特許異議申立
2017-700716
画像表示装置
- 審判番号
- 2017-700716
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-027741外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月25日
- 審決日
- 2019年01月07日
- 公報発行日
- 2019年05月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】東洋紡株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】鈴木 美香
- 分類
- P1651.121-ZDA(G02F) / P1651.536-ZDA(G02F) / P1651.537-ZDA(G02F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6064654号発明「画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
平成30年10月30日付け訂正請求において、特許第6064654号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
特許第6064654号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。
同請求項4及び5に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6064654号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成25年2月15日の出願であって、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、同年1月25日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年7月25日に特許異議申立人鈴木美香により特許異議の申立てがされたものである。
以後の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成29年 9月11日:取消理由通知(9月13日発送)
同年11月10日:意見書(特許権者)
同年11月28日:取消理由通知(11月30日発送)
平成30年 1月29日:訂正請求書・意見書
同年 2月 6日:通知書(2月8日発送)
同年 3月 9日:意見書(特許異議申立人)
同年 3月26日:取消理由通知(3月29日発送)
同年 5月28日:訂正請求書・意見書
同年 6月 8日:通知書(6月13日発送)
同年 7月12日:意見書(特許異議申立人)
同年 8月27日:(予告)取消理由通知(8月31日発送)
同年10月30日:訂正請求書・意見書
同年11月 9日:通知書(11月14日発送)
同年12月13日:意見書(特許異議申立人)
第2 訂正の適否
1 訂正の趣旨
平成30年10月30日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6064654号の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正することを求めるものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項について請求されたものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1(前段)に、
「(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、及び
(4)前記偏光子よりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム」と記載されているのを、
「(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム」に訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
※なお、下線は、当審で付したものである。以下、同じ。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1(後段)に、
「前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、3000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置される、
画像表示装置。」と記載されているのを、
「前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが45度±20度以下となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが0度±5度以下又は90度±5度以下となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置(但し、前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが互いに平行又は垂直となるように配置されている画像表示装置を除く)。」に訂正する(請求項1を引用する請求項2及び3も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「略垂直又は略平行」と記載されているのを、
「0度±4度又は90度±4度以下」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「前記高リタデーション飛散防止フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下である、請求項1~3のいずれかに記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項1の記載を引用するものについて、独立形式に改め、
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム
を有し、
前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが35度~45度となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下であり、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが
10度~30度となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである、請求項1~4のいずれかに記載の画像表示装置。」とあるうち、請求項2の記載を引用するものについて、独立形式に改め、
「(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが45度となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが
10度~30度となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置。」に訂正する。
(6)訂正事項6
本件特許明細書の【0013】に、
「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載したが、タッチパネルに限定されるものではなく、フィルムを有する層であればどのような層であってもよい。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルム及び/又は飛散防止フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよいし、又は両側に飛散防止フィルムを配置しない構成でもよい。飛散防止フィルムは、接着層を介してタッチパネル上に配置されてもよく、接着層を介さずにタッチパネル上に配置されても良い。」と記載されているのを、
「なお、図1においては、視認側偏光板(5)の視認側に設ける機能層としてタッチパネル(6)を記載した。また、タッチパネルとして、抵抗膜式のタッチパネルを記載したが、投影型静電容量式等の他の方式のタッチパネルを使用することも可能である。図1のタッチパネルは、透明導電性フィルムを2枚有する構造であるが、タッチパネルの構造はこれに限定されず、例えば、透明導電性フィルムの数は1枚であってもよい。液晶表示装置(1)において、飛散防止フィルムは、タッチパネル(6)の両側に必ず配置しなければならないわけではなく、どちらか一方に配置した構成でもよい。」に訂正する。
