特許異議申立
2017-700757
冷凍装置
- 審判番号
- 2017-700757
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-025815
- 登録番号
- 特許第6072559号(P6072559)
- 請求日
- 2017年08月01日
- 審決日
- 2018年02月09日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人きさ特許商標事務所
- 【異議申立人】淺野 文雄
- 審判長/審判官
- 審判長 田村 嘉章
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 紀本 孝
- 分類
- P1651.121-YAA(F25B) / P1651.537-YAA(F25B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6072559号発明「冷凍装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6072559号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7〕について訂正することを認める。
特許第6072559号の請求項1、2、4~7に係る特許を維持する。
特許第6072559号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6072559号の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成25年2月13日の出願であって、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人淺野文雄により特許異議の申立てがなされ、当審において平成29年9月29日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年12月4日に訂正の請求及び意見書の提出がされ、その後、当該訂正の請求に対して特許異議申立人より平成30年1月10日に意見書が提出されたものである。
第2 訂正の請求についての判断
1.訂正の内容
平成29年12月4日の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6072559号の明細書、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」ものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置と、」とあるのを、「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、」と訂正する。
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項4に「ことを特徴とする請求項2又は3に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。」と訂正する。
(訂正事項4)
特許請求の範囲の請求項5に「ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2又は4に記載の冷凍装置。」と訂正する。
(訂正事項5)
特許請求の範囲の請求項6に「ことを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一項に記載の冷凍装置。」と訂正する。
(訂正事項6)
特許請求の範囲の請求項7に「ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」とあるのを、「ことを特徴とする請求項1、2、4~6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」と訂正する。
(訂正事項7)
明細書の【0008】に「熱源装置と負荷装置とを接続している冷媒配管が凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置と、」とあるのを、「熱源装置と負荷装置とを接続している冷媒配管が凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を結露抑制優先モードにおいて凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、」と訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的
上記訂正事項1は、訂正前の請求項1の冷凍能力優先モードの凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度について「前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きく」することを限定し、結露抑制優先モード及び冷凍能力優先モードの設定を受けつける設定装置について「手動で」受けつけるものであることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、本件特許明細書の【0020】、【0021】、【0023】、【0025】、【0030】、【0032】、【0035】、【0036】等の記載から、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
上記訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項2は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)訂正事項3~6について
ア 訂正の目的
