特許異議申立
2017-700805
炭素繊維複合材料
- 審判番号
- 2017-700805
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-078501
- 登録番号
- 特許第6092923号(P6092923)
- 請求日
- 2017年08月25日
- 審決日
- 2017年11月15日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】帝人株式会社
- 【権利者代理人】為山 太郎
- 【異議申立人】家田 亘久
- 【異議申立人】特許業務法人 朝日奈特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 橋本 栄和
- 審判官 堀 洋樹
- 分類
- P1651.113-Y (C08J) / P1651.121-Y (C08J) / P1651.536-Y (C08J) / P1651.537-Y (C08J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6092923号発明「炭素繊維複合材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6092923号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6092923号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成22年3月1日に出願された特願2010-44286号の一部を平成27年4月7日に新たな特許出願としたものであって、平成29年2月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1ないし7に係る特許に対し、同年8月25日付け(受理日:同年同月同日)に特許異議申立人 家田亘久(以下、「異議申立人1」という。)により、同年8月24日付け(受理日:同年同月28日)に特許業務法人朝日奈特許事務所(以下、「異議申立人2」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2.本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」~「本件発明7」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7にそれぞれ記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
繊維長10mm超100mm以下の炭素繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、炭素繊維が開繊され、かつ実質的に2次元ランダムに配向しており、式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が0Vol%超30Vol%未満であり、炭素繊維束(A)以外の炭素繊維束が存在し、かつ炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が下記式(2)を満たすことを特徴とする複合材料。
臨界単糸数=600/D (1)
1.0×104/D2<N<2.5×104/D2 (2)
(ここでDは炭素繊維の平均繊維径(μm)である)
【請求項2】
複合材料における熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、50~1000重量部である事を特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
複合材料における熱可塑性樹脂の存在量が、炭素繊維100重量部に対し、100~600重量部である事を特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
炭素繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が3Vol%以上30Vol%未満である請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
炭素繊維の目付が300~2000g/m2である請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料から得られる厚みが0.2~1mmの成形品。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料から得られる、表面に炭素繊維の凹凸が無い成形品。」
第3.申立理由の概要
1 異議申立人1の申立理由の概要
異議申立人1は、特許異議申立書において、概要以下の(A)~(E)の取消理由を挙げ、証拠として以下の各甲号証を提出して、本件特許の請求項1~7に係る発明は、特許法第113条第2号(下記の(A)及び(B))又は、第4号(下記の(C)、(D)及び(E))に該当し、取り消すべきものであると主張している。
<証拠方法>
甲第1号証:D.R.Mulligan,et al.,“Fibre-bundling in a short-fibre composite:1.Review of literature and development of a method for controlling the degree of bundling”,Composites Science and Technology 63(2003)715~725頁 写し及び抄訳文
甲第2号証:特開平4-163109号公報
