特許異議申立
2017-700680
放熱性に優れる高吸油性窒化ホウ素粉末および化粧料
- 審判番号
- 2017-700680
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-207445外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月11日
- 審決日
- 2018年03月30日
- 公報発行日
- 2018年06月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】水島合金鉄株式会社
- 【権利者代理人】杉村 憲司
- 【権利者代理人】川原 敬祐
- 【権利者代理人】吉田 憲悟
- 【異議申立人】特許業務法人 藤央特許事務所
- 分類
- P1651.121-YAA(C01B) / P1651.113-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6060060号発明「放熱性に優れる高吸油性窒化ホウ素粉末および化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6060060号の明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。
特許第6060060号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
I.手続の経緯
特許第6060060号の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成25年10月2日(優先権主張平成24年10月11日)を出願日とするものであり、平成28年12月16日に特許権の設定登録がなされ、平成29年7月11日付けで特許異議申立人の特許業務法人 藤央特許事務所より特許異議申立書が提出され、同年10月2日付けの取消理由を特許権者の水島合金鉄株式会社に通知し、特許権者より同年12月8日付けで訂正請求及び意見書が提出され、同年12月21日付けの通知書を特許異議申立人に通知したところ、これに対して特許異議申立人より平成30年1月19日付けで意見書が提出されたものである。
II.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年12月8日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下の(a)(b)のとおりである。
(a) 訂正事項1
本件特許明細書の【0027】の記載につき、「そこで、本発明では、定量的な方法として粉体の浸透性、ぬれ性解析装置(株式会社三ツワフロンテック製)を用い、JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験を採用することにした。」を、「そこで、本発明では、定量的な方法として粉体の浸透性、ぬれ性解析装置を用い、透水試験を採用することにした。」と訂正する。(当審注:下線は訂正箇所を示すものであり、特許権者が付与した。以下同じ。)
(b) 訂正事項2
本件特許明細書の【0040】の記載につき、「JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験を行い、その時の水の浸透速度を測定した。具体的には、粉体湿潤浸透解析装置PW-500(三ツワフロンテック製)を使用し、内径10mmのカラムに粉末1gを充填して、下部の接液面からの「ぬれ高さ」を経過時間毎に測定して、浸透速度を算出した。」を、「透水試験を行い、その時の水の浸透速度を測定した。具体的には、粉体湿潤浸透解析装置PW-500を使用し、内径10mmのカラムに粉末1gを充填して、下部の接液面からの「ぬれ高さ」を経過時間毎に測定して、浸透速度を算出した。」へと訂正する。
(2)訂正の原因
上記訂正事項1及び訂正事項2を併せて検討する。
ア 訂正の目的
乙第1号証(PW-500)からして、「株式会社三ツワフロンテック」が販売代理店であり、この装置の製造会社でないことは明らかであり、また、乙第1号証(PW-500)及び「JIS A 6909 (透水試験B法)」からして、「PW-500」が「JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験」でないことも明らかであるので、訂正事項1及び訂正事項2は、この明らかでない(不明瞭な)記載についてこれを削除するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明りょうでない記載の釈明」を目的とするものである。
イ 拡張、変更、新規事項
上記「ア」の理由から明らかなように、訂正事項1及び訂正事項2は、不明瞭な記載を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものであり、また、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ 明細書の訂正と関係する請求項について
願書に添付した明細書の【0027】は訂正事項1を含み、同【0040】は訂正事項2を含むものであり、これらは、本件請求項1ないし6に係る発明の発明特定事項の「吸油量」(水の浸透速度)と関係するものである。
エ 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する事項を目的とするものであり、かつ、同法同条の5第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正することを認める。
III.本件特許発明について
上記のとおり本件の発明の詳細な説明の記載の訂正が認められるところ、本件特許請求の範囲の請求項1ないし6に係る発明(以下「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のものである。
「【請求項1】
扁平形状をなすBNの一次粒子からなり、平均粒径が3~20μmで、かつ該一次粒子のアスペクト比(長径/厚さ)が5~20、厚さの平均値が0.1μm以上であり、しかも吸油量が100ml/100g~500ml/100gであることを特徴とする化粧料用の高吸油性窒化ホウ素粉末。
