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特許異議申立

2018-701055

可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ

審判番号
2018-701055
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-552055
登録番号
特許第6351626号(P6351626)
請求日
2018年12月27日
審決日
2020年04月21日
公報発行日
2020年08月28日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
  • 【権利者代理人】バーナード 正子
  • 【権利者代理人】久野 琢也
  • 【異議申立人】森谷 晴美
審判長/審判官
  • 審判長 服部 智
  • 審判官 菊地 則義
  • 審判官 宮澤 尚之
分類
P1651.537-YAA(C03C) / P1651.121-YAA(C03C) / P1651.16 -YAA(C03C) / P1651.851-YAA(C03C) / P1651.852-YAA(C03C) / P1651.853-YAA(C03C) / P1651.857-YAA(C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第36条、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6351626号発明「可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6351626号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正することを認める。 特許第6351626号の請求項1~15に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本件特許第6351626号は、2014年(平成26年)1月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年1月11日 ドイツ(DE))を国際出願日とする特願2015-552055号の特許請求の範囲に記載された請求項1~15に係る発明について、平成30年6月15日に特許権の設定登録がされ、同年7月4日に特許掲載公報の発行がされたものであり、その後、その全請求項に係る特許に対して、同年12月27日付けで特許異議申立人森谷晴美(以下、「申立人」という。)により、甲第1~14号証を証拠方法とする特許異議の申立てがされ、平成31年3月13日付けで取消理由が通知され、令和元年6月3日に特許権者代理人との面接が行われ、さらに訂正案についての応対がされた後、指定期間内である同年6月13日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされ、同年8月1日付けで申立人より甲第15~18号証を添付した意見書の提出がされ、同年9月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、訂正案についての応対がされた後、指定期間内である令和2年1月6日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、令和2年1月15日に特許権者代理人との面接が行われたものである。 なお、本件訂正請求について、申立人に期間を指定して意見を求めたが応答はなかった。 (証拠方法) 甲第1号証:特開2008-285389号公報 甲第2号証:眞崎宏明ら「自動車用高性能UVカットコート強化ガラス」旭硝子研究報告(Res.Reports Asahi Glass Co.,Ltd.),61(2011)、3~9頁 甲第3号証:小平広和「自動車用高性能紫外線カットコート強化ガラス」NEW GLASS Vol.27 No.104 2012、70~74頁 甲第4号証:松堂真樹ら「(7)合わせガラス用機能性中間膜」日本接着学会誌、Vol.50 No.8(2014)、273~279頁 甲第5号証:国際公開2012/010444号 甲第6号証:国際公開2012/038170号 甲第7号証:特開2011-202144号公報 甲第8号証:特開2005-206453号公報 甲第9号証:特表2010-523449号公報 甲第10号証:特開平10-36146号公報 甲第11号証:特願2012-218737号(特開2014-24312号) 甲第12号証:JIS R 3205(表紙、目次、1~12頁、奥付) 甲第13号証:特開2012-46748号公報 甲第14号証:国際公開2011/141384号 甲第15号証:ISO 13837,Road vehicles-Safety glazing materials-Method for the determination of solar transmittance(2008) 甲第16号証:BS EN 410:2011(文献の添付は無し) 甲第17号証:株式会社ADEKAホームページ「プラスチック用添加剤」(https://www.adeka.co.jp/chemical/products/plastic/pro115c.html) 甲第18号証:フィルジェン株式会社ホームページ「PlasmaChem社製品 ナノ材料(量子ドット)(https://filgen.jp/Product/Bioscience4/PlasmaChem/index3.html) (取消理由通知で提示した参考文献1~4) 参考文献1:特開2010-265170号公報 参考文献2:特開平5-271650号公報 参考文献3:特開平5-173000号公報 参考文献4:特開2003-213253号公報 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)~(8)に示すとおりであり、訂正事項1~7からなるものである(下線は訂正箇所)。 なお、本件訂正請求により、令和元年6月13日付け訂正請求は取り下げられたものとみなす。 (1)訂正事項1 明細書の【0032】に記載された 「拡散蛍光」を、 「拡散傾向」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の記載において、 「日光の方を向いた側Sと、蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、」に訂正(以下、「訂正事項2-1」ということがある。)し、 「UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」を、 「可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」に訂正(以下、「訂正事項2-2」といううことがある。)