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特許異議申立

2017-700848

液晶媒体

審判番号
2017-700848
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-094331
登録番号
特許第6104979号(P6104979)
請求日
2017年09月07日
審決日
2019年06月04日
公報発行日
2019年08月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【権利者代理人】伊藤 克博
  • 【権利者代理人】小野 暁子
  • 【異議申立人】渡邊 右二
審判長/審判官
  • 審判長 冨士 良宏
  • 審判官 佐々木 秀次
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1652.113-YAA(C09K) / P1652.121-YAA(C09K) / P1652.537-YAA(C09K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第44条第1項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6104979号発明「液晶媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6104979号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4~15、18~32〕、3、16、17について訂正することを認める。 特許第6104979号の請求項1~15、18~22、27~32に係る特許を維持する。 特許第6104979号の請求項23~26に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6104979号の請求項1~32に係る特許についての出願は、2005年(平成17年)7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年(平成16年)7月2日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特願2007-519689号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成24年3月27日に特願2012-71843号として分割し、さらに、同法同条同項の規定によりこの出願の一部を平成27年5月1日に新たな特許出願として分割したものであり、平成29年3月10日にその特許権の設定登録がなされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、平成29年9月7日に特許異議申立人渡邊右二(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 1月10日付け:取消理由通知 同年 4月16日  :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年 5月28日  :意見書の提出(申立人) 同年 8月 2日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年11月 5日  :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年12月13日付け:訂正拒絶理由通知 平成31年 2月 4日  :手続補正書、意見書の提出(特許権者) なお、平成31年2月8日付けで、当審から申立人に訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、指定期間内に申立人から意見書は提出されなかった。 また、平成30年4月16日にした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 2.訂正請求について (1)訂正の内容 平成30年11月5日に提出された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化1] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化2] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化3] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化4] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化5] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。)」とあるのを、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず、 ただし、1種類以上の下記式IIの化合物を含有し、1種類以上の下記式IBの化合物を含有してもよい ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化1] [化2] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化3] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化4] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化5] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化100] (式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、 R12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。) [化101] (式中、 mおよびnは、それぞれ互いに独立に、1~7の整数を表し、(O)は、酸素原子または単結合を表す。)」に訂正する。 請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2、4~15、18~22及び27~32も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に、 「1種類以上の下記式B-4の化合物、1種類以上の下記式IBの化合物、1種類以上の下記式IIの化合物および1種類以上の下記式IIIの化合物」とあるのを、 「式B-3O2FFおよび式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、1種類以上の式IBの化合物、1種類以上の式IIの化合物および1種類以上の式IIIの化合物」に訂正する。 請求項2を直接又は間接的に引用する請求項4~15、18~22及び27~32も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に、 「式B-4の化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化6] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。)」とあるのを、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まない ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化31] [化32] (式中、 R2は、無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化33] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化34] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化35] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化300] (式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、 R12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。) [化301] (式中、 mおよびnは、それぞれ互いに独立に、1~7の整数を表し、(O)は、酸素原子または単結合を表す。)」に訂正する。 請求項3を直接又は間接的に引用する請求項6~15、18~22、27、29、31及び32も同様に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 請求項6を引用する請求項7も同様に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項8に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 請求項8を直接又は間接的に引用する請求項9~11も同様に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項12に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 請求項12を引用する請求項13も同様に訂正する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項14に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項15に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項18に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項19に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 サ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項20に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 シ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項21に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 ス 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項22に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 セ 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項27に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 ソ 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項31に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 タ 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項32に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 チ 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項16に、 「下式より選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化25] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表す。)」とあるのを、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物、1種類以上の下記式IIIの化合物ならびに下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物を含有し、 下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化102] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化103] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化104] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化105] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化106] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化25] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表す。)」に訂正する。 ツ 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項17に、 「下式より選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化26] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。)」とあるのを、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物、1種類以上の下記式IIIの化合物ならびに下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物を含有し、 下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化107] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化108] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化109] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化110] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化111] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化26] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。)」に訂正する。 テ 訂正事項19 特許請求の範囲の請求項23を削除する。 ト 訂正事項20 特許請求の範囲の請求項24を削除する。 ナ 訂正事項21 特許請求の範囲の請求項25を削除する。 ニ 訂正事項22 特許請求の範囲の請求項26を削除する。 ヌ 訂正事項23 特許請求の範囲の請求項28に、「B-4」とあるのを、「B-3O2FF、B-5O2FF」に訂正する。 ネ 訂正事項24 特許請求の範囲の請求項29に、 「液晶媒体全体に対する式B-4の化合物の割合が、13重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。」とあるのを、 「液晶媒体全体に対する式B-3O2FFおよびB-5O2FFの化合物の割合が、13重量%以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶媒体。」に訂正する。 なお、訂正事項1~24に係る訂正前の請求項1~32について、請求項2~32は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、訂正後の請求項1~22及び27~32は訂正事項1~24によって直接又は連動して訂正され、訂正後の請求項23~26は削除されているから、本件訂正は一群の請求項1~32について請求されたものである。 (2)補正の内容 平成31年2月4日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の補正事項は、以下のとおりである。 (2-1)本件訂正請求書 7(2)訂正事項の補正 ア 訂正事項4の補正 「エ 訂正事項4 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 イ 訂正事項5の補正 「オ 訂正事項5 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 ウ 訂正事項6の補正 「カ 訂正事項6 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 エ 訂正事項7の補正 「キ 訂正事項7 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 オ 訂正事項8の補正 「ク 訂正事項8 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 カ 訂正事項9の補正 「ケ 訂正事項9 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 キ 訂正事項10の補正 「コ 訂正事項10 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 ク 訂正事項11の補正 「サ 訂正事項11 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 ケ 訂正事項12の補正 「シ 訂正事項12 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 コ 訂正事項13の補正 「ス 訂正事項13 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 サ 訂正事項14の補正 「セ 訂正事項14 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 シ 訂正事項15の補正 「ソ 訂正事項15 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 ス 訂正事項16の補正 「タ 訂正事項16 特許請求の範囲・・・に訂正する。」を削除する。 セ 訂正事項24の補正 「請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶媒体」とあるのを、 「請求項1または2に記載の液晶媒体」と補正する。 (2-2)本件訂正請求書 7(3)訂正の理由イ の補正 ソ 訂正事項4についての補正 「(エ)訂正事項4について ・・・課されない。」を削除する。 タ 訂正事項5についての補正 「(オ)訂正事項5について ・・・課されない。」を削除する。 チ 訂正事項6についての補正 「(カ)訂正事項6について ・・・課されない。」を削除する。 ツ 訂正事項7についての補正 「(キ)訂正事項7について ・・・課されない。」を削除する。 テ 訂正事項8についての補正 「(ク)訂正事項8について ・・・課されない。」を削除する。 ト 訂正事項9についての補正 「(ケ)訂正事項9について ・・・課されない。」を削除する。 ナ 訂正事項10についての補正 「(コ)訂正事項10について ・・・課されない。」を削除する。 ニ 訂正事項11についての補正 「(サ)訂正事項11について ・・・課されない。」を削除する。 ヌ 訂正事項12についての補正 「(シ)訂正事項12について ・・・課されない。」を削除する。 ネ 訂正事項13についての補正 「(ス)訂正事項13について ・・・課されない。」を削除する。 ノ 訂正事項14についての補正 「(セ)訂正事項14について ・・・課されない。」を削除する。 ハ 訂正事項15についての補正 「(ソ)訂正事項15について ・・・課されない。」を削除する。 ヒ 訂正事項16についての補正 「(タ)訂正事項16について ・・・課されない。」を削除する。 フ 訂正事項24についての補正 「(ネ)訂正事項24について (a)訂正の目的について 訂正事項24は、請求項29に記載の ・「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」に限定するものであり、式B-3O2FFおよび式B-5O2FFは式B-4の下位概念であるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、 ・「請求項1または2に記載の」を「請求項1~3のいずれか1項に記載の」への訂正は、上記訂正事項3に伴い独立形式の請求項となった請求項3を従属する請求項に加えることを目的とするものである。 (b)実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正ではないこと 上記(a)に記載した通り「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」への訂正については、当該請求項に係る発明を限定するものであり、「請求項1または2に記載の」を「請求項1~3のいずれか1項に記載の」への訂正は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」への訂正については、式B-n(O)mFFの定義が明細書中[0166]に記載されており、その具体的態様である式B-3O2FFおよび式B-5O2FFが本願実施例である例M8([0206])に記載されており、「請求項1または2に記載の」を「請求項1~3のいずれか1項に記載の」への訂正は、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、よって願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であって特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (d)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32について異議申し立てがされているので、訂正前の請求項29に係る訂正事項24に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。」とあるのを、 「(ネ)訂正事項24について (a)訂正の目的について 訂正事項24は、請求項29に記載の ・「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」に限定するものであり、式B-3O2FFおよび式B-5O2FFは式B-4の下位概念であるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (b)実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更する訂正ではないこと 上記(a)に記載した通り「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」への訂正については、当該請求項に係る発明を限定するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。 (c)願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 「式B-4の化合物」を「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」への訂正については、式B-n(O)mFFの定義が明細書中[0166]に記載されており、その具体的態様である式B-3O2FFおよび式B-5O2FFが本願実施例である例M8([0206])に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であって特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。 (d)特許出願の際に独立して特許を受けることができること 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32について異議申し立てがされているので、訂正前の請求項29に係る訂正事項24に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。」と補正する。 (3)本件補正の適否 ア 訂正事項4の補正について 上記2.(1)エ「訂正事項4」に記載したとおり、本件訂正請求書の訂正事項4は、訂正前の請求項6に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正するものであるところ、上記2.(2)(2-1)ア「訂正事項4の補正」は、当該訂正を行わないこととする補正であり、同(2-2)ソ「訂正事項4についての補正」は、当該訂正についての説明を削除する補正である。かかる補正は、本件訂正請求書の訂正事項の一部を削除する補正に該当するから、本件訂正請求書の要旨を変更するものではない。 イ 訂正事項5~16の補正について 本件訂正請求書の訂正事項5~16は、訂正対象の請求項が異なる点を除き、訂正事項4と同様の訂正を行おうとするものであるところ、上記2.(2)(2-1)イ「訂正事項5の補正」~同ス「訂正事項16の補正」は、当該訂正を行わないこととする補正であり、上記2.(2)(2-2)タ「訂正事項5についての補正」~同ヒ「訂正事項16についての補正」は、当該訂正についての説明を削除する補正である。かかる補正は、いずれも本件訂正請求書の訂正事項の一部を削除する補正に該当するから、本件訂正請求書の要旨を変更するものではない。 ウ 訂正事項24の補正について 上記2.(1)ネ「訂正事項24」に記載したとおり、本件訂正請求書の訂正事項24は、訂正前の請求項29に、「請求項1または2」とあるのを、「請求項1~3のいずれか1項」に訂正することを含むものであるところ、上記2.(2)(2-1)セ「訂正事項24の補正」は、当該訂正を行わないこととする補正であり、同(2-2)フ「訂正事項24についての補正」は、当該訂正について説明している箇所を削除する補正に該当するから、本件訂正請求書の要旨を変更するものではない。 エ 本件補正の適否の判断 よって、本件補正の内容は、いずれも本件訂正請求書の要旨を変更するものではないから、本件補正は特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合する適法な補正である。 オ 本件補正により補正された訂正事項 上記のとおり、本件補正は適法になされたものであるから、本件補正により補正された、本件訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正(補正後)」と記載することがある。)のうち、 訂正事項4~16は削除されており、 訂正事項24は、具体的には以下の事項をその訂正内容とするものと認められる。 「ネ 訂正事項24 特許請求の範囲の請求項29に、 『液晶媒体全体に対する式B-4の化合物の割合が、13重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。』とあるのを、 『液晶媒体全体に対する式B-3O2FFおよびB-5O2FFの化合物の割合が、13重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。』に訂正する。」 なお、本件訂正(補正後)の訂正事項1~3及び15~24に係る訂正前の請求項1~32について、請求項2~32は請求項1を直接又は間接的に引用する関係にあり、本件訂正(補正後)後の請求項1~22及び27~32は訂正事項1~3及び15~24によって直接又は連動して訂正され、訂正(補正後)後の請求項23~26は削除されているから、本件訂正(補正後)は一群の請求項1~32について請求されたものである。 (4)本件訂正(補正後)の適否 ア 訂正事項1について (ア)訂正の目的について 訂正事項1は、 (a)訂正前の請求項1に記載されていた「1種類以上の下記式B-4の化合物」(当審注:化学構造式及びその定義は省略。以下、同様に、化学構造式及び定義の記載を省略することがある)を、その定義範囲内に含まれる「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」に減縮し、 (b)それに合わせて、訂正前の請求項1に記載されていた「下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」という発明特定事項を、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」という記載に改め、 (c)訂正前の請求項1に記載されていた「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」について、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という記載を追加することにより選択される化合物の組合せを減縮し、 (d)訂正前の請求項1には記載されていなかった「ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」という除外規定を付加することにより、液晶媒体に含まれる化合物の範囲を実質的に減縮する、 というものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 上記2.(4)ア(ア)「訂正の目的について」に記載した(a)及び(b)の訂正は、訂正前の本件明細書の[0206]に記載された例M8において、「B-302FF」及び「B-502FF」が配合されていることに基づくものであり、同(c)の訂正は、選択肢の一部を削除するものであり、同(d)の訂正は、平成30年8月2日付け取消理由通知(決定の予告)に記載された甲第1号証(特開2003-119466号公報)に記載された発明及び同甲第2号証(特開2003-327965号公報)に記載された発明を除外するものであるから、いずれも願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項1に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1に係る訂正事項1については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項1についてのまとめ よって、訂正事項1は訂正の要件を満たすものといえる。 イ 訂正事項2について (ア)訂正の目的について 訂正事項2のうち、 (a)訂正前の請求項2に記載されていた「1種類以上の・・・式B-4の化合物」を、その定義範囲内に含まれる「式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」に減縮する訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2のうち、 (b)訂正前の請求項2に記載されていた「下記式B-4」、「下記式IB」、「下記式II」及び「下記式III」から、「下記」との記載を削除する訂正は、訂正前の請求項2に各式の化学構造式及びその定義が記載されていたなかったため記載に明らかな誤りがあったところ、「下記」との記載を削除することにより、各式(式B-4については上記(a)のとおり減縮した式)が、いずれも請求項2の引用する請求項1に記載されたとおり定義されるものであるという自明な事項を定める正しい記載に訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 上記2.(4)イ(ア)「訂正の目的について」に記載した(a)の訂正及び(b)の「下記式B-4」についての訂正は、訂正前の本件明細書の[0206]に記載された例M8において、「B-302FF」及び「B-502FF」が配合されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、同(b)の「下記式IB」、「下記式II」及び「下記式III」についての訂正は、実質的に各式が訂正前の請求項1に記載された「式IB」、「式II」及び「式III」と同様に定義されることを明らかにしたものであり、これらは願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項11及び12等にも記載されていた事項であるから、願書に最初に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項2に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項2に係る訂正事項2については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項2についてのまとめ よって、訂正事項2は訂正の要件を満たすものといえる。 ウ 訂正事項3について (ア)訂正の目的について 訂正事項3は、 (a)「請求項1または2」を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項3を、訂正前の請求項1の記載に基づいて、請求項1を引用しないように形式を改めるとともに、 (b)訂正前の請求項3に記載されていた「式B-4の化合物は、下式の化合物より選択される・・・B-n(O)mFF」を、その定義範囲内に含まれる「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」に減縮し、 (c)それに合わせて、訂正前の請求項1に記載されていた「下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」という発明特定事項を、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」という記載に改め、 (d)訂正前の請求項1に記載されていた「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」に、選択肢を一部削除することにより減縮し、 (e)訂正前の請求項1には記載されていなかった「ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まない」という除外規定を付加することにより、液晶媒体に含まれる化合物の範囲を実質的に減縮する、 というものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」、及び同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 上記2.(4)ウ(ア)「訂正の目的について」に記載した(a)の訂正は、従属形式を独立形式に改めるものであり、(b)及び(c)の訂正は、訂正前の本件明細書の[0206]に記載された例M8において、「B-302FF」及び「B-502FF」が配合されていることに基づくものであり、同(d)の訂正は、選択肢の一部を削除するものであり、同(e)の訂正は、平成30年8月2日付け取消理由通知(決定の予告)に記載された甲第1号証(特開2003-119466号公報)に記載された発明及び同甲第2号証(特開2003-327965号公報)に記載された発明を除外するものであるから、いずれも願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項3に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項3の訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項3に係る訂正事項3については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項3についてのまとめ よって、訂正事項3は訂正の要件を満たすものといえる。 エ 訂正事項17及び18について (ア)訂正の目的について 訂正事項17及び18は、「請求項1または2」を引用する形式で記載されていた訂正前の請求項16及び17を、訂正前の請求項1の記載に基づいて、いずれも請求項1を引用しないように形式を改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、また、訂正前に引用していた「請求項1または2」のうち、請求項1のみに基づいて記載を改めることにより、実質的に引用請求項の数を減少させる訂正でもあるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項17及び18は、いずれも訂正前に引用していた請求項1の記載に基づいて従属形式を独立形式に改めるものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項16及び17に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項17及び18の訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 訂正事項17及び18によりそれぞれ訂正される請求項16及び17は、いずれも特許異議の申立てがされていない請求項であるところ、訂正事項17及び18は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であるから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件について検討することを要する。 そこで、訂正事項17による訂正後の請求項16に係る発明(以下、「本件発明16」という。)及び訂正事項18による訂正後の請求項17に係る発明(以下、「本件発明17」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、具体的には、後記「4.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要」に記載した「理由1(新規性:甲2を主引用例とする場合)」、「理由2(進歩性:甲2を主引用例とする場合)」、「理由3(サポート要件)」、及び後記「6.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった取消理由及び特許異議申立理由について」に記載した「理由1(新規性:甲1を主引用例とする場合)」、「理由2(進歩性:甲1を主引用例とする場合)」の取消理由を有するものであるか否かについて検討する。 (ウ-1)理由1(新規性:甲2を主引用例とする場合)及び理由2(進歩性:甲2を主引用例とする場合)について 甲第2号証及びその記載事項は、後記5.(1)ア「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりであり、甲2発明は、同イ「甲2に記載された発明」に記載したとおりである。 (ウ-1a)本件発明16について (ウ-1a-1)本件発明16と甲2発明との対比 本件発明16に含まれる「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」は、「中性の誘電率異方性を有する化合物」の一種である。 そこで、後記5.(1)ウ(ア)「本件発明1と甲2発明との対比」を踏まえて、本件発明16と甲2発明とを対比すると、両者は、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越え90℃またはそれ以下の透明点および-5以上-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物、負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点1”: 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物について、本件発明16では、「1種類以上の下記式B-4の化合物」とされ、当該化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%とされているのに対し、甲2発明では、化合物I-1a~I-3eの一つに、本件発明16の式B-4の化合物を含む化合物I-1aが含まれ、当該化合物の含有率が3重量%以上であるのかは明らかでない点。 相違点2”: 負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物について、本件発明16では、「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物II-1~II-5及び化合物III-1~III-6bに、m=1の場合本件発明16の化合物IBに相当する化合物II-1、本件発明16の化合物IIに相当する化合物III-1が含まれている点。 相違点3”: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明16では、「1種類以上の下記式IIIの化合物」を含有し、さらに「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲2発明では、化合物IV-1a~IV-1d、化合物IV-1e、化合物IV-2a~IV-2e及び化合物IV-3a~IV-3cに、本件発明16の化合物IIIに含まれる化合物IV-1a~IV-1eが含まれており、また、本件発明16の式「PP-n-m」に相当する化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-1a-2)相違点3”について 本件発明16における化合物「PP-n-m」について検討すると、甲2の請求項1(摘記甲2-1)には、液晶媒体が「誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C)を含有することが記載されており、甲2の[0028]~[0032](摘記甲2-2)に記載された成分Cを表す式IVの定義には、本件発明16の「PP-n-m」に相当する化合物も含まれる。しかし、甲2の[0069]~[0075](摘記甲2-5)に、「式IVで表わされる化合物は、式IV-1~IV-3で表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい・・・特に好ましくは、式IV-1a~IV-1d、式IV-1e、式IV-2a~IV-2eおよび式IV-3a~IV-3cで表わされる1種または2種以上の化合物を含有する」と記載されている好ましい化合物群には、本件発明16の「PP-n-m」は含まれず、甲2に記載された液晶媒体の具体例(摘記甲2-9)においても、本件発明16の「PP-n-m」に相当する化合物は用いられていないから、甲2発明において上記相違点3”に係る「PP-n-m」に相当する化合物を配合することは、当業者が積極的に動機付けられることではない。 なお、他の相違点については、下記5.(1)ウ(イ)「相違点1について」~同オ「相違点4について」に記載したのと同様のことがいえる。 (ウ-1a-3)相違点1”~相違点3”の組合せについて 後記5.(1)ウ(カ)「相違点1~4の組合せについて」における検討を踏まえると、本件発明16が属する液晶組成物の技術分野においては、複数種類の化合物を組み合わせて配合することにより、1種類の化合物では出せないような特性を生み出すことができること、及び配合物の特性を事前に予測することは困難であり、実際に配合してみなければ配合物の特性を正確に知ることはできないというのが、本件特許に係る出願の優先日の時点における当業者の技術常識であり、また、例えば、甲2の[0009]~[0015](摘示甲2-10)にも記載されているように、液晶ディスプレイに望まれる複数の特性を同時にバランス良く備える液晶組成物を得ることは、一般には困難なことであったといえるから、仮に、上記相違点1”~3”に係る本件発明16の各構成が、個別に見れば甲2発明に包含されているといえるとしても、多岐に渡る選択肢の組合せの中から、特にすべて併せて本件発明16に相当する構成となるような組合せを選択することが動機付けられるものではないし、かつ、そのような組合せが本件特許に係る出願の優先日前における技術常識に照らして周知の技術的事項であったとも認められない。 さらに、甲2に記載されたいずれの具体例も本件発明16に相当する化合物の組合せを採用していないところ、液晶組成物の技術分野における技術常識に鑑みれば、具体例を構成している化合物の一部を、環の数、置換基の種類等が異なる別の化合物に置き換えた場合には、置き換え前と同じ特性が維持されるかどうか予測することは困難であるから、当業者といえども甲2に記載された具体例に基づいて、本件発明16に相当する成分の組合せに容易に想到し得るとはいえない。 そうすると、甲2において、上記相違点1”~3”に係る選択肢に個別には重複する記載があるとしても、それらをすべて併せて本件発明16に相当する構成となるように組み合わせることは甲2には具体的に記載されているとはいえないから、甲2発明により本件発明16の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲2の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明16に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲2により本件発明16の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-1a-4)本件発明16についてのまとめ よって、本件発明16は甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1は甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (ウ-1b)本件発明17について (ウ-1b-1)本件発明17と甲2発明との対比 本件発明17は、本件発明16における「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」が「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」に置き換わっている以外は、本件発明16と同様の発明特定事項により特定される発明であり、当該化合物「PYP-n(O)m」は、「負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物」の一種である。そこで、上記2.