特許異議申立
2025-700385
ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路
- 審判番号
- 2025-700385
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-199520
- 登録番号
- 7561355
- 請求日
- 2025年04月03日
- 審決日
- 2025年10月20日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】厦門普為光電科技有限公司
- 【権利者代理人】山下 隆志
- 【異議申立人】森山 篤史
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 耕作
- 審判官 稲垣 彰彦
- 審判官 横溝 顕範
- 分類
- P1651.113-Y (H05B) / P1651.121-Y (H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7561355号発明「ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7561355号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7561355号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和5年11月26日(パリ条約による優先権主張 令和5年6月13日(CN)中華人民共和国)にされ、令和6年9月26日にその特許権の設定登録がされ、同年10月4日に特許掲載公報が発行され、令和7年4月3日に特許異議申立人森山篤史(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する入力回路と、
前記整流信号を受信して駆動信号を生成する力率補正回路と、
前記駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成し、検出点を有する降圧電源回路と、
前記検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路と、
前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する降圧制御回路と、
補助電源回路、センシング回路および調光制御回路とを備え、
前記補助電源回路は、前記駆動信号を受信して前記センシング回路を駆動するための電源信号を生成し、前記センシング回路は、センシング信号を生成し、前記調光制御回路は、前記センシング信号を受信して調光信号を生成し、前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整することを特徴とするワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項2】
前記力率補正回路から第2サンプリング信号を受信して力率制御信号を生成する力率制御回路を更に備え、前記力率補正回路は、前記力率制御信号に基づいて前記駆動信号を調整することを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項3】
前記電源スイッチング回路は、電源スイッチを有し、前記電源スイッチを切り替えることで前記第1サンプリング信号を変更することを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項4】
前記降圧制御回路は、前記第1サンプリング信号および基準電圧信号に基づいて変調信号を生成する請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項5】
前記変調信号は、パルス幅変調信号であることを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項6】
前記センシング回路は、マイクロ波センサまたは赤外線センサであることを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項7】
前記入力回路は、整流回路、フィルタ回路およびアンチサージ回路を含むことを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項8】
前記整流回路は、ブリッジ型整流器であることを特徴とする請求項7に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。
【請求項9】
前記負荷は、発光ダイオードまたは発光ダイオードアレイであることを特徴とする請求項1に記載のワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が特許異議申立書で主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。また、申立人は、特許異議申立書とともに、甲第1号証~甲第6号証を提出した(以下、「甲第1号証」等を「甲1」等と略記する。)。
なお、「甲1発明1」等は、申立人が主張する「甲1に記載された発明」等を意味する。
理由1(特許法第29条第1項第3号:新規性)
本件発明1、6、9は、甲1に記載の発明と同一である。
理由2(特許法第29条第2項:進歩性)
理由2-1 甲1を主引例とした進歩性
本件発明1は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明2は、甲1発明1と甲2発明2とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明3は、甲1発明1と甲4記載事項1とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明4は、甲1発明1と甲2発明4とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明5は、甲1発明1と甲2発明5とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明6は、甲1発明1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明7は、甲1発明1と甲6記載事項1とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明8は、甲1発明1、甲2発明8及び甲6記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明9は、甲1発明9に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