【請求項2】
水の浸透速度が1mm2/s未満の高撥水性を有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料用の高吸油性窒化ホウ素粉末。
【請求項3】
可溶性ホウ素量が100ppm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧料用の高吸油性窒化ホウ素粉末。
ここに、可溶性ホウ素量は、医薬部外品原料規格2006の規定に準拠して、窒化ホウ素粉末2.5gをテフロン(登録商標)製ビーカーに秤取りエタノール10mlを加えて良くかき混ぜ、さらに新たに煮沸した冷却した水40mlを加えてかき混ぜた後、50℃で1時間加温し、その後この液を濾過し、この濾液中のB量を測定することにより求める。
【請求項4】
比表面積が1~20m2/gで、酸素含有量が1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の化粧料用の高吸油性窒化ホウ素粉末。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の窒化ホウ素粉末を含有する化粧料。
【請求項6】
前記化粧料における前記窒化ホウ素粉末の含有量が1~60質量%であり、塗膜の熱伝導率が0.1~5.0W/m・Kであることを特徴とする請求項5に記載の化粧料。」
IV.特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において以下で示す甲第1号証ないし甲第14号証を、また、平成30年1月19日付け意見書において参考資料1ないし参考資料5を証拠方法として提出すると共に、以下で示す異議申立理由の(A)ないし(F)(当審注:「(A)」ないし「(F)」については当審が付与した。)を主張する、ものである。
ア 証拠方法
・甲第1号証:特開2012-176910号公報
・甲第2号証:窒化ホウ素微粒子製品データカタログ型番MK-PC-1111101、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社、発行:2011年11月、写し
・甲第3号証:特開平11-181329号公報
・甲第4号証:Standard Test Method for Oil Absorption of Pigments by Gardner-Coleman Method、ASTM-D1483-95、写し
・甲第5号証:特開2004-67500号公報
・甲第6号証:特開2007-176936号公報
・甲第7号証:粉体湿潤浸透解析装置PW-500製品カタログ、協和界面科学株式会社、発行:2010年01月、写し
・甲第8号証:JIS A 6909及び附属書A、写し
・甲第9号証:特願2014-538117号に対応する国際公開第2014/049956号
・甲第10号証:甲第9号証に係る特願2014-538117号に対する本件特許権者である出願人による2016年5月13日付提出意見書
・甲第11号証:医薬部外品原料規格2006、薬事日報社、発行:2006年6月16日、第1076~1077頁、表紙、目次、及び奥付、写し
・甲第12号証:特開2011-98882号公報
・甲第13号証:Zhu,B.L.,et al.″Study on the properties of the epoxy-matrix composites filled with thermally conductive AlN and BN ceramic particles.” Journal of applied polymer science Vol. 118 (2010): 2754-2764、写し
・甲第14号証:特開平5-186205号公報
・参考資料1:特開2011-98882号公報
・参考資料2:特公平6-53564号公報
・参考資料3:特表2008-513566号公報
・参考資料4:新製品紹介記事「界面特性:ぬれ性測定装置 ペネトアナライザPNT‐N型」(http://www.hosokawamicron.co.jp/jp/news/pdf/news20110208.pdf)
・参考資料5:「浸透速度測定装置 ペネトアナライザPNT‐N」製品紹介,粉砕誌,No.54,2011,p.85-86(https://www.hosokawamicron.co.jp/jp/service/micromertitcs/no_54/pdf/No54_18.pdf)
イ 特許異議申立理由
(A)本件特許発明1ないし6は、甲第1号証ないし甲第14号証記載の発明及び参考資料1ないし参考資料3記載の発明に基いて当業者であれば容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(A)」という。)
(B)本件の発明の詳細な説明は、本件請求項2記載の「水の浸透速度」について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載するものではないので、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(B)」という。)
(C)本件の発明の詳細な説明は、本件請求項6記載の「塗膜の熱伝導率」について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載するものではないので、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(C)」という。)
(D)本件の発明の詳細な説明は、具体的に記載され効果が確認されているBN粉末として、【0041】に記載されているNo.1ただ一例のみを示すものであるところ、この一例のみから平均粒径、アスペクト比、厚さ、吸油量という複数種のパラメータが含まれている本件特許発明1ないし6の範囲にまで拡張ないし一般化できるとは言えない(当業者が発明の課題を解決することができると認識する範囲を超えるものであるある)ので、本件特許発明1ないし6は、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(D)」という。)