し、 「UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されていること」を、 「UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないこと」に訂正(以下、「訂正事項2-3」ということがある。)する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2の記載において、 「前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3の記載において、 「前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体 を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用することを特徴とする、」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4の記載において、 「前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体 を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する ことを特徴とする、」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5の記載において、 「前記中間層フィルムが、 - 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上又は前記第一の側に配置された拡散傾向の低い蛍光体 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上又は前記第二の側に配置された拡散傾向の低いUV吸収剤 を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する ことを特徴とする、」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項6の記載において、 「前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム - 低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、請求項1記載の」を、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、」に訂正する。 (8)一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正は、訂正前の「蛍光体」についてする訂正であるから、全請求項について請求されたものである。そして、訂正前の請求項2~15が、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1の訂正及び訂正事項2~7の特許請求の範囲の訂正は、何れも一群の請求項1~15について請求されたものである。 2.訂正要件の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の本件明細書【0032】に記載された「拡散蛍光」が日本語として技術的な意味を成していないため、同じく【0031】、【0035】の関連した記載「拡散傾向の低い蛍光体」と整合させてこれを「拡散傾向」と訂正するものであるから、誤記の訂正を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2-1は、側Sと側Bとの関係について、本件の図面【図2】に基づいて、側Bが側Sの反対側であることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項2-2は、UV吸収剤、蛍光体を含有するものが中間層フィルムであることを明確にしたものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項2-3は、本件特許に係る発明が、本件明細書の【0008】~【0017】に記載された、蛍光体とUV吸収剤とがポリビニルアセタールの一種であるPVBフィルム中で拡散して混ざり合うという課題を解決するためのものであることに基づき、その解決された特性を明確に特定し、技術的に限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1~2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1~2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体について、本件明細書の【0032】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体に含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1~2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体及び拡散傾向の低いUV吸収剤について、本件明細書の【0032】及び【0036】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体及びUV吸収剤それぞれに含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項5が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1~2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに訂正前に特定されていた拡散傾向の低い蛍光体及び拡散傾向の低いUV吸収剤について、本件明細書の【0032】及び【0036】に基づいて、具体的な特定をして拡散傾向の低い蛍光体及びUV吸収剤それぞれに含まれるものを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項6が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項とし、その訂正前の請求項1に係る記載について、上記訂正事項2-1~2-3と同様に明確にして、特定されている中間層フィルムの層構造に合わせて技術的に限定し、さらに拡散ブロックとしての薄いフィルムが側Bに配置されていることが特定され、ポリビニルアセタールの第二の層は側Bとは明示的に特定されていなかったことで、両者の相対的な位置関係が明確でなかったものを、第二の層が側Bであることを明確にして、薄いフィルムが第一の層と第二の層との間に配置されて拡散ブロックの機能を果たすことを明確にしたものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的としたものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)独立特許要件について 本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。 