理由2-2 甲2を主引例とした進歩性
本件発明1は、甲2発明1と甲3記載事項1とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明2は、甲2発明2と甲3記載事項1とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明3は、甲2発明1、甲3記載事項1及び甲4記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明4は、甲2発明4と甲3記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明5は、甲2発明5と甲3記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明6は、甲2発明1、甲3記載事項1及び甲5記載事項1に基づいて、または、甲2発明1、甲3記載事項1及び甲1発明6に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明7は、甲2発明1、甲3記載事項1及び甲6記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明8は、甲2発明8、甲3記載事項1及び甲6記載事項1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
本件発明9は、甲2発明9と甲3記載事項1とに基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。
<証拠一覧>
甲1:特開2017-91879号公報
甲2:特開2013-27200号公報
甲3:特開2021-170431号公報
甲4:特開2006-73438号公報
甲5:特開2002-15877号公報
甲6:特開2023-3370号公報
第4 当審の判断
1 理由1(甲1を主引例とした新規性)について
(1)甲1について
ア 甲1の記載事項
本件特許の優先日前の平成29年5月25日に公開された甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当審で付した(以下同様。)。
(ア)「【0012】
以下の実施形態は、照明装置及び照明器具に関し、特にセンサの検出結果に応じて照明負荷を点灯/ 消灯させる照明装置及び照明器具に関する。」
(イ)「【0014】
本実施形態の照明装置1は、図1に示すように、電源ユニット2と、センサユニット3とを備える。この照明装置1は、センサユニット3の検出結果に応じて、電源ユニット2からLEDユニット4(照明負荷)への給電(直流給電)を制御する機能を有している。
【0015】
電源ユニット2は、昇圧チョッパ回路21と、降圧チョッパ回路22と、制御電源23と、制御部24とを備え、本実施形態では、昇圧チョッパ回路21と降圧チョッパ回路22とで第1電源部が構成され、制御電源23で第2電源部が構成されている。また、電源ユニット2は、一対の電源入力端子25A,25Bと、一対の電源出力端子25C,25Dと、一対の電源出力端子25E,25Gと、信号入力端子25Fとをさらに備えている。」
(ウ)「【0017】
昇圧チョッパ回路21は、図1に示すように、整流回路210と、ドライバ回路211と、スイッチング素子212と、インダクタ213と、ダイオード214と、平滑コンデンサ215とを有している。
【0018】
整流回路210は、例えば4つの整流ダイオードをブリッジ接続したダイオードブリッジを有し、一対の電源入力端子25A,25Bを介して印加された交流電圧を全波整流して脈流電圧を生成する。整流回路210の高圧側の出力端子には、インダクタ213とダイオード214との直列回路が電気的に接続されている。インダクタ213とダイオード214との接続点には、スイッチング素子212の一端が電気的に接続されている。ここで、本実施形態では、スイッチング素子212として、例えばNチャネル形のMOSFETを使用しており、インダクタ213とダイオード214のアノードとの接続点には、スイッチング素子212のドレインが電気的に接続されている。また、スイッチング素子212のソースは、整流回路210の低圧側の出力端子に電気的に接続されている。
【0019】
また、スイッチング素子212のゲートには、ドライバ回路211が電気的に接続されている。ドライバ回路211は、例えば力率改善機能を備えたドライバ回路であり、制御部24からの制御信号S1に従ってスイッチング素子212のオン/オフを制御する。ダイオード214のカソードには、平滑コンデンサ215の一端が電気的に接続され、平滑コンデンサ215の他端は、整流回路210の低圧側の出力端子に電気的に接続されている。言い換えれば、平滑コンデンサ215は、スイッチング素子212とダイオード214との直列回路に対して並列に接続されている。
【0020】
降圧チョッパ回路22は、図1に示すように、高圧側の入力電圧を入り切りするハイサイド駆動の降圧チョッパ回路である。降圧チョッパ回路22は、ドライバ回路220と、スイッチング素子221と、インダクタ222と、抵抗器223,224と、平滑コンデンサ225とを有している。」
(エ)「【0022】
スイッチング素子221と抵抗器223との接続点には、インダクタ222の一端が電気的に接続され、インダクタ222の他端は電源出力端子25Cに電気的に接続されている。また、昇圧チョッパ回路21の低圧側の出力端子には、抵抗器224を介して電源出力端子25Dが電気的に接続されている。さらに、一対の電源出力端子25C,25D間には、平滑コンデンサ225が電気的に接続されている。
【0023】