(4)エ(ウ)(ウ-1a-1)「本件発明16と甲2発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明17と甲2発明とを対比すると、両者は、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越え90℃またはそれ以下の透明点および-5以上-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物、負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点1''': 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物について、本件発明17では、「1種類以上の下記式B-4の化合物」を含有し、当該化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%とされ、さらに「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲2発明では、化合物I-1a~I-3eに、本件発明17の式B-4の化合物を含む化合物I-1a、及び本件発明17の式PYP-n(O)mの化合物を含む化合物I-2aが含まれ、前者の化合物の含有率が3重量%以上であるのかは明らかでない点。 相違点2''': 負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物について、本件発明17では、「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物II-1~II-5及び化合物III-1~III-6bに、m=1の場合本件発明17の化合物IBに相当する化合物II-1、本件発明17の化合物IIに相当する化合物III-1が含まれている点。 相違点3''': 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明17では、「1種類以上の下記式IIIの化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物IV-1a~IV-1d、化合物IV-1e、化合物IV-2a~IV-2e及び化合物IV-3a~IV-3cに、本件発明17の化合物IIIに含まれる化合物IV-1a~IV-1eが含まれている点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-1b-2)相違点1'''について 本件発明17における化合物「PYP-n(O)m」について検討すると、甲2の[0049](摘示甲2-3)には、「式Iで表わされる化合物は・・・特に好ましくは式I-2a、I-2c、I-3aおよびI-3cからなる群から選択される」ことが記載され、当該特に好ましい選択肢の一つである化合物I-2aの定義は、本件発明17の化合物PYP-n(O)mを包含するものである。 また、実際、甲2発明の具体例に当たる例4(摘示甲2-9の[0134]~[0136])は、本件発明17の化合物PYP-n(O)mに相当する「化合物PYP-2-3」を含有する。 しかし、上記[0049]には、特に好ましい選択肢とされている化合物が具体的にどのような理由で好ましいのかは記載されていない。 なお、他の相違点については、下記5.(1)ウ(イ)「相違点1について」~同オ「相違点4について」に記載したのと同様のことがいえる。 (ウ-1b-3)相違点1'''~相違点3'''の組合せについて 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-1a-3)「相違点1”~相違点3”の組合せについて」における検討を踏まえると、相違点1'''~相違点3'''についても同様のことがいえる。 そうすると、甲2において、上記相違点1'''~3'''に係る選択肢に個別には重複する記載があるとしても、それらをすべて併せて本件発明17に相当する構成となるように組み合わせることは甲2には具体的に記載されているとはいえないから、甲2発明により本件発明17の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲2の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明17に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲2により本件発明17の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-1b-4)本件発明17についてのまとめ よって、本件発明17は甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明17は甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (ウ-2)理由3(サポート要件)について (ウ-2-1)本件発明の課題について 本件発明の課題は、後記5.(2)ア「本件発明の課題について」に記載したとおりである。 (ウ-2a)本件発明16に対応する明細書の記載について 後記5.(2)ウ「本件発明1に対応する明細書の記載について」における検討を踏まえて、本件発明16について検討する。 本件明細書の段落[0206]には、本件発明16の液晶媒体組成及び諸特性の要件を満足する具体例として「例M8」が記載されており、当該「例M8」は、上記発明の課題とされている複数の特性を同時にバランス良く備えるものであることがわかる。 また、当該「例M8」に含まれるPP-1-4は、本件発明16に特定されている化合物PP-n(O)mの代表的な化合物といえるものである。 そうすると、当業者は、環の数、環の種類、側鎖置換基及び末端基の化学構造において、「例M8」の含有成分と概ね同等とみなされる範囲の化合物を同様の割合で組み合わせて配合した液晶媒体については、「例M8」と同様に上記課題を解決し得る諸特性を備えたものとなる蓋然性が高いと理解することができる。 よって、本件発明16は、発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されたものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 (ウ-2b)本件発明17に対応する明細書の記載について 後記5.(2)ウ「本件発明1に対応する明細書の記載について」における検討を踏まえて、本件発明17について検討する。 本件明細書の段落[0215]には、本件発明17の液晶媒体組成及び諸特性の要件を満足する具体例として「例M17」が記載されており、当該「例M17」は、上記発明の課題とされている複数の特性を同時にバランス良く備えるものであることがわかる。 ここで、上記「例M17」に含まれる成分のうち、B-11FFは、本件発明17に特定されている式B-4の化合物の代表的な化合物といえ、CPY-2-O2及びCPY-3-O2は、本件発明17に特定されている化合物IIの代表的な化合物といえ、CC-3-V1は、本件発明17に特定されている化合物IIIの代表的な化合物といえ、PYP-2-3及びPYP-3-3は、本件発明17に特定されている化合物PYP-n(O)mの代表的な化合物といえるものでありるから、当業者は、環の数、環の種類、側鎖置換基及び末端基の化学構造において上記各成分と概ね同等とみなされる範囲の化合物を同様の割合で組み合わせて配合した液晶媒体については、「例M17」と同様に上記課題を解決し得る諸特性を備えたものとなる蓋然性が高いと理解することができる。 よって、本件発明17は、発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されたものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 (ウ-3)理由1(新規性:甲1を主引用例とする場合)及び理由2(進歩性:甲1を主引用例とする場合)について 甲第1号証及びその記載事項は、後記6.(2)ア「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりであり、甲1A発明、甲1B発明及び甲1C発明は、同イ「甲1に記載された発明」に記載したとおりである。 (ウ-3a)本件発明16について (ウ-3a-1)本件発明16と甲1A発明との対比 本件発明16に含まれる「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」は、「中性の誘電率異方性を有する化合物」の一種である。 そこで、後記6.(2)ウ(ア)「本件発明1と甲1A発明との対比」を踏まえて、本件発明16と甲1A発明とを対比すると、両者は、 「6~24.7の範囲のγ1/Δn2の比の値および-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点5”: 液晶媒体について、本件発明16では、60℃を越える透明点を有することが特定されているのに対し、甲1A発明では、透明点が明らかでない点。 相違点6”: 負の誘電異方性を有する極性化合物について、本件発明16では、「1種類以上の下記式B-4の化合物」及び「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を含有し、「下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」とされているのに対し、甲1A発明では、式IIa~IIjの中に、本件発明16の化合物B-4を含む化合物IIiが含まれ、本件発明1の化合物IBに相当する式IIb、IIc、IIdで表される化合物、及び、本件発明1の化合物IIに含まれる式IIe、IIg、IIhで表される化合物が含まれるものの、「1種以上の式IIiで表される化合物」及び「式IIb、IIc、IId、式IIe、IIg、IIhから選択される2種類以上の化合物」を含有すると共に、「1種以上の式IIiで表される化合物の含有率が3重量%以上」であるのか明らかでない点。 相違点7”: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明16では、「1種類以上の下記式IIIで表される化合物」を含有し、さらに「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1A発明では、式IIIa~IIIgの中に、本件発明1の式IIIに含まれる式IIIa~IIIdで表される化合物が含まれており、また、本件発明16の式「PP-n-m」に相当する化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3a-2)相違点7”について 事案に鑑み、まず、相違点7”について検討する。 甲1には、任意成分の記載及び具体例の配合成分等も含めて精査しても、本件発明16の式「PP-n-m」に相当する化合物を液晶媒体に配合することについて、記載も示唆もされていない。 また、上記2.(4)エ(ウ)(ウ-1a-3)「相違点1”~相違点3”の組合せについて」に記載したとおり、本件発明16が属する液晶組成物の技術分野においては、複数種類の化合物を組み合わせて配合することにより、1種類の化合物では出せないような特性を生み出すことができること、及び配合物の特性を事前に予測することは困難であり、実際に配合してみなければ配合物の特性を正確に知ることはできないというのが、本件特許に係る出願の優先日の時点における当業者の技術常識であり、また、例えば、甲2の[0009]~[0015](摘示甲2-10)にも記載されているように、液晶ディスプレイに望まれる複数の特性を同時にバランス良く備える液晶組成物を得ることは、一般には困難なことであったといえるから、甲1A発明に対して新たな成分を追加することは、当業者が積極的に動機付けられることではない。 まして、上記相違点7”の点に加え、甲1A発明のその他の成分の多岐に渡る選択肢の組合せの中から、すべて併せて本件発明16に相当する構成となるような組合せを選択することも当業者が動機付けられるものではないし、かつ、そのような組合せが本件特許に係る出願の優先日前における技術常識に照らして周知の技術的事項であったとも認められない。 加えて、甲1に記載されたいずれの具体例も本件発明16に相当する化合物の組合せを採用していないところ、液晶組成物の技術分野における技術常識に鑑みれば、具体例を構成している化合物の一部を、環の数、置換基の種類等が異なる別の化合物に置き換えた場合には、置き換え前と同じ特性が維持されるかどうか予測することは困難であるから、当業者といえども甲1に記載された具体例に基づいて、本件発明16に相当する成分の組合せに容易に想到し得るとはいえない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1A発明により本件発明16の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明16に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明16の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3a-3)本件発明16と甲1B発明との対比 後記6.(2)ウ(ウ)「本件発明1と甲1B発明との対比」を踏まえて、本件発明16と甲1B発明とを対比すると、両者は、 「60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である、 負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点8”: γ1/Δn2の値について、本件発明16では、6~45の範囲であるのに対し、甲1B発明では、5.925である点。 相違点9”: 液晶媒体について、本件発明16では、「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1B発明では、該当化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3a-4)相違点9”について 事案に鑑み、まず、相違点9”について検討する。 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3a-2)「相違点7”について」における検討を踏まえると、相違点9”についても同様のことがいえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1B発明により本件発明16の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明16に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明16の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3a-5)本件発明16と甲1C発明との対比 甲1A発明の液晶媒体の具体的な液晶媒体である甲1C発明も、甲1B発明の液晶媒体と同様に、本件発明16における式PP-n-mに相当する化合物を含まないものであるから、本件発明16と甲1C発明を対比すると、両者の間には、少なくとも以下の相違点が存在することになる。 相違点10”: 液晶媒体について、本件発明16では、「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1C発明では、該当化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3a-6)相違点10”について 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3a-2)「相違点7”について」における検討を踏まえると、相違点10”についても同様のことがいえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1C発明により本件発明16の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明16に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明16の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3a-7)本件発明16についてのまとめ よって、本件発明16は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明16は甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (ウ-3b)本件発明17について (ウ-3b-1)本件発明17と甲1A発明との対比 本件発明17は、本件発明16における「下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物」が「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」に置き換わっている以外は、本件発明16と同様の発明特定事項により特定される発明であり、当該化合物「PYP-n(O)m」は、「負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物」の一種である。 そこで、上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3a-1)「本件発明16と甲1A発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明17と甲1A発明とを対比すると、両者は、 「6~24.7の範囲のγ1/Δn2の比の値および-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点5''': 液晶媒体について、本件発明17では、60℃を越える透明点を有することが特定されているのに対し、甲1A発明では、透明点が明らかでない点。 相違点6''': 負の誘電異方性を有する極性化合物について、本件発明17では、「1種類以上の下記式B-4の化合物」及び「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を含有し、「下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」とされ、さらに「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1A発明では、式IIa~IIjの中に、本件発明17の化合物B-4を含む化合物IIiが含まれ、本件発明1の化合物IBに相当する式IIb、IIc、IIdで表される化合物、及び、本件発明1の化合物IIに含まれる式IIe、IIg、IIhで表される化合物が含まれるものの、「1種以上の式IIiで表される化合物」及び「式IIb、IIc、IId、式IIe、IIg、IIhから選択される2種類以上の化合物」を含有すると共に、「1種以上の式IIiで表される化合物の含有率が3重量%以上」であるのか明らかでなく、さらに、本件発明17の式「PYP-n(O)m」に相当する化合物は含まれていない点。 相違点7''': 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明17では、「1種類以上の下記式IIIで表される化合物」を含有するのに対し、甲1A発明では、式IIIa~IIIgの中に、本件発明1の式IIIに含まれる式IIIa~IIIdで表される化合物が含まれている点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3b-2)相違点6'''について 事案に鑑み、まず、相違点6'''について検討する。 甲1には、任意成分の記載及び具体例の配合成分等も含めて精査しても、本件発明17の式「PYP-n(O)m」に相当する化合物を液晶媒体に配合することについて、記載も示唆もされていない。 そして、上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3a-2)「相違点7”について」における検討を踏まえると、相違点6'''についても同様のことがいえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1A発明により本件発明17の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明17に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明17の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3b-3)本件発明17と甲1B発明との対比 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3a-3)「本件発明16と甲1B発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明17と甲1B発明とを対比すると、両者は、 「60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である、 負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点8''': γ1/Δn2の値について、本件発明17では、6~45の範囲であるのに対し、甲1B発明では、5.925である点。 相違点9''': 液晶媒体について、本件発明17では、「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1B発明では、該当化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3b-4)相違点9'''について 事案に鑑み、まず、相違点9'''について検討する。 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3b-2)「相違点6'''について」における検討を踏まえると、相違点9'''についても同様のことがいえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1B発明により本件発明17の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明17に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明17の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3b-5)本件発明17と甲1C発明との対比 甲1A発明の液晶媒体の具体的な液晶媒体である甲1C発明も、甲1B発明の液晶媒体と同様に、本件発明17における式PYP-n(O)mに相当する化合物を含まないものであるから、本件発明17と甲1C発明を対比すると、両者の間には、少なくとも以下の相違点が存在することになる。 相違点10''': 液晶媒体について、本件発明17では、「下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物」を含有するのに対し、甲1C発明では、該当化合物は含まれていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (ウ-3b-6)相違点10'''について 上記2.(4)エ(ウ)(ウ-3b-2)「相違点6'''について」における検討を踏まえると、相違点10'''についても同様のことがいえる。