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特許異議申立

2017-700699

空気入りタイヤ

審判番号
2017-700699
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-525122外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年07月18日
審決日
2019年01月08日
公報発行日
2019年04月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(C08L) / P1651.536-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6063043号発明「空気入りタイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6063043号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6063043号の請求項1-9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6063043号の請求項1~9に係る特許についての出願は、2014年(平成26年)6月13日(優先権主張平成25年7月5日)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月22日にその特許権の設定登録がされ、平成29年1月18日に特許掲載公報が発行された。 その後、その特許について、同年7月18日に特許異議申立人山内生平(以下「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年10月31日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月30日に意見書が提出され、平成30年2月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年4月20に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年5月8日付けで訂正請求があった旨が通知され(特許法第120条の5第5項)、同年6月13日に特許異議申立人より意見書が提出され、同年8月6日付けで特許権者に対して審尋が通知され、同年9月10日に特許権者から回答書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 平成30年4月20日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるものであり、その内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)」とあるのを、「式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)≦6.0」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びジョイントレスバンドからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。」とあるのを、「前記キャップトレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~80質量部含み、前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びジョイントレスバンドからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。」に訂正する。 (3)一群の請求項 本件訂正は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「式(I)」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに図面を併せて「本件明細書等」という。)の段落【0032】の「下記式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは2.4以下である。6.0を超えると、茶変色するおそれがある。」等の記載を根拠に、上限値を追加し、「式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)≦6.0」として、「式(I)」の数値範囲を限定するものである。 したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「式(I)」の数値範囲を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「キャップトレッド用ゴム組成物」について、本件明細書の段落【0077】~【0079】等の記載を根拠に、「前記キャップトレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~80質量部含」んで構成されていることを限定するものである。 したがって、訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「キャップトレッド用ゴム組成物」の組成を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下それぞれ「本件発明1~9」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 トレッド部を有する空気入りタイヤであって、 前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材と、ジョイントレスバンドとを有し、 前記キャップトレッド、前記ベーストレッド、及び前記アンダートレッドが、それぞれ、キャップトレッド用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、及びアンダートレッド用ゴム組成物からなり、 前記ジョイントレスバンドが、繊維コードを繊維コード被覆用ゴム組成物で被覆されてなり、 前記キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が1.8質量%以下であり、 前記キャップトレッド、前記ベーストレッド、前記アンダートレッド、及びジョイントレスバンド上層のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が下記式(I)を満たし、 前記アンダートレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、硫黄を1.8~6.0質量部含み、 トレッド主溝底部のサブトレッド厚みが0.5~2.0mmである空気入りタイヤ。 【数1】 式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)≦6.0 【請求項2】 前記キャップトレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、カーボンブラックを3~80質量部含み、 前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びジョイントレスバンドからなる請求項1記載の空気入りタイヤ。 【請求項3】 トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み、及び/又はトレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚みが0.1~1.5mmである請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。 【請求項4】 前記ベーストレッド用ゴム組成物、及び/又は前記アンダートレッド用ゴム組成物が、コバルト金属を実質的に含有しない請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 【請求項5】 前記ベーストレッド用ゴム組成物、及び/又は前記アンダートレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、フェノール系樹脂を0.1~5.0質量部含む請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 【請求項6】 前記キャップトレッド用ゴム組成物、及び/又は前記ベーストレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、非イオン界面活性剤を0.01~5.0質量部含む請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 【請求項7】 前記非イオン界面活性剤が、下記式(1)及び/又は下記式(2)で表される非イオン界面活性剤、並びにプルロニック型非イオン界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である請求項6記載の空気入りタイヤ。 【化1】 (式(1)中、R1は、炭素数6~26の炭化水素基を表す。dは整数を表す。) 【化2】 (式(2)中、R2及びR3は、同一若しくは異なって、炭素数6~26の炭化水素基を表す。eは整数を表す。) 【請求項8】 前記ベーストレッド用ゴム組成物、及び/又は前記アンダートレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、エステル成分含有量が40~98質量%の天然由来ワックスを0.1~5.0質量部含む請求項1~7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。 【請求項9】 前記天然由来ワックスは、イネ科植物から抽出され、軟化点60~90℃の成分からなるものである請求項8記載の空気入りタイヤ。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が平成30年2月15日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。 [取消理由1] 本件特許は、発明の詳細な説明の記載について、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、取り消すべきものである。 [取消理由2] 本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていから、取り消すべきものである。 2 当審の判断 2-1 取消理由1(特許法第36条第4項第1号)について (1)本件発明1について 本件発明1は、少なくとも以下の事項を発明特定事項とするものである。 「前記キャップトレッド、前記ベーストレッド、前記アンダートレッド、及びジョイントレスバンド上層のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が下記式(I)を満たし」、 「式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)≦6.0」という事項(以下「事項A」という。)。 (2)発明の詳細な説明について 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明には、以下のとおりの記載がある。 「【0002】 自動車用タイヤは、天然ゴムやジエン系合成ゴムを原料としたゴム組成物を用いているため、高オゾン濃度、紫外線条件下で劣化が促進され、クラック、例えば、トレッドの主溝底部においてTread Groove Cracking(TGC)が生じるおそれがある。一方、オゾン存在下でのクラックの発生やその進行を抑制するために、例えば、老化防止剤(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、ポリ(2,2,4-トリメチル-1,2-)ジヒドロキノリン(TMDQ)など)や石油系ワックスなどの添加剤がゴム組成物に配合されている。 【0003】 上記老化防止剤や石油系ワックスは、加硫時や使用中に、加硫ゴム中からタイヤなどのゴム表面に移行(ブルーム)することでオゾンからゴムを守る働きをする。しかしながら、上記老化防止剤や石油系ワックスをゴムの溶解能力以上に過剰に配合した場合、使用初期に過剰にブルームする事が、白変色の原因となっている。また、オゾンにより酸化した老化防止剤が茶変色の原因となり、同様に過剰にブルームする事で、茶変色がより強くなる。このように、変色を防止しつつ、クラックの発生を抑制することは困難であった。 【0004】 一方、近年、タイヤ軽量化ニーズが高くなり、トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くすることによりタイヤの軽量化が進められている。しかしながら、軽量化タイヤを、タイヤディーラー、販売店等で保管していると、TGCが発生しやすいという問題がある。TGCは、タイヤを横積みしたり(10~15本程度)、狭い縦積み棚スペースにタイヤが変形する程タイヤを押し込んだりした場合等、トレッド主溝底部においてゴムに歪みが生じた状態で保管した際や、オゾン濃度が高い環境、例えば乾季、モーター回転時の電気火花やオゾン消臭装置がある付近等に保管した場合に、特に起こり易い。トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くすることにより、トレッド主溝底部においてゴムに歪みが生じやすくなり、保管時にTGCが発生しやすくなるものと推測される。