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特許異議申立

2017-700613

光学ガラスおよびその利用

審判番号
2017-700613
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-173998外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月16日
審決日
2018年07月18日
公報発行日
2018年10月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.536-YAA(C03C) / P1651.537-YAA(C03C) / P1651.851-YAA(C03C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6088938号発明「光学ガラスおよびその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6088938号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第6088938号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 特許第6088938号は、平成25年 8月23日に出願された特願2013-173998号について、平成29年 2月10日に設定登録がされ、その後、その請求項1~8に係る特許に対し、平成29年 6月16日付けで特許異議申立人 宮園 祐爾により特許異議の申立てがなされ、平成29年10月19日付けで請求項1~8に係る特許に対する取消理由が通知され、平成29年12月22日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成30年 2月 6日付けで特許異議申立人より意見書の提出がなされ、平成30年 3月23日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成30年 5月25日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成30年 7月 3日付けで意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の請求 1.訂正の内容 平成30年 5月25日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1~10よりなる。 (平成29年12月22日付けの訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、みなし取下げとなった。) (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1におけるSi4+およびB3+の合計含有量の下限を5%から「20%」に訂正する。 (イ)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1におけるSi4+およびB3+の合計含有量の上限を35%から「30%」に訂正する。 (ウ)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1におけるLa3+の含有量の下限を10%から「18%」に訂正する。 (エ)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1におけるLa3+の含有量の上限を50%から「35%」に訂正する。 (オ)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項1におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限を55%から「35%」に訂正する。 (カ)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4におけるSi4+およびB3+の合計含有量の下限を5%から「15%」に訂正する。 (キ)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4におけるSi4+およびB3+の合計含有量の上限を55%から「30.40%」に訂正する。 (ク)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項4におけるLa3+の含有量の下限を10%から「15%」に訂正する。 (ケ)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項4におけるLa3+の含有量の上限を50%から「35%」に訂正する。 (コ)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項4におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限を70%から「45%」に訂正する。 2.訂正の適否 (ア)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1におけるSi4+およびB3+の合計含有量の下限を5%から20%に引き上げることにより、請求項1に係る光学ガラスの発明におけるSi4+およびB3+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0015】の「Si4+およびB3+の合計含有量は5~55%とする。・・・Si4+およびB3+の合計含有量の・・・より一層好ましい下限は20%である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (イ)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項1におけるSi4+およびB3+の合計含有量の上限を35%から30%に引き下げることにより、請求項1に係る光学ガラスの発明におけるSi4+およびB3+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0015】の「Si4+およびB3+の合計含有量は5~55%とする。・・・Si4+およびB3+の合計含有量の・・・より一層好ましい上限は30%・・・である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (ウ)訂正事項3について 訂正事項3は、請求項1におけるLa3+の含有量の下限を10%から18%に引き上げることにより、請求項1に係る光学ガラスの発明におけるLa3+の含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項3は、本件特許明細書の段落【0019】の「La3+の含有量は10~50%とする。・・・La3+の含有量の・・・より好ましい下限は18%・・・である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (エ)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項1におけるLa3+の含有量の上限を50%から35%に引き下げることにより、請求項1に係る光学ガラスの発明におけるLa3+の含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0019】の「La3+の含有量は10~50%とする。