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、甲1C発明により本件発明17の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲1の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明17に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲1により本件発明17の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ-3b-7)本件発明17についてのまとめ よって、本件発明17は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明17は甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 (ウ-4)独立特許要件のまとめ 以上のことから、訂正事項17及び18は、いずれも特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。 (エ)訂正事項17及び18についてのまとめ よって、訂正事項17及び18は、いずれも訂正の要件を満たすものといえる。 オ 訂正事項19~22について (ア)訂正の目的について 訂正事項19~22は、それぞれ訂正前の請求項23~26を削除するものであるから、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項19~22は、いずれも請求項を削除する訂正であるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、いずれも請求項に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項19~22の訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項23~26に係る訂正事項19~22については、いずれも特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項19~22についてのまとめ よって、訂正事項19~22は、いずれも訂正の要件を満たすものといえる。 カ 訂正事項23について (ア)訂正の目的について 訂正事項23は、訂正前の請求項28に記載されていた「式B-4」で表される化合物を、請求項28が従属する訂正前の請求項1に記載されていた式B-4の定義範囲内に含まれる「式B-3O2FF、B-5O2FF」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項23は、訂正前の本件明細書の[0206]に記載された例M8において、「B-302FF」及び「B-502FF」が配合されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項28に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項23の訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項28に係る訂正事項23については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項23についてのまとめ よって、訂正事項23は訂正の要件を満たすものといえる。 キ 訂正事項24(補正後)について (ア)訂正の目的について 訂正事項24は、訂正前の請求項29に記載されていた「式B-4」の化合物を、請求項29が従属する訂正前の請求項1に記載されていた式B-4の定義範囲内に含まれる「式B-3O2FFおよびB-5O2FF」に減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張又は変更について 訂正事項24は、訂正前の本件明細書の[0206]に記載された例M8において、「B-302FF」及び「B-502FF」が配合されていることに基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内の訂正であるといえる。 また、上記の訂正が、請求項29に係る発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないことも明らかである。 よって、訂正事項24の訂正は、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 (ウ)独立特許要件について 本件においては、訂正前の請求項1~15、18~32に対して特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項29に係る訂正事項24については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。 (エ)訂正事項24についてのまとめ よって、訂正事項24は訂正の要件を満たすものといえる。 ク 訂正請求(補正後)についてのまとめ 以上のとおり、本件訂正(補正後)は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、同第2号又は同第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するものである。 また、訂正後の請求項16及び17については、請求項16及び請求項17についての訂正が認められる場合には、別の訂正単位とする求めがされている。 よって、訂正後の請求項〔1、2、4~15、18~32〕、3、16、17について訂正することを認める。 3.本件発明について 本件訂正(補正後)により訂正された特許請求の範囲の請求項1~32に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明32」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~32に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、本件特許異議の申立ての対象となっているのは、本件発明1~15及び18~32である。 「[請求項1] 6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず、 ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化1] [化2] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化3] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化4] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化5] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化100] (式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、 R12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。) [化101] (式中、 mおよびnは、それぞれ互いに独立に、1~7の整数を表し、(O)は、酸素原子または単結合を表わす。) [請求項2] 式B-3O2FFおよび式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、1種類以上の式IBの化合物、1種類以上の式IIの化合物および1種類以上の式IIIの化合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の液晶媒体。 [請求項3] 6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 ただし、下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まない ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化31] [化32] (式中、 R2は、無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化33] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化34] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化35] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化300] (式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、 R12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である。) [化301] (式中、 mおよびnは、それぞれ互いに独立に、1~7の整数を表し、(O)は、酸素原子または単結合を表わす。) [請求項4] 式IBの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化7] (式中、 mは、1~6の整数を表し、 REは、H、CH3、C2H5またはn-C3H7を表し、 xは、0、1、2または3を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化8] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化9] (式中、R1は、式IBで与えられる意味を有する。) [化10] (式中、alkylは、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表す。) [化11] (式中、alkylは、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表す。) [請求項5] 式IBの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項4に記載の液晶媒体。 [化12] [請求項6] 式IIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化13] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [請求項7] 式IIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項6に記載の液晶媒体。 [化14] (式中、R2は、メチル、エチル、プロピルまたはペンチルを表す。) [請求項8] 式IIIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化15] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基、および alkenylおよびalkenyl*は、互いに独立してそれぞれ2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基を表す。) [請求項9] 式IIIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項8に記載の液晶媒体。 [化16] (式中、alkylは、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表す。) [請求項10] 式IIIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項9に記載の液晶媒体。 [化17] (式中、alkylは、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表す。) [請求項11] 式IIIの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項10に記載の液晶媒体。 [化18] [請求項12] 式IAの化合物より選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化19] (式中、 R1は、H、無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化20] -C≡C-、-OCF2-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [請求項13] 式IAの化合物は、下式の化合物より選択されることを特徴とする請求項12に記載の液晶媒体。 [化21] (式中、 mは、1~6の整数を表し、 REは、H、CH3、C2H5またはn-C3H7を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化22] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [請求項14] 下式より選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化23] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表す。) [請求項15] 下式より選択される1種類以上の化合物を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [化24] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表す。) [請求項16] 6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物、1種類以上の下記式IIIの化合物ならびに下記式PP-n-mより選択される1種類以上の化合物を含有し、 下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化102] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化103] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化104] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化105] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化106] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化25] (式中、nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表す。) [請求項17] 6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 1種類以上の下記式B-4の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物、1種類以上の下記式IIIの化合物ならびに下記式PYP-n(O)mより選択される1種類以上の化合物を含有し、 下記式B-4の化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上である ことを特徴とする、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。 [化107] (式中、 alkylおよびalkyl*は、互いに独立してそれぞれ1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化108] (式中、 R1およびR2は、互いに独立して、それぞれ無置換、CNまたはCF3でモノ置換、またはハロゲンで少なくともモノ置換されている15個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、但し、これらの基において1または2以上のCH2基は、独立して、O原子同士が直接結合しないようにして、-O-、-S-、 [化109] -C≡C-、-CF2O-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-または-O-CO-O-で置換されていても良く、 vは1~6を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [化110] (式中、 R31およびR32は、互いに独立して、12個までの炭素原子を有する直鎖アルキル、アルキルアルコキシ、アルコキシまたはアルケニル基を表し、 [化111] を表し、 Zは、単結合、-C2H4-、-CH=CH-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-CH=CHCH2CH2-、-CH2CH2CH=CH-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-COO-、-OCO-、-C2F4-、-CHFCF2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH2-を表す。) [化26] (式中、 nおよびmは、それぞれ互いに独立に1~6の整数を表し、 (O)は、酸素原子または単結合を表す。) [請求項18] 表Bより選択される1種類以上の安定剤を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [表1] [表2] [表3] [表4] [表5] [請求項19] 60~90℃の透明点を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項20] -2.3~-5.5のΔε値を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項21] 70℃±5℃の透明点および-3.0±0.6のΔεを有し、次の所定のΔn値において、次の回転粘度γ1を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [表6] [請求項22] 70℃±5℃の透明点および-4.0±0.4のΔεを有し、次の所定のΔn値において、次の回転粘度γ1を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [表7] [請求項23] (削除) [請求項24] (削除) [請求項25] (削除) [請求項26] (削除) [請求項27] 1.8~2.3Vの範囲のしきい値(容量性)を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項28] 式B-3O2FF、B-5O2FF、IB、IIおよびIIIで表される化合物を5種類以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項29] 液晶媒体全体に対する式B-3O2FFおよびB-5O2FFの化合物の割合が、13重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項30] 液晶媒体全体に対する式IBおよびIIの化合物の割合が、24重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項31] 液晶媒体全体に対する式IIIの化合物の割合が、10重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶媒体。 [請求項32] 誘電体として、請求項1または2に記載の液晶媒体を有することを特徴とする、ECB、PALCD、FFSまたはIPS効果に基づくアクティブマトリックスを備えた電気光学ディスプレイ。」 なお、以降においては、例えば「1種類以上の式IIIの化合物」を「化合物III」と記載する等、式の記号を用いた省略記載をすることがある。 4.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由の概要 訂正前の請求項1~15、18~32に係る特許に対して平成30年8月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告、理由1~理由3)の要旨は次のとおりである。 なお、引用文献(甲第2号証)は、下記5.(1)ア「引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。 (1)理由1(新規性:甲2を主引用例とする場合) 訂正前の請求項1~15、18~22及び27~32(平成30年4月16日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載されたもの。以下同じ。)に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由2(進歩性:甲2を主引用例とする場合) 訂正前の請求項1~15及び18~32に係る発明は、下記甲第2号証に記載された発明、甲第2号証に記載の事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3)理由3(サポート要件) 訂正前の請求項1~15及び18~32に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであって、その発明に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 5.取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由についての判断 (1)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)(甲2を主引用例とする場合)について ア 引用文献及びその記載事項 <引用文献等一覧> 甲第2号証:特開2003-327965号公報(以下、「甲2」という。) 甲2には、以下の事項が記載されている。 (甲2-1)「[請求項1] ネマティック液晶媒体であって、 a)1種または2種以上の式Iで表わされる誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A): [化1] (式中、 R11およびR12は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1~7個を有するアルキル基、炭素原子1~7個を有するアルコキシ基、もしくは炭素原子2~7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基であり、 [化2] であり、 Z11およびZ12は、それぞれ相互に独立し、-CH2-CH2-、-CH2-CF2-、-CF2-CH2-、-OCH2-、-CH2O-、-OCF2-、-CF2O-または単結合であり、およびnは、0または1であり、 ただし、 [化3] である場合、第三のフェニル環中に存在する1個または2個以上のH原子はF原子により置き換えられていてもよい);および b)成分Aとは相違しているもう1種の誘電的に負の液晶成分(成分B);および任意に、 c)誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C);および任意に、 d)誘電的に正の液晶成分(成分D); を含有することを特徴とする、ネマティック液晶媒体。 [請求項2] 式IIおよび式III: [化4] (各式中、 R21、R22、R31およびR32は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1~7個を有するアルキル基またはアルコキシ基、もしくは炭素原子2~7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基であり、 Z21、Z22、Z31およびZ32は、それぞれ相互に独立し、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-または単結合であり、 mは、0または1であり、および [化5] である)で表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を包含する成分Bを含有することを特徴とする液晶媒体。 ・・・ [請求項7] 請求項1~6のいずれかに記載の液晶媒体を含有する電気光学ディスプレイ。 [請求項8] アクティブマトリックスディスプレイであることを特徴とする、請求項7に記載のディスプレイ。 [請求項9] ECBまたはIPSディスプレイであることを特徴とする、請求項7および8のいずれかに記載のディスプレイ。」 (甲2-2)「[0028]および任意に、 c)式IV: [化13] (式中、R41およびR42は、それぞれ相互に独立し、式II中に存在するR21にかかわる上記定義のとおりであり、Z41、Z42およびZ43は、それぞれ相互に独立し、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-COO-または単結合であり、 [0029] [化14] であり、および [0030]oおよびpは、それぞれ相互に独立し、0または1である、しかし好ましくは、R41およびR42はそれぞれ相互に独立し、炭素原子1~5個を有するアルキル基またはアルコキシ基、もしくは炭素原子2~5個を有するアルケニル基であり、 [0031] [化15] であり、 [0032] 非常に特に好ましくはこれらの環の少なくとも2個は、 [化16] であり、ただし2個の隣接する環は、非常に特に好ましくは直接に結合しており、好ましくは [化17] である)で表わされる1種または2種以上の誘電的にニュートラルの化合物を包含する誘電的にニュートラルの成分(成分C)」 (甲2-3)「[0049]式Iで表わされる化合物は、特に好ましくは式I-1a、I-1b、I-2a~I-2fおよびI-3a~I-3eで表わされる化合物からなる群から、非常に特に好ましくは式I-1a、I-2a、I-2b、I-2c、I-3a、I-3bおよびI-3cで表わされる化合物からなる群から、特に好ましくは式I-2a、I-2c、I-3aおよびI-3cからなる群から選択される: [0050] [化34] [0051] [化35] [0052]各式中、R11およびR12は、式Iにかかわる上記定義のとおりであり、またR11は好ましくは、炭素原子1~7個を有するアルキル基または炭素原子2~7個を有するアルケニル基であり、およびR12は好ましくは、炭素原子1~7個を有するアルキル基、炭素原子1~7個を有するアルコキシ基または炭素原子2~7個を有するアルケニルオキシ基である。」 (甲2-4)「[0055]成分Bは好ましくは、式IIおよび式IIIで表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物から主としてなり、特に好ましくは実質的に完全になり、非常に特に好ましくはほとんど完全になる。式IIで表わされる化合物は、式II-1~II-5、好ましくは式II-1~II-3からなる群から選択すると好ましい: [0056] [化36] [0057]各式中、R21およびR22は、式IIにかかわる上記定義のとおりであり、およびR21は、好ましくは炭素原子1~7個を有するn-アルキル基、炭素原子1~7個を有するn-アルコキシ基または炭素原子2~7個を有するアルケニルオキシ基であり、R22は、好ましくは炭素原子1~7個を有するn-アルコキシ基または炭素原子2~7個を有するアルケニルオキシ基であり、また式I-1および式I-2においてはまた、炭素原子1~7個を有するn-アルキル基であることができ、mは、0または1である。式IIIで表わされる化合物は、式III-1~III-6b、好ましくは式III-1~III-4、特に好ましくは式III-1、式III-4aおよび式III-4bで表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい: [0058] [化37] [0059] [化38] [0060]各式中、R31、R32、Z31およびZ32は、式IIIにかかわる上記定義のとおりであり、好ましくは、R31は、炭素原子1~7個を有するn-アルキル基、炭素原子1~7個を有するn-アルコキシ基または炭素原子2~7個を有するアルケニルオキシ基であり、R32は、炭素原子1~7個を有するn-アルコキシ基または炭素原子2~7個を有するアルケニルオキシ基であり、また式III-2およびIII-3において、炭素原子1~7個を有するn-アルキル基であることができ、およびZ31およびZ32は、それぞれ相互に独立し、-CH2-CH2-、-CH2-O-、-CF2-O-または-O-CF2-である。 ・・・ [0062]・・・液晶媒体は特に好ましくは、式II-1a~II-1c、特に好ましくは式II-1aおよび式II-1cで表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を含有すると好ましい: [0063] [化40] [0064]各式中、R21およびR22は、式IIにかかわる上記定義のとおりであり、好ましくは式II-1にかかわる上記定義のとおりである。液晶媒体は特に好ましくは、式III-1a、式III-3a、式III-4aおよび式III-6a、好ましくは式III-1aおよび式III-4a、特に好ましくは式III-1aで表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の式IIIで表わされる化合物を含有する: [0065] [化41] [0066]各式中、R31およびR32は、式IIIにかかわる上記定義のとおりであり、好ましくは式III-1~III-6にかかわり上記に対応して定義されているとおりである。」 (甲2-5)「[0069]・・・成分Cは、1種または2種以上の式IVで表わされる化合物から主としてなり、特に好ましくは実質的に完全になり、非常に特に好ましくはほとんど完全になる。これらの式IVで表わされる化合物は、式IV-1~IV-3で表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい: [0070] [化44] [0071]各式中、R41、R42、Z41、Z42、 [化45] はそれぞれ、式IVにかかわり対応して上記に定義されているとおりである。液晶媒体は特に好ましくは、式IV-1a~IV-1d、式IV-1e、式IV-2a~IV-2eおよび式IV-3a~IV-3cで表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を含有する: [0072] [化46] [0073] (各式中、nおよびmはそれぞれ相互に独立し、1~5であり、またoおよびpはそれぞれ、それ自体および相互の両方で独立し、0~3である); [化47] [0074] [化48] [0075]各式中、R41およびR42はそれぞれ、式IV1にかかわる上記定義のとおりであり、このフェニル環は、当該化合物が式IIおよびその付属式で表わされる化合物と同一ではないような様相でフッ素化されていてもよい。R41は好ましくは、炭素原子1~5個を有する、特に好ましくは炭素原子1~3個を有するn-アルキル基であり、およびR42は好ましくは、炭素原子1~5個を有するn-アルキル基またはn-アルコキシ基、もしくは炭素原子2~5個を有するアルケニル基である。これらの中で、式IV1a~IV1dで表わされる化合物は、特に好適な化合物として挙げられる。」 (甲2-6)「[0081]・・・好適態様において、本発明による液晶媒体は総合し、全体としての混合物に基づき、成分A、好ましくは式Iで表わされる化合物を、5%~85%、好ましくは10%~55%、特に好ましくは10%~30%、成分B、好ましくは式IIおよび式IIIで表わされる化合物を、5%~85%、好ましくは10%~85%、特に好ましくは20%~80%、および非常に特に好ましくは40%~75%、 [0082]成分C、好ましくは式IVで表わされる化合物を、0%~50%、好ましくは0%~40%、特に好ましくは10%~40%、非常に特に好ましくは5%~25%、および成分D、好ましくは式Vで表わされる化合物を、0%~40%、好ましくは0%~30%、特に好ましくは0%~20%、非常に特に好ましくは1%~10%、の割合で含有する。」 (甲2-7)「[0090]本発明による液晶媒体は、好ましくは各場合、-20℃~70℃、特に好ましくは-30℃~80℃、非常に特に好ましくは-40℃~90℃、最も好ましくは-40℃~105℃のネマティック相を有する。ここで、「ネマティック相を有する」の用語は、第一に対応する温度において低温でスメクティック相および結晶化が見出されないこと、および第二にまた、ネマティック相からの加熱に際し、透明化が生じないことを意味する。低温における試験は、対応する温度における流動粘度において行い、次いで電気光学用途に対応する膜厚を有する試験セルで少なくとも100時間にわたり保存することによって検査する。高温において、透明点を慣用の方法によってキャピラリーで測定する。 [0091]さらにまた、本発明による液晶媒体の特徴は、比較的大きい光学異方性値を有することにある。複屈折率値は、好ましくは0.090~0.180の範囲、特に好ましくは0.105~0.160の範囲、非常に特に好ましくは0.110~0.150の範囲である。さらに、本発明による液晶媒体は、低いしきい値電圧値(V0)、好ましくは2.2Vよりも低いか、または等しい、好ましくは2.0Vよりも低いか、または等しい、特に好ましくは1.9Vよりも低いか、または等しい、および非常に特に好ましくは1.85Vよりも低いか、または等しいしきい値電圧値(V0)有する。各物理学的性質にかかわるこれらの好適数値はまた、それぞれ相互に組合されて見出される。 [0092]従って、本発明による液晶媒体は、例えば90℃またはそれ以下の透明点とともに、5またはそれ以下の誘電異方性値(|△ε|)、 - 0.15またはそれ以下の複屈折率に対し、260mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、 - 0.12またはそれ以下の複屈折率に対し、223mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、および - 0.10またはそれ以下の複屈折率に対し、211mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、を有する。 [0093]70℃またはそれ以下の透明点および3.5またはそれ以下の誘電異方性値(|△ε|)を有する本発明による液晶媒体は、 - 0.15またはそれ以下の複屈折率に対し、155mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、 - 0.12またはそれ以下の複屈折率に対し、120mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、 - 0.11またはそれ以下の複屈折率に対し、118mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、および - 0.10またはそれ以下の複屈折率に対し、115mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、を有する。」 (甲2-8)「[0100]本発明による液晶媒体は、必要に応じてまた、追加の添加剤およびカイラルドープ剤を慣用の量で含有することができる。これらの使用されるドープ剤の量は、総合して、全体としての混合物の量に基づき0%~10%、好ましくは0.1%~6%である。使用される各化合物の濃度は、好ましくは0.1~3%である。液晶媒体中の液晶化合物の濃度および濃度範囲を示す場合、これらのおよび類似の添加剤の濃度は考慮されていない。 本発明による混合物に添加することができるドープ剤を以下に示す: ・・・ [0103]・・・適当な添加剤を用いることによって、本発明による液晶媒体は、これらを従来開示されている全部のタイプのECB、VAN、IPS、GHまたはASM-PALCDディスプレイに使用することができるように改変することができる。 [0104] [実施例]下記例は、本発明を例示するものであって、制限を示すものではない。これらの例において、液晶物質の融点T(C,N)、スメクティック相(S)からネマティック相(N)への転移T(S,N)および透明点T(N,I)は、摂氏度で示されている。別段の記載がないかぎり、本明細書全体に記載のパーセンテージは重量によるパーセントであり、また別段の記載がないかぎり、物理的性質は20℃における数値である。・・・ [0105]別段の記載がないかぎり、本明細書中に温度にかかわり示されている数値は全部が、℃であり、また全部の温度差は相当して相違する度である。本明細書および下記例において、液晶化合物の構造は、頭文字により示されており、その化学式への変換は下記表AおよびBに従い達成される。全部の基CnH2n+1およびCmH2m+1は、n個またはm個の炭素原子をそれぞれ有する直鎖状アルキル基である。表Bのコードは、自明である。表Aには、骨格構造にかかわる頭文字のみが示されている。各場合、この骨格構造にかかわる頭文字の後に、ハイフンにより分離して、置換基R1、R2、L1およびL2に関するコードが示されている:」 (甲2-9)「[0130]・・・ 例3 比較例2と類似の透明点および類似の複屈折率を有する液晶混合物を製造した。例2と同様に、本発明による式Iで表わされるフッ素化ターフェニル化合物をまた使用したが、この場合、付属成分が完全に相違する。この混合組成物は、例2の組成物に比較して、本発明によれば好適組成物である。この混合物の組成および物理的性質を下表に示す。 [0131] [表6] [0132]比較例1と同様に、この液晶媒体をTFTアドレス法によるディスプレイに導入した。このディスプレイは、例2の混合物を含有するディスプレイに比較し、低くさえあるアドレス電圧を必要とし、またさらに迅速に切換えられる点で際立っている。・・・ [0134]・・・ 例4 ・・・ [0135] [表8] [0136]・・・ [0138]・・・ 例5 ・・・ [0139] [表10] [0140]・・・ [0142]・・・ 例6 ・・・ [0143] [表12] [0144]・・・ 例7 ・・・ [0145] [表13] [0146]・・・ 例8 ・・・ [0147] [表14] ・・・ [0150]・・・ 例10 ・・・ [0151] [表16] ・・・ [0154] ・・・ 例12 ・・・ [0155] [表18] ・・・ [0162]・・・ 例16 例15の組成と類似の組成を有する本発明に従う液晶混合物を製造した。この混合物の組成および物理的性質を下表に示す。 [0163] [表22] [0164]比較例1と同様に、この液晶媒体をTFTアドレス法によるVAディスプレイに導入した。このディスプレイは、特に高温まで動作することができ、比較的低いアドレス電圧を必要とし、しかも比較的迅速に切換えられる点で際立っている。 ・・・ [0166]・・・ 例18 ・・・ [0167] [表24] [0168]・・・ 例19 ・・・ [0169] [表25] [0170]・・・ 例20 ・・・ [0171] [表26] ・・・ [0174]・・・ 例22 ・・・ [0175] [表28] ・・・ [0180]・・・ 例25 ・・・ [0181] [表31] ・・・ 例29 ・・・ [0186] [表33] 」(当審注:甲2に記載される具体例のうち、主な例について摘示した。) (甲2-10)「[0009]従来技術の液晶媒体は、比較的小さい複屈折値、比較的高い動作電圧(しきい値電圧(V0)は、多くの場合、比較的高く、或る場合、2.2Vよりも高い)および特にビデオ可能ディスプレイに対してはしばしば不適当である比較的長い応答時間を有する。さらにまた、これらの媒体は通常、高い動作温度の場合に不適であり、および/または不適当な低温安定性を有する。従って、このネマティック相範囲は、-20℃にまで低下するのみであり、かなりの場合、-10℃まで低下するのみである。 [0010]大部分の場合、従来技術の液晶媒体は、比較的好ましくない△n値を有し、この数値はしばしば、0.11よりも格別に小さく、また或る場合、0.10よりも小さい。しかしながら、このような小さい△n値は、VANディスプレイ用には特に有利ではない。この理由は、VANディスプレイが4μmまたはそれ以上の比較的厚い膜厚を有するセルの使用を必要とし、これによりかなりの用途において許容されないほど長い応答時間がもたらされるからである。一例として、無ねじれディレクター配向の場合、約0.30μmのd・△nが用いられ、または約0.40μmのd・△nが90°のねじれ角とともに使用される。しかしながら、非常に薄い膜厚を有するセルの使用はしばしば、ディスプレイにおける低い生産率(production yields)をもたらす。 [0011]大部分の場合、迅速-切換えディスプレイ用に用いられる液晶媒体に最も好ましい△n値は、0.105~0.15の範囲にある。このことはまた、IPSディスプレイにも当てはまる。さらに、従来技術のディスプレイの応答時間はしばしば、長すぎる。従って、この液晶媒体の粘度は、改良されなければならない、すなわち減少されなければならない。このことは、回転粘度に特に当てはまり、またその低温における数値に非常に特に当てはまる。流動粘度の減少は一般に、特に液晶がホメオトロピックエッジ配向を有するディスプレイの場合(例えば、ECBおよびVANディスプレイの場合)に生じ、ディスプレイ製造期間中の充填時間の非常に望ましい短縮がもたらされる。 [0012]一例として、式: [化6] で表わされる化合物を含有するVANディスプレイ用液晶媒体は開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、これらの媒体は、比較的小さい複屈折率値および同時的に、比較的高い回転粘度値を有する。従って、これらの媒体は、ディスプレイにおいて比較的長い応答時間を導く。 [0013]極性末端置換基を有するターフェニル化合物を含有する負の誘電異方性を有する液晶媒体は、開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、これらの媒体は、小さい誘電異方性絶対値を有するのみである。また、これらの媒体は非常に広範囲の複屈折率値を包含しているが、これらの媒体は全部が、比較的高い粘度値、特に高い回転粘度値を有し、これにより不利な応答時間がもたらされる。従って、従来技術の媒体の欠点を有していないか、または少なくとも格別に減少された程度で有する液晶媒体に対する多大の要求が存在し、また継続している。 ・・・ [0015] [発明が解決しようとする課題]本発明の課題は、前記従来技術の欠点を有していないか、または有していても少ない程度である液晶媒体を提供することにある。」 イ 甲2に記載された発明 甲2の[特許請求の範囲](摘示甲2-1)において、[請求項2]の式IIおよび式IIIで表される化合物は、[請求項1]の「b)成分Aとは相違しているもう1種の誘電的に負の液晶成分(成分B)」をさらに限定したものであるといえるから、甲2には、[請求項1]を引用する[請求項2]として、 「ネマティック液晶媒体であって、 a)1種または2種以上の式I(化学構造式及びその定義は摘示甲2-1の請求項1を参照。)で表わされる誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A);および b)式IIおよび式III(化学構造式及びその定義は摘示甲2-1の請求項2を参照。)で表わされる化合物からなる群から選択される1種または2種以上の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分B);および任意に、 c)誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C);および任意に、 d)誘電的に正の液晶成分(成分D); を含有する、ネマティック液晶媒体。」が記載されているといえる。 そして、甲2の段落[0049]~[0052](摘示甲2-3)には、上記「式Iで表わされる化合物」について「特に好ましくは式I-1a、I-1b、I-2a~I-2fおよびI-3a~I-3eで表される化合物からなる群から・・・選択される」こと、並びに各式の化学構造式及びその定義が記載され、段落[0055]~[0057](摘示甲2-4)には、上記「式IIで表わされる化合物」について「式II-1~II-5・・・からなる群から選択すると好ましい」こと、並びに各式の化学構造及びその定義が記載され、段落[0057]~[0060]には、上記「式IIIで表わされる化合物」について「式III-1~III-6b・・・で表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい」こと、並びに各式の化学構造及びその定義が記載されている。 また、段落[0028]~[0032](摘示甲2-2)には、上記「誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C)」について「c)式IV・・・で表わされる1種または2種以上の誘電的にニュートラルの化合物」を包含するものであること、並びに式IVの一般式及びその定義が記載され、段落[0069]~[0071](摘示甲2-5)には、当該「式IV・・・で表わされる・・・化合物」について「式IV-1~IV-3で表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい」こと、並びに各式の化学構造及びその定義が記載され、段落[0071]~[0075](摘示甲2-5)には「液晶媒体は特に好ましくは、式IV-1a~IV-1d、式IV-1e、式IV-2a~IV-2eおよび式IV-3a~IV-3cで表わされる化合物からなる群から選択される」化合物を含有すること、並びに各式の化学構造及びその定義が記載されている。なお、各式のR41及びR42は、段落[0075](摘示甲2-5)には「式IV1にかかわる上記定義のとおり」と記載され、段落[0071](摘示甲2-5)には、式IV-1におけるR41及びR42は「式IVにかかわり対応して上記に定義されているとおり」と記載され、段落[0028](摘示甲2-2)には、式IVにおけるR41及びR42は「式II中に存在するR21にかかわる上記定義のとおり」と記載されているから、[請求項2](摘示甲2-1)に記載されたR21と同様に定義されるものであることがわかる。 さらに、段落[0081]~[0082](摘示甲2-6)には、「好適態様において、本発明による液晶媒体は・・・全体としての混合物に基づき、成分A、好ましくは式Iで表わされる化合物を、5%~85%、好ましくは10%~55%、特に好ましくは10%~30%、成分B、好ましくは式IIおよび式IIIで表わされる化合物を、5%~85%、好ましくは10%~85%、特に好ましくは20%~80%、および非常に特に好ましくは40%~75%、・・・成分C、好ましくは式IVで表わされる化合物を、0%~50%、好ましくは0%~40%、特に好ましくは10%~40%、非常に特に好ましくは5%~25%」の割合で含有することが記載されている。 