特許異議申立
2017-700671
ジシクロペンタジエンベース樹脂組成物及びそれらから製造される物品
- 審判番号
- 2017-700671
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-513997外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月07日
- 審決日
- 2017年09月25日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 分類
- P1651.121-Y (C08L) / P1651.537-Y (C08L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6065972号発明「ジシクロペンタジエンベース樹脂組成物及びそれらから製造される物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6065972号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6065972号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、2013年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年5月25日、米国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年1月6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、同年7月7日付け(受理日:同年7月10日)で特許異議申立人 澤山 政子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」といい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも1種のエラストマー、及び
炭化水素ポリマー添加剤の全重量の40重量%~80重量%の、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエン由来含有量と、100g/モル~800g/モルの重量平均分子量と、ASTM D6090に従って求めて、110℃~150℃の軟化点とを有する炭化水素ポリマー添加剤
を含むタイヤトレッド用組成物。
【請求項2】
組成物が、加硫された組成物である、請求項1に記載のタイヤトレッド用組成物。
【請求項3】
エラストマーが、組成物の全重量に対して、33重量%~75重量%の範囲で、組成物中に存在する、請求項1に記載のタイヤトレッド用組成物。
【請求項4】
炭化水素ポリマー添加剤が、組成物の全重量に対して、3重量%~10重量%の範囲で、組成物中に存在する、請求項1に記載のタイヤトレッド用組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のエラストマー、及び
炭化水素ポリマー添加剤の全重量の40重量%~80重量%の、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエン由来含有量と、100g/モル~800g/モルの重量平均分子量と、ASTM D6090に従って求めて、110℃~150℃の軟化点とを有する炭化水素ポリマー添加剤
を含む組成物を含むタイヤトレッドを含有するタイヤ。
【請求項6】
炭化水素ポリマー添加剤の重量平均分子量が、200g/モル~600g/モルである、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
少なくとも1種のエラストマー、及び
炭化水素ポリマー添加剤の全重量の40重量%~80重量%の、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエン由来含有量と、100g/モル~800g/モルの重量平均分子量と、ASTM D6090に従って求めて、110℃~150℃の軟化点とを有する炭化水素ポリマー添加剤
を含む組成物を含むタイヤトレッド。
【請求項8】
炭化水素ポリマー添加剤の重量平均分子量が、200g/モル~600g/モルである、請求項7に記載のタイヤトレッド。
【請求項9】
前記炭化水素ポリマー添加剤が、芳香族炭化水素成分をさらに含む、請求項1に記載のタイヤトレッド用組成物。
【請求項10】
前記炭化水素ポリマー添加剤が、芳香族炭化水素成分をさらに含む、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記炭化水素ポリマー添加剤が、芳香族炭化水素成分をさらに含む、請求項7に記載のタイヤトレッド。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、以下の甲第1ないし6号証を提出し、おおむね次の取消理由(以下、順に、「取消理由1」及び「取消理由2」という。)を主張している。
1 本件特許発明1ないし11は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものである下記の文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
甲第1号証.特開2003-20328号公報
甲第2号証.特開2010-43257号公報
甲第3号証.特開平7-330989号公報
甲第4号証.特開平11-29657号公報
甲第5号証.特公昭48-38615号公報
甲第6号証.特開2000-344947号公報
2 本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
第4 特許異議申立理由についての判断
1 取消理由1について
取消理由1は、具体的には、甲第1号証を主引用文献とした場合の進歩性違反、甲第2号証を主引用文献とした場合の進歩性違反、甲第5号証を主引用文献とした場合の進歩性違反及び甲第6号証を主引用文献とした場合の進歩性違反である。
(1)甲第1号証を主引用文献とした場合の進歩性違反について
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証の【特許請求の範囲】、【0001】、【0003】、【0004】、【0010】、【0018】、【0019】、【0026】、【0032】、【0033】、【0035】、【0037】、【0039】及び【0040】等の記載を整理すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲第1号証に記載された発明」という。)が記載されていると認める。
「(1)下記一般式(I)で表されるシクロペンタジエン系化合物、および/または、そのディールス・アルダー反応付加物からなる組成物(以下、「組成物A」という。)40~95質量部、
【化1】
(式中、nは0または1である。)
(2)下記一般式(II)で表される5-エチリデンノルボルネン系化合物からなる組成物(以下、「組成物B」という。)5~60質量部、かつ組成物Aと組成物Bを合わせて100質量部、
【化2】
(式中、mは0から2の整数である。)
および(3)石油類の熱分解により得られる沸点140~220℃の範囲にある留分(以下、「組成物C」という。)0~50質量部、を共重合させることにより得られるエチリデン基含有ジシクロペンタジエン系炭化水素樹脂1~35質量部を天然ゴムおよび/または合成ゴム100質量部あるいはジエン系ゴム100質量部に配合してなるゴム組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「炭化水素ポリマー添加剤」が「ASTM D6090に従って求めて、110℃~150℃の軟化点とを有する」ものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては、そうではない点(甲第1号証の【0037】【表1】の実施例1においては、軟化点は151℃である。)。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「組成物」の用途が「タイヤトレッド用」であるのに対し、甲第1号証に記載された発明においては、そうではない点。