La3+の含有量・・・さらに好ましい上限は35%・・・である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (オ)訂正事項5について 訂正事項5は、請求項1におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限を55%から35%に引き下げることにより、請求項1に係る光学ガラスの発明におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0026】の「Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量は22~55%とする。Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の・・・さらに好ましい上限は35%である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (カ)訂正事項6について 訂正事項6は、請求項4におけるSi4+およびB3+の合計含有量の下限を5%から15%に引き上げることにより、請求項4に係る光学ガラスの発明におけるSi4+およびB3+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0015】の「Si4+およびB3+の合計含有量は5~55%とする。・・・Si4+およびB3+の合計含有量の・・・さらに好ましい下限は15%・・・である」との記載及び段落【0071】の「以下、光学ガラスIIの組成、特性について、光学ガラスIと異なるところについて説明する。したがって、以下に記載のない組成、特性についての説明は、光学ガラスIの組成、特性と同様である。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (キ)訂正事項7について 訂正事項7は、請求項4におけるSi4+およびB3+の合計含有量の上限を55%から30.40%に引き下げることにより、請求項4に係る光学ガラスの発明におけるSi4+およびB3+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項7は、本件特許明細書の段落【0015】の「Si4+およびB3+の合計含有量は5~55%とする。Si4+およびB3+の合計含有量の好ましい上限は・・・一層好ましい上限は35%・・・である」との記載及び段落【0071】の「以下、光学ガラスIIの組成、特性について、光学ガラスIと異なるところについて説明する。したがって、以下に記載のない組成、特性についての説明は、光学ガラスIの組成、特性と同様である。」との記載並びに表2のNo.43のSi4++B3+の値に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (ク)訂正事項8について 訂正事項8は、請求項4におけるLa3+の含有量の下限を10%から15%に引き上げることにより、請求項4に係る光学ガラスの発明におけるLa3+の含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項8は、本件特許明細書の段落【0019】の「La3+の含有量は10~50%とする。・・・La3+の含有量の好ましい下限は15%・・・である」との記載及び段落【0071】の「以下、光学ガラスIIの組成、特性について、光学ガラスIと異なるところについて説明する。したがって、以下に記載のない組成、特性についての説明は、光学ガラスIの組成、特性と同様である。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (ケ)訂正事項9について 訂正事項9は、請求項4におけるLa3+の含有量の上限を50%から35%に引き下げることにより、請求項4に係る光学ガラスの発明におけるLa3+の含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項9は、本件特許明細書の段落【0019】の「La3+の含有量は10~50%とする。La3+の含有量・・・さらに好ましい上限は35%・・・である」との記載及び段落【0071】の「以下、光学ガラスIIの組成、特性について、光学ガラスIと異なるところについて説明する。したがって、以下に記載のない組成、特性についての説明は、光学ガラスIの組成、特性と同様である。」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (コ)訂正事項10について 訂正事項10は、請求項4におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限を70%から45%に引き下げることにより、請求項4に係る光学ガラスの発明におけるTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定されている特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、当該訂正事項10は、本件特許明細書の段落【0072】の「Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量は23~70%とする。Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の・・・一層好ましい上限は45%・・・である」との記載に基づくものであり、本件特許明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項の規定に適合するものである。 さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 3.一群の請求項について 訂正事項1~5に係る訂正前の請求項1を、訂正前の請求項2,3,6~8は直接または間接的に引用しているものであって、請求項1に連動して訂正されるものである。 また、訂正事項6~10に係る訂正前の請求項4を、訂正前の請求項5~8は直接または間接的に引用しているものであって、請求項4に連動して訂正されるものである。 さらに、訂正後の請求項1~3、6~8からなる一群の請求項と、訂正後の請求項4~8からなる一群の請求項は、共通する請求項6~8を含むものであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項1~8について請求するものと認める。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法第120条の5第4項及び第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。 第3.本件発明 上記「第2.」のとおり、本件訂正請求による訂正が認められるから、本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、請求項の項番にしたがって、「訂正発明1」などといい、全体をまとめて「訂正発明」という。)は、平成30年 5月25日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のものである。 