特許異議申立
2017-700772
使い捨て吸収性物品
- 審判番号
- 2017-700772
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-227530外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月08日
- 審決日
- 2017年12月04日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユニ・チャーム株式会社
- 【権利者代理人】白浜 吉治
- 【権利者代理人】白浜 秀二
- 【異議申立人】伊藤 範子
- 分類
- P1651.121-Y (A41B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6076678号発明「使い捨て吸収性物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6076678号の請求項1~9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6076678号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成24年10月12日の出願であって、平成29年1月20日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人伊藤範子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1~9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本件発明1は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
縦方向および横方向を有し、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前ウエスト域および前記後ウエスト域の間に位置するクロッチ域と、前記クロッチ域から前記前ウエスト域および前記後ウエスト域へ延びる吸液構造体とを有するおむつ本体を備え、着用前において、前記前ウエスト域、前記クロッチ域、および前記後ウエスト域を前記縦方向へ並べた開放状態である使い捨て吸収性物品であって、
前記吸液構造体の前記横方向の両外側において伸長状態で前記縦方向へ延びるように設けられたレッグ弾性体と、前記吸液構造体の少なくとも前記横方向の中央部に伸長状態で前記縦方向へ延びるように設けられた吸液弾性体とを備え、
前記吸液弾性体は前記横方向において前記レッグ弾性体に離間して配置してあり、前記吸液弾性体および前記レッグ弾性体によって弾性域を画定し、
前記縦方向における前記吸液構造体において、前記弾性域の前記後ウエスト域の側には、前記レッグ弾性体および前記吸液弾性体を配置しない非弾性域を設け、
前記吸液構造体は、肌対向面および非肌対向面を有し、透液性の身体側ライナおよび吸液層とを備え、
前記吸液層は、前記肌対向面側に位置する透液性の第1シートと、前記非肌対向面側に位置し、透液性または不透液性の第2シートと、前記第1シートおよび前記第2シートの間に介在された吸収性ポリマー粒子とを含み、前記身体側ライナと前記第1シートとの間には前記吸液弾性体を設けてあり、
前記身体側ライナと前記第1シートとは、前記縦方向へ延び、かつ前記横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合され、
前記吸液弾性体が収縮することによって前記身体側ライナに前記横方向へ延びる複数の凹凸条が形成されることを特徴とする吸収性物品。」
3.申立理由の概要
申立人は、甲第1号証~甲第13号証(以下、「甲1」~「甲13」という。)を提出し、本件発明1~4、6、8、9は、甲1の第1の実施の形態の発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1~9は、甲1の第2の実施の形態の発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号の規定により、本件発明1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲1:特開2004-188115号公報
甲2:特開昭63-288201号公報
甲3:実願平4-60089号(実開平6-21622号)のCD-ROM
甲4:実願昭63-89003号(実開平2-10824号)のマイクロフィルム
甲5:特開2012-139247号公報
甲6:特開2011-136033号公報
甲7:特開2002-371456号公報
甲8:特開2004-49529号公報
甲9:特開2005-87527号公報
甲10:特開平6-70953号公報
甲11:特開2009-22670号公報
甲12:特開2009-61230号公報
甲13:国際公開第01/89439号
4.当審の判断
(1)甲1には、以下の事項が記載されている。