制御電源23は、例えばインテリジェントパワーデバイス(Intelligent Power Device) を用いたDC-DCコンバータである。制御電源23は、昇圧チョッパ回路21により昇圧された直流電圧を、センサユニット3に対応した直流電圧Vcc(本実施形態ではDC5V)に変換する。制御電源23の出力端子は電源出力端子25Eに電気的に接続されており、制御電源23からの直流電圧Vccは、電源出力端子25E、電源線L1、及び電源入力端子37Aを介してセンサユニット3に印加される。
【0024】
制御部24は、例えばマイクロコンピュータなどのプロセッサである。制御部24は、昇圧チョッパ回路21のスイッチング素子212のオン/オフを制御する制御信号S1をドライバ回路211に出力し、降圧チョッパ回路22のスイッチング素子221のオン/オフを制御する制御信号S2をドライバ回路220に出力する。そして、ドライバ回路211は、制御部24からの制御信号S1に基づいてスイッチング素子212のオン/オフを制御する。また、ドライバ回路220は、制御部24からの制御信号S2に基づいてスイッチング素子221のオン/オフを制御する。ここで、制御部24には、信号線L2を介してセンサユニット3の信号出力端子37Bに電気的に接続される信号入力端子25Fが電気的に接続されている。そして、制御部24には、センサユニット3からの電圧信号S4が信号入力端子25Fを介して入力される。すなわち、制御部24は、センサユニット3からの電圧信号S4に基づいて、スイッチング素子212,221のオン/オフを制御する制御信号S1,S2を生成する。」
(オ)「【0026】
センサユニット3は、センサ31と、設定部34とを備えている。センサ31は、例えば焦電素子を用いた赤外線センサであり、人体から発せられる赤外線によって人体を検出する。センサ31は、電源線L1,L3を介して電源ユニット2より供給される直流電圧Vccによって動作する。センサ31の出力端子は、例えばNPN型のトランジスタ32のベースに電気的に接続されており、センサ31からの検知信号S3によってトランジスタ32がオンする。また、トランジスタ32のコレクタは、抵抗器33を介して信号出力端子37Bに電気的に接続されており、トランジスタ32のエミッタは、電源入力端子37C、すなわちグランドに電気的に接続されている。したがって、センサ31が人体を検出していない状態では、センサ31から検知信号S3が出力されないため、トランジスタ32はオフであり、ハイレベルの電圧信号S4が信号線L2に出力される。一方、センサ31が人体を検出すると、センサ31から検知信号S3が出力されてトランジスタ32がオンになり、ローレベルの電圧信号S4が信号線L2に出力される。すなわち、センサ31は、信号線L2と電源線L3との線間電圧からなる電圧信号S4(のハイ/ロー)によって、人体の検出結果を制御部24に伝送する。」
(カ)「【0028】
LEDユニット4は、直列に接続された複数(本実施形態では2つ)のLED(発光ダイオード)41と、直列に接続された複数のLED41の両端にそれぞれ電気的に接続された一対の電源入力端子42A,42Bとを備えている。そして、電源ユニット2の一対の電源出力端子25C,25DとLEDユニット4の一対の電源入力端子42A,42Bとを電気的に接続することで、電源ユニット2で生成した直流電力をLEDユニット4に供給することができる。これにより、LEDユニット4の各LED41が点灯する。」
(キ)【図1】には、以下の内容が図示されている。
「
[図:0001430021000001.jpg]
」
イ 甲1の認定事項
上記アによれば、甲1から以下の事項が認定できる。なお、主な参照箇所を括弧内に示す(以下同様。)。
(ア)照明装置1は、センサユニット3の検出結果に応じて、電源ユニット2からLEDユニット4(照明負荷)への給電(直流給電)を制御する機能を有している。(【0014】)
(イ)電源ユニット2は、昇圧チョッパ回路21と、降圧チョッパ回路22と、制御電源23と、制御部24とを備えている。(【0015】)
(ウ)昇圧チョッパ回路21は、整流回路210と、ドライバ回路211を有している。(【0017】)
(エ)整流回路210は、一対の電源入力端子25A,25Bを介して印加された交流電圧を全波整流して脈流電圧を生成する。(【0018】)
(オ)ドライバ回路211は、力率改善機能を備えており、整流回路210と接続されたスイッチング素子212のオン/オフを制御して降圧チョッパ回路22に電圧を出力する。(【0018】、【0019】、【0022】、【図1】)
(カ)降圧チョッパ回路22で生成した直流電力をLEDユニット4に供給する。(【0020】、【0028】、【図1】)
(キ)制御部24は、降圧チョッパ回路22を制御する制御信号S2をドライバ回路220に出力する。(【0024】)
(ク)制御電源23は、昇圧チョッパ回路21により昇圧された直流電圧を、センサユニット3に対応した直流電圧Vccに変換する。(【0023】)
(ケ)センサユニット3は、電圧信号S4を出力する。(【0026】)
(コ)制御部24は、センサユニット3からの電圧信号S4に基づいて、スイッチング素子221のオン/オフを制御する制御信号S2を生成し、降圧チョッパ回路22のスイッチング素子221のオン/オフを制御する。(【0024】)
ウ 甲1に記載された発明
上記ア及びイを踏まえると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「一対の電源入力端子25A,25Bを介して印加された交流電圧を全波整流して脈流電圧を生成する整流回路210と、(上記イ(エ))
整流回路210と接続されたスイッチング素子212のオン/オフを制御して降圧チョッパ回路22に電圧を出力し、力率改善機能を備えたドライバ回路211と、(上記イ(オ))
LEDユニット4に供給する直流電力を生成する降圧チョッパ回路22と、(上記イ(カ))
降圧チョッパ回路22を制御する制御信号S2を出力する制御部24と、(上記イ(キ))
昇圧チョッパ回路21により昇圧された直流電圧を、センサユニット3に対応した直流電圧Vccに変換する制御電源23と、(上記イ(ク))
電圧信号S4を出力するセンサユニット3と、(上記イ(ケ))
を備え、
制御部24は、センサユニット3からの電圧信号S4に基づいて、スイッチング素子221のオン/オフを制御する制御信号S2を生成し、降圧チョッパ回路22のスイッチング素子221のオン/オフを制御する、(上記イ(コ))