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、前記課題を解決し、トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くしたタイヤを保管した場合であっても、良好なTGC性能を有しつつ、変色を防止できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、トレッド部を有する空気入りタイヤであって、上記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材と、ジョイントレスバンドとを有し、上記キャップトレッド、上記ベーストレッド、及び上記アンダートレッドが、それぞれ、キャップトレッド用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、及びアンダートレッド用ゴム組成物からなり、上記ジョイントレスバンドが、繊維コードを繊維コード被覆用ゴム組成物で被覆されてなり、上記キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が1.8質量%以下であり、上記キャップトレッド、上記ベーストレッド、上記アンダートレッド、及びジョイントレスバンド上層のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が下記式(I)を満たし、上記アンダートレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、硫黄を1.8~6.0質量部含み、トレッド主溝底部のサブトレッド厚みが0.5~2.0mmである空気入りタイヤに関する。 【数1】 式(I):1.35≦((トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm) ・・・ 【0032】 本発明の空気入りタイヤでは、上記キャップトレッド、上記ベーストレッド、上記アンダートレッド、及び上記ジョイントレスバンド上層のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が以下の関係式(I)を満たす。これにより、トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くしたタイヤを保管した場合であっても、良好なTGC性能を有しつつ、変色を防止できる。 下記式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量は、好ましくは1.40以上、より好ましくは1.50以上、更に好ましくは1.60以上、特に好ましくは1.80以上、最も好ましくは2.00以上である。下記式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは2.4以下である。6.0を超えると、茶変色するおそれがある。 【数2】 式(I):1.35≦((トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm))=フェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量 ・・・ 【0046】 本発明では、キャップトレッド用ゴム組成物に非イオン界面活性剤を使用することが好ましい。 上記特定の界面活性剤は、ワックスや老化防止剤とともにタイヤ表面にブルームし、それらを溶かし平坦化するため、白変色を軽減できると共に、タイヤ表面に形成される表面保護層の凹凸が減り、乱反射により目立つ茶変色を大幅に軽減できる。また、黒光りの光沢をタイヤ表面に与えることもできる。また、耐オゾン性も改善でき、TGC性能も改善できる。 ・・・ 【0068】 上記ゴム組成物が上記非イオン界面活性剤を含有する場合、ゴム成分100質量部に対して、上記非イオン界面活性剤の含有量(好ましくは上記式(1)で表される非イオン界面活性剤、上記式(2)で表される非イオン界面活性剤、及び上記プルロニック型非イオン界面活性剤の合計含有量)は、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上である。0.01質量部未満では、充分なTGC性能、耐変色性が得られないおそれがある。また、上記合計含有量は、好ましくは5.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下、特に好ましくは2.0質量部以下である。5.0質量部を超えると、粘着性が上がりすぎてタイヤトレッド表面がねちゃついたり、雨天走行時や湿潤路面での試験走行時にブルーム層が溶出して消失しやすくなり、TGC性能がかえって悪化するおそれがある。」 【0069】 本発明では、キャップトレッド用ゴム組成物に石油由来ワックスを使用することが好ましい。これにより、良好なTGC性能が得られる。 ・・・ 【0076】 上記ゴム組成物が石油由来ワックスを含有する場合、石油由来ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.8質量部以上である。0.5質量部未満であると、充分な耐オゾン性が得られず、充分なTGC性能が得られないおそれがある。また、該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。4.0質量部をこえると、ブルーム量が多くなりすぎて、変色(茶変色)が生じやすくなるおそれがある。 ・・・ 【0079】 上記ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2~120質量部、より好ましくは3~80質量部、更に好ましくは5~70質量部である。2質量部未満では、充分な紫外線クラック性が得られず、耐オゾン性が悪化する傾向がある。120質量部を超えると、低燃費性、耐チッピング性(破断時伸び)が悪化するおそれがある。 ・・・ 【0084】 キャップトレッド用ゴム組成物は、軟化剤を配合してもよい。軟化剤を配合することにより、上記老化防止剤、上記非イオン界面活性剤、上記石油由来ワックスのブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより良好に得られる。 ・・・ 【0092】 上記ゴム組成物が軟化剤を含有する場合、軟化剤の含有量(好ましくは樹脂とオイルの合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1.0質量部以上、より好ましくは2.0質量部以上、更に好ましくは3.0質量部以上である。また、軟化剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームする軟化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、上記老化防止剤、上記非イオン界面活性剤、上記石油由来ワックスのブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。」 ・・・ 【0094】 本発明では、加硫剤として硫黄を使用することが好ましい。これにより、ポリマー間に適度な架橋鎖を形成でき、上記老化防止剤、上記非イオン界面活性剤、上記石油由来ワックスのブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」 (3)乙第9号証について 審尋に対して特許権者が提出した平成30年9月10日付けの回答書に添付された乙第9号証(安藤慎二・深町真治,老化防止剤 日本ゴム協会誌,第82巻,第2号(2009),P.(11)-(15))には、以下のとおりの記載がある。 ア (14)頁右欄6~10行 「このオゾンによる劣化を防止する目的で配合される薬品をオゾン劣化防止剤と呼ぶ.オゾン劣化を防ぐ方法は大きく二つに分けられ,IPPDや6PPDなどのアミン系老化防止剤にみられる化学的作用と,Waxにみられる物理的作用とがある.」 イ (15)頁左欄9~13行 「WaxおよびIPPDのみを配合した場合,その効果は低く,IPPDの配合量を増やしても改善はみられるが,き裂の減少にとどまっている.前述と同様の配合量でIPPDとWaxを併用すると,その耐オゾン効果は向上し,増量したときと同等の結果が得られる.」 (4)検討 ア (ア) 本件明細書の発明の詳細な説明によれば、本件発明1は、「トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くしたタイヤを保管した場合であっても、良好なTGC性能を有しつつ、変色を防止できる空気入りタイヤを提供すること」を技術課題とし(上記(2)の段落【0007】、以下、「上記(2)の」を省略して段落番号を記載する。)、かかる課題を解決するために、少なくとも、上記事項Aを特定したものと理解することができる。 (イ) 本件発明1は、上記事項Aを備えるから、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合が規定されている。 そして、本件発明1の前記規定を前提として、本件発明1の「硫黄」、本件発明6の「非イオン界面活性剤」及び本件発明8の「天然由来ワックス」の量など、ゴム組成物中のゴム成分以外の成分の量を調整している。 (ウ) ゴム組成物中のゴム成分以外の成分の量を調整することに関しては、具体的に、以下のように記載されている。 a 「上記ゴム組成物が上記非イオン界面活性剤を含有する場合」、「5.0質量部を超えると、粘着性が上がりすぎてタイヤトレッド表面がねちゃついたり、雨天走行時や湿潤路面での試験走行時にブルーム層が溶出して消失しやすくなり、TGC性能がかえって悪化するおそれがある。」 (段落【0068】) b 「上記ゴム組成物が石油由来ワックスを含有する場合」、「4.0質量部をこえると、ブルーム量が多くなりすぎて、変色(茶変色)が生じやすくなるおそれがある。」(段落【0076】) c 「上記ゴム組成物が軟化剤を含有する場合」、「軟化剤の含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。自らもタイヤ表面にブルームする軟化剤の含有量を上記範囲内とすることにより、上記老化防止剤、上記非イオン界面活性剤、上記石油由来ワックスのブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。」(段落【0092】) d 「本発明では、加硫剤として硫黄を使用することが好ましい。これにより、ポリマー間に適度な架橋鎖を形成でき、上記老化防止剤、上記非イオン界面活性剤、上記石油由来ワックスのブルームを好適にコントロールでき、本発明の効果がより好適に得られる。」(段落【0094】) (エ) そして、上記(イ)及び(ウ)を踏まえると、ゴム組成物中の老化防止剤の含有量(質量%)を規定する技術的意義は、ゴム組成物に対する老化防止剤の配合割合の範囲を限定することで、必要とするブルーム量等を維持しつつ(段落【0003】も参照)、さらに、ゴム組成物中のゴム成分以外の成分の量を調整することにより、硫黄、イオン界面活性剤、石油由来ワックスないし軟化剤等のゴム成分以外の成分に対する老化防止剤の配合割合をも調整することができ、ブルーム量等を好適にコントロールできるようにすることであり、これにより、上記の技術課題(上記(ア))が解決できるものであると理解できる。 したがって、ゴム組成物中の老化防止剤の含有量(質量%)を規定することで、上記の技術課題(上記ア)は解決できるといえる。 イ 平成30年2月15日付けの取消理由(決定の予告)では、「発明の詳細な説明には、空気入りタイヤが変色(白変色、茶変色)する原因として、老化防止剤をゴムの溶解能力以上に過剰に配合することや、老化防止剤の酸化が指摘されているから(段落【0003】)、上記技術課題は、少なくとも、ゴム組成物中の「ゴム」と「老化防止剤」との配合割合を最適化することで解決したものと理解することができる。」及び「式(I)は、「ゴム組成物」中の「フェニレンジアミン系老化防止剤」の含有量(質量%)を規定するものであって、当然のことながら、ゴム組成物中には、ゴム成分のみならず、カーボンブラック等の他の成分も含まれることから(段落【0079】)、ゴム組成物に対して老化防止剤の含有量(質量%)を規定した場合には、カーボンブラック等の他の成分の配合量に応じ、ゴム成分に対する老化防止剤の含有量(質量%)が過多になったり過小になったりすることが、明らかである。」ことを指摘し、「ゴム組成物」中の「老化防止剤」の配合量(質量%)を規定しても、「ゴム(ゴム成分)」に対する「老化防止剤」の配合量(質量%)を規定することにはならないから、本件発明1に係る技術課題を解決できると解すべき合理性はない旨指摘した。 しかしながら、この指摘のように、「ゴム(ゴム成分)」に対する「老化防止剤」の配合量(質量%)を規定するだけでは、ゴム組成物中のゴム成分以外の成分の量を調整した場合、トレッドのゴム組成物に含まれる老化防止剤の配合割合が変化してしまうから、適切なブルーム量等をコントロールすることができなくなり、その結果、特にゴムの表面付近では、紫外線やオゾンに対する機能を十分に保つことができなくなったり、老化防止剤がゴムの溶解能力以上になり過剰にブルームしたりして、上記の技術課題(上記ア)が解決できなくなってしまうものと理解できる。 そして、上記アのとおりであることから、本件明細書の発明の詳細な説明は、上記指摘に該当するものではなく、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が発明の技術上の意義を理解できる程度に記載されているといえる。 