ア.「【0002】
【従来の技術】
従来、この種の使い捨て吸収性物品は、透液性シートおよび不透液性シートの間に綿状パルプなどの吸収体を保持したおむつ体を備えている。このおむつ体の上方には、長手方向に収縮性を有する表面シートが設けられており、長手方向の両端部が透液性シート上に固着されている。そして、装着の際には、表面シートが自己の収縮力により透液性シートから浮き上がって離間されることにより、吸収体に圧力が作用しないため、この吸収体にて吸収した排泄液の逆戻りがなく、かつ表面シートが装着者の股下部分に当たるため、圧迫感を軽減し着用感を向上している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、他の使い捨て吸収性物品は、透液性の表面シートおよび不透液性裏面シートの間に吸収体を保持している。表面シートの上面には、透液性の上面シートが配設されている。この上面シートは、長手方向の両端部および長手方向の中間部が表面シートにそれぞれ固定されている。また、この上面シートの側縁部は、伸縮性を有している。そして、装着の際には、上面シートの側縁部が装着者の脚部ないし鼠蹊部に密着し、表面シートと上面シートとの間の空間により排泄液の排泄速度を緩和して漏れを防止する(例えば、特許文献2参照。)。」
イ.「【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の使い捨て吸収性物品の第1の実施の形態の構成を図1および図2を参照して説明する。
【0018】
図1において、使い捨て吸収性物品は、例えば使い捨て紙おむつであり、吸収性物品体としての略矩形状のおむつ体1を備えている。このおむつ体1は、図1に示す展開状態からパンツ形状にすることで、例えば病人、失禁者などの装着者の背部側から腹部側に身体に沿って装着するものである。そして、このおむつ体1は、透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および、透液性表面シート2の上面に配設され液透過性および液吸収性を有する上層体5にて層状に形成されている。
【0019】
また、透液性表面シート2と不透液性裏面シート3とは、周縁部が例えば接着剤などで接合されて吸収体4が封着されている。
【0020】
ここで、透液性表面シート2は、例えば織布、不織布、多孔性フィルム、或いは合成繊維などの、透液性および通気性を有しかつ肌着に近い感触のシート材で形成され、尿などの排泄液を吸収体4へ透過するとともに、身体に直接接触しても不快感を与えないようになっている。
【0022】
そして、透液性表面シート2および不透液性裏面シーと3は、展開状態で背側腰回り部11、股下回り部12および腹側腰回り部13がおむつ体1の長手方向に順次一体的に形成されるとともに、長手方向に略沿った中心線にて線対称な略矩形状に形成されて、この股下回り部12の幅方向の両側縁には、略凹弧状に切り欠き形成された脚回り部14が形成されている。
【0029】
さらに、両脚回り部14の近傍には、例えば紐状ゴムなどの図示しない脚回り弾性部材がそれぞれ伸張された状態で配設されている。このため、脚回り部14には、脚回り弾性部材にて、おむつ体1の長手方向および幅方向に伸縮性が付与され、おむつ体1の脚回り部14はギャザ部に形成される。
【0030】
一方、吸収体4は、例えばパルプを主とする材料であって一部に高分子吸収体などの物質を含んだ材料にてシート状に形成され、尿などの排泄液を充分に吸収する。この吸収体4は、背側腰回り部11から股下回り部12を通過して腹側腰回り部13に亘って長手状に形成されている。さらに、吸収体4は、背側腰回り部11側および腹側腰回り部13側に位置する部分である長手方向の両端部が、長手方向の中間部よりもそれぞれ幅寸法が大きくなるように形成されている。
【0031】
そして、上層体5は、この上層体5の上面となる上面シート21、上層体5の下面となる下面シート22、および、これら上面シート21と下面シート22との間に保持された弾性部材23をそれぞれ備えている。
【0035】
さらに、下面シート22は、下面26における長手方向の両端部が透液性表面シート2の上面に固着されて端部固着部31,31となっている。・・・・
【0036】
ここで、下面シート22の吸収性能は、液吸収性を有しないシートのみの保水量より大きく、かつ上面シート21の上面に残留する排泄液、すなわち液残りが、液吸収性を有しないシートのみの液残りよりも小さい程度、言い換えれば吸収体4よりも弱い吸収性能に設定する。具体的には、上層体5の吸収量が1.8mlより大きく60mlよりも小さくなるように設定し、かつ液残り量が1.2mlよりも小さくなるように設定する。
【0037】
そして、下面シート22の下面26における中心部、すなわち端部固着部31,31を除く長手方向の中心域における幅方向の中心域は、図1および図2に示すように、透液性表面シート2の上面に固着されて固着部32となっている。
【0039】