(E)本件特許明1ないし6は、本件請求項1ないし6記載の「水の浸透速度」について、発明を明確に記載するものではないので、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(E)」という。)
(F)本件特許発明6は、本件請求項6記載の「塗膜の熱伝導率」について、発明を明確に記載するものではないので、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものではなく、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(F)」という。)
V.特許権者の主張について
特許権者は、平成29年12月8日付け意見書において以下で示す乙第1号証を証拠方法として提出すると共に、本件特許発明1ないし6は、特許異議申立人が申し立てる特許異議申立理由、及び、取消理由通知書に記載した取消理由により取り消されるものではない旨を主張する、ものである。
・乙第1号証:「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」協和界面株式会社(2010年1月)、甲第7号証と同一の証拠
VI.取消理由通知書に記載した取消理由について
平成29年10月2日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
(α)本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定に該当するものであり、特許を受けることができない。(以下、「申立理由(α)」という。)
(β)上記異議申立理由(B)と同じ
(γ)上記異議申立理由(C)と同じ
(δ)上記異議申立理由(D)と同じ
(ζ)上記異議申立理由(E)と同じ
(η)上記異議申立理由(F)と同じ
VII.甲第1号証に記載の発明
甲第1号証には、以下の記載がある。
(甲1-1)「【請求項1】
平均長径が2~20μmで厚みが0.05~0.5μmの扁平形状をなす一次粒子が積層した板状の凝集体からなり、比表面積が1~10m2/gで、かつ目開き45μm篩下の凝集体の含有率が50質量%以上で、さらに可溶性ホウ素量が100ppm以下であることを特徴とする化粧料用の窒化ホウ素粉末。」
(甲1-2)「【0007】
本発明は、上記の要望に有利に応えるもので、従来に比べて「のび」に優れ、かつ「もち」にも優れた化粧料用の窒化ホウ素粉末を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。
また、本発明は、上記の窒化ホウ素粉末を使用することにより、仕上がりのツヤ感(光沢感)や透明感(素肌感)を格段に向上させた化粧料を提案することを目的とする。」
(甲1-3)「【0019】
8.前記化粧料における前記窒化ホウ素粉末の含有量が0.1~70質量%であることを特徴とする前記7に記載の化粧料。」
(甲1-4)「【0024】
平均長径が2~20μmで厚みが0.05~0.5μmの扁平形状をなす一次粒子が積層した板状の凝集体
一次粒子の平均長径が2μmに満たないものは製造が困難であり、一方20μmを超えると配向性が出て、凝集体の密度が低下する(空隙率が増加する)ので、一次粒子の平均長径は2~20μmの範囲に限定した。好ましくは5~10μmの範囲である。
また、一次粒子の厚みが0.05μmに満たないと、潤滑性を発現できる5~10μmの化粧料に適した平板粒子が形成されず、一方0.5μmを超えると、肌に延ばして塗布した場合に透明感が低下するとともに平面が平滑に維持できないので、一次粒子の厚みは0.05~0.5μmの範囲に限定した。なお、かかる一次粒子のアスペクト比(長径/厚み)は10~25程度とすることが好ましい。
ここに「一次粒子」とは、鱗片状を形成する単一粒子と定義する。また、「一次粒子の凝集体」とは、一次粒子が2個以上化学結合した状態で存在する粒子と定義する。
【0025】
比表面積が1~10m2/gで、かつ目開き45μm篩下の凝集体の含有量が50質量%以上
一次粒子の凝集体の粒径が目開き45μm篩上になると積層状になり難く、肌に塗布するときザラツキ感を生じるため、一次粒子の凝集体の粒径は目開き45μm篩下とする必要がある。また、一次粒子の凝集体の粒径があまりに小さいと粒子同志の結合が強くなり潤滑性が低下する問題があるので、一次粒子の凝集体の粒径は2μm以上とすることが好ましい。なお、微細粒子の粒径は、電子顕微鏡を使用した画像解析から得ることができる。ここに、微細粒子の粒径は、最長径を示すものとする。
また、一次粒子の凝集体の比表面積が1m2/gに満たないと、粗粒を形成して潤滑性が低下して伸びがなくなり、一方10m2/gを超えると、粒子同士の結合が強くなって平板状の凝集粒にならず、球状になってザラツキ感が強くなるので、凝集体の比表面積は1~10m2/gの範囲に限定した。」
(甲1-5)「【0029】
可溶性ホウ素の含有量が100ppm以下
また、本発明において、窒化ホウ素粉末中における可溶性ホウ素量は100ppm以下とする必要がある。
というのは、可溶性ホウ素量が100ppmを超えると、肌へのダメージが大きくなるからである。好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。」
(甲1-6)「【0034】
次に、本発明の製造方法について説明する。
本発明では、まず素材として、高純度で乱層構造の窒化ホウ素粉末を準備する。
かかる窒化ホウ素粉末は、ホウ酸及び/又はその脱水物と尿素及び/又はその化合物(ジシアンジアミド、メラミン等)と炭化ホウ素とを、均一に混合し、不活性ガス雰囲気中にて800℃から1200℃まで加熱することによって得ることができる。
・・中略・・
【0038】
ついで、上記のようにして得た窒化ホウ素粉末に対し、不活性ガス雰囲気中にて、加圧力:0.1MPa以上、温度:1500~2300℃の条件下で加熱処理を施す。
処理雰囲気を不活性ガス雰囲気としたのは、生成したBNは容易に酸素と結びつくため、酸化性雰囲気で高温焼成すると所望のBNを生成できないためである。
