特許異議申立
2017-700867
誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム
- 審判番号
- 2017-700867
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-090819
- 登録番号
- 特許第6114435号(P6114435)
- 請求日
- 2017年09月13日
- 審決日
- 2018年04月18日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】鈴木工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 サトー国際特許事務所
- 【異議申立人】トクデン 株式会社
- 【異議申立人代理人】西村 竜平
- 【異議申立人代理人】齊藤 真大
- 【異議申立人代理人】上村 喜永
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 槙原 進
- 審判官 井上 哲男
- 分類
- P1651.113-YAA(H05B) / P1651.121-YAA(H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第5項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6114435号発明「誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6114435号の明細書、特許請求の範囲及び図面を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲及び図面のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
特許第6114435号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6114435号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年4月28日に特許出願され、平成29年3月24日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成29年9月13日に特許異議申立人 トクデン株式会社(以下、単に「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、平成29年11月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月26日に特許権者 鈴木工業株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、平成30年1月31日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知がされ、申立人より平成30年3月5日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面を、平成30年1月26日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書、訂正特許請求の範囲及び訂正図面のとおり、訂正後の請求項1ないし6について訂正することを求めるものであって、以下の(1)ないし(8)のとおりである。なお、下線は、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口」とあるのを、「前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口」に訂正する(以下、「訂正事項1」という。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口」とあるのを、「前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口」に訂正する(以下、「訂正事項2」という。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、
「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、
前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、
請求項1に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、
「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、
前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、
誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項3」という。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、
前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、
請求項1に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、
「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、
前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、
誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項4」という。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、
請求項1から3のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニット。」とあるのを、
「加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、
誘導加熱コイルユニット。」に訂正する(以下、「訂正事項5」という。)。
(6)訂正事項6
願書に添付した明細書の【0008】を以下のとおり訂正する(以下、「訂正事項6」という。)。
「 実施形態による誘導加熱コイルユニットは、加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルを収容するケースと、を備える。前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有している。」
(7)訂正事項7
願書に添付した明細書の【発明の名称】を以下のとおり訂正する(以下、「訂正事項7」という。)。
「【発明の名称】 誘導加熱コイルユニット、及び誘導加熱システム」
(8)訂正事項8
