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特許異議申立

2017-700589

油脂性食品の固化促進剤

審判番号
2017-700589
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-540474外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月13日
審決日
2017年12月26日
公報発行日
2018年02月23日
結論
維持
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-Y (A23D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6044722号発明「油脂性食品の固化促進剤」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6044722号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6044722号(以下「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る特許についての出願は,平成28年11月25日付けでその特許権の設定登録がされ,平成29年6月13日に特許異議申立人若林美智子(以下「申立人」という。)より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 そして,その後の手続の経緯は次のとおりである。 平成29年 9月11日付け 取消理由通知 同年11月10日付け 意見書(特許権者) 員員 第2 本件発明 本件特許の請求項1及び2係る発明(以下「本件発明1」等という。また,本件発明1及び2をまとめて「本件発明」という。)は,特許請求の範囲の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 油脂(A)及び油脂(B)を含み,油脂(A)が90重量%を超え,油脂(B)が9重量%未満配合された油脂性食品用の固化促進剤を,油分中1.0~10重量%となるように融液として配合又は添加した油脂性食品を,コールドスタンプ成型機,エリクセン成型機又はレボル成型機を用いて成型させる,成型された油脂性食品の製造方法。 ここで油脂(A)はStOSt含量が70重量%以上,StLStの含量が5重量%以下,かつStStO/StOStの比率が0.03以下である油脂組成物である。また油脂(B)は20℃で液状の油脂組成物である。但し,Stはステアリン酸,Lはリノール酸,Oはオレイン酸をそれぞれ示す。またStOSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がOであるトリグリセリド,StLSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がLであるトリグリセリド,StStO;1位及び2位,又は2位及び3位の脂肪酸がStであり,3位,又は1位の脂肪酸がOであるトリグリセリドをそれぞれ示す。 【請求項2】 請求項1に記載の油脂性食品の製造方法により,油脂性食品の成型工程の効率を向上させる方法。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 請求項1及び2に係る特許に対し,平成29年9月11日付けで通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(進歩性) 本件特許に係る出願は,2014年9月26日(パリ条約による優先権主張2013年10月2日,日本国)を国際出願日とするものであって,本件発明1及び2は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲第1,3~17号証)に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,上記請求項に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。(ただし,甲第11号証は,本件特許に係る出願の優先日前に頒布されたものではない。) 2 取消理由2(進歩性) 本件特許に係る出願は,2014年9月26日(パリ条約による優先権主張2013年10月2日,日本国)を国際出願日とするものであって,本件発明1及び2は,その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(甲第2~17号証)に記載された発明に基いて,その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定に違反するから,上記請求項に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。(ただし,甲第11号証は,本件特許に係る出願の優先日前に頒布されたものではない。) 