特許異議申立
2017-701243
グラフェン/有機溶媒分散液およびその製造方法ならびにリチウムイオン電池用電極の製造方法
- 審判番号
- 2017-701243
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-559373外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月27日
- 審決日
- 2019年04月02日
- 公報発行日
- 2019年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【権利者代理人】清流国際特許業務法人
- 【権利者代理人】昼間 孝良
- 【権利者代理人】境澤 正夫
- 【異議申立人】中村 光代
- 分類
- P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B) / P1651.851-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6152923号発明「グラフェン/有機溶媒分散液およびその製造方法ならびにリチウムイオン電池用電極の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6152923号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕、〔14、15〕について訂正することを認める。
特許第6152923号の請求項1、3ないし6、8、10ないし15に係る特許を維持する。
特許第6152923号の請求項2、7、9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6152923号の請求項1~15に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願(特願2016-559373)は、平成28年 9月 9日(優先権主張 平成27年 9月18日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年 6月 9日に特許権の設定登録がされ、同年 6月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年12月27日付けで特許異議申立人 中村光代(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものであり、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年12月27日 特許異議の申立て
平成30年 4月 5日付け 取消理由通知(1回目)
同年 5月30日 訂正の請求、意見書の提出
同年 7月19日 申立人による意見書の提出
同年10月 1日付け 取消理由通知(2回目)
同年11月27日 訂正の請求、意見書の提出
なお、平成30年11月27日付けの訂正の請求に対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成30年11月27日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の(1)~(13)のとおりである(下線部は,訂正箇所を示す)。
なお、平成30年 5月30日付けの訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下であるグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下であり、前記グラフェンのBET測定法により測定される比表面積が80m2/g以上250m2/g以下、前記グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下であるグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1または3に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~4のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3または4に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3~6のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3~6,8のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~10のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3~6,8,10のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1~11のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3~6,8,10,11のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項13に
「請求項1~12のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
と記載されているのを、
「請求項1,3~6,8,10~12のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。」
に訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項14に
「水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを還元する還元工程」
と記載されているのを、
「水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下となるように還元する還元工程」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明を、「前記グラフェンのBET測定法により測定される比表面積が80m2/g以上250m2/g以下、前記グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下である」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項2及び本件明細書の段落【0050】、並びに訂正前の請求項7及び本件明細書の段落【0054】にそれぞれ記載された事項であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2、6、8について
訂正事項2、6、8は、それぞれ請求項2、7、9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2、6、8は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項3~5、7、9~12について
訂正事項3~5、7、9~12は、それぞれの請求項において、選択的に引用した請求項の一部を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3~5、7、9~12は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正前の請求項14において、どの程度まで酸化グラフェンを還元するのかは明らかでなかったのを、本件訂正により、「水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを、グラフェンのX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下となるように還元する還元工程」と特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項13の炭素に対する酸素の元素比(O/C比)は、訂正前の請求項7及び本件明細書の段落【0054】にそれぞれ記載された事項であって、同段落【0054】によると、最終的に得られるグラフェン/有機溶媒分散液に含まれるグラフェンの炭素に対する酸素の元素比(O/C比)を意味している。