甲第3号証:L.T.Harper et al.,“Characterisation of random carbon fibre composites from a directed fibre preforming process:The effect of tow filamentisation”,Composites:part A 38(2007) 755~770頁 写し及び抄訳文
(以下、甲第1号証~甲第3号証を、それぞれ、単に「甲1-1」から「甲1-3」ともいう。)
(A)特許法第29条第1項第3号(請求項1~7;新規性)
本件発明1~7は、甲1-1に記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当する。(以下、「取消理由1-1」という。)
(B)特許法第29条第2項(請求項1~7;進歩性)
本件発明1~7は、甲1-1に記載の発明に基いて、又は、甲1-2に記載の発明、及び甲1-1若しくは甲1-3に記載の発明に基いて当業者が容易に想到することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当する。(以下、「取消理由1-2」という。)
(C)特許法第36条第6項第1号(請求項1~7;サポート要件)
請求項1~7に係る本件特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由1-3」という。)
(D)特許法第36条第4項第1号(請求項1~7:実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由1-4」という。)
(E)特許法第36条第6項第2号(請求項1~7;明確性)
請求項1~7に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由1-5」という。)
2 異議申立人2の申立理由の概要
異議申立人2は、特許異議申立書において、概要以下の(F)~(I)の取消理由を挙げ、証拠として以下の各甲号証を提出して、本件特許の請求項1~7に係る発明は、特許法第113条第2号(下記の(F))又は、第4号(下記の(G)、(H)及び(I))に該当し、取り消すべきものであると主張している。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2010-37358号公報
甲第2号証:特開2002-212311号公報
甲第3号証:広辞苑第六版,株式会社岩波書店,2008年1月11日発行,第1750頁,表紙,奥付,写し
甲第4号証:日本国語大辞典第十三巻,株式会社小学館,昭和50年1月10日第一版第一刷発行,第149頁,表紙,奥付,写し
甲第5号証:A RANDOM FIBRE NETWORK MODEL FOR PREDICTING THE STOCHASTIC EFFECTS OF DISCONTINUOUS FIBRE COMPOSITES (2007),第1~10頁,写し及び抄訳文
(以下、上記甲第1号証~甲第5号証を、それぞれ、単に「甲2-1」から「甲2-5」ともいう。)
(F)特許法第29条第2項(請求項1~7;進歩性)
本件発明1~7は、甲2-1に記載の発明、又は、甲2-2に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当する。(以下、「取消理由2-1」という。)
(G)特許法第36条第4項第1号(請求項1~7:実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由2-2」という。
(H)特許法第36条第6項第1号(請求項1~7;サポート要件)
請求項1~7に係る本件特許は、特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由2-3」という。
(I)特許法第36条第6項第2号(請求項1~7;明確性)
請求項1~7に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。(以下、「取消理由2-4」という。)
第4.甲1-1の記載及び甲1-1、甲1-2又は甲2-1に記載された発明
本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1-1には、以下の記載事項が記載されている。
なお、甲1-1は英語文献であるので、異議申立人による訳文で記載する。
1.甲1-1の記載事項
(ア)「本研究に用いられた炭素繊維は東レT300である。1000本/トウ又は6000本/トウの炭素繊維トウが用いられた。」(第722頁左欄第9~11行目)
(イ)「繊維トウを5mm又は10mmにカットする細断機に繊維トウを入れる前にワックスは固化した。」(第722頁左欄第18~20行目)。
(ウ)「異なる割合のコートやアンコートの繊維を用いることで、繊維束の割合をコントロールすることができる。」(第722頁左欄第26~28行)
(エ)「以下の構成、束として存在している繊維が0%、25%、50%、75%、100%、のマットが製造された。」(第722頁左欄第43~47行目)
(オ)「炭素繊維層はポリプロピレンフィルムで交互積層され、公称繊維体積分率0.15となるようポリプロピレンのシートの枚数が選択された。」(第722頁右欄第2~5行目)
(カ)「この材料の製造方法によって150×150mmで厚さ1または2mmの積層体を製造した。」(第722頁右欄第17~19行目)
(キ)「
図6
図9」(図6、図9)
2.甲1-1に記載された発明
上記1.によれば、甲1-1の記載事項(キ)の写真から、炭素繊維が開繊されることが看取され、炭素繊維のうち、束として存在している繊維が25%のマットが製造されることが記載され(記載事項(エ))ている。
また、甲1-1の記載事項(キ)の写真からは、炭素繊維が実質的に2次元ランダムに配向していることも看取できる。
そうすると、甲1-1には、