3.小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1~4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~15〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件訂正が認められることは上記第2に記載のとおりであるので、本件特許の請求項1~15に係る発明は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~15に記載された以下のとおりのものである。 (以下、請求項1~15に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明15」、まとめて「本件発明」という。) 「 【請求項1】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないことを特徴とする、前記蛍光ディスプレイ。 【請求項2】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。 【請求項3】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。 【請求項4】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する ことを特徴とする、蛍光ディスプレイ。 【請求項5】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する ことを特徴とする、蛍光ディスプレイ。 【請求項6】 日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されており、かつ前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、 前記中間層フィルムが、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層 を有することを特徴とする、蛍光ディスプレイ。 【請求項7】 前記中間層フィルムが、0~50の範囲のアルカリ滴定値を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項8】 前記中間層フィルムが、ラジカル連鎖反応を抑制するための光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項9】 前記中間層フィルムが、フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項10】 前記中間層フィルムが、少なくとも1つの音響減衰層を含んでおり、そうして前記中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃にてISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超の1次モードの損失係数を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項11】 前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満のUV透過率TUV(400)を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項12】 前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過率スペクトルの測定を行った場合に50%以下のUV透過率TUV(400)を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。 【請求項13】 自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のウインドウのための、或いは建築領域において適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイの使用。 【請求項14】 ショーウインドウ、エレベーター又はファサードウインドウにおいて適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項13記載の蛍光ディスプレイの使用。 【請求項15】 請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイを含有するフロントウインドウと、UV吸収性ガラスより成るか又は当該UV吸収性ガラスを有するサイドウインドウとを有する自動車両のコンパートメントルーム。」 第4 取消理由について 1.令和元年9月26日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由について (1)取消理由の概要 ア.取消理由1(明確性)特許法36条6項2号:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1の記載において、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する中間層フィルムの層構造の特定がなく、「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」は、混ざり合う要因が全くないことを意味しているのか、一定の時間が経過するまでは混ざり合うことがないことを意味しているのか、その他のことを意味しているのかが明瞭でない。 イ.取消理由2(進歩性)特許法29条2項:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1、7~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 ウ.取消理由3(拡大先願)特許法29条の2:令和元年6月13日付けの訂正特許請求の範囲の請求項1、8~10、13、15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。 (2)当審の判断 ア.取消理由1について 本件発明1は、訂正特許請求の範囲の請求項1の記載に係る「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により前記可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」という発明特定事項を有しており、「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により」とさらに特定されたことで、これらが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味することが明確となっている。 