すなわち、訂正後の請求項14に係る発明の還元工程において、最終的に得られるグラフェン/有機溶媒分散液に含まれるグラフェンのO/C比となるように還元することが特定されている。
したがって、当該訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)一群の請求項
訂正前の請求項2~13は、直接的又は間接的に請求項1を引用するものであるから、上記訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
訂正前の請求項15は、請求項14を引用するものであるから、上記訂正事項13によって記載が訂正される請求項14に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1と訂正事項13とを含む本件訂正請求は、それらの一群の請求項に対してされたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(6)独立特許要件について
本件特許の訂正前の全請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~13は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第7項の独立特許要件の規定は適用されない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~13〕、〔14、15〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1、3~6、8、10~15に係る発明(以下、「本件発明1」・・・「本件発明15」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す)。
なお、請求項2、7、9は、本件訂正請求による訂正により削除された。
【請求項1】
グラフェンが有機溶媒に分散したグラフェン/有機溶媒分散液であって、カールフィッシャー法で測定した、130℃における水分率をW1、250℃における水分率をW2とし、グラフェンの固形分率をGとしたとき、(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下であり、前記グラフェンのBET測定法により測定される比表面積が80m2/g以上250m2/g以下、前記グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下であるグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項3】
前記(W2-W1)/Gの値を前記グラフェンのBET測定法により測定される比表面積で除した値が、0.000025以上0.00025以下である、請求項1に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項4】
前記有機溶媒の沸点が150℃以上である、請求項1または3に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項5】
前記有機溶媒の双極子モーメントが3.0Debye以上である、請求項1,3または4に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項6】
前記有機溶媒がN-メチルピロリドンである、請求項5に記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項8】
前記グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する窒素の元素比(N/C比)が0.005以上0.020以下である、請求項1,3~6のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項10】
レーザー顕微鏡により観察したグラフェンの厚さの平均値をT(μm)とした場合に、下記式(3)を満たす、請求項1,3~6,8のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
100≦S/T≦1500 ・・・(3)
【請求項11】
溶媒にN-メチルピロリドンを50質量%以上含み、N-メチルピロリドンでグラフェン重量分率0.000013に調整した希釈液の、波長270nmにおける下記式(4)を用いて算出される重量吸光係数が25000cm-1以上200000cm-1以下である請求項1,3~6,8,10のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
重量吸光係数(cm-1)=吸光度/{(0.000013×セルの光路長(cm)} ・・・(4)
【請求項12】
固形分率が0.003以上0.4以下である、請求項1,3~6,8,10,11のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液。
【請求項13】
請求項1,3~6,8,10~12のいずれかに記載のグラフェン/有機溶媒分散液とリチウムイオン電池用活物質とを混合する工程を含む、リチウムイオン電池用電極の製造方法。
【請求項14】
水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下となるように還元する還元工程;
還元工程で得られた中間体分散液と有機溶媒とを混合する有機溶媒混合工程;
有機溶媒を含む中間体分散液をせん断速度毎秒5000~毎秒50000で撹拌処理する強撹拌工程;
有機溶媒添加と吸引濾過を組み合わせる手法、または蒸留により中間体分散液から水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程;
をこの順に有するグラフェン/有機溶媒分散液の製造方法。
【請求項15】
さらに、前記還元工程後のいずれかの段階に、
中間体分散液を70℃以上に加熱する加熱工程;
を有する、請求項14に記載のグラフェン/有機溶媒分散液の製造方法。
第4 特許異議の申立ての理由及び証拠について
1 申立理由について
申立人は、証拠方法として甲第1号証~甲第4号証-1(以下、「甲1」~「甲4-1」という。)を提出し、本件特許は、以下の申立理由により取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1
訂正前の請求項1、4~7に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)申立理由2
ア 訂正前の請求項13に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 訂正前の請求項14、15に係る発明は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
ウ 訂正前の請求項1~15に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)申立理由3
訂正前の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
(4)申立理由4
訂正前の請求項1~15に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
2 証拠方法
甲1:特開2010-222245号公報
甲2:Kuila,T. et al. "Facile Method for the Preparation of Water
Dispersible Graphene using Sulfonated Poly(ether-ether-
ketone) and Its Application as Energy Storage Materials",
Langmuir, 2012, 28, p.9825-9833
甲2-1:甲2の日本語部分翻訳
甲3:特表2015-506083号公報
甲4:Kahn,U. et al. " High-Concentration Solvent Exfoliation of