照明装置1。(上記イ(ア)~(ウ))」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
(ア)後者の「一対の電源入力端子25A,25Bを介して印加された交流電圧」は、前者の「交流電圧入力信号」に相当し、また後者の「全波整流」した「脈流電圧」は、前者の「整流信号」に相当するから、後者の「一対の電源入力端子25A,25Bを介して印加された交流電圧を全波整流して脈流電圧を生成する」態様は、前者の「交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する」態様に相当する。
そうすると、後者の「整流回路210」は、前者の「入力回路」に相当するといえる。
(イ)後者の「整流回路210」で生成された「脈流電圧」は、前者の「前記整流信号」に相当し、また後者の「降圧チョッパ回路22」に「出力」される「電圧」は、前者の「駆動信号」に相当する。
そうすると、「整流回路210と接続されたスイッチング素子212のオン/オフを制御して降圧チョッパ回路22に電圧を出力」する態様は、「整流回路210」で生成された「脈流電圧」に対して「スイッチング素子212のオン/オフを制御」することで「降圧チョッパ回路22に電圧を出力」するものであるから、前者の「前記整流信号を受信して駆動信号を生成する」態様に相当する。
そうすると、後者の「力率改善機能を備えたドライバ回路211」は、前者の「力率補正回路」に相当するといえる。
(ウ)後者の「LEDユニット4」は、前者の「負荷」に相当し、また後者の「直流電力」は、前者の「定電流出力信号」に相当する。
そして、後者の「ドライバ回路211」の制御によって出力された「電圧」を受けて「LEDユニット4に供給する直流電力を生成する」態様は、前者の「前記駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成」する態様に相当する。
そうすると、当該態様の限りにおいて、後者の「降圧チョッパ回路22」は、前者の「降圧電源回路」に相当するといえる。
(エ)後者の「降圧チョッパ回路22を制御する制御信号S2を出力する」態様は、「降圧チョッパ回路22」が出力する「直流電力」を「制御信号S2」によって「制御」するものであるから、前者の「前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する」態様に相当する。
そうすると、当該態様の限りにおいて、後者の「制御部24」は、前者の「降圧制御回路」に相当するといえる。
(オ)後者の「昇圧チョッパ回路21により昇圧された直流電圧を、センサユニット3に対応した直流電圧Vccに変換する」態様は、前者の「前記駆動信号を受信して前記センシング回路を駆動するための電源信号を生成」する態様に相当する。
そうすると、後者の「制御電源23」は、前者の「補助電源回路」に相当するといえる。
(カ)後者の「電圧信号S4」は、前者の「センシング信号」に相当するから、後者の「電圧信号S4を出力」する態様は、前者の「センシング信号を生成」する態様に相当する。
そうすると、後者の「センサユニット3」は、前者の「センシング回路」に相当するといえる。
(キ)上記(エ)及び(カ)を踏まえると、後者の「センサユニット3からの電圧信号S4に基づいて、スイッチング素子221のオン/オフを制御する制御信号S2を生成し、降圧チョッパ回路22のスイッチング素子221のオン/オフを制御する」態様と、前者の「前記センシング信号を受信して調光信号を生成し、前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する」態様とは、「前記センシング信号を受信して、前記降圧制御回路は、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する」態様の点で共通する。
そうすると、後者の「制御部24」は、前者の「調光制御回路」に共通するといえる。
(ク)上記(オ)及び(カ)を踏まえると、後者の「照明装置1」が「制御電源23」と「センサユニット3」を備えていることと、前者の「補助電源回路、センシング回路および調光制御回路とを備え」ていることとは、「補助電源回路とセンシング回路を備え」ていることの点で共通する。
(ケ)後者の「LEDユニット4」は、前者の「発光ダイオード」に相当するから、上記(ア)~(ク)を踏まえると、後者の「照明装置1」と、前者の「ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路」とは、「発光ダイオード定電流駆動回路」の点で共通する。
(コ)そうすると、両者は、
「交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する入力回路と、
前記整流信号を受信して駆動信号を生成する力率補正回路と、
前記駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成する降圧電源回路と、
前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する降圧制御回路と、
補助電源回路、センシング回路とを備え、
前記補助電源回路は、前記駆動信号を受信して前記センシング回路を駆動するための電源信号を生成し、前記センシング回路は、センシング信号を生成し、前記降圧制御回路は、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する発光ダイオード定電流駆動回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点1-1〕
本件発明1は、降圧電源回路が「検出点を有する」ものであり、「前記検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路」を備え、降圧制御回路が「前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成」するものであるのに対して、甲1発明は、そのように特定されていない点。
〔相違点1-2〕