「繊維長10mmの炭素繊維であり、炭素繊維が開繊され、かつ、実質的に2次元ランダムに配向しており、炭素繊維のうち、束として存在している繊維が25%であり、炭素繊維層はポリプロピレンフィルムで交互積層され、公称繊維体積分率0.15となるようポリプロピレンのシートの枚数が選択され、この材料の製造方法によって製造された、150×150mmで厚さ1または2mmの積層体。」の発明(以下「甲1-1発明」という。) が、記載されているといえる。
3.甲1-2に記載された発明
甲1-2の特許請求の範囲の記載から、甲1-2には、
「強化繊維と熱可塑性樹脂を主成分として、抄造技術により得られる不織材料を加熱、加圧し、さらに冷却して得られた繊維強化熱可塑性樹脂成形素材であって、不織材料が複数本に集束された強化繊維束もしくは、単一の繊維の状態で分散している強化繊維と複数本に集束された強化繊維束の混合体から構成されている、繊維強化熱可塑性樹脂成形素材。」の発明(以下「甲1-2発明」という。) が、記載されているといえる。
4.甲2-1に記載された発明
甲2-1の実施例10の記載、特に、段落【0064】、【0076】、【0099】~【0102】、【0108】の記載から、
「単繊維の直径が7μmである炭素繊維A2を6.4mmにカットして得たチョップド炭素繊維(A2-1)を、加圧空気に吹き付け、底面より空気を吸引して開繊させ、炭素繊維ウェブを得たのちに、バインダーの1質量%の水分散液を200g散布し、マトリックス樹脂である酸変性ポリプロピレン樹脂B-1の不織布を炭素繊維ウェブの上下両面に配置し、220℃で加圧して得られた炭素繊維ウェブにマトリックス樹脂が含浸した繊維強化成形基材であって、強化繊維分散状態の評価が「○」、すなわち、炭素繊維ウェブの任意の部位より、50mm×50mmの正方形上にウェブを切り出し、20回の測定の平均値で、10本以上の炭素繊維の単繊維が束状になった状態の個数が、1個以上5個未満である、繊維強化成形基材。」の発明(以下「甲2-1発明」という。) が、記載されているといえる。
第5 異議申立人1の申立て理由についての当合議体の判断
当合議体は、以下に述べるように、取消理由1-1~1-5によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1.取消理由1-1(新規性)について
(1)本件発明1について
本件発明1と甲1-1発明とを対比する。
甲1-1発明の「ポリプロピレン」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
そうすると、両者は、
「炭素繊維と熱可塑性樹脂とから構成され、炭素繊維が開繊され、かつ実質的に2次元ランダムに配向している、複合材料。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1では、炭素繊維の繊維長は、10mm超100mm以下と特定されているのに対し、甲1-1発明では、炭素繊維の繊維長は、10mmである点。
<相違点2>
本件発明1では、式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が0Vol%超30Vol%未満であり、炭素繊維束(A)以外の炭素繊維束が存在すると特定されているのに対し、甲1-1発明では、その点が特定されていない点。
臨界単糸数=600/D 式(1)
<相違点3>
本件発明1では、炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が式(2)を満たすと特定されているのに対し、甲1-1発明では、その点が特定されていない点。
1.0×104/D2<N<2.5×104/D2 式(2)
そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、少なくとも相違点1及び3の点で実質的に相違するから、本件発明1が甲1-1発明、すなわち、甲1に記載された発明であるということはできない。
なお、上記相違点3について、異議申立人1は、特許異議申立書において、概略、以下の主張をしている。
<相違点3についての主張>(特許異議申立書18頁下から5行~19頁2行)
甲1-1の図6、図7、図9、図10の記載の写真より、トウの本数(1000本)から減少して、当該積層体の平均繊維数(N)は、式(2)(204<N<504)を満たす蓋然性が高い。
そこで、上記主張について検討すると、甲1-1に示される図6、図7、図9、図10の写真は、トウの本数を計測できる程度の精度及び鮮明性を有しておらず、該写真から、「当該積層体の平均繊維数(N)は、式(2)(204<N<504)を満たす蓋然性が高い」と結論づけることはできない。
したがって、甲1-1に、相違点3にかかる本件発明1の構成が開示されているに等しいとはいえない。
以上のとおり、異議申立人1の主張を参酌しても、本件発明1は、甲1-1に記載された発明であるということはできない。
(2)本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも、本件発明1を引用する発明であるから、同様に、甲1-1に記載された発明ということはできない。
(3)小括
よって、異議申立人1が主張する取消理由1-1によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
2.取消理由1-2(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1-1を主引例とする本件発明1の進歩性について
1.(1)で説示したとおり、甲1-1には、上記相違点1及び3にかかる本件発明1の構成は記載されていないし、甲1-1の記載からは、少なくとも相違点3にかかる本件発明1の構成を導き出すことはできない。
イ 甲1-2を主引例とする本件発明1の進歩性について
