特許異議申立
2017-701141
成形材料
- 審判番号
- 2017-701141
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-005425外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年12月05日
- 審決日
- 2018年03月14日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6142539号発明「成形材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6142539号の請求項1~26に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6142539号(請求項の数26。以下,「本件特許」という。)は,平成25年1月16日(優先権主張:平成24年1月20日)を出願日とする特許出願(特願2013-5425号)に係るものであって,平成29年5月19日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は,平成29年6月7日である。)。
その後,平成29年12月5日に,本件特許の請求項1~26に係る特許に対して,特許異議申立人である山川 隆久(以下,「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~26に係る発明は,本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~26に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下,それぞれ「本件発明1」等という。また,本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
【請求項1】
カルボジイミド変性ポリオレフィン(a),ポリプロピレン系樹脂(b),強化繊維(c)およびテルペン系樹脂(d)を含有してなる成形材料であって,成形材料中のマトリックス樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量が,マトリックス樹脂成分100gに対し,0.0005~140mmolであり,かつ前記強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されており,さらに成分(c),(d)を有してなる複合体に,成分(a),(b)からなるポリプロピレン系樹脂成分が接着されており,(d)成分のSP値が6.5~9であり,かつ成分(s)のSP値よりも低いことを特徴とする成形材料。
【請求項2】
カルボジイミド変性ポリオレフィン(a),ポリプロピレン系樹脂(b),強化繊維(c)およびテルペン系樹脂(d)を含有してなる成形材料であって,(a)を0.01~50質量部,(b)を20~99質量部,(c)を1~80質量部,(d)を0.01~25質量部(ただし,(b)と(c)の合計を100質量部とする)含有し,強化繊維(c)が多官能化合物(s)によりサイジング処理されており,成分(c),(d)を有してなる複合体に,成分(a),(b)からなるポリプロピレン系樹脂成分が接着されており,(d)成分のSP値が6.5~9であり,かつ成分(s)のSP値よりも低いことを特徴とする成形材料。
【請求項3】
前記カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)が,該変性ポリオレフィン100グラムに対しカルボジイミド基の含有量が1~200mmolである,請求項2に記載の成形材料。
【請求項4】
前記カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)は,カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)と,カルボジイミド基含有化合物(B)を反応させて得られるものである,請求項1~3のいずれかに記載の成形材料。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)は,カルボジイミド基と反応する化合物をポリオレフィンに導入したものであって,ポリオレフィン系樹脂(A)が下記式(1)を満たす重合体である,請求項4に記載の成形材料。
0.1<Mn/{(100-M)×f/M}<6 (1)
(式中,
f :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の分子量(g/mol)
M :カルボジイミド基と反応する基を有する化合物の含有量(wt%)
Mn:カルボジイミド基と反応する基を有するポリオレフィン系樹脂(A)の数平均分子量
である。)
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂(A)が,無水マレイン酸基を有するポリオレフィン系樹脂である,請求項4または5に記載の成形材料。
【請求項7】
前記成分(d)が,α-ピネン,β-ピネン,ジペンテンおよびd-リモネンから選択される単量体単位を含む重合体である,請求項1~6のいずれかに記載の成形材料。
【請求項8】
前記成分(d)が水素添加反応された水素化テルペン樹脂である,請求項1~7のいずれかに記載の成形材料。
【請求項9】
前記成分(d)のガラス転移温度が30~100℃である,請求項1~8のいずれかに記載の成形材料。
【請求項10】
前記成分(d)の数平均分子量が500~5000である,請求項1~9のいずれかに記載の成形材料。
【請求項11】
前記成分(d)の190℃における溶融粘度が,0.05~1Pa・sである,請求項1~10のいずれかに記載の成形材料。
【請求項12】
前記成分(a)~(d)に加えて,成分(e)として,エラストマーを,成分(b)と成分(c)の合計100質量部に対して0.01~30質量部さらに含有する,請求項1~11いずれかに記載の成形材料。
【請求項13】