願書に添付した図面の図1において、当初記載の符号「162」及び「161」を、それぞれ「161」及び「162」に訂正する(以下、「訂正事項8」という。)。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「供給口」について、「供給側のエア配管が接続される」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「供給口」について、概念的により下位の「供給側のエア配管が接続される供給口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「排出口」について、「排出側のエア配管が接続される」ことを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、訂正前の請求項1に記載された「排出口」について、概念的により下位の「排出側のエア配管が接続される排出口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項2の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項4の記載が訂正前の請求項1ないし3のいずれか一項の記載を引用する記載であったものを、請求項2又は3の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であり、実質的に多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少する訂正といえる。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、「特許請求の範囲の減縮」、及び同項ただし書第4号に掲げる、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、実質的に多数項を引用している請求項の引用請求項数を減少する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、訂正事項1ないし5に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るために行う訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載され、また、図1及び2にも同様の事項が記載されている。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、訂正前の明細書の段落【0008】に記載された「供給口」及び「排出口」について、それぞれ概念的により下位の「供給側のエア配管が接続される供給口」及び「排出側のエア配管が接続される排出口」にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的について
訂正事項7は、特許明細書等の明細書における発明の名称を、特許請求の範囲における請求項1ないし6の記載と整合させるために行う訂正である。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること
特許明細書等には、特許請求の範囲における請求項1ないし5において、「誘導加熱コイルユニット」が記載されているとともに、請求項6において、「誘導加熱システム」が記載されている。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項7は、発明の名称を、特許請求の範囲における請求項1ないし6の記載と整合させるためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的について
訂正事項8は、図1における符号「161」、「162」の誤りを正しい記載に訂正するものである。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる、「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
イ 願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること
当初明細書等には、明細書の段落【0031】において、「供給口151と排出口152とには、供給側のエア配管161と排出側のエア配管162とが接続されている。」と記載されており、また、図2において、符号「151」が付された箇所に符号「161」が付された部材が接続された構成が記載されていると共に、符号「152」が付された箇所に符号「162」が付された部材が接続された構成が記載されている。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項8は、単に図面における符号の誤記を訂正するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
3 一群の請求項について
(1)訂正事項1ないし5の請求について
訂正事項1ないし5の請求は、請求項〔1-6〕という一群の請求項について請求されたものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項6ないし8について
明細書についての訂正事項6及び7並びに図面についての訂正事項8の請求は、請求項〔1-6〕という一群の請求項に関係するものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。
4 小括
以上のとおり、訂正事項1ないし8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、また、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項及び第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するから、結論のとおり訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれ特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するためのものであって供給側のエア配管が接続される供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するためのものであって排出側のエア配管が接続される排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでいる、
誘導加熱コイルユニット。
【請求項2】
加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、
前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている、
誘導加熱コイルユニット。
【請求項3】
加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、
前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている、
誘導加熱コイルユニット。
【請求項4】
加熱対象物を誘導加熱により加熱する加熱コイルと、
前記加熱コイルを収容するケースと、を備え、
前記ケースは、前記ケースの内部と外部とを連通し前記ケースの外部から供給される冷却用気体を前記ケース内に供給するための供給口と、前記ケースの内部と外部とを連通し前記供給口から前記ケースの内に供給された前記冷却用気体を前記ケースの外部へ排出するための排出口と、前記ケースと前記加熱コイルとの間に形成され前記供給口と前記排出口とを繋ぐ冷却経路と、を有し、
前記冷却経路は、前記加熱コイルにおける前記加熱対象物側の面と前記ケースとの間に形成され前記加熱コイルの表面及び前記ケースの内面を冷却するための第1冷却経路と、前記加熱コイルの外周部と前記ケースとの間にあって前記加熱コイルの外周部に沿って形成され前記加熱コイルの外周部を冷却するための第2冷却経路と、を含んでおり、
前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している、
誘導加熱コイルユニット。
