、水/電解質輸送、分泌、細胞容積の調節などを司るのみならず、細胞応答を左右する因子として重要な役割を演じており(摘記本a【0002】)、例えば、クロライドイオンの細胞内外への移動は、同時に水や電解質の輸送を伴うため、細胞容積の調節に働き、このため、細胞の急激な容積変化を伴う成長・分裂、プログラム細胞死においてクロライドイオンは重要な役割を演じるとされ(摘記本a【0003】)、脳では、神経細胞内のクロライドイオンのレベルを低く保つことで中枢神経系に抑制性の制御が働き、不安や痙攣の抑制、睡眠、記憶、概日リズムの調節などに重要な役割を演じ(摘記本a【0004】)、腸管では、クロライドイオンが下痢や便秘等の病態と深く関わっており、モルヒネなどのオピオイドの投与によってクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌に異常が起こると、難治性の便秘が引き起こされ(摘記本a【0005】)、クロライドイオンのバランスの異常による疾患としては、この他に、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、不安、不眠症、嚢胞性繊維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害なども挙げられている(摘記本a【0005】。なお、本件明細書中の「嚢胞性繊維症」との記載は、「嚢胞性線維症」の明らかな誤記と認められる。以下同じ。)。 γ また、「クロライドチャンネル」について、本件明細書には、クロライドイオンを輸送するイオントランスポート膜タンパク質であり、様々な種類のクロライドチャンネルが神経、筋、上皮などの細胞膜に存在し、様々な生理機能や細胞防御機構に関与すること(摘記本a【0006】)、クロライドチャンネルの一つである「CFTR」は、気道、膵臓、腸管、汗腺、消化管などの上皮細胞に存在し、その機能の欠失により、クロライドイオンの透過性が低下するため、嚢胞性線維症が起こること(摘記本a【0007】)、クロライドチャンネルのうちの「ClCファミリー」の例として、哺乳類の骨格筋に存在する「ClC-1」、様々な臓器の上皮に存在する「ClC-2」、海馬、小脳などに分布する「ClC-3」、「ClC-4」、肺、腎臓などにある「ClC-5」、脳、精巣、骨格筋、腎臓などにある「ClC-6」、「ClC-7」、腎臓だけに特異的にみられる「ClCK-1」、「ClCK-2」などがあるところ、「ClC-1」の異常により先天性筋強直症が起こり、「ClC-5」の異常により遺伝性腎結石症などの疾患が起こること(摘記本a【0008】)、が記載されている。 δ 本件明細書には、このような背景技術を前提に、「クロライドチャンネルをオープン」し、クロライドイオン輸送を促進できる化合物は、様々な細胞の機能や防御機構に重要な役割を演じ、何らかの原因でクロライドイオンの透過性が低下し、細胞内外のクロライドイオンのバランスに異常をきたした結果生じる病態の処置に有用であると考えられることが記載されており(摘記本a【0009】)、「本発明の化合物」が、「ClCチャンネルをオープン」するため、様々な細胞の機能や防御機構の調節が可能となり、特に、「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置に適用することができること(摘記本d【0079】)、当該「クロライドの透過性の低下に関連する症状」としては、例えば、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、嚢胞性線維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などが挙げられること(摘記本d【0081】)、「本発明の化合物」は、特に、「ClC-2チャンネルをオープン」するため、ClC-2チャンネル以外のクロライドチャンネルの機能が低下することにより起こる疾患(例えば、嚢胞性線維症、先天性筋強直症、遺伝性腎結石症など)の処置に有用であること(摘記本d【0082】)、が記載されている。 ε 本件明細書には、プロスタグランジン類(PG類)が様々な生理学的活性を示すことが知られている一方(摘記本b【0010】~【0015】)、プロスタグランジン化合物が、クロライドチャンネル、特に「ClCチャンネル」に対して、どのような作用を示すかについては知られていなかったところ(摘記本b【0016】)、特定のプロスタグランジン化合物が、クロライドチャンネル、特に「ClCチャンネルをオープン」することを見いだし、「本発明」を完成するに至ったとされ(摘記本c【0017】)、特に好ましい化合物として、本件訂正発明11における一般式(II)で表される化合物が示されている(摘記本c【0029】)。 