3 訂正の適否
訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(1)訂正事項1
ア 上記訂正事項1は、訂正前の請求項1に係る発明において、下記(ア)の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(ア)少なくとも2枚の飛散防止フィルムが、(視認側)偏光子保護フィルムよりも視認側に配置されていること。
イ 願書に添付した明細書には、図とともに、以下の記載がある。
「【0014】
…図1の液晶表示装置において、……視認側偏光子保護フィルム(10b)と光源側基材フィルム(11a)との間にある飛散防止フィルム(14)(以下、「光源側飛散防止フィルム」と称する)及び視認側基材フィルム12aより視認側にある飛散防止フィルム(15)(以下、「視認側飛散防止フィルム」と称する)に使用され得る。」
「図1
」
ウ 上記記載からして、
上記訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2
ア 上記訂正事項2は、訂正前の請求項1に係る発明において、下記(イ)ないし(ク)の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)2枚の飛散防止フィルムのうち、少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下の高リタデーション飛散防止フィルムであること。
(ウ)高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが45度±20度以下となるように配置されていること。
(エ)高リタデーション飛散防止フィルムは、(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであること。
(オ)光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有すること。
(カ)光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが0度±5度以下又は90度±5度以下となるように配置されていること。
(キ)光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されていること。
(ク)光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが互いに平行又は垂直となるように配置されている画像表示装置を除くこと。
イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記ア(イ)に関連する記載
「【0026】
<配向フィルムのリタデーション>
高リタデーション配向フィルムのリタデーションは、虹斑を低減するという観点から、3000nm以上150000nm以下であることが好ましい。高リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、好ましくは4500nm以上、好ましくは6000nm以上、好ましくは8000nm以上、好ましくは10000nm以上である。」
(イ)上記ア(ウ)に関連する記載
「【0019】
高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、…。よって、例えば、前記『45度±20度以下』とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」
(ウ)上記ア(エ)及び(キ)に関連する記載
「【0012】
…透明導電性フィルム(11,12)は、基材フィルム(11a,12a)と透明導電層(11b,12b)とを積層したものである。また、タッチパネル(6)の光源側及び視認側には、接着層を介して、透明基体である飛散防止フィルム(14,15)が設けられている。」
「【0058】
<タッチパネル、透明導電性フィルム、基材フィルム、飛散防止フィルム>
…また、これらのフィルムを基材フィルムとして用いない場合は、従来から基材フィルムとして用いられる他のフィルム若しくはガラス板等の剛性板を用いることができる。」
「【0070】
配向フィルムを画像表示装置の表面カバー板の飛散防止フィルムとして使用する場合、配向フィルムの配置は表面カバー板の光源側であっても視認側であっても良い。また、配向フィルムの両側にガラスを積層させた合わせガラス構造であっても良い。配向フィルムが表面カバー板の光源側である場合には、配向フィルムの表面カバー板とは反対側に反射防止層を設けることが好ましい。反射防止層を設けることによって明るくクリアな画像が得られる。」
「【0096】
<画像表示装置の構成>
……
(5)タッチパネル:ガラス基材の上にITOからなる透明導電層を設けたITOガラスを、スペーサーの光源側及び視認側に配置した構造を有する抵抗膜方式タッチパネル。
(6)飛散防止フィルム:タッチパネルの光源側の飛散防止フィルムとして下記表1に示す配向フィルムA~Cのいずれかを用い、タッチパネルの視認側の飛散防止フィルムとして後述する配向フィルム1~11のいずれかを用いた。」
(エ)上記ア(オ)に関連する記載
「【0029】
…本発明に好適に用いられる低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上である。虹斑が効果的に改善されるという点では、好ましくは800nm以上、好ましくは1000nm以上、好ましくは1300nm以上である。」
(オ)上記ア(カ)に関連する記載
「【0016】
低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸(出射する偏光の振動方向と平行な軸)とが形成する角度(低リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、任意であるが、虹斑を低減するという観点から、前記角度は略平行又は垂直であることが好ましい。このような観点から、前記角度は、好ましくは0度又は90度±5度以下であり、…。ここで、『以下』という用語は、『±』の次の数値にのみかかる。」
ウ 上記記載からして、
上記訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3は、訂正前の請求項3に係る発明において、「略垂直又は略平行」とされていたものを、「0度±4度又は90度±4度以下」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
「「【0016】
低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸(出射する偏光の振動方向と平行な軸)とが形成する角度(低リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、任意であるが、虹斑を低減するという観点から、前記角度は略平行又は垂直であることが好ましい。このような観点から、前記角度は、好ましくは0度又は90度±5度以下であり、…。ここで、『以下』という用語は、『±』の次の数値にのみかかる。」
ウ 上記記載からして、
上記訂正事項3は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内でするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項1~3の記載を引用するものであったところ、請求項2又は3の記載を引用しないものとした上で、請求項1の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ また、訂正前の請求項4に係る発明は、「高リタデーション飛散防止フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下である」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項4は、訂正前の請求項4に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した(ア)、上記「(2)訂正事項2 ア」で検討した(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)の事項に加えて、下記の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
「高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが35度~45度となるように配置されていること。」(以下「追加事項1」という。)
