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特許異議申立

2017-700428

光学フィルタ

審判番号
2017-700428
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-555008
登録番号
特許第6020746号(P6020746)
請求日
2017年04月28日
審決日
2018年08月07日
公報発行日
2018年12月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】AGC株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人サクラ国際特許事務所
  • 【異議申立人】石井 良夫
審判長/審判官
  • 審判長 樋口 信宏
  • 審判官 清水 康司
  • 審判官 河原 正
分類
P1651.832-ZDA(G02B) / P1651.121-ZDA(G02B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6020746号発明「光学フィルタ」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6020746号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1ないし3,5ないし14,17ないし21〕,〔4,42ないし58〕,〔15,16,22ないし41〕について訂正することを認める。 特許第6020746号の請求項1,2,11ないし14,17ないし21に係る特許を取り消す。 同請求項3,5ないし10,22ないし58に係る特許を維持する。 同請求項4,15,16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6020746号(請求項の数21。以下,「本件特許」という。)に係る特許出願は,2014年12月25日(優先権主張2013年12月26日 日本国,2014年11月14日 日本国)を国際出願日とする出願であって,平成28年10月14日に特許権の設定登録がされたものである。 同年11月2日に本件特許について特許掲載公報の発行がなされたところ,平成29年4月28日に特許異議申立人より請求項1ないし21に係る特許について特許異議の申立てがされ,同年8月15日付けで特許権者に取消理由が通知され,特許権者より同年10月17日に意見書が提出されるとともに訂正の請求がされ,同年12月25日付けで訂正拒絶理由が通知され,平成30年1月26日に意見書とともに手続補正書が提出され,同年3月20日付けで特許権者に取消理由通知(決定の予告)がされ,特許権者より同年5月28日に意見書が提出されるとともに訂正の請求(特許法120条の5第7項の規定により,平成29年10月17日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなす。)がされた。 なお,平成29年12月6日及び平成30年7月6日に異議申立人より意見書が提出されている。 第2 訂正の可否についての判断 1 訂正請求の内容 (1)訂正前後の記載 平成30年5月28日にされた訂正の請求(以下,当該訂正の請求を「本件訂正請求」といい,本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は,本件特許の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1ないし58について訂正することを求めるものである。 しかるに,本件訂正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。) ア 本件訂正前の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 光吸収層および誘電体多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタにおいて,下記(i)および(ii)の要件を満たし, 前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体を含む透明樹脂から構成されることを特徴とする光学フィルタ。 (i)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下であり,かつ波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下である。 (ii)入射角0°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下である。 (iv-1)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。 (iv-2)ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。 【請求項2】 下記(iii)の要件をさらに満たす請求項1に記載の光学フィルタ。 (iii)入射角0°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(IR)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(IR)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下である。 【請求項3】 紫外線吸収体を含む前記透明樹脂は,350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax・p(UV)が,360nm~415nmにあり, 前記紫外線吸収体のλmax・P(UV)における透過率が10%となる量で含有したときに前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λp90と,前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λp50との差λp90-λp50が14nm以下である請求項1または2に記載の光学フィルタ。 【請求項4】 前記紫外線吸収体が,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項5】 前記紫外線吸収体が,下記式(M)で表されるメロシアニン系色素を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【化13】 式(M)における記号は以下のとおりである。 Yは,Q6およびQ7で置換されたメチレン基または酸素原子を表し, Q1は,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し, Q2~Q7は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,または,炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し, Zは,下記式(Z1)~(Z5)で表される2価の基のいずれかを表す(ただし,Q8およびQ9は,それぞれ独立に,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し,Q10~Q19は,それぞれ独立に,水素原子,または,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。)。 【化14】 【請求項6】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子,または炭素数1~6のアルキル基である請求項5に記載の光学フィルタ。 【請求項7】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子または炭素数1~6のアルキル基である請求項5に記載の光学フィルタ。 【請求項8】 式(M)中,Q2およびQ3が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基である請求項5~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項9】 式(M)中,Yが酸素原子であり,Zが前記式(Z1)または式(Z2)で表される基である請求項5~8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項10】 前記紫外線吸収体が,下記式(N)で表される色素である請求項1または2に記載の光学フィルタ。 【化15】 式(N)における記号は以下のとおりである。 R5は,それぞれ独立に,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し, R6は,それぞれ独立に,シアノ基,または-COOR7(ただし,R7は,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基)を示す。 