特許異議申立
2017-700617
新規な構造用接着剤及びその使用
- 審判番号
- 2017-700617
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-511381
- 登録番号
- 特許第6049705号(P6049705)
- 請求日
- 2017年06月19日
- 審決日
- 2018年06月29日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
- 【権利者代理人】小林 浩
- 【権利者代理人】大森 規雄
- 【権利者代理人】植竹 友紀子
- 【権利者代理人】鈴木 康仁
- 【異議申立人】高橋 美穂
- 審判長/審判官
- 審判長 冨士 良宏
- 審判官 阪▲崎▼ 裕美
- 審判官 原 賢一
- 分類
- P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.161-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法29条の2特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条の2、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6049705号発明「新規な構造用接着剤及びその使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6049705号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8について訂正することを認める。
特許第6049705号の請求項1ないし6、8に係る特許を維持する。
特許第6049705号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6049705号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成24年5月1日(優先権主張 平成23年5月19日 米国)を国際出願日とする出願であり、平成28年12月2日にその特許権の設定登録がされ、平成29年6月19日に、その特許について特許異議申立人高橋 美穂(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年10月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年1月23日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、同年3月28日付けで異議申立人より意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正事項
上記平成30年1月23日付け訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、本件特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであって、その具体的訂正事項は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「エポキシ樹脂及び硬化剤を含む」とあるのを、「エポキシ樹脂、硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み、」と訂正する。さらに、特許請求の範囲の請求項1に「0.3~5wt%の、少なくとも1種の硬化加速剤を含み」とあるのを、「硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「エポキシ接着剤であって」とあるのを、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられるエポキシ接着剤であって」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比」とあるのを、「硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「7~11であり」とあるのを、「7~9であり」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「硬化剤がジシアンジアミドである」とあるのを、「硬化剤がジシアンジアミドであり、硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンである」と訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~7についても同様に訂正する。)
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4に「靭性化剤、無機充填剤、チクソトロピー性付与剤、粘度調節剤、シリカ、希釈剤、接着促進剤、界面活性剤、湿潤剤、柔軟化されたエポキシ剤、ゲル化化合物、難燃剤、顔料、及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含む」とあるのを、「無機充填剤、チクソトロピー性付与剤、粘度調節剤、シリカ、希釈剤、接着促進剤、界面活性剤、湿潤剤、柔軟化されたエポキシ剤、ゲル化化合物、難燃剤、顔料、及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含み、靭性化剤は、ゴムエポキシ樹脂を含み、硬化加速剤は、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックス中に組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである」と訂正する。
(請求項4を引用する請求項5~7についても同様に訂正する。)
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「を含む製造方法であって」とあるのを、「を含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法であって」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項8に「エポキシ接着剤がエポキシ樹脂及び化学量論量未満又は化学量論量の硬化剤を含み」とあるのを、「エポキシ接着剤がエポキシ樹脂、化学量論量未満又は化学量論量の硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項8に「硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比」とあるのを、「硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「7~11であり、エポキシ接着剤が0.3~5wt%の、少なくとも1種の硬化加速剤を含み」とあるのを、「7~9であり、硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項8に「硬化剤がジシアンジアミドである」とあるのを、「硬化剤がジシアンジアミドであり、硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンである」と訂正する。
2 訂正事項の訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 上記訂正事項1の内、エポキシ接着剤が「エポキシ樹脂、硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み」とする訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)は、訂正前の請求項1で特定されていた「エポキシ樹脂」、「硬化剤」、及び「少なくとも1種の硬化加速剤」に加えて、「靭性化剤」をエポキシ接着剤が含むことを具体的に特定し、訂正後の請求項1に係る発明におけるエポキシ接着剤に含まれる成分をさらに限定するものであるから、上記訂正事項1-1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項1の内、訂正事項1-1の訂正に伴い、訂正前の請求項1の「0.3~5wt%の、少なくとも1種の硬化加速剤を含み、」を、「硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり」と訂正した(以下、「訂正事項1-2」という。)。上記訂正事項1-2は、訂正前の請求項1において、硬化加速剤の量が何に対する量であるのか明らかでなかったものを、エポキシ接着剤に対する量であることを明確にし、特定量の硬化加速剤を含むものであるから、上記訂正事項1-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項1は、請求項2~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も特許請求の範囲の減縮ないし明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 上記訂正事項1-1は、訂正前の請求項4及び願書に添付した明細書の段落【0026】の「本発明はまた、エポキシ接着剤が、靭性化剤、・・・及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含んでもよい組成物、物品、及び方法を提供する。」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項1-2は、訂正前の請求項1の記載を明確にしたものであるから、上記訂正事項1-1及び1-2は、いずれも新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項1-1は、訂正前のエポキシ接着剤の成分をさらに限定するものであり、上記訂正事項1-2は、訂正前の記載を明確にするものであるから、いずれの訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項1-1及び1-2は、いずれも一群の請求項ごとに請求されたものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「エポキシ接着剤」を、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられるエポキシ接着剤」に用途を具体的に特定し、限定するものであるから、上記訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項2は、請求項2~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項2は、願書に添付した明細書の段落【0003】、【0036】の「CKDシステムにおいて、最終的な組み立て場所への輸送に先立って、部品が部分的に組み立てられることがある。特に、第1の場所(例えば自動車部品工場)において、構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合されることがあり、それが次に、例えば昇温により、部分的に硬化される。部分的に組み立てられた構成部品は、次に、第2の場所、例えば最終的な組み立て場所、へ輸送される。典型的には、第2の場所において、更なる組み立てが行われ、そして、(第1の場所において開始された)硬化工程が完了する。」、「本発明はエポキシ接着剤を提供し、そして、例えばCKD組み立てシステムにおける、そのエポキシ接着剤の使用方法を提供する。・・・」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項2は、訂正前の請求項1の「エポキシ接着剤」の用途を特定したものであるから、上記訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項2は、訂正前のエポキシ接着剤の用途をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項2は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3は、技術的に意味を成していなかった訂正前の請求項1の「硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比」を、「硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比」としたものであるから、上記訂正事項3は、誤記の訂正を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項3は、請求項2~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も誤記の訂正を目的とするものである。
イ 上記訂正事項3は、願書に最初に添付した明細書の段落【0044】には「DICYのモル数に対するエポキシの当量の比」という記載があり、同段落【0043】には「・・・DICYのモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比を計算するためには、次の換算を行うことができる。組成物の各々のエポキシド基含有成分の重量を、それぞれの当該成分のエポキシ当量重量で除し、これらを加算することで、組成物の全エポキシ当量が出る。次に、このようにして得た合計のエポキシ当量を、組成物中の、例えばDICYである硬化剤のモル数で除することにより、所望の比が得られる。・・・」等の記載に基づいて、誤記を修正するものであるから、上記訂正事項3は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載について誤記修正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項3は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(4)訂正事項4について