記(甲号証一覧) 甲第1号証  国際公開第2009/031680号 甲第2号証  国際公開第2009/031679号 甲第3号証  国際公開第2013/065726号 甲第4号証  特開平2-242639号公報 甲第5号証  国際公開第2012/114914号 甲第6号証  太田静行,「食品加工の知識」,2版第4刷,株式会社幸書房,2001年10月31日,p.184-185 甲第7号証  加藤秋男編著,「パーム油・パーム核油の利用」,初版第1刷,株式会社幸書房,1990年7月31日,p.171 甲第8号証  新谷,「食品油脂の科学」,初版第1刷,株式会社幸書房,1989年10月20日,p.182-183 甲第9号証  Ralph E. Timms,佐藤清隆監修,蜂屋巖翻訳,「製菓用油脂ハンドブック」,初版第1刷,株式会社幸書房,2010年2月14日,p.1-2,p.308 甲第10号証 竹林やゑ子,「洋菓子材料の調理科学」,3版,株式会社柴田書店,昭和58年10月10日,p.200-202 甲第11号証 大澤俊彦,外3名,「食物と健康の科学シリーズ チョコレートの科学」,初版第1刷,株式会社朝倉書店,2015年5月25日,p.68-69,p.72 甲第12号証 特開2002-181号公報 甲第13号証 特開2004-81029号公報 甲第14号証 特開2012-65611号公報 甲第15号証 特開平7-67534号公報 甲第16号証 特開2002-171910号公報 甲第17号証 特開2004-33173号公報 以下,甲号証の番号に従って「甲1」等ということがある。 第4 当審の判断 1 甲号証の記載事項について (1)甲1について ア 甲1には,以下の事項が記載されている。 (1a)「[0020] 本発明の方法により得られるXOX型油脂の含有量が向上した油脂は,特にカカオ脂の代用脂(CBE)として優れるハードバターとして,好適に用いることができる。また,本発明の方法により得られるXLX型油脂の含有量が向上した油脂は,特にチョコレートの硬度調整剤として優れるハードバターとして,好適に用いることができる。 チョコレート製品は,上記のハードバターとカカオ脂とを混合した油脂成分および糖成分とからなる。上記ハードバターは油脂成分中に10質量%以上,好ましくは20質量%以上,さらに好ましくは30質量%以上含まれていることが好ましい。糖成分としては通常チョコレートに使用されるものであれば何でもかまわない。例えば,ショ糖,果糖,あるいはこれらの混合物をあげることができる。ソルビトールなどの糖アルコールを用いても良い。また,通常のチョコレート製品に含まれる任意の成分についても含ませることができる。これらの例としては,乳化剤(通常レシチン),香料,脱脂粉乳,全脂粉乳などがあげられる。」 (1b)「[0049] 実施例11 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレインリッチ,昭和産業(株)製)6000gに,ステアリン酸エチル(商品名:エチルステアレート,(株)井上香料製造所製)9000gを混合し,粉末リパーゼ組成物1を0.3質量%添加し,40℃で20時間攪拌反応させた。ろ過処理により酵素粉末を除去し,反応物11-1を14700g得た。得られた反応物11-1(14500g)を薄膜蒸留にかけ,蒸留温度140℃にて反応物から脂肪酸エチルを除去し,脂肪酸エチル含量が3.5質量%である蒸留残渣11-1を5795g得た(表X1)。 得られた蒸留残渣11-1(5000g)に留出物11-1(906g)を混合し,脂肪酸エチル含量が18.3質量%である晶析原料11-1を5906g得た。得られた晶析原料11-1(2001g)を50℃にて完全溶解後,攪拌を行いながら,27℃にて3時間冷却し,圧搾ろ過(第1圧搾ろ過:圧搾圧力7kgf/cm2,日清オイリオ自作加圧ろ過機使用)にて固液分離を行い,固形部11-1(450g)及び液状部11-1(1904g)を得た(表16及び17)。得られた液状部11-1(1845g)を薄膜蒸留にかけ,蒸留温度140℃にて反応物から脂肪酸エチルを除去し,脂肪酸エチル含量が5.2質量%である蒸留残渣11-2を1389g得た。得られた蒸留残渣11-2(1351g)を蒸留温度20℃にて水蒸気蒸留を行い,脂肪酸エチルを除去し,脂肪酸エチル含量が痕跡量%である蒸留残渣11-3を1227g得た。得られた蒸留残渣11-3(1197g)にアセトン(4788g)を加え,溶解した後,5℃に冷却し得られた固形部をろ別し固形部11-2(555g),液状部11-2(651g)を得た。得られた固形部11-2(530g),定法によりアセトン除去及び精製を行いハードバター11-1(500g)を得た(表18と19)。」 (1c)「 注1)TAG組成は,全トリグリセリド中の各トリグリセリドの組成を示す。 XOX/(XXO+OXX)は,2つの飽和脂肪酸残基および1つのオレオイル基を有するトリグリセリドの内,1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドの比である。 P:パルミチン酸残基,S:ステアリン酸残基,O:オレイン酸残基,L:リノール酸残基,tr:微量(trace) 注2)SS-DAG含量は,全成分中のジステアロイルグリセリンの質量%を示す。 GLCにより測定を行なった。 注3)脂肪酸エチル含量は,全成分中の脂肪酸エチルの質量%を示す。」 (1d)「[0053] 実施例12 上記ハードバター11-1を用い,表19の配合にて,混合,レファイン,コンチングを以下の装置を用いて行なった後,50℃→29℃→32℃のテンパリングを行いチョコレートを試作し評価を行った。 製造時の粘度や型抜けなどに特に問題はなかった。得られたチョコレートは20℃にて1週間保存した後にスナップ性,艶,口溶けの評価を行った。その結果,ハードバター11-1を用いたチョコレート1は,口どけが良くかつスナップ性に優れていた。 (チョコレート試作使用機器) 混合:万能混合攪拌機((株)ダルトン製5DM-L) レファイン:3本ローラーミル((株)ビューラー製SDY300型) コンチング:万能混合攪拌機((株)ダルトン製5DM-L)」 (1e)「 (チョコレート評価結果) 上記方法で製造したチョコレートの型からの剥離性,スナップ性,艶,口溶けを評価した。評価結果を表20に示した。 [0055] 10人のパネラーによる官能試験によって評価した。判定基準は以下のとおりである。 <判定基準> スナップ性  ◎:きわめて良好なスナップ性を持つ ○:良好なスナップ性を持つ △:スナップ性に劣る 口溶け    ◎:口どけがきわめて良好である ○:口どけが良好である △:口どけが悪い 艶      ◎:きわめて良好 ○:良好だが一部にくもりがみられる △:艶がない 剥離性    ◎:冷却後15分ではがれる ○:冷却後20分ではがれる △:はがれない」 イ 上記(1c)より,Sはステアリン酸残基,Oはオレイン酸残基,Lはリノール酸残基であるから,上記(1b)の実施例11のハードバター11-1は,St2O含有量が85.9質量%,St2L含有量が3.5質量%である。そうすると,バードバター11-1のStLStの含有量は最大でも3.5質量%(すなわち,3.5質量%以下)である。 また,上記(1c)より,Xは飽和脂肪酸残基であり,ハードバター11-1のXOX/(XXO+OXX)が99/1であるから,ハードバター11-1のXOX/(XOX+XXO+OXX)は0.99である。そうすると,ハードバター11-1のSt2O含有量が85.9質量%で,XOX/(XOX+XXO+OXX)が0.99であることから,そのStOStの含有量は85.041質量%,StStO含有量が0.859質量%であることがわかる。 これより,ハードバター11-1のStStO/StOStは0.010となる。 さらに,ハードバター11-1は,20℃で液状の油脂組成物を含まない(含有量0%)ものである。 上記(1d)及び(1e)より,ハードバター11-1を用いた実施例12のチョコレート1は,油分含有量が34重量%(22.0重量%(カカオマス中のカカオバター分)+4.4重量%(ハードバター11-1)+7.6重量%(パーム油中融点画分))である。そうすると,チョコレート1は,油分中,ハードバター11-1の添加量は12.9重量%である。 ウ 以上より,甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「20℃で液状の油脂組成物を含まないハードバター11-1を,油分中12.9重量%となるように配合したチョコレート1を,型を用いて製造した,チョコレート製造方法。 ここで,ハードバター11-1はStOSt含量が85.041質量%,StLSt含量が3.5%質量以下,かつStStO/StOStの比率が0.010である。ただし,Stはステアリン酸,Lはリノール酸,Oはオレイン酸をそれぞれ示す。また,StOStは1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がOであるトリグリセリド,StLStは1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がLであるトリグリセリド,StStOは1位及び2位,又は2位及び3位の脂肪酸がStであり,3位,又は1位の脂肪酸がOであるトリグリセリドをそれぞれ示す。」 (2)甲2について ア 甲2には,以下の事項が記載されている。 (2a)「[0027] チョコレート製品は,上記のハードバターとカカオ脂とを混合した油脂成分および糖成分とからなる。上記ハードバターは油脂成分中に10質量%以上,好ましくは20質量%以上,さらに好ましくは30質量%以上含まれていることが好ましい。糖は通常チョコレートに使用されるものであれば何でもかまわない。例えば,ショ糖,果糖,あるいはこれらの混合物をあげることができる。ソルビトールなどの糖アルコールを用いても良い。また,通常のチョコレート製品に含まれる任意の成分についても含ませることができる。これらの例としては,乳化剤(通常レシチン),香料,脱脂粉乳,全脂粉乳などがあげられる。 (2b)「[0039] 実施例4 ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレインリッチ,昭和産業(株)製)1200gに,ステアリン酸エチルエステル(商品名:エチルステアレート,(株)井上香料製造所製)1800gを混合し,粉末リパーゼ組成物1を0.5質量%添加し,40℃で7時間攪拌反応させた。ろ過処理により酵素粉末を除去し,反応物8(2987g)を得た。得られた反応物8(2900g)を薄膜蒸留を行い,蒸留温度140℃にて反応物より脂肪酸エチルエステルを除去し,蒸留残渣8(1100g)を得た。