ζ 本件明細書には、「本発明の化合物」として、「本件PGE1化合物」である「化合物1」(「13,14-ジヒドロ-15-ケト-16,16-ジフルオロ-PGE1」)を用いた複数の具体的な試験例が記載されており、 ・「化合物1」が、ヒトClC-2(hClC-2)を形質移入されたヒト上皮腎臓(HEK)細胞におけるCl電流を活性化させ、「ClC-2チャンネルオープナー」であること(摘記本e【0112】~【0120】「試験例1」)、 ・「化合物1」が、健康な個体由来のヒト気道細胞系でありClC-2及びCFTRを含む「16HBE14o-細胞」における「Clチャンネルのオープナー」であり、嚢胞性線維症患者由来のヒト気道細胞系であり機能的形態のClC-2及び欠陥形態のCFTRを含む「CFBE41o-細胞」における「hClC-2のオープナー」であること(摘記本f【0121】~【0128】「試験例2」)、 ・「化合物1」が、アンチセンスCFTR16HBE14o-細胞(「AS-HBE細胞」)において、有効な「ClC-2チャンネルオープナー」であること(摘記本g【0129】~【0134】「試験例3」)、 ・「化合物1」が、ClC-2を形質移入されたHEK細胞において、有効な「ClC-2チャンネルオープナー」であること(摘記本h【0135】~【0140】「試験例4」)、 ・「化合物1」が、CFTRとClC-2の両方を含む密着結合した集密単層由来のヒト腸細胞系である「T84細胞」において、Cl-輸送を活性化したことが示され(摘記本i【0141】~【0147】「試験例5」)、 ・経口投与した「化合物1」が、絶食させたWistar系雄性ラットにおいて、有意に腸液内クロライドイオン濃度を増加させたこと(摘記本i【0148】~【0152】「試験例6」)、 ・点眼投与した「化合物1」が、雄性白色家兎において、有意に涙液中クロライドイオン濃度を増加させたこと(摘記本k【0158】~【0162】「試験例8」)、 が示されている。 η 上記α~ζによれば、本件明細書には、「本件PGE1化合物」が、異なった臓器や組織に由来する細胞系において「ClC-2チャンネルをオープン」し、ラットの腸管液及び家兎の涙液におけるクロライドイオン濃度を増加させたことが、具体的な試験例により裏付けられており、「ClCチャンネルをオープン」することそれ自体が、様々な細胞の機能や防御機構の調節を可能とするものであり、特に、「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置に適用することができる旨が記載されているといえる。 そうすると、本件訂正発明11は、「本件PGE1化合物」が、「ClCチャンネルをオープン」することにより、Cl-電流、Cl-分泌、Cl-輸送を、活性化、促進又は調節できるという、「未知の属性」を発見し、当該属性により、「本件PGE1化合物」が、当該属性それ自体を「新たな用途」としての使用に適すること、とりわけ、様々な「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置の用途に適用できることを見いだした、いわゆる「用途発明」であると認められる。 (b) 甲3発明の「下剤」の用途との違いについて α 甲3発明は、その用途が「下剤」であるところ、甲3には、甲3発明の認定の根拠とした「被験薬8」の化合物(「甲3PGE2化合物」)を用いた「実施例6」において、「下剤」としての効果の裏付けとして、「エンテロプーリング作用」及び「腸管収縮作用」の試験結果が記載されている(摘記甲3j)。 甲3には、一般的な「下剤」の機序として、上記1(1)イ(ア)cで述べた(i)~(iii)の三つの機序の一つ又は二つ以上の組合せにより、「便の水分含量を増加」させ、「腸内容物の移動を速めること」により、作用することが記載されており、そのうちの「(ii)の作用」は、「薬剤が腸粘膜に作用して電解質と水の正常な吸収総量を減少させ、水分量が増すために間接的に腸内容物の移動が速くなる」というものである(摘記甲3d)。 また、甲3には、同じく上記1(1)イ(ア)cで述べたように、「エンテロプーリング」試験は、「腸管内容物量を測定することにより、薬剤の腸管内水分貯留量への影響を判定する」ものであり、主に上記「(ii)の作用」について検討される旨が記載されている(摘記甲3d)。 さらに、甲3には、「被験薬8」の化合物(「甲3PGE2化合物」)を包含する「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」に関し、エンテロプーリング作用を極めて強く発現するが、腸管収縮作用は、ほとんど示さないか、ごく軽微であることから、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の下痢誘発作用は、主に腸粘膜に直接又は間接的に作用して、腸壁から血管系への「電解質」と「水」の輸送能に影響を及ぼした結果、腸管からの「水分」の「吸収」が「低下」をきたし、「腸管内水分貯留量が増加」し、腸内容物の移動が促進されるためと考えられる旨が記載されている(摘記甲3d)。 そして、甲3には、上記1(1)イ(イ)bで述べたように、「被験薬8」の化合物(「甲3PGE2化合物」)は、下痢を生じさせる「エンテロプーリング作用」が非常に強く、「腸管収縮」に伴う腹痛などの副作用が小さい、化合物であることが記載されている。 