特許異議申立
2017-700745
透視可能な積層体、それを備えた透明スクリーン、およびそれを備えた画像投影装置
- 審判番号
- 2017-700745
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-540064
- 登録番号
- 特許第6069596号(P6069596)
- 請求日
- 2017年07月31日
- 審決日
- 2018年03月23日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】JXTGエネルギー株式会社
- 【権利者代理人】永井 浩之
- 【権利者代理人】中村 行孝
- 【権利者代理人】佐藤 泰和
- 【権利者代理人】朝倉 悟
- 【異議申立人】森谷 晴美
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 谿花 正由輝
- 審判官 渡邊 豊英
- 分類
- P1652.113-YAA(B32B) / P1652.121-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6069596号発明「透視可能な積層体、それを備えた透明スクリーン、およびそれを備えた画像投影装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6069596号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8、12-16〕について訂正することを認める。
特許第6069596号の請求項1~10、12~16に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
特許第6069596号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~16に係る特許についての出願は、平成28年2月26日(優先権主張平成27年3月6日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年7月31日に請求項1~10、12~16に係る特許について、特許異議申立人森谷晴美(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成29年9月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月8日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。また、訂正自体を「本件訂正」という。)がされ、本件訂正請求に対して申立人から同年12月19日付けで意見書が提出されたものである。
第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、訂正箇所に下線を引いて示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に「前記積層体の両側の最表面の中心面平均粗さSRaが0.05~5.5nmである、透視可能な積層体。」とあるのを、「前記積層体の両側の最表面の中心面平均粗さSRaが0.05~5.5nmであり、前記積層体の写像性が70%以上である、透視可能な積層体。」と訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項6に「写像性が70%以上である」とあるのを、「写像性が80%以上である」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、一群の請求項
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1に「前記積層体の写像性が70%以上である」との構成要件を付加することにより、積層体を、その写像性が70%以上であるものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
そして、当該訂正は、訂正前の請求項6及び本件特許の願書に添付した明細書等(以下、「明細書等」という。)の段落0029の記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項6における積層体の写像性の値の範囲を「70%以上」から「80%以上」に狭めて限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
そして、当該訂正は、明細書等の段落0029の記載に基づくものであり、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)一群の請求項
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1及び当該請求項1を引用する請求項2~8、12~16について訂正するものであり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対して請求されたものである。
3.小括
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号に規定する事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8、12-16〕について訂正を認める。
第3.特許異議の申立てについて
1.本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたので、本件特許の請求項1~10、12~16に係る発明(以下、「本件発明1~10、12~16」という。また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~10、12~16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
中間樹脂膜と、前記中間樹脂膜を挟持する2つの透明基材と、を備えてなる透視可能な積層体であって、
前記中間樹脂膜が、樹脂と、前記樹脂に対して0.0001~15質量%の、1nm~100μmの平均径を有する微粒子とを含んでなり、
前記積層体の両側の最表面の中心面平均粗さSRaが0.05~5.5nmであり、前記積層体の写像性が70%以上である、透視可能な積層体。
【請求項2】
前記微粒子が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミニウム、銀、プラチナ、金、チタン、ニッケル、スズ、インジウム、ダイヤモンド、スズ-コバルト合金、硫化亜鉛、金属被覆雲母、金属被覆ガラス、アクリル樹脂ビーズ、およびスチレン樹脂ビーズからなる群から選択される、請求項1に記載の透視可能な積層体。
【請求項3】
前記微粒子が、前記樹脂に対して0.001~2質量%の含有量を有し、かつ10nm~5μmの平均径を有する、請求項1または2に記載の透視可能な積層体。
【請求項4】
前記積層体の全光線透過率が65%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の透視可能な積層体。
【請求項5】
前記積層体のヘイズ値が35%以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の透視可能な積層体。
【請求項6】
前記積層体の写像性が80%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の透視可能な積層体。
【請求項7】
前記積層体の厚さが10μm~100mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の透視可能な積層体。
【請求項8】
前記積層体が透明基材をさらに備えてなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の透視可能な積層体。
【請求項9】
中間樹脂膜と、前記中間樹脂膜を挟持する2つの透明基材とを備えてなる透視可能な積層体に用いられる中間樹脂膜であって、
前記中間樹脂膜が、樹脂と、前記樹脂に対して0.0001~15質量%の、1nm~100μmの平均径を有し、かつ平均アスペクト比が3~800である薄片状微粒子とを含み、前記中間樹脂膜の写像性が50%以上である、透視可能な中間樹脂膜。
【請求項10】
中間樹脂膜と、前記中間樹脂膜を挟持する2つの透明基材とを備えてなる透視可能な積層体に用いられる中間樹脂膜であって、
前記中間樹脂膜が、樹脂と、前記樹脂に対して0.0001~15質量%の、1nm~90nmの平均径を有する微粒子とを含み、前記中間樹脂膜の写像性が50%以上である、透視可能な中間樹脂膜。」