【請求項5】
前記供給口と前記排出口とをそれぞれ2つ以上ずつ備えている、
請求項1から4のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の誘導加熱コイルユニットと、
前記加熱コイルの温度を検出可能な温度検出手段と、
前記冷却経路に冷却用気体を供給可能な冷却用気体供給手段と、
前記温度検出手段の検出結果が予め設定した閾値以上である場合に前記冷却用気体供給手段により前記冷却経路に冷却用気体を供給し、前記温度検出手段の検出結果が前記閾値未満である場合に前記冷却用気体供給手段による前記冷却用気体の供給を停止する冷却制御を行うことが可能な制御装置と、
を備える誘導加熱システム。」(なお、下線は訂正請求書に添付した訂正した特許請求の範囲において、特許権者が訂正箇所を示すために付したものである。)。
2 取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成29年11月28日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要は以下のとおりである。
(1)本件特許の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)本件特許の請求項1及び5に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1及び5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)本件特許の請求項6に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1号証又は甲第2号証、並びに甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
<刊行物一覧>
甲第1号証:特開2009-272295号公報
甲第2号証:特開2004-273224号公報
甲第3号証:特開2015-73390号公報
甲第4号証:特開2001-307862号公報
3 甲各号証について
(1)甲第1号証について
甲第1号証には、特に、【請求項1】及び【請求項4】に記載された事項、明細書の段落【0010】及び【0023】ないし【0029】に記載された事項並びに図1ないし4に示された内容によれば、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「ロール本体3を誘導加熱により加熱する高周波コイル20と、
前記高周波コイル20を収容する、正面板13、背面板15、左右側板12,14、天板10、底板16からなる略直方体形状のケースと、
冷却エアー用パイプ30と、を備え、
前記高周波コイル20は、前記正面板13、前記背面板15、前記左右側板12,14、底板16とは接しないように、天板10に固定され、
前記冷却エアー用パイプ30は、前記天板10よりも下方で、かつ、高周波コイル20の長手方向に沿うように前記ケース内を挿通し、その一端が左側板12に固定され、その長手方向の下部に冷却エアーを放出するための穴30aを複数有し、
複数の前記穴30aから放出された冷却エアーは、前記高周波コイル20と前記正面板13との空間、前記高周波コイル20と前記底板16との空間、前記高周波コイル20と前記背面板15との空間を順に流れて、前記天板10側から前記ケース外に排出される、
誘導加熱装置。」
(2)甲第2号証について
甲第2号証には、特に、明細書の段落【0010】ないし【0012】、【0017】ないし【0019】、【0032】ないし【0041】、【0049】ないし【0052】、【0054】ないし【0060】、【0081】及び【0082】に記載された事項並びに図1ないし5に示された内容によれば、次の事項からなる発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
「鍋を誘導加熱により加熱する誘導加熱コイル2aと、
前記誘導加熱コイル2aを収容する、上面にトッププレート1が設けられた本体6と、を備え、
前記本体6は、
前記本体6の内部と外気である外部とを連通し前記本体6の外部から供給される冷却風を前記本体6内に供給するための吸気口9と、
前記本体6の内部と外部とを連通し前記吸気口9から前記本体6の内に供給された前記冷却風を前記本体6の外部へ排気するための排気口11と、
前記本体6と誘導加熱コイル2aとの間に形成され前記供給口9と前記排気口11とを繋ぐ冷却風路と、を有し
前記冷却風路は、前記誘導加熱コイル2aにおける前記鍋側の面と前記トッププレート1との間に形成された冷却隙間25を含んでいる、
誘導加熱調理器。」
(3)甲第3号証について
甲第3号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「外側冷媒流入口32及び外側冷媒流出口34は、平面視において複数の固定子コイル13が保持されたコイル部14の中心部を頂点とし、前記頂点と前記外側冷媒流入口32とを結ぶ線と前記頂点と前記外側冷媒流出口34とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、
外側冷媒流路30中において前記鋭角側の領域に設けられ前記外側冷媒流入口32と前記外側冷媒流出口34との間を仕切るパーティション部23を備えている、
モーターの固定子11。」
(4)甲第4号証について
甲第4号証には、次の事項からなる発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「誘導コイル3の温度を検出可能な温度検知素子22と、
通風路20に冷却空気を供給可能な冷却ファン21と、
前記温度検知素子22の検出結果が予め設定した第1規定温度以上である場合に前記冷却ファン21により前記通風路20に冷却空気を供給し、前記温度検知素子22の検出結果が前記第1規定温度未満に設定された第2規定温度以下である場合に前記冷却ファン21による前記冷却空気の供給を停止する冷却制御を行うことが可能な温調回路23とを備える
加熱装置。」
4 取消理由通知に記載した取消理由について
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点A1
本件発明1は、「ケース」が、「供給側のエア配管が接続される供給口」と、「排出側のエア配管が接続される排出口」とを有しているのに対して、甲1発明は、そのような構成を備えているか不明である点(以下、「相違点A1」という。)。
(イ)判断
上記相違点A1について検討する。
甲1発明において、ケースとは別に冷却エアー用パイプ30を備えており、また、冷却エアーは天板10側から高周波コイル20の長手方向に幅広く開口した部分からケース外に排出されることを考慮すると、ケースが、供給口及び排出口のそれぞれに冷却エアーの配管が接続できるように構成されていると認めることはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点A1に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0057】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット1は、冷却用供給気体を供給するための専用の送風機等を必要としない。したがって、誘導加熱コイルユニット1単体及び誘導加熱コイルユニット1が組み込まれる装置を、小型化することができる。」という所期の効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点A1は実質的な相違点であり、本件発明は、甲1発明と同一ではなく、また、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、上記相違点A1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2ないし4号証のいずれにも記載されていないから、本件発明1は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