β このような甲3の記載に接した当業者は、甲3発明の「下剤」の用途が、主に「甲3PGE2化合物」が有する強い「エンテロプーリング作用」(腸管内水分貯留量を増加させる作用)に基づくものであり、その機序は、上記「(ii)の作用」、すなわち、「薬剤が腸粘膜に作用して電解質と水の正常な吸収総量を減少させ、水分量が増すために間接的に腸内容物の移動が速くなる」というものであると認識するといえる。 γ 上記(a)ηで述べたように、本件訂正発明11は、「ClCチャンネルをオープン」することによって、様々な細胞の機能や防御機構の調節を可能とするものであり、例えば、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、嚢胞性線維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などの、様々な「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置の用途に適用できるものと認められるところ(摘記本d【0081】)、甲3には、「甲3PGE2化合物」を含む「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」が、「ClCチャンネルをオープン」することも、「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置に適用できることも、記載も示唆もされていないし、そのような技術常識が本件特許の優先日当時に存在したとも認められない。 δ ここで、上記「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」として本件明細書に例示されている疾患の一つである「便秘」については、その原因が不特定な一般的な「便秘」ではなく、モルヒネなどのオピオイドの投与によるクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌の異常によって引き起こされるような、クロライドイオンの透過性の低下に関連する特定の「便秘」を意味するものと解され(摘記本a【0005】)、本件訂正発明11は、そのような特定の「便秘」に対して選択的に適用できるものといえる。 これに対して、甲3発明の「下剤」は、上記のような本件訂正発明11が対象とし得る特定の「便秘」を特に対象としたものではなく、任意の一般的な「便秘」を対象とするものと認められるから、具体的な治療の対象となる疾患の点においても、本件訂正発明11の用途である「ClCチャンネルのオープン用」は、甲3発明の用途である「下剤」とは異なるものであるし、そもそも甲3には、「下剤」の用途と「ClCチャンネルのオープン」との関係について、何ら記載も示唆もされておらず、「ClCチャンネルのオープン」により「下剤」作用が得られるといった技術常識が本件特許の優先日当時に存在したとも認められない。 (c) 相違点2が実質的な相違点であることのまとめ 以上のとおり、相違点2のうち、組成物の用途が、本件訂正発明11では「ClCチャンネルのオープン用」であるのに対し、甲3発明では「下剤」であるという点は、組成物の実質的な用途が異なるということであるから、実質的な相違点である。 b 相違点2に係る構成が想到容易でないこと (a) 甲3の腸管からの水の吸収減少の機序と、甲4(乙6)の技術常識Dの水の腸管腔への分泌の機序は、異なること α 上記a(b)α及びβで述べたとおり、甲3の記載に接した当業者は、甲3発明の「下剤」の用途が、主に「甲3PGE2化合物」が有する強い「エンテロプーリング作用」(腸管内水分貯留量を増加させる作用)に基づくものあり、その機序は、「薬剤が腸粘膜に作用して電解質と水の正常な吸収総量を減少させ、水分量が増すために間接的に腸内容物の移動が速くなる」というものであると認識するといえる。 β 一方、上記1(2)イ(ア)~(イ)で述べた甲4(乙6)に記載された「技術常識D」のとおり、腸上皮においては、腸管腔での「イオン」及び「水」の「吸収」及び「分泌」が行われており、通常の状況では正味の「吸収」が優勢だが、内腔中の適切な「水分」の環境の維持のために、腸上皮から腸管腔への「水」の「分泌」も行われるところ、上皮細胞を横断する「水」の「分泌」は、イオンの能動輸送により駆動される受動的プロセスであり、小腸及び結腸では「クロライド」が「水分」の「分泌」を駆動する主要なイオンとされ、「クロライドイオン」が経細胞的に腸管腔内に「分泌」されて、これにより主に「ナトリウムイオン」などの「陽イオン」がタイトジャンクションを通る傍細胞経路で受動拡散するための「電気化学的勾配」が生じ、その結果、上皮の頂端側に「塩」が蓄積し、続いて、等張性を維持するために浸透圧勾配に沿ってタイトジャンクションを通って「水」が流出するとされている。 γ そうしてみれば、結果として腸管内水分貯留量が増加するとしても、クロライドチャンネルに関する上記「技術常識D」は、腸管腔への水の「分泌」(輸送)を促すことを機序とするものであり、甲3に記載された「エンテロプーリング作用」の機序は、腸管内から腸粘膜に吸収される水の量を減少させるものであるから(摘記甲3d)、両者の機序は異なるものといえる。 δ したがって、甲3発明の「下剤」に対し、甲4(乙6)に記載の「技術常識D」を適用する動機付けがあるとはいえない。 (b) 甲3における「エンテロプーリング作用」が、直ちに「ClCチャンネルのオープン」に関連するとはいえないこと α 仮に、当業者が、甲3における「被験薬8」の化合物(「甲3PGE2化合物」)の「エンテロプーリング作用」(腸管内水分貯留量を増加させる作用)が、甲3に記載された機序とは異なり、甲4(乙6)に記載された「技術常識D」における「クロライドイオン」が関与する腸管腔への「イオン」と「水」の「分泌」に基づくものであることを推測し得たとした場合について、以下、検討する。 β 上記1(2)イ(ウ)~(オ)で述べた甲4(乙6)及び甲5に記載された「技術常識D」のとおり、電気化学的勾配を発生させる一要素にすぎない腸上皮を横断する「クロライド」の腸管腔への「分泌」は、複数のイオン輸送経路の協調的な作用によって起こり、これらの経路が一体となってクロライド分泌機構を構成しているところ、この機構には、四つの主要なイオン輸送経路である、 ・「Na+/K+/2Cl-共輸送体(NKCC)」 ・「Na+/K+ ATPaseポンプ」 ・「K+チャンネル」 ・「Cl-チャンネル」 が関与しており、さらに、腸上皮の頂端膜に存在する「Cl-チャンネル」については、 ・「cAMP-活性化チャンネル」 ・「Ca2+-活性化チャンネル」 ・「外向整流性クロライドチャンネル(ORCC)」 ・「ClCチャンネル」 ・「嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)チャンネル」 を含む、複数の種類の「クロライドチャンネル」が存在することが知られているところ、「CFTRチャンネル」以外の、それらの経上皮の「Cl-」及び「水分」の「分泌」への寄与に関するデータはほとんどなく(摘記甲4(乙6)h)、「ClC-2チャンネル」は、腸管上皮のタイトジャンクション複合体の頂端膜側からの「クロライド」の「分泌」に寄与している可能性があるとされるにとどまる(摘記甲5a、b)。 γ 一方、甲3には、「エンテロプーリング作用」に関与する「電解質」について、それが「クロライドイオン」であることについては、何ら開示も示唆もされていない。そして、上記βのクロライド分泌機構を構成する四つの主要なイオン輸送経路である、 ・「Na+/K+/2Cl-共輸送体(NKCC)」 ・「Na+/K+ ATPaseポンプ」 ・「K+チャンネル」 ・「Cl-チャンネル」 のうちのいずれに「甲3PGE2化合物」が作用するのかは不明であるし、仮に、「甲3PGE2化合物」が「Cl-チャンネル」に作用することを推測し得たとしても、腸上皮の頂端膜に存在する複数種類の「クロライドチャンネル」: ・「cAMP-活性化チャンネル」 ・「Ca2+-活性化チャンネル」 ・「外向整流性クロライドチャンネル(ORCC)」 ・「ClCチャンネル」 ・「嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)チャンネル」 の中から、敢えて「ClC-2チャンネル」などの「ClCチャンネル」にのみ着目した上で、さらに、当該チャンネルのオープンによって「Cl-」の「分泌」が活性化され、その結果として「水」の「分泌」も促進されると結論づけることは、当業者であっても容易になし得ることであるとはいえない。 (c) 相違点2に係る構成の想到容易性のまとめ したがって、「有効量」のプロスタグランジン化合物を含むことの容易性について検討するまでもなく、甲3発明において、組成物の用途を「ClCチャンネルのオープン用」とし、相違点2に係る本件訂正発明11の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 (ウ) 本件訂正発明11の効果について a 上記(イ)a(a)η及び同(b)γで述べたとおり、本件明細書には、「本件PGE1化合物」が、異なった臓器や組織に由来する細胞系において「ClC-2チャンネルをオープン」し、ラットの腸管液及び家兎の涙液におけるクロライドイオン濃度を増加させたことが、具体的な試験例により裏付けられており、本件訂正発明11は、「ClCチャンネルをオープン」することによって、様々な細胞の機能や防御機構の調節を可能とするものであり、例えば、筋緊張性萎縮症、腎結石など高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、嚢胞性線維症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎、神経障害などの、様々な「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置の用途に適用し得るものと認められる。 また、上記(イ)a(a)δで述べたとおり、本件訂正発明11は、モルヒネなどのオピオイドの投与によるクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌の異常によって引き起こされる、クロライドイオンの透過性の低下に関連する特定の「便秘」に対して選択的に適用し得るものと認められる。 