特許異議申立
2015-700129
メタロセン触媒オレフィン-α-オレフィンコポリマーに基づくホットメルト接着剤
- 審判番号
- 2015-700129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2011-525542
- 登録番号
- 特許第5709749号(P5709749)
- 請求日
- 2015年10月29日
- 審決日
- 2017年02月07日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
- 【権利者代理人】植村 昭三
- 【権利者代理人】田中 光雄
- 【権利者代理人】山田 卓二
- 【権利者代理人】森住 憲一
- 【権利者代理人】柴田 康夫
- 【権利者代理人】梶田 真理奈
- 【権利者代理人】岩木 郁子
- 【異議申立人】山田 宏基
- 【異議申立人】小松 一枝
- 審判長/審判官
- 審判長 小野寺 務
- 審判官 小柳 健悟
- 審判官 前田 寛之
- 分類
- P1651.161-YAA(C09J) / P1651.113-YAA(C09J) / P1651.121-YAA(C09J) / P1651.536-YAA(C09J) / P1651.537-YAA(C09J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条の2、特許法第184条の13、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5709749号発明「メタロセン触媒オレフィン-α-オレフィンコポリマーに基づくホットメルト接着剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5709749号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
特許第5709749号の請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許を維持する。
特許第5709749号の請求項3、7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 主な手続の経緯
特許第5709749号の請求項1ないし14に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、2009年9月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年9月5日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年3月13日に設定登録され、同年4月30日に特許公報が発行され、その後、特許異議申立人山田宏基及び特許異議申立人小松一枝により特許異議の申立てがされ、平成28年1月20日に請求項1ないし6、8ないし14に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年4月13日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人山田宏基(以下、「特許異議申立人」という。)から同年5月26日付けで意見書が提出され、同年6月17日に訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年8月8日付けで意見書の提出がされ、同年8月29日に請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月30日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年1月12日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「該コポリマーが、
【数1】
(E’0C-E’25C)/E’25C<1.5
に従って貯蔵弾性率E’の割合として測定された0℃~25℃で本質的に線形の弾性挙動を示すブロックコポリマーである」とあるのを、
「該コポリマーが、
【数1】
(E’0C-E’25C)/E’25C<1.5
に従って貯蔵弾性率E’の割合として測定された0℃~25℃で本質的に線形の弾性挙動を示すブロックコポリマーであり、ホットメルト接着剤は、前記成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「請求項1~3のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1または2に記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1~4のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2および4のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1~5のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2、4および5のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1~7のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2および4~6のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1~8のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2、4~6および8のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2、4~6、8および9のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~10のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2、4~6および8~10のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項12、13および14に
「請求項1~11のいずれかに記載のホットメルト接着剤」とあるのを、
「請求項1、2、4~6および8~11のいずれかに記載のホットメルト接着剤」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1
ア 訂正前の請求項1の「ホットメルト接着剤」を「前記成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 「前記成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」は、訂正前の請求項3及び7に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(2) 訂正事項2
ア 請求項3を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 請求項3を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 請求項3を削除するものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(3) 訂正事項3ないし5