「【請求項1】 Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、 カチオン%表示で、 Si4+およびB3+を合計で20~30%、 La3+を18~35%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、 Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で22~35%、 含み、但し、Ti4+含有量は22%以下であり、 Si4+およびB3+の合計含有量に対するSi4+の含有量のカチオン比[Si4/(Si4+B3+)]が0.40以下、 La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+、W6+およびBi3+の合計含有量が65%以上、 La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.12以下、 La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、 Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、 B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、 であり、 アッベ数νdが23~35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス。 nd≧2.205-(0.0062×νd) ・・・ (1) 【請求項2】 Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量に対するNb5+およびTa5+の合計含有量のカチオン比[(Nb5++Ta5+)/(Ti4++Nb5++Ta5++W6+)]が0.41以下である請求項1に記載の光学ガラス。 【請求項3】 Zr4+を1カチオン%以上含む請求項1または2に記載の光学ガラス。 【請求項4】 Si4+、B3+、La3+、Ti4+、Nb5+、およびZr4+を必須成分とし、 カチオン%表示で、 Si4+およびB3+を合計で15~30.40%、 La3+を15~35%(但し、La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+を合計で70%以下)、 Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で23~45%(但し、Ti4+を22%超)、 含み、 La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するY3+の含有量のカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.14以下、 La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するBa2+の含有量のカチオン比[Ba2+/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.40以下、 La3+、Gd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量に対するGd3+、Y3+およびYb3+の合計含有量のカチオン比[(Gd3++Y3++Yb3+)/(La3++Gd3++Y3++Yb3+)]が0.02以上、 Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上、 B3+の含有量に対するTi4+の含有量のカチオン比(Ti4+/B3+)が0.85以上、 であり、 アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす酸化物ガラスである光学ガラス。 nd≧2.540-(0.02×νd) ・・・ (2) 【請求項5】 Zr4+の含有量に対するZr4+、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量のカチオン比[(Zr4++Ti4++Nb5++Ta5++W6+)/Zr4+]が2以上72以下である請求項4に記載の光学ガラス。 【請求項6】 請求項1~5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなるプレス成形用ガラスゴブ。 【請求項7】 請求項1~5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項8】 請求項1~5のいずれか1項に記載の光学ガラスからなる光学素子。」 第4.取消理由についての当審の判断 1.通知した取消理由 (1)取消理由1)(以下、訂正前の請求項1~8に係る発明を「本件発明1~8」という。) 本件発明1は、本件特許明細書の段落【0005】に記載されているように、「高屈折率低分散ガラスでありながら、優れたガラス安定性を有する光学ガラスを提供すること」を課題とするものであって、具体的には、請求項1において、「アッベ数νdが23~35の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(1)式を満たす酸化物ガラスである」、「nd≧2.205-(0.0062×νd)・・・(1)」であることが物性要件として特定されている。 しかしながら、本件特許明細書において上記物性要件を満たすガラスとして、実施例に記載されたガラスは、「Si4+およびB3+を合計で26.13~29.13%」、「La3+を29.37~30.91%」、「Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で26.29~30.29%」で含むものだけであって、これらの成分に関する発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても、当業者が実施例に記載された限定的な組成範囲から、物性要件を満たす組成範囲を請求項1において特定するそれぞれの数値範囲にまで、拡張ないし一般化して認識することができない。 また、本件発明4は、「高屈折率低分散ガラスでありながら、優れたガラス安定性を有する光学ガラスを提供すること」を課題とするものであって、具体的には、請求項4において、「アッベ数νdが18以上35未満の範囲であり、かつ屈折率ndが下記(2)式を満たす酸化物ガラスである」、「nd≧2.540-(0.02×νd)・・・(2)」であることが物性要件として特定されている。 しかしながら、本件特許明細書において上記物性要件を満たすガラスとして、実施例に記載されたガラスは、「Si4+およびB3+を合計で22.78~30.40%」、「La3+を24.12~32.10%」、「Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+を合計で28.07~39.83%」で含むものだけであって、これらの成分に関する発明の詳細な説明の記載を参酌したとしても、当業者が実施例に記載された限定的な組成範囲から、物性要件を満たす組成範囲を請求項4において特定するそれぞれの数値範囲にまで、拡張ないし一般化して認識することができない。 また、請求項1を直接または間接的に引用する請求項2~3,6~8の記載及び請求項4を直接または間接的に引用する請求項5~8の記載についても同様である。 したがって、本件発明1~8は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであって、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであるから、取り消されるべきものである。 (2)取消理由2) 本件特許の発明の詳細な説明(実施例含む)の記載では、技術常識を考慮しても当業者が、請求項1,4に記載された上記合計含有量の上限値や下限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができないと認められる。 したがって、発明の詳細な説明が、本件発明1,4について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 本件発明2,3,5~8についても同様である。 2.