ア 上記訂正事項4は、訂正前の請求項1の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比「7~11」を「7~9」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項4は、請求項2~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項4は、願書に添付した明細書の段落【0044】の「・・・DICYのモル数に対するエポキシの当量の比は、好ましくは6超又は約6、より好ましくは6.5超又は約6.5、最も好ましくは7超又は約7の量にて存在する。好ましくは、モルDICYに対するエポキシの当量の比は、エポキシ接着剤の11未満又は約11、より好ましくは10未満又は約10、最も好ましくは9未満又は約9にて存在する。」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項4は、訂正前の請求項1の記載を限定したものであるから、上記訂正事項4は、いずれも新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項4は、訂正前の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比をさらに限定するものであり、上記訂正事項4は、訂正前の記載を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項4は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(5)訂正事項5について
ア 上記訂正事項5は、訂正前の請求項1の「硬化加速剤」を、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」に限定するものであり、硬化加速剤を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2~7は、請求項1を引用するものであるから、訂正事項5は、請求項2~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項5は、願書に添付した明細書の段落【0053】の「・・・熱硬化可能なエポキシ接着剤のための好ましい硬化加速剤としては、ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンが挙げられる。・・・」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項5は、訂正前の請求項1の記載を限定したものであるから、上記訂正事項5は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項5は、訂正前の硬化加速剤をさらに限定するものであり、上記訂正事項5は、訂正前の記載を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項5は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6は、訂正事項1により訂正後の請求項1においてエポキシ接着剤が「靭性化剤」を含むことを具体的に特定したことに伴い、訂正前の請求項4の「靭性化剤、無機充填剤、チクソトロピー性付与剤、粘度調節剤、シリカ、希釈剤、接着促進剤、界面活性剤、湿潤剤、柔軟化されたエポキシ剤、ゲル化化合物、難燃剤、顔料、及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含む」との記載から、「靭性化剤」を削除し、しかも、「靭性化剤は、ゴムエポキシ樹脂を含み」と記載することにより、「靭性化剤」に含まれる成分を具体的に特定するものである(以下、「訂正事項6-1」という。)。さらに、「硬化加速剤は、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックス中に組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである」との記載により、訂正前の請求項4の硬化加速剤を更に具体的に特定するものである(以下、「訂正事項6-2」という。)。
したがって、訂正事項6-1及び訂正事項6-2は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項5~7は、請求項4を引用するものであるから、訂正事項6は、請求項5~7についても同様の訂正を行うものであるところ、当該訂正も特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項6-1及び6-2は、願書に添付した明細書の段落【0053】の「・・・熱硬化可能なエポキシ接着剤のための好ましい硬化加速剤としては、ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンが挙げられる。好ましい例は、その開示が参照により組み込まれるEP-A-0 197 892に記載されているような、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックス中に組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである。」、段落【0046】の「本発明の組成物及び方法においては、場合により靭性化剤が用いられる。例えばRAM靭性化剤及びゴムエポキシ樹脂、並びにそれらの組み合わせを含む、任意の靭性化剤を用い得る。」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項6-1及び6-2は、訂正前の請求項4の記載を限定したものであるから、上記訂正事項6-1及び6-2は、いずれも新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項6-1及び6-2は、訂正前の靭性化剤及び硬化加速剤をさらに限定するものであり、上記訂正事項6-1及び6-2は、訂正前の記載を限定するものであるから、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項6-1及び6-2は、いずれも一群の請求項ごとに請求されたものである。
(7)訂正事項7について
上記訂正事項7は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると共に、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(8)訂正事項8について
ア 訂正事項8は、訂正前の請求項8の「製造方法」を、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法」に用途を具体的に特定し、限定するものであるから、上記訂正事項8は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項8は、願書に添付した明細書の段落【0003】、【0036】の「CKDシステムにおいて、最終的な組み立て場所への輸送に先立って、部品が部分的に組み立てられることがある。特に、第1の場所(例えば自動車部品工場)において、構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合されることがあり、それが次に、例えば昇温により、部分的に硬化される。部分的に組み立てられた構成部品は、次に、第2の場所、例えば最終的な組み立て場所、へ輸送される。典型的には、第2の場所において、更なる組み立てが行われ、そして、(第1の場所において開始された)硬化工程が完了する。」、「本発明はエポキシ接着剤を提供し、そして、例えばCKD組み立てシステムにおける、そのエポキシ接着剤の使用方法を提供する。・・・」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項8は、訂正前の請求項8の「製造方法」の用途を特定したものであるから、上記訂正事項8は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項8は、訂正前の製造方法の用途をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項8は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(9)訂正事項9について
ア 訂正事項9は、訂正後の請求項8に係る発明のエポキシ接着剤が、「エポキシ樹脂」、「硬化剤」、及び「少なくとも1種の硬化加速剤」に加えて、「靭性化剤」を含むことを具体的に特定し、訂正後の請求項8に係る発明におけるエポキシ接着剤に含まれる成分をさらに限定するものであるから、上記訂正事項9は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項9は、訂正前の請求項4及び願書に添付した明細書の段落【0026】の「本発明はまた、エポキシ接着剤が、靭性化剤、・・・及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含んでもよい組成物、物品、及び方法を提供する。」等の記載に基づくものであるから、上記訂正事項9は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項9は、訂正前のエポキシ接着剤の成分をさらに限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項8は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(10)訂正事項10について
ア 訂正事項10は、技術的に意味を成していなかった訂正前の請求項8の「硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比」を、「硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比」としたものであるから、上記訂正事項10は、誤記の訂正を目的とするものである。
イ 上記訂正事項10は、願書に最初に添付した明細書の段落【0044】には「DICYのモル数に対するエポキシの当量の比」という記載があり、同段落【0043】には「・・・DICYのモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比を計算するためには、次の換算を行うことができる。組成物の各々のエポキシド基含有成分の重量を、それぞれの当該成分のエポキシ当量重量で除し、これらを加算することで、組成物の全エポキシ当量が出る。次に、このようにして得た合計のエポキシ当量を、組成物中の、例えばDICYである硬化剤のモル数で除することにより、所望の比が得られる。・・・」等の記載に基づいて、誤記を修正するものであるから、上記訂正事項10は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項10は、訂正前の請求項8の記載について誤記修正するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項10は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
(11)訂正事項11について
ア 上記訂正事項11は、訂正前の請求項8の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比「7~11を「7~9」に限定し(以下、「訂正事項11-1」)、さらに、訂正事項9により、訂正前の請求項8において「エポキシ接着剤が・・・少なくとも1種の硬化加速剤・・・を含み」との記載にしたことに伴い、訂正前の請求項8における「エポキシ接着剤が0.3~5wt%の、少なくとも1種の硬化加速剤を含み」という記載を、「硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり」と訂正したものである(以下、「訂正事項11-2」という。)。上記訂正事項11-1は、訂正事項8に係る硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比の数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項11-2は、訂正前の請求項8において、硬化加速剤の量が何に対する量であるのか明らかでなかったものを、エポキシ接着剤に対する量であることを明確にし、特定量の硬化加速剤を含むことを特定するものであるから、上記訂正事項11-2は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 上記訂正事項11-1は、願書に添付した明細書の段落【0044】の「・・・DICYのモル数に対するエポキシの当量の比は、好ましくは6超又は約6、より好ましくは6.5超又は約6.5、最も好ましくは7超又は約7の量にて存在する。好ましくは、モルDICYに対するエポキシの当量の比は、エポキシ接着剤の11未満又は約11、より好ましくは10未満又は約10、最も好ましくは9未満又は約9にて存在する。」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項11-1は、訂正前の請求項8の記載を限定したものであり、上記訂正事項11-2は、訂正前の請求項8の記載を明確にしたものであるから、上記訂正事項11-1及び11-2は、いずれも新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項11-1は、訂正前の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比をさらに限定するものであり、上記訂正事項11-1は、訂正前の記載を限定するものであり、上記訂正事項11-2は、訂正前の記載を明確にするものであるから、いずれの訂正も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項11-1及び11-2は、いずれも一群の請求項ごとに請求されたものである。