ウ また、上記取消理由では、「本件発明1は、その実施の態様として、キャップトレッド用ゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2~120質量部にて設定可能とされているが(段落【0079】)、そのようにゴム組成物中のゴム成分とカーボンブラックの配合割合を可変にしたものにおいてまで、上記技術課題が解決できたとする実施例は記載されていない(段落【0182】~【0184】の表1~3には、キャップトレッド用ゴム組成物中のゴム成分とカーボンブラックとの配合割合が一定の実施例しか記載されていない。)。」旨指摘した。 しかしながら、上記ア及びイのとおりであるから、ゴム組成物中のゴム成分とカーボンブラックの配合割合を可変にしても、上記技術課題は解決できるものであり、さらに、そのようなカーボンブラックの配合割合を可変にした実験結果も提示されたことから(特許権者が提出した平成30年4月20日付けの意見書に添付された乙第8号証(実験成績証明書)を参照)、この指摘は解消した。 エ さらに、上記取消理由では、「発明の詳細な説明には、『下記式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量の上限は、特に限定されないが、好ましくは6.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは2.4以下である。6.0を超えると、茶変色するおそれがある。』(段落【0032】)と記載されていることから」、「式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量(段落【0032】)の【数2】)の上限が限定されない本件発明1は、かかる記載に照らして茶変色するおそれもあるといえる。」旨指摘した。 しかしながら、本件発明1の上記事項Aは、本件訂正により(上記第2 2(1))、式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量の上限を限定したものであり、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載内容と整合するものとなり、茶変色するおそれはなく(段落【0032】)、本件発明1に係る技術課題(上記ア(ア))を解決できるものと理解できるから、この指摘も解消した。 オ 上記イ~エのとおりであり、本件明細書の発明の詳細な説明は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段が発明の技術上の意義を理解できる程度に記載されており、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるといえる。 (5) 以上から、本件明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、取消理由1によって、本件特許を取り消すことはできない。 2-2 取消理由2(特許法第36条第6項第1号)について 上記2-1のとおり、上記事項Aを備える本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 そして、本件発明1の発明特定事項を全て含む(上記事項Aを備える)本件発明2~9についても、同様のことがいえる。 したがって、本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているから、取消理由2によって、本件特許を取り消すことはできない。 3 特許異議申立人の意見について (1)特許異議申立人の主張 平成30年6月13日付けの意見書の3頁14~19行における特許異議申立人の主張は、以下のとおりである。 「しかしながら、実験成績証明書(乙第8号証)には、式(I)の値が4.22の実施例しか記載されてなく、上限値『≦6.0』まで拡張できるものであるとは到底いえない。また、上述の実施可能要件を充足するような十分なデータであるともいえない。 したがって、訂正後の本件特許の請求項1に係る発明について、取消理由2(実施可能要件)及び取消理由3(サポート要件)は依然解消されていない。」 (2)検討 上記2 2-1(4)エ及び第2 2(1)で述べたとおり、上記事項Aは、式(I)のフェニレンジアミン系老化防止剤の合計含有量の上限を、本件明細書の発明の詳細な説明(段落【0032】)に記載されている上限値「≦6.0」のとおりに限定したものであり、茶変色するおそれはなく、本件発明1に係る技術課題を解決できるものと理解できるから、実施可能要件及びサポート要件を満たすものといえる。 そして、上記2 2-1(4)で述べたことを総合すると、上記事項Aについて十分にサポートされているといえる。 したがって、上記(1)の主張は採用できない。 4 小括 以上のとおり、本件請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものであるとはいえない。 第5 取消理由通知(審決の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 訂正前の特許請求の範囲に関し、特許異議申立人が、特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。 [特許異議申立理由] 訂正前の請求項1~9に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 [刊行物等] 1.特開2004-42786号公報 2.特開2012-91733号公報 3.特開2010-59327号公報 4.特開2011-132471号公報 5.特開2011-132473号公報 6.特開2002-338749号公報 7.特開2008-31209号公報 8.特開2013-87266号公報 9.特開平7-96715号公報 10.特開平7-40703号公報 11.特開2008-213635号公報 12.SMITHERS RAPRA,INC.TIRE SPECIFICATION NO.1444-IT june 15,2011 Copyright c 2011 by Smithers Rapra,Inc. All rights reserved. 13.特開2011-57892号公報 14.特開昭63-213536号公報 15.特開平5-179071号公報 上記刊行物等1ないし15は、それぞれ、特許異議申立人が提出した甲第1ないし15号証(以下それぞれ「引用文献1」ないし「引用文献15」という。)である。 なお、特許異議申立書の「3 申立て理由」の「(1) 申立て理由の要約」(特許異議申立書2頁3~4行)には、「特許法第29条第1項第3号及び第2項」と記載されているが、他に「特許法第29条第1項第3号」に係る理由の記載は無く、特許異議申立書全体の記載内容から判断して、当該記載は、「特許法第29条第2項」の誤記と認められる。 2 検討 2-1 引用文献に記載された事項及び発明 (1)引用文献1について ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (1a) 「【請求項1】 タイヤの径方向の外側に配置され、外側に開口している溝が形成されているキャップゴム(C)と、その内側に配置されているベースゴム(B)とからなる2層構造のトレッド部を有する空気入りタイヤであって、 前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc [重量部]、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb [重量部]、前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における前記キャップゴム(C)の厚みdc [mm]、及び前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部の直下における前記ベースゴム(B)の厚みdb [mm]が、以下の式(1)及び(2):Φb /Φc ≧ 1.2                   (1)(Φc ×dc +Φb ×db )/(dc +db ) ≧ 1.4  (2) の関係を同時に満足することを特徴とする空気入りタイヤ。」 (1b) 「【請求項4】 前記ベースゴムの内側に配置されているベルト又はブレーカーにおけるコード被覆用ゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φs [重量部]と、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb [重量部]とが、以下の式(3): Φs  ≧ Φb                     (3) の関係を満足することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。」 (1c) 「【0010】 従って、当該技術分野においては、老化防止剤のトレッド表面への浸出による変色の防止及びトレッド表面に形成されている溝の底部におけるクラックの発生の抑制が両立されている空気入りタイヤに対する要求が存在する。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、老化防止剤のトレッド表面への浸出による変色が少なく、かつ、トレッド表面に形成されている溝の底部におけるクラックの発生も少ない、空気入りタイヤを提供することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上記目的は、タイヤの径方向の外側に配置され、外側に開口している溝が形成されているキャップゴム(C)と、その内側に配置されているベースゴム(B)とからなる2層構造のトレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc [重量部]、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb [重量部]、前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における前記キャップゴム(C)の厚みdc [mm]、及び前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部の直下における前記ベースゴム(B)の厚みdb [mm]が、以下の式(1)及び(2): Φb /Φc  ≧ 1.2                  (1)(Φc ×dc +Φb ×db )/(dc +db ) ≧ 1.4  (2) の関係を同時に満足することを特徴とする空気入りタイヤによって達成される。 【0013】 【発明の実施の形態】 上記の如く、本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤの径方向の外側に配置され、外側に開口している溝が形成されているキャップゴム(C)と、その内側に配置されているベースゴム(B)とからなる2層構造のトレッド部を有する空気入りタイヤであって、 前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc [重量部]、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb [重量部]、前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における前記キャップゴム(C)の厚みdc [mm]、及び前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部の直下における前記ベースゴム(B)の厚みdb [mm]が、以下の式(1)及び(2): Φb /Φc  ≧ 1.2                  (1) (Φc ×dc +Φb ×db )/(dc +db ) ≧ 1.4  (2) の関係を同時に満足することを特徴とする空気入りタイヤである。 ・・・ 【0019】 従って、上記関係式(2)は、上記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における、上記キャップゴム(C)及び上記ベースゴム(B)からなるトレッド部全体としての、ゴム成分100重量部あたりの老化防止剤の平均配合量[重量部]が1.4重量部以上であることを意味する。」 (1d) 「【0024】 上記の好ましいアミン系老化防止剤の例としては、N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-フェニル-N’-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、及びN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。」 (1e) 「【0025】 また、本発明の更なる好ましい態様において、前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対する前記アミン系老化防止剤の配合量Φc [重量部]は、1[重量部]以下であるのが望ましい。」 (1f) 「【0030】 本発明の更なる好ましい態様において、前記空気入りタイヤは、前記ベースゴムの内側に、ベルト又はブレーカーが配置されているものであってもよく、この場合、当該ベルト又はブレーカーにおけるコード(例えば、スチール製コード又は合成繊維製コード)を被覆するためのコード被覆用ゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φs [重量部]と、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb [重量部]とが、以下の式(3): Φs  ≧ Φb                     (3) の関係を満足するのが望ましい。 