さらに、弾性部材23は、好ましくは伸張応力が0.07N~2.50N程度になるように延伸された状態で、端部固着部31,31の間に亘って配設されており、上面シート21および下面シート22に上側および下側がそれぞれ固着されている。
【0044】
また、不透液性裏面シート3との間に吸収体4が配設された透液性表面シート3の上面に配設した上層体5に、長手方向に沿って互いに平行な6本の弾性部材23を設けることにより、これら弾性部材23が伸縮することで上層体5全体が装着者の股下に持ち上げられ、この上層体5を装着者の肌へと確実に密着させる。
【0045】
このため、上層体5全体と装着者の肌との間に空間ができにくく、かつ、上層体5の下面の中心部は固着部32にて透液性表面シート2に固着されるため、上層体5と透液性表面シート2との間に空間が開きすぎたり、上層体5が透液性表面シート2からずれたりすることがないとともに、弾性部材23の収縮により上層体5の表面に皺、いわゆるプリーツが形成されるため、上層体5による吸収面積を大きくして排泄液などの漏れを防止できる。
【0050】
そして、上層体5の幅寸法を吸収体4の幅寸法よりも小さくしたことにより、上層体5に不規則なよれが生じることを防止できるとともに、上層体5全体が吸収体4の上面に位置することで、例えば上層体5を通過した排泄液などが確実に吸収体4に流れて吸収されるので、上層体5を通過した排泄液などの漏れを確実に防止できる。
【0051】
また、固着部32の幅寸法、すなわち接着幅を、上層体5の幅寸法の3分の1以下としたことにより、上層体5の装着者の肌への密着性および上層体5の持ち上げ効果を低下させることもない。」
ウ.「【0056】
次に、本発明の第2の実施の形態を、図4を参照して説明する。
【0057】
この図4に示す実施の形態は、上記図1および図2に示す実施の形態と基本的に同様の構成を有しているが、上層体5の上面シート21と下面シート22との間の空間における弾性部材23と下面シート22との間には、例えばパルプと高分子吸収材、パルプと高分子吸収材とティッシュ紙、いわゆるエアレイド吸収体、あるいはポリマーシート吸収体などの上層吸収体41を配設されている。
【0058】
この上層吸収体41は、吸収体4よりも薄く形成されており、上層体5の厚さが厚くならないようにしている。
【0059】
また、この上層吸収体41の上側に位置した弾性部材23は、上面シート21および上層吸収体41にそれぞれ固着されている。さらに、上層吸収体41の上側に位置しない弾性部材23は、上面シート21に固着されている。
【0060】
この図4に示す実施の形態も、透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に吸収体4を配設し、透液性表面シート2の上面に長手方向に沿って上層体5を配設するなど、上記図1および図2に示す実施の形態と同様の構成を有することにより、上記図1および図2に示す実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。」
(2)甲1の第1の実施の形態の発明についての判断
ア.甲1の第1の実施の形態に関し(特に、【0018】、【0031】、【0035】、【0037】、【0039】、【0045】の記載)、以下の発明が記載されている。
「透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および、透液性表面シート2の上面に配設され液透過性および液吸収性を有する上層体5にて層状に形成され、
上層体5は、この上層体5の上面となる上面シート21、上層体5の下面となる下面シート22、および、これら上面シート21と下面シート22との間に保持された弾性部材23をそれぞれ備え、弾性部材23は、上面シート21および下面シート22に上側および下側がそれぞれ固着され、弾性部材23の収縮により上層体5の表面に皺が形成され、下面シート22は、下面26における長手方向の両端部及び中心部が透液性表面シート2の上面に固着されている、使い捨て吸収物品。」(以下、「甲1-1発明」という。)
イ.本件発明1と甲1-1発明を対比すると、
本件発明1が、
「吸液構造体は、肌対向面および非肌対向面を有し、透液性の身体側ライナおよび吸液層とを備え、
前記吸液層は、前記肌対向面側に位置する透液性の第1シートと、前記非肌対向面側に位置し、透液性または不透液性の第2シートと、前記第1シートおよび前記第2シートの間に介在された吸収性ポリマー粒子とを含み、前記身体側ライナと前記第1シートとの間には前記吸液弾性体を設けてあり、
前記身体側ライナと前記第1シートとは、前記縦方向へ延び、かつ前記横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合され、
前記吸液弾性体が収縮することによって前記身体側ライナに前記横方向へ延びる複数の凹凸条が形成される」のに対し、
甲1-1発明は、
「透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および、透液性表面シート2の上面に配設され液透過性および液吸収性を有する上層体5にて層状に形成され、