本件発明1と甲1-2発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点4>
本件発明1では、炭素繊維が開繊されていることが特定されているのに対し、甲1-2発明では、この点が特定されていない点。
<相違点5>
本件発明1では、炭素繊維束(A)以外の炭素繊維束が存在すると特定されているのに対し、甲1-2発明では、この点が特定されていない点。
上記相違点について検討すると、甲1-2には、上記相違点4及び5にかかる本件発明1の構成は記載されていないし、また、甲1-2、甲1-1、甲1-3の記載を考慮しても、相違点4及び5にかかる本件発明1の構成を導き出すことはできない。
なお、上記相違点4~6について、異議申立人1は、特許異議申立書において、概略、以下の主張をしている。
<相違点4についての主張>(特許異議申立書23頁)
甲1-1及び甲1-3には、炭素繊維が開繊される技術が開示されており、甲1-2と同一の技術分野に属するものであるから、甲1-2発明において、甲1-1、甲1-3に記載の炭素繊維を開繊する技術を適用することは、当業者が容易に想到し得る。
<相違点5についての主張>(特許異議申立書22頁下から11~13行)
甲1-2の実施例において、ガラス繊維束Bの含有率が10%の例において、強化繊維中の束以外の割合は75wt%であり、実質的に開示されている。
上記相違点4の主張について検討すると、甲1-2発明は、強化繊維束として、開繊されたものを用いることは記載されておらず、また、強化繊維束として、甲1-1又は甲1-3に記載の開繊されたものを用いる積極的な動機づけも見当たらない。
そうすると、甲1-2発明において、強化繊維束として、開繊されたものを用いることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
上記相違点5の主張について検討すると、甲1-2の実施例1において用いられるガラス繊維Aは、単一の繊維の状態で分散している強化繊維であって、強化繊維の「束」とはいえない。この点は、甲1-2の特許請求の範囲において、「単一の繊維の状態で分散している」という文言があることや、「ガラス繊維束A」ではなく、「ガラス繊維A」と記載されていることからも明らかである。
以上のとおり、異議申立人1の主張を参酌しても、本件発明1は、甲1-2発明、すなわち、甲1-2に記載された発明及び甲1-1、甲1-3に記載の技術的事項から当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
(2)本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも、本件発明1を引用する発明であるから、同様に、甲1-2に記載された発明及び甲1-1、甲1-3に記載の技術的事項から当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
(3)小括
よって、異議申立人1が主張する取消理由1-2によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
3.取消理由1-3(サポート要件)について(特許異議申立書第26~29頁)
(1)異議申立人1の主張の概略
異議申立人1は、特許異議申立書において、本件特許明細書において、特定の開繊方法により、繊維束を開繊させる方法のみが示されている(段落【0034】)が、これ以外の開繊方法については何ら記載されておらず、段落【0034】に記載された方法以外の開繊方法を採用した場合に、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており(主張1)、平均繊維数(N)と平均繊維径(D)に関してその関係を特定した式(2)の関係式を満たすことで、所望の効果が得られるか否かが、わずか3つの具体例のみでは、式(2)の範囲が所望の効果を奏する境界線であることを裏付けていない点(主張2)、繊維長の数値範囲が、10mm超100mm以下であり、繊維長を変化させて30mm、50mm、100mmと設定した場合まで、平均繊維数(N)及び平均繊維径(D)の同一グラフ上に同一の曲線を描くことができるとする根拠は、本件特許明細書中には開示されていない(主張3)旨を主張している。
(2)当合議体の判断
しかしながら、本件明細書の記載、特に段落【0019】~【0025】の記載によれば、式(1)で定義される臨界単糸数以上で構成される炭素繊維束(A)について、繊維全量に対する割合が0Vol%超30Vol%未満とすることによって、表面品位に優れた繊維強化複合材料を得ることができ、また、式(2)を満たすことによって、薄い成形品を得ることができ、かつ、表面品位に優れた繊維強化複合材料を得ることができ、本件発明が解決しようとする課題を解決することができることが理解される。
そうすると、確かに、本件特許明細書の実施例において具体的に行われているのは、特定の開繊方法により、特定の平均繊維数(N)と平均繊維径(D)の関係を有する材料のみであるものの、当業者であれば、本件の明細書の記載及び出願時の技術常識から、本件発明に係る複合材料は、炭素繊維束(A)の含量及び式(2)を特定したことにより、本件発明が解決しようとする課題が解決できると認識できると認められるから、本件特許請求の範囲の記載は発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えているとはいえない。
したがって、上記異議申立人1の主張1~3は、採用することができない。
(3)小括
よって、異議申立人1が主張する取消理由1-3によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
4.取消理由1-4(実施可能要件)について(特許異議申立書第30~31頁)
(1)異議申立人1の主張の概略