よって、本件発明1に係る訂正特許請求の範囲の請求項1の記載に不備はないから、取消理由1は理由がない。 イ.取消理由2について (ア)甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、以下の(1a)~(1d)の記載がある。 (1a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 車両に配置されたときに車外側になる外側ガラス(12)と車内側になる内側ガラス(15)との間に樹脂製の中間層(13)を挟んだ車両用合わせガラスにおいて、 前記外側ガラス(12)と前記中間層(13)との間、あるいは前記内側ガラス(15)と前記中間層(13)との間に画像表示層(14)を挟み、前記外側ガラス(12)の厚さを前記内側ガラス(15)の厚さよりも小さくしたことを特徴とする車両用合わせガラス。 【請求項2】 前記画像表示層(14)を、前記内側ガラス(15)と前記中間層(13)との間に挟んだことを特徴とする、請求項1に記載の車両用合わせガラス。」 (1b)「【0014】 また請求項2の構成によれば、内側ガラスと中間層との間に画像表示層を挟んだので、車室内から画像表示層に投射される光や、画像表示層に表示した画像から運転者に向かって出た光が中間層を透過することがなくなり、中間層における減衰を最小限に抑えて鮮明な画像を視認することができる。しかも車外側から入ってくる外光は中間層を透過して減衰した状態で画像表示層に達するので、画像表示層に表示した画像を更に鮮明に視認することができる。更に、車外からの紫外線を中間層で遮って画像表示層に照射されるのを防止するとともに、車内から紫外線を励起光として照射する場合には、その紫外線を中間層で遮って車外に透過するのを防止することができる。」 (1c)「【0019】 図1に示すように、合わせガラスで構成される自動車のフロントガラス11は、車外側から車内側に向けて外側ガラス12と、ポリビニルブチラールや塩化ビニル等の樹脂で構成した中間層13と、ナノ粒子蛍光体を担持した透明膜よりなる画像表示層14と、内側ガラス15とを4層に積層して構成される。外側ガラス12の厚さは例えば1.5mmであり、中間層13の厚さは例えば0.8mmであり、画像表示層14の厚さは例えば100μmであり、内側ガラス15の厚さは例えば2.5mmである。ここで重要なのは、外側ガラス12の厚さが内側ガラス15の厚さよりも小さくなっていることである。 【0020】 中間層13は、フロントガラス11の破損時における外側ガラス12および内側ガラス15の破片の飛散を防止する機能を有する以外に、紫外線を遮断する効果を有する。また画像表示層14は、それに担持されたナノ粒子蛍光体が画像投射器16から投射される紫外光により励起して発光することで、運転者により視認可能な画像を生成する。 【0021】 図2に示すように、画像投射器16は、制御回路21と、紫外光発生手段22と、ガルバノミラー駆動回路23と、ガルバノミラー24とで構成される。制御回路21に接続された紫外光発生手段22がヘッドアップディスプレイに表示すべき所定の画像を生成するための紫外光を送光し、制御回路21に接続されたガルバノミラー駆動回路23により作動するガルバノミラー24が、前記紫外光を反射して上下方向および左右方向に走査する。その結果、紫外光が当たった画像表示層14のナノ粒子蛍光体が励起して発光することで、画像表示層14上に所定の画像を生成する。画像表示層14上に生成した画像は風景に重畳して運転者により目視される。」 (1d)「【図1】 【図2】 」 上記(1a)~(1d)の記載からみて、甲第1号証には、図1に示された請求項2に係る4層構造の自動車のフロントガラスの発明として以下のものが記載されていると認められる。 「合わせガラスで構成される自動車のフロントガラス(11)であって、車外側から車内側に向けて、外側ガラス(12)と、中間層(13)と、画像表示層(14)と、内側ガラス(15)とが順に4層に積層して構成され、 中間層(13)は、車外からの紫外線を遮って画像表示層(14)に照射されるのを防止するとともに、車内から紫外線を励起光として照射する場合には、その紫外線を遮って車外に透過するのを防止することができるものであって、ポリビニルブチラール等の樹脂で構成したものであり、 画像表示層(14)は、ナノ粒子蛍光体を担持した透明膜よりなり、車内側の画像投射器(16)から投射される紫外光により励起して発光することで、運転者により視認可能な画像を生成するものである、自動車のフロントガラス。」(以下、「引用発明1」という。) (イ)本件発明1と引用発明1との対比・判断 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「車外側」は本件発明1の「日光の方を向いた側S」に相当し、「車内側」は「日光の方を向いた側Sの反対側」である「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」に相当し、「自動車のフロントガラス」は「ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイ」に相当する。また、引用発明1の空間的配置の構成上、車内側の画像投射器(16)からの紫外光が中間層(13)で遮断(UV吸収剤により吸収)されずに画像表示層(14)へ到達し、ナノ粒子蛍光体が紫外光により励起され得ることは自明であるから、引用発明1の「ポリビニルブチラール等の樹脂」は本件発明1の「ポリビニルアセタール」に相当し、以下同様に、「紫外線」は「UV線」、「ナノ粒子蛍光体」は「蛍光体」、「画像投射器(16)から投射される紫外光」は「蛍光体を励起するためのUV線」、「中間層(13)」と「画像表示層(14)」とが積層されたものは「中間層フィルム」にそれぞれ相当する。 そうすると、両者は、 「日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつポリビニルアセタールと、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおいて、前記蛍光体を励起するためのUV線がUV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイ」 の点で一致し、次の相違点1~3で相違する。 