特許異議申立
2017-700972
ペプチドの製造方法
- 審判番号
- 2017-700972
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-518160外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月12日
- 審決日
- 2018年01月17日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (C07K) / P1651.536-Y (C07K) / P1651.537-Y (C07K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6112011号発明「ペプチドの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6112011号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6112011号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成24年 5月31日に特許出願され、平成29年 3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人増山 美紀により特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
特許第6112011号の請求項1~15の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定されるとおりのものである。
3.申立理由の概要
特許異議申立人増山 美紀は、主たる証拠として特開2008-212815号公報(以下「甲1号証」という。)、国際公開第2007/034812号(以下「甲2号証」という。)、Gegen Tana et al、Chem. Commun.、2010、Vol. 46、p. 8219-8221, Supporting information(以下「甲3号証」という。)及び従たる証拠としてIrene Coin et al、Organic Letters、2008、Vol. 10, No. 17、p. 3857-3860(以下「甲4号証」という。)、John D. Wade et al、Peptide Research、1991、Vol. 4, No. 3、p. 194-199(以下「甲5号証」という。)、特表平6-509821号公報(以下「甲6号証」という。)、国際公開第2007/099656号(以下「甲7号証」という。)、特開2000-44493号公報(以下「甲8号証」という。)を提出し、請求項1~15に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~15に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
また、特許異議申立人増山 美紀は、請求項1~15に係る特許は特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、請求項1~15に係る特許を取り消すべきものである旨も主張している。
4.刊行物の記載
(1)甲1号証には、「(3,4,5-トリオクタデシルオキシフェニル)メタン-1-オールに由来するアンカー基によりC末端のカルボキシル基が保護されたN-Fmoc C-保護アミノ酸のFmoc基を、テトラヒドロフラン(THF)中で、ジアザビシクロウンデセン(DBU)により除去して、C-保護アミノ酸を得た後に、HClを添加して中和し、中和後の反応液に、アセトニトリルを加えて、C-保護アミノ酸を晶析させ、反応液をろ過し、THFに溶解し、溶解液に、N-Fmocアミノ酸、縮合剤(HBTU)、及び縮合促進剤(HOBt)を添加して、C-保護アミノ酸のN末端にN-Fmocアミノ酸を縮合させて、N-Fmoc C-保護ペプチドを得る、ペプチド合成方法。」の発明が記載されている。
(2)甲2号証には、「2,4-ビスードコシロキシペンジルアルコールに由来するアンカー基によりC末端のカルボキシル基が保護されたN-Fmoc C-保護アミノ酸のFmoc基を、ジクロロメタン中で、DBUにより除去して、C-保護アミノ酸を得た後に、ギ酸を添加して中和し、中和後の反応液に、アセトニトリルを添加し、C-保護アミノ酸を晶析させ、ろ過し、ジクロロメタンに溶解し、溶解液に、N-Fmocアミノ酸、縮合剤(HBTU)、及び縮合促進剤(HOBt)を添加して、C-保護アミノ酸のN末端にN-Fmocアミノ酸を縮合させて、N-Fmoc C-保護ペプチドを得る、ペプチド合成方法」の発明が記載されている。
(3)甲3号証には、「疎水性タグ3(3,5-ビスードコシロキシベンジルアルコール)に由来するアンカー基によりC末端のカルボキシル基が保護されたN-Fmoc C-保護アミノ酸のFmoc基を、ジクロロメタン中で、DBU及びピペリジンにより除去して、C-保護アミノ酸を得た後に、HClを添加して中和し、中和後の反応液に、アセトニトリルを添加し、C-保護アミノ酸を沈殿物として回収し、THFに溶解し、溶解液に、N-Fmocアミノ酸(またはN-Fmocペプチド)、縮合剤(HBTU)、及び縮合促進剤(HOBt)を添加して、C-保護アミノ酸のN末端にN-Fmocアミノ酸を縮合させて、N-Fmoc C-保護ペプチドを得る、ペプチド合成方法」の発明が記載されている。
(4)甲4号証には、「ピペリジンによる脱保護は、DKP形成より遅いようであり、標的ペプチドの全てが消費されてしまう。よって、DKP形成を減らすためには、より速い脱保護が有利である。 DBUは、Fmocを非常に速やかに除去できる」という技術的事項が記載されている。
(5)甲5号証には、「連続フローフルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)-ポリアミド固相合成は、ペプチドの簡易で穏やかな調製のための技術として、現在確立されたものである。この手順では、Nα-FMOC基の除去のために、従来、ジメチルホルムアミド(DMF)中でピペリジンを用いてきた。FMOC-ポリアミド法を用いたO-ホスホチロシンペプチド合成のための新たな手順を開発中に、用いた誘導体、FMOC-Tyr(PO3R2)-OH(R=メチル又はベンジル)については、迅速なフォスフェートモノ-脱アルキル化が、強い求核性のピペリジンによって誘導されることが判った。しかしながら、この副反応はDBUを用いることにより最少化できた。」という技術的事項が記載されている。