上記訂正事項3~6は、上記訂正事項2の請求項3の削除に伴い、請求項3を引用する請求項4~7において請求項3を引用するものを削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項3~6は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3~6は、請求項3を引用するものを削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
(4)訂正事項7について
ア 訂正の目的
上記訂正事項7は、上記訂正事項1に伴い、本件特許明細書の【0008】の記載を整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、上記アのとおりであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する第126条第5項に適合するものである。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕についての訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~7に係る発明(以下「本件発明1~7」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~7に記載された以下の事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、
前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、
前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モードの設定を手動で受けつける設定装置と、
前記設定装置において設定された前記結露抑制優先モード、又は前記冷凍能力優先モードに応じて、前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、
を有する
ことを特徴とした冷凍装置。
【請求項2】
一端が前記圧縮機に接続され、他端が前記過冷却装置と前記第1膨張装置との間に接続されているインジェクション配管と、
前記インジェクション配管を流れる冷媒を減圧させる第2膨張装置と、
を有し、
前記過冷却装置は、
上流側が前記凝縮器に接続され、下流側が前記第1膨張装置及び前記インジェクション配管の他端に接続される第1流路と、
前記第2膨張装置の下流側の前記インジェクション配管に接続される第2流路とを有し、
前記第1流路を流れる冷媒と前記第2流路を流れる冷媒とを熱交換させる熱交換器で構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】
前記制御装置は、
前記結露抑制優先モード時において、
前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値以上である場合には、
前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される下限値未満である場合よりも、
前記第2膨張装置の開度を大きくする
ことを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記冷凍能力優先モード時には、前記結露抑制優先モード時よりも前記第2膨張装置の開度を小さくする
ことを特徴とする請求項2又は4に記載の冷凍装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記結露抑制優先モード時において、
前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、
前記熱源装置と前記負荷装置とを接続する前記冷媒配管が設置される空間温度より大きい場合には、
前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度が、前記空間温度を下回らない範囲内で前記第2膨張装置の開度を小さくする
ことを特徴とする請求項2、4、5のいずれか一項に記載の冷凍装置。
【請求項7】
前記凝縮器に付設され、前記凝縮器に空気を送風する送風機を有し、
前記制御装置は、
前記送風機の回転数を制御して前記凝縮器における空気と冷媒との熱交換量を調整し、前記過冷却装置から前記負荷装置に供給される冷媒温度を調整する
ことを特徴とする請求項1、2、4~6のいずれか一項に記載の冷凍装置。」
第4 当審の判断
1.取消理由の概要
平成29年9月29日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
甲1:特開2007-225260号公報
甲2:特開平4-98049号公報
甲3:特開2005-188765号公報
甲4:特開2010-54186号公報
甲5:特開平6-265232号公報
甲6:特開平7-4756号公報
甲7:国際公開第2009/150761号
(理由1)本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内または外国において頒布された上記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
(1)本件発明1について
本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術的事項に基いて、又は甲1に記載された発明及び甲2ないし甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
本件発明2は、甲1に記載された発明及び甲4に記載された技術的事項に基いて、甲1に記載された発明並びに甲2及び甲4に記載された技術的事項に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲4に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3について
本件発明3は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明4について
本件発明4は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明5について