得られた蒸留残渣8(1000g)にヘキサン2000gを加え溶解した後,-10℃に冷却して得られた固形部をろ別した後,定法によりヘキサン除去及び精製を行い,ハードバター1(450g)を得た。 (2c)「[0040] 表4 TAG組成 注1)TAG組成は,全トリグリセリド中の各トリグリセリドの組成を示す。 XOX/(XXO+OXX)は,2つの飽和脂肪酸残基および1つのオレオイル基を有するトリグリセリドの内,1位及び3位に飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドと2位に飽和脂肪酸残基を有するトリグリセリドの比である。 P:パルミチン酸残基,S:ステアリン酸残基,O:オレイン酸残基,L:リノール酸残基,tr:微量(trace)」 (2d)「[0050] 実施例8 上記ハードバター(実施例4ハードバター1)を用い,表11の配合にてチョコレートの試作と評価を行った。製造時の粘度や型抜けなどに特に問題はなかった。得られたチョコレートは20℃にて1週間保存した後にスナップ性,艶,口溶けの評価を行った。その結果,ハードバター1を用いたチョコレート1は,口どけが良くかつスナップ性に優れており,代用脂を使用しない対照チョコレート1と同等の品質であった。」 (2e)「[0051] 表11 チョコレートの配合(質量%) (チョコレート評価結果) 上記方法で製造したチョコレートの型からの剥離性,スナップ性,艶,口溶けを評価した。評価結果を表12に示した。 [0053] 10人のパネラーによる官能試験によって評価した。判定基準は以下のとおりである。 <判定基準> スナップ性  ◎:きわめて良好なスナップ性を持つ ○:良好なスナップ性を持つ △:スナップ性に劣る 口溶け    ◎:口どけがきわめて良好である ○:口どけが良好である △:口どけが悪い 艶      ◎:きわめて良好 ○:良好だが一部にくもりがみられる △:艶がない 剥離性    ◎:冷却後15分ではがれる ○:冷却後20分ではがれる △:はがれない」 イ 上記(2c)より,Sはステアリン酸残基,Oはオレイン酸残基,Lはリノール酸残基であるから,上記(2b)の実施例4のハードバター1は,St2O含有量が82.6%,St2L含有量が3.2%である。そうすると,バードバター1のStLStの含有量は最大でも3.2%(すなわち,3.2%以下)である。 また,上記(2c)より,Xは飽和脂肪酸残基であり,ハードバター1のXOX/(XXO+OXX)が99/1であるから,ハードバター1のXOX/(XOX+XXO+OXX)は0.99である。そうすると,ハードバター1のSt2O含有量が85.9%で,XOX/(XOX+XXO+OXX)が0.99であることから,そのStOStの含有量は81.774%,StStO含有量が0.826%であることがわかる。 これより,ハードバター1のStStO/StOStは0.010となる。 さらに,ハードバター1は,20℃で液状の油脂組成物を含まない(含有量0%)ものである。 上記(2d)及び(2e)より,ハードバター1を用いた実施例8のチョコレート1は,油分含有量が38質量%(22.0質量%(カカオマス中のカカオバター分)+1.0質量%(カカオバター)+7.5質量%(パーム油中融点画分)+7.5質量%(ハードバター1))である。そうすると,チョコレート1は,油分中,ハードバター1の添加量は19.7質量%である。 ウ 以上より,甲2には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものと認められる。 「20℃で液状の油脂組成物を含まないハードバター1を,油分中19.7質量%となるように配合したチョコレート1を,型を用いて製造した,チョコレート製造方法。 ここで,ハードバター1はStOSt含量が81.774%,StLSt含量が3.2%以下,かつStStO/StOStの比率が0.010である。ただし,Stはステアリン酸,Lはリノール酸,Oはオレイン酸をそれぞれ示す。また,StOStは1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がOであるトリグリセリド,StLStは1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がLであるトリグリセリド,StStOは1位及び2位,又は2位及び3位の脂肪酸がStであり,3位,又は1位の脂肪酸がOであるトリグリセリドをそれぞれ示す。」 (3)甲3について 甲3には,以下の事項が記載されている。 (3a)「[0015] 従って,本発明の目的は,チョコレートと,油脂性食品素材とを組み合わせてなる複合菓子における油脂移行を抑制し,油脂移行に起因する低温ブルーム及び軟化に対する耐性に優れ,口どけの優れたチョコレートとすることができるテンパリングタイプのチョコレート用油脂組成物,該油脂組成物を用いたテンパリングタイプのチョコレート及び該チョコレートを利用した複合菓子を提供することにある。」 (3b)「[0016] 本発明者らは,検討の結果,StOStトリグリセリドに対するStLStやStStOトリグリセリドの含有量の限定が,以下の理由によって上記課題の解決に大きく寄与することを見出し,本発明を完成した。 