上層体5は、上面シート21と下面シート22との間に保持された弾性部材23を備え、弾性部材23は、上面シート21および下面シート22に上側および下側がそれぞれ固着され、弾性部材23の収縮により上層体5の表面に皺が形成され、下面シート22は、下面26における長手方向の両端部及び中心部が透液性表面シート2の上面に固着されている」ものである点(以下、「相違点1」という。)で、少なくとも相違する。
ウ.上記相違点1について検討する。
本件発明1は、「身体側ライナ」に接合される「第1シート」と「第2シート」との間に「吸収性ポリマー粒子」を介在させることにより、吸液弾性体1の収縮作用による形成された凹凸条2に近接した「吸収性ポリマー粒子6」が膨潤して、吸液層66に流れ込んだ体液を速やかに吸収することができるようにしたもの(本件特許明細書の【0068】~【0070】)である。
一方、甲1-1発明の「上層体5」と、尿を吸収する「吸収体4」とは、甲1の【0045】に「上層体5の下面の中心部は固着部32にて透液性表面シート2に固着されるため、上層体5と透液性表面シート2との間に空間が開きすぎたり、上層体5が透液性表面シート2からずれたりすることがない」と、同じく【0051】に「固着部32の幅寸法、すなわち接着幅を、上層体5の幅寸法の3分の1以下としたことにより、上層体5の装着者の肌への密着性および上層体5の持ち上げ効果を低下させることもない」と記載されており、「上層体5」と「吸収体4」との間は、開いていることが前提である。このことからすると、甲1-1発明の「吸収体4」は、「身体側ライナ」に接合される「第1シート」に近接する本件発明1の「吸収性ポリマー粒子」と異なり、人の肌と接する「上層体5」に近接するものではない。
そして、甲1-1発明は、「表面シートが自己の収縮力により透液性シートから浮き上がって離間されることにより、吸収体に圧力が作用しないため、この吸収体にて吸収した排泄液の逆戻りがなく、かつ表面シートが装着者の股下部分に当たるため、圧迫感を軽減し着用感を向上している」(甲1の【0002】)と記載されていることからすれば、肌に接する「上層体5」と「吸収体4」との間を開けることにより、吸収体が吸収した排泄液の逆戻りがなく、圧迫感を軽減し着用感を向上させることができるから、本件発明1のように、肌に接する「上層体5」と、「吸収体4」とを近接するように換える動機が存在しない。
しかも、甲2~13には、本件発明1の上記相違点1に係る「身体側ライナ」と「吸液層」からなる「吸液構造体」の構造について、記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1の相違点1に係る構成は、甲1の第1の実施の形態の甲1-1発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1-1発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.また、本件発明2~4、6、8、9は、本件発明1の発明特定事項を、直接又は間接的に含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲1-1発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~4、6、8、9についても、甲1-1発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲1の第2の実施の形態に係る発明についての判断
ア.甲1の第2の実施の形態に関し(特に、【0057】、【0059】、【0060】の記載)、以下の発明が記載されている。
「透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および、透液性表面シート2の上面に配設され液透過性および液吸収性を有する上層体5にて層状に形成され、
上層体5は、この上層体5の上面となる上面シート21、上層体5の下面となる下面シート22、および、これら上面シート21と下面シート22との間に保持された弾性部材23をそれぞれ備え、弾性部材23は、上面シート21および下面シート22に上側および下側がそれぞれ固着され、弾性部材23の収縮により上層体5の表面に皺が形成され、下面シート22は、下面26における長手方向の両端部及び中心部が透液性表面シート2の上面に固着されており、上層体5の上面シート21と下面シート22との間の空間における弾性部材23と下面シート22との間には、上層吸収体41を配設されている、使い捨て吸収物品。」(以下、「甲1-2発明」という。)
イ.本件発明1と甲1-2発明を対比すると、
本件発明1が、
「吸液構造体は、肌対向面および非肌対向面を有し、透液性の身体側ライナおよび吸液層とを備え、
前記吸液層は、前記肌対向面側に位置する透液性の第1シートと、前記非肌対向面側に位置し、透液性または不透液性の第2シートと、前記第1シートおよび前記第2シートの間に介在された吸収性ポリマー粒子とを含み、前記身体側ライナと前記第1シートとの間には前記吸液弾性体を設けてあり、