異議申立人1は、特許異議申立書において、本件特許明細書において、平均繊維数(N)、炭素繊維の平均繊維径(D)、炭素繊維の平均繊維長(L)については、特定の例が示されるのみであり、繊維長30mm、50mm、100mmと設定した場合において、式(2)がどのような変化を示すのか、実施例及び比較例の数値や記載からだけで予測するのは困難であり、束割合、平均繊維数Nを満足する複合材料を得るためには、当業者に過度の試行錯誤を強いるものであり、実施可能要件を満たしていない旨を主張している。
(2)当合議体の判断
しかしながら、少なくとも本件特許明細書の実施例の記載に基づけば、その限りにおいて本件発明を実施することができることは明らかであって、この点は異議申立人1も争っていない。
そして、本件発明において、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられている複合材料以外のもの、例えば、繊維長の長さを本件実施例で用いられているものより長くした場合でも、炭素繊維の平均繊維径Dを決定することで、式(2)の平均繊維数Nの数値範囲が特定され、その後、開繊の度合いを、特定された平均繊維数Nの数値範囲となるように調整して、式(2)を満たす複合材料を製造することは、当業者が過度の試行錯誤を行うことなくできるものであるといえる。
(3)小括
よって、異議申立人1が主張する取消理由1-4によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
5.取消理由1-5(明確性要件)について(特許異議申立書第31~37頁)
(1)異議申立人1の主張の概略
異議申立人1は、特許異議申立書において、本件特許請求の範囲の「実質的に2次元ランダム」の定義は不明確である点(主張1)、「繊維束」は、各工程を経ることによって形状が変化していくため、同じ複合材料を測定したとしても、測定者によって「繊維束の長さ」の計測結果が異なり、平均繊維数(N)は一義的に定まらないことから、本件発明の記載は不明確である点(主張2)、及び、(本件発明7の)「表面に炭素繊維の凹凸が無い」とは、どのような状態であれば、凹凸が無い状態といえるのかが不明確である点(主張3)を主張している。
(2)当合議体の判断
しかしながら、まず主張1について検討すると、本件特許発明における「実質的に2次元ランダム」とは、本件特許明細書の段落【0016】の記載から、複合材料を構成する材料を構成する炭素繊維が、複合材料の接表面内に繊維軸の主配向方向があり、かつその面内において互いに直行する二方向に測定した引張弾性率の値のうち大きいものを小さいもので割った比が2を超えないものをいうのであって、上記記載から、「実質的に2次元ランダム」の定義が明確であるといえる。
なお、繊維束の配向方向と、引張弾性率との間に、相関関係があることは、自明の技術事項であり、繊維束の配向方向がランダムであれば、面内において互いに直交する2方向の引張弾性率は、さほど差がないことが予見されるから、両者に技術的な関連がないということはできない。
次に主張2について検討すると、「繊維束の長さ」をどのように測定するのかについては、「長さ」という用語からみて、繊維束の端部から端部を測定したもののうち、一番長くなった値のことを、「繊維束の長さとすることは、明らかであり、測定者によって、繊維束の長さが異なるということはなく、したがって、繊維束の長さを用いて、本件特許明細書の段落【0043】より導出される、平均繊維数(N)は、一義的に定まるものであり、本件特許発明の「平均繊維数(N)」の定義は明確であるといえる。
さらに主張3について検討すると、本件発明7の「表面に炭素繊維の凹凸が無い」とは、成形品の表面に、炭素繊維の凹凸が無いことを意味することは、その文言から自明であるといえる。
(3)小括
よって、異議申立人1が主張する取消理由1-5によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
第6 異議申立人2の申立て理由についての当合議体の判断
当合議体は、以下に述べるように、取消理由2-1~2-4によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1.取消理由2-1(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲2-1を主引例とする本件発明1の進歩性について
本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点6>
本件発明1では、炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が式(2)を満たすと特定されているのに対し、甲2-1発明では、その点が特定されていない点。
1.0×104/D2<N<2.5×104/D2 式(2)
上記相違点について検討すると、甲2-1には、上記相違点6にかかる本件発明1の構成は記載されていないし、また、甲2-1の記載を考慮しても、相違点6にかかる本件発明1の構成を導き出すことはできない。
なお、上記相違点6について、異議申立人2は、特許異議申立書において、概略、以下の主張をしている。
<相違点6についての主張>(特許異議申立書26頁下から5行~28頁6行)
上記相違点6に係る構成は、要するに、薄く、表面品位の優れた成形品を得るために、単に炭素繊維束の平均繊維数を最適化しているに過ぎず、甲2-1の実施例で得られる成形品の厚みも本件と同程度に薄いことから考えれば、平均繊維数Nは少なくとも式(2)の下限である1.0×104/D2である蓋然性が高く、成形体の表面品位が同等であると考えられることから、式(2)の上限である2.5×104/D2である蓋然性も極めて高く、また、成形品の表面品位の向上は、当業者に周知の課題であり、その課題を解決するために、炭素繊維の平均繊維数に、適宜の上限を設けることは自明であって、単なる設計的事項にすぎない。