Graphene ", small, 2010,6,No.7,p.864-871
甲4-1:甲4の日本語部分翻訳
第5 取消理由について
1 平成30年10月 1日付けの取消理由通知(2回目)の概要
平成30年 5月30日付けの訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項1、3~6、8、10~15に対して、平成30年10月1日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
記
請求項14、15に係る発明が解決しようとする課題は、「グラフェンの理想的な分散状態を発現できること」(本件明細書 段落【0014】)及び「優れた放電性能を有するリチウムイオン電池用電極を提供すること」(本件明細書 段落【0018】)というものであるが、 請求項14、15に係る発明は、グラフェン分散液に分散したグラフェンのO/C比が特定されていないため、最終的に得られるグラフェンの還元の程度が明らかでないから、これらの発明により上記課題を達成できるグラフェンが得られるとは認識できない。
(2) 取消理由2 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
記
請求項14、15に係る発明は、酸化グラフェンをどの程度まで還元するのかは明らかでなく、酸化グラフェンの酸化度、及び還元の程度によって、最終的に得られるグラフェンのO/C比は変動するから、請求項14、15に係る発明において、酸化グラフェンとグラフェンとは明確に区別することができない。
2 平成30年 4月 5日付けの取消理由通知(1回目)の概要
訂正前の請求項1~15に対して、平成30年 4月 5日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1 本件特許の請求項1、4~7に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(2)取消理由2
ア 本件特許の請求項1、4~8、12、13に係る発明は、甲2及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 本件特許の請求項13に係る発明は、甲1及び甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(3)取消理由3 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
記
上記「1(1)取消理由1」と同様な理由により、請求項1~6、8~13に係る発明は、グラフェンのO/C比がどのような値であっても、上記課題を達成できるとは認識できない。
(4)取消理由4 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
記
ア 上記「1(2)取消理由2」と同様な理由により、請求項1~15に係る発明において、「グラフェン」と「酸化グラフェン」との区別が明確でなく、「グラフェン」の範囲が不明確である。
イ 請求項9~13に係る発明において、本件明細書に「メジアン径」の測定基準が記載されていないため、「メジアン径」が特定されたグラフェンを含む「グラフェン/有機溶媒分散液」の範囲が不明確である。
第6 当審の判断
1 平成30年10月 1日付けの取消理由通知(2回目)についての判断 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)、取消理由2(特許法第36条第6項第2号)について
本件発明14は、本件訂正請求による訂正により、「X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下となるように還元する」ことが特定された。
そうすると、発明の詳細な説明において、特定のO/C比において本件発明の課題を解決できることが記載されているところ(本件明細書段落【0054】)、本件発明14及び本件発明14に従属する本件発明15において、酸化グラフェンを、0.08以上0.30以下の「O/C比」のグラフェンを含むように還元してグラフェン/有機溶媒分散液を得ることが明らかとなったから、本件発明14、15は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
また、本件発明14、15において、還元により得られるグラフェン分散液に含まれるグラフェンのO/C比が特定されたことで、酸化グラフェンとグラフェンとの区別(酸化されていないグラフェンの存在)が明らかになったといえるから、本件発明14、15の範囲は明確である。
よって、請求項14、15に対する取消理由1、2は解消した。
2 平成30年 4月 5日付けの取消理由通知(1回目)についての判断(1)取消理由1(特許法第29条第1項第3号)、取消理由2(特許法第29条第2項)について
ア 甲1~甲4の記載事項
甲1~4には、以下の事項が記載されている(甲2及び甲4の訳は、それぞれ証拠の翻訳文甲2-1及び甲4-1を参考にした。)
(ア)甲1の記載事項
1a「【0026】
実験方法
安定なコロイドを生成するために、0.05重量%のグラフェン酸化物(GO)の水中分散物が50℃で60分間VWR Ultrasonic Cleaner (B2500A-DTH, 210W)を使用して音波処理され、無水1-メチル-2-ピロリジノン(NMP, ACS reagent grade 328634, Sigma-Aldrich)と1:1(体積比)で希釈された。得られた明るい褐色の分散物を、その後、減圧下60分間脱気してその混合物中に存在する残留大気酸素を除去した。その後、溶液をアルゴンでパージし、240℃に予備加熱した砂浴(sand bath)中に置いた。その混合物をアルゴンを流しながら24時間還流させた後、Anodiscアルミナ膜フィルター(47 mm 直径、0.2 μm ポアサイズ、Whatman International, Maidstone, UK)を通して濾過し、純粋なNMPで洗浄した。最終生成物はBeckman-Coulter Allegra(登録商標) X-15R遠心機を使用して4500rpmで遠心分離し、上澄液を保存した。上澄液はもう一度濾過し、アセトンで洗浄し、周囲条件下ろ紙上で乾燥させた(これをソルボサーマル還元されたグラフェン酸化物(SRGO)空気乾燥紙状物という。)。さらに、SRGO紙状物のいくつかのサンプルをヘリウムガスを流しながら炉管内に入れ、250℃、500℃及び1000℃の温度でアニーリングした。有機分散物を調製するために、SRGO紙状物を下記有機溶剤:
ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチルアセテート、アセトニトリル、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、アセトン、トルエン、及びジクロロベンゼン
中1 mg/mlの比で、3時間、50℃で音波処理した。
【0027】
原子間力顕微鏡(AFM)の測定をシリコン先端部を使用してマルチモード原子間力顕微鏡(Nanoscope IIIa, Veeco Instruments)上のタッピングモードで行った。サンプルは、DMF中のSRGOの1 mg/ml溶液を使用して、その溶液を洗浄したばかりのSi基板上にドロップキャスト(drop-cast)し、真空オーブン中で乾燥して調製した。
【0028】
TEM画像を透過型電子顕微鏡(Philips CM120)を使用して120 kV 加速電圧下で撮影した。サンプルは炭素フィルムで被覆された銅製TEMグリッドの上にクロロホルム中1 mg/mlのSRGO分散物を滴下することによって調製し、溶剤を蒸発させた。
【0029】
走査型電子顕微鏡(SEM)分析はSRGO紙状物と単一のシートの両方について行った。紙状物のサンプルの断面の分析に関して、サンプルを電子ビームに平行なSEMのサンプルホルダーに搭載した。SRGOの単一のシート及びSRGOの分散物の画像化は洗浄したばかりのSi基板上に1 mg/mlのSRGOアセトンを滴下し、アセトンを蒸発させることによって行った。
【0030】