b 上記aのような本件訂正発明11が奏する優れた効果は、「本件PGE1化合物」についての具体的な記載も示唆もなく、「甲3PGE2化合物」を含む「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」について、「エンテロプーリング作用」に基づく「下剤」の用途が開示されるにとどまり、当該PG類が「ClCチャンネルをオープン」することも「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置に適用できることも、何ら記載も示唆もされていない甲3の記載からは、甲4(乙6)及び甲5に記載された、腸管におけるイオンと水の吸収と分泌、及びクロライドチャンネルとの関係に関する「技術常識D」を考慮したとしても、当業者が予測し得たものとはいえない。 ウ 小括 以上のとおり、本件訂正発明11は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2) 本件訂正発明1について 本件訂正発明1は、本件訂正発明11の特定事項を全て備えており、組成物が、更に 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 という特定事項により限定されたものである。 ア 対比 上記(1)アの本件訂正発明11と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明1と甲3発明との間には、本件訂正発明11と甲3発明との間の一致点及び相違点と同じ一致点並びに相違点1及び2があり、それに加えて次の相違点3があると認められる。 <相違点3> 組成物が、 本件訂正発明1では、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 のに対して、 甲3発明では、 「ソフトカプセル」にしてなるものに特定されておらず、「溶媒である脂肪酸のトリグリセライド」を含有するとも特定されていない点 イ 相違点の判断 上記(1)イで説示したのと同様の理由により、本件訂正発明1における相違点1及び2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 本件訂正発明2について 本件訂正発明2は、本件訂正発明11の特定事項を全て備えており、組成物の用途が、更に 「哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用である」 及び 「該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害」である という特定事項により限定されたものである。 ア 対比 上記(1)アの本件訂正発明11と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明2と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明2と甲3発明との間には、本件訂正発明11と甲3発明との間の一致点及び相違点と同じ一致点並びに相違点1及び2があり、それに加えて次の相違点4があると認められる。 <相違点4> 組成物の用途が、 本件訂正発明2では、「哺乳類対象における、クロライドイオン透過性の低下に関連する症状の処置用」であり、「該クロライドイオン透過性の低下に関連する症状が、筋緊張性萎縮症、高カルシウム尿症を呈する疾患、便秘、不安、不眠症、てんかん、無感覚症、喘息、気管支炎または神経障害」であることが特定されているのに対して、 甲3発明では、「下剤」である点。 イ 相違点の判断 上記(1)イで説示したのと同様の理由により、本件訂正発明2における相違点1及び2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明2は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4) 本件訂正発明4について 本件訂正発明4は、本件訂正発明2の特定事項を全て備えており、組成物が、更に 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 という特定事項により限定されたものである。 ア 対比 上記(1)アの本件訂正発明11と甲3発明との対比、及び、上記(3)アの本件訂正発明2と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明1と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明1と甲3発明との間には、本件訂正発明2と甲3発明との間の一致点及び相違点と同じ一致点並びに相違点1、2及び4があり、それに加えて次の相違点5があると認められる。 <相違点5> 組成物が、 本件訂正発明4では、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 のに対して、 甲3発明では、 「ソフトカプセル」にしてなるものに特定されておらず、「溶媒である脂肪酸のトリグリセライド」を含有するとも特定されていない点。 