イ 本件発明1と甲2発明との対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点B1
本件発明1は、「ケース」が、「供給側のエア配管が接続される供給口」と、「排出側のエア配管が接続される排出口」とを有しているのに対して、甲2発明は、「本体6」が「吸気口9」と「排気口11」とを有するものの、「吸気口9」と「排気口11」のそれぞれにエア配管が接続されているか不明である点(以下、「相違点B1」という。)。
(イ)判断
上記相違点B1について検討する。
甲2発明の誘導加熱調理器は、甲第2号証の図1から理解できるように、家庭の厨房等に設置されるものを想定したものであり、吸気口9と排気口11にエア配管が接続できるものと認めることはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点B1に係る本件発明1の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0057】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット1は、冷却用供給気体を供給するための専用の送風機等を必要としない。したがって、誘導加熱コイルユニット1単体及び誘導加熱コイルユニット1が組み込まれる装置を、小型化することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点B1は実質的な相違点であり、本件発明は、甲2発明と同一ではなく、また、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
さらに、上記相違点B1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第1、3及び4号証のいずれにも記載されていないから、本件発明1は、甲2発明並びに甲第1、3及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献1(特開平11-106295号公報)や先行文献2(特開平10-253260号公報)を例示して、「エア配管が接続されるように供給口及び排出口を構成することは、技術常識ないし周知慣用技術であり、そこに何ら技術的困難性や想到困難性は認められない。」旨の主張をする。
しかしながら、先行文献1には、チャンバー14に混合気体供給管12及び混合気体排出管13を設ける技術が記載されているものの、チャンバー14内に供給及び排出されるアルゴンと酸素との混合気体は、単結晶を製造すべく、チャンバー14内に酸素含有雰囲気を形成するために用いられるものであって、チャンバー14内の冷却等の他の用途に用いることは意図していないから、先行文献1に記載された技術からエアによる冷却について上記技術常識ないし周知慣用技術を認めることはできない。
また、先行技術2には、図1においてケースから短尺筒状のものを突出させる技術が記載されているとしても、ケース内の底コイル15を冷却するにあたり、冷却水をケース内に供給及び排出するためのものであって、エア配管に関するものではないから、先行文献2に記載された技術からエアによる冷却について技術常識ないし周知慣用技術を認めることはできない。
そうすると、申立人の上記主張は採用することができない。
エ まとめ
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないものとすることはできず、また、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
(2)本件発明5について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項5において、請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているから、本件発明5は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明5は、上記(1)の本件発明1の検討及び後記5(1)ないし(3)の本件発明2ないし4の検討を踏まえると、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
(3)本件発明6について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項6において、請求項1ないし4のいずれか一項を引用しているから、本件発明6は、本件発明1ないし4のいずれかの発明特定事項を全て含むものである。
そうすると、本件発明6は、上記(1)の本件発明1の検討及び後記5(1)ないし(3)の本件発明2ないし4の検討を踏まえると、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明との対比・判断
本件発明2と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点A2
本件発明2は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A2」という。)。
(イ)判断
上記相違点A2について検討する。
本件発明2は、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0062】ないし【0064】に記載されているような、「供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。 ・・・ したがって、供給口151から排出口152へ至る経路の距離つまり冷気用気体の流れる距離を極力長く確保することができる。すなわち、これによれば、冷却用気体との接触面積を極力大きく確保するとともに冷却用気体との接触時間を極力長く確保することができる。したがって、ケース30内に供給された冷却用気体の多くを加熱コイル20の冷却に寄与させることができ、その結果、冷却用気体を無駄にすること無く効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
また、甲3発明は、モータの固定子に関するものであり、誘導加熱装置に係る甲1発明とは、コイルの冷却においては共通するものの、技術分野が異なり、また、前提となる冷却用の流体が流れる経路の構成が異なるのであるから、甲1発明に甲3発明を適用し、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明2は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点A2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲第2及び4号証にも記載されていないから、本件発明2は、甲1発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲1発明、甲3発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2と甲2発明との対比・判断