(12)訂正事項12について
ア 上記訂正事項12は、訂正前の請求項8の「硬化加速剤」を、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」に限定するものであり、硬化加速剤を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項12は、願書に添付した明細書の段落【0053】の「・・・熱硬化可能なエポキシ接着剤のための好ましい硬化加速剤としては、ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンが挙げられる。・・・」等の記載に基づくものであり、上記訂正事項12は、訂正前の請求項8の記載を限定したものであるから、上記訂正事項12は、新規事項を追加するものではない。
ウ 上記訂正事項12は、訂正前の硬化加速剤をさらに限定するものであり、上記訂正事項12は、訂正前の記載を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
エ そして、上記訂正事項12は、一群の請求項ごとに請求されたものである。
3 小括
上記「2」のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1ないし7〕、単一の請求項である請求項8について訂正することを求めるものであり、それらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第3項、第4項及び第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし7〕、8について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1ないし8に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」、「本件発明1」に対応する特許を「本件特許1」などどいい、併せて「本件発明」、「本件特許」ということがある。)の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられるエポキシ接着剤であって、
硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満又は化学量論量であり、
硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比が、7~9であり、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFのジグリシジルエーテル;テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ノボラック系エポキシ樹脂;トリスエポキシ樹脂;又はアクリル酸グリシジル;メタクリル酸グリシジル若しくはアリルグリシジルエーテルから選択される不飽和モノエポキシドが重合したホモポリマー若しくはコポリマーからなる群から選択され、
硬化剤がジシアンジアミドであり、
硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンである、前記接着剤。
【請求項2】
部分的に硬化可能な接着剤である、請求項1に記載のエポキシ接着剤。
【請求項3】
一般式
【化4】
(式中、nは0から約25の範囲にある)を有するエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載のエポキシ接着剤。
【請求項4】
無機充填剤、チクソトロピー性付与剤、粘度調節剤、シリカ、希釈剤、接着促進剤、界面活性剤、湿潤剤、柔軟化されたエポキシ剤、ゲル化化合物、難燃剤、顔料、及びそれらの2種以上の組み合わせの少なくとも1種を含み、
靭性化剤は、ゴムエポキシ樹脂を含み、
硬化加速剤は、ポリ(p-ビニルフェノール)マトリックス中に組み込まれた2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールである、請求項1から3のいずれかに記載のエポキシ接着剤。
【請求項5】
第1の表面及び第2の表面を含む製造物品であって、請求項1から4のいずれかに記載のエポキシ接着剤が第1及び第2の表面に接している、前記製造物品。
【請求項6】
エポキシ接着剤樹脂が部分的に硬化された、請求項5に記載の製造物品。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
2つの構成部品の間にエポキシ接着剤を塗布するステップと、第1の硬化段階においてエポキシ接着剤を予備硬化し、少なくとも部分的に硬化された物品を得るステップとを含み、
第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法であって、
エポキシ接着剤が2つの構成部品を接合し、エポキシ接着剤がエポキシ樹脂、化学量論量未満又は化学量論量の硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み、
硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比が、7~9であり、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFのジグリシジルエーテル;テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ノボラック系エポキシ樹脂;トリスエポキシ樹脂;又はアクリル酸グリシジル;メタクリル酸グリシジル若しくはアリルグリシジルエーテルから選択される不飽和モノエポキシドが重合したホモポリマー若しくはコポリマーからなる群から選択され、
硬化剤がジシアンジアミドであり、
硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンである、前記製造方法。」
第4 平成29年10月2日付けで通知した取消理由の概要
1 取消理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号・同法同条第2項
訂正前の請求項1ないし3,5に係る発明は、下記甲1に記載された発明であるか、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであり、訂正前の請求項4に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知の技術的事項(甲2~甲5)、訂正前の請求項6,8に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知の技術的事項(甲2、甲3、甲6、甲7)に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。
また、訂正前の請求項1ないし6,8に係る発明は、下記甲2に記載された発明であるか、甲2に記載された発明及び周知の技術的事項(甲3~甲5)に基づいて、当業者が容易に発明できたものである。
そうすると、訂正前の請求項1ないし6,8に係る発明の特許は、特許法第29条第1項又は同法同条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由1」又は「取消理由2」という)。
上記特許法第29条第1項第3号に関する理由は、特許異議申立て(以下、単に「異議申立て」という。)の甲1又は甲2を主引例とする訂正前の請求項1ないし3,5又は請求項1ないし6,8に対する新規性欠如に関する理由と同趣旨である。
また、上記特許法第29条第2項に関する理由は、異議申立ての甲1を主引例とする訂正前の請求項1ないし6,8に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨であり、甲2を主引例とする訂正前の請求項1ないし6,8に対する進歩性欠如に関する理由と同趣旨である。
(2)特許法第29条の2
訂正前の請求項1ないし5に係る発明は、下記先願8に記載された発明である。
また、訂正前の請求項1ないし6,8に係る発明は、下記先願9に記載された発明である。
そうすると、訂正前の請求項1ないし6,8に係る発明の特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由3」という)。
上記特許法第29条の2に関する理由は、異議申立ての先願8又は先願9を先願発明8,9とする訂正前の請求項1ないし5又は請求項1ないし6,8に対する理由と同趣旨である。
(3)特許法第36条第6項第1号
訂正前の請求項1ないし6,8に係る発明は、要するに、段落【0065】~【0077】の実施例で使用された本件発明1,8の発明の要件であるエポキシ樹脂が、「Dowより入手可能のエポキシ樹脂」を使用した例に留まる点で、本件発明1,8に記載の「ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFのジグリシジルエーテル;テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ノボラック系エポキシ樹脂;トリスエポキシ樹脂;又はアクリル酸グリシジル;メタクリル酸グリシジル若しくはアリルグリシジルエーテルから選択される不飽和モノエポキシドが重合したホモポリマー若しくはコポリマーからなる群から選択され」るものを使用しているかも明らかでないので、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるともいうことはできない。
よって、訂正前の請求項1ないし6,8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(以下、「取消理由4」という)。
上記特許法第36条第6項第1号に関する理由は、異議申立ての訂正前の請求項1ないし6,8に対する理由と同趣旨である。
記
甲1:垣内 弘監修、エポキシ樹脂硬化剤の新展開、第1刷、p.108~111、株式会社 シーエムシー発行、1994年5月31日
甲2:大隈 幸政著、「一液性エポキシ樹脂」、スリーボンド・テクニカルニュース、p.1~10、株式会社 スリーボンド発行、昭和62年10月1日
甲3:特開平11-61072号公報
甲4:国際公開第2009/058295号
甲5:特開2005-272647号公報
甲6:特開2009-29933号号公報
甲7:特開2004-352855号公報
甲8:特願2009-270782号(特開2011-111570号)
甲9:特願2010-234485号(特開2011-116950号)
上記文献の他、平成30年3月28日付け意見書において、以下の甲号証が追加された。
甲10の1:特開2010-132732号公報
甲10の2:特開2010-189542号公報
甲10の3:特開2010-132830号公報
甲11の1:特開平7-165885号公報
甲11の2:特開2010-270285号公報
甲12の1:D.E.R.354 液体エポキシ樹脂 製品情報
甲12の2:D.E.R.TM542 臭素化エポキシ樹脂 製品情報
甲13:特開2005-97408号公報
第5 取消理由1及び取消理由2に関する当審の判断
1 甲号証に記載の事項
(1)甲1(垣内 弘監修、エポキシ樹脂硬化剤の新展開、第1刷、p.108~111、株式会社 シーエムシー発行、1994年5月31日)
甲1には、次の記載がある。
(1-1)「3.4 ジシアンジアミド系
ジシアンジアミド(DICY)は融点が207~210℃と高く、代表的な分散型潜在性の硬化剤で銅張積層板、接着剤、粉体塗料などに使用されている。しかし、単独で硬化剤として使用すると硬化開始温度が高く、また、硬化時の発熱が大きいためイミダゾール化合物や第三アミンが硬化促進剤として併用されている。
DICYは潜在性が高く、かつ安価であるだけでなく、イミダゾールなどと併用すると接着力や被着体への密着性が向上することはよく知られており、その意味からも接着剤や銅張積層板用ソルダーレジストインキには欠かせない硬化剤である。そのためにDICYに手を加え微粉化して使用を容易にしたり、促進剤を混合して硬化性を向上させた複合DICYが市販されている。それらを表9に示す。
・・・(中略)・・・
DICYは分子中の4個の活性水素およびCN基のエポキシドとの反応と重合触媒としての作用があり、添加量は活性水素から求めた化学理論量より少ない量が使用されている。」(109頁1行~111頁2行)
(2)甲2(大隈 幸政著、「一液性エポキシ樹脂」、スリーボンド・テクニカルニュース、p.1~10、株式会社 スリーボンド発行、昭和62年10月1日)
甲2には、次の記載がある。
(2-1)「1.概要
一液性エポキシ樹脂といっても、配合の基本となるエポキシ樹脂は二液性エポキシ樹脂と共通ですし、各改良手法、開発手法も共通性が高く、一液化の技術は、そのほとんどが硬化剤で決定される。したがって、今回のレポートの配合技術は、エポキシ配合樹脂全般にかかわるものと理解してください。また、エポキシ樹脂の特長は、その安定性による配合の自由度の大きさにあり、基本となるエポキシ樹脂の特性の良さと相まって、数々の配合手法が提案され、考えられていることにあり、今回は、その基本的な部分、配合物の構成と役割に触れ、さらに一液性エポキシ樹脂に与えられた機能とその用途例について紹介する。
2.エポキシ樹脂の分野別需要
エポキシ樹脂は表1にある通り、塗料と電気を中心に広い範囲にわたってその需要は存在する。ここ10年ほどの動きとして、一般塗料から、自動車用塗料へ、そして今は、電気用へと需要の中心が移って来ており、特にここ数年は、FA、OA機等に代表される電子機械のIC、LSIの封止材の需要の伸びが続いている。
3.エポキシ樹脂とは
エポキシ樹脂の定義は、1分子中に2個以上のオキシラン環(エポキシ基)を有し、適当な硬化剤によって3次元化した硬化物を与える化合物の総称である。しかし、一般的には、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの反応で製造されるビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)を指すことが多く、現在のエポキシ樹脂の市場の75%前後を占めている。わが社の商品でも、一液性エポキシ樹脂で50~60%、さらに二液性エポキシ樹脂では90%以上がDGEBAに属すか、これとの配合物となっており、エポキシ樹脂の代名詞となっている。