ア 上記訂正事項2に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 明瞭でない記載の釈明をするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(4) 訂正事項6
ア 請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 請求項7を削除するものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 請求項7を削除するものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(5) 訂正事項7ないし11
ア 上記訂正事項2及び6に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。
ウ 明瞭でない記載の釈明をするものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合する。
(6) 一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし14は、請求項1の記載を、請求項2ないし13が直接・間接に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし14は、一群の請求項である。
したがって、訂正後の請求項1、2、4ないし6及び8ないし14は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-14〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明14」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
a)5~40重量%の、メタロセン触媒重合によって得ることができる、エチレンと少なくとも1種のC3~C20α-オレフィンとに基づく少なくとも1種のコポリマー、
b)10~65重量%の少なくとも1種の粘着付与樹脂、
c)0~35重量%の可塑剤、
d)0.01~30重量%の、安定剤、接着促進剤、充填剤または顔料、ワックスおよび/または他のポリマーから選択される、添加剤および助剤
を、それらの和が100%となるべく含んでなるホットメルト接着剤であって、
該コポリマーが、
【数1】
(E’0C-E’25C)/E’25C<1.5
に従って貯蔵弾性率E’の割合として測定された0℃~25℃で本質的に線形の弾性挙動を示すブロックコポリマーであり、ホットメルト接着剤は、前記成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる、ホットメルト接着剤。
【請求項2】
コポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃未満であり、コポリマーの融点が30℃超である、請求項1に記載のホットメルト接着剤。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
少なくとも1種のコポリマーが、
【数2】
(E’0C-E’25C)/E’25C<1.0
の弾性率の割合を有する、請求項1または2に記載のホットメルト接着剤。
【請求項5】
ポリマーが2.5未満の多分散性(MW/MN)を有する、請求項1、2および4のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項6】
コポリマーが2つのガラス転移温度(Tg)を有し、1つのTgが-100℃未満であり、1つのTgが-100~0℃である、請求項1、2、4および5のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
鉱油、ポリブテン、液状またはペースト状水素化炭化水素、或いは低分子量ポリオレフィンから選択される可塑剤5~30重量%を含んでなる、請求項1、2および4~6のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項9】
スチレンブロックコポリマー、統計C2/C3コポリマー、またはエチレン-アクリル酸エステルMAHコポリマーから選択される、助剤としての弾性コポリマー0.5~20重量%を含んでなる、請求項1、2、4~6および8のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項10】
500~20000mPasの粘度を示す、請求項1、2、4~6、8および9のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項11】
ホットメルト接着剤の粘度が140℃でほぼニュートン流動挙動を示す、請求項1、2、4~6および8~10のいずれかに記載のホットメルト接着剤。
【請求項12】
請求項1、2、4~6および8~11のいずれかに記載のホットメルト接着剤の、ゴム弾性基材の接着結合のための使用。
【請求項13】
請求項1、2、4~6および8~11のいずれかに記載のホットメルト接着剤の、感圧性接着剤としての使用。
【請求項14】
請求項1、2、4~6および8~11のいずれかに記載のホットメルト接着剤の、噴霧可能な接着剤としての使用。」
第4 取消理由の概要
1 取消理由1(特許法第29条の2)
本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前を優先日とする国際特許出願であって、本件特許に係る出願後に国際公開がされた下記の国際特許出願(以下、「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許に係る発明者が上記国際特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記国際特許出願の出願人と同一でもないので、特許法184条の13の規定で読み替える同法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
記
請求項: 1~6、8~14
先願: 国際出願PCT/EP2009/055275号(国際公開2009/133175号)(特許異議申立人の特許異議申立書の証拠方法である甲5の1。以下、「甲5の1」という。なお、甲5の1は外国語で記載された刊行物であるので、本通知の便宜上、その記載については、甲5の1に係る国際出願による特許出願の公表特許公報(特表2011-519989号公報。以下「甲5の2」という。)を用いることとする。)
2 取消理由2(特許法第36条第6項第2号)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
記
「5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」との発明特定事項が「a)成分であるブロック)コポリマー」を特定しているのか否か明らかでない。
よって、本件請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第5 取消理由についての判断