前記成分(e)がオレフィン系エラストマー,スチレン系エラストマー,ウレタン系エラストマー,エステル系エラストマーおよびアミド系エラストマーから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項12に記載の成形材料。
【請求項14】
前記成分(e)のSP値が6.5~9.5である,請求項12または13に記載の成形材料。
【請求項15】
前記成分(e)がエチレン-α-オレフィン共重合体である,請求項13または14に記載の成形材料。
【請求項16】
強化繊維(c)が炭素繊維である,請求項1~15のいずれかに記載の成形材料。
【請求項17】
前記多官能化合物(s)が,3官能以上の官能基を有する化合物である,請求項1~16のいずれかに記載の成形材料。
【請求項18】
前記多官能化合物(s)における官能基が,エポキシ基,カルボキシル基,アミノ基,ヒドロキシル基から選択される少なくとも1種である,請求項1~17のいずれかに記載の成形材料。
【請求項19】
前記多官能化合物(s)が,脂肪族エポキシ樹脂である,請求項1~18のいずれかに記載の成形材料。
【請求項20】
前記多官能化合物(s)が,ポリエチレンイミンである,請求項1~18のいずれかに記載の成形材料。
【請求項21】
前記炭素繊維のX線光電子分光法(ESCA)で測定される表面酸素濃度比(O/C)が0.05~0.5である,請求項16に記載の成形材料。
【請求項22】
前記成形材料において,成分(c)に対する空隙率が20%以下である,請求項1~21のいずれかに記載の成形材料。
【請求項23】
前記成分(c)が軸心方向にほぼ平行に配列されており,かつ該成分(c)の長さが成形材料の長さと同じである,請求項1~22のいずれかに記載の成形材料。
【請求項24】
前記複合体が芯構造であり,前記成分(a)および成分(b)からなるポリプロピレン系樹脂組成物が該複合体の周囲を被覆した芯鞘構造である,請求項1~23に記載の成形材料。
【請求項25】
前記成形材料が長繊維ペレットである,請求項1~24のいずれかに記載の成形材料。
【請求項26】
前記長繊維ペレットの長さが1~50mmである,請求項1~25のいずれかに記載の成形材料。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
本件発明1~26は,下記1及び2のとおりの取消理由があるから,本件特許の請求項1~26に係る特許は,特許法113条2号及び4号に該当し,取り消されるべきものである。証拠方法として,下記3の甲第1号証~甲第7号証(以下,「甲1」等という。)を提出する。
1 取消理由1(進歩性)
本件発明1及び2は,甲1に記載された発明並びに甲2,3及び7に記載された事項に基いて,又は,甲1に記載された発明並びに甲2~5及び7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
本件発明3~26は,甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
2 取消理由2(サポート要件)
本件発明1~16及び21~26は,特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に適合するものではない。
3 証拠方法
・甲1 国際公開第2009/069649号
・甲2 国際公開第2005/092972号
・甲3 特開2011-252113号公報
・甲4 特開2005-125581号公報
・甲5 日清紡ケミカル(株),「カルボジライト」,JETI,株式会社ジェティ,平成21年5月18日,Vol.57,No.5,p.148~151
・甲6 特開2006-77343号公報
・甲7 特開2010-248483号公報
第4 当審の判断
以下に述べるように,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~26に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
1 取消理由1(進歩性)
(1)甲1の記載(請求の範囲第8項)によれば,甲1には,以下の発明が記載されていると認められる。
「カルボジイミド変性ポリオレフィン系樹脂,ポリプロピレン系樹脂及び炭素繊維を含有してなるフィラー強化樹脂組成物であって,フィラー強化樹脂組成物中の樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含量が,該樹脂成分100gに対し,0.0001~140mmolである,フィラー強化樹脂組成物。」(以下,「甲1発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「フィラー強化樹脂組成物」は,甲1の記載(請求の範囲第9項)によれば,成形されて成形品とされるものであるから,本件発明1における「成形材料」に相当する。
甲1発明における「炭素繊維」は,本件発明1における「強化繊維(c)」に相当する。
そうすると,本件発明1と甲1発明とは,
「カルボジイミド変性ポリオレフィン(a),ポリプロピレン系樹脂(b),強化繊維(c)を含有してなる成形材料であって,成形材料中のマトリックス樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量が,マトリックス樹脂成分100gに対し,0.0005~140mmolである,成形材料。」
の点で一致し,以下の点で相違する。
・相違点1
本件発明1では,強化繊維(c)が,「多官能化合物(s)によりサイジング処理されて」いるのに対して,甲1発明では,サイジング処理について特定されていない点。
・相違点2
本件発明1では,成形材料が,さらに「テルペン系樹脂(d)」を含有しているのに対して,甲1発明では,テルペン系樹脂を含有していない点。
・相違点3
本件発明1では,「成分(c),(d)を有してなる複合体に,成分(a),(b)からなるポリプロピレン系樹脂成分が接着されており,(d)成分のSP値が6.5~9であり,かつ成分(s)のSP値よりも低い」のに対して,甲1発明では,このような特定がなされていない点。
イ 相違点1~3の検討
事案に鑑み,相違点1~3についてまとめて検討する。