本件発明1は、「調光制御回路」を備えるものであり、「前記調光制御回路は、前記センシング信号を受信して調光信号を生成し、前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整」するものであるのに対して、甲1発明は、「センサユニット3からの電圧信号S4に基づいて、スイッチング素子221のオン/オフを制御する制御信号S2を生成し、降圧チョッパ回路22のスイッチング素子221のオン/オフを制御する」ものである点。
〔相違点1-3〕
本件発明1は、「ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路」であるのに対して、甲1発明は、ワイド電圧対応であるのか否か不明な点。
イ 判断
相違点1-1、1-2、1-3は、いずれも実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明ではない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のような主張をしている。
(11~13、21~22ページ)甲1には、以下の甲1発明1が記載されているから、本件特許発明1は、甲1発明1と同一である。
[甲1発明1]
a1.交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する整流回路210と、
b1.整流信号を受信して駆動信号を生成するドライバ回路211と、
c1.駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成し、検出点を有する降圧チョッパ回路22と、
d1.検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路と、
e1.第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し、降圧チョッパ回路22の定電流出力信号を調整する制御部24と、
f1.制御電源23、センサユニット3および調光制御回路とを備え、
g1.制御電源23は、駆動信号を受信してセンサユニット3を駆動するための電源信号を生成し、センサユニット3は、センシング信号を生成し、調光制御回路は、センシング信号を受信して調光信号を生成し、制御部24は、調光信号に基づいて変調信号を調整し、降圧チョッパ回路22の定電流出力信号を調整する
h1.ことを特徴とする照明装置1。
上記主張について検討する。
申立人が主張する甲1発明1は、c1「検出点を有する降圧チョッパ回路22」、d1「検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路」、e1「第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成」、f1「調光制御回路とを備え」、g1「調光制御回路は、センシング信号を受信して調光信号を生成し、制御部24は、調光信号に基づいて変調信号を調整」が甲1に記載されているという根拠がない。
そして、上記アで説示したとおり、本件発明1と甲1発明は、相違点1-1、1-2、1-3で相違するものである。
したがって、申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1は甲1発明ではなく、本件発明1は、特特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
(3)本件発明6及び9について
本件発明6及び9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、本件発明6及び9は甲1発明ではなく、本件発明6及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1、6及び9は甲1発明ではなく、本件発明1、6及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し、同項の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、理由1によっては、本件特許の請求項1、6及び9に係る特許を取り消すことはできない。
2 理由2-1(甲1を主引例とした進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、上記1(2)アで説示したとおり、両者は、相違点1-1、1-2、1-3で相違する。
イ 判断
相違点1-1について検討する。
甲1には、降圧チョッパ回路22に検出点を設け、当該検出点の検出電圧を処理して「サンプリング信号」を生成する「電源スイッチング回路」に対応する回路は記載も示唆もされていないし、ましてや制御部24が「サンプリング信号」に応じて「変調信号」を生成することは記載も示唆もされていない。
そして、甲1発明が検出点及び電源スイッチング回路を備えていないことは微差とはいえず、検出点及び電源スイッチング回路を追加することが設計的事項ということもできない。
したがって、相違点1-2及び1-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものということはできない。
<予備的検討1>
なお、甲2には、後述のとおり甲2発明が記載されていると認められるところ、下記3(2)で説示しているとおり、甲2発明は「変調信号」を備えていないから、仮に、甲1発明に甲2発明を適用できたとしても、相違点1-1に係る本件発明1の構成に到達しない。
したがって、甲1発明において、仮に甲2発明を適用できたとしても、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、容易になし得たものであるということができない。
<予備的検討2>
念のため相違点1-2について検討する。
相違点1-2に係る本件発明1の構成のうち、特に、「前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整」すること、及びその「前記変調信号」が「降圧制御回路」において「前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し」たものであることは、他の証拠にも示されていない。
そうすると、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、容易になし得たものであるということができない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