本件発明2と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点B2
本件発明2は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を頂点とし前記頂点と前記供給口とを結ぶ線と前記頂点と前記排出口とを結ぶ線との成す角度が鋭角となる位置に設けられており、前記第2冷却経路中において前記鋭角側の領域に設けられ前記供給口と前記排出口との間を仕切る仕切り部を更に備えている」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B2」という。)。
(イ)判断
上記相違点B2について検討する。
本件発明2は、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0062】ないし【0064】に記載されているような、「供給口151から第2冷却経路342内に入った冷却用気体が鋭角α側の領域つまり最短経路を通って排出口152側へ至るいわゆるショートサーキットを抑制することができる。 ・・・ したがって、供給口151から排出口152へ至る経路の距離つまり冷気用気体の流れる距離を極力長く確保することができる。すなわち、これによれば、冷却用気体との接触面積を極力大きく確保するとともに冷却用気体との接触時間を極力長く確保することができる。したがって、ケース30内に供給された冷却用気体の多くを加熱コイル20の冷却に寄与させることができ、その結果、冷却用気体を無駄にすること無く効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
また、甲3発明は、モータの固定子に関するものであり、誘導加熱調理器に係る甲2発明とは、コイルの冷却をする点においては共通するものの、技術分野が異なり、また、前提となる冷却用の流体が流れる経路の構成が異なるのであるから、甲2発明に甲3発明を適用し、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、本件発明2は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点B2に係る本件発明2の発明特定事項は、甲第1及び4号証にも記載されていないから、本件発明2は、甲2発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲2発明、甲3発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献3(特開2007-187411号公報)を例示して、上記相違点A2又はB2に係る本件発明2の発明特定事項が技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。
しかしながら、本件発明2は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献3に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められ、しかも、先行文献3のみからその記載内容を技術常識ないし周知慣用技術と認めることはできないから、申立人の上記主張を採用することはできない。
エ まとめ
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
(2)本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明との対比・判断
本件発明3と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点A3
本件発明3は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、
前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A3」という。)。
(イ)判断
上記相違点A3について検討する。
本件発明3は、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0090】に記載されているような、「本実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、略半円の円弧状に形成された2つの第2冷却経路342Bを備えている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Bの距離すなわち供給口151から排出口152に至る経路の距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
したがって、本件発明3は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点A3に係る本件発明3の発明特定事項は、甲第2ないし4号証にも記載されていないから、本件発明3は、甲1発明及び甲第2ないし4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明3と甲2発明との対比・判断
本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点B3
本件発明3は、「ケース」について、「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられており、
前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B3」という。)。
(イ)判断
上記相違点B3について検討する。
本件発明3は、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0090】に記載されているような、「本実施形態の誘導加熱コイルユニット3は、略半円の円弧状に形成された2つの第2冷却経路342Bを備えている。したがって、第1実施形態のように第2冷却経路342を半円の円弧を超える長さの円弧状に形成した場合に比べて、1つの第2冷却経路342Bの距離すなわち供給口151から排出口152に至る経路の距離を短くすることができる。これにより、排出口152側付近おける冷却用気体の温度上昇を極力抑制し、その結果、加熱コイル20の冷却能力が低下を抑制して効率良く加熱コイル20を冷却することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
したがって、本件発明3は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点B3に係る本件発明3の発明特定事項は、甲第1、3及び4号証にも記載されていないから、本件発明3は、甲2発明並びに甲第1、3及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献3(特開2007-187411号公報)及び先行文献4(特開2009-272312号公報)を例示して、上記相違点A3又はB3に係る本件発明3の発明特定事項について、「先行文献4の図1には、 ・・・ 「前記供給口及び前記排出口は、平面視において前記加熱コイルの中心部を挟んで直線上に設けられて」いる構成が明らかに記載されており、また、 ・・・ 「前記第2冷却経路中における前記供給口及び前記排出口に対応する位置に前記第2冷却経路を流れる前記冷却用気体を分岐又は合流させるように整流する整流部を更に備えている」という構成は、前記先行文献3に記載されている(先行文献3の仕切り板18が整流部に相当する。)。」とし、技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。