本件発明1は,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a),ポリプロピレン系樹脂(b),強化繊維(c)及びテルペン系樹脂(d)を含有してなる成形材料に関するものである。
本件明細書の記載(【0008】,【0012】,【0014】,【0017】,【0024】,【0076】,【0093】,【0099】,【0101】,【0103】,実施例1~20,比較例1~6,表1~3)によれば,本件発明1は,多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)と,所定のSP値を有するテルペン系樹脂(d)とを有してなる複合体に,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)とポリプロピレン系樹脂(b)からなるポリプロピレン系樹脂成分を接着することによって(特に,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)と,多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)とを併用するとともに,テルペン系樹脂(d)を含有することによって),プロピレン系樹脂をマトリックスとする繊維強化熱可塑性樹脂の射出成形を行う際に,強化繊維の成形品中への分散が良好であり,かつ強化繊維とマトリックス樹脂との界面接着性が良好であり,曲げ特性や耐衝撃特性等の力学特性に優れ,なおかつ耐水劣化性に優れた成形品を製造できる成形材料を提供できるというものである。
以上によれば,相違点1~3は,技術的に相互に関連するものといえるので,これらを総合した検討が必要となるものである。
一方,甲1~5及び7のいずれにも,このような事項については記載されておらず,また,技術常識であるともいえない。
そうすると,甲1発明において,炭素繊維を,「多官能化合物(s)によりサイジング処理されて」いるものとし,また,フィラー強化樹脂組成物に対して,さらに,SP値が「6.5~9」であり,「多官能化合物(s)」のSP値よりも低い「テルペン系樹脂(d)」を含有させることとし,その上で,炭素繊維及び「テルペン系樹脂(d)」を有してなる「複合体」に,カルボジイミド変性ポリオレフィン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる「成分が接着され」たものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,上記のとおり,プロピレン系樹脂をマトリックスとする繊維強化熱可塑性樹脂の射出成形を行う際に,強化繊維の成形品中への分散が良好であり,かつ強化繊維とマトリックス樹脂との界面接着性が良好であり,曲げ特性や耐衝撃特性等の力学特性に優れ,なおかつ耐水劣化性に優れた成形品を製造できる成形材料を提供できるという,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
したがって,本件発明1は,甲1に記載された発明並びに甲2,3及び7に記載された事項に基いて,又は,甲1に記載された発明並びに甲2~5及び7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は,本件明細書には,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)と,多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)とを併用することが耐水劣化性を得るために重要であること(【0017】,【0076】),マトリックス樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量が耐水劣化性に影響すること(【0115】)が記載されているところ,甲1発明に係るフィラー強化樹脂組成物は,これらの要件を満たしているから,「耐水劣化性の向上」は,本件発明1と甲1発明との相違点に基づく有利な効果とはいえないと主張する。
しかしながら,甲1~5及び7のいずれにも,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)と,多官能化合物(s)によりサイジング処理された強化繊維(c)とを併用したり,マトリックス樹脂成分に含まれるカルボジイミド基の含有量を調整したりすることによって,耐水劣化性を向上しうることについては,記載されておらず,また,このようなことが技術常識であるともいえない以上,耐水劣化性に優れた成形品を製造できるとの効果は,当業者が予測することができない格別顕著な効果といえる。
よって,申立人の主張は理由がない。
(イ)申立人は,サイジング処理により,カルボジイミド変性ポリオレフィン系樹脂と炭素繊維との界面接着性が向上することから,例えば成形品内部におけるクラック発生が減少して耐水劣化性が向上することは,当業者であれば当然に予期しうると主張する。
しかしながら,甲1~5及び7のいずれにも,カルボジイミド変性ポリオレフィン系樹脂と炭素繊維との界面接着性が向上すれば,成形品内部におけるクラック発生が減少して,耐水劣化性が向上することについては,記載されておらず,また,このようなことが技術常識であるともいえない以上,耐水劣化性に優れた成形品を製造できるとの効果は,当業者が予測することができない格別顕著な効果といえる。
よって,申立人の主張は理由がない。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明とを対比すると,上記(2)アと同様,両者は,少なくとも,
「カルボジイミド変性ポリオレフィン(a),ポリプロピレン系樹脂(b),強化繊維(c)を含有してなる成形材料。」
の点で一致し,少なくとも,以下の点で相違する。
・相違点4
本件発明2では,強化繊維(c)が,「多官能化合物(s)によりサイジング処理されて」いるのに対して,甲1発明では,サイジング処理について特定されていない点。
・相違点5
本件発明2では,成形材料が,さらに「テルペン系樹脂(d)」を含有しているのに対して,甲1発明では,テルペン系樹脂を含有していない点。