本件発明5は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明6について
本件発明6は、甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2及び甲4に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明並びに甲4に記載された技術的事項及び甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明7について
本件発明7は、甲1に記載された発明、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、甲1に記載された発明、甲2、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲5ないし甲6に記載された周知技術に基いて、又は甲1に記載された発明、甲4及び甲7に記載された技術的事項並びに甲2ないし甲6に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(理由2)本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。
本件発明3は、「前記圧縮機の吐出冷媒温度が予め設定される上限値以下であって、前記第2膨張装置の開度が予め設定される下限値以上である場合」の第2膨張装置の開度を「前記第2膨張装置の開度が予め設定される下限値未満である場合よりも」小さくするものと解されるが、第2膨張装置の開度が予め設定される下限値未満であるにも関わらずさらに第2膨張装置の開度を小さくすること、すなわち予め設定される下限値よりさらに小さい開度とすることの技術的意義が、発明の詳細な説明や技術常識を参酌しても不明確である。
また、請求項3を直接又は間接に引用する請求項4~7についても同様である。
2.取消理由についての判断
(1)本件発明1係る進歩性について
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、主冷媒回路の液管に過冷却を付加する場合、過冷却の付加量を多くすることによって冷却または冷凍能力は増大するが、液管の温度が周囲の温度より低下してその表面に結露が発生しやすくなる。結露すると天井裏にカビ等が繁殖したり、場合によっては天井からの水漏れが発生するため、液管に断熱処理等を施す必要がある。しかしながら、冷凍サイクル装置が多く利用されているコンビニエンスストアやスーパーマーケットでは、冷凍サイクル装置の冷媒回路液管は、天井裏などに配置される場合が多く、また、その長さは店舗より100m程度もある場合があり、従ってその断熱処理は簡単ではなく工事費増大等の問題がある。また、既に工事が完了した店舗において、天井裏などの配管に断熱処理を追加するのは、施工性が悪く、工事に多くの時間やコストを費やしてしまう等の問題もある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、冷凍サイクル装置の冷媒回路を構成する液管に冷却能力を増大させる過冷却を付加した場合において、該液管に断熱処理を施すなどの大がかりな工事を施すことなく、より簡単に該液管の結露を防止することができる冷凍サイクル装置を提供することを目的とする。」
(イ)「【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1における冷凍サイクル装置の冷媒回路の概略構成を示す図である。この冷凍サイクル装置は、主冷媒回路として、第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備えている。
【0009】
また、第1凝縮器2と第1膨張弁3との間には、その間を流れる冷媒を冷却する冷却装置5が配置されている。なお、第1冷媒循環回路の第1凝縮器2と第1膨張弁3との間は、第1圧縮機1で圧縮され第1凝縮器2で液化された高圧の液冷媒が通るので、この明細書では、第1凝縮器2と第1膨張弁3との間の配管を液管15とも呼ぶ。
【0010】
また、冷却装置5と第1膨張弁3との間には、その部分の配管温度(液管15の温度)を検出する配管温度検出手段としての液管温度センサ6、その部分の周囲温度を検出する周囲温度検出手段としての周囲温度センサ7、及びその部分の周囲湿度を検出する周囲湿度検出手段としての周囲湿度センサ9が備えられている。なお、周囲湿度センサ9は、後述する実施の形態2で使用されるものであり、実施の形態1においてはなくてもよい。
さらに、液管温度センサ6、周囲温度センサ7、及び周囲湿度センサ9の検出値を取り込み、それらの値に基づいて、冷却装置5の冷却量を制御する制御器8が備えられている。なお、ここでは、液管温度センサ6、周囲温度センサ7、及び周囲湿度センサ9をそれぞれ1個使用した例を示しているが、それらを複数個利用する構成としてもよい。
【0011】
次に図1の冷凍サイクル装置の動作を説明する。第1冷媒循環回路内の冷媒は第1圧縮機1にて高温高圧の過熱ガスに圧縮された後、第1凝縮器2にて空気や水などの媒体と熱交換を行うことで、高温高圧の液冷媒に凝縮される。第1凝縮器2を出た液冷媒は、冷却装置5により、高圧で過冷却が付加された液冷媒とされる。そして、その冷媒は第1膨張弁3に通されて低温低圧の気液2相冷媒となり、その冷媒は第1蒸発器4内で周囲の空気や水と熱交換されて低温低圧の過熱ガスの状態となり、再度第1圧縮機1に吸入される。
【0012】
このように、上記冷凍サイクル装置では、液管15を流れる冷媒に対して、冷却装置5により過冷却を付加することで、冷凍サイクル装置の能力を増大させることが可能となっている。ただし、液管15の過冷却によって、その液管温度が周囲の露点温度を下回ると、液管15の表面から結露が発生し、液管15が配置されている天井裏などに結露水が垂れることになる。これを回避するために、実施の形態1の冷凍サイクル装置には、以下のような手段が採用されている。
【0013】