また、加圧力を0.1MPa以上としたのは、加圧力が0.1MPaに満たないと粒子同士の十分な積層が望めないからである。ただし、0.9MPaを超える高圧は操業安全上の制約を受けるので、上限は0.9MPaとすることが好ましい。
さらに、加熱温度を1500~2300℃としたのは、処理温度が1500℃に満たないと十分に結晶が成長した粉末が得られず、一方2300℃を超えると欠陥を生じ易くなって透明感が低下するからである。
【0039】
ついで、得られた窒化ホウ素塊を、粉砕・分級後、洗浄によって不純物を除去することによって、高純化する。
この高純化処理に際しては、少なくとも可溶性ホウ素についてはその含有量を窒化ホウ素粉末全体に対する割合で100ppm以下まで低減する必要がある。また、その他の不純物については、金属不純物の量も100ppm以下まで低減することが好ましい。
【0040】
かくして、扁平形状をなす一次粒子が積層した板状の凝集体からなる高純度の化粧料用窒化ホウ素粉末を得ることができる。
【0041】
ここに、化粧品顔料における上記窒化ホウ素粉末の割合は0.1~70質量%とすることが好ましい。というのは、この割合が0.1質量%に満たないと本発明で所期したのびや付着性の改善効果に乏しく、一方70質量%を超えると(BN粉末特有のぎらつき感が強くなり適切な光沢が得られなくなる)だからである。」
(甲1-7)「【0045】
また、可溶性ホウ素量は、「医薬部外品原料規格2006」に基づき、次のようにして測定した。
試料:2.5gをテフロン(登録商標)製ビーカーにとり、エタノール:10mlを加えてよくかき混ぜ、さらに水:40mlを加えてよくかき混ぜたのち、テフロン製時計皿にのせ、50℃で1時間加温する。冷却後、ろ過し、残留物を少量の水で洗い、洗液をろ液に合わせる。この液をさらにメンブランフィルター(0.22μm)でろ過する。ろ液全量をテフロン製ビーカーにとり、硫酸:1mlを加え、ホットプレート上で10分間煮沸する。冷却後、この液をポリエチレン製メスフラスコに入れ、テフロン製ビーカーを少量の水で洗い、ポリエチレン製メスフラスコに合わせたのち、水を加えて正確に50mlとし、これを試料溶液とする。別にホウ素標準液:1mlを正確にとり、水を加えて正確に100mlとし、標準溶液とする。試料溶液および標準溶液各1mlをポリエチレン製ビンに正確にとり、硫酸および酢酸の等容量混液:6mlを加えて、振り混ぜる。ついで、クルクミン・酢酸試液:6mlを加えて振り混ぜたのち、80分間放置する。これを酢酸・酢酸アンモニウム緩衝液:30mlを加えて振り混ぜ、5分間放置したのち、水を対照とし、吸光度特定法により、溶出ホウ素量を求める。この試験を行うとき、波長:543nm付近の吸収の最大波長における試料溶液の吸光度は、標準溶液の吸光度以下である。ただし、試料溶液の吸光度は、前処理法を含め、同様に操作して得た空試験液の吸光度で補正する。」
(甲1-8)「【0048】
次に、表1に示したNo.1の窒化ホウ素粉末(発明例1)を用いて、以下に示す実施例1~10、比較例11~16の各種化粧料を作製した。」
上記(甲1-1)ないし(甲1-8)からして、甲第1号証には、「平均長径が2~20μmで厚みが0.05~0.5μmの扁平形状をなす窒化ホウ素の一次粒子が積層した板状の凝集体からなり、一次粒子のアスペクト比(長径/厚み)が10~25程度である、化粧料用の窒化ホウ素粉末。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)が記載されているということができる。
VIII.当審の判断
(1)取消理由について
ア 取消理由(α)について
本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とを対比する。
○甲第1号証記載の発明の「窒化ホウ素の一次粒子が積層した板状の凝集体からな」る「化粧料用の窒化ホウ素粉末」は、本件特許発明1の「BNの一次粒子からな」る「化粧料用の」「窒化ホウ素粉末」(本件特許の【図1】の(a)参照)に相当する。
○甲第1号証記載の発明の「厚みが0.05~0.5μm」は、厚みの平均値が0.1μm以上である場合を包含するものであり、この場合は、本件特許発明1の「厚さの平均値が0.1μm以上」に相当する。
○甲第1号証記載の発明の「平均長径が2~20μm」と、本件特許発明1の「平均粒径が3~20μm」(本件特許明細書の【0026】の「なお、一次粒子の平均粒径は、長径の平均値で表すものとする。」との記載を参照)とは、「平均粒径が3~20μm」という点で一致する。
○甲第1号証記載の発明の「一次粒子のアスペクト比(長径/厚み)が10~25程度」と、本件特許発明1の「一次粒子のアスペクト比(長径/厚さ)が5~20」とは、「一次粒子のアスペクト比(長径/厚さ)が10~20」という点で一致する。
上記からして、本件特許発明1と甲第1号証記載の発明とは、「扁平形状をなすBNの一次粒子からなり、平均粒径が3~20μmで、かつ該一次粒子のアスペクト比(長径/厚さ)が10~20、厚さの平均値が0.1μm以上である、化粧料用の窒化ホウ素粉末。」という点で一致し、以下の点で一応相違している。
<相違点>
本件特許発明1は、「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」の窒化ホウ素粉末であるのに対して、甲第1号証記載の発明は、窒化ホウ素粉末が「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」であることの特定がない点。
<相違点>について検討する。
(i)上記(甲1-2)で示したように、甲第1号証には、「本発明は、上記の要望に有利に応えるもので、従来に比べて「のび」に優れ、かつ「もち」にも優れた化粧料用の窒化ホウ素粉末を、その有利な製造方法と共に提案することを目的とする。また、本発明は、上記の窒化ホウ素粉末を使用することにより、仕上がりのツヤ感(光沢感)や透明感(素肌感)を格段に向上させた化粧料を提案することを目的とする。」(【0007】)(当審注:改行を行わず行詰めを行った。)との記載があり、これからして、窒化ホウ素粉末は、化粧料の「のび」、「もち」、「ツヤ感(光沢感)」、「透明感(素肌感)」を優れたものにする(格段に向上させる)ものであるということができる。