【請求項11】 前記光吸収層は,前記紫外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.01~30質量部で含有する請求項1~10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項12】 前記光吸収層が,下記(v)の要件を満たす近赤外線吸収体を含む透明樹脂から構成される請求項1~11のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 (v)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,650nm~800nmの波長領域に,最も長波長の吸収極大波長λmax(IR)を有する。 【請求項13】 前記近赤外線吸収体が,スクアリリウム系,シアニン系,フタロシアニン系,ナフタロシアニン系,ジチオール金属錯体系,アゾ系,ポリメチン系,フタリド系,ナフトキノン系,アン卜ラキノン系,インドフェノール系,ピリリウム系,チオピリリウム系,ク口コニウム系,テ卜ラデヒドオコリン系,卜リフェニルメタン系,アミニウム系およびジイモニウム系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の光学フィルタ。 【請求項14】 前記光吸収層は,前記近赤外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.1~30質量部で含有する請求項12または13に記載の光学フィルタ。 【請求項15】 前記光吸収層が,屈折率1.45以上の透明樹脂を含む請求項1~14のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項16】 前記透明樹脂が,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,アクリル樹脂,ポリオレフィン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,ポリカーボネート樹脂,エン・チオール樹脂,エポキシ樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項15に記載の光学フィルタ。 【請求項17】 透明基材と,前記透明基材に積層された前記光吸収層および前記光反射層とを有する請求項1~16いずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項18】 前記透明基材は,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスまたはCuOを含有するリン酸塩系ガラスである請求項17に記載の光学フィルタ。 【請求項19】 前記透明基材の一方の主面上に前記吸収層を備え,前記透明基材の他方の主面上に前記光反射層を備える請求項17または18に記載の光学フィルタ。 【請求項20】 前記吸収層上に反射防止層を備える請求項19に記載の光学フィルタ。 【請求項21】 前記光反射層は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長420nm~695nmの透過率が85%以上であり,波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり,波長735nm~1100nmの透過率が5%以下である請求項1~20いずれか1項に記載の光学フィルタ。」 イ 本件訂正後の特許請求の範囲の記載 「【請求項1】 光吸収層および誘電体多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタにおいて,下記(i)および(ii)の要件を満たし, 前記誘電体多層膜は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり, 前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体を含む透明樹脂から構成されることを特徴とする光学フィルタ。 (i)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下であり,かつ波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下である。 (ii)入射角0°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下である。 (iv-1)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。 (iv-2)ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。 【請求項2】 下記(iii)の要件をさらに満たす請求項1に記載の光学フィルタ。 (iii)入射角0°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(IR)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(IR)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下である。 【請求項3】 紫外線吸収体を含む前記透明樹脂は,350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax・p(UV)が,360nm~415nmにあり, 前記紫外線吸収体のλmax・P(UV)における透過率が10%となる量で含有したときに前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λp90と,前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λp50との差λp90-λp50が14nm以下である請求項1または2に記載の光学フィルタ。 【請求項4】(削除) 【請求項5】 前記紫外線吸収体が,下記式(M)で表されるメロシアニン系色素を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【化13】 式(M)における記号は以下のとおりである。 Yは,Q6およびQ7で置換されたメチレン基または酸素原子を表し, Q1は,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し, Q2~Q7は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,または,炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し, Zは,下記式(Z1)~(Z5)で表される2価の基のいずれかを表す(ただし,Q8およびQ9は,それぞれ独立に,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し,Q10~Q19は,それぞれ独立に,水素原子,または,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。)。 【化14】 【請求項6】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子,または炭素数1~6のアルキル基である請求項5に記載の光学フィルタ。 【請求項7】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子または炭素数1~6のアルキル基である請求項5に記載の光学フィルタ。 【請求項8】 式(M)中,Q2およびQ3が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基である請求項5~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項9】 式(M)中,Yが酸素原子であり,Zが前記式(Z1)または式(Z2)で表される基である請求項5~8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項10】 前記紫外線吸収体が,下記式(N)で表される色素である請求項1または2に記載の光学フィルタ。 【化15】 式(N)における記号は以下のとおりである。 R5は,それぞれ独立に,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し, R6は,それぞれ独立に,シアノ基,または-COOR7(ただし,R7は,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基)を示す。 【請求項11】 前記光吸収層は,前記紫外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.01~30質量部で含有する請求項1~3および請求項5~10のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項12】 前記光吸収層が,下記(v)の要件を満たす近赤外線吸収体を含む透明樹脂から構成される請求項1~3および請求項5~11のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 (v)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,650nm~800nmの波長領域に,最も長波長の吸収極大波長λmax(IR)を有する。 