「光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが10度~30度となるように配置されていること。」(以下「追加事項2」という。)
ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した(ア)、上記「(2)訂正事項2 ア」で検討した(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)に関連する記載
上記「(1)訂正事項1」、上記「(2)訂正事項2」を参照。
(イ)上記「追加事項1」に関連する記載
「【0019】
高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。尚、本書において、「以下」という用語は、「±」の次の数値にのみかかることを意味する。よって、例えば、前記「45度±20度以下」とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」
(ウ)上記「追加事項2」に関連する記載
「【0117】
……また、この効果は、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが略平行又は垂直である場合により顕著であり、前記2つの軸が形成する角度が10度又は30度の場合は、画像を視認する角度によっては虹斑が観察されたが、少なくとも偏光フィルタの偏光軸と視認側偏光子の偏光軸とが略平行又は垂直となる角度から画像を視認した場合には、良好な視認性が得られた。」
エ 上記記載からして、
訂正事項4は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1~4の記載を引用するものであったところ、請求項、3、4の記載を引用しないものとした上で、請求項2の記載を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式の記載に改めるための訂正であることから、 特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ また、訂正前の請求項5に係る発明は、「連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードである」との発明特定事項を備えていたことから、
訂正事項5は、訂正前の請求項5に係る発明に、上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した(ア)、上記「(2)訂正事項2 ア」で検討した(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)、上記「(4)訂正事項4 イ」で検討した「追加事項2」の事項に加えて、下記の事項を特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
「高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが45度となるように配置されていること。」(以下「追加事項3」という。)
ウ 願書に添付した明細書には、以下の記載がある。
(ア)上記「(1)訂正事項1 ア」で検討した(ア)、上記「(2)訂正事項2 ア」で検討した(イ)、(エ)、(オ)及び(キ)、上記「(4)訂正事項4 イ」で検討した「追加事項2」に関連する記載
上記「(1)訂正事項1」、上記「(2)訂正事項2」、上記「(4)訂正事項4」を参照。
(イ)上記「追加事項3」に関連する記載
「【0019】
高リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角度(高リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面状にあると仮定する)は、特に制限されないが、虹斑を低減するという観点から、45度に近いことが好ましい。例えば、前記角度は、45度±20度以下、好ましくは45度±15度以下、好ましくは45度±10以下、好ましくは45度±5度以下、好ましくは45度±3度以下、45度±2度以下、45度±1度以下、45度である。尚、本書において、「以下」という用語は、「±」の次の数値にのみかかることを意味する。よって、例えば、前記「45度±20度以下」とは、45度を中心に上下20度の範囲の変動を許容することを意味する。」
エ 上記記載からして、
訂正事項5は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6
ア 訂正事項6は、記載の一部を削除することにより、「飛散防止フィルム」の意味を明確にしようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 上記訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内でするものであると認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 訂正の適否のまとめ
本件訂正請求は適法であることから、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-5]について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正は、上記「第2 訂正の適否についての判断」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明5」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム
を有し、
前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが45度±20度以下となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが0度±5度以下又は90度±5度以下となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置(但し、前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが互いに平行又は垂直となるように配置されている画像表示装置を除く)。
【請求項2】
前記高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸が前記偏光子の偏光軸に対して45度となるように配置される、請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが0度±4度又は90度±4度以下となるように配置される、請求項1又は2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム
を有し、
前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが35度~45度となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムのリタデーション(Re)と厚さ方向リタデーション(Rth)の比(Re/Rth)が、0.2以上1.2以下であり、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが
10度~30度となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置。
【請求項5】
(1)連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
(2)画像表示セル、
(3)前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
(4)前記偏光子の視認側に積層される偏光子保護フィルム、及び
(5)前記偏光子保護フィルムよりも視認側に配置される少なくとも2枚の飛散防止フィルム
を有し、
前記連続的な発光スペクトルを有する白色光源が、白色発光ダイオードであり、
前記少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり、そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって、該高リタデーション飛散防止フィルムは、残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され、且つ、該高リタデーション飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが45度となるように配置され、