DGEBAを代表例としてその構造と性能を次に説明する。」(2頁)
(2-2)「4.エポキシ樹脂配合物の構成とその役割
表2にあるように、一液性、二液性を問わず、エポキシ樹脂配合物は、エポキシ樹脂単体で材料として使用されることは少なく、それらに各種改良剤、希釈剤等が成分として加えられ、用途に合った強度、流れ性あるいは耐熱性等が与えられ、配合物として使用される。
・・・(中略)・・・
4-2.硬化剤のいろいろ
エポキシ樹脂の硬化剤もエポキシ樹脂と同様に非常に多く存在し、その説明をするとそれだけで、このレポートが終わってしまうので、ここでは一液性における潜在性硬化剤についてのみ説明する。
潜在性硬化剤を分類すると、表3のように分けられるが、わが社も含めて、一般に実用化しているものは、熱硬化型がほとんどであり、さらに熱硬化型でも、溶解反応型がそのほとんどとなっている。
代表的な例としてジシアンジアミドを中心に熱溶解反応型硬化剤についてその特徴や性質について紹介する。
《ジシアンジアミド及びその誘導体》
融点が207~210℃の高融点の結晶で、エポキシ樹脂中に微粉末の状態で分散させると6~12ヶ月のポットライフが見込まれ、イミダゾール等に比べ、長く安定である。添加量は、DGEBAに4~10部程度、添加して用いる。
硬化は160~180℃で1時間~数時間と高温が要求され、硬化時の発熱も大きい。また、比重が高いことから、沈降が起きやすく、注型等には不向きで、塗料、接着、積層などに用いられる。
多くの場合、欠点である硬化温度の改善のため、下記の配合例にもあるように促進剤を併用し、より低い温度で早く硬化させる努力がなされており、促進剤の開発もさかんである。
《配合物の特性》
硬化条件 120℃×30分
せん断強度 150kgf/cm2
ガラス転移点 125℃
また、配合物は電気電子用途の接着や金属腐食がないため、端子のシール、また、その強い接着力から構造用接着剤として、また、安価なことから、プリプレグ用や粉体塗装用として幅広く利用されている。
4-3.可撓性付与剤・耐衝撃性付与剤
・・・(中略)・・・
4-5.充てん剤
・・・(中略)・・・
4-6.希釈剤
・・・(中略)・・・
4-7.揺変剤
・・・(後略)」(4頁左欄4行~10頁右欄5行)
(3)甲3(特開平11-61072号公報)
甲3には、次の記載がある。
(3-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 エポキシ樹脂と、
前記エポキシ樹脂に対する硬化剤と、
充填剤と、
前記エポキシ樹脂100重量部に対し、2.0~10重量部のポリエチレン繊維とを含むことを特徴とする構造用エポキシ系接着剤組成物。」
(3-2)「【0021】そして、このような成分からなり、適度な粘度(稠度)に調整された構造用エポキシ系接着剤組成物は、例えば、車体のドア等のヘミング構造部の組立等に使用することができる。具体的には、この接着剤組成物を用いたヘミング構造部の組立は一般に次のようになされる。即ち、予め周縁を直角状に折曲げてフランジ状にヘム部を形成したアウタパネルのインナパネルとの接合部に、この接着剤組成物を、通常の塗付方法、例えば、シーラーガン等のノズルからの吐出等によってビード状に塗付し、そのアウタパネルの接合部にインナパネルの周縁の接合部を重ね合わせてセットし、その上にヘム部をプレスして折り重ねる(ヘミング加工)。これによって、接着剤組成物は両パネルの接合部間に充填される。その後直ちに予備加熱(プレヒート)してその接着剤組成物を予備硬化(プレキュア)させ、それによって、両パネルを仮止めする。次いで、その後に施された電着塗装塗膜の焼付乾燥時にその接着剤組成物を完全に硬化させ、接合部間を最終的に結合する。ここで、予備加熱は、一般に、高周波誘導加熱装置によって、または、送風ブロアと連結したヒータノズルからホットエアを吹付けることによって、急激に、例えば、約30秒程度で、接着剤組成物の加熱面(熱が加えられる表面)を200~250℃程度に昇温するが、本発明の接着剤組成物によれば、この外部から加えられる熱と、それによるエポキシ樹脂の硬化反応によって内部で生じる熱とにより急激に組成物層の内部の温度が上昇するのを、ポリエチレン繊維が軟化溶融する際にその熱を奪うことによって抑え、それによって発泡を防ぐことができる。」
(3-3)「【0022】
【実施例】以下、本発明の一実施の形態を実施例及び比較例により、更に、具体的に説明する。
【0023】図1は本発明の一実施の形態の実施例及び比較例の構造用エポキシ系接着剤組成物の配合組成と、評価試験の結果とを示す表図である。
【0024】〔構造用エポキシ系接着剤組成物の調製〕図1に示す配合組成(重量部)で、実施例1乃至実施例3の構造用エポキシ系接着剤組成物を次のように調製した。また、これらの実施例との対比のために、比較例1乃至比較例3の構造用エポキシ系接着剤組成物も合わせて調製した。なお、これらの接着剤組成物は、車体のドア等のヘミング構造部に使用される構造用接着剤組成物(ヘミング用接着剤組成物)として具体化したものである。
【0025】ここで、主剤成分としてのエポキシ樹脂としては、ビスフェノールAグリシジルエーテル形エポキシ樹脂(『EP4100E』旭電化工業(株)製/エポキシ当量180~200)と、ウレタン変性グリシジルエーテル形エポキシ樹脂(『EPU-73』旭電化工業(株)製/エポキシ当量220~250)と、ゴム変性グリシジルエーテル形エポキシ樹脂(『EP-4024』旭電化工業(株)製/エポキシ当量220~260)とを、重量比で50:40:10の割合で併用した。
【0026】また、このようなエポキシ樹脂に対する硬化剤としては、ジシアンジアミド(『CG1400』エーシーアイジャパン(株)製)と、その硬化促進剤である3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア(『DCMU』保土谷化学(株)製)とを、重量比で2:1の割合で使用した。
【0027】充填剤としては、炭酸カルシウム(『NCO#45』日東粉化(株)製)を使用した。更に、反応性希釈剤として1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(『ED503』旭電化工業(株)製)を使用し、また実施例1及び実施例2、比較例2及び比較例3では、チキソ剤としてコロイダルシリカ(『TS720』CABOT Corporation製)を使用した。」
(4)甲4(国際公開第2009/058295号)
甲4には、次の記載がある。なお、翻訳は当審によるものである。
(4-1)「〔0004〕 また、本発明は、少なくとも1種のエポキシ樹脂、少なくとも1種の固体ジエン系ゴム、および少なくとも1つの熱活性型潜在性硬化剤とを含む、洗い落とされにくいエポキシペースト接着剤を提供する。」
(4-2)「チキソトロピー性付与剤/レオロジー制御剤
〔0020〕 また、本発明のエポキシペースト接着剤は好ましくはチキソトロピー性付与剤またはレオロジー制御剤の一種以上を含み、ジエン系ゴムに加えてよい。本発明の一実施形態では、接着剤は、少なくとも1つのヒュームドシリカ、好ましくは少なくとも1つの疎水性ヒュームドシリカを含有する。気相法シリカ揺変剤は、当技術分野でよく知られており、いくつかの商業的供給源から入手でき、Cabot CorporationによりCAB-O-SILという商標で販売されているヒュームドシリカ製品およびDegussaによりAEROSILの商標で販売されているヒュームドシリカ製品を含む。疎水性フュームドシリカは、化合物(通常はジメチルジクロロシラン、トリメトキシオクチルシラン、ポリジメチルシロキサン又はヘキサメチルジシラザンのような有機ケイ素化合物)と反応させてメチル基などの他の基を有するヒュームドシリカの表面上のヒドロキシル基の少なくとも一部が置換されているヒュームドシリカである。本発明で有用な具体的なヒュームドシリカには、限定はしないが、CAB-O-SIL TS-720及びAEROSIL US202が挙げられる。本発明の特定の実施形態では、ヒュームドシリカは、約80~約300m2/gの範囲のBET表面積および/または約0.5~約7重量%の炭素含量を有する。疎水性ヒュームドシリカの調製方法は当技術分野ではよく知られており、例えば、米国特許第2,739,075号および米国特許第2,786,042号に記載されている(各々の特許文献はその全体が参照される)。
・・・(中略)・・・
他の添加剤
〔0036〕 本発明の組成物はまた、種々の粉砕または沈降チョーク、石英粉末、アルミナ、ドロマイト、ナノクレーチキソトロピー剤、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、炭素繊維、金属粉末、ガラス繊維、重合体繊維、二酸化チタン、溶融シリカ、カーボンブラック、酸化カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、バライトおよび、特にアルミニウム-マグネシウム-カルシウムシリケート型のケイ酸塩充填剤以外の粘土、例えば珪灰石および緑泥石などの公知の充填剤を含有してもよい。このような充填剤のいくつかは、チキソトロピー、またはレオロジー調整剤としても機能することができる。充填剤は、微細に分割された粒子、繊維、小板などの形態をとることができる。典型的には、本発明の組成物は、約0.5~約35重量%の充填剤を含有してもよい。
〔0037〕 本発明の一実施形態では、組成物は、さらに、1種以上の膨張剤(当該技術分野において発泡剤と言及される)を含有する。得られた粘着剤の発泡性は、部品又は部材におけるギャップ又はキャビティの完全な充填が重要である用途において特に有用である、部品又は部材の最大の完全な構造を維持するためである。組成物は、1部又は一成分組成物として利用される場合、室温より大幅に高い温度に加熱(典型的には、接着剤の硬化が開始する温度範囲)したときのみ、接着剤の膨張又は発泡を引き起こす潜膨張剤であることが好ましい。いずれの適当な発泡剤は、化学的膨張剤、例えば、アゾ化合物、ニトロソ化合物、カルバジド、ヒドラジド等のような、使用することできる。膨張性マイクロスフェアである。膨張性微小球は、一般的に、軽質炭化水素またはハロカーボンのような1種以上の揮発性物質をカプセル化する小径の重合シェル又はバブルを含む。シェル内に捕捉された物質が揮発するよう加熱されると、マイクロスフェアの軟化及び発泡を可能にするために、外殻は通常熱可塑性である。シェルで用いられるポリマーは、直鎖、分岐鎖、又は架橋であってもよく、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ニトリルポリマー等から形成することができる。典型的には、膨張性微小球の平均粒子サイズは、約5~約100ミクロンの範囲である。適切な膨張性微小球は、Henkel Corporation(以前はPierce&Stevens)から商標名DUALITEで市販されている。典型的には、約10重量%(例えば、0.1~2重量%)まで発泡剤が存在してもよく、それは、任意の発泡剤を含有する本発明のエポキシペースト接着剤に関しては必要ではない。一実施形態では、接着剤は、選択された硬化温度で加熱すると発泡剤の量は、存在するエポキシペースト接着剤は、10~100%の体積に膨張させるのに有効な又は40から60重量%、さらにより大きい膨張率を有するエポキシペースト接着剤もまた、本発明に含まれる。
・・・(中略)・・・
〔0039〕 本発明に係る接着剤組成物は、他の一般的な補助剤および添加剤、例えば可塑剤、反応性および/または非反応性希釈剤(モノエポキシド)、流動助剤、カップリング剤(例えば、シラン)、接着促進剤(例えば、キレート化エポキシ樹脂)、湿潤剤、糸曳き防止剤(例えば、非晶質シリカの混合物及びフィブリル化ポリエチレン繊維のような)を含み得る。商品名SYLOTHIX53で販売されている製品、W.R.Grace)、粘着付与剤、難燃剤、殺生物剤、老化及び/または腐食防止剤、安定剤および/または着色顔料である。基材への接着剤の加工特性、柔軟性、必要な硬化作用および接着剤との接着用途の要求に応じて、個々の成分の相対的比率を比較的幅広い範囲内で変えることができる。」
(4-3)「実施例1
〔0049〕 予めブレンドしたゴムベースはNITRIFLEX N-8アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(NBR)27.0重量部、0.4重量部のNIPOL 1411アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム(アクリロニトリルに対して38重量%含有する。Zeon Chemicals)、35.1重量部のHUBERCARB Q325炭酸カルシウム及び37.6重量部のEPON 828エポキシ樹脂をよく混合することにより調製される。
〔0050〕 また、本発明によればエポキシペースト接着剤は、予めブレンドしたゴムベースを組み合わせた以下の成分の量は重量%で表されることにより調製される。
成分
エポキシ樹脂A1 31.0
エポキシ樹脂B2 2.0
エポキシ樹脂C3 2.0
シラン4 0.1
靭性化剤(Toughening Agent)5 24.0
予め調製したラバーベース 10.0
添加剤6 0.5
難燃化剤(Flame Retardant)7 0.5
酸化カルシウム 1.0
ジシアンジアミド8 6.0
レオロジー変性剤(Rheology Modifier)9 15.0
炭酸カルシウム10 4.0
発泡剤11 0.3
ヒュームドシリカ(Fumed Silica)12 2.5
糸引き防止剤(Anti-Stringing Agent)13 0.6
カーボンブラック14 0.2
促進剤15 0.3
・・・(後略)」
(5)甲5(特開2005-272647号公報)
甲5には、以下の記載がある。
(5-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の面積を有するパネル相互間の接合を行う構造用接着剤組成物において、