【請求項13】 前記近赤外線吸収体が,スクアリリウム系,シアニン系,フタロシアニン系,ナフタロシアニン系,ジチオール金属錯体系,アゾ系,ポリメチン系,フタリド系,ナフトキノン系,アン卜ラキノン系,インドフェノール系,ピリリウム系,チオピリリウム系,ク口コニウム系,テ卜ラデヒドオコリン系,卜リフェニルメタン系,アミニウム系およびジイモニウム系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載の光学フィルタ。 【請求項14】 前記光吸収層は,前記近赤外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.1~30質量部で含有する請求項12または13に記載の光学フィルタ。 【請求項15】(削除) 【請求項16】(削除) 【請求項17】 透明基材と,前記透明基材に積層された前記光吸収層および前記光反射層とを有する請求項1~3および請求項5~14のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項18】 前記透明基材は,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスまたはCuOを含有するリン酸塩系ガラスである請求項17に記載の光学フィルタ。 【請求項19】 前記透明基材の一方の主面上に前記吸収層を備え,前記透明基材の他方の主面上に前記光反射層を備える請求項17または18に記載の光学フィルタ。 【請求項20】 前記吸収層上に反射防止層を備える請求項19に記載の光学フィルタ。 【請求項21】 前記光反射層は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長420nm~695nmの透過率が85%以上であり,波長735nm~1100nmの透過率が5%以下である請求項1~3,請求項5~14および請求項17~20のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項22】 光吸収層および誘電体多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタにおいて,下記(i)および(ii)の要件を満たし, 前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体(但し,2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェンを除く)を含む透明樹脂から構成され, 前記透明樹脂は,屈折率が1.45以上であることを特徴とする光学フィルタ。 (i)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下であり,かつ波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下である。 (ii)入射角0°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下である。 (iv-1)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。 (iv-2)ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。 【請求項23】 下記(iii)の要件をさらに満たす請求項22に記載の光学フィルタ。 (iii)入射角0°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(IR)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(IR)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下である。 【請求項24】 紫外線吸収体を含む前記透明樹脂は,350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax・p(UV)が,360nm~415nmにあり, 前記紫外線吸収体のλmax・P(UV)における透過率が10%となる量で含有したときに前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λp90と,前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λp50との差λp90-λp50が14nm以下である請求項22または23に記載の光学フィルタ。 【請求項25】 前記紫外線吸収体が,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項22~24のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項26】 前記紫外線吸収体が,下記式(M)で表されるメロシアニン系色素を含む請求項22~25のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【化16】 式(M)における記号は以下のとおりである。 Yは,Q6およびQ7で置換されたメチレン基または酸素原子を表し, Q1は,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し, Q2~Q7は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,または,炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し, Zは,下記式(Z1)~(Z5)で表される2価の基のいずれかを表す(ただし,Q8およびQ9は,それぞれ独立に,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し,Q10~Q19は,それぞれ独立に,水素原子,または,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。)。 【化17】 【請求項27】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子,または炭素数1~6のアルキル基である請求項26に記載の光学フィルタ。 【請求項28】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子または炭素数1~6のアルキル基である請求項26に記載の光学フィルタ。 【請求項29】 式(M)中,Q2およびQ3が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基である請求項26~28のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項30】 式(M)中,Yが酸素原子であり,Zが前記式(Z1)または式(Z2)で表される基である請求項26~29のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項31】 前記紫外線吸収体が,下記式(N)で表される色素である請求項22または23に記載の光学フィルタ。 【化18】 式(N)における記号は以下のとおりである。 R5は,それぞれ独立に,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基を示し, R6は,それぞれ独立に,シアノ基,または-COOR7(ただし,R7は,飽和もしくは不飽和の環構造を含んでもよく,分岐を有してもよい炭素数1~20の炭化水素基)を示す。 【請求項32】 前記光吸収層は,前記紫外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.01~30質量部で含有する請求項22~31のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項33】 前記光吸収層が,下記(v)の要件を満たす近赤外線吸収体を含む透明樹脂から構成される請求項22~32のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 (v)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,650nm~800nmの波長領域に,最も長波長の吸収極大波長λmax(IR)を有する。 【請求項34】 前記近赤外線吸収体が,スクアリリウム系,シアニン系,フタロシアニン系,ナフタロシアニン系,ジチオール金属錯体系,アゾ系,ポリメチン系,フタリド系,ナフトキノン系,アン卜ラキノン系,インドフェノール系,ピリリウム系,チオピリリウム系,ク口コニウム系,テ卜ラデヒドオコリン系,卜リフェニルメタン系,アミニウム系およびジイモニウム系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項33に記載の光学フィルタ。 