加えて、段落[0090](摘示甲2-7)には、「本発明による液晶媒体は、好ましくは・・・-20℃~70℃、特に好ましくは-30℃~80℃、非常に特に好ましくは-40℃~90℃、最も好ましくは-40℃~105℃のネマティック相を有する」こと、段落[0092](摘示甲2-7)には、「本発明による液晶媒体は、例えば90℃またはそれ以下の透明点とともに、5またはそれ以下の誘電異方性値(|△ε|)、・・・0.15またはそれ以下の複屈折率に対し、260mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、・・・0.12またはそれ以下の複屈折率に対し、223mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、および・・・0.10またはそれ以下の複屈折率に対し、211mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、を有する」ことが記載されている。 これらを踏まえると、甲2には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「ネマティック液晶媒体であって、-20℃~70℃のネマティック相を有し、90℃またはそれ以下の透明点とともに、5またはそれ以下の誘電異方性値(|△ε|)、0.15またはそれ以下の複屈折率に対し、260mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、0.12またはそれ以下の複屈折率に対し、223mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、および0.10またはそれ以下の複屈折率に対し、211mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、を有し、 a)5%~85%の式I-1a~I-3eからなる群から選択される誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A): (式中、R11およびR12は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1~7個を有するアルキル基、炭素原子1~7個を有するアルコキシ基、もしくは炭素原子2~7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基である。) b)5%~85%の式II-1~II-5、及びIII-1~III-6bからなる群から選択される誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分B): (各式中、R21、R22、R31およびR32は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1~7個を有するアルキル基またはアルコキシ基、もしくは炭素原子2~7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基である。)、および任意に c)0%~50%の式IV-1a~IV-1d、式IV-1e、式IV-2a~IV-2eおよび式IV-3a~IV-3cからなる群から選択される化合物が包含される誘電的にニュートラルの液晶成分(成分C): (各式中、nおよびmはそれぞれ相互に独立し、1~5であり、またoおよびpはそれぞれ、それ自体および相互の両方で独立し、0~3である)、 (各式中、R41およびR42は、それぞれ相互に独立し、炭素原子1~7個を有するアルキル基またはアルコキシ基、もしくは炭素原子2~7個を有するアルコキシアルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基である。)、および任意に d)誘電的に正の液晶成分(成分D); を含有する、ネマティック液晶媒体。」 なお、以降、明示はしないが化学構造式及びその定義の記載を省略する。 また、以降においては、例えば「式I-1a~I-3eからなる群から選択される化合物」を「化合物I-1a~I-3e」と記載する等、式の記号を用いた省略記載をすることがある。 ウ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲2発明との対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 ○甲2発明の「回転粘度」及び「複屈折率」は、それぞれ、本件発明1の「γ1」及び「Δn」に相当し、甲2発明の「90℃またはそれ以下の透明点」は、本件発明1の「60℃を越える透明点」と、「60℃を越え90℃またはそれ以下の透明点」の範囲で重複している。 ○甲2発明は、「a)1種または2種以上の式Iで表わされる誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A)」及び「b)成分Aとは相違しているもう1種の誘電的に負の液晶成分(成分B)」を必須とする液晶媒体で、摘示(甲2-9)に記載される具体的な液晶媒体の例を含め甲2に記載される「例1」~「例29」の全ての液晶媒体が、負の誘電異方性を有していることから、甲2発明の「5またはそれ以下の誘電異方性値(|△ε|)」は、実質的には、-5以上の負の誘電異方性値を意味しているといえ、本件発明1の「-2.3以下のΔε」と、「-5以上-2.3以下のΔε」の範囲で重複している。 また、甲2発明は、上述のように、「a)1種または2種以上の式Iで表わされる誘電的に負の化合物を包含する誘電的に負の液晶成分(成分A)」及び「b)成分Aとは相違しているもう1種の誘電的に負の液晶成分(成分B)」を必須とする液晶媒体であり、「誘電的に負の化合物」が「極性化合物」であることは、技術的な常識であるといえるから、甲2発明は、「負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体」であるといえる。 ○甲2発明の複屈折率と回転粘度の関係を考慮すると、甲2発明の「-0.15またはそれ以下の複屈折率に対し、260mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、-0.12またはそれ以下の複屈折率に対し、223mPa・sまたはそれ以下の回転粘度、および-0.10またはそれ以下の複屈折率に対し、211mPa・sまたはそれ以下の回転粘度」において、複屈折率及び回転粘度が、それぞれ、-0.15及び260mPa・s、-0.12及び223mPa・s、-0.10及び211mPa・sの場合の「γ1/Δn2」は、それぞれ、11.56、15.49、21.10であり、いずれの場合も、本件発明1の「6~45」の範囲に含まれている。 ○甲2発明の「式I-Ia~I-3eからなる群から選択される誘電的に負の化合物」は、本件発明1の「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」と、「負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物」の点で共通している。 ○甲2発明の「式II-1~II-5、及び式III-1~III-6bからなる群から選択される誘電的に負の化合物」は、本件発明1の「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種以上の化合物」と、「負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物」の点で共通している。 ○甲2発明の「式IV-1a~IV-1d、式IV-1e、式IV-2a~IV-2e及び式IV-3a~IV-3cからなる群から選択される化合物」は、本件発明1の「1種類以上の下記式IIIの化合物」と、「中性の誘電率異方性を有する化合物」の点で共通している。 ○甲2発明の成分Aの式I-3cで表される化合物は、本件発明1の「ただし・・・下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされる「式PGIY-n-(O)mで表される化合物」を含むものである。 そうすると、本件発明1と甲2発明とは、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越え90℃またはそれ以下の透明点および-5以上-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物、負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点1: 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物について、本件発明1では、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」とされ、当該化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%とされているのに対し、甲2発明では、化合物I-1a~I-3eの一つに、本件発明1の化合物B-3O2FF及び化合物B-5O2FFを含む化合物I-1aが含まれ、当該化合物の含有率が3重量%以上であるのかは明らかでない点。 相違点2: 負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物について、本件発明1では、「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」とされ、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」とされているのに対し、甲2発明では、化合物II-1~II-5及び化合物III-1~III-6bに、m=1の場合本件発明1の化合物IBに相当する化合物II-1、本件発明1の化合物IIに相当する化合物III-1が含まれるが、それらが2種類以上含まれること、及び後者の化合物が1種類以上必ず含まれることは特定されていない点。 相違点3: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明1では、「1種類以上の下記式IIIの化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物IV-1a~IV-1d、化合物IV-1e、化合物IV-2a~IV-2e及び化合物IV-3a~IV-3cに、本件発明1の化合物IIIに含まれる化合物IV-1a~IV-1eが含まれている点。 相違点4: 液晶媒体について、本件発明1では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲2発明では、このような特定がなされていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (イ)相違点1について 甲2の[0049](摘示甲2-3)には、「式Iで表わされる化合物は・・・非常に特に好ましくは式I-1a、I-2a、I-2b、I-2c、I-3a、I-3bおよびI-3cで表わされる化合物からなる群から・・・選択される」ことが記載され、当該非常に特に好ましい選択肢の一つである化合物I-1aの定義は、本件発明1の化合物B-3O2FF及び化合物B-5O2FFを包含するものである。 また、実際、甲2発明の具体例に当たる例3(摘示甲2-9の[0130]~[0132])は、本件発明1の化合物B-5O2FFに相当する「化合物PY-5-O4」を5.0重量%含有し、例4(摘示甲2-9の[0134]~[0136])は、本件発明1の化合物B-3O2FFに相当する「化合物PY-3-O2」を8.0重量%と、本件発明1の化合物B-5O2FFに相当する「化合物PY-5-O2」を8.0重量%含有する。 そうすると、甲2発明のうち化合物I-1aを含有する場合には、上記相違点1に係る本件発明1の化合物B-3O2FF及び/又は化合物B-5O2FFを3重量%以上含む場合が包含されている関係にあるといえる。 しかし、上記[0049]には、特に好ましい選択肢とされている化合物が具体的にどのような理由で好ましいのかは記載されていない。 (ウ)相違点2について 甲2の[0055](摘示甲2-4)には、「式IIで表わされる化合物は・・・好ましくは式II-1~II-3からなる群から選択すると好ましい」と記載され、当該好ましい選択肢の一つである化合物II-1の定義は、本件発明1の化合物IBを包含するものである。 また、甲2の[0057](摘示甲2-4)には、「式IIIで表わされる化合物は・・・特に好ましくは式III-1、式III-4aおよび式III-4bで表わされる化合物からなる群から選択すると好ましい」と記載され、当該特に好ましい選択肢の一つである化合物III-1の定義は、本件発明1の化合物IIを包含するものである。 さらに、実際、甲2発明の具体例に当たる例3(摘示甲2-9の[0130]~[0132])は、本件発明1の化合物IIに相当する「化合物CPY-2-O2」を11.0重量%及び「化合物CPY-3-O2」を12.0重量%含有し、例6(摘示甲2-9の[0142]~[0144])は、本件発明1の化合物IBに相当する「化合物CCP-3O2FF」を4.0重量%、化合物IIに相当する「化合物CPY-2-O2」を9.0重量%及び「化合物CPY-3-O2」を10.0重量%含有するなど、複数の上記好ましい化合物を含有する例が多数記載されている。 そうすると、甲2発明のうち化合物III-1を含有する場合には、上記相違点2に係る本件発明1の化合物IIを含有する場合が包含されており、甲2発明のうちさらに化合物II-1を含有する場合には、上記相違点2に係る本件発明1の化合物IBを含有する場合が包含されており、両者を2種類以上、前者を1種類以上含む場合も包含されている関係にあるといえる。 しかし、上記[0057]には、特に好ましい選択肢とされている化合物が具体的にどのような理由で好ましいのかは記載されていない。 (エ)相違点3について 甲2の[0075](摘示甲2-5)には、「式IV1a~IV1dで表わされる化合物は、特に好適な化合物として挙げられる。」と記載され、当該特に好適な選択肢である化合物IV-1a~IV-1eの定義は、いずれも本件発明1の化合物IIIの定義に包含されるものである。 また、実際、甲2発明の具体例に当たる例3(摘示甲2-9の[0130]~[0132])は、本件発明1の化合物IIIに相当する「化合物CC-3-V1」を12.0重量%、「化合物CC-5-V」を12.0重量%及び「化合物PCH-53」を7.0重量%含有するなど、上記好ましい化合物を含有する例が多数記載されている。 そうすると、甲2発明のうち化合物IV-1a~IV-1eを含有する場合は、上記相違点3に係る本件発明1の化合物IIIを含む場合に相当する関係にあるといえる。 しかし、上記[0075]には、特に好適な選択肢とされている化合物が具体的にどのような理由で好ましいのかは記載されていない。 (オ)相違点4について 甲2発明の液晶媒体に含まれることが明示的に記載されている化合物群には、本件発明1において除外されるものとされている「化合物I」(骨格が「PP」)は含まれていない。 また、本件発明1において除外されるものとされている「化合物PGIY-n-(O)m」は、甲2発明の化合物I-3cに包含されるものであるが、甲2発明においては化合物I-1a~I-3eのいずれかが含まれていればよく、化合物I-3cは必須の化合物ではないといえる。 さらに、実際、甲2発明の具体例に当たる例7(摘示甲2-9の[0144]~[0146])は、本件発明1において除外されるものとされている化合物I及び化合物PGIY-n-(O)mのいずれに相当する化合物も含まないなど、上記相違点4に係る除外規定を満たす例が多数記載されている。 そうすると、甲2発明は、上記相違点4に係る本件発明1の除外規定を満たす場合と満たさない場合の両者を包含するものといえる。 (カ)相違点1~4の組合せについて 本件発明1が属する液晶組成物の技術分野においては、複数種類の化合物を組み合わせて配合することにより、1種類の化合物では出せないような特性を生み出すことができること、及び配合物の特性を事前に予測することは困難であり、実際に配合してみなければ配合物の特性を正確に知ることはできないというのが、本件特許に係る出願の優先日の時点における当業者の技術常識であり、また、例えば、甲2の[0009]~[0015](摘示甲2-10)にも記載されているように、液晶ディスプレイに望まれる複数の特性を同時にバランス良く備える液晶組成物を得ることは、一般には困難なことであったといえる。 ここで、上記5.(1)ウ(イ)「相違点1について」~同(オ)「相違点4について」に記載したとおり、上記相違点1~4に係る本件発明1の各構成は、個別に見れば甲2発明の下位概念として部分的に包含されているといえるが、甲2には、相違点1~4に関わる各成分毎に複数記載されている化合物の選択肢が、それぞれどのような性質を有し、液晶ディスプレイに望まれるいずれの特性にどのような影響をもたらすかについて、具体的には記載されておらず、また、他の成分と組み合わせた際にどのような性質、問題をもたらすかについても記載されていないから、多岐に渡る選択肢の組合せの中から、特にすべて併せて本件発明1に相当する構成となるような組合せを選択することが動機付けられるものではないし、かつ、そのような組合せが本件特許に係る出願の優先日前における技術常識に照らして周知の技術的事項であったとも認められない。 さらに、甲2に記載された具体例の中には、本件発明1に記載された「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有」する例もあるが(例えば、例3(提示甲2-9の[0130]~[0132])、いずれの具体例も本件発明1に相当する化合物の組合せを採用していないところ、液晶組成物の技術分野における技術常識に鑑みれば、具体例を構成している化合物の一部を、環の数、置換基の種類等が異なる別の化合物に置き換えた場合には、置き換え前と同じ特性が維持されるかどうか予測することは困難であるから、当業者といえども甲2に記載された具体例に基づいて、本件発明1に相当する成分の組合せに容易に想到し得るとはいえない。 そうすると、甲2において、上記相違点1~4に係る選択肢に個別には重複する記載があるとしても、それらをすべて併せて本件発明1に相当する構成となるように組み合わせることは甲2には具体的に記載されているとはいえないから、甲2発明により本件発明1の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲2の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明1に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲2により本件発明1の進歩性が否定されるものでもない。 (キ)本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1は甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 エ 本件発明2、4~15、18~22及び27~32について 本件発明2、4~15、18~22及び27~32は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものである。 よって、本件発明2、4~15、18~22及び27~32は、本件発明1と同じ理由により、いずれも甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、いずれも甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 オ 本件発明3について (ア)本件発明3と甲2発明との対比 本件発明3は、本件発明1における「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という発明特定事項が、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」するという発明特定事項に置き換わっている点を除き、本件発明1と同じ発明特定事項を備えた液晶媒体の発明である。 そこで、上記5.(1)ウ(ア)「本件発明1と甲2発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明3と甲2発明とを対比すると、両者は、 「6~45の範囲のγ1/Δn2の比の値、60℃を越え90℃またはそれ以下の透明点および-5以上-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物、負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点1’: 負の誘電異方性を有し全ての環が芳香族環である極性化合物について、本件発明3では、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」とされ、当該化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%とされているのに対し、甲2発明では、化合物I-1a~I-3eの一つに、本件発明3の化合物B-3O2FF及び化合物B-5O2FFを含む化合物I-1aが含まれ、当該化合物の含有率が3重量%以上であるのかは明らかでない点。 相違点2’: 負の誘電異方性を有しシクロヘキシレン基を有する極性化合物について、本件発明3では、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物III-1~III-6bに、m=1の場合本件発明1の化合物IIに相当する化合物III-1が含まれるが、それが2種類以上含まれることは特定されていない点。 相違点3’: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明3では、「1種類以上の下記式IIIの化合物」とされているのに対し、甲2発明では、化合物IV-1a~IV-1d、化合物IV-1e、化合物IV-2a~IV-2e及び化合物IV-3a~IV-3cに、本件発明3の化合物IIIに含まれる化合物IV-1a~IV-1eが含まれている点。 相違点4’: 液晶媒体について、本件発明3では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲2発明では、このような特定がなされていない点。 そこで、上記相違点について検討する。 (イ)相違点1’~4’について 相違点1’、3’及び4’は、上記5.(1)ウ(ア)「本件発明1と甲2発明との対比」に記載した相違点1、3及び4と同じであるから、同(イ)「相違点1について」、同(エ)「相違点3について」及び同(オ)「相違点4について」に記載したとおりのことがいえる。 また、相違点2’については、上記5.(1)ウ(ウ)「相違点2について」において甲2の「化合物III」について記載したとおりのことがいえる。 しかし、上記5.(1)ウ(カ)「相違点1~4の組合せについて」に記載したのと同じ理由により、甲2において、上記相違点1’~4’に係る選択肢に個別には重複する記載があるとしても、それらをすべて併せて本件発明3に相当する構成となるように組み合わせることは甲2には具体的に記載されているとはいえないから、甲2発明により本件発明3の新規性が否定されるものではないし、かつ、甲2の記載及び技術常識に基づいて当業者が容易に本件発明3に相当する成分の組合せに想到し得るものともいえないから、甲2により本件発明3の進歩性が否定されるものでもない。 (ウ)本件発明3についてのまとめ よって、本件発明3は甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明3は甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 カ 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)(甲2を主引用例とする場合)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~15、18~22及び27~32は、いずれも甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、いずれも甲2発明、甲2に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由1(新規性:甲2を主引用例とする場合)及び理由2(進歩性:甲2を主引用例とする場合)により、本件請求項1~15、18~22及び27~32に係る特許を取り消すことはできない。 (2)理由3(サポート要件)について ア 本件発明の課題について 本件発明の課題は、[発明が解決しようとする課題]として記載される本件明細書の段落[0017]の記載によれば、ECB効果および任意にIPSまたはPALCD効果に基づくディスプレイでの、特定のモード、特定の構成に使用される液晶混合物において、特にΔnおよびΔε値および回転および流動粘度に関し、特定かつ複雑なマッチングを得ることであるといえ、さらに、同段落[0018]の「驚くべきことに、特定(本件発明1によれば6~45)のγ1とΔnまたはその2乗の比を有する負の異方性を有する液晶混合物が、先行技術による媒体の不都合を有していないか、または非常に低減された程度のみで有することが分かった。」及び同段落[0021]の「このタイプのγ1/Δn2比を有する発明の混合物は、さらに非常に好ましい容量性しきい値と同時に非常に良い低温安定性を示す。」との記載によれば、本件発明は、上述の特にΔnおよびΔε値および回転および流動粘度に関し、特定かつ複雑なマッチングを得ることに加えて、γ1/Δn2を6~45にすることにより、非常に好ましい容量性しきい値と同時に非常に良い低温安定性も得ることも発明の課題としているといえる。 イ 本件発明1について 上記課題に対して、本件発明1は、上記3.「本件発明について」の[請求項1]に記載された事項により特定されるとおりのものである。 ウ 本件発明1に対応する明細書の記載について 本件明細書には、本件発明1に記載された特定の化学構造を備える化合物B-3O2FF、化合物B-5O2FF、化合物IB、化合物II及び化合物IIIが、如何なる作用機序をもって、上記発明の課題を解決するのかに関する具体的な記載はなく、それらの成分数、含有率についての特定や、特定の化合物を含まない(化合物I、化合物PGIY-n-(O)m)ことによる影響についても、具体的な記載はない。 しかし、本件明細書の段落[0206]には、本件発明1の液晶媒体組成及び諸特性の要件を満足する具体例として「例M8」が記載されており、そのΔn、Δε値、回転粘度(γ1)、容量性しきい値(V0)及び低温安定性(LTS)の実験データを参酌すると、当該「例M8」は、上記発明の課題とされている複数の特性を同時にバランス良く備えるものであることがわかる。 ここで、上記「例M8」に含まれる成分のうち、B-3O2FF及びB-5O2FFは、本件発明1に具体的に特定されている「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物」そのものであり、CPY-2-O2及びCPY-3-O2は、本件発明1に特定されている化合物IIの代表的な化合物といえ、CC-3-V1は、本件発明1に特定されている化合物IIIの代表的な化合物といえるから、当業者は、環の数、環の種類、側鎖置換基及び末端基の化学構造において上記各成分と概ね同等とみなされる範囲の化合物を同様の割合で組み合わせて配合した液晶媒体については、「例M8」と同様に上記課題を解決し得る諸特性を備えたものとなる蓋然性が高いと理解することができる。 エ 取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 本件訂正(補正後)により、訂正前の請求項1(平成30年4月16日に提出された訂正請求書に添付されたもの。以下同じ。)に記載されていた「1種類以上の下記式B-4の化合物」は、「例M8」に実際に配合されている「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物」に減縮された。 また、訂正前の請求項1に記載されていた「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」については、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という発明特定事項が付加されたことにより、必ず化合物IIが含まれることが明らかになり、実際に化合物IIに相当する「CPY-2-O2及びCPY-3-O2」が配合されている「例M8」と成分組成が共通するものとなった。 よって、取消理由通知(決定の予告)において指摘した不備は解消したといえる。 オ 本件発明1についてのまとめ そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されたものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 カ 本件発明2~15、18~22及び27~32について 本件発明2、4~15、18~22及び27~32は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、主な配合成分は本件発明1と共通するものと解される。 また、本件発明3は、本件発明1における「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という発明特定事項が、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」するという発明特定事項に置き換わっている点を除き、本件発明1と同じ発明特定事項を備えた液晶媒体の発明であるところ、化合物IIを2種類以上含有する点は、上記「例M8」により支持されている。 そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明2~15、18~22及び27~32は、いずれも発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されたものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 キ 理由3(サポート要件)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~15、18~22及び27~32は、いずれも発明の詳細な説明に記載される発明の課題を解決することを当業者が認識できるように記載されたものといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 よって、取消理由通知(決定の予告)に記載した理由3(サポート要件)により、本件請求項1~15、18~22及び27~32に係る特許を取り消すことはできない。 6.取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった取消理由及び特許異議申立理由について (1)取消理由の概要 当審は、平成30年1月10日付け取消理由通知において、以下の取消理由を通知した。 なお、上記取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由はない。 (1-1)理由1(新規性:甲1を主引用例とする場合) 訂正前の請求項1~15、18~22及び27~32(特許掲載公報の特許請求の範囲に記載されたもの)に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、そn発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (1-2)理由2(進歩性:甲1を主引用例とする場合) 訂正前の請求項1~15及び18~32に係る発明は、下記甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証に記載の事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その発明に係る特許は同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2)理由1(新規性)及び理由2(進歩性)(甲1を主引用例とする場合)について ア 引用文献及びその記載事項 <引用文献等一覧> 甲第1号証:特開2003-119466号公報(以下、「甲1」という。) 甲1には、以下の事項が記載されている。 (甲1-1)「[請求項1] 負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、1種または2種以上の、一般式I [化1] 式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、そしてR12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である、で表される化合物を含む、前記媒体。 [請求項2] 1種または2種以上の、式II [化2] 式中、 Z21は、-COO-または単結合であり、およびA21は、トランス-1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり、そしてmは、1または2であり、 R21およびR22は、互いに独立して、12個までの炭素原子を含むアルキルまたはアルケニル基であり、さらに、その中の1個または2個以上の隣接していないCH2基が、-O-、-S-および/または-C≡C-で置換されていてもよい、で表される化合物をさらに含む、請求項1に記載の媒体。 [請求項3] 1種または2種以上の、式III [化3] 式中、 環Aは、トランス-1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンであり、その中の1個の水素原子がFで置換されていてもよく、 R31およびR32は、互いに独立して、R21について定義したとおりであり、 mは、1または2の値を有する、で表される化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の媒体。 [請求項4] 1種または2種以上の、式IIa~IIj [化4] [化5] 式中、 alkylは、それぞれの場合において互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、 alkenylは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基であり、そしてnは、0または1である、 から選択される化合物を含む、請求項1~3のいずれかに記載の媒体。 [請求項5] 1種または2種以上の、式IIIa~IIIg [化6] 式中、alkylは、それぞれの場合において互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、alkenylは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基であり、nは、0または1であり、そしてLは、HまたはFである、から選択される化合物を含む、請求項1~4のいずれかに記載の媒体。 ・・・ [請求項10] 10~45重量%の、1種または2種以上の、式Iで表される化合物、30~85重量%の、1種または2種以上の、式IIで表される化合物および5~35重量%の、1種または2種以上の、式IIIで表される化合物を含む、請求項1~9のいずれかに記載の媒体。」 (甲1-2)「[0001] [発明の属する技術分野]本発明は、負の誘電異方性の極性化合物の混合物に基づく液晶媒体、ならびに、電気光学目的のためのそれらの使用およびこの媒体を含むディスプレイ、特にECB効果およびとりわけVA効果に基づくアクティブマトリクス駆動のディスプレイへのそれらの使用に関する。」 (甲1-3)「[0015] [発明が解決しようとする課題]本発明は、少なくとも実質的に上記の要求を満たし、特に低い回転粘度および/または比較的高い値の光学異方性Δnを有する、負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体を提供する目的を有する。 [0016] [課題を解決するための手段]ここで、この目的が、本発明の媒体をディスプレイに使用した場合に達成できることが見出された。 本発明は、したがって、負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、1種または2種以上の、一般式I(化学式省略)で表される化合物を含む、前記媒体に関する。 [0017]・・・この結果、1種または2種以上の、式Iで表される化合物の使用は、回転粘度の値を損なうことなく、比較的高い値の光学異方性Δnの達成を可能にする。加えて、一般的に、さらに低い回転粘度を達成することが可能である。 [0018]さらにまた、1種または2種以上の、式Iで表される化合物の使用は、好適な温度範囲における広い液晶中間相範囲、低い粘度、および、比較的高い値の電圧保持率(HR)を有する混合物の達成を可能にする。式Iで表される化合物それ自体は、水分、空気、ならびに、熱、赤外領域、可視光領域および紫外領域での照射ならびに直流および交流電界などの物理的影響に対し安定である。本発明の媒体は、極めて高いHR値、低いしきい値電圧および特に極めて良好な低温安定性と同時に高い透明点を示す。」 (甲1-4)「[0030]・・・ここで、1種または2種以上の、式IIa、IIb、IIc、IIg、IIiおよび/またはIIjで表される化合物を有する媒体が特に好ましい。本発明によると、特に式IIgで表される化合物を含む媒体を使用することで、低い回転粘度を達成することができる。加えて、式IIiで表される化合物、特にn=1のものは、高い光学異方性を持つ、特にΔn>0.11である媒体に有利に用いることができる。」 (甲1-5)「[0031]g)1種または2種以上の、式IIIa~IIIg [化18](略) 式中、alkylは、それぞれの場合において互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、alkenylは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基であり、nは、0または1であり、そしてLは、HまたはFである、から選択される化合物を含む媒体。ここで、1種または2種以上の、式IIIb、IIIc、IIIfおよび/またはIIIgで表される化合物を有する媒体が特に好ましい。本発明によると、特に式IIIcで表される化合物を含む媒体を使用することで、低い回転粘度を達成することができる。」 (甲1-6)「[0036]p)2~35重量%、好ましくは2~25重量%、特に好ましくは4~18重量%の、1種または2種以上の、式Iで表される化合物を含む媒体。 q)20~90重量%、好ましくは30~85重量%、特に好ましくは40~80重量%の、1種または2種以上の、式IIで表される化合物を含む媒体。 r)5~60重量%、好ましくは10~40重量%の、1種または2種以上の、式IIIで表される化合物を含む媒体。 s)2~25重量%の、1種または2種以上の、式Iで表される化合物、30~85重量%の、1種または2種以上の、式IIで表される化合物、および、10~40重量%の、1種または2種以上の、式IIIで表される化合物を含む媒体。 [0037]液晶混合物は、好ましくは少なくとも80K、特に好ましくは少なくとも100Kのネマチック相範囲、および、20°Cで、300mPa。sより大きくない、特に250mPa。s以下の、そして特に好ましくは200mPa。sより大きくない回転粘度を有することが好ましい。本発明の液晶混合物は、-0.5以下の、好ましくは-2.0以下の、特に好ましくは-3.0以下の誘電異方性Δεを有する。Δεの値の好ましい範囲は、約-0.5~-8、特に約-2.0~-7.0、特に好ましくは約-3.0~-5.5であり、それぞれの場合において20°Cおよび1kHzで決定した。誘電率ε∥は、一般的には3以上、好ましくは3.2~4.5である。 [0038]液晶混合物における複屈折Δnは、一般的に0.060より大きい、好ましくは0.075以上の、特に好ましくは0.090以上の値を有する。比較的高い光学異方性を有するこのタイプの媒体は、一般的に0.14までのDn値を有し、0.17までまたはそれより高いΔn値もまた考えられる。 [0039]誘電体はまた、当業者に知られており、文献中に記載されている他の添加物を含むこともできる。例えば、0~15重量%の多色性色素を加えてもよく、さらに導電性塩、好ましくは4-ヘキシルオキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルホウ酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテルの錯塩(例えばHaller et al., Mol. Cryst. Liq. Cryst. 24, 249-258頁(1973)参照)を加えて導電性を改善してもよく、または物質を加えて、ネマティック相の誘電異方性、粘度および/または配向を変更してもよい。このタイプの物質は、例えば、DE-A2209127、2240864、2321632、2338281、2450088、2637430および2853728に記載されている。」 (甲1-7)「[0054] [実施例]以下の例は、本発明を、限定することなく説明することを意図している。本明細書中、パーセンテージは特に記載のない限り重量パーセントであり、全ての温度は摂氏度で表す。表示されている電圧値V0は、層の厚さが20μmである従来のECBセルにおいて20°Cで測定した。 [0055]以下の略語を用いた。T(N,I)は、透明点[°C]であり、Δnは、20°Cおよび589nmにおける光学異方性(複屈折)であり、neは、異常光屈折率であり、Δεは、20°Cおよび1kHzにおける誘電異方性であり、ε⊥は、20°Cおよび1kHzにおける、分子の長軸に垂直な方向の誘電率であり、k3/k1は、弾性定数K3およびK1の比であり、γ1は、回転粘度[mPa.s]であり(特に記載がない限り、20°Cにおける値)、V0は、フレデリクスしきい値電圧[V]であり、tstoreは、時間で示した低温貯蔵安定性(-30°C、-40°C)である。 [0056]例1 [表1] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。さらに、この混合物は、長期間にわたり-40°Cまでネマチック相を有する。 [0057]例2 [表2] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。さらに、この混合物はまた、-40°Cでネマチック相を有する。 [0058]例3 [表3] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。さらに、この混合物は、長期間にわたり-30°Cまでネマチック相を有する。 [0059]例4 [表4] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。さらに、この混合物は、長期間にわたり-40°Cでネマチック相を有する。 [0060]例5 [表5] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。さらに、この混合物は、長期間にわたり-40°Cでネマチック相を有する。 [0061]例6 [表6] 本液晶混合物は、比較的高いΔn値と同時に、低い回転粘度γ1を有する。 [0062]例7 [表7] [0063]例8 [表8] [0064]例9 [表9] 」 イ 甲1に記載された発明 甲1の[特許請求の範囲](摘示甲1-1)において、[請求項4]の式IIa~IIjで表される化合物は、[請求項2]の式IIで表される化合物をさらに限定したものであり、[請求項5]の式IIIa~IIIgで表される化合物は、[請求項3]の式IIIで表される化合物をさらに限定したものであり、[請求項10]での式IIで表される化合物の含有量は、[請求項4]の式IIa~IIjで表される化合物の含有量と見ることができ、式IIIで表される化合物の含有量は、[請求項5]の式IIIa~IIIgで表される化合物の含有量と見ることができるから、甲1には、[請求項1]~[請求項5]を直列的に引用した[請求項10]として、 「負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、 10~45重量%の、1種または2種以上の、一般式I(省略)で表される化合物、 30~85重量%の、1種または2種以上の、式IIa~IIj(省略)から選択される化合物、 5~35重量%の、1種または2種以上の、式IIIa~IIIg(省略)から選択される化合物 を含む、前記媒体」が記載されているといえる。 そして、甲1の段落[0037](摘示甲1-6)には、液晶媒体の回転粘度が、「20℃で、300mPa。sより大きくない、特に250mPa。s以下の、そして特に好ましくは200mPa。sより大きくない」こと、同段落[0038]には、液晶媒体の複屈折Δnが、「一般的に0.060より大きい、好ましくは0.075以上の、特に好ましくは0.090以上」であること、さらに、同段落[0037]には、液晶媒体の誘電率異方性Δεの範囲が、「約-0.5~-8、特に約-2.0~-7.0、特に好ましくは約-3.0~-5.5」であることが記載されている。 これらを踏まえると、甲1には、以下の発明(以下、「甲1A発明」という。)が記載されているといえる。 「負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、20℃で、300mPa・sより大きくない、特に250mPa・s以下の、そして特に好ましくは200mPa・sより大きくない回転粘度、一般的に0.060より大きい、好ましくは0.075以上の、特に好ましくは0.090以上の複屈折Δn、約-0.5~-8、特に約-2.0~-7.0、特に好ましくは約-3.0~-5.5の範囲の誘電率異方性Δεを有し、 10~45重量%の、1種または2種以上の、一般式I 式中、 R11は、1~12個の炭素原子を有するアルキル基または2~12個の炭素原子を有するアルケニル基であり、そしてR12は、2~12個の炭素原子を有するアルケニル基である、で表される化合物、 30~85重量%の、1種または2種以上の、式IIa~IIj 式中、 alkylは、それぞれの場合において互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、alkenylは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基であり、そしてnは、0または1である、から選択される化合物、 5~35重量%の、1種または2種以上の、式IIIa~IIIg 式中、alkylは、それぞれの場合において互いに独立して、1~6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、alkenylは、2~6個の炭素原子を有する直鎖アルケニル基であり、nは、0または1であり、そしてLは、HまたはFである、から選択される化合物を含む、前記媒体」 また、甲1には、上記甲1A発明の具体的な液晶媒体として、段落[0059]の「例4」(摘示甲1-7)に基づいた、以下の発明(以下、「甲1B発明」という。)