相違点1:本件発明1では、ポリビニルアセタールは可塑剤を含有するのに対し、引用発明1では、ポリビニルブチラ-ルが可塑剤を含有することは明示されていない点 相違点2:本件発明1では、中間層フィルムはUV吸収剤を含有しており、UV吸収剤が蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されているのに対し、引用発明1では、中間層(13)が紫外線を遮断するポリビニルブチラールで構成されている点 相違点3:本件発明1では、UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないのに対し、引用発明1では、紫外線を遮断する中間層(13)とナノ粒子蛍光体を有する画像表示層(14)とが積層されている点 まず、相違点1、2について検討するに、自動車のフロントガラスの中間層として利用するポリビニルブチラールに可塑剤を含有させることは技術常識であるから、相違点1は実質的な差異ではない。次に、自動車のフロントガラスの中間層として利用するポリビニルブチラールにUV吸収剤を含有させることは周知慣用技術であるから、引用発明1の中間層(13)が紫外線を遮断するようにUV吸収剤を含有させることは設計的事項であり、また、引用発明1の中間層(13)は画像表示層(14)との関係で「車外側」、即ち、「日光の方を向いた側S」に配置されているから、引用発明1において、相違点2を解消することは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。 そこで、相違点3について検討するに、本件発明1で「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」ことは、上記ア.のとおり、可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味するものである。これに対し、引用発明1において、上記で相違点1、2について検討したように、周知慣用技術を適用してUV吸収剤を可塑剤含有ポリビニルブチラールの中間層(13)に含有させたときには、この中間層(13)と蛍光体を含有する画像表示層(14)とは別の層を構成していることになるものの両層は接しており、甲第1号証にはUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合わないようにすることの記載も示唆もないから、両者が混ざり合わないとまではいえないし、そのようにする動機付けもない。しかも、引用発明1の中間層(13)と透明膜の画像表示層(14)とを同じポリビニルブチラール樹脂で構成する態様は普通に想定され、この場合にはUV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが時間の経過と共に混ざり合うこととなるのは自明だから、相違点3は実質的なものであり、当業者であってもその解消は容易なことではない。 よって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明7~15について 本件発明7~15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第1号証に記載された発明及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、取消理由2は理由がない。 ウ.取消理由3について (ア)甲第11号証に記載された発明 甲第11号証には、以下の(11a)~(11c)の記載がある。 (11a)「【技術分野】 【0001】 本発明は、シート材料自身が発光することにより、高いコントラストで画像を表示することができる発光シート、該発光シートを含む合わせガラス用中間膜、合わせガラスに関する。 【背景技術】 【0002】 合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片が飛散することが少なく安全であるため、自動車等の車両のフロントガラス、サイドガラス、リアガラスや、航空機、建築物等の窓ガラス等として広く使用されている。合わせガラスとして、少なくとも一対のガラス間に、例えば、液状可塑剤とポリビニルブチラール樹脂とを含む合わせガラス用中間膜を介在させ、一体化させた合わせガラス等が挙げられる。 【0003】 近年、自動車用のフロントガラスについて、このフロントガラスと同じ視野内に自動車走行データである速度情報等の計器表示をヘッドアップディスプレイ(HUD)として表示させようとする要望が高まっている。 HUDとしては、これまでに数々の形態が開発されている。最も一般的なHUDとしてコントロールユニットから送信される速度情報等をインストゥルメンタル・パネルの表示ユニットからフロントガラスに反射させることにより、運転者がフロントガラスと同じ位置、すなわち、同一視野内で速度情報等を視認できるHUDがある。 HUD用の合わせガラス用中間膜として、例えば特許文献1には、所定の楔角を有する楔形合わせガラス用中間膜等が提案されており、合わせガラスにおいて計器表示が二重に見えるというHUDの欠点を解決することが提案されている。」 (11b)「【0053】 本発明の発光シートの用途は特に限定はされず、商業ビルや住宅用の窓材、自動車の窓等に貼付される広告媒体等の用途に用いることができる。なかでも、車両用窓材、建築用窓材等における情報表示機能を有する合わせガラス用中間膜として好適である。本発明の発光シートからなる合わせガラス用中間膜もまた、本発明の1つである。 【0054】本発明の合わせガラス用中間膜が、一対のガラス板の間に挟み込まれている合わせガラスもまた、本発明の1つである。 上記ガラス板は、一般に使用されている透明板ガラスを使用することができる。例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入りガラス、線入り板ガラス、着色された板ガラス、熱線吸収ガラス、熱線反射ガラス、グリーンガラス等の無機ガラスが挙げられる。また、ガラスの表面に紫外線遮蔽コート層が形成された紫外線遮蔽ガラスも用いることができる。更に、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアクリレート等の有機プラスチックス板を用いることもできる。 上記ガラス板として、2種類以上のガラス板を用いてもよい。例えば、透明フロート板ガラスと、グリーンガラスのような着色されたガラス板とで、本発明の合わせガラス用中間膜を挟持した合わせガラスが挙げられる。また、上記ガラス板として、2種以上の厚さの異なるガラス板を用いてもよい。」 (11c)「【0071】 (実施例10) (1)発光層の調製 トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)4.00gに、発光材料としてペリレン系化合物(セントラルテクノ社製品、品番名ルミシスB-800)0.02gを溶解して発光溶液を調製した。 得られた発光溶液の全量と、アセチル基量1mol%、水酸基量31mol%、平均重合度が2300のポリビニルブチラール樹脂10.00gとをミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を調製した。 