イ 相違点の判断 上記(1)イで説示したのと同様の理由により、本件訂正発明4における相違点1及び2に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点4及び5について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5) 本件訂正発明6について 本件訂正発明6は、本件訂正発明11の特定事項を全て備えており、組成物の用途について、更に 「ClCチャンネルがClC-2チャンネルである」 という特定事項により限定されたものである。 ア 対比 上記(1)アの本件訂正発明11と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明6と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明6と甲3発明との間には、本件訂正発明11と甲3発明との間の一致点及び相違点1と同じ一致点及び相違点1があり、それに加えて次の相違点6があると認められる。 <相違点6> 本件訂正発明6の組成物は、「有効量」のプロスタグランジン化合物を含むものであり、その用途が「ClCチャンネルのオープン用」であり「ClCチャンネルがClC-2チャンネル」に特定されているのに対して、甲3発明は、含まれるプロスタグランジン化合物の量が規定されておらず、その用途が「下剤」である点。 イ 相違点の判断 上記(1)イ(ア)で説示したのと同様の理由により、本件訂正発明6における相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 また、本件訂正発明6における甲3発明との相違点6に係る構成は、本件訂正発明11における甲3発明との相違点2に係る構成と比べると、「ClCチャンネル」が「ClC-2チャンネル」に更に限定されている関係にあるから、上記(1)イ(イ)で説示したのと同様の理由により、本件訂正発明6における相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件訂正発明6は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6) 本件訂正発明8について 本件訂正発明8は、本件訂正発明6の特定事項を全て備えており、組成物が、更に 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 という特定事項により限定されたものである。 ア 対比 上記(1)アの本件訂正発明11と甲3発明との対比、及び、上記(5)アの本件訂正発明6と甲3発明との対比を踏まえて、本件訂正発明8と甲3発明とを対比すると、本件訂正発明8と甲3発明との間には、本件訂正発明11と甲3発明との間の一致点及び相違点1と同じ一致点及び相違点1があり、本件訂正発明6と甲3発明との間の相違点6と同じ相違点6があり、それに加えて次の相違点7があると認められる。 <相違点7> 組成物が、 本件訂正発明8では、 「溶媒である脂肪酸のトリグリセライドとともに、ソフトカプセルにしてなる」 のに対して、 甲3発明では、 「ソフトカプセル」にしてなるものに特定されておらず、「溶媒である脂肪酸のトリグリセライド」を含有するとも特定されていない点。 イ 相違点の判断 上記(1)イ(ア)で説示したのと同様の理由により、本件訂正発明8における相違点1に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 また、上記(5)イで説示したのと同様の理由により、本件訂正発明8における甲3発明との相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 ウ 小括 したがって、相違点7について検討するまでもなく、本件訂正発明8は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7) 請求人の主張について ア 相違点1について (ア) 請求人の主張の概要 請求人は、請求人陳述要領書、請求人上申書A及び同上申書Bにおいて、本件訂正発明11と甲3発明との相違点1について、概略、以下のa及びbの主張をしている。 ・主張a 当業者ならば、甲3の記載(特に、12頁上欄「合成チャートI」(摘記甲3i)、及び、5頁右上欄~右下欄のPG1類の製造法の説明(摘記甲3f)など)に基づき、「合成チャートI」の3段目中央のα鎖導入工程で、THP保護体を還元してラクトールを得た後、イリドを反応させれば、α鎖がカルボン酸である化合物が得られると理解でき、また、メチルエステルを加水分解すれば、容易にカルボン酸が得られることも理解でき、5,6位の二重結合を接触還元すれば、単結合に変換できると容易に理解できる。 (請求人陳述要領書の11~13頁、請求人上申書Bの5~7頁) ・主張b PG類、特にPGE1及びPGE2を含むPGE類が、共通して便秘改善作用を有することが、例えば、甲10、甲20、甲21、甲22など多くの文献に開示されており、技術常識であったことは明白であるから、当業者であれば、構造が若干異なっていても、共通して便秘改善作用を有することが理解でき、「甲3PGE2化合物」を「本件PGE1化合物」とする十分な動機付けとなる。 (請求人上申書Aの6~8頁、請求人上申書Bの7~11頁) (イ) 請求人の主張についての当審合議体の判断 a 主張aについて 請求人の上記主張aは、結局のところ、「本件PGE1化合物」の具体的な構造が示されれば、甲3の記載に基づいて、当該構造の化合物を製造する方法を理解できるというに等しい。 しかしながら、上記(1)イ(ア)で述べたとおり、PG類は、僅かな構造の違いにより生理活性が大きく異なる場合があるところ、甲3の記載全体及び甲3以外の証拠方法を参照しても、甲3に具体的に記載された複数の被検薬の化合物のうち、特に優れた化合物であるといえる「甲3PGE2化合物」において、構造を変換し得る部分に多くの選択肢があるなかで、敢えて好ましい態様の一つである「5-6位の炭素結合が2重結合」(「態様α」)の条件を満たさなくなるように、5-6位の炭素結合を「二重結合」から「単結合」に変換したうえで、さらに、1位のカルボキシル基を「メチルエステル」から「遊離酸」に変換し、側鎖部分の炭素結合に二重結合が一つもない「本件PGE1化合物」の特定構造を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張aは採用できない。 b 主張bについて 甲3発明において、「甲3PGE2化合物」を「本件PGE1化合物」に変更することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえないことは、上記aで述べたとおりである。 上記1(2)ア(イ)aで述べた「技術常識B」のとおり、PG類には下剤作用を有する化合物が多いものの、これは望ましくない副作用としての下痢の誘発に基づくものであり、必ずしも便秘改善作用として当業者に肯定的に認識されていたとはいえない。 また、特に、甲10及び甲22の具体的なPG類についての記載事項が、甲3発明において、「甲3PGE2化合物」に代えて、「本件PGE1化合物」を採用する動機付けとなるものではないことは、上記(1)イ(ア)h及びjで述べたとおりである。 したがって、請求人の上記主張bは採用できない。 イ 相違点2及び本件訂正発明の効果について (ア) 請求人の主張の概要 請求人は、審判請求書、請求人陳述要領書、請求人上申書A及び同上申書Bにおいて、本件訂正発明11と甲3発明との相違点2及び本件訂正発明の効果について、概略、以下のc~eの主張をしている。 ・主張c 本件発明における「ClCチャンネルのオープン用」という事項は、「本件PGE1化合物」を含むプロスタグランジン類が本来有していた「属性」であって、甲3発明の「下剤」の「エンテロプーリング作用」の機序を単に発見したものにすぎず、「用途」を限定したものではなく、発明特定事項としての意味を有しないから、相違点2は実質的な相違点ではない。 このことは、甲14及び甲16に示される、「医薬用途発明については、添付文書に記載された効果・効能が「用途」である場合に限り、新たな用途による用途発明として新規性が肯定され得る」という、「ラベル論」からの解釈によっても支持される。 (審判請求書の43~45頁、54頁、請求人陳述要領書の16~26頁、請求人上申書Aの15~18頁、請求人上申書Bの11~13頁) ・主張d 当業者は、甲3の記載から、「15-ケト-16-ハロゲン-PG類」の「下剤」としての作用が、「腸管内水分量を増加」させる機能によるものであることを認識し、甲4及び甲5の記載から、「腸管内水分量を増加」させるために、「ClCチャンネル」が「クロライドイオン」を通過させる機能が大きく影響し得ることを認識するから、PG類の「下剤」作用を、「ClCチャンネル」が「クロライドイオン」を通過させる機能と結び付けて考えることは容易である。 (審判請求書の59~63頁、請求人陳述要領書の26~29頁、請求人上申書Aの10~11頁、請求人上申書Bの13~16頁) ・主張e 本件特許の出願時において、一般的に小腸と結腸では、クロライドイオンが水分の分泌を促す主要なイオンであり、そのためのクロライドイオンチャンネルとして、例えば「CFTRクロライドチャンネル」が存在し、腸管内水分量を増加させるクロライドイオンチャンネルとして、「ClCチャンネル」が「CFTRチャネル」などの他のクロライドイオンチャネルと代替性を有することが公知であり、実際に、本件明細書の試験例2の結果よれば、「本件PGE1化合物」の「ClCチャンネル」及び「CFTRチャネル」への作用は同程度であったから、本件発明に予測し得ない顕著な効果があるとはいえない。 (審判請求書の63~64頁) (イ) 請求人の主張についての当審合議体の判断 a 主張cについて 上記(1)イ(イ)aで述べたとおり、本件訂正発明11は、「本件PGE1化合物」が、「ClCチャンネルをオープン」することによって、Cl-電流、Cl-分泌、Cl-輸送を、活性化、促進又は調節するという、「未知の属性」を発見し、当該属性により、「本件PGE1化合物」が、当該属性それ自体を「新たな用途」としての使用に適すること、特に、様々な「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」の処置の用途に適用できることを見いだした、いわゆる「用途発明」であると認められる。