すなわちStOStトリグリセリドと液状である油脂を含んだカカオバター代用脂を使用したチョコレートがテンパリング後,クッキーなどの油脂性食品素材と組み合わせられて冷却固化される工程においては,チョコレート油脂中のStOStトリグリセリドが最も早く固化してチョコレートの骨格を形成することになるが,このときStOStトリグリセリドに対して相対的にStLStやStStOトリグリセリドの含有量が多いと,StOStの固化速度を遅らせることとなる。その結果,固化すべきStOStトリグリセリドが融解状態で存在する時間が相対的に長くなるため,油脂食品素材からの油脂移行を助長することになる。 また固化した際の結晶性状においてはStOStトリグリセリドに対して相対的にStLStやStStOトリグリセリドの含有量が多いと,固化したStOStトリグリセリド結晶へのStLStやStStOトリグリセリドの混在量が多くなり,結果として密度の低い結晶,すなわち間隙の大きな結晶となり,やはり油脂食品素材からの油脂移行を助長することになる。 またStOO,POP及びPPOトリグリセリドの含有量の限定も同じく課題解決に寄与することをも見出し,本発明を完成した。」 (3c)「[0022] 本発明の油脂組成物は,StLSt/StOStの比率が0.08以下である必要があり,好ましくは0.06以下,さらに好ましくは0.03以下である。StLSt/StOStの比率が0.08よりも大きいと,前述したとおりStOStトリグリセリドの固化を遅らせ,さらにStOSt結晶の密度も小さくなるため,油脂性食品素材からの液状油の浸透が生じやすくなり,油脂移行耐性が低下し,低温ブルームが発生しやすくなるので好ましくない。」 (3d)「[0025] 本発明の油脂組成物は,StStO/StOStの比率が0.03以下であることが好ましい。またさらに好ましくは0.02以下であり,最も好ましくは0.015以下である。StStO/StOStの比率が0.03より大きいと,前述したとおりStOStトリグリセリドの固化を遅らせ,さらにStOSt結晶の密度も小さくなるため,油脂性食品素材からの液状油の浸透が生じやすくなるため,油脂移行耐性が低下し,低温ブルームが発生しやすくなるので好ましくない。」 (4)甲4について 甲4には,以下の事項が記載されている。 (4a)「(1)液状油中に主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶を分散させた油脂結晶分散体からなることを特徴とするチョコレート類の固化助剤。 (2)請求項(1)記載の固化助剤を含有することを特徴とするチョコレート類。 (3)請求項(1)記載の固化助剤を,溶解されたチョコレート類に添加し,該チョコレート類を固化させることを特徴とするチョコレート類の製造法。」(特許請求の範囲) (4b)「従って,本発明の目的は,上述のような従来の粉末状添加剤とは基本的に異なるタイプの添加剤で,チョコレートに対する添加量が少量でもテンパリングプロセスを改善でき,良質のチョコレート類を製造できるチョコレート類の固化助剤を提供することにある。」(2ページ右上欄6~11行) (4c)「〔課題を解決するための手段〕 本発明者等は,上記目的を達成すべく種々検討した結果,液状油中に特定の油脂結晶を分散させた油脂結晶分散体をチョコレート類の固化助剤,つまりシーディング剤として用いることにより,従来のシーディングーテンバリングの欠点を解消しうろこと,即ち,テンバリングのバラツキがなくなり,また,チョコレートの食感を低減させることもなく,且つ少量の添加でもテンバリングブロセスを改善でき,良質のチョコレートRを製造できること,しかも,上記油脂結晶分散体は安価に製造できることを知見した。」(2ページ右上欄12行~左下欄3行) (4d)「本発明で用いられる主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶は,該結晶中に上記対称型トリグリセリドが50重量%以上,好ましくは70重量%以上含むものが適当である。」(2ページ右下欄6~9行) (4e)「本発明の固化助剤は,チョコレート類の種類や製造目的に応じて適宜量チョコレート類に配合することができるが,一般的には,チョコレート類に対して,固化助剤中の主に対称型トリグリセリドからなる油脂結晶が0.005~10重量%,好ましくは0.01~3重量%となるように配合することにより,良質のチョコレート類を得ることができる。」(3ページ左上欄18行~右上欄5行) (4f)「実施例1 ステアリン酸と高オレイン酸ヒマワリ油をリパーゼを用いてグリセリドの1.3-位選沢的なエステル交換反応を行い,この反応物より脂肪酸を除去し,更に溶剤分別して中融点部を得た。 この中融点部のトリグリセリド組成は,HPLC分析によれば,SOO6,4%(重量%,以下同じ),POS6,0%,SOS 76.8%,その他10.8%であった。上記中融点部を常法により漂白及び脱臭した。脱臭した中融点部を20℃,12時間,32°C,12時間を1サイクルとする温度サイクルにて30サイクルにかけた。次に,この中融点部1部(重量部,以下同じ)と高オレイン酸ヒマワリ油9部を混合し,ホモミキサーにて撹拌し,該中融点部の細かい結晶が分散した油脂結晶分散体からなる本発明の固化助剤を得た。」