得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ400μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ400μmの発光層を得た。 【0072】 (2)紫外線遮断層の調製 トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)4.00gに、紫外線吸収剤として2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製、T-326)0.05gを溶解して溶液を調製した。 得られた溶液の全量と、アセチル基量13mol%、水酸基量22mol%、平均重合度が2300のポリビニルブチラール樹脂10.00gとをミキシングロールで充分に混練することにより、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ400μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で15分間加圧し、厚さ400μmの紫外線遮断層を得た。 【0073】 (3)発光シートの製造 得られた発光層と紫外線遮断層とを積層し積層体を得た。得られた積層体を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シートに挟み、厚さ7800μmのスペーサを介して、熱プレスにて150℃、100kg/cm2の条件で5分間加圧し、厚さ800μmの発光シートを得た。 【0074】 (4)合わせガラスの作製 得られた発光シートを縦5cm×横5cmのサイズに切断し、これを合わせガラス用中間膜とした。合わせガラス用中間膜を、縦5cm×横5cmの一対のクリアガラスで挟み込み積層した。得られた積層体を、真空ラミネーターにて90℃下、30分保持しつつ真空プレスを行い圧着した。圧着後140℃、14MPaの条件でオートクレーブを用いて20分間圧着を行い、合わせガラスを得た。」 甲第11号証には、特に、(11c)の記載からみて、実施例10に係る合わせガラスの発明として以下のものが記載されていると認められる。 「発光材料とトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むポリビニルブチラール樹脂を有する発光層と、紫外線吸収剤とトリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むポリビニルブチラール樹脂を有する紫外線遮断層とを積層した発光シートからなる中間膜を、クリアガラスで挟み積層した合わせガラス。」 (以下、「引用発明2」という。) (イ)本件発明1と引用発明2との対比・判断 本件発明1と引用発明2とを対比すると、引用発明2の「ポリビニルブチラール樹脂」は本件発明1の「ポリビニルアセタール」に相当し、以下同様に、「紫外線」は「UV線」、「紫外線吸収剤」は「UV吸収剤」、「発光材料」は「蛍光体」、「トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート」は「可塑剤」、「発光シートからなる中間膜」は「中間層フィルム」、「合わせガラス」は「蛍光ディスプレイ」に相当する。 そして、引用発明2では、積層した中間膜が紫外線遮断層側と発光層側とを有し、発光層側からの紫外線は紫外線遮断層の紫外線吸収剤により吸収されずに発光材料を励起し得る空間的配置であるといえるから、両者は、 「側Sと、側Sの反対側の側Bとを有し、かつ可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイ」 の点で一致し、次の相違点4、5で相違する。 相違点4:本件発明1は、中間層フィルムが日光の方を向いた側Sと、日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有するのに対して、引用発明2では、日光の方を向いた側と蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側との相対配置、即ち、日光の方を向いた側が「紫外線吸収剤」を含む紫外線遮断層の側と発光層側のどちらの側であるのか、について明示されていない点。 相違点5:本件発明1では、UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがないのに対して、引用発明2では、紫外線遮断層と発光層とが積層されている点 まず、相違点4について検討するに、甲第11号証の上記摘示(11a)、(11b)から、引用発明2の合わせガラスは、自動車用のフロントガラスとして応用され得るものである。そして、その場合、中間膜には、車外から日光を受ける側と、運転席の観察者を向いた側を観念することができるといえ、引用発明2では、紫外線遮断層の機能からみて、紫外線が多く放射される日光の側に紫外線遮断層を設け、発光層を観察者の方に向けて設けるのが自然であるから、相違点4は実質的な相違点であるとはいえない。 そこで、相違点5に関し検討するに、本件発明1で「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」ことは、上記ア.のとおり、可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが拡散により混ざり合う要因は全くないことを意味するものである。これに対し、引用発明2においては、紫外線吸収剤を含有する紫外線遮断層と、発光材料を含有する発光層とは別の層を構成しているが、両層は接していて、しかも同じ可塑剤含有ポリビニルブチラール樹脂を有する層であるから、紫外線(UV)吸収剤および/または発光材料(蛍光体)の拡散により可塑剤含有ポリビニルブチラール(アセタール)中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うこととなるのは自明である。してみれば、相違点5は実質的なものである。 よって、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。 (ウ)本件発明8~10、13、15について 本件発明8~10、13、15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、取消理由3は理由がない。 2.平成31年3月13日付け取消理由通知書で通知した取消理由について (1)取消理由の概要 ア.取消理由4(明確性)特許法36条6項2号:訂正前の特許請求の範囲の記載について下記(ア)~(オ)の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない不備がある。 (ア)「中間層フィルム」は、「日光を向いた側S」と、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」とで構造が特定されているが、観察者の位置が特定されていないため、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」は、「日光を向いた側S」と同じ側にあるのか、その反対側にあるのか明らかでない。 (イ)請求項1では、「UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」と記載されているが、何が何を含有するのかが多義的である。また、請求項1を引用する他の請求項も含め、全体として、中間層フィルムの構造が不明であり、特に、「蛍光体」、「UV吸収剤」の態様が明確でない。 (ウ)請求項2、6では、拡散ブロックとしての「薄いフィルム」を設ける旨が記載されているが、第一の層、第二の層、薄いフィルムの位置が明示的に特定されていないため、中間層フィルムの構造が明確でない。 また、上記(イ)と相俟って「薄いフィルム」の役割、材質等も明確でない。 (エ)請求項3~5には、「拡散傾向の低い」蛍光体又はUV吸収剤を利用する旨が記載されているが、発明の詳細な説明を参照しても、如何なる指標により拡散傾向を低いと判断するのか不明である。 (オ)請求項8には、光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの層を設ける旨が特定されているが、これは、既存のポリビニルアセタールの層の1つに光安定剤の粒子を混練することを意味するのか、光安定剤を有するポリビニルアセタールの層を追加的に積層することを意味するのか判然としない。請求項9のフェノール系酸化防止剤についても同様である。 イ.取消理由5(進歩性)特許法29条2項:訂正前の特許請求の範囲の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 ウ.取消理由6(拡大先願)特許法29条の2:訂正前の特許請求の範囲の請求項1、8~10、13、15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。 (2)当審の判断 ア.取消理由4について (ア)本件発明1に係る請求項1は、訂正により「日光の方を向いた側Sの反対側で、かつ蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と特定されており、側Sと側Bとの位置関係が明確であるから不備はない。 (イ)本件発明1に係る請求項1は、訂正により「可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する少なくとも1つの中間層フィルム」と特定されており、何が何を含有するのかが明確であるから不備はない。また、本件発明2~6に係る請求項2~6において、「UV吸収剤」及び「蛍光体」は、訂正により何れの層あるいは層上に配置されているのかが明確となっているから不備はない。 (ウ)本件発明2、6に係る請求項2、6は、訂正により何れも「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」と特定されたことにより、「薄いフィルム」の拡散ブロックとしての役割等が明確となっており、また、請求項6では「第二の層」が「蛍光ディスプレイの側Bに配置されている」ことが特定されて「薄いフィルム」と各層との位置関係も明確となっているから、不備はない。 (エ)本件発明3~5に係る請求項3~5は、訂正により「拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用すること」、「拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用すること」がそれぞれ特定され、「拡散傾向の低い」蛍光体又はUV吸収剤が具体的に列挙されているから明確であり、不備はない。 (オ)請求項8の「光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの層」、請求項9の「フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層」は、既存のポリビニルアセタールの層の1つに光安定剤の粒子を混練すること、あるいは、光安定剤を有するポリビニルアセタールの層を追加的に積層することの何れをも意味することは技術常識から明らかであるから、記載に不備があるとはいえない。 申立人は、令和元年8月1日付けで甲第15~18号証を添付した意見書で、蛍光性ナノ粒子あるいは蛍光性無機ナノ粒子の拡散傾向やUV線の定義において依然として明確でない点がある旨主張している。しかし、蛍光性ナノ粒子は訂正後の請求項3等で特定されているとおり拡散傾向の低い蛍光体の一例であることは明確であって、蛍光性無機ナノ粒子も同様であることは技術常識から明らかであるし、UV線については、UV吸収剤が日光を向いた側Sに配置されていて、本件明細書【0016】、【0019】に蛍光体の日光による変色の可能性とそこからの保護とが示唆されていること等からみて、どの程度の波長のものが含まれるのかは技術常識から自ずと明らかといえるから、主張は採用できない。 以上のとおりであるから、取消理由4は理由がない。 イ.取消理由5について (ア)本件発明1について 甲第1号証に記載された発明との対比・判断については、上記1.で取消理由2について検討したと同様である。そして、参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証の記載を参酌しても、引用発明1において「UV吸収剤および/または蛍光体の拡散により可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがない」こととする技術思想を導出することはできないから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件発明2~6について 本件発明2~6は、何れも「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがなく、」という発明特定事項を有しており、上記1.で検討した甲第1号証に記載された引用発明1と対比したときには、相違点3と同様の相違点(以下、「相違点3’」という。)があり、上記1.で検討したと同様に、甲第1号証にはUV吸収剤と蛍光体とが可塑剤含有ポリビニルアセタール中で混ざり合わないようにすることの記載も示唆もないから、引用発明1において、UV吸収剤と蛍光体とが混ざり合わないとまではいえないし、参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証の記載を参酌しても、そのようにする動機付けはない。 