X線回折(XRD)によるキャラクタリゼーションを、Crystal Logic回折計において、Ni-フィルター付Cu Kα線 (λ=1.5418Å)で、ゼロバックグラウンドのシリコン基板上のSRGO空気乾燥紙状物を使用して行った。
【0031】
全てのサンプルの熱重量分析(TGA)をアルゴンガス下2℃/minの昇温速度で行った。
光電子分光法(XPS)をThermo VG ESCALAB 250分光計の分析チャンバー内にサンプルを挿入することによって行った。スペクトルは各サンプルに1486.6電子ボルト(eV)で超真空条件下で単色化アルミニウムKα X線の320μm直径のスポットを照射することによって得た。その分析は、3-12の走査及び信号の平均化を得ることから成っていた。調査走査は80 eVの通過エネルギーで得られた。高解像度走査は20 eVの通過エネルギーで得られた。」
1b「【0032】
電気的測定を4-点プローブ測定台(Jandel RM3-AR Test Meter with Multiheight Probe attachment)を使用して行い、サンプルあたり3つのデータ点の平均値を記録した。
結果及び検討
ソルボサーマル還元GO(SRGO)分散物の濾過によって有機溶剤に分散させることができる紙状材料が得られる(図3)。安定なコロイド分散物は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチル、アセトニトリル、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、及びアセトンを用いて、6週間後に1mg/mlの最小の析出物を伴って、達成されることができる。SRGOはトルエン又はジクロロベンゼン中に分散せず、その代わり、3時間の音波処理の後間もなく凝集が観察された。有機溶剤中にそれらシートが分散状態でいるように維持する力はNMP分子(NMP分子はSRGOシート上の残留酸素官能基に水素結合を形成する。)と有機溶剤との間の混和性から生じていると思われる。前の報告(Polymer International 2001, 50, 11, 1180)は、NMPが導電性ポリマーポリアニリンと水素結合を形成することを示している。よって、我々は同様な相互作用がここでも起こっていることを示唆する。この仮定を確かめるために、我々は塩酸溶液の数滴をそれらの中でもいくつかの有機溶液NMP、DMF及びDMSOに添加した。この添加はSRGOシートの凝集及び析出をもたらした。これらの実験は、SRGOシートとNMPとの間の水素結合がコロイド懸濁液の安定性の原因であることを強く示唆している。
【0033】
水素結合がNMP、DMF及びDMSO中でのSRGOシートの安定性の原因であると思われる一方で、それは依然として、DMF、DMSO、グリセロール及びヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)中で行われる合成がコロイド分散物の代わりに凝集したシートをもたらすことの理由を与えていない。しかし、これら化学物質の全てが高沸点溶剤であり、高温で還流することがグラフェン酸化物に水素結合を通じて結合する水分子を除去するために必要である。加えて、溶剤の全てが、水の不存在下でそれらシートの凝集を防ぐために、様々な度合いの水素結合手段を与えている。我々はその答えが、NMPが、上述した他の溶剤とは異なり、剥離したシートを分散状態のままにするグラフェンシートの表面エネルギーに厳密に適合した表面エネルギーを有するという事実ではないかと推測する。NMPはまた還流条件下で使用したときに石炭中の炭素-酸素結合の開裂を起こすことが示唆されている。これら反応において、ヒドロペルオキシドは、N-メチルスクシンイミドを生成するNMPと酸素との反応における中間体であると考えられる。我々の実験において、純粋なNMPは大気圧の酸素下で還流すると色が透明から褐色に変化する。我々は酸素存在下でのNMPの色の変化はオリゴマーの形成によると考えるが、これは前に報告されている(Energy and Fuels1997, 11, 1105-1106)。SRGOを反応混合物から濾過することは、酸素が混合物中に存在し、オリゴマーの形成が起こっていることを示している暗褐色の溶液を与える。この時点ではオリゴマー形成がGOの還元反応又はSRGOのコロイド分散物を形成するその能力においてどのような役割を果たしているかはっきりしない。我々の実験は、NMPの自己オリゴマー化を防ぐためにグラフェン酸化物との反応に関して無水の脱気したNMPを使用することが避けられないことを示している。」
1c「【0037】
TGA線図は100℃より前で約15重量%の減量を示している(図5c)。これは積層化グラフェン酸化物シート内から水分子が除去されることによると考えられる。これに対して、SRGO紙状物のTGA曲線は200℃までで減量がより少なく(6%)、これはSRGO構造中に閉じ込められている水やアセトン分子の量がより少ないことを示している。さらに、SRGO紙状物のTGAは200℃~525℃で20%の質量減少を示し、その後、より高い温度では曲線が平坦になっている。これら予備試験の知見は、200℃~550℃の間の質量減少は強力に結合したNMP及び/又はNMPから誘導された官能基分子に関連することを示唆している。」
1d「
」
(【0041】)
1e「
」
(図5(c))
(イ)甲2の記載事項
2a「2.2 Preparation of Graphite Oxide. Graphite oxide was prepared by the modified Hummers method.14 In brief, 46 mL of concentrated sulfuric acid was added to a 250 mL round-bottom flask at 0-5 ℃. Then, 2 g of natural flake graphite was added and stirred at this temperature to make a homogeneous suspension. About 6 g of potassium permanganate was added very slowly over a time span of 20-25 min followed by stirring for 2 h. The temperature of the reaction system was maintained at 0-5℃ with an ice bath. The flask was then transferred to a preheated oil bath at 35 ±2 ℃ under constant stirring for 12 h. About 92 mL of DI water was added very carefully followed by additional stirring for 1 h. The deep brown reaction mixture was added to 240 mL of DI water followed by the addition of 30% hydrogen peroxide until the color changed to bright yellow. Finally, a 5% hydrochloric acid solution was added to remove the manganese ions from graphite oxide followed by washing with DI water to remove excess acid. The removal of hydrochloric and sulfuric acid was confirmed by a silver nitrate and barium chloride solution. The purified graphite oxide was separated by centrifugation using a Beckman Coulter Allegra X-22R centrifuge and freeze-dried.」(9826ページ左欄下から31行~下から13行)