しかしながら、本件発明3は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献3及び4に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められるから、申立人の上記主張を採用することはできない。
エ まとめ
したがって、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
(3)本件発明4について
ア 本件発明4と甲1発明との対比・判断
本件発明4と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点A4
本件発明4は、「ケース」について、「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」のに対して、甲1発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点A4」という。)。
(イ)判断
上記相違点A4について検討する。
本件発明4は、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0080】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット2によって金型511、512を加熱しながら成型を行うことができる」ようにされた「金型装置50」に用いた場合において、同明細書の段落【0083】に記載されているような、「金型支持台521、522に作用する型締力を、ユニット収容部523の周囲部分525のみならず心棒524で受けることができる。これにより、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力が集中してしまうことを防ぐことができる。その結果、周囲部分525が潰れてしまい、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうこと抑制することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
したがって、本件発明4は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点A4に係る本件発明4の発明特定事項は、甲第2及び4号証にも記載されていないから、本件発明4は、甲1発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲1発明、甲3発明並びに甲第2及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明4と甲2発明との対比・判断
本件発明4と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
(ア)相違点B4
本件発明4は、「ケース」について、「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点(以下、「相違点B4」という。)。
(イ)判断
上記相違点B4について検討する。
本件発明4は、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項を備えることにより、本件特許に係る明細書の段落【0080】に記載されているような、「誘導加熱コイルユニット2によって金型511、512を加熱しながら成型を行うことができる」ようにされた「金型装置50」に用いた場合において、同明細書の段落【0083】に記載されているような、「金型支持台521、522に作用する型締力を、ユニット収容部523の周囲部分525のみならず心棒524で受けることができる。これにより、ユニット収容部523の周囲部分525に型締力が集中してしまうことを防ぐことができる。その結果、周囲部分525が潰れてしまい、ひいては誘導加熱コイルユニット2が押し潰されてしまうこと抑制することができる。」という効果を奏するものである。
そうすると、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項は、設計事項ということはできない。
したがって、本件発明4は、甲2発明に基いて、又は、甲2発明及び甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、上記相違点B4に係る本件発明4の発明特定事項は、甲第1及び4号証にも記載されていないから、本件発明4は、甲2発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、又は、甲2発明、甲3発明並びに甲第1及び4号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 平成30年3月5日付け意見書における申立人の主張について
申立人は、平成30年3月5日付け意見書において、先行文献2(特開平10-253260号公報)及び先行文献5(特開2011-34815号公報)を例示して、上記相違点A4又はB4に係る本件発明4の発明特定事項について、「先行文献5の段落0020、0021、0023、図1等、先行文献2の図1等には、 ・・・ 「前記ケースは、前記加熱コイルの中央部に対応して設けられ前記ケースを前記加熱コイルの厚み方向に貫く穴部を有している」点が記載されている。なお、先行文献2には2つのコイル12及び15が示されており、本件訂正発明4の加熱コイルに対応するコイル11については、加熱用のものである明示はないが、段落0009には、他方のコイル12が主に加熱のために用いられる旨が記載されているので、その逆解釈から、コイル15にも少なからず加熱機能があることは示唆されているといえる。」とし、技術常識ないし周知慣用技術である旨の主張をする。
しかしながら、本件発明4は、申立人による特許異議の申立てがされた時と、引用形式か独立形式かの相違はあるものの、実質的に同じ内容であり、申立人の上記主張は、新たに例示した先行文献2及び5に基づくものであって、特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して意見の内容が実質的に新たな内容を含むものであると認められるから、申立人の上記主張を採用することはできない。
なお、先行文献5の丸穴11は、図3及び4を見ると理解できるように、加熱コイル2を収容するケースに設けられたものでないから、上記相違点A4又はB4に係る本件発明4の発明特定事項が技術常識ないし周知慣用技術の例証とはならず、また、先行文献2の図1に対して申立人が示した穴部は、溶解ルツボの溶湯13を下方へ出湯するための出湯口であって、ロールを加熱するための誘導加熱装置である甲1発明や誘導加熱調理器である甲2発明に適用する動機付けは認められず、いずれにしても申立人の上記主張は採用することができない。
エ まとめ
したがって、本件発明4は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものとすることはできない。
6 小括
上記1ないし5によると、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、取り消すことはできない。
また、請求項2ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとすることはできず、同法第113条第2号に該当するものではないから、取り消すことはできない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700867