前記身体側ライナと前記第1シートとは、前記縦方向へ延び、かつ前記横方向において互いに所与寸法離間する複数の接合部を介して接合され、
前記吸液弾性体が収縮することによって前記身体側ライナに前記横方向へ延びる複数の凹凸条が形成される」のに対し、
甲1-2発明は、
「透液性を有する透液性表面シート2、不透液性を有する不透液性裏面シート3、これら透液性表面シート2と不透液性裏面シート3との間に配設された液吸収性を有する吸収体4、および、透液性表面シート2の上面に配設され液透過性および液吸収性を有する上層体5にて層状に形成され、
上層体5は、上面シート21と下面シート22との間に保持された弾性部材23を備え、弾性部材23は、上面シート21および下面シート22に上側および下側がそれぞれ固着され、弾性部材23の収縮により上層体5の表面に皺が形成され、下面シート22は、下面26における長手方向の両端部及び中心部が透液性表面シート2の上面に固着されており、上層体5の上面シート21と下面シート22との間の空間における弾性部材23と下面シート22との間には、上層吸収体41を配設されている」ものである点(以下、「相違点2」という。)で、少なくとも相違する。
ウ.上記相違点2について検討する。
甲1-2発明の「上層体5」は、「上層吸収体41」を備えるものであるが、甲1-1発明の「上層体5」と同様に、尿を吸収する「吸収体4」との間は、開いていることが前提であって、甲1-2発明の「吸収体4」は、人の肌と接する「上層体5」に近接するものではない。
そして、甲1-2発明は、肌に接する「上層体5」と「吸収体4」との間を開けることにより、吸収体が吸収した排泄液の逆戻りがなく、圧迫感を軽減し着用感を向上させることができるから、本件発明1のように、肌に接する「上層体5」と、「吸収体4」とを近接するように換える動機が存在しない。
また、甲2~13には、本件発明1の上記相違点2に係る「身体側ライナ」と「吸液層」からなる「吸液構造体」の構造について、記載も示唆もされていない。
そうすると、本件発明1の相違点2に係る構成は、甲1の第2の実施の形態の甲1-2発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。
よって、本件発明1は、甲1-2発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.また、本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を、直接又は間接的に含むものであるところ、上記のように、本件発明1は甲1-2発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~9についても、甲1-2発明および周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、甲1の第1の実施の形態の発明の「下面シート」が本件発明1の「第1シート」に相当し(23頁14~17行)、また、甲1の第2の実施の形態の発明の「上層吸収体」が本件発明1の「吸液層」に相当する(32頁末行~33頁2行)として、本件発明1は、「第1の実施の形態の発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである」旨、あるいは、「第2の実施の形態の発明および周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである」旨主張する。
しかし、甲1-1発明の「下面シート」と、本件発明1の「第1シート」については、本件発明1の「第1シート」が、上記「(2)ウ.」で述べたように、吸収性ポリマー粒子に近接して配置されるものであるのに対し、甲1-1発明の「下面シート」は上層体5に含まれ、上層体5と「吸収体4」の間は、開いていることが前提とされるものであるから、甲1-1発明の「下面シート」は、本件発明1の「第1シート」に相当するものではない。
また、甲1-2発明の「上層吸収体」と本件発明1の「吸液層」についても、本件発明1の「吸液層」は、「第1シート」と「第2シート」と、それらの間に介在された「吸収性ポリマー粒子」からなるものであるのに対し、甲1-2発明の「上層吸収体」は、尿を吸収する「吸収体4」とは別に設けられ、「例えばパルプと高分子吸収材、パルプと高分子吸収材とティッシュ紙、いわゆるエアレイド吸収体、あるいはポリマーシート吸収体」(【0057】)からなり、「吸収体4よりも薄く形成されて」(【0062】)いるものであることからすれば、両者の機能や構造は相違するものであって、第2の実施の形態の「上層吸収体」は、本件発明1の「吸液層」に相当するものではない。
よって、申立人の上記主張は、甲1-1発明及び甲1-2発明の各層の機能や構造を踏まえた本件発明1との対比に基づくものではなく、採用することはできない。
5.むすび
以上より、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700772