(「2.2.酸化グラファイトの調製 酸化グラファイトは改良ハマーズ法14により調製した。要約すると、濃硫酸46mLを0~5℃で250mLの丸底フラスコに投入し、次いで、天然鱗片状グラファイト2gを加え、同じ温度で攪拌し均一な懸濁液を作製した。過マンガン酸カリウム約6gを20~25分かけて非常にゆっくり加え、2時間攪拌した。反応系の温度は氷浴を用いて0~5℃に維持した。その後、あらかじめ35±2℃に温めた油浴にフラスコを移し、12時間一定の速度で攪拌した。脱イオン水約92mLを非常に慎重に加え、さらに1時間攪拌した。焦げ茶色の反応混合物を脱イオン水240mLに加えた後、溶液が鮮やかな黄色になるまで30%過酸化水素を加えた。その後、5%塩酸溶液を加え酸化グラファイトからマンガンイオンを取り除き、脱イオン水で洗浄して過剰な酸を取り除いた。硝酸銀水溶液および塩化バリウム水溶液を用いて、塩酸および硫酸が除去されたことを確認した。精製した酸化グラファイトは、遠心分離機「ベックマン・コールター・アレグラX-22Rを用いて遠心分離を行い、凍結乾燥させた。」)
2b「2.3. Sulfonation of Poly(ether-ether-ketone). PEEK pellets (5 g) were slowly added to 100 mL of concentrated H2SO4 (95-98 wt %) at room temperature under nitrogen atmosphere. After complete dissolution of PEEK in H2SO4, it was then stirred vigorously at 55 ℃ for 5 h. The reaction mixture was cooled to room temperature and slowly added to ice cold water. The precipitate was then washed several times with DI water until reaching neutral pH. The product was dried at 70 ℃ in a vacuum oven to prepare sulfonated SPEEK. The conversion of PEEK to SPEEK including the chemical structure of both the reactant and the product are shown in Figure S1 of the Supporting Information. The degree of sulfonation of the SPEEK has been determined as 80%.」(9826ページ左欄下から12行~最下行)
(「2.3.ポリ(エーテルエーテルケトン)のスルホン化 PEEKペレット(5g)を室温および窒素雰囲気下で、濃H2SO4(95~98wt%)100mLにゆっくり加えた。PEEKがH2SO4に完全に溶解した後、55℃で5時間激しく攪拌した。得られた反応混合物を室温まで冷却し、氷水にゆっくり加えた。次に、得られた沈殿物を、中性pHになるまで脱イオン水で数回洗浄し、生成物を70℃の真空オーブンで乾燥させ、スルホン化SPEEKを調製した。サポート情報である図S1に、PEEKを反応物および生成物両方の化学溝造を有するSPEEKに変換する過程を示す。SPEEKのスルホン化率は80%であった。」)」
2c「2.4. Surface Modification of Graphene using SPEEK. About 100 mg of graphite oxide was dispersed in 200 mL of water via ultrasonication for 30 min (Sonosmasher ULH 700S, 20 kHz). The unexfoliated graphite oxide was removed by centrifugation (Beckman Coulter, Allegra X-22R) at 5000 rpm for 15-20 min. The stable homogeneous dispersion containing graphene oxide (GO) was used for surface modification. About 300 mg of SPEEK was dissolved separately in distilled water using a magnetic stirrer at 60 ℃ . Then, the SPEEK supernatant solution was added to the GO dispersion and stirred for 24 h at 65-70 ℃. Weighed amount of hydrazine monohydrate (0.1 mL) was added to the above mixture and refluxed for 12 h at 100 ℃. The final product was filtered and washed through a cellulose acetate (0.2 μm pore size) membrane to remove excess SPEEK and to obtain SPEEK modified graphene (SPG). For comparison purposes, chemically reduced GO (CR-GO) was prepared by the reduction of an aqueous GO dispersion using hydrazine monohydrate at 100 ℃ for 12 h.」(9826ページ右欄1行~17行)
(「2.4.SPEEKを用いたグラフェンの表面変性 超音波処理を30分間行い(ソノスマッシヤーULH700S、20kHz)、酸化グラファイト約100mgを水200mLに分散させた。遠心分離(ベックマン・コールター・アレグラX-22R)を5000rpmで15~20分行い、剥離していない酸化グラファイトを取り除いた。酸化グラフェン(GO)を含む均一な安定分散液を用いて表面変性を行った。これとは別に、SPEEK約300mgをマグネティックスターラーを用いて60℃で蒸留水に溶解した。SPEEK溶液の上澄み液をGO分散液に加え65~70℃で24時間攪拌した。秤量したヒドラジンー水和物(0.1mL)を上記混合物に加え、100℃で12時間還流を行った。酢酸セルロース(孔径0.2μm)膜を用いて最終生成物のろ過および洗浄を行い、過剰なSPEEKを取り除き、SPEEK変性グラフェン(SPG)を得た。比較用として、ヒドラジン-水和物を用いてGO水分散液の還元を100℃で12時間行い、化学的に還元したGO(CR-GO)を調製した。」)
2d「3.1. Characterization of SPG. To examine the dispersion characteristics of SPG, the sample was dispersed in distilled water at a concentration of 2 mg mL-1. After mild sonication, SPG formed a very stable dispersion in water that was stable for more than six months.」(9826ページ右欄下から10行~下から6行)
(「3.1.SPGの特性評価 濃度が2mgmL-1になるように、試料を蒸留水に分散させ、SPGの分散特性を調べた。ゆるやかな超音波処理を行ったところ、SPGの水分散液は非常に安定で、6か月以上安定な状態のままであった。」)
2e「
」
(9829ページ)
2f「
」
(9830ページ)
(ウ)甲3の記載事項
3a「【0006】
一般に、電極を製造するための技術は、VDFポリマー(PVDF)バインダーを溶解してそれらを粉状電極材料および前述の導電性添加剤などの全ての他の適した成分と均質化するためにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの有機溶剤を使用して、金属集電体上に適用されるペーストを製造することを必要とする。