【請求項35】 前記光吸収層は,前記近赤外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.1~30質量部で含有する請求項33または34に記載の光学フィルタ。 【請求項36】 前記透明樹脂が,ポリエステル樹脂,ポリエーテル樹脂,アクリル樹脂,ポリオレフィン樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂,ポリカーボネート樹脂,エン・チオール樹脂,エポキシ樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項22に記載の光学フィルタ。 【請求項37】 透明基材と,前記透明基材に積層された前記光吸収層および前記光反射層とを有する請求項22~36いずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項38】 前記透明基材は,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスまたはCuOを含有するリン酸塩系ガラスである請求項37に記載の光学フィルタ。 【請求項39】 前記透明基材の一方の主面上に前記吸収層を備え,前記透明基材の他方の主面上に前記光反射層を備える請求項37または38に記載の光学フィルタ。 【請求項40】 前記吸収層上に反射防止層を備える請求項39に記載の光学フィルタ。 【請求項41】 前記光反射層は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長420nm~695nmの透過率が85%以上であり,波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり,波長735nm~1100nmの透過率が5%以下である請求項22~40のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項42】 光吸収層および誘電体多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタにおいて,下記(i)および(ii)の要件を満たし, 前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体を含む透明樹脂から構成され, 前記紫外線吸収体は,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる1種を単独で使用することを特徴とする光学フィルタ。 (i)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下であり,かつ波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下である。 (ii)入射角0°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下である。 (iv-1)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。 (iv-2)ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。 【請求項43】 下記(iii)の要件をさらに満たす請求項42に記載の光学フィルタ。 (iii)入射角0°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(IR)を有し,入射角30°の分光透過率曲線において,600nm~700nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(IR)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下である。 【請求項44】 紫外線吸収体を含む前記透明樹脂は,350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax・p(UV)が,360nm~415nmにあり, 前記紫外線吸収体のλmax・P(UV)における透過率が10%となる量で含有したときに前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λp90と,前記λmax・p(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λp50との差λp90-λp50が14nm以下である請求項42または43に記載の光学フィルタ。 【請求項45】 前記紫外線吸収体が,下記式(M)で表されるメロシアニン系色素を含む請求項42~44のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【化19】 式(M)における記号は以下のとおりである。 Yは,Q6およびQ7で置換されたメチレン基または酸素原子を表し, Q1は,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し, Q2~Q7は,それぞれ独立に,水素原子,ハロゲン原子,または,炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を表し, Zは,下記式(Z1)~(Z5)で表される2価の基のいずれかを表す(ただし,Q8およびQ9は,それぞれ独立に,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し,Q10~Q19は,それぞれ独立に,水素原子,または,置換基を有していてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。)。 【化20】 【請求項46】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,水素原子の一部がシクロアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子,または炭素数1~6のアルキル基である請求項45に記載の光学フィルタ。 【請求項47】 式(M)中,Q1,Q8およびQ9が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基であり,Q2~Q7およびQ10~Q19が,それぞれ独立に,水素原子または炭素数1~6のアルキル基である請求項45に記載の光学フィルタ。 【請求項48】 式(M)中,Q2およびQ3が,それぞれ独立に,炭素数1~6のアルキル基である請求項45~47のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項49】 式(M)中,Yが酸素原子であり,Zが前記式(Z1)または式(Z2)で表される基である請求項45~48のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項50】 前記光吸収層は,前記紫外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.01~30質量部で含有する請求項42~49のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項51】 前記光吸収層が,下記(v)の要件を満たす近赤外線吸収体を含む透明樹脂から構成される請求項42~50のいずれか1項に記載の光学フィルタ。 (v)ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,650nm~800nmの波長領域に,最も長波長の吸収極大波長λmax(IR)を有する。 【請求項52】 前記近赤外線吸収体が,スクアリリウム系,シアニン系,フタロシアニン系,ナフタロシアニン系,ジチオール金属錯体系,アゾ系,ポリメチン系,フタリド系,ナフトキノン系,アン卜ラキノン系,インドフェノール系,ピリリウム系,チオピリリウム系,ク口コニウム系,テ卜ラデヒドオコリン系,卜リフェニルメタン系,アミニウム系およびジイモニウム系からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項51に記載の光学フィルタ。 【請求項53】 前記光吸収層は,前記近赤外線吸収体を透明樹脂100質量部に対して,0.1~30質量部で含有する請求項51または52に記載の光学フィルタ。 【請求項54】 透明基材と,前記透明基材に積層された前記光吸収層および前記光反射層とを有する請求項42~53いずれか1項に記載の光学フィルタ。 【請求項55】 前記透明基材は,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスまたはCuOを含有するリン酸塩系ガラスである請求項54に記載の光学フィルタ。 【請求項56】 前記透明基材の一方の主面上に前記吸収層を備え,前記透明基材の他方の主面上に前記光反射層を備える請求項54または請求項55に記載の光学フィルタ。 