加熱硬化前には常温で流動状態であり、加熱硬化後のガラス転移温度を約60℃~約120℃の範囲内に設定し、かつ、前記パネルの温度の降下速度を前記構造用接着剤組成物の温度の降下速度よりも遅くしたことを特徴とする構造用接着剤組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項5】
液状エポキシ樹脂または液状エポキシ樹脂と変性エポキシ樹脂の混合物と、エポキシ系希釈剤と、硬化剤と、硬化促進剤とを含有し、
前記液状エポキシ樹脂は線状脂肪族エポキサイド型エポキシ樹脂または脂肪族エポキサイド型エポキシ樹脂であり、前記変性エポキシ樹脂はゴム変性エポキシ樹脂・ウレタン変性エポキシ樹脂・ダイマー酸変性エポキシ樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の構造用接着剤組成物。」
(5-2)「【0033】
構造用接着剤組成物の実施例1,2及び比較例1,2の組成を、表1にまとめて示す。
【0034】
【表1】
」
(6)甲6(特開2009-29933号号公報)
甲6には、以下の記載がある。
(6-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエポキシ化合物(A)とジカルボン酸化合物(B)とを重付加反応させてなるエステル型エポキシ樹脂であって、
数平均分子量が3500~30000、エポキシ当量が1000~15000g/eqであり、末端にエポキシ基を有するエステル型エポキシ樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のエステル型エポキシ樹脂と、エポキシ化合物(C)とを含んでなる樹脂組成物。
【請求項3】
更に硬化剤(D)を含んでなる請求項2記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項2又は3記載の樹脂組成物からなる接着剤組成物。
【請求項5】
プラスチックフィルム(1)、請求項4記載の接着剤組成物から形成される硬化性接着剤層(I)、及びプラスチックフィルム(2)が積層されてなる接着シート。
【請求項6】
請求項4記載の接着剤組成物から形成される硬化接着剤層(II)を介して、プラスチックフィルム(3)と銅箔とを貼り合わせてなるフレキシブル銅張板。」
(6-2)「【0067】
本発明の接着剤組成物の硬化方法は、従来公知の各種方法を用いることができる。例えば、硬化性接着剤層(I)を半硬化状態にするためには、80~150℃程度の温度で1~2分間乾燥させる方法、又、硬化性接着剤層(I)を硬化させて硬化接着剤層(II)とする方法としては、40~60℃の温度で3~5日程度のいわゆるエージングや、100~150℃の温度で1~4時間程度の硬化、180~200℃の温度で10~30分程度の硬化、200℃以上の温度で数秒~5分間程度の硬化方法等が用いられる。加熱の方法としては、恒温室でのエージングや、熱風乾燥炉、遠赤外線乾燥炉、高周波誘導加熱炉等の加熱方法が用いられる。又、加熱プレス機による加圧下での加熱等の方法も用いられることもある。」
(7)甲7(特開2004-352855号公報)
甲7には、以下の記載がある。
(7-1)「【特許請求の範囲】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機絶縁性フィルム上に接着剤層および保護フィルム層を有する半導体用接着剤付きテープにおいて、硬化前の接着剤層の150℃における動的粘弾性の貯蔵弾性率Eが10≦E≦200kPaであり、かつ散逸率Tが0.25≦T≦0.6であることを特徴とする半導体用接着剤付きテープ。
・・・(中略)・・・
【請求項5】
接着剤層が、エポキシ樹脂を少なくとも1種類以上含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の半導体用接着剤付きテープ。」
(7-2)「【0075】
(実施例1)
(a)TAB用テープの作成
参考例1で得られたポリアミド樹脂PA-1ならびにPA-2、表2に示したエポキシ樹脂(ジャパン・エポキシ・レジン(株)製、商品名CY177(エポキシ当量210)、表3に示したフェノール樹脂C(昭和高分子(株)製、(登録商標)“ショウノール”CKM1636)およびフェノール樹脂D(昭和高分子(株)製、(登録商標)“ショウノール”CKM908)を、それぞれ表4の接着剤の組成比(エポキシ樹脂および各フェノール樹脂の添加量は、ポリアミド樹脂100重量部に対する重量部を表すものとする)となるように配合し、さらに固形分に対し0.2重量%のジシアンジアミド(DICY)を硬化促進剤Fとして添加し、濃度20重量%となるようにメタノール(bp.64.5℃)/トルエン(bp.110.6℃)=20/80の混合溶媒に30℃で撹拌、混合して接着剤溶液を作成し、この接着剤溶液をバーコータで、参考例3で離型処理を施した保護フィルムAに約12μmの乾燥厚さとなるように塗布し、125℃、1分間の乾燥を行ない接着剤シートを作成した。さらに、得られた接着剤シートを厚さ75μmのポリイミドフィルム(宇部興産(株)製、(登録商標)“ユーピレックス”75S)に100℃、0.1MPaの条件でラミネートを行い、70℃、3日間エージング処理し、TAB用テープを作成した。」
2 刊行物に記載の発明
(1)甲1に記載された発明
甲1の上記摘示(1-1)から、「DGEBA型エポキシ樹脂100重量部、ジシアンジアミド5重量部、硬化促進剤1重量部含むエポキシ樹脂硬化物」が記載されており、当該硬化物を接着剤として使用する旨記載されているといえる。硬化促進剤は、その配合量から計算すると、当該含有量は0.9wt%となる。また、同(1-1)に、DICY(ジシアンジアミド)は分子中の4個の活性水素およびCN基のエポキシドとの反応と重合触媒としての作用があり、添加量は活性水素から求めた化学理論量より少ない量が使用されていることが記載されている。また、DGEBA型エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるのは明らかである。
そうすると、甲1には、
「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を含むエポキシ接着剤であって、
硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満であり、
硬化促進剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.9wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)甲2に記載された発明
甲2の上記摘示(2-2)に、「DGEBA、ジシアンジアミド4~10重量部含む配合物」であって、当該配合物は接着剤として使用されること、DGEBA100部に対してジシアンジアミドを8部及びジメチル尿素(促進剤)を3部含む配合物の具体例が記載されている。促進剤は、その配合量から計算すると、当該含有量は2.7wt%となる。また、DGEBAは、同(2-1)の記載のとおり、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。
そうすると、甲2には、「エポキシ樹脂、硬化剤及び促進剤を含むエポキシ接着剤であって、
促進剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、2.7wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
3 対比・判断
(1)甲1に記載された発明を主引用発明として
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との一致点・相違点
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「硬化促進剤」は、本件発明1の「硬化加速剤」に相当する。また、甲1発明の硬化加速剤の含有量(0.9wt%)とエポキシ樹脂の種類(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)は、本願発明1の0.3~5wt%の数値範囲とエポキシ樹脂の選択肢の一つと重複する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化加速剤を含むエポキシ接着剤であって、
硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満であり、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.9wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点1】
エポキシ接着剤の成分において、本件発明1は、「靭性化剤」を含むのに対し、甲1発明は、そのように明示されていない点。
【相違点2】
エポキシ接着剤が、本件発明1は、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」のに対し、甲1発明は、そのように明示されていない点。
【相違点3】
本件発明1は、硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比が、7~9であるのに対して、甲1発明は、そのように明示されていない点。
【相違点4】
硬化加速剤について、本件発明1は、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」であるのに対し、甲1発明は、そのように明示されていない点。
(イ)相違点に関する判断
事案に鑑みて、まず上記【相違点2】及び【相違点3】について検討する。
上記摘示(1-1)には、ジシアンジアミドを分散型潜在性の硬化剤として接着剤に使用することが記載されている。ここで、同(1-1)の表10には、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド及びイミダゾールと第三アミンの硬化促進剤を含む組成物が硬化し、接着力を発揮する旨記載されているものの、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」ことは、記載も示唆もなされていない。
一方、本件発明は、(1)硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比が7~9であること、(2)硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンであること、(3)CKD組み立てシステムに用いられることを特徴としており、本件発明の明細書の段落【0053】及び【0054】にも記載のとおり、硬化加速剤を含むことにより、潜在性触媒である硬化剤の活性化条件を適切に調節することができ、さらに、硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比を7~9の範囲とすることにより、同段落【0015】~【0017】に記載のような、CKD組み立てシステムの最終組み立て後(エージング後)に、完全な凝集破壊形態(バルク接着剤層内部の破壊)及びラップせん断強度の低下の縮小が達成されるという効果が得られたものである。
よって、上記【相違点2】及び【相違点3】は、実質的な相違点となるものである。
さらに、上記【相違点2】及び【相違点3】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。
上記摘示(1-1)には、ジシアンジアミドを分散型潜在性の硬化剤として接着剤に使用することが記載されていることは、前述したとおりであるが、接着剤の用途についての記載はない。上記摘示(1-1)には、「DGEBA型エポキシ樹脂100重量部、ジシアンジアミド5重量部、硬化促進剤1重量部含むエポキシ樹脂硬化物」が記載されており、DGEBA型エポキシ樹脂は、分子量が340であり、エポキシ基を2個有すること、ジシアンジアミドの分子量は84であることから、前記値より硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比を算出すると9.9となるが、本件発明1に記載の前記比を満たさないし、甲1には、CKDエージング後における破壊形態を考慮して、当該比を調製することは勿論のこと、当該比に着目して、当該比を特定の範囲にすることの記載も示唆もない。
また、甲2ないし9に開示された内容を子細に見ても、硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比を特定の範囲にすることによって、CKD組み立てシステムにおいて優れた強度を呈する接着剤を提供できることは、公知でもないし、周知の技術的事項でもない。
そうすると、上記【相違点2】及び【相違点3】に係る本件発明1の特定事項は、当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明の明細書の段落【0065】~【0077】の、特に【表1】、【表2】及び【表3】を参酌するに、ジシアンジアミドのモル数に対するエポキシの当量の比が7,9である場合に、部分的に硬化した接着剤層を初期のものとすると、特に40℃のエージング5週間後又は70℃のエージング7日後において、ラップせん断強度の初期からの変化率が前記比が3,4.9,6のものに比べ、明らかに小さくなっており、エポキシ接着剤において前記比が7,9を満たすことが、エージングを伴う用途において、優れた効果を発揮することが理解できる。そして、前記【表1】、【表2】及び【表3】に記載の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比とラップせん断強度との相関関係から、当該比が7と9の間も、連続的に比が7,9である場合と同様の優れた効果を奏すると認められる。