・・・
【0008】
したがって、現在のリチウムバッテリのエネルギー密度を改良するために、カーボンブラックをより高い導電率を有する導電性添加剤と取り替えることが有益である-それはより小さな重量比と共に、必要とされる電子伝導率をバッテリ電極に与えることができる-バッテリ活性材料のエネルギー密度損失を最小にする。この点に関して、グラフェンのカーボンナノ材料(炭素原子の単一層および2次元ナノ構造)は、高い表面積対体積比および顕著な電子輸送性質を有し、両方の性質はカーボンブラックよりも優れており、理論上はそれを魅力的な導電性添加剤材料にすることが最近判明した。グラフェン小板は、それらの合成の間に様々な程度に酸化されてもよく、したがって酸化グラフェンシートになる。したがって、本発明の目的のために、「グラフェン」という用語は、純粋な、酸化されていないグラフェンとその酸化された形態との両方を包含するように使用され、「酸化グラフェン」という用語は、酸化されたグラフェンだけを示すことが意図される。」
3b「【0025】
本発明の好ましい実施形態において、電極形成組成物中の酸化グラフェン添加剤は、大表面積の特性を特徴としている。詳細には、3点BET法(窒素を使用するブルナウアー‐エメット‐テラーの吸着等温法)によって測定された時に本発明において用いられる酸化グラフェンの比表面積は好ましくは、25m2/g超、より好ましくは35m2/g超、より好ましくは100m2/g超、そしてさらにより好ましくは150m2/g超である。」
3c「【0071】
リチウム二次バッテリのための正電極の作製
実施例1
最初に、0.5重量%のGNP-PDR05を含有するグラフェン/NMP懸濁液を調製するために、0.2gのGNP-PDR05を40gのNMPに添加し、このように製造された混合物を(10ワットの出力電力を使用して)10分間にわたって音波処理に供した。次に、得られたグラフェン/NMP懸濁液20gを正電極活性材料として9.383gのLiCoO2(Umicoreから購入)と6.267gの前もって調製された8重量%SOLEF(登録商標)5130 PVDF/NMP懸濁液と混合し、得られた混合物を1時間にわたってDispermat(登録商標)攪拌機を使用して3000rpmの速度において激しく撹拌し、正電極材料複合ペーストを得た。ドクターブレードキャスティング技術を使用してペーストをアルミニウム箔上にコートし、その後、炉内で真空下、1時間にわたって130℃において加熱乾燥によって処理し、94重量%のLiCoO2、5重量%のSOLEF(登録商標)5130 PVDFバインダーおよび1重量%のグラフェン導電性添加剤を有する正電極材料を製造した。」
(エ)甲4の記載事項
4a「2.7 Aqueous Dispersions
Using the solvent NMP has a number of disadvantages, notably its high boiling point. For many applications, water would be a better solvent. However, the surface energy of water is too high for it to act as a solvent for graphene.[25] We note, however, that aqueous dispersions of reduced GO have been heavily diluted with organic solvents without large-scale destabilization.[17] With this in mind, we diluted an NMP dispersion (0.7 mg mL-1, 2mL) with water by a factor of 99:1 (water:NMP). For comparison, we diluted the same starting dispersion with NMP at 99:1. Each dispersion was then bath sonicated for a further 10 min to homogenize it. We measured the resulting sedimentation by tracking optical absorbance using home-built apparatus.[47]Sedimentation curves for both water- and NMP-diluted dispersions are shown in Figure 8A. Both samples were very stable over 160h, showing <25% sedimentation.」(870ページ左欄6行~22行)
(「2.7.水分散液
NMP溶媒の使用においては多くの問題があり、特に沸点が高いことが問題となる。様々な用途において用いる溶媒としては水が好ましいが、グラフェンに使用するには、水の表面エネルギーは高すぎる。[25] しかしながら、還元GOの水分散液の希釈に有機溶媒が用いられており、スケールが大きくても不安定になることがない。[17] この点を考慮して、NMP分散液(0.7mgmL-1,2mL)の希釈を水を用いて99:1(水:NMP)の割合で行った。比較用として、同じ出発分散液を、NMPを用いて99:1の割合で希釈した。その後、それぞれの分散液を、浴槽中で超音波によりさらに10分間分散させて均一化した。自家製の装置を用いて吸光度を追跡することにより、生じる沈殿の測定を行った。[47] 図8Aに水で希釈した分散液およびNMPで希釈した分散液の両方の沈殿物曲線を示す。両試料とも160時間を超えても非常に安定な状態を保ち、沈殿物は<25%であった。」)
イ 甲1及び甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項
(ア)甲1に記載された発明
記載事項1aによると、グラフェン酸化物(GO)の水中分散物を無水1-メチル-2-メチルピロリジノン(NMP)で希釈し、還流後、濾過及び洗浄して、ソルボサーマル還元されたグラフェン酸化物(SRGO)空気乾燥紙状物を得たこと、SRGO紙状物を有機溶剤に音波処理して分散させたこと、及び全てのサンプルをアルゴンガス下で熱重量分析(TGA)を行ったことが、記載事項1bによると、ソルボサーマル還元GO(SRGO)分散物を有機溶剤に分散させたことで安定なコロイド分散物が得られたことが、記載事項1dによると、空気乾燥したソルボサーマルRGOは、XPS、すなわちX線光電子分光法により計測されるSRGOのC/Oの原子比は、5.15であることが、それぞれ記載されている。
そして、記載事項1cによると、SRGO紙状物のTGA曲線は200℃までで減量が少ない(6%)ことが記載され、記載事項1eのTGA曲線によると、SRGO紙状物は、130℃から250℃までで数パーセント程度の質量減少があるといえる。
ここで、グラフェン酸化物をNMP溶液で還流を行う工程は、グラフェン酸化物を還元してソルボサーマル還元されたグラフェン酸化物(SRGO)を得る工程であるといえる。
また、ソルボサーマルRGOのC/Oの原子比が5.15であるから、炭素に対する酸素の原子比(O/C比)は0.19である。
そうすると、甲1には、
「ソルボサーマル還元グラフェン酸化物(SRGO)の有機溶剤分散液であって、前記ソルボサーマル還元グラフェン酸化物の紙状物のTGAにより測定した130℃から250℃の間の質量減少が数パーセントであり、前記ソルボサーマル還元グラフェン酸化物のX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の原子比(O/C比)が0.19であるグラフェン分散液。」
の発明(以下、「甲1発明A」という。)
及び
「NMP希釈水中分散物に含まれるグラフェン酸化物を還元して、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の原子比(O/C比)が0.19であるソルボサーマル還元グラフェン酸化物(SRGO)を得る工程、