取消理由1)、2)について (1)Si4+およびB3+の合計含有量の下限値について 訂正発明1のSi4+およびB3+の合計含有量の下限は「20%」であり、訂正発明4のSi4+およびB3+の合計含有量の下限は「15%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.15及び16を基本として、Si4+およびB3+の合計含有量を減らし、その減量分を、例えばガラスの屈折率および分散性を調整すべく、本件特許明細書の段落【0019】及び【0020】に高屈折率低分散化成分と記載されているLa3+、Gd3+や、段落【0026】に屈折率向上に寄与することが記載されているTi4+、Nb5+、Ta5+、W6+を適宜置き換えることによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、Si4+およびB3+の合計含有量を、訂正発明1または4で規定されている下限により近い値にまで減らす調整を行うことが可能である旨の主張がなされた。 そして、段落【0015】に記載されるように、Si4+およびB3+の成分はガラスの安定性を維持するための成分であるから、これらを減少させた場合には、安定性の悪化が懸念されるものであるところ、安定性の悪化の影響をガラスを製造する際の冷却条件等を制御することによって抑えることは、当業者にとって技術常識であるといえる。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.15及び16を基本として、Si4+およびB3+の合計含有量を減らし、その減量分を、例えばガラスの屈折率および分散性を調整すべく、高屈折率低分散化成分や屈折率向上に寄与する成分に適宜置き換えるとともに、安定性の悪化の影響を製造条件によって制御すれば、訂正発明1または4で規定されている下限値付近の光学ガラスは得られるものと認められる。 したがって、訂正発明1または4のSi4+およびB3+の合計含有量の下限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記合計含有量の下限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 (2)Si4+およびB3+の合計含有量の上限値について 訂正発明1のSi4+およびB3+の合計含有量の上限は「30%」であり、また、訂正発明4のSi4+およびB3+の合計含有量の上限は「30.40%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.15について、上記実施例のガラスは、訂正発明1で規定される物性要件を十分な余裕をもって満たしていることから、上記実施例のガラスを基本として、本件特許明細書の段落【0019】及び【0020】に高屈折率低分散化成分と記載されているLa3+、Gd3+、Y3+のいずれか1つ以上や他の屈折率向上に寄与する成分の一部を、ガラスの網目形成成分であってガラスの安定性を維持する働きのある成分であるSi4+およびB3+の合計含有量に適宜置き換えても、訂正発明1で規定されている物性要件を満たしつつ、Si4+およびB3+の合計含有量を、訂正発明1で規定されている上限により近い値にまで増やす調整を行うことが可能であること、上記実施例No.43のガラスは、訂正発明4で規定される上限値である旨の主張がなされ、乙第2号証として、同主張のとおり、Si4+およびB3+の合計含有量を31.13%まで増量しても物性要件を満足する光学ガラスが得られることを確認した実験成績証明書が提出された。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.15を基本として、Si4+およびB3+の合計含有量を増やし、その増量分を、例えば、各種ガラス物性に寄与することが記載されている他の成分に適宜置き換えることによって、訂正発明1で規定されている物性要件を満たしつつ、上記成分の合計含有量の上限値の光学ガラスは得られるものと認められ、また、実施例No.43をみれば、訂正発明4で規定される上限値の光学ガラスが得られることは明らかである。 したがって、訂正発明1,4のSi4+およびB3+の合計含有量の上限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記合計含有量の上限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 この点について、申立人は意見書において、乙第2号証として提出された実験成績証明書は、Si4+およびB3+の合計含有量増加に起因する屈折率の低下に対して補填する手段を何ら提示しておらず、理論的にも、訂正発明1で規定されている屈折率とアッベ数の関係式を満たすことを示すものではなく、むしろ屈折率を上げるLa3+成分を減少させる等、明細書の示唆に基づくと合理的でない成分調整をしているものであるから、明細書の示唆から見て不合理な実験例を後付けで提出したものである旨主張している。 しかしながら、実施例No.15において含まれている成分のうち、Si4+およびB3+以外の成分は、いずれの成分も本件特許明細書には、屈折率を上げる成分と記載されているのであるから、実施例No.15において、Si4+およびB3+の合計含有量を増加させる場合に、屈折率の低下に対して補填ができる成分はないといえる。 よって、実施例No.15を基本として、Si4+およびB3+の合計含有量をどの程度まで増やすことができるのかを当業者が検討する際に、例えば、Si4+およびB3+を増量することによって得られる安定性の向上と引き換えに、多量に含有されている安定性に寄与する成分であるLa3+を減量してみることは、当業者が通常行う試行錯誤に過ぎず、合理的でない成分調整とはいえない。 したがって、上記申立人の主張は採用できない。 (3)La3+の含有量の下限値について 訂正発明1のLa3+の含有量の下限は「18%」であり、訂正発明4のLa3+の含有量の下限は「15%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.14及び27を基本として、La3+の含有量を減らし、その減量分を、例えばガラスの屈折率および分散性を調整すべく、本件特許明細書の段落【0019】及び【0020】に高屈折率低分散化成分と記載されているGd3+、Y3+やYb3+に適宜置き換えることによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、La3+の含有量を、訂正発明1または4で規定されている下限により近い値にまで減らす調整を行うことが可能である旨の主張がなされ、乙第4号証として、同主張のとおり、La3+の含有量を下限付近まで調整しても物性要件を満足する光学ガラスが得られることを確認した実験成績証明書が提出された。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.14及び27を基本として、La3+の含有量を減らし、その減量分を、例えばガラスの屈折率および分散性を調整すべく、高屈折率低分散化成分に適宜置き換えることによって、訂正発明1または4で規定されている下限値付近の光学ガラスは得られるものと認められる。 