上記相違点6の主張について
甲2-1発明における炭素繊維の単繊維の直径は7μmであるから、本件発明1の式(2)は、
204<N<510
となり、炭素繊維の束の平均繊維数Nは、204~510本の範囲にある必要がある。
しかしながら、甲2-1発明は、50mm×50mmの正方形状のウェブにおいて、10本以上の炭素繊維の束の個数は、1個以上5個未満しかないのであるから、このウェブ中の炭素繊維は、ほとんどが10本未満の束であり、10本以上の炭素繊維の束は、極めて少ないことがうかがわれる。
そうすると、このウェブ中に存在する炭素繊維の束は、式(2)で特定される平均繊維数の下限である204本より遙かに少ない10本以上の束ですら、極めて少ないから、開繊の度合いは、本件特許発明よりも強いものであり、その炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が、式(2)を満たす蓋然性が高いとはいえない。
また、異議申立人2のいうように、成形品の表面品位の向上自体は周知の課題であるとしても、複合材料中の炭素繊維の平均繊維径(D)と平均繊維数(N)との関係を、1.0×104/D2<N<2.5×104/D2 という特定の範囲にすることで、高い機械強度を発現しつつ、薄肉化や均質化を可能とするという課題を解決することが、本願出願時において周知の技術事項又は設計的事項であったとは認められないから、この主張は採用することができない。
以上のとおり、異議申立人2の主張を参酌しても、本件発明1は、甲2-1発明、すなわち、甲2-1に記載された発明から当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
イ 甲2-2を主引例とする本件発明1の進歩性について
少なくとも、本件特許発明1の発明特定事項である「炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)が式(2)を満たす」ことについて、甲2-2には記載されていないし、示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、少なくとも上記アにおける相違点6の点で、甲2-2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~7について
本件発明2~7は、いずれも、本件発明1を引用する発明であるから、同様に、甲2-1又は甲2-2に記載された発明から当業者が容易に想到することができたものであるということはできない。
(3)小括
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-1によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
2.取消理由2-2(実施可能要件)について(特許異議申立書第38~39頁)
(1)異議申立人2の主張の概略
異議申立人2は、特許異議申立書において、本件特許明細書において、開繊処理に関しては、特定の開繊処理についてのみ開示され、実施例は、パウダー状の熱可塑性樹脂とを混ぜて開繊を行っているが、開繊処理の程度は、パウダー状の熱可塑性樹脂の影響を大いに受けることが自明であり、このようなパウダー状の熱可塑性樹脂が存在する場合において、繊維束単独であっても同等の開繊程度が再現できるか不明である点、比較例1には、開繊における具体的な風速数値が記載されておらず、どのように開繊されたのか一切不明である点を根拠に、実施可能要件を満たしていない旨を主張している。
(2)当合議体の判断
しかしながら、少なくとも本件特許明細書の実施例の記載に基づけば、その限りにおいて本件発明を実施することができることは明らかであって、この点は異議申立人2も争っていない。
そして、本件発明において、本件特許明細書の実施例において具体的に用いられている複合材料や方法以外のものであっても、開繊の度合いを、例えば風速を調整すること等により、特定された平均繊維数Nの数値範囲となるように調整して、式(2)を満たす複合材料を製造することは、当業者が過度の試行錯誤を行うことなくできるものであるといえる。
(3)小括
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-2によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
2.取消理由2-3(サポート要件)について(特許異議申立書第39~41頁)
(1)異議申立人2の主張の概略
異議申立人2は、特許異議申立書において、本件特許明細書において、特定の開繊方法により、繊維束を開繊させる方法のみが示されている(段落【0034】)が、これ以外の開繊方法については何ら記載されておらず、段落【0034】に記載された方法以外の開繊方法を採用した場合に、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えている旨を主張している。
(2)当合議体の判断
しかしながら、本主張は、異議申立人1の主張する取消理由1-3の主張1と重複するものであり、当該取消理由1-3の主張1については、既に第5 3で検討したとおりである。
(3)小括
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-3によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
4.取消理由2-4(明確性)について(特許異議申立書第41~62頁)
(1)異議申立人2の主張の概略
異議申立人2は、取消理由2-4について次のとおり主張し、後述のA、B(i)~(iii)、Cの点を指摘している。
主張1.