前記高リタデーション飛散防止フィルムは、
(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は
(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり、
前記光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し、
前記光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と前記偏光子の偏光軸とが
10度~30度となるように配置され、
前記光源側飛散防止フィルムは、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている、
画像表示装置。」
第4 平成30年3月26日付け取消理由通知の取消理由について
1 取消理由の概要
当審において、訂正前の請求項1ないし5に係る発明の特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
「本件発明1ないし本件発明5は、当業者が甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2011-107198号公報
周知技術を示すために引用した文献(AないしJ)
A:特開2013-20130号公報(【0067】及び図2)
B:特開2011-168652号公報
(【0011】及び【0012】)
C:特開2010-85453号公報(【0020】及び図3)
D:特開2008-216913号公報
(【0001】及び【0026】)
E:特開2000-263702号公報(【0008】)
F:国際公開第2012/049977号(【要約】及び【0003】)
G:国際公開第2009/116363号(【要約】及び【0069】)
H:国際公開第2008/047785号(【0070】及び図12)
I:国際公開第2012/161078号(【0113】及び図15)
J:国際公開第2012/035919号(【0035】及び図1) 」
2 甲第1号証に記載された発明
(1)甲第1号証には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、
バックライト光源として白色発光ダイオードを用いるとともに、
前記偏光板の視認側に、3000~30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して用いることを特徴とする液晶表示装置の視認性改善方法。
【請求項2】
前記白色発光ダイオードが、化合物半導体を使用した青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置の視認性改善方法。
【請求項3】
前記高分子フィルムが、配向ポリカーボネートフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の視認性改善方法。
【請求項4】
前記高分子フィルムが、配向ポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置の視認性改善方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の視認性改善方法を用いたことを特徴とする液晶表示装置。」
イ 「【0004】
ところで、日差しの強い屋外等の環境では、その眩しさを解消するために、偏光特性を有するサングラスを掛けた状態でLCDを視認する場合がある。この場合、観察者はLCDから射出した直線偏光を有する光を、偏光板を通して視認することとなるため、LCDに内装される偏光板の吸収軸と、サングラスなどの偏光板の吸収軸とがなす角度によっては画面が見えなくなってしまう。
【0005】
上記問題を解決するため、例えば、特許文献1では、LCD表面に位相差(4分の1波長)板を斜めに積層して直線偏光を円偏光に変換して偏光解消する方法が提案されている。」
ウ 「【発明の効果】
【0013】
本発明の方法では、連続的で幅広い発光スペクトルを有する白色発光ダイオード光源において効率よく直線偏光を解消し、光源に近似したスペクトルが得られるため、サングラスなどの偏光板を通して液晶表示画面を観察する際でも、その観察角度によらず良好な視認性を確保できる。」
エ 「【0026】
本発明に用いられる高分子フィルムは、液晶セルの視認側に配した偏光板の視認側に、前記偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配して使用される。高分子フィルムを偏光板の視認側に配する方法は、偏光板の最外層に直接に高分子フィルムを積層しても構わないし、他の透明部材を介して配しても構わない。また、液晶表示装置の視認側最表面に高分子フィルムを設置、貼り合わせてもよい。高分子フィルムを直接、または他の透明部材を介して配する際は、粘着層を設けた高分子フィルムを用いることも好ましい態様である。
【0027】
高分子フィルムを配する際は、偏光板の吸収軸と前記高分子フィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるようにすることが望ましい。これによりサングラスなどの偏光板がどのような角度であっても高い透過光を得ることができる。なお、上記角度は厳密に45度である必要はなく、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて適宜調節しても良い。前記角度の好ましい範囲は30~60度、より好ましくは40~50度である。」
オ 「【0035】
本発明に用いられる高分子フィルムの厚みは任意であるが、25~500μmの範囲であることが好ましい。25μmを下回る厚みのフィルムでも、原理的には3000nm以上のリタデーションを得ることは可能である。しかし、その場合にはフィルムの力学特性の異方性が顕著となり、裂け、破れ等を生じやすくなり、工業材料としての実用性が著しく低下する。特に好ましい厚みの下限は35μmである。一方、500μmを超えるフィルムは非常に剛直であり、高分子フィルム特有のしなやかさが低下し、やはり工業材料としての実用性が低下するので好ましくない。特に好ましいフィルム厚みの上限は350μmである。」
カ 「【0048】
実験例2
ここでは、高分子フィルムとして配向ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた例を示す。
ジメチルテレフタレートを1000部、エチレングリコールを700部、および酢酸マンガン4水塩を0.16部をエステル交換反応缶に仕込み、120~210℃でエステル交換反応を行い、生成するメタノールを留去した。エステル交換反応が終了した時点で三酸価アンチモンを0.13部、正リン酸を0.017部を加え、系内を徐々に減圧にし、75分間で133Paとした。同時に徐々に昇温し、280℃とした。この条件で70分間重縮合反応を実施し、溶融ポリマーを吐出ノズルより水中に押出し固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を得た。
【0049】
固有粘度が0.62dl/gのPET樹脂を水冷却した回転急冷ドラム上にフィルム形成ダイを通して押出し、未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを幅方向に100℃で4.0倍延伸した後、150℃で熱固定を行い、更に130℃から100℃に冷却しながら、幅方向に3%弛緩処理を行い、厚さ38μmの配向PETフィルム(PETフィルム-1)を得た。【0050】
また、PETフィルム-1と同様の方法を用い、未延伸フィルムの厚みを変更することにより、厚さ200μmの配向PETフィルム(PETフィルム-2)を得た。
【0051】
PETフィルム-1と同様の方法を用いて作成した未延伸フィルムを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて105℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.4倍延伸して、厚さ700μmの配向PETフィルム(PETフィルム-3)を得た。
【0052】
上記の方法で得られた配向PETフィルムの特性を表1に示した。また、これらのフィルムを、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた発光素子からなる白色LEDを光源(日亜化学、NSPW500CS)とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)、及び冷陰極管をバックライト光源とする液晶表示装置(液晶セルが2枚の偏光板に挟まれた構成を有する)の上に置き、それぞれサングラスを通して画面を見た時の様子を表2に示した。