(3ページ左下欄1~16行) (4g)「実施例3~7 砂糖45部,全脂粉乳15部,カカオマス20部,カカオ脂20部及びレシチン0.4部の混合物を常法通りロール掛け,コンチングしてチョコレートペーストを製造した。 このチョコレートペーストを完全溶解状態から33℃まで冷却し,これに実施例1で得られた固化助剤をそれぞれ,0.1部(実施例3),0.2部(実施例4),0.5部(実施例5),1部(実施例6)及び5部(実施例7)添加混合した。その後,すぐに型流し,冷却,剥離し,板チョコレートをそれぞれ調製した。得られたチョコレートは,いずれも品質の良好なチョコレートであった。 また,得られたチョコレートは何れも,その後の経日変化のテストでもブルームの発生は認められず,本発明の固化助剤がチョコレートの固化助剤として優れていることが判る。 尚,上記の実施例で,固化助剤をそれぞれ0.1部,0.2部,0.5部,1部及び5部添加したが,中融点部の添加量はそれぞれ,0.01部,0.02部,0.05部,0.1部及び0.5部に相当する。」(3ページ右下欄5行~4ページ左上欄5行) 2 取消理由1(進歩性)について (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると甲1発明の「チョコレート1」は,本件発明1の「油脂性食品」に相当する。 また,甲1発明の「ハードバター11-1」と,本件発明1の「油脂(A)」及び「油脂(B)」を含む「固化促進剤」とは,「油脂」の限りで一致する。そして,甲1発明の「ハードバター11-1」は,20℃で液状の油脂組成物を含まないものであるところ,本件発明1の「油脂(B)が9重量%未満」という特定事項は,油脂(B)を含まないものを包含することから,甲1発明の「ハードバター11-1」はその全量が,本件発明1の「油脂(A)」に対応するといえる。したがって,甲1発明の「20℃で液状の油脂組成物を含まないハードバター11-1」は,本件発明1の「油脂(A)が90重量%を超え」,「20℃で液状の油脂組成物である」「油脂(B)が9重量%未満配合」の固化促進剤(油脂)に対応する。 また,甲1発明のチョコレート1が何らかの成型機を用いて製造されることは自明である。 さらに,甲1発明のハードバター11-1のStOSt含量の85.041質量%,StLSt含量の3.5質量%以下,StStO/StOStの比率0.010はそれぞれ,本件発明1のStOSt含量の70重量%以上,StLSt含量の5重量%以下,StStO/StOStの比率0.03以下に包含されるものである。 以上より,両者は, 「油脂(A)が90重量%を超え,油脂(B)が9重量%未満配合された油脂性食品用の油脂を,配合又は添加した油脂性食品を,成型機を用いて成型させる,成型された油脂性食品の製造方法。 ここで油脂(A)はStOSt含量が70重量%以上,StLStの含量が5重量%以下,かつStStO/StOStの比率が0.03以下である油脂組成物である。また,油脂(B)は20℃で液状の油脂組成物である。但し,Stはステアリン酸,Lはリノール酸,Oはオレイン酸をそれぞれ示す。またStOSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がOであるトリグリセリド,StLSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がLであるトリグリセリド,StStO;1位及び2位,又は2位及び3位の脂肪酸がStであり,3位,又は1位の脂肪酸がOであるトリグリセリドをそれぞれ示す。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 <相違点1> 油脂性食品に配合又は添加される油脂について,本件発明1では,固化促進剤を,油分中1.0~10重量%となるように融液として配合又は添加するのに対して,甲1発明では,チョコレート1にハードバター11-1を,油分中12.9重量%配合する点。 <相違点2> 本件発明1では,油脂性食品を,コールドスタンプ成型機,エリクセン成型機又はレボル成型機を用いて成型させるのに対して,甲1発明では,チョコレート1を成型する機械が特定されていない点。 (2)判断 ア 上記相違点1について検討するに,甲1発明のハードバター11-1は,チョコレート1の硬度調整剤として用いられるものである(【0001】,【0002】及び【0020】)。そして,チョコレートの硬度調整剤が一般に,固化促進剤と実質的に同じものであるという証拠や,硬度調整に際して固化促進作用も奏するという証拠は認められない。そうすると,甲1発明のハードバター11-1は,当業者にとってチョコレート1の固化促進剤と認識されていたとはいえないし,また,これを固化促進剤として用いるという動機付けも認められない。これは,甲3~甲17を参酌しても同様である。 イ 加えて,甲1発明のハードバター11-1の配合割合12.9重量%を,0~10重量%とする動機付けも見出せない。すなわち,上記(1a)に,「上記ハードバターは油脂成分中に10質量%以上,好ましくは20質量%以上,さらに好ましくは30質量%以上含まれていることが好ましい。」とあり,甲1には,たしかにハードバターを油脂成分中に「10質量%」配合することが示唆されている。しかしながら,「10質量%」は,上記記載からもわかるとおり,許容範囲の下限値である。