(ii)甲第3号証には、吸油量(JIS K5101)が50~300mL/100gの高吸油性無機顔料(例えば、チッ化ホウ素)を化粧料に用いることの記載がある。
また、甲第2号証には、吸油量(g/100g)(ASTM D1483-95)が「110、140、185、122、163、96、104、58」である各製品(窒化ホウ素)を化粧料に用いることの記載があり、ここで、甲第4号証には、「D1483-95号は、顔料(試料)100gに吸収される亜麻仁油(密度0.93g/ml)の量(g)を吸油量(g/100g)と規定するものである」ことの記載があることからして、甲第2号証における各製品(化粧料用窒化ホウ素)の吸油量(g/100g)(ASTM D1483-95)を、吸油量(ml/100g)に換算すると、「約118、約151、約199、約131、約175、約103、約112、約62」になることは明らかであり、さらに、一般に、JIS K5101は、試料100gに吸収されるあまに油の量(ml)を吸油量(ml/100g)と規定するものであることは、本件出願前の技術常識(例えば、特開2002-265903号公報の【0008】参照)であり、「JIS K5101」と「ASTM D1483-95号」とは、試料100gに吸収されるあまに油の量を吸油量と規定するものである点で軌を一にするものであるので、上記換算された吸油量(ml/100g)の「約118、約151、約199、約131、約175、約103、約112、約62」(ml/100g)は、「JIS K5101」であっても、同程度の吸油量(ml/100g)であるとみるのが妥当である。
そして、甲第5号証には、化粧料の「のび」と「持ち」を高めるために、吸油量(ml/100g)(JIS K5101)が実施例1(200)、実施例2(195)、実施例3(190)、実施例4(180)、実施例5(140)、実施例6(120)、実施例7(270)、実施例(320)の多孔質金属酸化物薄片を用いることの記載がある。
これらからして、吸油量(JIS K5101)が大きい(50~300ml/100gの)高吸油性無機顔料(窒化ホウ素)を化粧料に用いることにより、化粧料の「のび」と「持ち(もち)」が高まることは、本件出願前の周知の事項であるということができる。
(iii)上記(i)(ii)からして、甲第1号証記載の発明は、化粧料の「のび」、「もち」、「ツヤ感(光沢感)」、「透明感(素肌感)」を優れたものにする(格段に向上させる)ために窒化ホウ素を用いるものであり、また、吸油量(JIS K5101)が大きい(50~300ml/100gの)高吸油性無機顔料(窒化ホウ素)を化粧料に用いることにより、化粧料の「のび」と「持ち(もち)」が高まることは、本件出願前の周知の事項であるということができるので、甲第1号証記載の発明について、化粧料の「のび」、「もち」を優れたものにする「窒化ホウ素」の吸油量は、100mL/100g(JIS K5101)より大きいものになっている可能性があるということもでき得る。
(iv)しかしながら、本件特許明細書には、「撥水性を有するBN粉末は、表面の官能基が少ないことが特徴である。表面の官能基の評価方法としては、不純物量の分析によるのが一般的である。不純物としては、酸素、炭素が大部分を占めており、このうち酸素はBN粉末の表面にOH基やカルボニル基として存在して、粉末の撥水性、吸油性を低下させている。」(【0028】)及び「本発明では、B4C粉とB酸化物を混合したのち、1600~2200℃の温度域で一段または二段の窒化処理および脱炭処理を施して、BN粒子を析出させ、ついで得られた凝集体を破砕・分級することによってBN粒子を合成する。その後、洗浄処理によりホウ酸を除去したのち、不活性の減圧雰囲気中にて300℃以上で加熱処理することによって、粉体表面の官能基を効果的に除去する。この加熱処理により、高撥水性および高吸油性も併せて発現する。」(【0034】)との記載があり、一方、甲第1号証には、上記(甲1-6)で示したように「上記のようにして得た窒化ホウ素粉末に対し、不活性ガス雰囲気中にて、加圧力:0.1MPa以上、温度:1500~2300℃の条件下で加熱処理を施す。」(【0038】)及び同「ついで、得られた窒化ホウ素塊を、粉砕・分級後、洗浄によって不純物を除去することによって、高純化する。」(【0039】)との記載があることからして、本件特許発明1は、「撥水性を有するBN粉末は、表面の官能基が少ないことが特徴である。表面の官能基の評価方法としては、不純物量の分析によるのが一般的である。不純物としては、酸素、炭素が大部分を占めており、このうち酸素はBN粉末の表面にOH基やカルボニル基として存在して、粉末の撥水性、吸油性を低下させている」(【0028】)との観点に基いて、高吸油性(高撥水性)(吸油量100ml/100g~500ml/100g)化粧料用窒化ホウ素粉末を得るために、洗浄処理後に、不活性の減圧雰囲気中にて300℃以上で加熱処理するものであるのに対して、甲第1号証記載の発明は、「洗浄によって不純物を除去することによって、高純化する」ものであるものの、その具体的手段が何ら明らかにされたものではないので、甲第1号証記載の発明の化粧料用窒化ホウ素粉末は、本件出願前の周知の事項を勘案したとしても、上記観点に基いて得られた「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」化粧料用窒化ホウ素粉末に当たるとは言い難い。
したがって、上記相違点は、実質的な相違点であり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
また、本件特許発明2ないし5は、上記相違点に係る「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」化粧料用窒化ホウ素粉末を発明特定事項にするものであるので、本件特許発明1と同じく、甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。
よって、取消理由(α)をもって、本件特許発明1ないし5を取り消すことはできない。
イ 取消理由(β)について