【0053】
上記の結果より、作成したフィルムは、白色LEDをバックライト光源として用いた場合には視認性改善効果が得られるものの、冷陰極管をバックライト光源として用いた場合には視認性の改善効果が得られないことが解った。
【0054】
【表1】(横長に表記した。)
【0055】
【表2】(横長に表記した。)
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の液晶表示装置の視認性改善方法は、屋外で用いられる液晶表示装置、例えば車、船、飛行機などの計器盤、車載カーナビゲーション、デジタルカメラ、携帯電話やパソコンなどのモバイル機器、あるいはビル、スーパーなどで用いられるデジタルサイネージなどに好適に利用可能である。」
(2)甲第1号証に記載された発明
ア 上記(1)アの記載からして、甲1号証には、
「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、
前記バックライト光源は、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光ダイオードであり、
前記偏光板の視認側に、3000~30000nmのリタデーションを有する配向ポリエステルフィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記配向ポリエステルフィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように配した、液晶表示装置。」(請求項1-2-4-5)が記載されているものと認められる。
イ 上記(1)エの記載からして、
上記アの「偏光板の視認側」とは、具体的には、少なくとも、以下の二箇所であることが理解できる。
(ア)偏光板の最外層
(イ)液晶表示装置の視認側最表面
ウ また、上記(1)エの記載からして、
上記アの「配向ポリエステルフィルム」は、粘着層を介して偏光板の最外層に直接積層又は液晶表示装置の視認側最表面に貼り合わせてもよいことが理解できる。
エ さらに、上記(1)エの記載からして、
上記アの「凡そ45度」とは、厳密に「45度」である必要はなく、「30度~60度」であってもよいものと認められる。
オ 上記(1)オ及びカの記載からして、
上記アの「3000~30000nmのリタデーションを有する配向ポリエステルフィルム」は、
具体的には、表1及び表2に示された「PETフィルム-1」又は「PETフィルム-2」のうち、例えば、「PETフィルム-2」、つまり、「厚さ200μm及びリタデーション21520nm(Nx1.5902、Ny1.6978、Nz1.5147)の配向ポリエステルフィルム」であってもよいものと認められる。
カ 上記アないしオより、甲第1号証には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「バックライト光源と、液晶セルと、液晶セルの視認側に配した偏光板とを少なくとも有する液晶表示装置において、
前記バックライト光源は、青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光ダイオードであり、
厚さ200μm及びリタデーション21520nm(Nx1.5902、Ny1.6978、Nz1.5147)の配向ポリエステルフィルムを、前記偏光板の吸収軸と前記配向ポリエステルフィルムの遅相軸とのなす角が凡そ45度となるように、粘着層を介して液晶表示装置の視認側最表面に貼り合わせた、液晶表示装置。」
3 当審の判断
(1)本件訂正発明1について
ア 本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「青色発光ダイオードとイットリウム・アルミニウム・ガーネット系黄色蛍光体とを組み合わせた白色発光ダイオード」は、本件訂正発明1の「連続的な発光スペクトルを有する白色光源」に相当する。
(イ)引用発明の「液晶セル」及び「液晶表示装置」は、それぞれ、本件訂正発明1の「画像表示セル」及び「画像表示装置」に相当する。
(ウ)引用発明の「液晶セルの視認側に配した偏光板」が、「偏光子」を備えていることは明らかであるから、引用発明においては、「液晶セル」よりも視認側に偏光子が配置されているといえる。
(エ)引用発明の「配向ポリエステルフィルム」は、「粘着層を介して液晶表示装置の視認側最表面に貼り合わせた」ものであるから、偏光子よりも視認側に配置されていることは明らかである。
(オ)上記(ア)ないし(エ)より、
本件訂正発明1と引用発明とは、
「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
画像表示セル、
前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、及び
前記偏光子よりも視認側に配置されるフィルム
を有し、
前記フィルムは配向フィルムであり、6000nm以上150000nm以下の高リタデーションを有するフィルムである」点で一致する。
(カ)本件特許明細書の【0016】における「視認側偏光子の偏光軸(出射する偏光の振動方向と平行な軸)」との記載からして、偏光軸とは「透過軸」と認められる(偏光子においては、「透過軸」と「吸収軸」とは直交する。)。
してみると、引用発明においては、「偏光板の吸収軸」と「配向ポリエステルフィルムの遅相軸」とのなす角が凡そ45度であることから、「偏光子の偏光軸」と「配向ポリエステルフィルムの遅相軸(配向主軸)」とのなす角は、凡そ45度である。
よって、本件訂正発明1と引用発明とは、
「高リタデーションフィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して45度±20度以下となるように配置されている」点で一致する。
(キ)以上のことから、本件訂正発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「連続的な発光スペクトルを有する白色光源、
画像表示セル、
前記画像表示セルよりも視認側に配置される偏光子、
前記偏光子よりも視認側に配置されるフィルム
を有し、
前記フィルムは配向フィルムであり、6000nm以上150000nm以下の高リタデーションを有するフィルムであり、
該高リタデーションフィルムは、その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して45度±20度以下となるように配置されている、画像表示装置。」
(ク)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
偏光子に関して、
本件訂正発明1は、「視認側に『偏光子保護フィルム』が積層され」ているのに対して、
引用発明は、「視認側に偏光子保護フィルム」が積層されているか否か不明である点。
<相違点2>
偏光子よりも視認側に配置されるフィルムに関して、
本件訂正発明1は、
(a)「少なくとも2枚の飛散防止フィルム」であって、
(b)「少なくとも2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり」、「そのうちの少なくとも1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデーションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって」、
(c)該「(視認側)高リタデーション飛散防止フィルム」は、
「残る飛散防止フィルムのうちの少なくとも1枚(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置され」、
「その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して45度±20度以下となるように配置され」、
「(a)その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されているか、又は(b)その光源側又は視認側に表面カバー板を有し、該表面カバー板の飛散を防止するものであり」、
(d)該「光源側飛散防止フィルム」は、
「200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し」、
「その配向主軸と偏光子の偏光軸とが0度±5度以下又は90度±5度以下となるように配置され」、
「その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層され」ているのに対して、