も記載されているといえる。 「負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、T(N,I)=72.0℃、Δn(20℃,589nm)=0.1515、Δε(20℃,1kHz)=-3.7、γ1(20℃)=136mPa・s、tstore(-40℃)>1000hであり、 BCH-32 9.0重量%、CCP-V-1 10.0重量%、CC-3-V1 10.0重量%、CC-5-V 3.0重量%、CPY-2-O2 12.0重量%、CPY-3-O2 13.0重量%、B-3O2FF 19.0重量%、B-5O2FF 17.0重量%、PP-1-2V 7.0重量%を含む、前記媒体」 さらに、甲1には、上記甲1A発明の具体的な液晶媒体として、段落[0061]の「例6」(摘示甲1-7)に基づいた、以下の発明(以下、「甲1C発明」という。)も記載されているといえる。 「負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、T(N,I)=102.0℃、Δn(20℃,589nm)=0.1218、Δε(20℃,1kHz)=-4.6、γ1(20℃)=260mPa・sであり、 PCH-3O4FF 8.0重量%、PCH-5O2FF 10.0重量%、PCH-5O4FF 12.0重量%、CPY-2-O2 12.0重量%、CPY-3-O2 12.0重量%、CCP-5O2FF 12.0重量%、CCP-31FF 9.0重量%、CCP-V-1 12.0重量%、CC-3-V1 4.0重量%、CBC-33 3.0重量%、PP-1-2V1 6.0重量%を含む、前記媒体」 ウ 本件発明1について (ア)本件発明1と甲1A発明との対比 本件発明1と甲1A発明とを対比する。 ○甲1A発明の「回転粘度」、「複屈折Δn」及び「誘電率異方性Δε」は、それぞれ、本件発明1の「γ1」、「Δn」及び「Δε」に相当する。 ○甲1A発明の「誘電率異方性Δε」について、「特に好ましい」範囲を考慮すると、甲1A発明の「約-3.0~-5.5の範囲の誘電率異方性Δε」は、本件発明1の「-2.3以下のΔε」の条件を満たす。また、甲1A発明の「回転粘度」及び「複屈折Δn」について、それぞれ、「特に好ましい」範囲の上限及び下限を用いて、γ1/Δn2を計算すると、「24.7」(200×10-3/(0.090)2)となり、甲1A発明における「γ1/Δn2」の好ましい範囲は、「24.7」以下となり、本件発明1のγ1/Δn2の「6~45」の範囲と「6~24.7」の範囲で重複する。 ○甲1A発明の「1種または2種以上の、一般式Iで表される化合物」は、本件発明1の「ただし下記式Iで表される化合物・・・のいずれも含まない」の「式Iで表される化合物」に相当する。 ○甲1A発明の「1種または2種以上の、式IIa~IIjから選択される化合物」は、本件発明1の「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」及び「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種以上の化合物」と、「負の誘電異方性を有する極性化合物」の点で共通している。 ○甲1A発明の「1種または2種以上の、式IIIa~IIIgから選択される化合物」は、本件発明1の「1種類以上の下記式IIIの化合物」と、「中性の誘電率異方性を有する化合物」の点で共通している。 そうすると、本件発明1と甲1A発明とは、 「6~24.7の範囲のγ1/Δn2の比の値および-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点5: 液晶媒体について、本件発明1では、60℃を越える透明点を有することが特定されているのに対し、甲1A発明では、透明点が明らかでない点。 相違点6: 負の誘電異方性を有する極性化合物について、本件発明1では、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」及び「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を含有し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」とされ、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」とされているのに対し、甲1A発明では、式IIa~IIjの中に、本件発明1の化合物B-3O2FF及び化合物B-5O2FFを含む化合物IIiが含まれ、本件発明1の化合物IBに相当する式IIb、IIc、IIdで表される化合物、及び、本件発明1の化合物IIに含まれる式IIe、IIg、IIhで表される化合物が含まれるものの、「1種以上の式IIiで表される化合物」及び「式IIb、IIc、IId、式IIe、IIg、IIhから選択される2種類以上の化合物」を含有すると共に、「ただし、1種類以上の式IIe、IIg、IIhで表される化合物を含有し、1種類以上の式IIb、IIc、IIdで表される化合物を含有してもよ」く、「1種以上の式IIiで表される化合物の含有率が3重量%以上」であるのか明らかでない点。 相違点7: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明1では、「1種類以上の下記式IIIで表される化合物」を含有しているのに対し、甲1A発明では、式IIIa~IIIgの中に、本件発明1の式IIIに含まれる式IIIa~IIIdで表される化合物が含まれていることに留まる点。 相違点8: 液晶媒体について、本件発明1では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1A発明は、式Iで表される化合物を含んでいる点。 そこで、上記相違点について検討する。 (イ)相違点8について 事案に鑑み、まず上記相違点8について検討する。 甲1の段落[0015](摘示甲1-3)の記載によれば、甲1A発明の課題は、甲1に[発明が解決しようとする課題]として記載される「特に低い回転粘度および/または比較的高い値の光学異方性Δnを有する、負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体を提供する」ことにあるといえる。 そして、この課題を解決するには、同段落[0016]に、[課題を解決するための手段]として記載される「負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体であって、1種または2種以上の、一般式I(省略)で表される化合物を含む、前記媒体」であれば、上記の課題が解決できることが記載されているといえる。具体的には、同段落[0017]には、負の誘電異方性を持つ極性化合物の混合物に基づく液晶媒体の成分として、式Iで表される化合物の使用は、回転粘度の値を損なうことなく、比較的高い値の光学異方性Δnの達成を可能にし、加えて、一般的に、さらに低い回転粘度を達成することが記載され、同段落[0018]には、「式Iで表される化合物の使用は、好適な温度範囲における広い液晶中間相範囲、低い粘度、および、比較的高い値の電圧保持率(HR)を有する混合物の達成を可能にする」ことが記載されている。 以上を踏まえると、甲1A発明において、式Iで表される化合物は、特に低い回転粘度および/または比較的高い値の光学異方性Δnを得るという、甲1A発明の課題を解決するにあたって、必須となる成分である。そうすると、甲1A発明の液晶媒体において、式Iで表される化合物を含まないものとする、又は、式Iで表される化合物を何らかの他の化合物で置換することには、阻害要因があるというべきである。 よって、上記相違点8は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点5~7を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1A発明ではないし、甲1A発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明1と甲1B発明との対比 本件発明1と甲1B発明とを対比する。 ○甲1B発明の「T(N,I)」、「Δn(20℃,589nm)」、「Δε(20℃,1kHz)」及び「γ1(20℃)」は、それぞれ、本件発明1の「透明点」、「Δn」、「Δε」及び「γ1」に相当する。 ○甲1B発明の72.0℃のT(N,I)、及び-3.7のΔε(20℃,1kHz)は、それぞれ、本件発明1の「60℃を越える透明点」、及び「-2.3以下のΔε」の範囲に含まれている。また、甲1B発明において、γ1/Δn2の値を計算すると、「5.925」(136×10-3/(0.1515)2)となる。 ○甲1B発明の「B-3O2FF」及び「B-5O2FF」は、本件発明1の「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」であり、それらの含有量は合わせて、36.0重量%であり、本件発明1の「3重量%以上」に含まれるものである。 ○甲1B発明の「CPY-2-O2」及び「CPY-3-O2」は、いずれも本件発明1の「下記式IIの化合物」に含まれるものであり、本件発明1の「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を含有し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」を満たすものである。 ○甲1B発明の「CC-3-V1」及び「CC-5-V」は、いずれも本件発明1の「下記式IIIの化合物」に含まれる化合物である。 ○甲1B発明の「PP-1-2V」は、本件発明1の「ただし下記式Iで表される化合物・・・のいずれも含まない」の「式Iで表される化合物」に含まれるものである。 そうすると、本件発明1と甲1B発明とは、 「60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい、 負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点9: γ1/Δn2の値について、本件発明1では、6~45の範囲であるのに対し、甲1B発明では、5.925である点。 相違点10: 液晶媒体について、本件発明1では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1B発明は、「PP-1-2V」を含んでいる点。 そこで、上記相違点について検討する。 (エ)相違点10について 事案に鑑み、まず相違点10について検討する。 甲1B発明の液晶媒体に含まれる「PP-1-2V」は、甲1の[請求項1](摘示甲1-1)に記載される一般式Iで表される化合物の具体的な化合物となるものである。 そして、上記6.(2)ウ(イ)「相違点8について」で述べたように、この甲1の一般式Iで表される化合物は、甲1の発明の課題を解決するには必須の化合物であるから、甲1の一般式Iで表される化合物の具体的な化合物として用いられている「PP-1-2V」は、甲1B発明において、必須の化合物となるものである。 そうすると、甲1B発明の液晶媒体において、(式Iで表される化合物に含まれる)「PP-1-2V」を含まないものとする、又は、「PP-1-2V」を何らかの他の化合物で置換することには、阻害要因があるというべきである。 よって、上記相違点10は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点9を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1B発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (オ)本件発明1と甲1C発明との対比 甲1A発明の液晶媒体の具体的な液晶媒体である甲1C発明も、甲1B発明の液晶媒体と同様に、甲1の[請求項1](摘示甲1-1)に記載される一般式Iで表される化合物の具体的な化合物となる「PP-1-2V1」を含むものであるから、本件発明1と甲1C発明を対比すると、両者の間には、少なくとも以下の相違点が存在することになる。 相違点11: 液晶媒体について、本件発明1では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1C発明は、「PP-1-2V1」を含んでいる点。 そこで、上記相違点11について検討する。 (カ)相違点11について 上記6.(2)ウ(エ)「相違点10について」に記載したのと同様の理由により、「PP-1-2V1」は、甲1C発明の液晶媒体において必須の化合物となるものであるから、甲1C発明の液晶媒体において、(式Iで表される化合物に含まれる)「PP-1-2V1」を含まないものとする、又は、「PP-1-2V1」を何らかの他の化合物で置換することには、阻害要因があるというべきである。 よって、少なくとも、上記相違点11は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明1は、甲1C発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (キ)本件発明1についてのまとめ よって、本件発明1は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1は甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 エ 本件発明2、4~15、18~22及び27~32について 本件発明2、4~15、18~22及び27~32は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものである。 よって、本件発明2、4~15、18~22及び27~32は、本件発明1と同じ理由により、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、いずれも甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 オ 本件発明3について (ア)本件発明3と甲1A発明との対比 本件発明3は、本件発明1における「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という発明特定事項が、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」するという発明特定事項に置き換わっている点を除き、本件発明1と同じ発明特定事項を備えた液晶媒体の発明である。 そこで、上記6.(2)ウ(ア)「本件発明1と甲1A発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明3と甲1A発明とを対比すると、両者は、 「6~24.7の範囲のγ1/Δn2の比の値および-2.3以下のΔεを有し、 負の誘電異方性を有する極性化合物および中性の誘電率異方性を有する化合物を含有する、負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点5’: 液晶媒体について、本件発明3では、60℃を越える透明点を有することが特定されているのに対し、甲1A発明では、透明点が明らかでない点。 相違点6’: 負の誘電異方性を有する極性化合物について、本件発明3では、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物」及び「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物」を含有し、「下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上」とされているのに対し、甲1A発明では、式IIa~IIjの中に、本件発明3の化合物B-3O2FF及び化合物B-5O2FFを含む化合物IIiが含まれ、本件発明3の化合物IIに含まれる式IIe、IIg、IIhで表される化合物が含まれるものの、「1種以上の式IIiで表される化合物」及び「式IIe、IIg、IIhから選択される2種類以上の化合物」を含有すると共に、「1種以上の式IIiで表される化合物の含有率が3重量%以上」であるのか明らかでない点。 相違点7’: 中性の誘電率異方性を有する化合物について、本件発明3では、「1種類以上の下記式IIIで表される化合物」を含有しているのに対し、甲1A発明では、式IIIa~IIIgの中に、本件発明3の式IIIに含まれる式IIIa~IIIdで表される化合物が含まれていることに留まる点。 相違点8’: 液晶媒体について、本件発明3では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1A発明は、式Iで表される化合物を含んでいる点。 そこで、上記相違点について検討する。 (イ)相違点8’について 事案に鑑み、まず上記相違点8’について検討する。 相違点8’は、上記6.(2)ウ(ア)「本件発明1と甲1A発明との対比」に記載した相違点8と同じであるから、同(イ)「相違点8について」に記載したとおりのことがいえる。 そうすると、上記相違点8’は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点5’~7’を検討するまでもなく、本件発明3は、甲1A発明ではないし、甲1A発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明3と甲1B発明との対比 本件発明3は、本件発明1における「下記式IBの化合物および下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」し、「ただし、1種類以上の式IIの化合物を含有し、1種類以上の式IBの化合物を含有してもよい」という発明特定事項が、「下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物・・・を含有」するという発明特定事項に置き換わっている点を除き、本件発明1と同じ発明特定事項を備えた液晶媒体の発明である。 そこで、上記6.(2)ウ(ウ)「本件発明1と甲1B発明との対比」における検討を踏まえて、本件発明3と甲1B発明とを対比すると、両者は、 「60℃を越える透明点および-2.3以下のΔεを有し、 下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物から選択される1種類以上の化合物、下記式IIの化合物から選択される2種類以上の化合物ならびに1種類以上の下記式IIIの化合物を含有し、 ただし、下記式B-3O2FFおよび下記式B-5O2FFの化合物の液晶媒体全体に占める含有率の合計は3重量%以上であり、 負の誘電異方性を有する極性化合物の混合物に基づいた液晶媒体。」 の点で一致し、以下の点で相違しているといえる。 相違点9’: γ1/Δn2の値について、本件発明3では、6~45の範囲であるのに対し、甲1B発明では、5.925である点。 相違点10’: 液晶媒体について、本件発明3では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1B発明は、「PP-1-2V」を含んでいる点。 そこで、上記相違点について検討する。 (エ)相違点10’について 事案に鑑み、まず相違点10’について検討する。 相違点10’は、上記6.(2)ウ(ウ)「本件発明1と甲1B発明との対比」に記載した相違点10と同じであるから、同(エ)「相違点10について」に記載したとおりのことがいえる。 そうすると、上記相違点10’は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、上記相違点9’を検討するまでもなく、本件発明3は、甲1B発明ではないし、甲1B発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (オ)本件発明3と甲1C発明との対比 甲1A発明の液晶媒体の具体的な液晶媒体である甲1C発明も、甲1B発明の液晶媒体と同様に、甲1の[請求項1](摘示甲1-1)に記載される一般式Iで表される化合物の具体的な化合物となる「PP-1-2V1」を含むものであるから、本件発明3と甲1C発明を対比すると、両者の間には、少なくとも以下の相違点が存在することになる。 相違点11’: 液晶媒体について、本件発明3では、「下記式Iで表される化合物および下記式PGIY-n-(O)mで表される化合物のいずれも含まず」とされているのに対し、甲1C発明は、「PP-1-2V1」を含んでいる点。 そこで、上記相違点11について検討する。 (カ)相違点11’について 相違点11’は、上記6.(2)ウ(オ)「本件発明1と甲1C発明との対比」に記載した相違点11と同じであるから、同(カ)「相違点11について」に記載したとおりのことがいえる。 そうすると、少なくとも、上記相違点11’は、実質的な相違点であるし、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえないから、本件発明3は、甲1C発明ではないし、甲1C発明及び甲1の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (キ)本件発明3についてのまとめ よって、本件発明3は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明3は甲1に記載された発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 カ 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)(甲1を主引用例とする場合)のまとめ 以上のとおり、本件発明1~15、18~22及び27~32は、いずれも甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、いずれも甲1発明、甲1に記載された事項及び必要に応じて技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。 よって、取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった取消理由及び特許異議申立理由により、本件請求項1~15、18~22及び27~32に係る特許を取り消すことはできない。 7.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、及び取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった取消理由のいずれによっても、本件請求項1~15、18~22及び27~32に係る特許を取り消すことはできない。また、他に本件請求項1~15、18~22及び27~32に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件請求項23~26に係る特許は訂正により削除され、本件特許の請求項23~26に係る特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700848

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