「【請求項12】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透視可能な積層体を備えた、車両用部材。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透視可能な積層体を備えた、住宅用部材。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透視可能な積層体を備えた、反射型透明スクリーン。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透視可能な積層体を備えた、透過型透明スクリーン。
【請求項16】
請求項1~8のいずれか一項に記載の透視可能な積層体と、投射装置とを備えた、画像投影装置。」
2.取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~10、12~16に係る特許に対して平成29年9月13日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。
なお、特許異議申立書に記載された申立理由は、すべて通知した。
以下、甲第1号証等、甲第1号証等に記載された発明、甲第1号証等に記載された事項を、それぞれ「甲1」等、「甲1発明」等、「甲1事項」等という。
甲1:特開2007-57906号公報
甲2:特表2005-524596号公報
甲3:特開2006-244747号公報
甲4:特許第5365048号公報
甲5:特開平7-292155号公報
甲6:特開2014-149504号公報
甲7:特開2008-195569号公報
甲8:特開2015-102807号公報
取消理由1 本件発明1~10、12~16は、甲1発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
取消理由2 本件発明1~10、12~16は、甲1発明、甲2~8事項及び従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
3.判断
(1)取消理由1について
ア.甲1発明
甲1の記載(特に請求項1、段落0016、0029、0031を参照)から、甲1には以下の甲1発明が記載されていると認められる。
「2枚のガラス板状体の間に中間膜層を有する合せガラスである光拡散シートであって、
前記中間膜層が、樹脂と、樹脂99重量部に対して1重量部の、平均粒径4μmの二酸化ケイ素粒子とを含んでなり、
前記2枚のガラス板状体がフロート法で得られたソーダライム珪酸塩ガラス基板(クリア板)である、
高透過な光拡散シート。」
イ.本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
《相違点1》
本件発明1が「前記積層体の写像性が70%以上」であるのに対し、甲1発明は写像性が特定されない点。
(イ)判断
本件発明における「写像性」とは、JIS K7374に準拠して、光学くし幅0.125mmで測定した時の像鮮明度(%)の値であり、像鮮明度の値が大きい程、透過写像性が高いことを示すものである(本件特許の明細書の段落0029、0060の(5))。
これに対し、甲1には、甲1発明の光拡散シートの写像性が70%以上であることの記載はないし、示唆する記載もない。そうすると、上記相違点1は形式的な相違点ではなく、写像性という機能に基づく実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は甲1発明ではない。
ウ.本件発明2~8、12~16について
本件発明2~8、12~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定されたものであるから、本件発明1についてと同様の理由で、甲1発明ではない。
エ.本件発明9について
(ア)対比
本件発明9及び10の各々と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
《相違点2》
本件発明9及び10が「前記中間樹脂膜の写像性が50%以上」であるのに対し、甲1発明は中間膜層の写像性が特定されない点。
(イ)判断
本件発明における「写像性」とは、上記イ.(イ)で示したとおりである。
これに対し、甲1には、甲1発明の中間膜層の写像性が50%以上であることの記載はないし、示唆する記載もない。そうすると、上記相違点2は形式的な相違点ではなく、写像性という機能に基づく実質的な相違点である。
したがって、本件発明9及び10はいずれも甲1発明ではない。
オ.小括
以上のとおり、本件発明1~10、12~16は、甲1発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、本件発明1~10、12~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すことができない。
(2)取消理由2について
ア.本件発明1について
上記(1)イ.(ア)で示したとおり、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも上記《相違点1》で相違する。
これに対し甲1発明の光拡散シートは、高透過かつ高曇価とすることで投影される画像の輝度を向上させるものであって(段落0016)、甲1には、曇価を15~80%、実施例では73~88%(請求項1、段落0020、0033の表1)とするものが記載されている。
そして、平成29年12月19日付け意見書の段落3(2)ア(イ)(特に第2頁下から4、5行)において申立人も認めるとおり、写像性と曇価は互いに関係するものではないことから、高透過かつ高曇価とすることで投影される画像の輝度を向上させるものである甲1発明の光拡散シートにおいて、透過写像性を高く設定することは、甲1にはもちろん、甲2~8にも記載や示唆はされていない。
よって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ.本件発明2~8、12~16について
本件発明2~8、12~16は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定されたものであるから、本件発明1についてと同様の理由で、甲1発明及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ.本件発明9、10について
上記(1)エ.(ア)で示したとおり、本件発明9及び10は、いずれも甲1発明とは、少なくとも上記《相違点2》で相違する。
これに対し甲1発明の光拡散シートは、中間膜に光拡散剤として微粒子を分散させ、高透過かつ高曇価とすることで投影される画像の輝度を向上させるものであって(段落0016)、甲1には、曇価を15~80%、実施例では73~88%(請求項1、段落0020、0033の表1)とするものが記載されている。
そして、申立人の上記意見書の段落3(2)ア(イ)(特に第2頁下から4、5行)において申立人も認めるとおり、写像性と曇価は互いに関係するものではないことから、高透過かつ高曇価とすることで投影される画像の輝度を向上させるものである甲1発明の光拡散シートの中間膜において、透過写像性を高く設定することは、甲1にはもちろん、甲2~8にも記載や示唆はされていない。
よって、本件発明9及び10は、いずれも甲1発明及び甲2~8事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ.小括
以上のとおり、本件発明1~10、12~16は、甲1発明及び甲2~8事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、本件発明1~10、12~16に係る特許は、特許法第113条第2号に該当しないから、取り消すことができない。
(3)申立人の意見について
申立人の上記意見書において、申立人は、参考資料1(国際公開第2006/016556号)の段落0069の表1、段落0073の表2を挙げて、写像性と曇価は互いに関係するものではない旨を主張する。
しかし、仮に申立人が主張するように、写像性と曇価とが必ずしも互いに関係しないとするならば、むしろそのことは、甲1発明における光拡散シートの透過写像性が70%以上、またはその中間膜の透過写像性が50%以上ではないこと、そしてその点を示唆するものでもないことを、補強するものである。よって、参考資料1は、本件発明1~10、12~16が甲1発明であることを補強する証拠とはならない。
また、甲1発明の光拡散シート及びその中間膜において、透過写像性を高く設定することは、参考資料1にも記載や示唆はされていない。
よって、上記意見書における申立人の主張は、当を得たものではなく、採用することができない。
第4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した上記取消理由によっては、本件発明1~10、12~16に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~10、12~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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