引用発明は、上記(a)ないし(d)に係る構成を備えていない点。
<相違点3>
本件訂正発明1は、「光源側飛散防止フィルムが、その配向主軸と偏光子の偏光軸とが互いに平行又は垂直となるように配置されている画像表示装置を除く」のに対して、
引用発明は、そのようなものではない点。
イ 判断
(ア)上記<相違点1>について検討する。
a 引用発明の「液晶セルの視認側に配した偏光板」を、偏光子の両側に偏光子保護フィルムを積層した構成、すなわち、[偏光子保護フィルム/偏光子/偏光子保護フィルム]からなるものとすることに何ら困難性は認められない。
b 以上の検討によれば、引用発明において、上記<相違点1>に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことである。
(イ)上記<相違点2>について検討する。
a 上記<相違点2>のうち、(a)ないし(c)について
(a)甲第1号証の記載(【0056】)によれば、引用発明の「液晶表示装置」は、具体的には、携帯電話や車載カーナビゲーション等である。
(b)平成30年8月27日付け(予告)取消理由通知において、文献Aないし文献Jを提示して、このような装置においては、表示面保護又は飛散防止等のために延伸フィルムが採用されていることから、例えば、文献C(特開2010-85453号公報)の図3に示された「(光源側の)飛散防止フィルム11」や文献I(国際公開第2012/161078号)の図15に示された「(光源側の)飛散防止フィルム24」等を採用することは、当業者がその用途等を勘案して適宜なし得たことであると指摘した。
ちなみに、文献Iの図15は、以下のものである。
11…センサガラスからなるタッチパネル本体
12…LCDパネル12
13、24…飛散防止フィルム
25…BM層25
30…タッチパネル用印刷フィルム
31…基材フィルム(光学用PETフィルム)
34…ハードコート層
35…印刷層35
36…第1光学用透明粘着層
38…第2光学用透明粘着層
(c)これに対して、本件訂正により、訂正前の「(2枚の)飛散防止フィルム」は、それぞれ、「透明導電層を有するガラス基材」に接着層を介して積層されている旨の特定がなされた。
(d)そして、上記「透明導電層を有するガラス基材」とは、
本件特許明細書の【0096】等の記載からして、タッチパネルを構成するガラス基材であると認められる。
(e)しかしながら、「『透明導電層を有するガラス基材』に『表示面保護又は飛散防止等のための延伸フィルム』を接着層(粘着層)を介して貼り合わせたタッチパネル」を有する(携帯電話等の)液晶表示装置は、下記の文献に記載されているように、本件特許出願時点で周知である(以下「周知技術」という。)。
K:特開2008-276729号公報
(【0056】ないし【0061】及び図6(a)を参照。)
L:特開2008-257494号公報
(【0020】ないし【0057】及び図1(a)を参照。)
M:特開2001-91926号公報
(【0022】、【0030】及び図1を参照。)
N:実願昭62-89249号(実開昭63-199336号)の
マイクロフィルム(第1図を参照。)
ちなみに、特開2008-257494号公報の図1(a)は、以下のものである。
3 入力器具
4 タッチパネル(入力パネル)
4s 主面
8a 前面側ガラス基板
8b 背面側ガラス基板
12a、12b 面状電極(透明導電膜)
15 緩衝部材(スペーサ)
30 フィルム部材(PET)
31 背面側フィルム部材(PET)
(f)してみると、引用発明の「(携帯電話等の)液晶表示装置」を、例えば、上記「文献Lの図1(a)に示された『4 タッチパネル(入力パネル)』を有する『(携帯電話等の)液晶表示装置』」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
その際、引用発明の「(リタデーション21520nmの)配向ポリエステルフィルム」を、図1(a)に示された「30 フィルム部材(PET)」に倣って、粘着層を介して「4 タッチパネル(入力パネル)」の視認側最表面に貼り合わせることは当然のことである。
(g)上記(f)のようにした「(携帯電話等の)液晶表示装置」は、視認側に「(リタデーション21520nmの)配向ポリエステルフィルム」を、光源側に「31 背面側フィルム部材(PET)」を備えたものとなる。
(h)そして、「(リタデーション21520nmの)配向ポリエステルフィルム」及び「31 背面側フィルム部材(PET)」は、それぞれ、接着層(粘着層)を介して「透明導電層を有するガラス基材」に貼り合わせたものであるから、「飛散防止フィルム」と呼べるものであって、
「2枚の飛散防止フィルムは配向フィルムであり」、
「そのうちの1枚は、6000nm以上150000nm以下のリタデー ションを有する高リタデーション飛散防止フィルムであって」、
該「(視認側)高リタデーション飛散防止フィルム」は、
「光源側飛散防止フィルムよりも視認側に配置され」、
「その配向主軸が偏光子の偏光軸に対して45度±20度以下となるように配置され」、
「その光源側に、透明導電層を有するガラス基材が接着層を介して積層されている」ことになる。
(i)したがって、引用発明において、上記<相違点2>のうち、(a)ないし(c)に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて適宜なし得たことである。
b 上記<相違点2>のうち、(d)について
(a)上記aで検討したように、引用発明の「(携帯電話等の)液晶表示装置」を、例えば、上記「文献Lの図1(a)に示された『4 タッチパネル(入力パネル)』を有する『(携帯電話等の)液晶表示装置』」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(b)また、上記「文献Lの図1(a)に示された『31 背面側フィルム部材(PET)』」は、「4 タッチパネル(入力パネル)」を構成する「8b 背面側ガラス基板」に接着層(粘着層)を介して積層されているから、「飛散防止フィルム」と呼べるものであり、その視認側に、透明導電層を有するガラス基材が位置することになる。
(c)次に、本件訂正発明1における、「光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し」との発明特定事項の技術的意義を本件特許明細書の記載を参酌して検討する。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
…しかしながら、現在流通しているフィルムの多くは、リタデーションの値が3000nm未満のフィルムであり、前記方法では、そのようなフィルムを画像表示装置に使用することができないという問題がある。そこで、本発明は、リタデーションの値が3000nm未満のような汎用される配向フィルムの使用を可能にしながら、サングラス等の偏光フィルムを介して視認した際の干渉色(即ち、虹斑)による視認性の低下を改善することを目的とする。」
「【0029】
低リタデーション配向フィルムのリタデーションは、3000nm未満であれば特に制限されない。本発明に好適に用いられる低リタデーション配向フィルムのリタデーションの下限値は、それを単独で用いた場合に虹斑が生じ得るという観点から、50nm以上、100nm以上、200nm以上、300nm以上、400nm以上、又は500nm以上である。虹斑が効果的に改善されるという点では、好ましくは800nm以上、好ましくは1000nm以上、好ましくは1300nm以上である。また、低リタデーション配向フィルムのリタデーションの上限は、高リタデーション配向フィルムとの組合せで虹斑の抑制が可能であるという観点から、3000nm未満、2500nm未満、又は2300nm未満である。画像表示装置が低リタデーション配向フィルムを2枚以上有する場合、それらのリタデーションは同一であっても異なっていてもよい。」
上記記載からして、
「光源側飛散防止フィルムは、200nm以上3000nm未満のリタデーションを有し」における「200nm以上」は、敢えて虹斑が生じ得るという観点から決められたものであって、格別の技術的意義を有する数値であるとは認められない。
また、「3000nm未満」は、現在流通している多くの配向フィルムが有するリタデーションであって、格別の技術的意義を有する数値であるとは認められない(必要ならば、例えば、特開2004-170875号公報の【0003】、特開2012-214026号公報の【0002】、【0068】の表1を参照。)。