【0031】 上記Φs と上記Φb とが式(3)の関係を満足せず、上記Φs が上記Φb よりも小さい場合には、上記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物中に含有されているアミン系老化防止剤が、上記キャップゴム(C)のみならず、上記ベルト又はブレーカーに対しても移行するため、上記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部へのアミン系老化防止剤の供給が不十分となり、当該タイヤの耐クラック性の改良効果が不十分となるので好ましくない。」 (1g) 「【0032】 上述の如く、本発明は、空気入りタイヤのトレッド部を構成するキャップゴム(C)及びベースゴム(B)におけるアミン系老化防止剤の配合量及びそれぞれのゴムの厚みを制御することによって、経時に伴う老化防止剤のトレッド表面への浸出による変色を防止し、トレッド表面に形成されている溝の底部におけるクラックの発生を抑制しようとするものである。 ・・・ 【0044】 アロマオイル:昭和シェル石油株式会社製「デゾレックス 3号」 ワックス:大内新興化学工業株式会社製「サンノック」 亜鉛華:正同化学工業株式会社製「酸化亜鉛 3種」 ステアリン酸:日本油脂株式会社製「ビーズステアリン酸」 加硫促進剤(CZ):Flexsys社製「SANTOCURE CZ」(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド) 硫黄:株式会社軽井沢精錬所製「油処理硫黄」 老化防止剤(6PPD):Flexsys社製「SANTOFLEX 6PPD」(N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン)」 イ 引用文献1に記載された発明 上記摘記(1a)~(1g)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 [引用発明] 「タイヤの径方向の外側に配置され、外側に開口している溝が形成されているキャップゴム(C)と、その内側に配置されているベースゴム(B)とからなる2層構造のトレッド部を有する空気入りタイヤであって、 前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb[重量部]、前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における前記キャップゴム(C)の厚みdc[mm]、及び前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部の直下における前記ベースゴム(B)の厚みdb[mm]が、以下の式(1)及び(2): Φb/Φc≧1.2                 (1) (Φc×dc+Φb×db)/(dc+db)≧1.4  (2) の関係を同時に満足し、 前記ベースゴムの内側に配置されているベルト又はブレーカーにおけるコード被覆用ゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φs[重量部]と、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb[重量部]とが、以下の式(3): Φs≧Φb                     (3) の関係を満足し、 前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]は、1[重量部]以下であり、 前記アミン系老化防止剤は、N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)である空気入りタイヤ。」 (2)引用文献2について 引用文献2には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0006】 この発明は、高内圧条件下にてショルダー領域の耐摩耗性を維持しつつセンター領域の耐摩耗性を向上できる空気入りタイヤを提供することを目的とする。」 (2b) 「【0029】 また、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。 【0030】 カーカス層6は、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア(図示せず)でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、タイヤ周方向に対する角度が90度(±5度)でタイヤ子午線方向に沿いつつタイヤ周方向に複数並設されたカーカスコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。カーカスコードは、有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。このカーカス層6は、図1に示すように、本実施の形態では2層で設けられているが、少なくとも1層で設けられていてもよい。 【0031】 ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20度~30度)で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。 【0032】 ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、ベルト層7の外周を覆う態様で少なくとも2層配置された補強層81,82を有する。補強層81,82は、タイヤ周方向に並行(±5度)でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7側の補強層81がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、補強層81のタイヤ径方向外側の補強層82がベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように補強層81のタイヤ幅方向端部にのみ配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、各補強層81,82が共にベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置された構成、または各補強層81,82が共にベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置された構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なるものであればよい。また、ベルト補強層8(補強層81,82)は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられている。」 (2c) 「【0048】 また、この空気入りタイヤ1では、センター領域の最大溝深さdcを有する溝の溝下ゲージgcが0.5[mm]≦gc≦2.0[mm]の範囲内にあることが好ましく、1.0[mm]≦gc≦1.5[mm]の範囲内にあることがより好ましい(図3参照)。これにより、溝下ゲージgcが適正化される。例えば、この実施の形態では、第一陸部23aと第二陸部23bとを区画する周方向主溝22aがセンター領域の最大溝深さdcを有している。そして、この周方向主溝22aの溝下ゲージgcが上記の範囲内に設定されている。 【0049】 なお、溝下ゲージgcとは、タイヤを正規リムに組み込んでタイヤに正規内圧の5[%]の内圧を充填した無負荷状態における溝底からベルト補強層8の外側表面までの距離をいう。ここでは、センター領域の最大溝深さdcを有する周方向主溝22aについて、この溝下ゲージgcが測定される(図3参照)。 【0050】 また、この空気入りタイヤ1では、トレッド部2のトレッドゴムが、タイヤのトレッド面を構成するキャップトレッドゴム層2Aと、このキャップトレッドゴム層2Aのタイヤ径方向内側に配置されるアンダートレッドゴム層2Bとを積層して成る(図4参照)。このとき、トレッド部2のアンダートレッドゴム層2Bが破断伸び420[%]を有することが好ましく、450[%]以上の破断伸びを有することがより好ましい。なお、かかる破断伸びを実現するためのゴム材料の配合は、公知のものが適宜採用され得る。」 (3)引用文献3について 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 (3a) 「【請求項1】 ジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部に対し、アミン系老化防止剤0.5重量部と、ポリフェノール系化合物0.5~8重量部を配合してなるゴム組成物。」 (3b) 「【0002】 空気入りタイヤは、長期間使用中に大気中の酸素やオゾンにより劣化されることで、サイドウォール部やトレッド部の溝底に亀裂が生じ、これが耐久性を悪化させる原因となる。そのため、耐酸化劣化や耐オゾン性を改良するために、タイヤ用ゴム組成物には、各種の老化防止剤が配合されている。その中でも、アミン系老化防止剤は、タイヤのサイドウォールゴムなどの酸化劣化やオゾン劣化を有効に防止する効果を有している。しかしながら、アミン系老化防止剤は、タイヤを茶色あるいは茶褐色に変色させていくため、その外観が悪くなり、タイヤの商品価値が低下するという問題がある。」 (3c) 「【0008】 本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、アミン系老化防止剤による耐オゾン性の改良効果を悪化させることなく、ゴム表面の変色を抑制して外観性を向上することができるゴム組成物を提供することを目的とする。」 (3d) 「【0014】 上記アミン系老化防止剤としては、芳香族第2級アミンが好ましく用いられる。具体的には、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。」 (3e) 「【0028】 該ゴム組成物の用途は、特に限定されないが、トレッドやサイドウォール等のタイヤ、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種ゴム組成物に用いることができる。該ゴム組成物をタイヤに用いる場合、常法に従い、例えば140~180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのサイドウォール部に用いられることが好ましい。 【実施例】 【0029】 以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【0030】 実施例におけるゴム組成物の共通配合は、天然ゴム(RSS#3)50重量部、ブタジエンゴム(宇部興産株式会社製「BR150」)50重量部、HAF級カーボンブラック(東海カーボン株式会社製「シースト3」)60重量部、亜鉛華(三井金属鉱業株式会社製「1号亜鉛華」)3重量部、ステアリン酸(花王株式会社製「工業用ステアリン酸」)2重量部、硫黄(鶴見化学工業株式会社製「5%油処理粉末硫黄」)2重量部、及び、加硫促進剤NS(大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーNS-P」)1重量部とした。 【0031】 アミン系老化防止剤とポリフェノール系化合物は、上記天然ゴム及びブタジエンゴムからなるゴム成分100重量部に対し、下記表1に示す通り配合した。ゴム組成物の調製は、バンバリーミキサーを用いて、常法に従い、ゴム成分に上記各成分を添加し混練することにより行った。表1中の各成分の詳細は以下の通りである。 【0032】 ・アミン系老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6PPD、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」、 ・ポリフェノール系化合物1:リグニン、ナカライテスク株式会社製、 ・ポリフェノール系化合物2:カテキン、太陽化学株式会社製「サンカトール」、 ・ポリフェノール系化合物3:クロロゲン酸、ナカライテスク株式会社製、 ・ポリフェノール系化合物4:タンニン、川村通商株式会社製「タンニン剤ミモザ」、 ・ポリフェノール系化合物5:クルクミン、ナカライテスク株式会社製。」 (4)引用文献4について 引用文献4には、以下の事項が記載されている。 (4a) 「【請求項1】 空隙率50%以上の多孔質中空粒子にアミン系老化防止剤を含浸ないし充填させた多孔質中空粒子とアミン系老化防止剤の事前混合物を、ジエン系ゴムからなるゴム成分に配合してなり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記アミン系老化防止剤を0.5~8質量部、前記多孔質中空粒子を0.1~40質量部含有するゴム組成物。」 (4b) 「【0002】 空気入りタイヤは、長期間使用中に大気中の酸素やオゾンにより劣化されることで、サイドウォール部やトレッド部の溝底に亀裂が生じ、これが耐久性を悪化させる原因となる。そのため、耐酸化劣化や耐オゾン性を改良するために、タイヤ用ゴム組成物には、各種の老化防止剤が配合されている。その中でも、アミン系老化防止剤は、タイヤのサイドウォールゴムなどの酸化劣化やオゾン劣化を有効に防止する効果を有している。しかしながら、アミン系老化防止剤は、タイヤを茶色あるいは茶褐色に変色させていくため、その外観が悪くなり、タイヤの商品価値が低下するという問題がある。」 (4c) 「【0008】 本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、アミン系老化防止剤による耐オゾン性の改良効果を悪化させることなく、ゴム表面の変色を抑制して外観性を向上することができ、長期老化性及び外観性に優れたゴム組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。」 (4d) 「【0016】 上記アミン系老化防止剤としては、芳香族第2級アミンが好ましく用いられる。具体的には、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンなどのp-フェニレンジアミン系老化防止剤、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系老化防止剤、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。」 (4e) 「【0032】 該ゴム組成物をタイヤに用いる場合、常法に従い、例えば140~180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのサイドウォール部に用いられることが好ましい。 ・・・ 【0035】 ・アミン系老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6PPD、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」、 ・多孔質中空粒子1:多孔質中空シリカ、鈴木油脂工業(株)製「ゴッドボールB-6C」(空隙率=91%、平均粒径=2.0~2.5μm、細孔の平均径=5~15nm)、 ・多孔質中空粒子2:アロフェン、品川化成(株)製「セカードKW」(空隙率=80%、平均粒径=3.5~5nm、細孔の平均径=0.3~0.5nm)、 ・多孔質中空粒子3:多孔質中空カーボン、(株)ニューメタルエンドケミカルス製「ナノポーラスカーボン」(空隙率=93%、平均粒径=20~50nm、細孔の平均径=2nm)、 ・多孔質粒子a:ジルコンビーズ、東レ株式会社製「トレセラムジルコンビーズ」(空隙率=4%、平均粒径=400μm)、 ・多孔質粒子b:孟宗竹の竹炭(宮崎土晃株式会社製「1号炭」)をハンマーミルで粉砕し、ふるいにより分級した竹炭粉砕物(空隙率=46%、平均粒径=100μm)、 ・シリカ:東ソー・シリカ株式会社製「ニップシールAQ」、 ・カーボンブラック:HAF、東海カーボン株式会社製「シースト3」。」 (5)引用文献5について 引用文献5には、以下の事項が記載されている。 (5a) 「【請求項1】 ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、アミン系老化防止剤0.5~8質量部と、下記一般式(1)で表されるフェノール化合物0.5~8質量部とを含有するゴム組成物。 【化1】・・・」 (5b) 「【0002】 空気入りタイヤは、長期間使用中に大気中の酸素やオゾンにより劣化されることで、サイドウォール部やトレッド部の溝底に亀裂が生じ、これが耐久性を悪化させる原因となる。そのため、耐酸化劣化や耐オゾン性を改良するために、タイヤ用ゴム組成物には、各種の老化防止剤が配合されている。その中でも、アミン系老化防止剤は、タイヤのサイドウォールゴムなどの酸化劣化やオゾン劣化を有効に防止する効果を有している。しかしながら、アミン系老化防止剤は、タイヤを茶色あるいは茶褐色に変色させていくため、その外観が悪くなり、タイヤの商品価値が低下するという問題がある。」 (5c) 「【0009】 本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、特定の構造を持つフェノール化合物をアミン系老化防止剤とともに用いることにより、耐オゾン性を悪化させることなく、アミン系老化防止剤によるゴム表面の変色を抑制し、なおかつフェノール化合物に起因する変色も抑制して、外観性のより優れたゴム組成物を提供することを目的とする。」 (5d) 「【0018】 上記アミン系老化防止剤としては、芳香族第2級アミンが好ましく用いられる。具体的には、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミンなどのp-フェニレンジアミン系老化防止剤、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、スチレン化ジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系老化防止剤、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤などが挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。」 (5e) 「【0028】 該ゴム組成物をタイヤに用いる場合、常法に従い、例えば140~180℃で加硫成形することにより、各種空気入りタイヤのゴム部分(トレッドゴムやサイドウォールゴムなど)を構成することができる。特には、空気入りタイヤのサイドウォール部に用いられることが好ましい。 ・・・ 【0031】 ・アミン系老化防止剤:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6PPD、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック6C」 ・フェノール化合物1:2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート(下記式(2)で表される。)、住友化学株式会社製「Sumilizer GS」 ・フェノール化合物2:2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(下記式(3)で表される。)、住友化学株式会社製「Sumilizer GM」 ・フェノール化合物3:2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(MBMBP)、大内新興化学工業株式会社製「ノクラックNS-6」 ・フェノール化合物4:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、大内新興化学工業株式会社製「ノクラック200」 ・フェノール化合物5:2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン(DBHQ)、大内新興化学工業株式会社製「ノクラックNS-7」 ・フェノール化合物6:スチレン化フェノール(SP)、大内新興化学工業株式会社製「ノクラックSP-N」。・・・」 (6)引用文献6について 引用文献6には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (6a) 「【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような状況下で、スチールコードに対する初期接着性および耐劣化接着性を向上させたスチールコードコーティング用ゴム組成物、およびこのものを用いたスチールコードとゴム組成物の複合体を提供することを目的とするものである。」 (6b) 「【0026】また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、前記各成分以外に、ゴム業界で通常使用される配合剤を通常の配合量で適宜配合することができる。具体的には、プロセスオイル等の軟化剤、ジフェニルグアニジン等のグアニジン類、メルカプトベンゾチアゾール等のチアゾール類、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等のスルフェンアミド類、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム類などの加硫促進剤、酸化亜鉛(亜鉛華)等の加硫促進助剤、アミン系、フェノール系、あるいはワックス系などの老化防止剤、カーボンブラックやシリカや炭酸カルシウムなどの充填剤、などの配合剤を添加することも可能である。 ・・・ 【0031】本発明は、前記のスチールコードコーティング用ゴム組成物とスチールコードからなるスチールコードとゴム組成物の複合体を提供するものであり、この複合体は、例えば自動車用タイヤやコンベアベルトなどの工業用ゴム製品の性能を向上させるための補強材として好適に用いられる。」 (7)引用文献7について 引用文献7には、以下の事項が記載されている。 (7a) 「【0006】 本発明は、引張物性に優れ、コードとの接着性を向上させることができるコード被覆用ゴム組成物、ならびにそれを用いたカーカスプライおよび/またはベルトを有するタイヤを提供することを目的とする。」 (7b) 「【0038】 本発明は、環境に配慮し、将来の石油の供給量の減少に備えることを目的としており、アロマオイル、ワックス、老化防止剤などの石油資源由来の原材料を含まないことが好ましい。」 (8)引用文献8について 引用文献8には、以下の事項が記載されている。 (8a) 「【0007】 本発明は、前記課題を解決し、環境に配慮し、将来の石油の供給量の減少に備えつつ、良好なスチールコードとの接着性、耐剥離性が得られるスチールコード被覆用ゴム組成物、及び該スチールコード被覆用ゴム組成物及びスチールコードからなるスチールコード/ゴム複合体を有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。」 (8b) 「【0056】 以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。 NR:KR7 カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックH(N330、N2SA:79m2/g、DBP:105ml/100g) シリカ1:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(N2SA:175m2/g) シリカ2:ローディア(株)製のZEOSIL 115Gr(N2SA:115m2/g) ステアリン酸カルシウム:日油(株)製のステアリン酸カルシウム ステアリン酸:日油(株)製の桐 樹脂:住友ベークライト(株)製のPR12686(上記式(1)で表されるカシューオイル変性フェノール樹脂) シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド) 酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛 老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲンFR(アミンとケトンの反応品を精製したものでアミンの残留がないもの、キノリン系老化防止剤) ステアリン酸コバルト:大日本インキ化学工業(株)製のcost-F(コバルト含有量:9.5質量%) 硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄 加硫促進剤DZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDZ(N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) 加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) HMT:大内新興化学工業(株)製のノクセラーH(ヘキサメチレンテトラミン(硬化剤))」 (9)引用文献9について 引用文献9には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (9a) 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、溝下ゲージを小さくして軽量化したものであっても、溝底の耐カット性を向上すると共に、一層の転がり抵抗の低減を可能にした空気入りタイヤを提供することにある。」 (9b) 「【0007】本発明において、溝深さ(d)とは、図2に示すようにトレッド面に対して垂直方向に最深の溝底までの距離をいう。また、溝下ゲージ(t)とは、JATMAに規定されるように、最深の溝底から最外側のベルト層(4u)のコード表面までの距離をいう。以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。 【0008】図1は、本発明の空気入りタイヤを例示し、1はトレッド部、2はナイロンコードやポリエステルコード等の有機繊維コードからなるカーカス層である。カーカス層2は左右一対のビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折返され巻き上げられている。このカーカス層2のタイヤ周方向E,E’に対するコード角度は実質的に90°になっている。カーカス層2のトレッド部1の外側には内側ベルト層4dと外側ベルト層4uの2層のベルト層がタイヤ1周にわって配置されている。これら2層のベルト層4u,4dは、通常スチールコードから構成され、それぞれタイヤ周方向E,E’に対して5~40°の角度で傾斜すると共に互いに層間で交差している。 【0009】また、トレッド部1のゴムはキャップトレッド層1cとアンダートレッド層1dとの2層からなり、表面にはタイヤ周方向E,E’に延びる主溝6と、これと交差する副溝7とが設けられている。主溝6の深さdは、通常、6.0~8.0mmの範囲に設定される。主溝6の溝下ゲージtは、2.5mm以下、好ましくは1.0mm~2.0mmの範囲に設定する。溝下ゲージtの上限を2.5mm以下にすることによりタイヤの軽量化を可能にする。」 (10)引用文献10について 引用文献10には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (10a) 「【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ベルト層に高引張弾性率を有する有機繊維コードを使用して軽量化すると共に、操縦安定性を向上する乗用車用空気入りラジアルタイヤを提供することにある。」 (10b) 「【0006】本発明において、溝深さ(d)とは、図2に示すようにトレッド面に垂直方向に最深の溝底まで測定した距離をいい、溝下ゴム厚さ(t)とは、最深の溝底から最外側のベルト層(4u)のコード表面までの距離をいう。また、無撚状態の引張弾性率と50%伸長時弾性率は、JIS-K6301に規定された方法によって室温条件下で測定した値である。 【0007】以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。図1,図2に示す本発明の乗用車用ラジアルタイヤにおいて、1はトレッド部、2はナイロンコードやポリエステルコード等の有機繊維コードからなるカーカス層である。カーカス層2は左右一対のビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に折り返され巻き上げられている。このカーカス層2のタイヤ周方向EE’に対するコード角は実質的に90°になっている。トレッド部1には、カーカス層2の外側に、後述する超高引張弾性率の有機繊維コードからなる2層の内側ベルト層4dと外側ベルト層4uとが互いにコード方向を交差するように配置されている。また、トレッド部1の表面には、タイヤ周方向に延びる主溝6とこれに交差する副溝7とが設けられている。 【0008】本発明において、主溝6の溝深さdは6.0~8.5mm、溝下ゴム厚さtは0.5~2.5mmのそれぞれ従来の乗用車用ラジアルタイヤの場合よりも小さい範囲に設定する。溝深さdと溝下ゴム厚さtを上記範囲にすることによってトレッド部の厚みを全体的に薄くし、トレッド部のゴム使用量を少なくする。しかも、トレッド部の厚さを薄くしたことによって路面に接するトレッド面とベルト層との間の剪断剛性を高めるため、コーナリングパワーを増大することができる。しかし、溝深さdは浅くしすぎると、摩耗寿命を確保できなくなるため6.0mmを下限とする。また、溝下ゴム厚さtは薄くしすぎると、ベルトコードを保護し、破損故障を防止する機能が低下するため0.5mmを下限とする。」 (11)引用文献11について 引用文献11には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (11a) 「【0004】 本発明の目的は、かかる従来の問題点を解消するもので、操縦安定性を向上させながら、乗心地性を向上させるようにした空気入りタイヤを提供することにある。」 (11b) 「【0023】 本発明において、アンダートレッド層2Bの厚さは0.5~5.0mm、好ましくは1.0~3.0mmに設定するとよい。この厚さが0.5mm未満では、乗心地性を向上させることが難しくなり、5.0mm超では、タイヤ重量が増加する原因になる。 ・・・ 【0026】 また、外側ゴム層2Soに対する主溝8の溝下ゲージh1(図2参照)を0.7~2.0mm、好ましくは1.0~1.5mmに設定するとよい。溝下ゲージh1が0.7mm未満にすると、主溝8の溝下からクラックが発生し易くなり、2.0mm超にすると、操縦安定性の向上効果が低下すると共にタイヤ重量増加の原因になる。 【0027】 さらに、内側ゴム層2Siに対する主溝8の溝下ゲージh2(図2参照)を0.5~2.0mm、好ましくは0.7~1.2mmに設定するとよい。溝下ゲージh2が0.5mm未満にすると、主溝8の溝下からクラックが発生し易くなり、2.0mm超にすると、乗心地性の向上効果が低下すると共にタイヤ重量増加の原因になる。」 (12)引用文献12について 引用文献12には、サブトレッドの厚みが、0.177mm~0.685mmであること等(特許異議申立書に添付された「引用文献第12号証の翻訳文」という表題が付された書類に記載された事項等)が、開示されているといえる。 (13)引用文献13について 引用文献13には、以下の事項が記載されている。 (13a) 「【請求項1】 カルボキシル基により主鎖変性したスチレンブタジエンゴムを10重量%以上含むジエン系ゴム100重量部に対し、BET比表面積が70~300m2/gであるシリカを10~120重量部配合したタイヤ用ゴム組成物。 【請求項2】 前記ジエン系ゴム100重量部に対し、粘着性付与樹脂を1~30重量部配合した請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。」 (13b) 「【0005】 本発明の目的は、転がり抵抗及びグリップ性能を共に従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。」 (13c) 「【0021】 粘着性付与樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し好ましくは1~30重量部、より好ましくは2~30重量部である。粘着性付与樹脂の配合量が1重量部未満であると、グリップ性能を十分に高くすることができない。また、シリカの取り込み性を改良する効果が十分に得られない。粘着性付与樹脂の配合量が30重量部を超えると、転がり抵抗が悪化するため好ましくない。なお、粘着性付与樹脂は軟化剤としての作用も行うため、粘着性付与樹脂の配合量に応じて、アロマオイル等の他の軟化剤の配合量を加減するとよい。 【0022】 本発明において、粘着性付与樹脂とは、ゴム組成物への粘着付与性を有する樹脂であり、一般には分子量が数百から数千の熱可塑性樹脂で、上述したジエン系ゴムに配合することによって粘着性を付与する作用を行う。粘着性付与樹脂としては、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が例示される。なかでもテルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂が好ましい。」 (14)引用文献14について 引用文献14には、以下の事項が記載されている。 (14a) 「2.特許請求の範囲 (1) 天然ゴム及びジエン系合成ゴムよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のゴムに、アミン系老化防止剤、パラフィン系ワックスを含むゴム組成物において、前記ゴム100重量部に対しエステル型あるいはソルビタンエステル型の非イオン性界面活性剤を1~3重量部を配合したことを特徴とする外観が改良されたゴム組成物。」(1頁左下欄4~12行) (14b) 「(従来の技術) 例えばタイヤには耐候性の面からジエン系合成ゴムを使用しており、オゾンや酸素による老化防止を目的として、アミン系老化防止剤やパラフィン系のワックスが多量に配合されている。ところがこれらの老化防止剤は短期間にブルーム現象を起しやすいため、タイヤ走行中にタイヤ表面を変色させ、外観を著しく悪くし、ひいてはタイヤ自体の性能さえ疑われることになる。 そこで、上記のブルーム現象を防止するために、一般にはアミン系老化防止剤やパラフィン系のワックスの配合量を減量したり、あるいはシリコン系塗布剤をタイヤ表面に塗布するようなことが行なわれている。また上記方法とは別に特定の老化防止剤を使用することによりブルーム現象を防止するようにしたものが特開昭61-44004号として知られている。 (発明が解決しようとする問題点) 前記従来技術のうち、アミン系老化防止剤やパラフィン系のワックスを減量すると、タイヤの耐候性を著しく低下させるし、塗布剤を塗布するものにあってはあまり効果がない。 本発明は、上記問題点を解決し、従来のアミン系老化防止剤、パラフィン系ワックスを減量することなく、従って耐候性を充分保持させながらブルーム現象を起生させないようにすることを目的としたゴム組成物を提供することを目的とする。」(1頁左下欄18~2頁左上欄4行) (14c) 「本発明において使用するアミン系老化防止剤としては、例えばN-フェニル-N’-(1.3ジメチルブチル)-P-フェニレンジアミン(以下6Cという),N-フェニル-N’-イソプロピル-P-フェニレンジアミン(以下3Cという)を例示できる。 本発明において使用する非イオン性界面活性剤としては次のものが例示できる。 商品名         主成分     HLB値 (日本油脂(株)製) A:OP-85R ソルビタンオレイン酸  1.8 トリエステル B:SP-60R ソルビタンステアリン酸 4.7 モノエステル C:RP-40R ソルビタンパルミチン酸 6.7 モノエステル D:S-2    ポリオキシエチレン   8.0 ステアリン酸エステル」(2頁右上欄7~24行) (15)引用文献15について 引用文献15には、以下の事項が記載されている。 (15a) 「【請求項1】 イネ科植物から抽出される天然ワックスをゴム100重量部当り0.1~10重量部配合してなるゴム組成物。」 (15b) 「【0002】 【従来の技術】天然ゴム、合成ゴム等のゴムはその置かれた環境によって、経時的に老化を起こし、亀裂を生じたり硬化したりして本来の性質が低下する。このようなゴムの老化を引き起こす外部的な原因としては、酸素やオゾン、酸化性物質、熱、光、放射線、金属類、機械的疲労等が挙げられ、これらがゴムの組成等の内部因子とも相俟って老化を起こすと考えられている。 【0003】こうしたゴムの老化を防止するために、様々な老化防止剤が用いられており、大別すると、アミン系の老化防止剤やフェノール系の老化防止剤、そしてワックス系老化防止剤等が有る。これらはゴム組成物の使用目的等に応じて単独あるいは相互に混合して用いられる。 【0004】ワックス系老化防止剤についてはパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスの融点の高いものの中に耐オゾン性、耐日光性の高いものが有り、老化防止剤中のワックス成分として広く用いられている。 【0005】このような老化防止剤としてのパラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックスはそのブルーム性によって時間の経過とともにゴム組成物表面に析出し、外部の酸素やオゾン、酸化性物質等の影響を防ぐ役割を果たしている。ところが、これらのブルーミングの著しい老化防止剤は、多くの場合、ゴム組成物表面に析出した結晶が白化して製品の外観を損なう上、析出によって老化防止効果が低下していく等の問題が有り、老化防止効果の持続性の面から考えてもできるだけブルームを抑えることが望ましい。しかしながら、必ずしも満足するものはなかった。」 (15c) 「【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる従来技術の課題を解決すべくなされたもので、ワックスブルーム量の抑制された耐候性、耐久性の優れたゴム組成物を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者等はかかる現状に鑑み、ゴム組成物の製造において、従来の鉱油系ワックスに代わるブルーム性の制御されたワックス類について検討を重ねた結果、イネ科植物から抽出される天然ワックスが極めて有効であることを見い出し、さらに検討を加え、イネ科植物から抽出される天然ワックスを用いることにより、ワックスブルーム量の抑制された耐候性、耐久性の優れたゴム組成物を開発し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明の第一はイネ科植物から抽出される天然ワックスをゴム100重量部当り0.1~10重量部配合してなるゴム組成物に関する。また本発明の第二は、該ワックスがエステル中のアルコール成分が主として炭素数26、28、30および32の直鎖状高級アルコールからなり、少なくとも炭素数28のアルコールを20~90重量%(全アルコール成分の合計に対して)含有するものであり、そしてエステル中の脂肪酸成分が炭素数16、18および20の直鎖状高級脂肪酸を含み、少なくとも炭素数18および炭素数20の脂肪酸を合計で20~80重量%(全脂肪酸成分の合計に対して)含有するエステルからなる精製ワックスであることを特徴とするゴム組成物に関する。」 (15d) 「【0013】イネ科植物から抽出される天然ワックスの配合量は、前記ゴム100重量部当り0.1~10重量部である。0.1重量部未満では添加効果が小さく、一方10重量部を越えるとゴム組成物の機械的強度が低下する。」 2-2 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 (ア) 引用発明の「2層構造のトレッド部」は、「タイヤの径方向の外側に配置され」る「キャップゴム(C)」と、「その内側に配置されているベースゴム(B)」とからなるものであり、これらの「ゴム」は、いずれも「トレッド部」の構成部材であり、かつ、「タイヤ部材」であるといえるから、引用発明の「キャップゴム(C)」及び「ベースゴム(B)」は、それぞれ、本件発明1の「キャップトレッド」及び「ベーストレッド」に相当し、かつ、本件発明1の「2種のタイヤ部材」にも相当する。 このことを踏まえると、引用発明の「タイヤの径方向の外側に配置され、外側に開口している溝が形成されているキャップゴム(C)と、その内側に配置されているベースゴム(B)とからなる2層構造のトレッド部を有する空気入りタイヤであ」る構成と、本件発明1の「トレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材と、ジョイントレスバンドとを有し」ている構成とは、「トレッド部を有する空気入りタイヤであって、前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材を有し」ている構成の限りで共通しているといえる。 (イ) 引用発明の「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物」及び「前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物」は、それぞれ、本件発明1の「前記キャップトレッド」が「キャップトレッド用ゴム組成物からな」ること、及び、「前記ベーストレッド」が「ベーストレッド用ゴム組成物からな」ることに相当しているといえるから、引用発明の「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物」及び「前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物」を有する構成と、本件発明1の「前記キャップトレッド、前記ベーストレッド、及び前記アンダートレッドが、それぞれ、キャップトレッド用ゴム組成物、ベーストレッド用ゴム組成物、及びアンダートレッド用ゴム組成物からな」る構成とは、「前記キャップトレッド、及び前記ベーストレッドが、それぞれ、キャップトレッド用ゴム組成物、及びベーストレッド用ゴム組成物からな」る構成の限りで共通しているといえる。 (ウ) 引用発明においては、「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]は、1[重量部]以下であ」る。 ここで、引用発明の「キャップゴム(C)を構成するゴム組成物」は、ゴム成分100重量部にさらに他の材料(カーボンブラックなど)を加えたものであるから(引用文献1の段落【0046】の表1のキャップゴム(C)材料等も参照)、100重量部よりも大きい重量部となっているといえることを踏まえて、当該「アミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]」を、「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物」中の質量%に換算すると、100重量部よりも大きい重量部に対する1[重量部]以下の重量部の質量%となるから、1.8質量%以下になることは明らかである。 また、引用発明の「アミン系老化防止剤」は、「N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)」であり、本件発明1の「フェニレンジアミン系老化防止剤」に相当する。 したがって、引用発明の「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]は、1[重量部]以下であり、前記アミン系老化防止剤は、N-フェニル-N’-1,3-ジメチルブチル-p-フェニレンジアミン(6PPD)である」構成は、本件発明1の「前記キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が1.8質量%以下であ」る構成に相当する。 以上から、本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「トレッド部を有する空気入りタイヤであって、 前記トレッド部が、キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材を有し、 前記キャップトレッド及び前記ベーストレッドが、それぞれ、キャップトレッド用ゴム組成物及びベーストレッド用ゴム組成物からなり、 前記キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が1.8質量%以下である空気入りタイヤ。」 <相違点> 本件発明1は、 「ジョイントレスバンドを有し」、「前記ジョイントレスバンドが、繊維コードを繊維コード被覆用ゴム組成物で被覆されてなり」、「前記キャップトレッド、前記ベーストレッド、前記アンダートレッド、及びジョイントレスバンド上層のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量が下記式(I)を満たし」、「トレッド主溝底部のサブトレッド厚みが0.5~2.0mmである」 「【数1】 式(I):1.35≦(トレッド主溝底部におけるキャップトレッドのゴム厚み(mm)×キャップトレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるベーストレッドのゴム厚み(mm)×ベーストレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるアンダートレッドのゴム厚み(mm)×アンダートレッド用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)+トレッド主溝底部におけるジョイントレスバンド上層のゴム厚み(mm)×繊維コード被覆用ゴム組成物中のフェニレンジアミン系老化防止剤の含有量(質量%)))/トレッド主溝底部のサブトレッド厚み(mm)≦6.0」であるのに対して、 引用発明は、 「前記キャップゴム(C)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φc[重量部]、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb[重量部]、前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部における前記キャップゴム(C)の厚みdc[mm]、及び前記キャップゴム(C)に形成されている溝の底部の直下における前記ベースゴム(B)の厚みdb[mm]が、以下の式(1)及び(2): Φb/Φc≧1.2                 (1) (Φc×dc+Φb×db)/(dc+db)≧1.4  (2) の関係を同時に満足し、 前記ベースゴムの内側に配置されているベルト又はブレーカーにおけるコード被覆用ゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φs[重量部]と、前記ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb[重量部]とが、以下の式(3): Φs≧Φb                     (3) の関係を満足し」ているが、 ゴム組成物に対するアミン系老化防止剤の配合量、ジョイントレスバンドを設けること、及び、トレッド主溝底部のサブトレッド厚みは、特定されていない点。 なお、本件発明1において、「キャップトレッド、ベーストレッド、及びアンダートレッドからなる群より選択される少なくとも2種のタイヤ部材」の「少なくとも2種のタイヤ部材」として、「キャップトレッド」及び「ベーストレッド」を「選択」した場合は、当該「アンダートレッド」に係る、本件発明1の「前記アンダートレッドが、アンダートレッド用ゴム組成物からなり」、「前記アンダートレッド用ゴム組成物が、ゴム成分100質量部に対して、硫黄を1.8~6.0質量部含」むという構成は、相違点であるとはいえない。 イ 判断 相違点について、以下、検討する。 (ア) 本件発明1は、老化防止剤に関して、必要とするブルーム量等を維持しつつ、さらに、硫黄、イオン界面活性剤、石油由来ワックスないし軟化剤等のゴム成分以外の成分に対する老化防止剤の配合割合をも調整することができ、ブルーム量等を好適にコントロールできるようにすること(第4 2 2-1(4)ア(エ)を参照。以下、「ブルーム量に関する課題」ともいう。)で、「トレッド主溝底部のサブトレッド厚みを薄くしたタイヤを保管した場合であっても、良好なTGC性能を有しつつ、変色を防止できる空気入りタイヤを提供すること」を課題とし、溝底の各層のゴム厚みに関連してゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成(式(I))を採用したものである。 (イ) a 引用発明は、「老化防止剤のトレッド表面への浸出による変色が少なく、かつ、トレッド表面に形成されている溝の底部におけるクラックの発生も少ない、空気入りタイヤを提供すること」(摘記(1c)の段落【0011】)を課題とし、ゴム成分に対する老化防止剤の配合割合を規定している。 具体的には、引用発明は、(1)式及び(2)式に加え、「ベースゴムの内側に配置されているベルト又はブレーカーにおけるコード被覆用ゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φs[重量部]と、ベースゴム(B)を構成するゴム組成物におけるゴム成分100重量部に対するアミン系老化防止剤の配合量Φb[重量部]とが」、「Φs≧Φb」((3)式)となるように(上記アの相違点に係る引用発明の構成を参照)、コード被覆用ゴムのゴム成分に対する老化防止剤の配合量とベースゴムのゴム成分に対する老化防止剤の配合量との割合を規定することで、上記の課題が解決できるものである。 そうすると、引用発明は、あくまでも、ゴム成分に対する老化防止剤の配合割合を規定すべきものであって、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する必要はないといえる。 b タイヤは、その用途などに対応するように種々の成分の配合割合を必要に応じて調整するものであり、引用発明においても、ゴム以外の他の成分(例えばカーボンブラック)の配合割合を調整することは、当業者が通常行うことであるといえる。 そして、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を必要な範囲に規定しないと、充分なTGC性能が得られないおそれがある旨(本件明細書の段落【0045】)、及び、老化防止剤がブルームし、TGC性能も改善できる旨(同段落【0046】)が示されていることから、引用発明において、ゴム以外の他の成分(例えばカーボンブラック)の配合割合を調整すると、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合が変動してしまい、必要とするブルーム量等を維持することができなくなってしまう虞があると考えられるが、引用文献1には、そのような記載や示唆はない。 c したがって、引用文献1と本件発明1とは、溝底のクラックに着目するなど、課題が一部共通するものではあるが、引用文献1には、本件発明1の課題(上記(ア)、特に、ブルーム量に関する課題)及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 (ウ) 本件発明1の課題ないし構成(上記(ア))が、引用文献2~15に記載さているか否かについて、以下検討する。 a 引用文献3には、「空気入りタイヤは、長期間使用中に大気中の酸素やオゾンにより劣化されることで、サイドウォール部やトレッド部の溝底に亀裂が生じ、これが耐久性を悪化させる原因となる」(摘記(3b))という問題を踏まえ、「アミン系老化防止剤による耐オゾン性の改良効果を悪化させることなく、ゴム表面の変色を抑制して外観性を向上することができるゴム組成物を提供すること」(摘記(3c))を課題とし、「ジエン系ゴムからなるゴム成分100重量部に対し、アミン系老化防止剤0.5重量部と、ポリフェノール系化合物0.5~8重量部を配合してなるゴム組成物」(摘記(3a))の構成を採用することが記載されている。 引用文献4には、引用文献3と同様の問題(摘記(4b))を踏まえ、「アミン系老化防止剤による耐オゾン性の改良効果を悪化させることなく、ゴム表面の変色を抑制して外観性を向上することができ、長期老化性及び外観性に優れたゴム組成物、及びその製造方法を提供すること」(摘記(4c))を課題とし、「空隙率50%以上の多孔質中空粒子にアミン系老化防止剤を含浸ないし充填させた多孔質中空粒子とアミン系老化防止剤の事前混合物を、ジエン系ゴムからなるゴム成分に配合してなり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記アミン系老化防止剤を0.5~8質量部、前記多孔質中空粒子を0.1~40質量部含有するゴム組成物」(摘記(4a))の構成を採用することが記載されている。 引用文献5には、引用文献3と同様の問題(摘記(5b))を踏まえ、「特定の構造を持つフェノール化合物をアミン系老化防止剤とともに用いることにより、耐オゾン性を悪化させることなく、アミン系老化防止剤によるゴム表面の変色を抑制し、なおかつフェノール化合物に起因する変色も抑制して、外観性のより優れたゴム組成物を提供すること」(摘記(5c))を課題とし、「ジエン系ゴムからなるゴム成分100質量部に対し、アミン系老化防止剤0.5~8質量部と、・・・フェノール化合物0.5~8質量部とを含有するゴム組成物」(摘記(5a))の構成を採用することが記載されている。 しかしながら、これらの引用文献で採用している構成は、いずれも、引用発明と同様に、ゴム成分に対する老化防止剤の配合割合を規定するものであって、これらの引用文献には、必要とするブルーム量等を維持しつつ、さらに、ゴム成分以外の成分に対する老化防止剤の配合割合をも調整することができ、ブルーム量等を好適にコントロールできるようにすることについては記載されていない。 したがって、上記(イ)と同様であり、これらの引用文献のものは、溝底のクラックに着目するなど、課題に関しては本件発明1と一部共通するものではあるが、これらの引用文献には、本件発明1の課題(上記(ア)、特に、ブルーム量に関する課題)及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 b 引用文献14には、「耐候性を充分保持させながらブルーム現象を起生させないようにすることを目的としたゴム組成物を提供すること」(摘記(14b))を課題とし、「天然ゴム及びジエン系合成ゴムよりなる群の中から選ばれた少なくとも1種のゴムに、アミン系老化防止剤、パラフィン系ワックスを含むゴム組成物において、前記ゴム100重量部に対しエステル型あるいはソルビタンエステル型の非イオン性界面活性剤を1~3重量部を配合したことを特徴とする外観が改良されたゴム組成物」(摘記(14a))の構成を採用することが記載されている。 