しかも,チョコレート製造の技術分野において,ハードバターの含有量がチョコレートの口溶け等に影響を与えることや,ハードバターを含む各成分の含有バランスがチョコレートの製造特性等を変化させることは技術常識である。そうすると,チョコレートの口溶けや剥離性等について一定の評価がなされている(上記(1e))甲1発明において,上記(1a)を参酌しても,ハードバター11-1の配合割合12.9重量%を,あえて10質量%という下限値(すなわち,相違点1の1.0~10重量%)に変更する動機付けはないし,また,これは設計的事項ともいえない。 ウ したがって,甲1発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。 エ なお,申立人は,甲3~甲9を提示し,「チョコレートの離型性を良くするために,チョコレートの固化を促進する機能を有する甲第1号証の実施例11のハードバター11-1をチョコレートの固化促進剤としてチョコレートに配合又は添加することは,容易に想到するものである。」(申立書53ページ1~4行)旨主張しているので,以下検討しておく。 まず,甲3についてみると,申立人は,上記(3b)~(3d)より,StOStがチョコレートの固化を促進し,StLSt及びStStOがチョコレートの固化を遅くすることが看取できると述べ,StOSt含有量が高く,StStO含有量及びStLSt含有量が低い甲1のハードバター11-1は,チョコレートの固化を促進する機能を有すると説明している。 しかしながら,上記(3a)からもわかるように,甲3は,チョコレートと油脂性食品素材とを組み合わせてなる複合菓子において,油脂移行に係る課題を解決することをその趣旨とするものである。そして,上記(3b)~(3d)に直接開示されているのは,チョコレート油脂中のStOStトリグリセリドが最も早く固化してチョコレートの骨格を形成すること,StOStに対するStLStやStStOトリグリセリドの相対的な含有量が多いとStOStの固化速度が遅れ,その結果油脂移行が助長されること,及び,StLSt/StOStやStStO/StOStの比率が大きいと,StOStトリグリセリドの固化が遅れ,油脂移行耐性が低下すること等である。したがって,甲3から,甲1発明のハードバター11-1を,チョコレートの固化促進機能を有するものとすることはできない。 次に,甲4についてみると,申立人は,上記(4a),(4b),(4d)~(4g)より,StOStには,チョコレートの固化を助ける作用,すなわち,チョコレートの固化を促進する作用があることが看取されると述べ,StOSt含有量が高いハードバターである甲1のハードバター11-1は,チョコレートの固化を促進する機能を有するものであると説明している。 しかしながら,上記(4b)及び(4c)からもわかるように,甲4は,チョコレート類の固化助剤として,テンパリングのばらつきをなくし,チョコレートの食感の低減を防ぎ,かつ少量の添加でテンパリングプロセスを改善し,良質のチョコレートを製造できるものを提供することをその趣旨とするものである。他方,本件発明の固化促進剤は,結晶安定化速度を改善することで,油脂性食品の固化性や離型性を向上させるもの(【0013】)である。そうすると,甲4の固化助剤は,本件発明の固化促進剤の機能を有するものではない。したがって,甲4から,甲1発明のハードバター11-1を,チョコレートの固化促進機能を有するものとすることはできない。 さらに,甲5ないし甲9をみても,ハードバターを構成する油脂とチョコレートの固化促進とに関係する記載はなく,甲5~甲9から,甲1発明のハードバター11-1を,チョコレートの固化促進機能を有するものとすることはできない。 以上より,申立人の上記主張は採用できない。 オ したがって,相違点2について検討するまでもなく,本件発明1は,甲1発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件発明2は,本件発明1の特定事項を全て含むものであるから,同様の理由により,甲1発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 よって,請求項1及び2に係る特許は,上記取消理由1によって取り消されるべきものであるとすることはできない。 3 取消理由2(進歩性)について (1)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると,甲2発明の「チョコレート1」は本件発明1の「油脂性食品」に相当する。 また,甲2発明の「ハードバター1」と,本件発明1の「油脂(A)」及び「油脂(B)」を含む「固化促進剤」とは,「油脂」の限りで一致する。そして,甲2発明の「ハードバター1」は,20℃で液状の油脂組成物を含まないものであるところ,本件発明1の「油脂(B)が9重量%未満」という特定事項は,油脂(B)を含まないものを包含することから,甲2発明の「ハードバター1」はその全量が,本件発明1の「油脂(A)」に対応するといえる。したがって,甲2発明の「20℃で液状の油脂組成物を含まないハードバター1」は,本件発明1の「油脂(A)が90重量%を超え」,「20℃で液状の油脂組成物である」「油脂(B)が9重量%未満配合」の固化促進剤(油脂)に対応する。 