図2は実施の形態1における制御器8の作用の一例を示すフローチャートである。これによれば、制御器8は、冷凍サイクル装置が起動すると(S1)、その動作中、液管温度センサ6及び周囲温度センサ7の各検出値を取り込んで(S2)、それらの値を比較する(S3)。そして、液管15の温度がその周囲の温度と等しい場合には、冷却装置5に対して特別な制御を行わず、現状のまま運転を継続する(S4-1)。これに対して、液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御する(S4-2)。一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する(S4-3)。
なお、図2では、冷却装置5の冷却量制御の判断を3つの場合に分けて行ったが、液管温度≦周囲温度の場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行い、液管温度>周囲温度の場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御してもよい。
また、冷却装置5のハンチングを避けるため、現状維持の条件として、
周囲温度<液官温度<周囲温度+α、と裕度を持たせるようにしてもよい(αは予め定めた温度)。
【0014】
以上の様に制御される実施の形態1の冷凍サイクル装置によれば、液管15に結露を発生させずに、過冷却を確保することができる。このため、天井裏にカビ等が繁殖することや、天井からの水漏れが発生することを防止できる。また、液管15に結露が発生しない範囲内で過冷却を取ることができるので、天井裏などに配置された液管に断熱処理を施すなどの大がかりな工事も不要となり、装置の設置工事費を安価にすることが可能となる。さらに、既に配管が施工された既存店舗の冷凍サイクル装置に対しても、過冷却用の冷却装置5の適用が容易に可能となる。」
(ウ)
(エ)
イ 甲1記載の発明
上記記載事項を総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備える冷凍サイクル装置において、
第1凝縮器2と第1膨張弁3との間には、その間を流れる冷媒に過冷却を付加する冷却装置5が配置され、
液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する制御器8と、
を有する冷凍サイクル装置。」
ウ 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比するに、甲1発明の「第1圧縮機1」は、その機能から、本件発明1の「圧縮機」に相当し、以下同様に「第1凝縮器2」は「凝縮器」に、「減圧装置としての第1膨張弁3」は「第1膨張装置」に、「第1蒸発器4」は「蒸発器」に、「冷却装置5」は「過冷却装置」に、「制御器8」は「制御装置」に、「冷凍サイクル装置」は「冷凍装置」にそれぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「第1圧縮機1、第1凝縮器2、減圧装置としての第1膨張弁3、及び第1蒸発器4が配管で順に接続された第1冷媒循環回路(主冷媒回路)を備える冷凍サイクル装置」は、第1冷媒循環回路が冷媒配管で接続されるものであり、冷凍サイクル装置であるから第1圧縮機1及び第1凝縮器2が熱源装置、第1蒸発器4が負荷装置として用いられるものである。
したがって、甲1発明の当該事項は、本件発明1の「圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置」に相当する。
(ウ)甲1発明の「第1凝縮器2と第1膨張弁3との間」「を流れる冷媒に過冷却を付加する冷却装置5」は、冷媒が第1凝縮器2から第1膨張弁3に流れるから、本件発明1の「前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置」に相当する。
(エ)甲1発明の「冷却装置5の運転」を制御する「制御器8」は、本件発明の「前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点>
「圧縮機、凝縮器、第1膨張装置、及び蒸発器を冷媒配管で接続した冷凍サイクルを有し、前記圧縮機及び前記凝縮器が搭載される熱源装置と、前記蒸発器が搭載される負荷装置とを備えている冷凍装置において、
前記凝縮器の下流側であって前記第1膨張装置の上流側に接続され、前記凝縮器から流出した冷媒を過冷却する過冷却装置と、
前記過冷却装置の過冷却量を調整する制御装置と、
を有する冷凍装置。」
<相違点1>
本件発明1では、「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード、及び前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モード」を有し、制御装置が「前記設定装置において設定された前記結露抑制優先モード、又は前記冷凍能力優先モードに応じて、」過冷却装置の過冷却量を調整するのに対して、甲1発明では、制御器8が、液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する点。
<相違点2>
本件発明1では、結露抑制優先モード及び冷凍能力優先モードの設定を「手動で受けつける設定装置」を有しているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
エ 当審の判断
<相違点1について>
本件発明1は、高圧液管の結露を抑制すること、及び過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することを目的とするものであり(【0007】)、「すなわち、冷凍装置500は、結露抑制優先モードを実施した場合には、冷凍能力優先モードの場合と比較すると、冷凍能力は小さくなるが、配管300での温度はより外気温度に近い温度、もしくは外気温度以上となるように制御を行うことができ、配管300が結露してしまうことを抑制することができる。