(d)ところで、引用発明において、「配向ポリエステルフィルム」の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が凡そ45度となるように配置する技術的意義は、甲第1号証の【0004】、【0013】及び表2等の記載からして、(従来の)液晶表示装置からは、観察者に向かって直線偏光が出射されているということを前提に、偏光板から出射された「連続的な発光スペクトル」の直線偏光を解消することにより、サングラスの角度に影響されることなく、「連続的な発光スペクトル」がサングラスの偏光子を透過できるようにすることにあるものと解される。
(e)そうすると、「連続的な発光スペクトル」を「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過させる際に、直線偏光の状態が変化しないようにする必要がある。
(f)そして、配向フィルムの配向主軸を、偏光子の偏光軸に対して略垂直又は略平行となるように配置すれば、直線偏光の偏光状態が複屈折の影響を受けて変化しないことは、当業者にとって明らかであるから、「連続的な発光スペクトル」を「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過させる際に直線偏光の状態が変化しないように、その配向主軸を偏光子の偏光軸に対して略垂直又は略平行となるように配置することは、当業者が適宜なし得たことである(必要ならば、国際公開第2012/157662号の【0005】、国際公開第2011/111267号の【0119】、特開2008-76600号公報の【0049】及び特開2007-256874号公報の【0031】を参照。)。
(g)以上のことから、「31 背面側フィルム部材(PET)」として、現在流通している多くの配向フィルムと同程度のリタデーションを有する配向フィルムを選択するとともに、その配向主軸を偏光子の偏光軸に対して略垂直又は略平行となるように配置することは、当業者が適宜なし得たことである。
(h)したがって、引用発明において、上記<相違点2>のうち、(d)に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。
c <相違点2>についてのまとめ
引用発明において、上記<相違点2>に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(ウ)上記<相違点3>について検討する。
上記「(イ)b(g)」で検討したように、「連続的な発光スペクトル」を「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過させる際に偏光状態が変化しないように、その配向主軸を偏光子の偏光軸に対して略垂直又は略平行となるように配置することは、当業者が適宜なし得たことであるから、「垂直」又は「平行」から、若干ずれた位置に配置することに何ら困難性は認められない。
(エ)以上のことから、引用発明において、上記<相違点1>ないし上記<相違点3>に係る本件訂正発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて容易になし得たことである。
(オ)効果
本件訂正発明1の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。
ウ 本件訂正発明1についてのまとめ
本件訂正発明1は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明1に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
(2)本件訂正発明2について
ア 引用発明の「配向ポリエステルフィルム」は、その遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が凡そ45度となるように、粘着層を介して液晶表示装置の視認側最表面に貼り合わせものであるから、「45度」となるようにすることに何ら困難性は認められない。
イ 本件訂正発明2についてのまとめ
本件訂正発明2は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明2に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
(3)本件訂正発明3について
ア 上記(1)本件訂正発明 イb(g)」で検討したように、「連続的な発光スペクトル」を「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過させる際に偏光状態が変化しないように、その配向主軸を偏光子の偏光軸に対して略垂直又は略平行となるように配置することは、当業者が適宜なし得たことであるから、「垂直」又は「平行」から、若干ずれた位置に配置することに何ら困難性は認められない。
イ 本件訂正発明3についてのまとめ
本件訂正発明3に係る特許は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正発明3に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消されるべきものである。
(4)本件訂正発明4について
ア 本件訂正発明4と引用発明とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点4>
偏光子よりも視認側に配置されるフィルムに関して、
本件訂正発明4は、
(a)「少なくとも2枚の飛散防止フィルム」であって、
(b)「光源側飛散防止フィルム」は、
「その配向主軸と偏光子の偏光軸とが10度~30度となるように配置され」ているのに対して、
引用発明は、上記(a)及び(b)に係る構成を備えていない点。
イ 判断
(ア)上記<相違点4>について検討する。
a まず、上記<相違点4>の(a)について
上記「<相違点4>の(a)」は、上記「<相違点2>の(a)」と同じであるから、上記「<相違点2>」で検討したように、引用発明において、上記「<相違点4>の(a)」に係る本件訂正発明4の発明特定事項を採用することは、当業者が上記周知技術に基づいて適宜なし得たことである。
b 次に、上記<相違点4>の(b)について
(a)引用発明において、「配向ポリエステルフィルム」の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が凡そ45度となるように配置する技術的意義は、甲第1号証の【0004】、【0013】及び表2等の記載からして、(従来の)液晶表示装置からは、観察者に向かって直線偏光が出射されているということを前提に、偏光板から出射された「連続的な発光スペクトル」の直線偏光を解消することにより、サングラスの角度に影響されることなく、「連続的な発光スペクトル」がサングラスの偏光子を透過できるようにすることにあるものと解される。
(b)そうすると、「連続的な発光スペクトル」を「31 背面側フィルム部材(PET)」を透過させる際に直線偏光の状態が変化しないようにする必要がある。
しかしながら、「31 背面側フィルム部材(PET)」の配向主軸を偏光子の偏光軸に対して10度~30度となるように配置すると、直線偏光の状態が変化することから、上記角度とすることには、阻害要因があるといえる。
c 以上のことから、他の相違点について検討するまでまなく、本件訂正発明4は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明4についてのまとめ
本件訂正発明4に係る特許は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件訂正発明4に係る特許は、取消理由通知に記載した理由では、取り消すことができない。
(5)本件訂正発明5について
ア 本件訂正発明5と引用発明とを対比すると、両者は、少なくとも、以下の点で相違する。
<相違点5>
偏光子よりも視認側に配置されるフィルムに関して、
本件訂正発明5は、
(a)「少なくとも2枚の飛散防止フィルム」であって、
(b)「光源側飛散防止フィルム」は、
「その配向主軸と偏光子の偏光軸とが10度~30度となるように配置され」ているのに対して、
引用発明は、上記(a)及び(b)に係る構成を備えていない点。
イ 判断
上記<相違点5>について検討する。
上記「<相違点5>」は、上記「<相違点4>」と同じであるから、上記「<相違点4>」で検討したように、引用発明において、上記「<相違点5>」に係る本件訂正発明5の発明特定事項を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 本件訂正発明5についてのまとめ
本件訂正発明5に係る特許は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、本件訂正発明5に係る特許は、取消理由通知に記載した理由では、取り消すことができない。