そうすると、本件発明1は、本件明細書の段落【0015】~【0017】の【発明が解決しようとする課題】として記載される「硬化剤の量を低減する(硬化剤に対するエポキシの比を増加する)ことにより、エージング後の破壊形態が大きく改善され、エージング後のラップせん断の低下が最小化される」という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、上記【相違点1】及び【相違点4】について検討するまでもなく、甲1発明及び甲2ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし6は、甲1発明及び甲2ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、2つの構成部品の間に本件発明1の接着剤を塗布するステップと、第1の硬化段階においてエポキシ接着剤を予備硬化し、少なくとも部分的に硬化された物品を得るステップを含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法である。
本件発明8は、本件発明1の接着剤を用いるものであるから、甲1発明との間には、少なくとも上記アで述べた【相違点2】及び【相違点3】が存在する。
そして、上記アでも述べたとおり、上記【相違点2】及び【相違点3】は、実質的な相違点となるものであり、当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明8は、他の相違点を検討するまでもなく、甲1発明及び甲2ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)甲2に記載された発明を主引用発明として
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲2発明との一致点・相違点
甲2発明の「促進剤」は、本件発明1の「硬化加速剤」に相当する。また、甲2発明の硬化加速剤の含有量(2.7wt%)とエポキシ樹脂の種類(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)は、本願発明1の0.3~5wt%の数値範囲とエポキシ樹脂の選択肢の一つと重複する。
そうすると、本件発明1と甲2発明は、
「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化加速剤を含むエポキシ接着剤であって、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、2.7wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点5】
エポキシ接着剤の成分において、本件発明1は、「靭性化剤」を含むのに対し、甲2発明は、そのように明示されていない点。
【相違点6】
エポキシ接着剤が、本件発明1は、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」のに対し、甲2発明は、そのように明示されていない点。
【相違点7】
本件発明1は、硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満又は化学量論量であるのに対して、甲2発明は、そのように明示されていない点。
【相違点8】
本件発明1は、硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比が、7~9であるのに対して、甲2発明は、そのように明示されていない点。
【相違点9】
硬化加速剤について、本件発明1は、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」であるのに対し、甲2発明は、そのように明示されていない点。
(イ)相違点に関する判断
事案に鑑みて、まず上記【相違点6】及び【相違点8】について検討する。
上記摘示(2-2)には、ジシアンジアミドを熱溶解反応型硬化剤としてエポキシ樹脂に添加し、接着接着などに使用することが記載されている。ここで、同(2-2)の配合例には、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド及びジメチル尿素の硬化促進剤を含む組成物が硬化し、接着力を発揮する旨記載されているものの、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」ことは、記載も示唆もなされていない。
一方、本件発明は、(1)硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比が7~9であること、(2)硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンであること、(3)CKD組み立てシステムに用いられることを特徴としており、本件発明の明細書の段落【0053】及び【0054】にも記載のとおり、硬化加速剤を含むことにより、潜在性触媒である硬化剤の活性化条件を適切に調節することができ、さらに、硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比を7~9の範囲とすることにより、同段落【0015】~【0017】に記載のような、CKD組み立てシステムの最終組み立て後(エージング後)に、完全な凝集破壊形態(バルク接着剤層内部の破壊)及びラップせん断強度の低下の縮小が達成されるという効果が得られたものである。
よって、上記【相違点6】及び【相違点8】は、実質的な相違点となるものである。
さらに、上記【相違点6】及び【相違点8】が、当業者が容易に想到し得るものであるのか否かについて検討する。
上記摘示(2-2)には、ジシアンジアミドを分散型潜在性の硬化剤として接着剤に使用することが記載されていることは、前述したとおりであるが、接着剤の用途についての記載はない。上記摘示(2-2)には、「DGEBA100重量部、ジシアンジアミド8重量部、ジメチル尿素3重量部含むエポキシ樹脂硬化物」が記載されており、DGEBAは、分子量が340であり、エポキシ基を2個有すること、ジシアンジアミドの分子量は84であることから、前記値より硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比を算出すると6.2となるが、本件発明1に記載の前記比を満たさないし、甲2には、CKDエージング後における破壊形態を考慮して、当該比を調製することは勿論のこと、当該比に着目して、当該比を特定の範囲にすることの記載も示唆もない。
また、甲1,3ないし9に開示された内容を子細に見ても、硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比を特定の範囲にすることによって、CKD組み立てシステムにおいて優れた強度を呈する接着剤を提供できることは、公知でもないし、周知の技術的事項でもない。
そうすると、上記【相違点6】及び【相違点8】に係る本件発明1の特定事項は、当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件発明の明細書の段落【0065】~【0077】の、特に【表1】、【表2】及び【表3】を参酌するに、ジシアンジアミドのモル数に対するエポキシの当量の比が7,9である場合に、部分的に硬化した接着剤層を初期のものとすると、特に40℃のエージング5週間後又は70℃のエージング7日後において、ラップせん断強度の初期からの変化率が前記比が3,4.9,6のものに比べ、明らかに小さくなっており、エポキシ接着剤において前記比が7,9を満たすことが、エージングを伴う用途において、優れた効果を発揮することが理解できる。そして、前記【表1】、【表2】及び【表3】に記載の硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比とラップせん断強度との相関関係から、当該比が7と9の間も、連続的に比が7,9である場合と同様の優れた効果を奏すると認められる。
そうすると、本件発明1は、本件明細書の段落【0015】~【0017】の【発明が解決しようとする課題】として記載される「硬化剤の量を低減する(硬化剤に対するエポキシの比を増加する)ことにより、エージング後の破壊形態が大きく改善され、エージング後のラップせん断の低下が最小化される」という格別の効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、上記【相違点5】、【相違点7】及び【相違点9】について検討するまでもなく、甲2発明及び甲1,3ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし6は、甲2発明及び甲1,3ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、2つの構成部品の間に本件発明1の接着剤を塗布するステップと、第1の硬化段階においてエポキシ接着剤を予備硬化し、少なくとも部分的に硬化された物品を得るステップを含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法である。
本件発明8は、本件発明1の接着剤を用いるものであるから、甲2発明との間には、少なくとも上記アで述べた【相違点6】及び【相違点8】が存在する。
そして、上記アでも述べたとおり、上記【相違点6】及び【相違点8】は、実質的な相違点となるものであり、当業者が容易に想到し得るものではないことから、本件発明8は、他の相違点を検討するまでもなく、甲2発明及び甲1,3ないし9に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 取消理由3に関する当審の判断
1 甲号証に記載の事項
(1)甲8(特願2009-270782号(特開2011-111570号))
上記甲8の当初明細書には、次の事項が記載されている。
(8-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品又は電気部品を気密封止する一液性エポキシ樹脂組成物であって、
液状エポキシ樹脂と、
ジシアンジアミドと、
フィラーと、
を含み、
上記フィラーの平均粒子径が0.1~1μmの範囲内であり、
上記フィラーにおける粒子径5μm以上の粒子の割合が20重量%以下であり、
上記フィラーの含有量が、上記エポキシ樹脂100重量部に対して5~60重量部の範囲内であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項3】
更に、熱潜在性硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
・・・(中略)・・・
【請求項9】
電子部品又は電気部品であって、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物によって、少なくとも2つの部材が接着されていることを特徴とする部品。」
(8-2)「【0071】
エポキシ樹脂組成物における、上記熱潜在性硬化促進剤の含有量は、用途に応じて適宜変更し得るが、例えば、2~30重量%の範囲で用いることができる。
・・・(中略)・・・
【0086】
〔5〕その他の成分
本実施の形態に係るエポキシ樹脂組成物では、上述した成分の他に、例えば、チクソ性付与剤、難燃剤、光安定剤、粘度調製剤、着色剤等の従来公知のエポキシ樹脂組成物に用い得る各種添加剤が混合されていてもよい。」
(8-3)「【実施例】
【0094】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
〔平均粒子径の測定方法〕
フィラーの平均粒子径は、レーザー回折散乱法(D50)を原理とした粒度分布測定装置(製品名:LA920、堀場製作所社製)によって測定した値に基づいて算出した。具体的には、上記測定した粒径分布における各ピークについて平均粒子径を求め、その含有割合が最も高いピークの平均粒子径を「フィラーの平均粒子径」とした。
【0096】
尚、各ピークの含有割合は、頻度分布比の面積によって判断した。ここで、複数のピークが重なっている場合には、適切な関数(ローレンツ型関数やガウス関数)により各ピークをそれぞれの関数でフィッティングし、最適な比率で差分する方法を用いることができる。より具体的には、粒度分布測定装置の付属ソフトや一般的な表計算ソフト(Excel、IGOR、Mathmatica等(何れも商品名))で計算をすることが可能である。
【0097】
〔粒子径が5μm以上の粒子の割合〕
粒子径が5μm以上の粒子の割合は、レーザー回折散乱法(D50)を原理とした粒度分布測定装置(製品名:LA920、堀場製作所社製)によって測定した値に基づいて算出した。
【0098】
〔未硬化成分の分離確認〕
作製したエポキシ樹脂組成物の未硬化分離確認試験は、2枚のガラス板を、互いの面が対向するように所定の間隔で固定し、ガラス板の面方向が重力方向となるようにこれら一組のガラス板を設置し、エポキシ樹脂組成物を当該ガラス板2枚の隙間に滴下後、常温で放置し、2枚のガラス板に挟まれた領域におけるエポキシ樹脂組成物の挙動を目視で観察することにより、未硬化エポキシ樹脂の存在の有無により判断した。
【0099】
目視での上記観察は、具体的には、まず、2枚のガラス板に挟まれた領域におけるエポキシ樹脂組成物において透明な部分が分離しているか否かを観察した。そして、透明な部分が分離していない場合には、未硬化成分の分離が発生していないとして◎と判断した。
【0100】
一方、透明な部分が分離していた場合には、2枚のガラス板を引き離し、当該透明な部分をピンセットで触り硬化の有無を確認し、当該部分が硬化している場合には未硬化成分の分離が発生していないとして◎と判断し、ゲル状である場合には○と判断し、液状の場合には、未硬化成分の分離が発生しているとして×と判断した。
【0101】
尚、2枚のガラス基板の隙間は、厚さが表5の隙間距離であるシックネスゲージを挟み込み調製した。
【0102】
〔実施例1〕
液状ビスフェノールAジグリシジルエーテル100重量部と、硬化剤としてジシアンジアミド7重量部と、熱潜在性硬化剤として2-エチル-4-メチルイミダゾールのエポキシ樹脂アダクト化合物(商品名:PN-23、味の素ファインテクノ社製)10重量部と、無機フィラーとして粒径0.9μmの炭酸カルシウム(商品名:カルテックス5、丸尾カルシウム社製)50重量部と、チクソトロピー性付与剤(チクソ性付与剤)として炭酸カルシウム微粒子(商品名:商品名:K-N-40、丸尾カルシウム社製)1重量部と、着色剤としてカーボンブラック(商品名:♯40、三菱化学社製)1重量部とを混合した後、ミキシングロールを使って混練し、一液性エポキシ樹脂組成物を調製した。得られた一液性エポキシ樹脂組成物について、未硬化成分の分離確認をした結果をその条件と共に表5に示す。