(2)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2、甲4、甲6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1~9は、甲1発明及び甲2、甲4、甲6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、理由2-1によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
3 理由2-2(甲2を主引例とした進歩性)について
(1)甲2について
ア 甲2の記載事項
本件特許の優先日前の平成25年2月4日に公開された甲2には、以下の記載がある。
(ア)「【0020】
<実施の形態1>
[電源装置の構成]
図1は、この発明の実施の形態1による電源装置10の構成を示す回路図である。図1を参照して、電源装置10は、調光機能を有するスイッチング電源であり、交流電源5から入力ノードN1,N2間に入力された交流電圧を直流電圧に変換し、変換後の直流電圧を、出力ノードN7,N8間に接続された複数の発光ダイオードを含む光源部6に出力する。光源部6を流れる電流量は、調光信号によって制御される。照明器具1は、これらの光源部6および電源装置10の他に、光源部6からの光を適切な方向に導く配光制御部(図示省略)や各部を保持する筐体部(図示省略)などによって構成される。
【0021】
電源装置10は、全波整流回路11と、力率改善(PFC:Power Factor Control)回路70と、DC-DCコンバータ20と、基準信号生成部12と、電流検出部としての抵抗素子25と、時定数回路30と、制御回路40とを含む。以下、各部の構成について説明する。
【0022】
(全波整流回路)
全波整流回路11は、交流電源5から受けた交流電圧を全波整流する。全波整流回路11から出力された脈動電圧は、PFC回路70に入力される。
【0023】
(PFC回路)
PFC回路70は、全波整流回路11から出力された脈動電圧を定電圧に変換するとともに、電源装置10に入力される電流波形が正弦波に近い波形になるように入力電流波形を整形する。PFC回路70は、たとえば、昇圧型コンバータを利用して構成することができる。なお、以下の説明では、PFC回路70の高電圧側の出力ノードN5を電源ノードVCCとも称し、低電圧側の出力ノードN6を接地ノードVEEとも称する。PFC回路70の具体的な構成例は、図2で説明する。
【0024】
(DC-DCコンバータ)
DC-DCコンバータ20は、PFC回路70から出力された直流電圧を異なる大きさの直流電圧に変換して光源部6に出力する。図1に示した実施の形態1の場合、DC-DCコンバータ20は降圧型のコンバータ、より具体的には降圧チョッパによって構成される。以下、DC-DCコンバータ20を降圧チョッパ20とも称する。
【0025】
図1に示すように、降圧チョッパ20は、スイッチング素子としてのNMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ21と、インダクタ22と、ダイオード23と、コンデンサ24と、抵抗素子26とを含む。」
(イ)「【0028】
(電流検出部)
NMOSトランジスタ21に流れる電流を検出するために、電流検出部としての抵抗素子25が設けられる。抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)は、制御回路40に入力される。」
(ウ)「【0037】
まず、制御信号CSがLレベルからHレベルに切替わることによって、NMOSトランジスタ21がオン状態になると、PFC回路70の出力電圧が、光源部6およびインダクタ22に印加される。これによって、インダクタ22を流れる電流は次第に増加し、NMOSトランジスタ21に流れる電流が増加する。これに伴ってNMOSトランジスタ21に流れる電流を検出する抵抗素子(電流検出部)25の電圧が増加する。この結果、抵抗素子25の電圧が基準信号VRの電圧レベルよりも大きくなると、比較器41の出力(すなわち、RSフリップフロップ43のリセット端子(R)の入力)がHレベルに切替わる。これによって、制御信号CSがHレベルからLレベルに切替わるので、NMOSトランジスタ21がオフ状態に切替わる。」
(エ)【図1】には、以下の内容が図示されている。
「
[図:0001430021000002.jpg]
」
イ 甲2の認定事項
上記アによれば、甲2から以下の事項が認定できる。
(ア)全波整流回路11は、交流電源5から受けた交流電圧を全波整流して、脈動電圧を出力する。(【0022】)
(イ)PFC回路70は、力率改善(PFC:Power Factor Control)回路70であり、全波整流回路11から出力された脈動電圧を定電圧に変換し、直流電圧を出力する。(【0021】、【0023】、【0024】)
(ウ)降圧チョッパ20は、PFC回路70から出力された直流電圧を異なる大きさの直流電圧に変換して、複数の発光ダイオードを含む光源部6に出力し、NMOSトランジスタ21を含む。(【0020】、【0024】、【0025】)
(エ)抵抗素子25は、NMOSトランジスタ21に流れる電流を検出するための電流検出部である。(【0028】)
(オ)制御回路40は、抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、比較器41の出力が切替わり、これによって、RSフリップフロップ43が出力する制御信号CSが切り替わることで、NMOSトランジスタ21uのオンオフ状態を切替える。(【0032】、【0033】、【0037】)
ウ 甲2に記載された発明
上記ア及びイを踏まえると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「交流電源5から受けた交流電圧を全波整流して、脈動電圧を出力する全波整流回路11と、(上記イ(ア))
全波整流回路11から出力された脈動電圧を定電圧に変換し、直流電圧を出力するPFC回路70と、(上記イ(イ))