4 平成30年10月30日提出の意見書(特許権者)
(1)特許権者は、意見書において、以下のように主張することから、この点について、各々続けて検討する。
ア 「甲1にも文献A~Jにも、高リタデーション配向フィルム(視認側飛散防止フィルム)を低リタデーション配向フィルム(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置することについて記載されていない。
したがって、上記の配置を前提にする訂正発明の課題は、甲1及び文献A~Jから容易に着想し得ない、新規な課題であるため、当該課題を解決するための構成は、容易に想到することができない。」(第11頁上段)
(ア)本件特許明細書の記載及び図2ないし図4からして、視認側飛散防止フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸がなす角度を45度に設定した条件において、光源側飛散防止フィルムを採用しても、ほとんどのケースにおいて、虹斑の発生しないことが理解できる。
唯一、虹斑が発生するのは、図4に示されているように、「サングラスの偏光軸」と「偏光子の偏光軸」のなす角度が45度の場合であって、かつ、「光源側配向フィルムの配向主軸」と「偏光子の偏光軸」のなす角度を特定範囲に設定した場合だけである。
(イ)また、上記「なす角度が45度の場合」とは、観察者との関係(例えば、首を傾けて眺めるなど)で決まるものであるから、結局、虹斑は、表示装置の構造という観点からすれば、装置内部において、「光源側配向フィルムの配向主軸」と「偏光子の偏光軸」のなす角度を特定の範囲に設定した場合に発生することになる。
(ウ)そして、光学異方性フィルムを光路内に挿入すれば、偏光状態が複屈折の影響を受けることは明らかであるから、当業者であれば、通常、上記「特定の範囲」は、避けるべき領域であるといえる。
(エ)そうすると、特許権者が主張する「新規な課題」とは、「高リタデーション配向フィルム(視認側飛散防止フィルム)を低リタデーション配向フィルム(光源側飛散防止フィルム)よりも視認側に配置する」構成を備えたすべての発明が有する課題であるとはいえない。
イ 「甲1には、3000~30000nmのリタデーションを有する高分子フィルムに直線偏光が入射しなければならないという記載はないし、上記高分子フィルムに直線偏光が入射しなくても、上記高分子フィルムから出射される光が直線偏光でなければ、サングラスの偏光子を透過させることが可能である。」(第13頁後段ないし第14頁上段)
(ア)甲第1号証の記載からして、第1号証に記載された「視認改善方法」は、(従来の)液晶表示装置からは、観察者に向かって直線偏光が出射されているということを前提に、偏光板から出射された「連続的な発光スペクトル」の直線偏光を解消することにより、サングラスの角度に影響されることなく、「連続的な発光スペクトル」がサングラスの偏光子を透過できるようにする方法であると解される。
(イ)特許権者は、「高分子フィルムに直線偏光が入射しなくても、…可能である。」旨主張するが、甲第1号証には、「偏光板」と「高分子フィルム」との間に直線偏光の偏光状態に影響を与える部材を配置してもよいことは記載されておらず、甲第1号証の開示内容を超えるものである。
(2)以上のことから、特許権者の上記主張は、上記「3」の判断を左右するものではない。
5 平成30年12月13日提出の意見書(特許異議申立人)
(1)特許異議申立人は、意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。
「(エ)B5について
上記B5の訂正は、要するに、光源側飛散防止フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角を平行(0度)から遠ざける訂正である。
甲第8号証の……このことから、フィルム幅が1m程度であれば、両端の配向角(配向主軸)は中央部から10度以上ずれていることが分かる。…すなわち、46インチ以上の画像表示装置において、汎用の配向フィルムの配向主軸に対して略平行に配置(中央部で略平行に配置)した際には、画像表示装置の幅方向の端部では上記B5の構成を必然的に満たすことになる。」(第6頁上段ないし同頁中段)
ア 特許異議申立人は、本件訂正発明1ないし本件訂正発明5の「光源側飛散防止フィルム」には、幅方向の両端と中央部の配向主軸が10度以上ずれている汎用の配向フィルム(幅1m程度)が包含されている旨主張しているものと解される。
イ ところで、本件特許明細書には、以下の記載がある。
「【0017】
一方、配向フィルムを工業的に製造する場合、ボーイング現象等によりフィルムの端部と中央部等、フィルム全体に亘って配向主軸の方向を揃えることが難しいため、……そこで、これらの事情を総合的に勘案して、一実施形態において、低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸とが形成する角(低リタデーション配向フィルムと偏光子とが同一平面上にあると仮定する)は、平行又は垂直から少しずれていることが好ましい。」
「【0114】
尚、リタデーション(Re)及び厚さ方向リタデーション(Rth)は、次の通り測定した。即ち、二枚の偏光板を用いて、フィルムの配向主軸方向を求め、配向主軸方向が直交するように4cm×2cmの長方形を切り出し、測定用サンプルとした。このサンプルについて、…・リタデーション(Re)を求めた。また、…厚さ方向リタデーション(Rth)を求めた。」
上記記載からして、
フィルムの配向主軸の方向とは、測定により定まる「一つの方向」であると解される。
そうすると、本件訂正発明1ないし本件訂正発明5における、光源側飛散防止フィルムの配向主軸と偏光子の偏光軸とのなす角とは、上記「一つの方向」と偏光軸のなす角度として定義できるから、フィルムの両端と中央部で異なるものではない。
(2)以上のことから、特許異議申立人の上記主張は、上記「3」の判断を左右するものではない。
6 判断についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明1ないし本件訂正発明3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によって、取り消されるべきものである。
本件訂正発明4及び本件訂正発明5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明4及び本件訂正発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由A(特許法第36条第6項第2号)
特許異議申立人は、特許異議申立書(第44頁)において、訂正前の特許請求の範囲に記載された「リタデーション」が如何なる波長のリタデーションを意味するのか不明である旨を主張する。
ア しかしながら、特許権者が提出した乙第1号証によれば、リタデーションは、ナトリウムD線(589.3nm)の波長で測定することが技術常識であると認められる。
イ したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。
(2)申立理由B(特許法第36条第4項第1号)
特許異議申立人は、特許異議申立書(第45頁)において、本件特許明細書の表3に示された試験No.13の虹斑の評価が「◎」であることが、【0016】の記載内容と矛盾しているため、訂正前の請求項3に係る発明との関係で、本件特許は実施可能要件を満たさない旨を主知要する。
ア しかしながら、試験No.13は、【0016】の「低リタデーション配向フィルムの配向主軸と視認側偏光子の偏光軸(出射する偏光の振動方向と平行な軸)とが形成する角度は、…前記角度は略平行又は垂直であることが好ましい。」との条件は満たさないものの、【0021】に記載された「低リタデーション配向フィルム及び高リタデーション配向フィルムの配向主軸が形成する角は、略平行又は略垂直であることが、虹斑抑制の観点から好ましい。」の条件を満たす。
つまり、試験No.13では、レタデーションは相加の関係となり、その結果、虹斑の評価が「◎」になっているものと解される。
イ したがって、特許異議申立人の上記主張は、採用することができない。
第5 むすび
本件訂正発明1ないし本件訂正発明3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由によって、取り消されるべきものである。
本件訂正発明4及び本件訂正発明5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明4及び本件訂正発明5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-700716