・相違点6
本件発明2では,「成分(c),(d)を有してなる複合体に,成分(a),(b)からなるポリプロピレン系樹脂成分が接着されており,(d)成分のSP値が6.5~9であり,かつ成分(s)のSP値よりも低い」のに対して,甲1発明では,このような特定がなされていない点。
イ 相違点4~6の検討
相違点4~6は,上記(2)イで検討した相違点1~3と同様のものであるから,相違点1~3と同様の理由により,甲1発明において,炭素繊維を,「多官能化合物(s)によりサイジング処理されて」いるものとし,また,フィラー強化樹脂組成物に対して,さらに,SP値が「6.5~9」であり,「多官能化合物(s)」のSP値よりも低い「テルペン系樹脂(d)」を含有させることとし,その上で,炭素繊維及び「テルペン系樹脂(d)」を有してなる「複合体」に,カルボジイミド変性ポリオレフィン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂からなる「成分が接着され」たものとすることが,当業者が容易に想到することができたということはできない。そして,本件発明1は,上記(2)イのとおり,当業者が予測することができない格別顕著な効果を奏するものである。
したがって,本件発明2は,甲1に記載された発明並びに甲2,3及び7に記載された事項に基いて,又は,甲1に記載された発明並びに甲2~5及び7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)本件発明3~26について
本件発明3~26は,本件発明1及び2を直接的又は間接的に引用するものであるが,上記(2)及び(3)で述べたとおり,本件発明1及び2は,甲1に記載された発明並びに甲2,3及び7に記載された事項に基いて,又は,甲1に記載された発明並びに甲2~5及び7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。そして,甲6には,サイジング剤として,ポリエチレンイミン等が例示されているにすぎないから,本件発明3~26は,甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)まとめ
以上のとおり,本件発明1及び2は,いずれも,甲1に記載された発明並びに甲2,3及び7に記載された事項に基いて,又は,甲1に記載された発明並びに甲2~5及び7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず,また,本件発明3~26は,いずれも,甲1に記載された発明及び甲2~7に記載された事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから,申立人が主張する取消理由1は理由がない。
したがって,取消理由1によっては,本件特許の請求項1~26に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件)
申立人は,本件発明1及び2の効果を奏するためには,サイジング処理により強化繊維(c)に導入される多官能化合物の官能基が,カルボジイミド変性ポリオレフィン(a)のカルボジイミド基と相互作用ないし反応することが必要であると考えられるところ(甲3及び4),本件発明1及び2では,「多官能化合物(s)」は何ら特定されていないから,カルボジイミド基と相互作用ないし反応しない官能基を含みうるものであり,このような場合においても本件発明1及び2の課題を解決できるのか,本件明細書には具体的に開示されていないから,本件発明1及び2は,本件明細書の記載から拡張ないし一般化できる範囲を超えていると主張する。また,本件発明3~16及び21~26についても同様に主張する。
しかしながら,申立人の主張は,本件発明1及び2の効果を奏するためには,多官能化合物の官能基がカルボジイミド基と相互作用ないし反応することが必要であることを前提とするものであるが,甲3及び4によっても,そのようなことが必要であるということはできないから,申立人の主張は,その前提において失当である。
そして,本件発明1及び2の課題は,「プロピレン系樹脂をマトリックスとする繊維強化熱可塑性樹脂の射出成形を行う際に強化繊維の成形品中への分散が良好であり,かつ繊維とマトリックス樹脂との接着性に優れ,力学特性に優れた成形品を製造でき,なおかつ耐水劣化性に優れた成形品を製造できる成形材料を提供する」(【0012】)ことであると認められるところ,本件明細書の記載(【0008】,【0012】,【0014】,【0017】,【0024】,【0076】,【0093】,【0099】,【0101】,【0103】,実施例1~20,比較例1~6,表1~3)を総合すれば,本件発明1及び2は,本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであって,当業者が出願時の技術常識に照らして発明の詳細な説明の記載により本件発明1及び2の課題を解決できると認識できる範囲のものということができる。
したがって,本件発明1及び2は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。また,本件発明1及び2を直接的又は間接的に引用する本件発明3~16及び21~26についても同様であり,本件発明3~16及び21~26は,特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するものである。
よって,申立人の主張は理由がない。
したがって,取消理由2によっては,本件特許の請求項1~16及び21~26に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり,特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては,本件特許の請求項1~26に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許の請求項1~26に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2017-701141