そして、本件特許発明1は、上記相違点1-1及び1-2に係る発明特定事項を含めた発明特定事項を有することにより、ウエットトラクション性能を向上させると同時に転がり抵抗を維持する又は低下させ得るという効果を奏するものである。
他方、甲第1号証に記載された発明の効果は、そのようなものではなく(甲第1号証の【0001】、【0003】及び【0004】等によると、高い突き刺し強度および引き裂き強度を維持したまま、耐摩耗性、伸び、生産性を改良することである。)、また、甲第2ないし6号証の何れにも、相違点1-1及び1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項により、上記効果が生じることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件特許発明2ないし4及び9について
本件特許発明2ないし4及び9は、請求項1を引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項5の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドを含有するタイヤの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件特許発明6及び10について
本件特許発明6及び10は、請求項5を引用するものであるので、本件特許発明5と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項7の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件特許発明8及び11について
本件特許発明8及び11は、請求項7を引用するものであるので、本件特許発明7と同様に、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
したがって、甲第1号証を主引用文献とした場合の進歩性違反は理由がない。
(2)甲第2号証を主引用文献とした場合の進歩性違反について
ア 甲第2号証に記載された発明
甲第2号証の【特許請求の範囲】、【0002】、【0008】、【0021】、【0044】、【0045】、【0048】、【0050】、【0073】、【0074】、【0079】、【0080】、【0111】、【0126】、【0127】、【0131】及び【0143】等の記載を整理すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲第2号証に記載された発明」という。)が記載されていると認める。
「キュアされたエラストマ組成物であって、
(a) 少なくとも一つのC4-C7モノオレフィンエラストマと、
(b) 炭化水素ポリマー添加物であって、環状成分を備えた炭化水素ポリマー添加物と、
(c) クレイと、
から成り、当該エラストマ組成物が、40℃における透過流速係数が90 cc*mm/(m2*day)かまたはそれ以下であり、
前記炭化水素ポリマー添加物が、少なくとも75重量%の環状成分を含有し、
前記炭化水素ポリマー添加物がジシクロペンタジエンから成り、
前記炭化水素ポリマー添加物が115~130 ℃の範囲の軟化点温度を有し、
前記炭化水素ポリマー添加物が、500~700 g/moleの範囲のMwと、65~75 ℃の範囲のTgを有し、
当該エラストマ組成物が、空気バリア材、タイヤの内側ライナー、内側チューブ、あるいはホースであるエラストマ組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「組成物」の用途が「タイヤトレッド用」であるのに対し、甲第2号証に記載された発明においては、そうではない点。
そして、本件特許発明1は、上記相違点2に係る発明特定事項を含めた発明特定事項を有することにより、ウエットトラクション性能を向上させると同時に転がり抵抗を維持する又は低下させ得るという効果を奏するものである。
他方、甲第2号証に記載された発明の効果は、そのようなものではなく(甲第2号証の【0008】等によると、組成物のプロセス時の取り扱い性を損なうことなく、優れたガス透過性を有するキュアしたエラストマ組成物を提供することである。)、また、甲第1及び3ないし6号証の何れにも、相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項により、上記効果が生じることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件特許発明2ないし4及び9について
本件特許発明2ないし4及び9は、請求項1を引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項5の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドを含有するタイヤの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件特許発明6及び10について
本件特許発明6及び10は、請求項5を引用するものであるので、本件特許発明5と同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項7の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件特許発明8及び11について
本件特許発明8及び11は、請求項7を引用するものであるので、本件特許発明7と同様に、甲第2号証に記載された発明並びに甲第1及び3ないし6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
したがって、甲第5号証を主引用文献とした場合の進歩性違反は理由がない。
(3)甲第5号証を主引用文献とした場合の進歩性違反について
ア 甲第5号証に記載された発明
甲第5号証の特許請求の範囲、第1欄第22ないし27行、第3欄第29ないし34行、第4欄第39行ないし第5欄第1行、第6欄第16ないし21行及び第3ページの表1等の記載を整理すると、甲第5号証には、次の発明(以下、「甲第5号証に記載された発明」という。)が記載されていると認める。
「軟化点50~200℃、臭素価40~150のシクロペンタジエン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、又はシクロペンタジエン或はジシクロペンタジエンを30重量%以上含有し、その他はシクロペンタジエン又はジシクロペンタジエンと共重合可能なオレフィン類炭化水素を共重合させて得た樹脂をスチレン、ブタジエンゴム状共重合体100重量部に対し5~40重量部を配合したことより成るタイヤトレッドの耐カット性を改善したゴムの組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第5号証に記載された発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点3>
本件特許発明1においては、「炭化水素ポリマー添加剤」が「100g/モル~800g/モルの重量平均分子量」とを有するものであるのに対し、甲第5号証に記載された発明においては、そうではない点。