1 取消理由1について
(1)甲5の2から認定できる発明
請求項1に係る発明である接着テープを構成する「接着剤」について、例えば特許請求の範囲(特に請求項4、7)、段落【0087】及びオレフィンブロックコポリマーとして「IN FUSE9107」若しくは「IN FUSE9507」、可塑剤として「Ondina933」若しくは「Oppanol B10」、安定剤として「Irganox1726」、「Irganox1076」、「Irganox PS802」若しくは「Tinuvin622」を用いた実施例の記載から、「0.86~0.89g/cm3の間の密度と少なくとも105℃の結晶融点を有するオレフィンブロックコポリマー(「IN FUSE9107」若しくは「IN FUSE9507」)、粘着樹脂、可塑剤(「Ondina933」若しくは「Oppanol B10」)及び安定剤(「Irganox1726」、「Irganox1076」、「Irganox PS802」若しくは「Tinuvin622」)を含むホットメルト接着剤。」(以下、「甲5の1発明」という。)
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1
甲5の1発明は、少なくとも、本件特許発明1の「ホットメルト接着剤は、前記成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」との発明特定事項を備えていないので、甲5の1発明は、本件特許発明1と同一であるとはいえない。
よって、本件特許発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であるとはいえない。
イ 本件特許発明2、4ないし6、8ないし14
請求項2、4ないし6、8ないし14は、請求項1の記載を直接・間接に引用しているものであるから、甲5の1発明は、本件特許発明2、4ないし6、8ないし14と同一であるとはいえない。
よって、本件特許発明2、4ないし6、8ないし14は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であるとはいえない。
ウ 小括
本件請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許は、特許法184条の13の規定で読み替える同法第29条の2の規定に違反してされたものでないから、同法第113条第2号に該当しない。
2 取消理由2について
本件特許発明は、a)、b)、c)、d)の各成分を、それらの和が100%となるべく含んでなるホットメルト接着剤であって、成分a)が「5~40重量%の、メタロセン触媒重合によって得ることができる、エチレンと少なくとも1種のC3~C20α-オレフィンとに基づく少なくとも1種のコポリマー」との要件、「成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」との要件及び成分a)が「【数1】(E’0C-E’25C)/E’25C<1.5に従って貯蔵弾性率E’の割合として測定された0℃~25℃で本質的に線形の弾性挙動を示すブロックコポリマー」であるとの要件を全て充足するものであるところ、上記各要件自体が明確であり、これらの要件を全て充足することが特定されているから、発明が明確であるというべきである。
よって、請求項1、2、4ないし6、8ないし14の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。
第6 特許異議申立の理由についての判断
1 特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項について
(1)国際公開第2006/102150号に記載された発明を引用発明とする場合
本件特許発明1と引用発明とを対比すると、後者には、a)、b)、c)、d)の各成分を、それらの和が100%となるべく含んでなるホットメルト接着剤であって、成分a)が「5~40重量%の、メタロセン触媒重合によって得ることができる、エチレンと少なくとも1種のC3~C20α-オレフィンとに基づく少なくとも1種のコポリマー」との要件、「成分a)として、5~30重量%のエチレン/プロピレンコポリマーおよび5~40重量%のエチレン/C4~C12α-オレフィンコポリマーの混合物を含んでなる」との要件及び成分a)が「【数1】(E’0C-E’25C)/E’25C<1.5に従って貯蔵弾性率E’の割合として測定された0℃~25℃で本質的に線形の弾性挙動を示すブロックコポリマー」であるとの要件を全て充足するもの(以下、「成分a)要件」という。)が特定されていない点で、両者は少なくとも相違する。
よって、引用発明は、本件特許発明1と同一であるとはいえない。
また、上記相違点に係る成分a)要件は、特許異議申立書に挙示された各証拠のいずれにも示されていないから、引用発明において、上記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に成し得ることとはいえない。
(2)米国特許出願公開第2007/0042193号、米国特許出願公開第2009/0202847号及び米国特許第5530054号明細書に記載された発明を引用発明とする場合
本件特許発明1と各引用発明とを対比すると、成分a)要件が特定されていない点で少なくとも相違する。
上記相違点に係る成分a)要件は、特許異議申立書に挙示された各証拠のいずれにも示されていないから、各引用発明において、上記相違点に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に成し得ることとはいえない。
(3)よって、本件請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものでないから、同法第113条第2号に該当しない。
2 特許法第36条第6項第1号及び/又は同法第36条第4項第1号について
特許明細書の段落【0007】、【0010】、【0011】及び【0050】ないし【0056】の記載並びに出願時の当業者の技術常識に照らせば、特許明細書の発明の詳細な説明が、出願時の当業者の技術常識を参酌することにより、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる程度に記載されているし、また、特許明細書及び出願時の当業者の技術常識に基づき当業者が発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
よって、特許法第36条第6項第1号及び同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているから、同法第113条第4号に該当しない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許を取り消すことができない。
また、請求項3、7に係る特許は、本件訂正請求による訂正により削除されたため、特許異議の申立ては、対象となる請求項が存在しない。
また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1、2、4ないし6、8ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2015-700129