そして、本件明細書において「クロライドイオンの透過性の低下に関連する症状」として例示された「便秘」は、モルヒネなどのオピオイドの投与によるクロライドイオンなどの電解質分泌や液分泌の異常によって引き起こされるような、特定の「便秘」を意味するものと解され、本件訂正発明11は、そのような特定の「便秘」に選択的に適用できるものといえるのに対し、甲3発明の「下剤」は、原因が特定されない一般的な「便秘」を対象とするものと認められるから、具体的な治療の対象となる疾患の点においても、本件訂正発明11の用途である「ClCチャンネルのオープン用」は、甲3発明の用途である「下剤」とは異なっており、相違点2は実質的な相違点である。 また、請求人が「ラベル論」として主張する、「医薬用途発明については、添付文書に記載された効果・効能が「用途」である場合に限り、新たな用途による用途発明として新規性が肯定され得る」という考え方は、請求人が根拠としている甲14及び甲16に記載されているとはいえないものであり、そのような通説が存在するとも認められないから、請求人独自の説にすぎない。実際、物の新たに発見した属性それ自体が新たな用途に適用できる場合に、当該属性を用途として特定した発明が特許された例は、乙8及び乙9をはじめとして数多く存在し、例えば、甲26のように、そのような属性を用途として特定した発明の新規性を認めた裁判例も存在する。 したがって、請求人の上記主張cは採用できない。 b 主張dについて 上記(1)イ(イ)b(b)で述べたとおり、仮に当業者が、甲3における「甲3PGE2化合物」の「エンテロプーリング作用」(腸管内水分貯留量を増加させる作用)が、甲4(乙6)に記載された技術常識Dにおける「クロライドイオン」が関与する腸管腔への「イオン」と「水」の「分泌」に基づくものであることを推測し得たとしても、当該クロライド分泌機構を構成する四つの主要なイオン輸送経路のいずれに「甲3PGE2化合物」が作用するのかは不明であるし、仮に、「Cl-チャンネル」に作用することを推測し得たとしても、腸上皮の頂端膜に存在する複数種類の「クロライドチャンネル」の中から、敢えて「ClC-2チャンネル」などの「ClCチャンネル」にのみ着目した上で、さらに、当該チャンネルのオープンによって「Cl-」の「分泌」が活性化され、その結果として「水」の「分泌」も促進されると結論づけることは、容易になし得ることであるとはいえない。 したがって、請求人の上記主張dは採用できない。 c 主張eについて 本件訂正発明11の優れた効果が、甲3の記載からは、甲4(乙6)及び甲5に記載された「技術常識D」を考慮しても、当業者が予測し得たものとはいえないことは、上記(1)イ(ウ)で述べたとおりである。 「本件PGE1化合物」の「ClCチャンネル」と「CFTRチャネル」への作用が同程度であったとしても、「本件PGE1化合物」による「ClCチャンネルのオープン」という新たな用途を特定事項とする本件訂正発明11の進歩性の検討にあたって、「ClCチャンネル」ではない「CFTRチャンネル」に対する薬理作用との比較は必要なものではない。 したがって、請求人の上記主張eは採用できない。 (8) 無効理由2についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正発明1、2、4、6、8、11は、甲3に記載された発明、及び、甲3~甲5に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正請求項1、2、4、6、8、11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、請求人が主張する無効理由2及び証拠方法によっては、無効とすることはできない。 第9 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は適法であり、請求人の主張する無効理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1、2、4、6、8、11に係る発明についての特許を無効とすることはできない。 本件特許の請求項10は、本件訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項10に係る発明についての特許を無効とする請求は、その対象が存在しないものとなったため、不適法な請求であって、その補正をすることができないものとなったから、特許法135条の規定により却下する。 審判に関する費用については、特許法169条2項の規定において準用する民事訴訟法61条の規定により、参加により生じた費用も含め、請求人の負担とする。 よって、結論のとおり審決する。

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2024-800049

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