前記ソルボサーマル還元グラフェン酸化物を音波処理して有機溶剤に分散させる工程を含む、ソルボサーマル還元グラフェン酸化物の有機溶剤分散液の製造方法。」
の発明(以下、甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。
(イ)甲2に記載された発明
記載事項2aによると、グラファイトを酸化して酸化グラファイトを得たことが、記載事項2bによると、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)をスルホン化して、スルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)(SPEEK)を得たことが、記載事項2cによると、超音波処理により酸化グラファイトを水に分散させ、SPEEKを加えて撹拌し、さらにヒドラジンを加えて還流を行って、SPEEK変性グラフェン(SPG)を得たことが、記載事項2dによると、SPGを蒸留水に超音波処理して分散させて水分散液を得たことが、記載事項2eによると、XPS、すなわちX線光電子分光法により測定されるSPGのC/Oの原子比が6.8であることが、それぞれ記載されている。
そして、記載事項2fによると、SPGのTGA曲線が示され、SPGは130℃から250℃までで数パーセント程度の重量減少があるといえる。
ここで、ヒドラジンを加えて還流を行う工程は、酸化グラファイトを還元してグラフェンを得る工程であるといえる。
また、SPGのC/Oの原子比が6.8であるから、炭素に対する酸素の原子比(O/C比)は0.15である。
そうすると、甲2には、
「SPEEK変性グラフェンが水に分散した分散液であって、前記SPEEK変性グラフェンのTGAにより測定した130℃から250℃の間の重量減少が数パーセントであり、前記SPEEK変性グラフェンのX線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の原子比(O/C比)が0.15であるグラフェン分散液。」
の発明(以下、「甲2発明A」という。)
及び
「水に分散する酸化グラファイトを、SPEEKによる変性及びヒドラジンによる還元をして、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の原子比(O/C比)が0.15であるSPEEK変性グラフェンを得る工程、
得られたSPEEK変性グラフェンを超音波処理して水に分散させる工程
を含むグラフェン分散液の製造方法。」
の発明(以下、「甲2発明B」という。)が記載されていると認められる。
(ウ)甲3に記載された技術事項
記載事項3a、3cによると、電極を製造するために、グラフェンをNMPに添加しグラフェン/NMP懸濁液を調製してペーストを製造し、集電体上に塗布することが、記載事項3bによると、電極形成組成物中の酸化グラフェンの比表面積は、好ましくは25m2/g超、より好ましくは100m2/g超、そしてさらにより好ましくは150m2/g超であることが記載されている。
(エ)甲4に記載された技術事項
記載事項4aによると、甲4のグラフェンのNMP分散液について、さらに水又はNMPで希釈して超音波処理して得られた分散液は、両者とも安定な状態を保つことが記載されている。
ウ 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)
本件発明1、4~6について
申立人は、特許異議申立書において、甲1発明Aの「130℃から250℃の間の質量減少が数パーセント」である点について、記載事項1eのTGA線図を分析して、本件発明1の「カールフィッシャー法で測定した、130℃における水分率をW1、250℃における水分率をW2とし、グラフェンの固形分率をGとしたとき、(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下である」点に相当するとしている。
しかし、本件発明1は、本件訂正請求による訂正により訂正前の請求項2の「グラフェンのBET測定法により測定される比表面積が80m2/g以上250m2/g以下である」ことが特定された。
そうすると、本件発明1と甲1発明Aとを比較すると、甲1発明Aの比表面積は明らかでないから、当該比表面積を本件発明1と甲1発明Aとの一致点とすることはできない。
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。
また、本件発明1に従属する本件発明4~6は、本件発明1の特定事項を含むものであるから、同様に甲1に記載された発明ではない。
エ 取消理由2(特許法第29条第2項)
(ア)取消理由2 ア
本件発明1,4~6、8、12、13について
申立人は、特許異議申立書において、甲2発明Aの「SPEEK変性グラフェンのTGAにより測定した130℃から250℃の間の重量減少が数パーセント」である点について、記載事項2fのTGA線図を分析して、本件発明1の「カールフィッシャー法で測定した、130℃における水分率をW1、250℃における水分率をW2とし、グラフェンの固形分率をGとしたとき、(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下である」点に相当するとしている。
そして、本件発明1(訂正前の請求項2)の比表面積については、甲2は、グラフェンをキャパシタの電極として使用するために、官能基化してグラフェンの分散性を向上させることが記載され、甲3は、電極組成物について記載され、100m2/g超の酸化グラフェンを用いられることが記載されているから、このような高比表面積の酸化グラフェンに対して、甲2に記載の官能化を行うことは当業者であれば容易に想到すると主張している。
上記主張について検討すると、甲2発明Aにおいて、申立人の主張のとおり、甲2発明Aに係るグラフェンが、本件発明1で特定するグラフェンの水分量を充足するとしても、甲2発明Aは、どのような比表面積を有するグラフェンについて規定されたものかは明らかではない。
そうすると、甲2発明Aに係る分散液のグラフェンは、グラフェンの比表面積の値にかかわらず、甲2発明Aに規定されるTGAによる水分減少量、すなわちグラフェンに固着した水分量が常に同一のものが調製できるのかは、甲2の記載をみても明らかであるとはいえない。
したがって、甲3に記載された比表面積が100m2/g超のグラフェンに対して、甲2発明Aに係るグラフェンを得る処理と同様な処理をしたとしても、本件発明1で特定する、上記「カールフィッシャー法で測定した、130℃における水分率をW1、250℃における水分率をW2とし、グラフェンの固形分率をGとしたとき、(W2-W1)/Gの値が0.005以上0.05以下」であるグラフェンが得られるとはいえない。
よって、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明1に従属する本件発明4~6、8、12、13は、本件発明1の上記特定事項を含むものであるから、甲2に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(イ)取消理由2 イ
本件発明13について
本件訂正請求による訂正により、本件発明13が引用する本件発明1でグラフェンの比表面積が特定されたから、甲1発明A及び甲3に記載された技術事項について検討しても、「(ア)取消理由2 ア」の検討と同様であり、本件発明1を導出することはできない。
そして、本件発明1に従属する本件発明13は、本件発明1の特定事項を含むものであるから、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)取消理由3(特許法第36条第6項第1号)、 取消理由4(特許法第36条第6項第2号)について
ア 本件発明14、15については、「第6 1」に記載したとおりであるから、取消理由3及び取消理由4 アは解消した。