引用文献15には、「ワックス系老化防止剤について」、「ワックスブルーム量の抑制された耐候性、耐久性の優れたゴム組成物を提供すること」(摘記(15b)及び(15c))を課題として、「イネ科植物から抽出される天然ワックスをゴム100重量部当り0.1~10重量部配合してなるゴム組成物」(摘記(15a))を採用することが記載されている。 しかしながら、いずれの引用文献も、溝底のクラックに着目するものではなく、ゴム100重量部に対して樹脂、界面活性剤ないしワックスの配合割合を規定するものであり、本件発明1の課題(上記(ア))及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 c 引用文献2には、ジョイントレスバンドに関する技術が記載されているが(摘記(2b))、本件発明1の課題及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 引用文献6、7及び8には、いずれも、タイヤ用のコードとそれを被覆するゴム組成物との接着性を改善する旨の課題(摘記(6a)、(7a)及び(8a))が示され、そのゴム組成物に老化防止剤を配合すること(摘記(6b))も示唆されているが、これらのいずれの引用文献にも、本件発明1の課題及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 引用文献9、10、11及び12には、それぞれ、溝底のゴム厚みに関する技術が記載されているが(摘記(9b)、(10b)及び(11b)等)、これらのいずれの引用文献にも、本件発明1の課題及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 引用文献13には、「転がり抵抗及びグリップ性能を共に従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供すること」(摘記(13b))を課題とし、「ジエン系ゴム100重量部に対し」、「フェノール樹脂」を含む「粘着性付与樹脂を1~30重量部配合した」「タイヤ用ゴム組成物」(摘記(13a)及び(13c))の構成を採用することが記載されているが、本件発明1の課題及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 (エ) 特許権者は、平成30年4月20日に提出された意見書において、老化防止剤量を組成物中の含有割合(質量%)として表すことは周知である旨主張し、その根拠として、乙第4~7号証(以下それぞれ「乙4~7」という。)を提出しているので、これら乙4~7に、本件発明1の課題ないし構成(上記(ア))が記載さているか否かについても、念のため、検討することにする。 a 乙4(特許第3548169号公報)には、以下の記載がある。 「【請求項1】 空気入りタイヤのトレッド部を少なくとも部分的に構成するゴム部材を、タイヤ表面側の外側層と、カーカス側の内側層の少なくとも二層に構成し、外側層の老化防止剤の配合量(X)は組成物全体の0.4~1.6質量%の範囲であり、かつ、外側層の老化防止剤の配合量(X)と、内側層の組成物全体に対する老化防止剤の配合量(Y)は、次の式(1)を満足することを特徴とする空気入りタイヤ。 Y≧-0.4X2+2X (1) ・・・ 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は上記従来の問題点を解決するもので、長期間に亘り空気入りタイヤを使用した場合においても、ゴムの劣化が少なくタイヤ表面の変色が軽減された空気入りタイヤに関し、さらには、空気入りタイヤのトレッド部において、長期に亘って使用してもグリップ性能の低下が抑制された、トレッド部のゴム組成物に関する。 ・・・ 【0018】 上述のとおり内側層の老化防止剤の配合量と外側層の老化防止剤の配合量とが次の式 Y≧-0.4X2+2X (1) を満足することによって、タイヤの長期間使用において老化防止剤が内側層から外側層に徐々に移行するため、老化防止効果を維持することができる。さらには、走行による圧縮、伸長および摩擦などの刺激や内部発熱による抵抗性を長期に高め、初期のグリップ性能を維持することができる。 ・・・ 【0029】 さらに空気入りタイヤのトレッド部のゴム部材の要求特性に応じて一般的な配合剤たとえば可塑剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、架橋剤および加硫促進剤を適宜選択し、所定量配合することができる。」 しかしながら、乙4は、溝底のクラックに着目したものではないし(段落【0010】)、他の成分を併せて配合できることは記載されているものの(段落【0029】)、老化防止剤と他の成分との配合割合については記載されていない。 したがって、乙4には、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定することは記載されているが、本件発明1の課題(特に、良好なTGC性能を有すること)は記載されておらず、当該課題を解決するために、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定するものではない。 b 乙5(特開平11-278008号公報)には、以下の記載がある。 「【請求項1】 タイヤトレッドの少なくとも最外溝底の径内側でかつ周方向全周にわたり老化防止剤増量材を埋設したことを特徴とする空気入りタイヤ。 【請求項2】 前記老化防止剤増量材が4~6重量%の老化防止剤を配合したゴム組成物であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。 ・・・ 【0004】 【発明が解決しようとする課題】この現象を防ぐために、トレッドゴムの老化防止剤を通常量(ゴム成分全体の2重量%程度)以上に増量することで解決をはかろうとすれば、前記老化防止剤は短期間でブルーム現象をおこし、早期の茶変色を招きやすい。前記最外溝底の亀裂を防止するためにトレッドゴムに老化防止剤を増量すると、上述の早期の茶変色の他にも次の問題が生ずる。すなわちタイヤの構造において、トレッドゴムはトレッド全体を覆っているため、トレッドゴムに老化防止剤を増量すると高コストである。また老化防止剤を、老化の最も激しい最外溝底近傍に集中して配分させることはタイヤの生産工程上困難である。加えて、加硫工程における金型成形の際の高温、またその際のトレッド部ゴムの流動が原因となって老化防止剤は失われ易く、効果は少ない。 ・・・ 【0006】また、前記老化防止剤増量材は4~6重量%の老化防止剤を配合してなるゴム組成物である(請求項2)。 先述した通り、通常タイヤに使われるゴム組成物に老化防止剤は2重量%程度配合されている。この量の2~3倍を配合することにより、前記増量材は他の部材と比較して最も多量に老化防止剤を含有することになる。従って最も老化、亀裂が激しい最外溝底に対し、老化防止剤供給源としての役目を果たせる。 ・・・ 【0010】本発明における老化防止剤増量材6は、主にトレッド最外溝7Aの底である最外溝底7に効果的に老化防止剤を供給することが目的である。最外溝底7はトレッド2の最も幅方向外側で、ショルダー部と近接する位置にあり、タイヤの挙動によって最も亀裂が発生し易い部位であることから、前記増量材6は最外溝底7の径内側でかつ周方向全周にわたり埋設されることが必要である。」 しかしながら、乙5は、「タイヤトレッドの少なくとも最外溝底の径内側でかつ周方向全周にわたり」(請求項1)、「老化防止剤増量材が4~6重量%の老化防止剤を配合したゴム組成物」を埋設するものであり(請求項2)、トレッドを構成する各ゴム層についてゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定するものではないし、老化防止剤と他の成分との関連も記載されていない。 したがって、乙5には、本件発明1の課題(上記(ア)、特に、ブルーム量に関する課題)及び溝底の各層のゴム厚みに関連してゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 c 乙6(特許第5937457号公報)には、以下の記載がある。 「【請求項1】 劣化試験中に、加硫ゴム組成物中の老化防止剤を減少させながら該加硫ゴム組成物の劣化を進行させることを特徴とする老化防止剤を含有する加硫ゴム組成物の劣化試験方法。 ・・・ 【0004】 一方、特にタイヤに使用されるゴムにおいては、市場においてゴム肌にひび割れ(クラック)が生じる現象がクレームの対象となっている。しかし、上述の試験では、この現象の発生について充分評価できていなかった。 ・・・ 【0007】 本発明は、上記課題を解決し、老化防止剤を含有するゴムにおける老化防止剤の減少を短期間で再現可能な劣化試験方法を提供することを目的とする。」 しかしながら、乙6は、溝底のクラックに着目したものではないし(段落【0004】)、そもそも試験方法である。 したがって、乙6には、本件発明1の課題(上記(ア))及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 d 乙7(特開2012-180387号公報)には、以下の記載がある。 「【請求項1】 ゴム成分100質量部に対して、N,N’-ビス-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミンを0.2~7質量部含有するベーストレッド用ゴム組成物。 ・・・ 【0003】 老化防止剤6Cはアミン系老化防止剤の一種であり、他の老化防止剤と比較して、優れた耐オゾン性を有している。タイヤのトレッドゴムに老化防止剤6Cを多量に配合することで、オゾン劣化に由来する亀裂の発生や成長をより抑制することができる。しかし、老化防止剤6Cは、ゴム表面にブルーム(析出)して揮発し易い傾向があり、また、ゴム表面が老化防止剤6Cに由来する茶色に変色するなどの問題がある。トレッドをキャップトレッド及びベーストレッドからなる2層構造とし、ベーストレッドに老化防止剤6Cを配合した場合であっても、ベーストレッドからキャップトレッドに老化防止剤6Cが移行して、キャップトレッド表面の変色が発生する場合がある。 【0004】 走行頻度の高い車両に装着されたタイヤにおいては、トレッド表面は摩耗により新しいゴム表面が現れるため、ゴム表面の変色の問題は大きくないが、走行頻度の少ない車両に装着されたタイヤや、摩耗しないトレッド溝底部においては、ゴム表面の変色によって外観が損なわれるという問題がある。 【0005】 ゴム表面での変色を防止するため、老化防止剤6Cの配合量を少なくしたり、老化防止剤6Cをアミン系以外の老化防止剤に置き換えると、充分な耐オゾン性が確保できなくなり、亀裂やゴム欠けなどのゴムの破壊が発生し易くなるおそれがある。このように、良好な耐オゾン性を確保しながら、ゴム表面の変色を抑制することは困難であった。 ・・・ 【0008】 本発明は、前記課題を解決し、良好な耐オゾン性を確保しながら、キャップトレッド表面の変色(茶色化、白色化)を抑制できるベーストレッド用ゴム組成物、及びこれを用いて作製したベーストレッドを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。」 しかしながら、乙7は、溝底のクラックに着目したものではないし、ゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定するものでもない。 したがって、乙7には、本件発明1の課題(上記(ア))及びゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成は記載されていない。 (オ) 上記(イ)~(エ)のとおりであって、上記のいずれの文献にも、本件発明1の課題(上記(ア))は記載されておらず、その課題を解決するためにゴム組成物中の老化防止剤の配合割合を規定する構成も記載されていないから、ジョイントレスバンドを適用することや、溝底のゴムの厚さを規定することなどについて検討するまでもなく、引用発明において、上記(ア)で示した課題を解決するために、トレッド溝底からジョイントレスバンドまでという特定の場所において、各層の厚さと関連付けて、ゴム組成物に対する老化防止剤の含有量を、具体的な範囲(質量%の範囲)で規定すること、すなわち、上記相違点1に係る本件発明1の構成の式(I)を想到することは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 ウ 小括 したがって、本件発明1は、引用発明及び引用文献1~15に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2)本件発明2~9について 本件発明2~9は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本件発明1と同様に、引用発明及び引用文献1~15に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 3 小括 以上のとおり、本件発明1~9は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとはいえないから、本件発明1~9に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。 したがって、上記1の特許異議申立人の主張(特許異議申立書に記載した特許異議申立理由)は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(審決の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700699

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