【請求項57】 前記吸収層上に反射防止層を備える請求項56に記載の光学フィルタ。 【請求項58】 前記光反射層は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長420nm~695nmの透過率が85%以上であり,波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり,波長735nm~1100nmの透過率が5%以下である請求項42~57のいずれか1項に記載の光学フィルタ。」 (2)訂正事項 本件訂正は,次の訂正事項からなる。 ア 訂正事項1 請求項1の「下記(i)および(ii)の要件を満たし,」という記載の後に,「前記誘電体多層膜は,入射角0°の分光透過率曲線において,波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり,」という記載を挿入する。 イ 訂正事項2 請求項4を削除する。 ウ 訂正事項3 請求項5の「請求項1~4のいずれか1項」という記載を「請求項1~3のいずれか1項」に訂正する。 エ 訂正事項4 請求項11の「請求項1~10のいずれか1項」という記載を「請求項1~3および請求項5~10のいずれか1項」に訂正する。 オ 訂正事項5 請求項12の「請求項1~11のいずれか1項」という記載を「請求項1~3および請求項5~11のいずれか1項」に訂正する。 カ 訂正事項6 請求項15を削除する。 キ 訂正事項7 請求項16を削除する。 ク 訂正事項8 請求項17の「請求項1~16いずれか1項」という記載を「請求項1~3および請求項5~14のいずれか1項」に訂正する。 ケ 訂正事項9 (ア)訂正事項9-1 請求項21の「波長350nm~400nmの透過率が5%以下であり,」という記載を削除する。 (イ)訂正事項9-2 請求項21の「請求項1~20いずれか1項」という記載を「請求項1~3,請求項5~14および請求項17~20のいずれか1項」に訂正する。 コ 訂正事項10 (ア)訂正事項10-1: 請求項15のうち請求項1の記載を引用するものについて,独立形式の記載に改めて,新たな請求項22とする。 (イ)訂正事項10-2 訂正事項10-1による訂正後の新たな請求項22において,「前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体を含む透明樹脂から構成され」という記載,及び「前記光吸収層が,屈折率1.45以上の透明樹脂を含む」という記載を,「前記光吸収層が,下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体(但し,2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェンを除く)を含む透明樹脂から構成され,前記透明樹脂は,屈折率が1.45以上である」という記載に訂正して,本件訂正後の請求項22(以下,本件訂正後の請求項を「訂正後請求項」ということがある。)とする。 サ 訂正事項11 請求項15のうち請求項2ないし14の記載を引用するものについて,それぞれ,訂正後請求項22等の記載を引用する形式の記載に改めて,新たな請求項である訂正後請求項23ないし35とするとともに,請求項16について,訂正後請求項22の記載を引用する形式の記載に改めて,新たな請求項である訂正後請求項36とし,さらに,請求項17ないし21のうち請求項15の記載を引用するものについて,それぞれ,訂正後請求項22等の記載を引用する形式の記載に改めて,新たな請求項である訂正後請求項37ないし41とする。 シ 訂正事項12 (ア)訂正事項12-1 請求項4のうち請求項1の記載を引用するものについて,独立形式の記載に改めて,新たな請求項42とする。 (イ)訂正事項12-2 訂正事項12-1による訂正後の新たな請求項42において,「前記紫外線吸収体が,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる少なくとも1種である」という記載を,「前記紫外線吸収体は,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる1種を単独で使用する」という記載に訂正して,訂正後請求項42とする。 ス 訂正事項13 請求項4のうち請求項2及び3の記載を引用するものについて,それぞれ,訂正後請求項42等の記載を引用する形式の記載に改めて,新たな請求項である訂正後請求項43及び44とするとともに,請求項5ないし9,11ないし14,17ないし21のうち請求項4の記載を引用するものについて,それぞれ,訂正後請求項42等の記載を引用する形式の記載に改めて,新たな請求項である訂正後請求項45ないし58とする。 2 訂正の目的について (1)訂正後請求項1ないし3,5ないし14,17ないし21に係る訂正事項の目的 訂正事項1及び9-1は,本件訂正前の請求項1ないし3,5ないし14,17ないし20(平成29年10月17日にされた訂正の請求は取り下げられたものとみなすので,特許がされた時点での請求項1ないし3,5ないし14,17ないし20である。以下,本件訂正前の請求項を「訂正前請求項」ということがある。)のうち請求項4,15及び16の記載を直接又は間接的に引用していないものについて,「誘電体多層膜」の「入射角0°の分光透過率曲線」における「波長350nm~400nmの透過率」が5%以下であるとの限定を付加しようとする訂正であるから,特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (2)訂正後請求項4,42ないし58に係る訂正事項の目的 ア 訂正事項2ないし5,訂正事項8のうち引用する請求項から請求項4を削除する訂正事項,訂正事項9-2のうち引用する請求項から請求項4を削除する訂正事項,訂正事項12-1,及び訂正事項13は,他の請求項の記載を引用する形式で記載されていた訂正前請求項4のうち請求項1の記載を引用するものについて,独立形式の記載に改めて,訂正後請求項42とするとともに,訂正前請求項4のうち他の請求項の記載を引用するものと,訂正前請求項5ないし9,11ないし14,17ないし21のうち請求項4の記載を直接又は間接的に引用するものとについて,当該独立形式の記載に改めた訂正後請求項42の記載を直接又は間接的に引用する形式の記載に改めるものであるから,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。 イ また,訂正事項12-2は,訂正前請求項4(訂正後請求項42ないし44)と,訂正前請求項5ないし9,11ないし14,17ないし21のうち請求項4の記載を直接又は間接的に引用するもの(訂正後請求項45ないし58)とについて,訂正前には,単独で使用するのか複数使用するのかについては任意であった紫外線吸収体について,単独で使用するもののみに限定しようとする訂正であるから,同項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 (3)訂正後請求項15,16,22ないし41に係る訂正事項の目的 ア 訂正事項6及び7,訂正事項8のうち引用する請求項から請求項15及び16を削除する訂正事項,訂正事項9-2のうち引用する請求項から請求項15及び16を削除する訂正事項,訂正事項10-1,及び訂正事項11は,他の請求項の記載を引用する形式で記載されていた訂正前請求項15のうち請求項1の記載を引用するものについて,独立形式の記載に改めて,訂正後請求項22とするとともに,訂正前請求項15のうち他の請求項の記載を引用するものと,訂正前請求項16と,訂正前請求項17ないし21のうち請求項15の記載を引用するものとについて,当該独立形式の記載に改めた訂正後請求項22の記載を直接又は間接的に引用する形式の記載に改めるものであるから,特許法120条の5第2項ただし書4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること。」を目的とするものに該当する。 イ また,訂正事項10-2は,訂正前請求項15及び16,並びに訂正前請求項17ないし21のうち請求項15の記載を引用するもの(訂正後請求項22ないし41)について,(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす「紫外線吸収体」を,「2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」を除いたものに限定しようとする訂正であるから,同項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 3 新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質拡張・変更について 前記2(1)で述べた訂正事項(訂正事項1及び9-1)により,訂正前請求項1ないし3,5ないし14,17ないし20のうち請求項4,15及び16の記載を直接又は間接的に引用していないもの(訂正後請求項1ないし3,5ないし14,17ないし21)に係る発明にそれぞれ付加されることとなる限定事項(「誘電体多層膜」の「入射角0°の分光透過率曲線」における「波長350nm~400nmの透過率」が5%以下)は,訂正前請求項21に記載された事項である。 