そして、本件特許発明1は、上記相違点3に係る発明特定事項を含めた発明特定事項を有することにより、ウエットトラクション性能を向上させると同時に転がり抵抗を維持する又は低下させ得るという効果を奏するものである。
他方、甲第5号証に記載された発明の効果は、そのようなものではなく(甲第5号証の第1欄第22ないし27行等によると、タイヤトレッドの耐カット性を著しく改善することである。)、また、甲第1ないし4及び6号証の何れにも、相違点3に係る本件特許発明1の発明特定事項により、上記効果が生じることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件特許発明2ないし4及び9について
本件特許発明2ないし4及び9は、請求項1を引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項5の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドを含有するタイヤの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件特許発明6及び10について
本件特許発明6及び10は、請求項5を引用するものであるので、本件特許発明5と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項7の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件特許発明8及び11について
本件特許発明8及び11は、請求項7を引用するものであるので、本件特許発明7と同様に、甲第5号証に記載された発明並びに甲第1ないし4及び6号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
したがって、甲第5号証を主引用文献とした場合の進歩性違反は理由がない。
(4)甲第6号証を主引用文献とした場合の進歩性違反について
ア 甲第6号証に記載された発明
甲第6号証の【特許請求の範囲】、【0001】、【0002】、【0004】ないし【0009】、【0011】、【0014】、【0015】、【0020】及び【0022】等の記載を整理すると、甲第6号証には、次の発明(以下、「甲第6号証に記載された発明」という。)が記載されていると認める。
「ジエン系ゴム成分100重量部に対して、カーボンブラックを20~100重量部、不飽和基を含む脂環族炭化水素樹脂を5~15重量部、配合したゴム組成物であって、
前記不飽和基を含む脂環族炭化水素樹脂はジシクロペンタジエン系樹脂であり、
前記ジシクロペンタジエン系樹脂は数平均分子量(Mn)が360~800、重量平均分子量(Mw)が700~1600であるタイヤ用トレッドに採用されるゴム組成物。」
イ 対比・判断
(ア)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲第6号証に記載された発明を対比すると、両者は、少なくとも次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「炭化水素ポリマー添加剤」が「炭化水素ポリマー添加剤の全重量の40重量%~80重量%の、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、及びメチルシクロペンタジエン由来含有量」とを有するものであるのに対し、甲第6号証に記載された発明においては、そうではない点。
<相違点4-2>
本件特許発明1においては、「炭化水素ポリマー添加剤」が「ASTM D6090に従って求めて、110℃~150℃の軟化点とを有する」ものであるのに対し、甲第6号証に記載された発明においては、そうではない点(甲第6号証の【0011】においては、軟化点は93~109℃である。)。
そして、本件特許発明1は、上記相違点4-1及び4-2に係る発明特定事項を含めた発明特定事項を有することにより、ウエットトラクション性能を向上させると同時に転がり抵抗を維持する又は低下させ得るという効果を奏するものである。
他方、甲第6号証に記載された発明の効果は、そのようなものではなく(甲第6号証の【0002】及び【0022】等によると、タイヤ用トレッドに採用されるゴム組成物における路面グリップ性、耐摩耗性、耐屈曲性、耐カット性及び耐ブローアウト性の向上である。)、また、甲第1ないし5号証の何れにも、相違点4-1及び4-2に係る本件特許発明1の発明特定事項により、上記効果が生じることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件特許発明1は、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(イ)本件特許発明2ないし4及び9について
本件特許発明2ないし4及び9は、請求項1を引用するものであるので、本件特許発明1と同様に、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(ウ)本件特許発明5について
本件特許発明5は、請求項5の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドを含有するタイヤの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(エ)本件特許発明6及び10について
本件特許発明6及び10は、請求項5を引用するものであるので、本件特許発明5と同様に、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(オ)本件特許発明7について
本件特許発明7は、請求項7の記載からみて、本件特許発明1の組成物を含むタイヤトレッドの発明であるから、本件特許発明1と同様に、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(カ)本件特許発明8及び11について
本件特許発明8及び11は、請求項7を引用するものであるので、本件特許発明7と同様に、甲第6号証に記載された発明及び甲第1ないし5号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ まとめ
したがって、甲第6号証を主引用文献とした場合の進歩性違反は理由がない。
(5)取消理由1についてのむすび
よって、取消理由1は理由がない。
2 取消理由2について
取消理由2は、具体的には、本件特許の請求項1及び5ないし8の「重量平均分子量」という記載について、発明の詳細な説明に重量平均分子量の測定方法が何ら記載がなく、重量平均分子量の範囲は明瞭でないから、本件特許の請求項1ないし11に係る発明は不明確であるというものである。
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、上記観点から、以下検討する。
重量平均分子量の測定方法については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法や光散乱法などの複数の測定方法があり、本件特許発明においても、いずれかの測定方法を採用して測定していることは当業者の出願時における技術常識から明らかである。
また、測定方法の違いによって、測定された重量平均分子量が特許を受けようとする発明の範囲を不明確にするほど異なるものではないというのが当業者の出願時における技術常識である。
したがって、本件特許の請求項1及び5ないし8の「重量平均分子量」という記載について、発明の詳細な説明に重量平均分子量の測定方法が何ら記載されていないとしても、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確なものとはいえない。
よって、取消理由2は理由がない。
第5 結語
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700671