(6)甲6号証には、「Fmocの除去のために用いた塩基が次の工程(縮合工程)で不都合な作用を生じるので、それを除去するための塩基の中和工程と、(酸性)水溶液で除去可能な(塩基)不純物の除去を、酸性水溶液を用いることにより行う」という旨の技術的事項が記載されている。
(7)甲7号証には、甲7号証に係る発明において「残存する酸成分以外の不純物は、ほとんどの場合、次サイクルのA工程(縮合反応)に悪影響を及ぼさないことから、本工程での精製は必ずしも必要ではない。」という技術的事項が記載されている。
(8)甲8号証には、「C端が保護されたFmoc-Alaに、4N塩化水素酢酸エチル溶液を加えて、窒素雰囲気下、室温で一晩拡販すると、保護基が選択的かつ完全に脱保護された。」という技術的事項が記載されている。
5.判断
(1)特許法第29条第2項について
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と甲1号証~甲3号証のいずれかに記載された発明とを対比すると、請求項1に係る発明は、「中和後の反応液にN-Fmocアミノ酸またはN-Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加」するのに対して、当該甲1号証~甲3号証のいずれの発明も、「中和後の反応液にアセトニトリルを添加してC-保護アミノ酸を晶析(沈殿)させて回収し、THFに溶解させた溶解液にN-Fmocアミノ酸またはN-Fmocペプチド、縮合剤および縮合促進剤を添加」する点で相違する。
そして、甲1号証~甲3号証には、晶析や沈殿が任意である旨について記載も示唆もされていない。甲4号証~甲6号証及び甲8号証についても同様である。
甲7号証には、甲7号証の発明において不純物の除去が必須ではない旨は記載されているが、そもそも甲1号証~甲3号証にはいずれも晶析や沈殿が任意である旨について記載も示唆もされていないから、甲7号証を参照しても、甲1号証~甲3号証に記載された発明において晶析や沈殿を省略することが当業者であれば容易に想到しえたこととはいえない。
特許異議申立人増山 美紀は、ペプチドの合成反応工程において、不純物の除去を目的として、不純物の除去のための操作を各工程の間に任意に追加することは、当業者が行う常套手段に過ぎず設計的事項に過ぎないから、容易に発明できたものであると主張している。しかしながら、ある工程を任意に追加することと当該工程を省略することとは、行為が異なる以上同列に動機付けを論ずることはできず、また既に指摘したように甲1号証~甲3号証に記載の各発明において晶析や沈殿が不要である旨は記載も示唆もされていないから、かかる主張は理由がない。
また、甲3号証に記載された発明では、DBUの添加と同時に求核性のある有機塩基であるピペリジンも添加する点で請求項1に係る発明と相違するが、この点を検討するまでもなく、甲3号証に記載された発明及び甲4号証~甲8号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
したがって、請求項1に係る発明は、上記甲1号証~甲3号証のいずれかに記載された発明及び甲4号証~甲8号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
イ 請求項2~15に係る発明について
請求項2~15に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲1号証~甲3号証のいずれかに記載された発明及び甲4号証~甲8号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、請求項1~15に係る発明は、甲1号証~甲3号証のいずれかに記載された発明及び甲4号証~甲8号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)特許法第36条第4項第1号について
特許異議申立書の4-4-3.アのアンカー、求核性のない有機塩基、酸については、実施例に記載の化合物のほか、それぞれ、本件特許明細書の【0051】、【0088】、【0092】に利用可能な化合物の例が記載されている。そして、アンカー、求核性のない有機塩基、酸について記載されている各化合物では本願発明が実施できないとする合理的な根拠が見出せない。この点、特許異議申立人増山 美紀の主張は、要するに実施例の数が少ないことを指摘するのみであって、理由がない。
(3)特許法第36条第6項第1号について
特許異議申立書の4-4-3.イのアンカー、求核性のない有機塩基、酸については、実施例に記載の化合物のほか、それぞれ、本件特許明細書の【0051】、【0088】、【0092】に利用可能な化合物の例が記載されている。そして、アンカー、求核性のない有機塩基、酸について記載されている各化合物では、本件特許明細書の【0007】-【0009】に記載の課題を解決できないとする合理的な根拠が見出せない。本件特許に包含されるアンカー、求核性のない有機塩基、酸であって、本件特許明細書の【0051】、【0088】、【0092】や実施例に記載が無い化合物についても同様である。この点、特許異議申立人増山 美紀の主張は、要するに実施例の数が少ないことを指摘するのみであって、理由がない。
特許異議申立書の4-4-3.ウについては、本件特許の各請求項の記載は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された、発明の課題(【0007】-【0009】)を解決するための手段(【0010】)が反映されていないとはいえないから、特許異議申立人増山 美紀の主張は理由がない。
(4)特許法第36条第6項第2号について
本件特許の各請求項の記載及び本件特許明細書の「本発明者は、アミノ酸またはペプチドのN末端アミノ基の一時保護基として9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(以下、Fmoc基ともいう。)を有し、かつC末端カルボキシ基の保護基としてアンカーに由来するアンカー基を用いたペプチド鎖伸長工程において、Fmoc基を求核性のない有機塩基で除去後、酸で中和するだけで、一時保護基の脱保護工程から濃縮、沈殿、濾過、洗浄および乾燥という一連の単離・精製操作を省略して、続くN-Fmocアミノ酸またはN-Fmocペプチドとの縮合反応まで連続してワンポットで行うことができることを見出した。」(【0010】)との記載を参照する限りにおいて、本件特許の各請求項に係る発明が不明確とまではいえないから、特許異議申立人増山 美紀の主張は理由がない。
6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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