PFC回路70から出力された直流電圧を異なる大きさの直流電圧に変換して、複数の発光ダイオードを含む光源部6に出力し、NMOSトランジスタ21を含む降圧チョッパ20と、(上記イ(ウ))
NMOSトランジスタ21に流れる電流を検出するための電流検出部としての抵抗素子25と、(上記イ(エ))
抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、比較器41の出力が切替わり、これによって、RSフリップフロップ43が出力する制御信号CSが切り替わることで、NMOSトランジスタ21のオンオフ状態を切替える制御回路40、(上記イ(オ))
を備える電源装置10。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明を対比する。
(ア)後者の「交流電圧」は、前者の「交流電圧入力信号」に相当し、また後者の「全波整流」した「脈動電圧」は、前者の「整流信号」に相当するから、後者の「交流電圧を全波整流して、脈動電圧を出力する」態様は、前者の「交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する」態様に相当する。
そうすると、後者の「全波整流回路11」は、前者の「入力回路」に相当するといえる。
(イ)後者の「脈動電圧を定電圧に変換」した「直流電圧」は、前者の「駆動信号」に相当するから、後者の「全波整流回路11から出力された脈動電圧を定電圧に変換し、直流電圧を出力する」態様は、前者の「前記整流信号を受信して駆動信号を生成する」態様に相当する。
そうすると、後者の「PFC回路70」は、前者の「力率補正回路」に相当するといえる。
(ウ)後者の「複数の発光ダイオードを含む光源部6」は、前者の「負荷」に相当し、また後者の「光源部6に出力する」「直流電圧」は、前者の「定電流出力信号」に相当するから、後者の「PFC回路70から出力された直流電圧を異なる大きさの直流電圧に変換して、複数の発光ダイオードを含む光源部6に出力する」態様は、前者の「前記駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成」する態様に相当する。
また、後者の「抵抗素子25」は、「NMOSトランジスタ21に流れる電流を検出するための電流検出部」であるから、前者の「検出点」に相当する。
そうすると、後者の「降圧チョッパ20」及び「抵抗素子25」は、前者の「降圧電源回路」に相当するといえる。
(エ)後者の「抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)」は、前者の「前記検出点の検出電圧」に相当するから、後者の「抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、比較器41の出力が切替わ」る態様は、前者の「前記検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する」態様に相当するといえる。
そうすると、後者の「比較器41の出力」は、前者の「第1サンプリング信号」に相当するといえる。
そして、本件発明1の「電源スイッチング回路」は、その具体的構成が何ら特定されていないから、甲2発明の電源装置10を構成するスイッチング素子である「NMOSトランジスタ21」のオンオフ状態を切替える回路である制御回路40を含むものと解される。
してみれば、後者の「制御回路40」は、前者の「電源スイッチング回路」に相当するといえる。
(オ)後者の「抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、比較器41の出力が切替わり、これによって、RSフリップフロップ43が出力する制御信号CSが切り替わることで、NMOSトランジスタ21のオンオフ状態を切替える制御回路40」は、甲2の「このように、実施の形態1による電源装置10によれば、オン状態のNMOSトランジスタ21を流れる電流値に比例した検出信号と、光源部6の光出力の設定値に対応した基準信号VRとの比較に基づいて、スイッチング素子のオンからオフへの切替わりのタイミングが制御される。基準信号VRが0でない限り、電源装置10は安定して動作する。この結果、安定した調光制御を実現できる。」(【0043】)との記載によると、「降圧チョッパ20」が「光源部6」に出力する「直流電圧」が安定するように調整するものである。
そうすると、後者の「抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、比較器41の出力が切替わり、これによって、RSフリップフロップ43が出力する制御信号CSが切り替わることで、NMOSトランジスタ21のオンオフ状態を切替える制御回路40」と、前者の「前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する降圧制御回路」とは、「前記第1サンプリング信号に応じて信号を生成し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する降圧制御回路」である点で共通する。
(カ)上記(ア)~(オ)を踏まえると、後者の「電源装置10」と、前者の「ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路」とは、「発光ダイオード定電流駆動回路」の点で共通する。
(キ)そうすると、両者は、
「交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する入力回路と、
前記整流信号を受信して駆動信号を生成する力率補正回路と、
前記駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成し、検出点を有する降圧電源回路と、
前記検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路と、
前記第1サンプリング信号に応じて信号を生成し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する降圧制御回路と、を備える、
発光ダイオード定電流駆動回路。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
〔相違点2-1〕