本件訂正請求により、本件特許明細書の【0027】の記載につき、「そこで、本発明では、定量的な方法として粉体の浸透性、ぬれ性解析装置(株式会社三ツワフロンテック製)を用い、JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験を採用することにした。」が「そこで、本発明では、定量的な方法として粉体の浸透性、ぬれ性解析装置を用い、透水試験を採用することにした。」に、また、同【0040】の記載につき、「JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験を行い、その時の水の浸透速度を測定した。具体的には、粉体湿潤浸透解析装置PW-500(三ツワフロンテック製)を使用し、内径10mmのカラムに粉末1gを充填して、下部の接液面からの「ぬれ高さ」を経過時間毎に測定して、浸透速度を算出した。」が「透水試験を行い、その時の水の浸透速度を測定した。具体的には、粉体湿潤浸透解析装置PW-500を使用し、内径10mmのカラムに粉末1gを充填して、下部の接液面からの「ぬれ高さ」を経過時間毎に測定して、浸透速度を算出した。」に訂正され、さらに、乙第1号証(「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」協和界面株式会社(2010年1月))(甲第7号証と同一の証拠)が提出されたことを前提にした上で、本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」から「水の浸透速度」を得ることができるかどうかについて、以下、検討する。
まず、本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」と、乙第1号証の「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」との同一性について検討する。
本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」が、乙第1号証の「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」(2010年1月)からみて、一部改良されたものであるとしても、測定原理、装置の基本的な構造については同じである(大きな変更が加われば、別の型番になるというべきである)というべきであるので、本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」と、乙第1号証の「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」とは、実質的に同等のものであるとみるのが妥当である。
次に、乙第1号証の内容から「水の浸透速度」を得ることができるかどうかについて検討する。
乙第1号証には、粉体への液体の浸透速度が、下記のWashburn式(以下、「式(1)という。)から求められることの記載がある。
l:液体の浸透高さ
t:時間
r:充填粉体の毛管半径
γ:液体の表面張力
θ:接触角
η:液体の粘度
ここで、左辺の単位は、「mm2/s」であり、単位時間当たりの面積で表した「浸透速度」であり、一般的には「面積速度」とも称される値である。
そして、上記Washburn式を、浸透高さ:lではなく重量:Wで表すと、次の式(重量換算Washburn式)(以下、「式(2)」という。)のようになることは、当業者であれば普通に理解できることである。
s:カラム内断面積
ε:空隙率
ρ:液体の密度
さらに、上記式(1)と同式(2)とから、次の式(以下、「式(3)」という。)が導かれることは明らかである。つまり、式(1)ないし式(3)は、相互に関連した式であり、式(1)をみた当業者であれば、式(2)(3)を想起し得るものというべきである。
ここで、W、tは実測値であり、カラム内断面積:sは装置が有する既知の値であり、また、液体(水)の密度:ρも既知であるか、極めて簡単な測定で求めることができ、空隙率:εについても、粉体の重量、充填された粉体の体積、および粉体の真密度から容易に求めることができるので、左辺の浸透速度(面積速度)も容易に求めることができるということができる。
つまり、上記式(1)の代わりに、式(3)を用いる場合、式(1)において必要な「r:充填粉体の毛管半径」、「γ:液体の表面張力」、「θ:接触角」を求める必要はなく、当業者であれば、式(3)に基いて浸透速度(面積速度)を容易に求めることができるということができる。
そうすると、本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」から「水の浸透速度」を得ることができるというべきであり、そして、「透水試験を粉体湿潤浸透解析装置PW-500(協和界面科学株式会社製)を使用して行う」ことを示す甲第7号証(乙第1号証)、「JIS A 6909」を示す甲第8号証、「JIS A 6909 (透水試験B法)に準拠した透水試験を粉体湿潤浸透解析装置PW-500(三ツワフロンテック製)を使用して行う」ことを示す甲第9号証(特願2014-538117号に対応する国際公開第2014/049956号)、「本件特許権者が水の浸透速度が、カラム内における粒子の充填状態に強く依存することを認めている」ことを示す甲第10号証(甲第9号証に係る特願2014-538117号の意見書)、「PW-500以外のぬれ性測定装置(浸透速度測定装置)が公知であり、実際の浸透速度は理想的に一定にならず経時変化する」ことを示す参考資料4、「粉体に対する浸透速度測定にとって、粉体層の充填状態が重要であり、実際の浸透速度は理想的に一定にならず経時変化する」ことを示す参考資料5があることをもって、本件特許明細書に記載された「粉体湿潤浸透解析装置PW-500」から「水の浸透速度」を得ることができないという特許異議申立人の主張は、上記のとおり「水の浸透速度」を得ることができるというべきことからみて、妥当性を欠くものである。
したがって、本件の発明の詳細な説明は、本件請求項2記載の「水の浸透速度」について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載するものであるので、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものである。