また,甲2発明のチョコレート1が何らかの成型機を用いて製造されることは自明である。 さらに,甲2発明のハードバター1のStOSt含量の81.774%,StLSt含量の3.2%以下,StStO/StOStの比率0.010はそれぞれ,本件発明1のStOSt含量の70重量%以上,StLSt含量の5重量%以下,StStO/StOStの比率0.03以下に包含されるものである。 以上より,両者は, 「油脂(A)が90重量%を超え,油脂(B)が9重量%未満配合された油脂性食品用の油脂を,配合又は添加した油脂性食品を,成型機を用いて成型させる,成型された油脂性食品の製造方法。 ここで油脂(A)はStOSt含量が70重量%以上,StLStの含量が5重量%以下,かつStStO/StOStの比率が0.03以下である油脂組成物である。また,油脂(B)は20℃で液状の油脂組成物である。但し,Stはステアリン酸,Lはリノール酸,Oはオレイン酸をそれぞれ示す。またStOSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がOであるトリグリセリド,StLSt;1位及び3位の脂肪酸がStであり,2位の脂肪酸がLであるトリグリセリド,StStO;1位及び2位,又は2位及び3位の脂肪酸がStであり,3位,又は1位の脂肪酸がOであるトリグリセリドをそれぞれ示す。」 である点で一致し,以下の点で相違する。 <相違点3> 油脂性食品に配合又は添加される油脂について,本件発明1では,油脂性食品に固化促進剤を,油分中1.0~10重量%となるように融液として配合又は添加するのに対して,甲2発明では,チョコレート1にハードバター1を,油分中19.7質量%配合する点。 <相違点4> 本件発明1では,油脂性食品を,コールドスタンプ成型機,エリクセン成型機又はレボル成型機を用いて成型させるのに対して,甲2発明では,チョコレート1を成型する機械が特定されていない点。 (2)判断 ア 上記相違点3について検討するに,甲2発明のハードバター1は,チョコレートの硬度調整剤として用いられるものである(【0001】及び【0002】)。そして,上記「2 取消理由1」の「(2)判断」のアで示したのと同様の理由により,甲2発明のハードバター1は,当業者にとってチョコレート1の固化促進剤と認識されていたとはいえないし,また,これを固化促進剤として用いるという動機付けも認められない。これは,甲3~甲17を参酌しても同様である。 イ 加えて,甲2発明のハードバター1の配合割合19.7質量%を,0~10重量%とする動機付けも見出せない。すなわち,上記(2a)に,「上記ハードバターは油脂成分中に10質量%以上,好ましくは20質量%以上,さらに好ましくは30質量%以上含まれていることが好ましい。」とあり,甲2には,たしかにハードバターを油脂成分中に「10質量%」配合することが示唆されている。しかしながら,「10質量%」は,上記記載からもわかるとおり,許容範囲の下限値である。しかも,チョコレート製造の技術分野において,ハードバターの含有量がチョコレートの口溶け等に影響を与えることや,ハードバターを含む各成分の含有バランスがチョコレートの製造特性等を変化させることは技術常識である。そうすると,チョコレートの口溶けや剥離性等について一定の評価がなされている(上記(2e))甲2発明において,上記(2a)を参酌しても,ハードバター1の配合割合19.7質量%を,あえて10質量%という下限値(すなわち,相違点3の1.0~10重量%)に変更する動機付けはないし,また,これは設計的事項ともいえない。 ウ したがって,甲2発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて上記相違点3に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。 エ なお,申立人は,甲3~甲9を提示し,「チョコレートの離型性を良くするために,チョコレートの固化を促進する機能を有する甲第2号証の実施例4のハードバター1をチョコレートの固化促進剤としてチョコレートに配合又は添加することは,容易に想到するものである。」(申立書61ページ7~10行)旨主張しているが,これが採用できないことは,上記「2 取消理由1」の「(2)判断」のエで示したのと同様である。 オ したがって,相違点4について検討するまでもなく,本件発明1は,甲2発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また,本件発明2は,本件発明1の特定事項を全て含むものであるから,同様の理由により,甲2発明及び甲3~甲17に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)小括 よって,請求項1及び2に係る特許は,上記取消理由2によって取り消されるべきものであるとすることはできない。 第5 むすび 以上より,上記取消理由通知に記載した取消理由によっては,請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2017-700589

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