そして、可塑剤含有ポリビニルアセタールと、UV吸収剤と、蛍光体とを含有する中間層フィルムの層構造については、 本件発明2は、 「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層」を有することと特定されており、 本件発明3は、 「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用する」ことと特定されており、 本件発明4は、 「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する 」ことと特定されており、 本件発明5は、 「- 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上に配置された、拡散傾向の低い蛍光体、 - 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上に配置された、拡散傾向の低いUV吸収剤 を有しており、前記拡散傾向の低い蛍光体として、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、又は可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)を使用し、前記拡散傾向の低いUV吸収剤として、ポリマーUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、又はフィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤を使用する 」ことと特定されており、 本件発明6は、 「- 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、 - 少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム - 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層」を有することと特定されており、 本件発明2~6については、このような具体的に特定された中間層フィルムの層構造により、 「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがな」いという相違点3’に係る発明特定事項を満たしているものである。 よって、本件発明2~6は、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (ウ)本件発明7~15について 本件発明7~15は、何れも本件発明1~6の何れかの発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えたものであるから、上記(ア)又は(イ)で検討したと同様に、甲第1号証に記載された発明並びに参考文献1~4、甲第9号証及び甲第10号証に記載された技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、取消理由5は理由がない。 ウ.取消理由6について (ア)本件発明1について 甲第11号証に記載された発明との対比・判断については、上記1.で取消理由3について検討したと同様であり、本件発明1は、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。 (イ)本件発明8~10、13、15について 本件発明8~10、13、15のうち、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものについては、本件発明1と同様、甲第11号証に記載された発明と同一ではない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、取消理由6は理由がない。 第5 特許異議申立理由について 1.申立人の主張について 申立人が、甲第1~14号証に基づき主張する申立理由は以下のとおりである。 (1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号) 訂正前の本件請求項1、3、15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 (2)申立理由2(特許法第29条第2項) 訂正前の本件請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~10号証に記載された技術事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)申立理由3(特許法第29条の2) 訂正前の本件請求項1、7~15に係る発明は、本件特許に係る出願の優先日前の特許出願であって、その優先日後に出願公開がされた甲第11号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一である。 (4)申立理由4(特許法第36条第6項第2号) 訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下のア.及びイ.の点で不明確であるから不備がある。 ア.請求項1に「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と特定されているが、観察者の位置が特定されていないため、「蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側B」と「日光を向いた側S」との区別が明らかでない。 イ.請求項3~5に「拡散傾向の低い」と特定されているが、どの程度の拡散傾向を包含するのか不明である。 2.各申立理由についての判断 (1)申立理由1及び2について 本件発明1~15と甲第1号証に記載された発明との対比については、上記第4で取消理由2及び取消理由5について検討したと同様である。 そして、特に、甲第1号証に記載された発明との相違点3又は3’に係る「可塑剤含有ポリビニルアセタール中でUV吸収剤と蛍光体とが混ざり合うことがな」い点については、甲第2~10号証並びに周知慣用技術を参酌しても、当業者が容易に導出できることであるとはいえない。 よって、申立理由1及び2は何れも理由がない。 (2)申立理由3について 本件発明1、7~15と甲第11号証に記載された発明との対比・判断については、甲第12~14号証の記載を参酌したとしても、上記第4で取消理由3及び取消理由6について検討したと同様である。 よって、申立理由3は理由がない。 (3)申立理由4について 上記第4の2.(2)ア.(ア)及び(エ)で取消理由4について検討したとおりである。 よって、申立理由4は理由がない。 第6.むすび 以上のとおり、請求項1~15に係る特許については、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2018-701055

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