よって、取消理由(β)をもって、本件特許発明2を取り消すことはできない。
ウ 取消理由(γ)について
特許異議申立人は、「『厚み:1mm、径:10mmの円板形状に成形し、この成形体の熱伝導率について調査した結果』(【0054】)として熱伝導性の測定を行った旨が記載されているが、【0015】にあるとおりBN粉末の熱伝導は異方性を有するものであり、上記成形体に対してどのような測定を行うかによって熱伝導率は変化するのは技術常識であるところ、本件特許明細書には、上記成形体に対してどのような測定方法を行うかについての記載が無いため、本件特許明細書を通読した当業者であっても、本件特許発明6に規定される熱伝導率をどのように定めるかを理解することができない。」旨の主張をしていると認められる。
ここで、本件特許明細書には、「本発明は、放熱性に優れる高吸油性窒化ホウ素粉末に関し、特に化粧料に適用した場合に、肌への展延性および付着性を向上させると共に、放熱性の改善により冷感の向上を図ろうとするものである。」(【技術分野】【0001】)、「発明例1のパウダーファンデーションを、厚み:1mm、径:10mmの円板形状に成形し、この成形体の熱伝導率について調査した」(【0054】)との記載があり、これらからして、本件特許発明6の「塗膜の熱伝導率」は、皮膚の熱がパウダーファンデーション(塗膜)の膜厚方向を移動して大気中に放熱される程度(冷感の程度)をみるためのものであるといえることからして、パウダーファンデーション(塗膜)の膜厚方向の熱伝導率であるとみるのが当然であり、また、高吸油性窒化ホウ素粉末を含有する塗膜は、練り塗られたもの(ホウ素粉末の向きはランダムにされたもの)であるといえることからして、そもそも、ホウ素粉末の熱伝導率が異方性を有することについて考慮する必要のないものであるというべきである。
そして、塗膜の膜厚方向の熱伝導率を測定する手段(方法)については、本件特許明細書に明記されるまでもなく、極めて一般的な技術である。
そうすると、本件特許明細書には、「塗膜の熱伝導率」の測定手段(方法)が実質的に記載されているということができる。
したがって、本件の発明の詳細な説明は、本件請求項6記載の「塗膜の熱伝導率」について、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載するものであるので、特許法第36条第4項第1号の規定に適合するものである。
よって、取消理由(γ)をもって、本件特許発明6を取り消すことはできない。
エ 取消理由(δ)について
本件特許発明1ないし6は、本件特許明細書の「本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、BNの高潤滑性の特性から薄膜形成性に優れ、かつ熱伝導性を兼ね備えた化粧料用の窒化ホウ素粉末を提案することを目的とする。」「また、本発明は、上記の窒化ホウ素粉末を使用することにより、「もち」や「のび」の低下を招くことなしに塗りの薄膜・均一化を達成し、併せて放熱性を向上させて一層の冷感を実感できる化粧料を提案することを目的とする。」(【発明が解決しようとする課題】【0009】)との記載からして、「もち」や「のび」の低下を招くことなしに塗りの薄膜・均一化(BNの高潤滑性の特性から薄膜形成性)を達成し、併せて放熱性(熱伝導性)を向上させて一層の冷感を実感できる化粧料を提案することを目的とするものであり、発明が解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、この目的を達成することにあるということができる。
ここで、本件特許発明1ないし6は、高吸油性窒化ホウ素粉末のパラメータとして、平均粒径、アスペクト比(長径/厚さ)、厚さの平均値、吸油量、水の浸透速度、可溶ホウ素量、比表面積を発明特定事項にするものであるところ、本件特許明細書には、平均粒径については【0026】に、アスペクト比については【0015】【0024】に、厚さの平均値については【0015】【0025】に、吸油量については【0014】【0031】に、水の浸透速度については【0029】に、可溶ホウ素量については【0040】に、比表面積については【0028】に、それぞれの数値範囲とその技術的意義についての記載があり、特に、粉末のアスペクト比は、塗膜の潤滑性及び伝熱性(発明の課題)に関わり、粉末の厚さは、塗膜の伝熱性及び平滑性(発明の課題)に関わり、粉末の吸油量・水の浸透速度・比表面積は、「もち」(発明の課題)に関わるものであるということができるので、具体的に記載され効果が確認されているBN粉末としてNo.1ただ一例のみしか記載されていないとしても、上記パラメータは、発明の課題を解決せしめるものとして記載されたものであるとみるのが妥当である。
したがって、本件特許発明1ないし6は、当業者が発明の課題を解決することができると認識する範囲を超えるものではないので、特許法第36条第6項第1号の規定に適合するものである。
よって、取消理由(δ)をもって、本件特許発明1ないし6を取り消すことはできない。
オ 取消理由(ε)について
当該取消理由(ε)については、上記「イ 取消理由(β)」で示した理由と同じ理由より、本件特許発明1ないし6は、本件請求項1ないし6記載の「水の浸透速度」について、発明を明確に記載するものであるので、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。
したがって、取消理由(ε)をもって、本件特許発明1ないし6を取り消すことはできない。
カ 取消理由(ζ)について
当該取消理由(ζ)については、上記「ウ 取消理由(γ)」で示した理由と同じ理由より、本件特許発明6は、本件請求項6記載の「塗膜の熱伝導率」について、発明を明確に記載するものであるので、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。
したがって、取消理由(ζ)をもって、本件特許発明6を取り消すことはできない。
(2)特許異議申立理由について
ア 申立理由(A)について