降圧制御回路に関し、本件発明1は、前記第1サンプリング信号に応じて「変調信号」を生成し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整するものであるのに対して、甲2発明は、抵抗素子25にかかる電圧(ノードN10の電圧)が比較器41に入力されると、「比較器41の出力」が切替わり、これによって、RSフリップフロップ43が出力する「制御信号CS」が切り替わることで、NMOSトランジスタ21のオンオフ状態を切替えるものである点。
〔相違点2-2〕
本件発明1は、「補助電源回路、センシング回路および調光制御回路とを備え、前記補助電源回路は、前記駆動信号を受信して前記センシング回路を駆動するための電源信号を生成し、前記センシング回路は、センシング信号を生成し、前記調光制御回路は、前記センシング信号を受信して調光信号を生成し、前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する」ものであるのに対して、甲2発明は、そのように特定されていない点。
〔相違点2-3〕
本件発明1は、「ワイド電圧対応発光ダイオード定電流駆動回路」であるのに対して、甲2発明は、ワイド電圧対応であるのか否か不明な点。
イ 判断
相違点2-1について検討する。
甲2発明は、甲2の【0037】、【0043】に記載されているように、「比較器41の出力」がLレベルからHレベルに切替わるのに応じて、「制御信号CS」がHレベルからLレベルに切替わることで、「オン状態のNMOSトランジスタ21を流れる電流値に比例した検出信号と、光源部6の光出力の設定値に対応した基準信号VRとの比較に基づいて、スイッチング素子のオンからオフへの切替わりのタイミングが制御される。基準信号VRが0でない限り、電源装置10は安定して動作する。この結果、安定した調光制御を実現できる。」ものであるから、「比較器41の出力」と「制御信号CS」を、本件発明1の「変調信号」に変更することの阻害事由がある。
そうすると、他の証拠について検討するまでもなく、甲2発明において、相違点2-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たものであるということができない。
したがって、相違点2-2及び2-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものということはできない。
<予備的検討>
念のため、相違点2-2について検討する。
相違点2-2に係る本件発明1の構成のうち、特に、「前記降圧制御回路は、前記調光信号に基づいて前記変調信号を調整し、前記降圧電源回路の前記定電流出力信号を調整する」こと、及びその「前記変調信号」が「降圧制御回路」において「前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し」たものであることは、他の証拠にも示されていない。
そうすると、甲2発明において、相違点2-2に係る本件発明1の構成とすることは、容易になし得たものであるということができない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書において、概略、以下のような主張をしている。
主張1:(14~16ページ)甲2には、以下の甲2発明1が記載されている。
[甲2発明1]
a2.交流電圧入力信号を受信して整流信号を生成する全波整流回路11と、
b2.整流信号を受信して駆動信号を生成する昇圧チョッパ60と、
c2.駆動信号を受信して負荷を駆動するための定電流出力信号を生成し、検出点を有するDC-DCコンバータ20と、
d2.検出点の検出電圧を処理して第1サンプリング信号を生成する電源スイッチング回路と、
e2.第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し、DC-DCコンバータ20の定電流出力信号を調整する制御回路40と、備える
h2.ことを特徴とする電源装置10。
主張2:(17~19、22~24ページ)甲3には、以下の甲3記載事項1が記載されている。甲2と甲3との組み合わせにより、当業者であれば本件特許発明1を容易に相当することができる。
[甲3記載事項1]
f3.「補助電源回路、センシング部15および光源制御部12を備える」構成
g3.「補助電源回路は、駆動信号を受信してセンサ40を駆動するための電源信号を生成し、センシング部15は、センシング信号を生成し、光源制御部12は、センシング信号を受信して調光信号を生成し、発光制御回路13は、調光信号に基づいて変調信号を調整し、定電流出力信号を調整する」構成
h3.照明システム1。
主張1について検討する。
申立人が主張する甲2発明1は、e2「第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成」することが甲2に記載されているという根拠がない。
そして、上記アで説示したとおり、本件発明1と甲2発明は、相違点2-1で相違するものである。
したがって、主張1を採用することはできない。
主張2について検討する。
申立人が主張する甲3記載事項1は、g3「発光制御回路13は、調光信号に基づいて変調信号を調整し、定電流出力信号を調整する」こと、さらにはその「変調信号」が「降圧制御回路」において「前記第1サンプリング信号に応じて変調信号を生成し」たものであることが甲3に記載されているという根拠がない。
したがって、主張2を採用することはできない。
(3)本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定をしたものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2発明及び甲1、甲3~6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1~9は、甲2発明及び甲1、甲3~6に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1~9は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものということはできない。
したがって、理由2-2によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700385