また、冷凍装置500は、冷凍能力優先モードを実施した場合には、結露抑制優先モードの場合と比較すると、配管300の結露抑制の効果は小さくなるが、過冷却装置4で冷媒を冷却して過冷却度を大きくすることができ、冷凍能力が低下することを抑制することができる。」(【0039】)と記載されていることから、結露抑制優先モードは、高圧液管の結露を抑制することを目的とし、基本的に、配管が結露しない程度の過冷却を行うモードであり、冷凍能力優先モードは、過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することを目的とし、液管の温度及びその周囲の温度に関係なく、結露抑制優先モードより過冷却度を大きくし、冷凍能力を十分に確保するものであり、その結果、液管の結露が生じることもあるものである。
これに対して、甲1発明は、液管の結露を防止することのみを課題とするものであり(【0004】、【0005】)、液管15の温度とその周囲の温度との関係において、液管15に結露が発生しない範囲内で過冷却をとるものである(【0014】)。
そうすると、甲1発明の「液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御し、一方、液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する」態様は、液管15に結露が発生しない範囲内の制御であるから、本件発明1の「結露抑制優先モード」の範囲内のものである。
したがって、甲1発明は、本件発明1の「冷凍能力優先モード」を有しているとはいえない。
また、甲2~7には、結露を防止することや冷却能力を切り換えることについての記載はあるが、配管が結露するかどうかにかかわらず、冷凍能力を十分に確保するために、過冷却度を大きくすること、すなわち「冷凍能力優先モード」を示唆する記載はない。
ゆえに、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1発明に記載されておらず、甲2~7に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<相違点2について>
甲1発明は、液管15の結露を防止するために、制御器8が、液管15の温度とその周囲の温度とを計測し、自動的に冷却装置の運転を切り換えるものである。
そうすると、冷凍装置において、モードの切換を手動で行うことが甲2~7から周知であるとしても、甲1発明は、自動で切り換えることで課題を解決するものであるから、甲1発明において、その切換を手動で行うようにする動機付けがない。
したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることが、甲2~7に記載の事項から、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
<本件発明1の奏する効果について>
そして、本件発明1は、上記相違点1及び2に係る発明特定事項を有することで、高圧液管の結露を抑制すること、及び過冷却度が小さくならないようにして冷却能力の低下を抑制することの両方を実現できるという効果を奏するものである。
<特許異議申立人の主張について>
特許異議申立人は、甲1発明の「液管15の温度がその周囲の温度より低い場合には、冷却装置5の運転の停止または減速を行うように制御」することは、本件発明1の「前記熱源装置と前記負荷装置とを接続している前記冷媒配管が前記凝縮器から流出した冷媒によって結露することを抑制する結露抑制優先モード」に相当し、同様に、「液管15の温度がその周囲の温度より高い場合には、冷却装置5の運転の開始または増速を行うように制御する」ことは「前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度を前記結露抑制優先モードにおいて前記凝縮器から流出した冷媒につける過冷却度よりも大きくし前記凝縮器から流出した冷媒に過冷却度をつけることを優先する冷凍能力優先モード」に相当する旨、及び甲2、3には、結露抑制運転モードと冷凍能力優先モードとをスイッチで切り換える点が記載されており、引用発明1に甲2、3記載の事項を適用することは当業者が容易に想到し得る旨主張する。
しかし、上記<相違点1について>で検討したとおり、甲1発明は「冷凍能力優先モード」を有しているとはいえない。また、甲2は、「その目的は、吐出冷媒温度を最適値に制御することにより高い冷凍効率を確保しながら、露付が生じ易いような条件下では、冷媒の状態を制御して室内熱交換器の冷房能力を低減させる手段を講ずることにより、コストの増大や設計上の制約を招くことなく、露付を防止することにある。」(2頁左下欄5~10行)と記載されているから、結露を防止する制御の範囲内のものであり、甲3は、「省エネルギーを重視した運転」と「能力を重視した運転」であり(【0042】、【0043】)、結露とは関係しない運転であるから、共に本件発明1の「冷凍能力優先モード」を示唆するものでない。
また、甲1発明は、上記<相違点2について>で検討したとおり、自動で切り換えることで課題を解決するものであるから、甲2、3のスイッチで切り換えることを適用する動機付けがない。
ゆえに、特許異議申立人の主張は採用できない。
オ 小括
したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~7に記載の事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本件発明2、4~7の進歩性について
本件発明2、4~7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を付した発明であるから、少なくとも、上記(1)エと同じ理由で、本件発明2、4~7は、甲1発明及び甲2~7に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、2、4~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項3に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700757