本件発明1の「2次元ランダム」の定義は、本件明細書の段落【0016】に、「複合材料の接表面内に・・・比が2を超えないことを言う。」との記載があるのみで、「引張弾性率の比が2を超えないこと」と、「繊維束が2次元ランダムであること」との間には、何ら技術的なつながりがないから、不明確である。
主張2.
(i)「繊維束」における「束」に関する定義自体が自明でないし、本件特許明細書に「繊維束」についての明確な定義があるとはいえない。そして、出願時の技術常識(甲2-3及び甲2-4)を考慮しても、「繊維束」とはどのような「束」を一義的にさすのかが明確でない。
(ii)実際の複合材料において確認される繊維の状態(どのような繊維束が存在するか、また、そもそもどのような繊維の状態を繊維束として取り扱うか等)は、本件特許発明に記載の内容のみからは、一義的に把握できるものではない。本件特許明細書では、「繊維束をピンセットで全て取り出す」とピンセットで取り出すことが記載されており、ピンセットで摘まむことで繊維束が束ねられて繊維束が確定されるが、ピンセットでどの位置を摘んで取り出すかによって、繊維束の大きさは異なるし、繊維束とはどのようなものか明確でなければ、誤差が生じる。
(iii)具体的な事例として、甲2-5の図1のI~VIIの部分を選び、その拡大図に基づいて、本件特許明細書記載の内容から、強化繊維束の割合を算出できるか検証を行ったが、いずれの拡大図の場合であっても、明確な定義がなければ繊維束を実質取り出すことができない。強化繊維束(A)の定義及び強化繊維束(A)中の平均繊維数(N)が繊維束の取り方で変わり得ることは明らかであるから、当業者であっても、本件特許明細書の記載のみからは、得られた強化繊維束に関する数値を一義的に決定することができない。
主張3.
本件発明7の「炭素繊維の凹凸が無い」との記載は、どのようであれば具体的な凹凸が無い状態なのか、明細書の記載から当業者であっても一義に明確に把握することができず不明確である。
(2)当合議体の判断
主張1について
本主張については、異議申立人1の主張する取消理由1-5の主張1と重複するものであり、当該取消理由1-5の主張1については、既に第5 5で検討したとおりである。
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-4の主張1によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
主張2について
(i)「繊維束」における「束」という用語自体は、異議申立人2の証拠方法である甲2-5に記載されているとおり「一まとめにたばねたもの」を意味しており、日本語として明確である。また、特に「繊維束」については、例えば異議申立人2自らも証拠方法である甲2-5の2頁右欄7~13行の抄訳で「繊維束」と記載しているように、束状の形態の繊維を意味するものとして当業者に一般に認識使用されている用語であって、これを用語として不明確とすることはできない。
(ii)複合材料における「繊維束」については、本件特許明細書の【0043】に、炭素繊維束(A)の繊維全量に対する割合の分析方法が、下記のとおり記載されている。
「[複合材料における炭素繊維束(A)の繊維全量に対する割合の求め方]
1)複合材料を100mm×100mmに切り出し、厚み(Ta)を測定後、500℃×1時間程度、炉内にて樹脂を除去する。
2)樹脂を除去した複合材料より、繊維束をピンセットで全て取り出す。
3)全ての繊維束について、個々の繊維束の長さ(Li)と重量(Wi)を測定し、繊維束数(I)を記録する。ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいものについては、まとめて最後に重量を測定する(Wk)。このとき、1/1000gまで測定可能な天秤を用いる。なお、繊維長が短い場合には、繊維束の重量が小さく、測定が困難になる。こういった場合には、繊維を0.2mm程度の間隔で分類し、分類した繊維束を複数本まとめて重量を測定し、平均値を用いても良い。
4)全ての分類について測定後、以下の計算を行う。使用している炭素繊維の繊度(F)より、分類した繊維束群の繊維本数(Ni)は次式により求められる。
Ni=Wi/(Li×F)。
炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)は以下の式により求める。
Nj=ΣNi/I
また、個々の繊維束の体積(Vi)及び、炭素繊維束(A)の繊維全体に対する割合(VR)は、使用した炭素繊維の繊維比重(ρ)を用いて次式により求められる。
Vi=Wi/ρ
VR=ΣVi/Va×100
ここで、Vaは切り出したシートの体積であり、Va=100×100×Ta」
上記段落の記載によれば、本件発明の「繊維束」は、当業者が、「繊維束」として認識するものであって、ピンセットで取り出すことが可能なものであるといえる。そして、ピンセットでつまんだ位置にかかわらず、一まとめの束の状態としてくっついている繊維束は、取り出したときに一まとめの束として取り出されるから、その場合、繊維束の範囲は明確である。
なお、「繊維束」と区別されるものは「単糸」であるところ、複合材料を構成する炭素繊維が単糸である場合には、通常、ピンセットで取り出すことはできないと解される(このことは、上記段落の「ピンセットにて取り出す事ができない程度に繊維束が小さいもの・・・」なる記載からも理解できる。)。
したがって、当業者は、本件特許明細書の記載から、本件発明1の「炭素繊維束」を把握できるから、本件発明1の「炭素繊維束」が明確でないとはいえない。
(iii)異議申立人2は、具体的な事例として、甲2-5の図1(炭素プリフォームの写真)から複数箇所の部分を選び、拡大図とし、特許異議申立書において個々に論じているが、いずれの部分から「繊維束」を取り出す場合であっても、(ii)でも記載したとおり、当業者が「繊維束」として認識するものであって、ピンセットで取り出すことが可能なものを取り出せば足りるのであって、その際には、当業者であれば、「繊維束」として認識し得る最小単位をピンセットでつまんで取り出せばよく、その際に、一まとめの束の状態としてくっついている他の繊維束があれば、それは本来1つの繊維束として一緒に取り出されるべきものである。また、開繊された一見繊維束に見えるものであっても、他の繊維と交絡してマットを形成しており、繊維束としては取り出すことができないものが、本件特許明細書の【0043】に記載されている「繊維束」に当たらないことは明らかである。
すなわち、甲2-5の図1の各部分の拡大図における繊維束についても、ピンセットで実際に取り出したときに、束となるものが繊維束として取り出されるのであり、繊維束の取り出し方が複数存在するものではなく、当業者は、いずれの拡大図の場合であっても、本件発明1でいう「繊維束」を取り出すことができる。そして、取り出された繊維束について本件特許明細書の【0043】の数式に従い個々の繊維束の繊維本数を計算することで、炭素繊維束(A)の定義に合致する繊維束であるかを決定することができる。
従って、当業者であれば、本件特許明細書の記載に従い、「繊維束をピンセットで取り出す」ことで、炭素繊維束(A)が存在するかを確認することができるといえる。
(iv)以上のとおり、本件特許明細書の記載に従えば、当業者は、本件発明1の「繊維束」を取り出し、段落【0043】に記載の手順にしたがい、炭素繊維束(A)中の平均繊維数(N)を理解することができるから、本件発明1が明確でないと認めることはできない。
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-4の主張2によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
主張3について
本主張については、異議申立人1の主張する取消理由1-5の主張3と重複するものであり、当該取消理由1-5の主張3については、既に第5 5で検討したとおりである。
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-4の主張3によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
(3)小括
よって、異議申立人2が主張する取消理由2-4によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
第6.むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700805