・・・(後略)」
(2)甲9(特願2010-234485号(特開2011-116950号))
上記先願9の当初明細書には、次の事項が記載されている。
(9-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維とマトリックス樹脂からなるCFRPプリプレグであって、
前記マトリックス樹脂を構成するエポキシ樹脂分を100質量部としたときに、当該エポキシ樹脂分は(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体を主体とするビスフェノールA型エポキシ樹脂を45~75質量部、(2)エポキシ基を3個以上有する多官能型であって且つ芳香環を有するエポキシ樹脂を55~25質量部含み、
前記マトリックス樹脂は、硬化剤としてジシアンジアミド粉体を3~6質量部含むことを特徴とするCFRPプリプレグ。」
(9-2)「【0027】
本発明者らは、以下のエポキシ樹脂を混合してマトリックス樹脂のエポキシ樹脂分を作成した。
(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体を主体とするビスフェノールA型エポキシ樹脂(以下の2つの混合物)
(1-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体
「JER828(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」
粘度:25℃で120~150P(常温で液状)
エポキシ当量:184~194
分子量:約370
(1-2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂オリゴマー
「JER1004(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」
粘度:25℃でQ~U(ガードナーホルト粘度)
エポキシ当量:875~975
分子量:約1650
(2)芳香環を有し且つエポキシ基を3個以上有する多官能型エポキシ樹脂(以下の2つの混合物)
(2-1)フェノールノボラック型エポキシ樹脂
「JER154(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」
粘度:52℃で350~650P(常温で固形)
エポキシ当量:176~180
(2-2)アニリンに3つのエポキシ基が付いたアニリン型エポキシ樹脂
「JER630(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」
粘度:25℃で5~10P(常温で液状)
エポキシ当量:90~105
【0028】
ここで、上記(2)としては、次の(2-3)を使用することもできる。
(2-3)4官能のエポキシ樹脂であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン
「JER604(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」
粘度:25℃で50~100P(常温で高粘度液体)
エポキシ当量:110~130」
(9-3)「【0041】
1液性エポキシ接着剤の組成は、前述したマトリックス樹脂と同様である。即ち、以下に示すものとなる。マトリックス樹脂を構成する全エポキシ樹脂混合物を100質量部としたときに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体を主体とするビスフェノールA型エポキシ樹脂を45~75質量部、エポキシ基を3個以上有する多官能型であって且つ芳香環を有するエポキシ当量180以下のエポキシ樹脂を55~25質量部混合したものである。このエポキシ樹脂混合物100質量部に対して、硬化剤としてジシアンジアミド粉体を3~8質量部添加し、更に硬化助剤として3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチルウレアを1~4質量部添加する。これに充填材として粒径分布の中心が10~30μmであるアルミニウム粉体を10~30質量部、粒径分布の中心が10~30μmのクレーを10~30質量部添加する。更に、これに粒径分布の中心が10~30μmの水酸基付きポリエーテルスルホン樹脂粉体を全エポキシ樹脂100質量部に対し0~30質量部添加することが好ましい。」
(9-4)「【0123】
[実験例33](コキュア法によるCFRP片とアルミニウム合金片の接着)
(1)マトリックス樹脂の作成
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の単量体が主成分の分子量約370のエポキシ樹脂「JER828(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、多官能型のフェノールノボラック型エポキシ樹脂「JER154(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、アニリン型の3官能エポキシ樹脂「JER630(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、4官能のエポキシ樹脂であるテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン「JER604(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、粒径分布の中心が16μmの純アルミニウム系アルミニウム合金粉体「フィラー用アルミニウムパウダー(東洋アルミニウム株式会社製)」、エポキシ樹脂の硬化剤である微粉型ジシアンジアミド「DICY7(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、硬化助剤として3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチルウレア「DCMU99(保土ヶ谷化学工業社製)」、粒径分布の中心が15μm径のクレー(焼成カオリン)「サテントン5(竹原化学工業株式会社製)」を入手した。
【0124】
乳鉢に「JER828」を50質量部、「JER154」を10質量部、「JER630」20質量部、「JER604」20質量部を取りエポキシ樹脂混合物100質量部とした。ここへ前記のアルミニウム粉体「フィラー用アルミニウムパウダー」15質量部、前記のクレー「サテントン5」を15質量部、硬化剤としての「DICY7」5質量部、及び硬化助剤としての「DCMU99」3質量部を取った。この乳鉢内容物を乳棒で3分混練した。1時間放置してから再度乳棒で1分混練した。このペースト状物をポリエチ瓶に取り5℃とした冷蔵庫に保管した。」
2 先願の当初明細書に記載の発明
(1)甲8(先願8)の当初明細書に記載された発明
先願8の当初明細書には、上記摘示(8-1)から、「液状エポキシ樹脂と、ジシアンジアミドと、フィラーとを含むエポキシ樹脂組成物」であって、更に、熱潜在性硬化促進剤を含むことが記載されている。また、当該組成物を少なくとも2つの部材を接着させる接着剤として使用する旨記載されている。また、同(8-3)に、液状エポキシ樹脂が液状ビスフェノールAジグリシジルエーテルであること、液状ビスフェノールAジグリシジルエーテル100重量部と、硬化剤としてジシアンジアミド7重量部と、熱潜在性硬化剤10重量部と、無機フィラー50重量部と、チクソトロピー性付与剤1重量部と、着色剤1重量部を含む一液性エポキシ樹脂組成物の具体例が記載されている。同(8-2)に、熱潜在性硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂組成物に対して、2~30重量%の範囲で使用できる旨記載されている。
そうすると、先願8には、「エポキシ樹脂、硬化剤及び熱潜在性硬化剤を含むエポキシ接着剤であって、
熱潜在性硬化剤の量が、前記エポキシ樹脂接着剤に対して、2~30wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」(以下、「先願発明8」という。)が記載されているといえる。
(2)甲9(先願9)の当初明細書に記載された発明
先願9の当初明細書には、同(9-3)から、「ビスフェノールA型エポキシ樹脂を45~75質量部、エポキシ基を3個以上有する多官能型であってかつ芳香環を有するエポキシ当量180以下のエポキシ樹脂を55~25質量部、ジシアンジアミド粉体を3~8質量部、硬化助剤として3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチルウレアを1~4質量部添加した1液性エポキシ接着剤」が記載されている。そして、同(9-4)には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の単量体が主成分の分子量約370のエポキシ樹脂を50質量部、多官能型のフェノールノボラック型エポキシ樹脂を10質量部、アニリン型の3官能エポキシ樹脂20質量部及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン20重量部含むエポキシ樹脂混合物と、アルミニウム粉体「フィラー用アルミニウムパウダー」15質量部、前記のクレー「サテントン5」を15質量部、硬化剤としてのジシアンジアミド5質量部、及び硬化助剤としての3-(3,4-ジクロルフェニル)-1,1-ジメチルウレア3質量部のマトリックス樹脂の具体例が記載されている。上記(9-3)には、1液性エポキシ接着剤はマトリックス樹脂と同じ組成で良い旨記載されていることから、上記(9-4)に記載のマトリックス樹脂の具体例は、接着剤として使用された場合においても同じ組成を使用することは明らかである。さらに、上記(9-4)に記載のマトリックス樹脂(接着剤)における硬化助剤の含有量は、配合量から算出すると2.2wt%となる。
そうすると、先願9には、「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化助剤を含むエポキシ接着剤であって、
硬化助剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、2.2wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルを主成分とし、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」(以下、「先願発明9」という。)が記載されているといえる。
3 対比・判断
(1)本件発明1~5と先願発明8との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と先願発明8との一致点・相違点
本件発明1と先願発明8を対比する。
先願発明8の「熱潜在性硬化剤」は、本件発明1の「硬化加速剤」に相当する。また、先願発明8のエポキシ樹脂の種類(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)はエポキシ樹脂の選択肢の一つと重複する。
そうすると、本件発明1と先願発明8は、
「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化加速剤を含むエポキシ接着剤であって、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点10】
エポキシ接着剤の成分において、本件発明1は、「靭性化剤」を含むのに対し、先願発明8は、そのように明示されていない点。
【相違点11】
エポキシ接着剤が、本件発明1は、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」のに対し、先願発明8は、そのように明示されていない点。
【相違点12】
本件発明1は、硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満又は化学量論量であるのに対して、先願発明8は、そのように明示されていない点。
【相違点13】
本件発明1は、硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比が、7~9であるのに対して、先願発明8は、そのように明示されていない点。
【相違点14】
本件発明1は、硬化加速剤の量が、0.3~5wt%であるのに対して、先願発明8は、当該量が2~30wt%である点。
【相違点15】
硬化加速剤について、本件発明1は、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」であるのに対し、先願発明8は、そのように明示されていない点。
(イ)相違点に関する判断
事案に鑑みて、まず上記【相違点11】について検討する。
先願8には、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド及びイミダゾールの硬化促進剤を含む組成物が硬化し、接着力を発揮する旨記載されているものの、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」ことは、記載も示唆もなされていない。
よって、上記【相違点11】は、実質的な相違点となるものである。
したがって、上記【相違点11】以外の相違点を検討するまでもなく、先願発明8は、本件発明1と実質的に相違し、本件発明1は、先願8の当初明細書に記載されたものとはいえない。
イ 本件発明2ないし5について
本件発明2ないし5は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし6は、先願8の当初明細書に記載された事項であるとはいえない。
(2)本件発明1~6,8と先願発明9との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と先願発明9との一致点・相違点
本件発明1と先願発明9を対比する。