したがって、訂正発明1または4のLa3+の含有量の下限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記含有量の下限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 (4)La3+の含有量の上限値について 訂正発明1,4のLa3+の含有量の上限は「35%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.14及び45を基本として、本件特許明細書の段落【0019】及び【0020】に高屈折率低分散化成分と記載されているGd3+の一部をLa3+に置き換えることによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、La3+の含有量を、訂正発明1または4で規定されている上限により近い値にまで増やす調整を行うことが可能である旨の主張がなされ、乙第3号証及び乙第7号証として、同主張のとおり、La3+の含有量を35.02%及び36.10%まで増量しても物性要件を満足する光学ガラスが得られることを確認した実験成績証明書が提出された。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.14及び45を基本として、La3+の含有量を増やし、その増量分を、他の成分を減らすことによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、上記成分の合計含有量の上限値付近の光学ガラスは得られるものと認められる。 したがって、訂正発明1または4のLa3+の含有量の上限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記含有量の上限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 (5)Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の下限値について 訂正発明1のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の下限は「22%」であり、訂正発明4のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の下限は「23%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.10及び28を基本として、屈折率向上に寄与するTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を減らし、その減量分を、段落【0019】~【0023】に記載された他の屈折率向上に寄与する成分であるLa3+、Gd3+及びY3+に適宜置き換えたりすることによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を、訂正発明1または4で規定されている下限により近い値にまで減らす調整を行うことが可能である旨の主張がなされた。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.10及び28を基本として、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を減らし、その増量分を、他の屈折率向上に寄与する成分であるLa3+、Gd3+及びY3+に適宜置き換えたりすることによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、上記成分の合計含有量の下限値付近の光学ガラスは得られるものと認められる。 したがって、訂正発明1または4のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の下限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記合計含有量の下限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 (6)Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限値について 訂正発明1のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限は「35%」であり、訂正発明4のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限は「45%」であり、特許権者の意見書において、本件特許明細書に記載された実施例No.13及び16を基本として、屈折率向上に寄与するTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を増やし、その増量分を、他の成分を減らすことによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を、訂正発明1または4で規定されている上限により近い値にまで減らす調整を行うことが可能である旨の主張がなされ、乙第5,6号証として、同主張のとおり、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を上限付近まで調整しても物性要件を満足する光学ガラスが得られることを確認した実験成績証明書が提出された。 してみれば、本件特許明細書に記載された実施例No.10及び28を基本として、Ti4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量を増やし、その増量分を、他の成分を減らすことによって、訂正発明1または4で規定されている物性要件を満たしつつ、上記成分の合計含有量の上限値付近の光学ガラスは得られるものと認められる。 したがって、訂正発明1または4のTi4+、Nb5+、Ta5+およびW6+の合計含有量の上限値は、発明の詳細な説明の記載によってサポートされているものであるし、上記合計含有量の上限値において、物性要件を満たす具体的な各成分の配合組成を決定することができるものである。 (7)取消理由1)、2)についてのまとめ 上記(1)~(6)のとおりであるから、訂正発明1,4及びこれを引用する2,3,5~8は、発明の詳細な説明に記載されたものであって、同発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものとはいえず、本件特許の発明の詳細な説明は、訂正発明1~8について当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されてものであって、同発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものとはいえない。 第5.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、「第4」で検討した取消理由1)、2)に加え、特許請求の範囲の記載が、請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていないことから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである旨主張している。 しかしながら、本件特許の特許請求の範囲は、当業者が容易に調整ないし測定可能なガラス組成と物性により記載されているから、明確であり、請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されているものである。 よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。 第6.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正発明1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に訂正発明1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700613

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