また、本件訂正請求による訂正により、本件発明1において「グラフェンの、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素比(O/C比)が0.08以上0.30以下である」ことが特定され、「グラフェン/有機溶媒分散液」に分散したグラフェンの「O/C比」が明らかにされたから、上記「第6 1」と同様の理由により、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明3~6、8、10~13は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、また、酸化グラフェンとグラフェンとの区別(酸化されていないグラフェンの存在)が明らかになったといえるから、本件発明の範囲は明確である。
さらに、請求項2、7、9は削除された。
したがって、請求項1~13に対する取消理由3及び取消理由4 ア も解消した。
イ 本件訂正請求による訂正により「メジアン径」が特定されていた請求項9は削除され、また、本件発明10~13は、請求項9を引用しないものとなったため、本件発明10~13において、「メジアン径」は特定事項ではなくなったから、取消理由4 イ は、解消した。
3 取消理由通知において採用しなかった申立理由について
本件訂正前の請求項1~15に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由2(特許法第29条第2項)
ア 訂正前の請求項2、3、9~11に係る発明は、甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
イ 訂正前の請求項14、15に係る発明は、甲1又は甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
上記ア、イについて検討する。
アについて
訂正前の請求項2、9は、本件訂正請求による訂正により削除された。
また、本件発明3、10、11は、本件発明1に従属し、本件発明1の特定事項を含むものであるから、甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イについて
申立人は、特許異議申立書において、以下のように主張している。
甲1には、水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを還元する還元工程、還元工程で得られた中間体分散液と有機溶媒とを超音波処理して混合する有機溶媒混合工程が開示され、さらに紙状物を高温で還流することで水分子を除去することから、中間体分散液から水分を除去する水分除去工程が開示されているところ、中間体分散液を高速で撹拌することは当業者が適宜行うことである。
また、甲2には「水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを還元する還元工程」が記載され、甲3に記載されているように、NMPはグラフェンを分散させる溶媒として一般的なものであるから、甲2に記載のグラフェンの水分散液とNMPとを混合することは当業者が適宜行うことであり、さらに、グラフェンを高速で撹拌することは一般的であり、NMPを添加した後に蒸留により水分を除去する程度のことも当業者が適宜行うことである。
したがって、訂正前の請求項14に係る発明は、当業者が容易に想到するものである。
そこで、上記の主張について検討すると、甲1発明Bは、酸化グラフェンを還元した後、有機溶媒とを混合し、超音波処理するものであるが、本件発明14のような強撹拌をするものでない。
また、甲2発明Bは、水溶媒中で酸化グラファイトを還元処理して、分散性の高いグラフェンを得るものであるといえるが、これらを有機溶媒に分散させるものではなく、水溶媒に有機溶媒を混合することを示唆するものでもない。 さらに、本件発明14のような強撹拌をするものでなく、その後に水分除去を行うものでもない。
そして、甲3には、グラフェンをNMPに添加し音波処理してグラフェン/NMP懸濁液を得ることが、甲4には、グラフェンの分散したNMP溶液を、さらに水又はNMPで希釈して超音波処理して分散液を得ることが記載されているにすぎない。
そうすると、甲1~甲4には、少なくとも本件発明11の特定事項である「還元工程で得られた中間体分散液と有機溶媒とを混合する有機溶媒混合工程;
有機溶媒を含む中間体分散液をせん断速度毎秒5000~毎秒50000で撹拌処理する強撹拌工程;
有機溶媒添加と吸引濾過を組み合わせる手法、または蒸留により中間体分散液から水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程;」
の一連の工程を行うことについて、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明14は、甲1又は甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本件発明14に従属する本件発明15は、本件発明14の上記特定事項を含むものであるから、同様に甲1又は甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、申立理由2は、理由がない。
4 申立人の意見について
申立人は、平成30年7月19日付けの意見書において、平成30年 5月30日付けの訂正請求により訂正された請求項1において、グラフェンのO/C比が「0.08以上0.30以下」と特定されているのに対して、実施例はO/C比が0.11~0.25の範囲のグラフェンの分散液のみであるから、例えば、本件明細書の記載からO/C比が0.30であっても、高い分散性と水の電気分解を引き起こさないという特性との両立を当業者が理解できず、また、本件明細書は、酸化グラフェンを還元してグラフェンを得ることが記載されているが、グラフェンの調製工程が異なると得られるグラフェンの特性が同一のものとはいえないことから、請求項1及びその従属項は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨の主張をしている。
しかし、本件発明の解決しようとする課題は、理想的な分散状態を発現するグラフェン・有機溶媒分散液を得ること、及びこれを用いて優れた放電性能を有するリチウムイオン電池用電極を提供することであるといえるところ(本件明細書 段落【0014】、【0017】)、本件発明1において、グラフェンの適切な結合水の量比、比表面積及びO/C比の数値範囲を規定したものである。
そして、発明の詳細な説明には、これらの数値範囲を規定した理由が説明されており(本件明細書 段落【0023】、【0050】、【0054】)、また、実施例の欄において、表面処理剤の有無、還元条件、撹拌条件、水分除去条件などを変更して実験した結果、本件発明1において規定した数値範囲を充足する実施例は、それらを充足しない比較例よりも電池性能が優れており、また、これにより分散液の分散性が優れていることが把握でき、本件発明の課題を解決できると認識できる。
そうすると、数値範囲の上限及び下限の具体例がないことをもって、本件発明1及び本件発明1に従属する本件発明3~6、8、10~13が発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、上記意見書において、平成30年5月30日付けの訂正請求により訂正された訂正特許請求の範囲の請求項14、15に係る発明は、グラフェンの所定のO/C比が特定されていないため、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない旨主張しているが、上記「第6 1」の判断のとおりであるから、当該主張も採用できない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由並びに特許異議申立ての理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1、3~6、8、10~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、3~6、8、10~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件請求項2、7、9に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、これらの特許に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701243