先願発明9の「硬化助剤」は、具体的な化合物名(段落【0123】~【0124】)を見るに、本件発明1の「硬化加速剤」に相当する。また、先願発明9の硬化助剤の含有量(2.2wt%)とエポキシ樹脂の種類(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)は、本願発明1の0.3~5wt%の数値範囲とエポキシ樹脂の選択肢の一つと重複する。
そうすると、本件発明1と先願発明9は、
「エポキシ樹脂、硬化剤及び硬化加速剤を含むエポキシ接着剤であって、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、2.2wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであって、
硬化剤がジシアンジアミドである、前記接着剤。」である点で一致し、以下の点で相違する。
【相違点16】
エポキシ接着剤の成分において、本件発明1は、「靭性化剤」を含むのに対し、先願発明9は、そのように明示されていない点。
【相違点17】
エポキシ接着剤が、本件発明1は、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」のに対し、先願発明9は、そのように明示されていない点。
【相違点18】
本件発明1は、硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満又は化学量論量であるのに対して、先願発明9は、そのように明示されていない点。
【相違点19】
本件発明1は、硬化剤のモル数に対するエポキシ樹脂の当量の比が、7~9であるのに対して、先願発明9は、そのように明示されていない点。
【相違点20】
硬化加速剤について、本件発明1は、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」であるのに対し、先願発明9は、そのように明示されていない点。
(イ)相違点に関する判断
事案に鑑みて、まず上記【相違点17】について検討する。
先願9には、エポキシ樹脂、ジシアンジアミド及び硬化促進剤を含む組成物が硬化し、接着力を発揮する旨記載されているものの、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」ことは、記載も示唆もなされていない。
よって、上記【相違点17】は、実質的な相違点となるものである。
したがって、上記【相違点17】以外の相違点を検討するまでもなく、先願発明9は、本件発明1と実質的に相違し、本件発明1は、先願9の当初明細書に記載されたものとはいえない。
イ 本件発明2ないし6について
本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をさらに限定したものであるか、または、本件発明1にさらに他の発明特定事項を付加したものであるから、本件発明1と同様に、本件発明2ないし6は、先願9の当初明細書に記載された事項であるとはいえない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、2つの構成部品の間に本件発明1の接着剤を塗布するステップと、第1の硬化段階においてエポキシ接着剤を予備硬化し、少なくとも部分的に硬化された物品を得るステップを含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる製造方法である。
本件発明8は、本件発明1の接着剤を用いるものであるから、先願発明9との間には、少なくとも上記アで述べた【相違点17】が存在する。
したがって、上記【相違点17】以外の相違点を検討するまでもなく、先願発明9は、本件発明8と実質的に相違し、本件発明8は、先願9の当初明細書に記載されたものとはいえない。
第7 取消理由4に関する当審の判断
本件発明の解決すべき課題は、「硬化剤濃度(例えば、ジシアンジアミド)に対するエポキシ官能度の比を高めることによって、エージング後に、完全な凝集破壊形態(凝集破壊形態は、き裂がバルク接着剤内で進展する場合に得られる;ISO 10365)及び、DIN EN 1465に準拠したラップせん断強度の低下の縮小が達成」できる接着剤を得ること(【0015】)である。
この課題に対し、本件発明1は、「エポキシ樹脂、硬化剤、少なくとも1種の硬化加速剤、及び靭性化剤を含み、第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられるエポキシ接着剤であって、
硬化剤の量が、エポキシ樹脂対比で化学量論量未満又は化学量論量であり、
硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比が、7~9であり、
硬化加速剤の量が、前記エポキシ接着剤に対して、0.3~5wt%であり、
エポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFのジグリシジルエーテル;テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ノボラック系エポキシ樹脂;トリスエポキシ樹脂;又はアクリル酸グリシジル;メタクリル酸グリシジル若しくはアリルグリシジルエーテルから選択される不飽和モノエポキシドが重合したホモポリマー若しくはコポリマーからなる群から選択され、
硬化剤がジシアンジアミドであり、
硬化加速剤がポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミンである、前記接着剤。」を特定する。
段落【0065】~【0077】の実施例には、本件発明1で規定するエポキシ樹脂として、Dowより入手可能のエポキシ樹脂を使用した例が記載されており、実際どのようなエポキシ樹脂を使用しているのか当該記載箇所からは不明である。
しかしながら、段落【0037】には、「本発明において用い得る固体エポキシ樹脂は、好ましくはビスフェノールAを含むことができる、又は好ましくは主としてビスフェノールA系であることができる。例えば、好ましいエポキシ樹脂は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルであるDow Chemical DER 664UE固体エポキシである。」旨の記載があり、段落【0039】には、「基本となる液体樹脂、例えばD.E.R.331は、約180~195g/molの範囲のエポキシ当量重量を有する。」旨記載されており、当該「DER664UE」及び「DER331」は、いずれもDow社から入手可能な具体的な市販品であり、その構造は本件発明1の「ビスフェノールAジグリシジルエーテル」のエポキシ樹脂に相当する。
そこで、当該「DER664UE」及び「DER331」のカタログ値(乙1及び乙2参照)と、「Struktol 3604」(ゴムエポキシ)(乙3参照)、「PE-Intermediate」(LER 330-Dynacoll 7330結晶性ポリエステル-ジオールの8:2混合物)(乙4参照)、「Erisys GS-110」(乙5参照)、「Silquest A-187」(乙6の4頁参照)の他のエポキシ成分のカタログ値とから、実施例で使用される接着剤組成物A~Eの硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比を計算すれば、それぞれ、表1の「エポキシ/DICY比」と同値になる。
したがって、明細書全体、特に段落【0037】及び【0039】の記載を考慮すれば、当業者であれば実施例でどのような具体的な市販品を使用しているといったことは、十分認識できるものである。
そうすると、本件発明は、段落【0065】~【0077】の実施例において使用したエポキシ樹脂は、段落【0037】及び【0039】中のビスフェノールAジグリシジルエーテルを使用していることは明らかであり、本件発明は実施例に対応するものであるから、本件発明1ないし6,8を、「発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるものであるとも、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できるものであるともいうことはできない」とすることはできない。
第8 異議申立人の平成30年3月28日付け意見書(以下、単に「意見書」という。)における主な主張について
1 取消理由2について
異議申立人は、(1)「靭性化剤について、甲4には、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとジシアンジアミドと、Toughening Agent(靭性化剤)とを含有する接着剤が記載されているから、甲4の記載に基づいて、甲1に記載のエポキシ樹脂組成物に靭性化剤を含有させることは当業者にとって容易である。」、(2)「甲10の1、甲10の2、甲10の3には、エポキシ樹脂接着剤をCKD用に用いることが記載されているのだから、甲1に記載のエポキシ樹脂接着剤を周知の用途であるCKD用に用いることは当業者が容易になし得ることである。そもそも本件発明の「第1の場所において・・・CKD組み立てシステムに用いられる」との記載は接着剤の使用の態様を規定しているに過ぎず、発明の構成要件ではなく、接着剤の新たな属性を見出したものでもなく、効果を記載したに過ぎない。」、(3)「甲1に記載されている硬化剤のモル数に対するエポキシの当量の比9.9は、本件発明1の7~9に極めて近いものであり、一方で甲10の1には、CKD用のエポキシ樹脂接着剤が記載されているのだから、甲1発明をCKD用に適した物性を得るために、エポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂及びジシアンジアミドの含有量を調整することは、当業者が当然に行う設計事項であるし、その効果も本件特許明細書の記載から認められない。」、(4)「甲11の1、甲11の2には、硬化加速剤として第3級アミンを用いることが記載されており、甲1発明において、当該周知の第3級アミンを採用することは当業者が容易になし得ることであり、本件明細書から、「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」を使用したことによる本件発明の効果が明らかでない。」と主張している(意見書第8~11頁)。
まず、上記主張(2)及び(3)について検討する。
上記主張(2)については、第5 3 (1)でも検討したとおり、甲1発明には、甲1発明のエポキシ接着剤をCKDに用いる動機付けがないのであるから、エポキシ接着剤をCKDに用いることが知られているとしても、甲1発明のエポキシ接着剤をCKDに用いることが、当業者に容易になし得ることであるとはいえない。
また、「第1の場所において構成部品がエポキシ接着剤を用いて互いに接合され、次に部分的に硬化され、第2の場所において更なる組み立てが行われ、そして硬化工程が完了する、CKD組み立てシステムに用いられる」とは、用途としてエポキシ樹脂接着剤を特定するものである。
そして、上記主張(3)に対しては、上記主張(2)に対して述べたように、甲1には、CKDに関する認識がないから、CKDにおけるエージング後における破壊形態を考慮して、甲1の硬化剤濃度に対するエポキシ官能度の比を9.9から7~9の範囲にする動機付けはないし、甲10-1を見ても比を調製する認識はないから、CKDが単に知られているとしてもCKDに用いられるエポキシ接着剤において当該比を7~9とすることは、甲1発明及び甲2ないし10の3に記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
さらに、上記主張(4)について検討する。
異議申立人が本意見書で追加した甲11の1及び甲11の2には、硬化加速剤として第3級アミンが開示されているに過ぎず、第3級ポリアミンすら開示されておらず、当該開示をもって、甲1発明に甲11の1及び11の2の硬化加速剤を適用して本件発明1の「ポリマーマトリックス中に包埋された第3級ポリアミン」を採用することを導き出せるとは到底いえない。
そうすると、異議申立人の上記の主張(2)~(4)は、採用できない。
また、異議申立人は、甲2を主引用例とした場合も、甲1と同様に、本件発明1が甲2及び甲1,3ないし10の3から当業者が容易に発明できた旨主張しているが、上記1 で述べたとおり、当該主張は採用できない。
2 取消理由4について
異議申立人は、「Dow社からは、「DER331」及び「DER664UE」以外にも、多種多様な液体エポキシ樹脂及び固体エポキシ樹脂が販売されており、本件発明の明細書の「Dowより入手可能」という文言から、実施例で使用されたエポキシ樹脂がビスフェノールAジグリシジルエーテルである「DER331」及び「DER664UE」であると一義的に認識することはできない。」と主張している(意見書第17~19頁)。
しかしながら、サポート要件の判断は、実施例の記載のみならず、発明の詳細な説明全体の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できるか否かを判断するものであるし、第7 で述べたように、各成分のカタログ値より、実施例の接着剤組成物A~Eのエポキシ/DICY比を計算すると、表1に記載のものと一致することから、本件発明1で定めるエポキシ樹脂について実施例で「DER664UE」及び「DER331」という具体的な市販品を使用していると解することができるのは明らかである。
そうすると、異議申立人の上記の主張は、採用できない。
第9 むすび
上記「第5」ないし「第8」で検討したとおり、本件特許1ないし6,8は、特許法第29条第1項第3号、同法同条第2項又は同法第29条の2の規定に違反してされたものであるということはできないし、同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできず、同法第113条第2号又は第4号に該当するものではないから、上記取消理由1ないし4によっては、本件特許1ないし6,8を取り消すことはできない。
また、他に本件特許1ないし6,8を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件特許7は、本件訂正請求により削除されているので、本件特許7についての特許異議の申立てを却下する。
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2017-700617