上記「(1)取消理由について」の「ア 取消理由(α)について」で示したように、甲第1号証記載の発明は、「洗浄によって不純物を除去することによって、高純化する」ものであるものの、その具体的手段が何ら明らかにされたものではなく、また、「撥水性を有するBN粉末は、表面の官能基が少ないことが特徴である。表面の官能基の評価方法としては、不純物量の分析によるのが一般的である。不純物としては、酸素、炭素が大部分を占めており、このうち酸素はBN粉末の表面にOH基やカルボニル基として存在して、粉末の撥水性、吸油性を低下させている」(本件特許明細書の【0028】)との観点に基いて、高吸油性(高撥水性)(吸油量100ml/100g~500ml/100g)化粧料用窒化ホウ素粉末を得るために、洗浄処理後に、不活性の減圧雰囲気中にて300℃以上で加熱処理するものでもない。
また、これまでに示した甲第2号証ないし甲第5号証、甲第7号証ないし甲第10号証、参考文献4、参考文献5に加えて、「吸水性や吸油性を有する粉体(窒化ホウ素)を用いることによって、化粧持ちを改善できる」ことを示す甲第6号証、「医薬部外品原料規格2006(溶出ホウ素量の規定)」を示す甲第11号証、「六方晶窒化ホウ素(h-BN)粉末が化粧品の材料に用いられ、h-BNの特性を発揮するには、Fe2O3、CaO、SiO2、Al2O3等の酸化性不純物量は少ないほど好ましく、成形したシートの熱伝導率を測定する」ことを示す甲第12号証、「粒径7μmのBNをフィラーとして約10~31重量%含めたものの熱伝導率が0.6~1.39W/m・K程度になる」ことを示す甲第13号証、「化粧料としてののび、もちを高めるために、得られた窒化ホウ素を解砕、洗浄した後に窒素雰囲気で2020℃、10時間の加熱処理を施す」ことを示す甲第14号証、「BN粒子間に残留するFeを減圧処理することにより除去し、これでも残った残留Feは、減圧処理により球状化する」ことを示す参考文献1、「酸窒化硼素、シアン基の形で残留している酸素、炭素を、非酸化性の雰囲気(N2、NH3、H2雰囲気)あるいは減圧中での加熱(1600℃以上3000℃まで)を行うことで除去する」ことを示す参考文献2、「六方晶ホウ素の表面の特に細孔のヒドロキシル基、表面化学種を徹底的に減少させるために、300~400℃の温度範囲で、通常空気中又は不活性な雰囲気で加熱する」ことを示す参考文献3をみたとしても、「撥水性を有するBN粉末は、表面の官能基が少ないことが特徴である。表面の官能基の評価方法としては、不純物量の分析によるのが一般的である。不純物としては、酸素、炭素が大部分を占めており、このうち酸素はBN粉末の表面にOH基やカルボニル基として存在して、粉末の撥水性、吸油性を低下させている」(本件特許明細書の【0028】)との観点に基いて、高吸油性(高撥水性)(吸油量100ml/100g~500ml/100g)化粧料用窒化ホウ素粉末を得るために、洗浄処理後に、不活性の減圧雰囲気中にて300℃以上で加熱処理することについての記載も示唆もない。
そうすると、甲第1号証ないし甲第14号証、及び、参考文献1ないし参考文献5をみたとしても、「撥水性を有するBN粉末は、表面の官能基が少ないことが特徴である。表面の官能基の評価方法としては、不純物量の分析によるのが一般的である。不純物としては、酸素、炭素が大部分を占めており、このうち酸素はBN粉末の表面にOH基やカルボニル基として存在して、粉末の撥水性、吸油性を低下させている」(本件特許明細書の【0028】)との観点に基いて得られる、本件特許発明1の「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」化粧料用窒化ホウ素粉末は、導出され得ないというべきである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証ないし甲第14号証、及び、参考文献1ないし参考文献5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本件特許発明2ないし6は、「吸油量が100ml/100g~500ml/100gである」「高吸油性」化粧料用窒化ホウ素粉末を発明特定事項にするものであるので、本件特許発明1と同じく、甲第1号証ないし甲第14号証、及び、参考文献1ないし参考文献5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、取消理由(A)をもって、本件特許発明1ないし6を取り消すことはできない。
イ 申立理由(B)について
申立理由(B)は、取消理由(β)と同じであることからして、上記「(1)取消理由について」の「イ 取消理由(β)について」で示した理由と同じ理由により、取消理由(B)をもって、本件特許発明2を取り消すことはできない。
ウ 申立理由(C)について
申立理由(C)は、取消理由(γ)と同じであることからして、上記「(1)取消理由について」の「ウ 取消理由(γ)について」で示した理由と同じ理由により、取消理由(C)をもって、本件特許発明6を取り消すことはできない。
エ 申立理由(D)について
申立理由(D)は、取消理由(δ)と同じであることからして、上記「(1)取消理由について」の「エ 取消理由(δ)について」で示した理由と同じ理由により、取消理由(D)をもって、本件特許発明1ないし6を取り消すことはできない。
オ 申立理由(E)について
申立理由(E)は、取消理由(ε)と同じであることからして、上記「(1)取消理由について」の「オ 取消理由(ε)について」で示した理由と同じ理由により、取消理由(E)をもって、本件特許発明1ないし6を取り消すことはできない。
カ 申立理由(F)について
申立理由(F)は、取消理由(ζ)と同じであることからして、上記「(1)取消理由について」の「カ 取消理由(ζ)について」で示した理由と同じ理由により、取消理由(F)をもって、本件特許発明6を取り消すことはできない。
(3)まとめ
上記(1)及び(2)からして、特許異議申立理由及び取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
IX.むすび
以上のとおり、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできず、また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700680