また,前記2(2)イで述べた訂正事項12-2により,訂正前請求項4(訂正後請求項42ないし44)と,訂正前請求項5ないし9,11ないし14,17ないし21のうち請求項4の記載を直接又は間接的に引用するもの(訂正後請求項45ないし58)に係る発明にそれぞれ付加されることになる限定事項(紫外線吸収体の単独使用)は,本件特許明細書の【0071】に「吸収体Uは1種を単独で使用してもよく」として記載された事項である。 また,前記2(3)イで述べた訂正事項10-2により,訂正前請求項15及び16,並びに訂正前請求項17ないし21のうち請求項15の記載を引用するもの(訂正後請求項22ないし41)にそれぞれ付加されることになる限定事項(2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェンの除外)は,本件特許明細書の【0119】ないし【0159】に記載された各実施例中に,2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン(【0122】の表3に示されたU1)でない紫外線吸収体(【0122】の表3に示されたU2ないしU14)を用いた実施例が多数存在すること等から,当業者によって,明細書,特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないと認められる。 さらに,前記2(2)ア及び前記2(3)アで述べた訂正事項(訂正事項2ないし8,9-2,10-1,11,12-1及び13)による訂正の前後で,各請求項に記載された発明特定事項に差異はない。 したがって,本件訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。 また,本件訂正が,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。 したがって,本件訂正は,特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。 4 別の訂正単位とすることの求めについて 訂正前請求項1ないし21は,請求項2ないし21が,訂正対象である請求項1の記載を引用する関係にあり,訂正前において一群の請求項に該当するものであるから,本件訂正請求は特許法120条の5第3項及び4項の規定に適合してなされたものである。そして,訂正後請求項4,42ないし58に係る訂正事項,及び訂正後請求項15,16,22ないし41に係る訂正事項は,いずれも,引用関係の解消を目的とする訂正事項を含むものであって,その訂正は認められるものである。 しかるに,特許権者から,訂正後請求項4,42ないし58,及び訂正後請求項15,16,22ないし41についてそれぞれ一群の請求項とは別の訂正単位として扱われることの求めがあったことから,訂正後の請求項〔1ないし3,5ないし14,17ないし21〕,〔4,42ないし58〕,及び訂正後請求項〔15,16,22ないし41〕について請求項ごとに訂正することを認める。 5 本件訂正の可否のまとめ 前記2ないし4のとおりであって,本件訂正は特許法120条の5第2項ただし書1号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1ないし3,5ないし14,17ないし21〕,〔4,42ないし58〕,〔15,16,22ないし41〕について請求項ごとに訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件特許の各請求項に係る発明 前記第2 5で述べたとおり,本件訂正は認められたから,本件特許の請求項1ないし3,5ないし14,17ないし58に係る発明(以下,それぞれを「本件訂正発明1」,「本件訂正発明2」・・・「本件訂正発明58」といい,これらを総称して「本件訂正発明」という。)は,それぞれ,前記第2 1(1)イにおいて,本件訂正後の特許請求の範囲の記載として示した請求項1ないし3,5ないし14,17ないし58に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる。 2 取消理由通知(決定の予告)の概要 (1) 平成30年3月20日付けの取消理由通知(決定の予告)により通知された取消理由(以下,「本件取消理由」という。)は,概略次のとおりである。 平成29年10月17日にされた訂正の請求による訂正後の請求項1ないし3,11ないし18,21ないし25,32ないし40に係る発明は,本件特許の優先権主張の日より前に頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 記 甲1:特開2013-83915号公報 甲2:特表2004-504481号公報 甲7:特開2009-227938号公報 甲9:特開2006-182584号公報 甲10:特開2008-303130号公報 甲11:特開2011-133532号公報 刊行物2:特開平8-133790号公報 (2) なお,平成29年10月17日にされた訂正の請求による訂正後の請求項1ないし3,11ないし14,15,16,17,18,21,39,40は,本件訂正後の請求項1ないし3,11ないし14,22ないし24及び26ないし35,36,17及び37,18及び38,21及び41,20及び40及び57,21及び41にそれぞれ対応し,平成29年10月17日にされた訂正の請求による訂正後の請求項22ないし25,32ないし38は,いずれも,本件訂正後の請求項19及び39及び56に対応するから,平成30年3月20日付けの取消理由通知(決定の予告)によって本件取消理由が通知された請求項に対応するのは,本件訂正後の請求項1ないし3,11ないし14,17ないし24,26ないし41,56,57である。 3 引用例 (1)甲1 ア 甲1の記載 甲1(特開2013-83915号公報)は,本件特許の最先の優先権主張の日(以下,「本件特許の優先日」という。)より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲1には,次の記載がある。(下線は,後述する「甲1発明」の認定に特に関係する箇所を示す。) (ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,光選択透過フィルター,樹脂シート及び固体撮像素子に関する。より詳しくは,光学部材やオプトデバイス部材の他,表示デバイス部品,機械部品,電気・電子部品等として有用な光選択透過フィルター,それに用いられる樹脂シート,及び,光選択透過フィルターを有する固体撮像素子に関する。 【背景技術】 【0002】 光選択透過フィルターは,特定波長の光の透過率を選択的に低減するフィルターであり,例えば,光学部材やオプトデバイス部材の他,表示デバイス部品,機械部品,電気・電子部品等として用いられる光フィルター部材として有用なものである。例えば,代表的な光学部材の1つである固体撮像素子(カメラモジュールとも称す)においては,光学ノイズとなる赤外線(特に波長>780nm)を遮断する赤外線カットフィルター(IRカットフィルター)が用いられている。 ・・・(中略)・・・ 【0004】 ・・・(中略)・・・特許文献1の実施例には,基材上に反射型のIRカット膜(誘電体多層膜)を蒸着した形態の光選択透過フィルター,すなわち反射型フィルターが開示されている。 【0005】 また,反射型フィルターと,光吸収剤を含有する透明材料から構成される吸収型フィルターとの,特性の異なる2種のフィルターを併用することによって,光学フィルターをより優れた性能を有するものとする試みも行われている。・・・(中略)・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 上述したように,種々の光選択透過フィルターが検討されているが,一般に,反射型フィルターは,光の遮断性能には優れるものの,光の入射角によって反射特性が変化する入射角依存性(視野角依存性とも称す)を有しており,その低減が課題であった。入射角依存性のないフィルターとしては,例えば,光吸収剤を含有する透明材料から構成される吸収型フィルターが挙げられるが,充分な吸収特性を実現するためには相当な厚みが必要であった。また,ガラス基材を用いる場合には,薄くすると割れやすくなる等の課題があり,薄膜化には限界があった。このように,遮断性能の入射角依存性を低減して特定波長の光をより効果的に遮断するとともに,薄膜化の要請にも充分に応えることができる光選択透過フィルターは,未だ開発されていないのが現状である。また,固体撮像素子等の光学部材の高性能化により充分に対応できるようにすべく,光選択透過フィルターには,遮断したい波長域をよりシャープに遮断でき,かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すといった光選択透過性に特に優れることも求められている。 【0010】 本発明は,上記現状に鑑みてなされたものであり,光選択透過性に特に優れ,かつ光遮断特性の入射角依存性を低減するとともに,充分な薄膜化を実現することもできる光選択透過フィルター,該光選択透過フィルターに用いられる樹脂シート,及び,該光選択透過フィルターを有する固体撮像素子を提供することを目的とする。」 (イ) 「【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者等は,光の透過率を選択的に低減する光選択透過フィルターについて種々検討したところ,吸収層を有する樹脂シートと,反射層(反射膜)とを含む形態とすることで,入射角依存性の低減と充分な遮断性能とを達成できることに着目し,吸収層を,色素及び樹脂成分を含有する樹脂層とすると,色素を高濃度としても均一に層中に分散でき,吸収ガラスのようにガラスを用いる場合と比較して,吸収層を大幅に薄膜化することができることを見いだした。 【0012】 またこのような吸収層において,色素として分子内にπ電子結合を有する色素を用いた場合,この特定色素の吸収層に占める濃度の違いにより,可視光の長波長側(600nm以上)の吸収領域における吸収特性に違いが生じることを見いだした。具体的には,所定濃度未満の低濃度では,吸収率が最大となる吸収極大と,それよりも600nmに近い短波長側にショルダー(2番目の吸収ピーク)とが観測されるのに対し,所定濃度以上の高濃度では,吸収極大がより600nmに近い短波長側にシフトし,しかも透過率が低く,かつシャープな吸収特性となることを見いだした。また,高濃度での400~600nm領域の可視光透過率は,低濃度でのそれと同等以上であることも見いだした。これらは,分子内にπ電子結合を有する色素が吸収層中に高密度に含有されることによって,当該色素の分子間の共役が生じ,吸収層の特定波長領域での透過吸収特性が変化することに起因するものと推測される。このような吸収層の特異な透過吸収特性は,光選択透過フィルターに適用する場合に,中でも撮像レンズ等のレンズ用光選択透過フィルターに適用する場合に特に有効である。また,このような吸収層を反射層と組み合わせることにより,視野角依存性が充分に低減され,可視領域から近赤外領域にかけてシャープな透過吸収特性を有する光選択透過フィルターが得られることも見いだし,上記課題をみごとに解決することができることに想到した。更に,このような光選択透過フィルターが,固体撮像素子(カメラモジュール)等の光学用途やオプトデバイス用途等に好適に適用できることを見いだし,本発明に到達した。 【0013】 すなわち本発明は,樹脂シートと,その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含む光選択透過フィルターであって,該樹脂シートは,色素及び樹脂成分を含む吸収層を有し,該色素は,分子内にπ電子結合を有する色素を含み,該分子内にπ電子結合を有する色素の含有割合は,吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対し,1質量%以上である光選択透過フィルターである。・・・(中略)・・・以下に本発明を詳述する。なお,以下において段落に分けて記載される本発明の好ましい形態の2つ又は3つ以上を組み合わせたものも本発明の好ましい形態である。 【0014】 本発明の光選択透過フィルターは,樹脂シートと,その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを有する。なお,本発明の作用効果を損なわない限りにおいて,更に他の層を1又は2以上有していてもよい。 【0015】 〔樹脂シート〕 上記光選択透過フィルターにおける樹脂シートは,色素及び樹脂成分を含有する吸収層(樹脂層とも称す)を有し,分子内にπ電子結合を有する色素を特定割合で含有するものである。これにより,特異な透過吸収特性を示すことができるうえ,この樹脂シートを反射膜と組み合わせることで,視野角依存性(入射角依存性とも称す)が充分に低減され,可視領域から近赤外領域にかけてシャープな透過吸収特性を有する光選択透過フィルターを与えることができる。また,反射膜として好適な光学多層膜と組み合わせると,光学多層膜の層数を減らすことができ,該多層膜における応力を緩和できるため,多層膜のクラックや割れを充分に防止することもできる。このような本発明の光選択透過フィルターに用いられる光選択透過フィルター用樹脂シートもまた,本発明の1つである。 【0016】 上記樹脂シートの構成(形態)は,吸収層を含む限り,特に限定されず,必要に応じて更に他の層を含むものであってもよい。中でも,支持体を更に有することが好ましい。樹脂シートを支持体と吸収層(樹脂層)とを含む構成とすることで,色素の分散困難な支持体であっても,この表面に樹脂層をコートすることによって本発明の効果を付与することができる。また,樹脂層の厚みを変更することで,吸収特性を更に制御することができるため,例えば,樹脂層を極薄コートすることにより支持体(好ましくは支持体フィルム)の膜厚をほとんど変えずに本発明の効果を付与したり,支持体の厚み調整に利用したり,樹脂層を支持体の表面傷削減等の表面改質に利用したりすることもできる。 【0017】 上記樹脂シートの形態としてより好ましくは,支持体の一方又は両面に吸収層が形成された形態であり,更に好ましくは,支持体の両面に吸収層が形成された形態である。また,吸収層を支持体フィルムで挟み込んだ樹脂シートとしてもよい。 なお,樹脂シートを構成する吸収層や,支持体等の他の層は,各々,一層又は二層以上であってもよい。 【0018】 <支持体> 上記樹脂シートは,上述したように支持体を更に有することが好ましいが,支持体としては,フィルム形状のもの(支持体フィルム)が好適である。支持体フィルムとしては,透明性に優れる樹脂を用いることが好ましい。・・・(中略)・・・ 【0021】 <吸収層> 上記樹脂シートにおいて,吸収層は,色素及び樹脂成分を含有するものであるが,色素が吸収層中に分散又は溶解されてなることが好ましい。すなわち,樹脂成分と色素とを含む組成物中に色素が分散又は溶解された形態の組成物により,吸収層が形成されることが好適である。・・・(中略)・・・ 【0022】 (i)色素 上記色素とは,特定波長の光を吸収する物質を意味し,樹脂成分と混合又は混練可能な色素を用いることができる。例えば,600~800nmの波長域に吸収極大を有するものが好適である。これにより,光選択透過フィルターを,特に780nm~10μmの赤外光を低減させる赤外線カットフィルターに好適に適用することが可能になる。より好ましくは,650~750nmの波長域に吸収極大を有するものである。上記色素はまた,400nm以上,600nm未満の波長域には実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい。 【0023】 上記色素は,分子内にπ電子結合を有する色素を含むが,このような分子内にπ電子結合を有する色素としては,芳香環を含む化合物であることが好適である。より好ましくは,1分子内に2個以上の芳香環を含む化合物である。 なお,上記分子内にπ電子結合を有する色素が,上述した好適な波長域に吸収極大を有するものであることが特に好ましい。 【0024】 上記分子内にπ電子結合を有する色素としては,例えば,フタロシアニン系色素,ポルフィリン系色素,シアニン系色素,クアテリレン系色素,スクアリリウム系色素,ナフタロシアニン系色素,ニッケル錯体系色素,銅イオン系色素等が挙げられ,これらの1種又は2種以上を使用することができる。 【0025】 上記吸収層における分子内にπ電子結合を有する色素の濃度(含有量)としては,吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対して,1質量%以上であることが適切である。1質量%未満では,遮断したい波長域(色素の吸収領域)をシャープに遮断することができず,また,当該波長域の透過率も充分に低減できないおそれがある。好ましくは2質量%以上,より好ましくは3質量%以上,更に好ましくは4質量%以上,特に好ましくは5質量%以上である。また,本発明の効果の発現には,分子内にπ電子結合を有する色素濃度の下限値が重要であり,上限値は特に限定されないが,例えば,20質量%以下であることが好適である。より好ましくは15質量%以下,更に好ましくは10質量%以下である。色素濃度が高すぎると成膜により吸収層を形成した場合の膜厚均一性が低下する場合があるためである。 ・・・(中略)・・・ 【0029】 (ii)樹脂成分 上記吸収層において,樹脂成分は,上述した色素を充分に溶解又は分散できるものであることが好ましい。このような樹脂成分を適切に選択することにより,透過させたい波長域(例えば,可視領域)における高透過率と,遮断したい波長域(例えば,赤外領域)における高吸収性とを両立することが可能となる。・・・(中略)・・・ 【0031】 上記樹脂成分としては,上述したように,溶剤可溶性樹脂,溶剤可溶性樹脂原料及び液状樹脂原料からなる群より選択される少なくとも1種が好ましいが,これらの中でも,溶剤可溶性樹脂を用いることが好適である。・・・(中略)・・・ 【0032】 上記溶剤可溶性樹脂として具体的には,例えば,フッ素化芳香族ポリマー,ポリ(アミド)イミド樹脂,ポリアミド樹脂,アラミド樹脂,ポリシクロオレフィン樹脂等が挙げられる。中でも,耐光性により優れる観点から,フッ素化芳香族ポリマー及び/又はポリ(アミド)イミド樹脂が好ましい。より好ましくは,ポリ(アミド)イミド樹脂であり,更に好ましくはポリイミド樹脂である。 ・・・(中略)・・・ 【0067】 上記樹脂シートの形成方法としては特に限定されず,例えば,樹脂層を形成する樹脂組成物を,支持体表面(又は,支持体と樹脂層との間に他の層を有する場合は,当該他の層の表面)に塗布し,乾燥又は硬化することにより形成する方法(塗布法又はコーティング法,溶媒キャスト法と称す)や,支持体に対して,樹脂組成物から形成された樹脂フィルムを熱圧着することにより形成する方法の他,練込法等も挙げられる。中でも,支持体と樹脂層(吸収層)とを有する樹脂シートを得る場合には,溶媒キャスト法を採用することが好ましい。これによって上記吸収層と支持体等との密着性がより充分なものとなる。なお,支持体を有しない樹脂シートを得る場合にも,溶媒キャスト法を用いることが好ましく,例えば,仮の基材に,樹脂層を形成する樹脂組成物を塗布した後,該基材から剥離することにより当該樹脂シートを得ることができる。 ・・・(中略)・・・ 【0072】 ・・・(中略)・・・また,吸収層の可視光500nmにおける透過率は60%以上であることが好適である。より好ましくは70%以上,更に好ましくは80%以上,特に好ましくは85%以上である。 上記吸収層はまた,上記色素の吸収極大波長における透過率が60%以下であることが好ましい。これにより,吸収極大波長付近の光を効果的に遮断することができる。透過率としてより好ましくは50%以下,更に好ましくは40%以下,特に好ましくは30%以下である。・・・(中略)・・・なお,上記吸収層を含む樹脂シート又は光選択透過フィルターについても,・・・(中略)・・・可視光500nmにおける透過率,及び,色素の吸収極大波長における透過率が,夫々,吸収層のついての上述した範囲と同様の範囲にあることが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0074】 〔反射膜〕 上記光選択透過フィルターにおいて,反射膜(反射層とも称す)としては,多層からなる膜であることが好適である。すなわち,上記反射膜は,光学多層膜であることが好ましい。また,光学多層膜としては,各波長の屈折率を制御できる無機多層膜等が,耐熱性に優れる点で好適である。無機多層膜としては,基材やその他の機能性材料層の上に,真空蒸着法,スパッタリング法等により,低屈折率材料及び高屈折率材料を交互に積層させた屈折率制御多層膜が好ましい。上記反射膜はまた,透明導電膜であることも好適である。透明導電膜としては,インジウム-スズ系酸化物(ITO)等の赤外線を反射する膜としての透明導電膜が好ましい。中でも,無機多層膜が好ましい。 【0075】 上記無機多層膜としては,誘電体層Aと,誘電体層Aが有する屈折率よりも高い屈折率を有する誘電体層Bとを交互に積層した誘電体多層膜が好適である。・・・(中略)・・・ 【0077】 上記誘電体層A及び誘電体層Bの各層の厚みは,通常,遮断しようとする光の波長をλ(nm)とすると0.1λ~0.5λの厚みであることが好ましい。厚みが上記範囲外になると,屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と大きく異なって反射・屈折の光学的特性の関係が崩れてしまい,特定波長の遮断・透過をするコントロールができなくなるおそれがある。 ・・・(中略)・・・ 【0082】 上記反射膜は,上記樹脂シートの少なくとも一方の表面に形成されてなるものである。反射膜は,樹脂シートの一方の表面のみに形成されていてもよいし,樹脂シートの両面に形成されていてもよいが,両面に形成されることが好ましい。これにより,本発明に係る光選択透過フィルターの反りや反射膜の割れを低減することができる。・・・(中略)・・・ 【0085】 〔光選択透過フィルターの好ましい形態等〕 本発明の光選択透過フィルターは,所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の種々の他の機能を有していてもよい。例えば,光選択透過フィルターとして好ましい形態の1つである赤外カットフィルターの場合,紫外線を遮蔽する機能等の赤外カット以外の各種機能を有する形態や,強靱性,強度等の赤外カットフィルターの物性を向上させる機能を有する形態を挙げることができる。・・・(中略)・・・ 【0089】 本発明の光選択透過フィルターは,光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては,10nm~100μmの間のものであればよく,用いる用途により選択することができる。低減させる光の波長に応じて赤外線カットフィルター,紫外線カットフィルター,赤外・紫外線カットフィルター等とすることができるが,中でも,650nm~10μmの赤外光と200~350nmの紫外光とを低減し,それ以外の光を透過するものであることが好ましい。すなわち,上記光選択透過フィルターは赤外・紫外線カットフィルターであることが好ましい。これにより,光遮断特性の入射角依存性を低減するという本発明の作用効果をより充分に発揮することができる。 【0090】 赤外線カットフィルターは,赤外線領域である650nm~10μmの波長を有する光のうち,いずれかの波長(範囲)の光を選択的に低減する機能を有するフィルターであればよい。選択的に低減する波長の範囲としては,650nm~2.5μm,650~1μm又は800nm~1μmであることが好適である。これらの範囲の波長の少なくとも一つを選択的に低減するフィルターもまた,上記赤外線カットフィルターに含まれる。選択的に低減する波長の範囲としては,近赤外線領域である650nm~1μmであることがより好ましい。 紫外線カットフィルターは,紫外線を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲としては,200~350nmであることが好ましい。 赤外・紫外線カットフィルターは,紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有するフィルターである。選択的に低減する波長の範囲は,上述と同様であることが好ましい。 ・・・(中略)・・・ 【0093】 本発明の光選択透過フィルターが赤外・紫外線カットフィルターである形態においては,650nm~10μmの赤外光と200~350nmの紫外光とを選択的に5%以下に低減するものが好ましく,その他の波長域の透過率は,75%以上であることが好ましい。 【0094】 上記光選択透過フィルターとして好ましくは,600~800nmの波長域に吸収極大を有し,かつ分子内にπ電子結合を有する色素を含有する吸収層を有する樹脂シートの少なくとも一方の表面に,反射膜が形成されてなる形態であるが,この構成によって,光遮断特性の入射角依存性をより充分に低減することができる。 光遮断特性の入射角依存性は,分光光度計(Shimadzu UV-3100,島津製作所社製)を用いて,入射角を変えた透過率(例えば0°,20°,25°,30°等。入射角0°における透過率とは,光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される透過率であり,入射角20°における透過率とは,光選択透過フィルターの厚み方向に対して20°傾いた方向から光が入射するようにして測定される透過率である。)を測定し,そのスペクトル変化量により評価できる。 なお,光遮断特性の入射角依存性は,樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり,入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと,又は,その変化の程度が小さいことが好ましい。具体的には,入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても),透過率80%以上の領域において,透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく,より好ましくは,透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり,更に好ましくは,透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは,いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。 【0095】 上述したように,本発明の光選択透過フィルターは,光選択透過性に特に優れ,光遮断特性の入射角依存性を充分に低減することができるとともに,充分な薄膜化が可能であるため,自動車や建物等のガラス等に装着される熱線カットフィルター等として有用であるのみならず,カメラモジュール(固体撮像素子ともいう)用途における光ノイズを遮断し視感度補正するためのフィルターとして有用である。中でも,本発明の光選択透過フィルターは,薄型化・軽量化が進むデジタルスチルカメラや携帯電話用カメラ等のカメラモジュールに用いられるフィルターとして有用である。カメラモジュールは,通常,レンズユニット(撮像レンズ)部,光選択透過フィルター,及び,CCDやCMOS等のセンサー部を備えるが,本発明の光選択透過フィルターを用いたカメラモジュールは,通常,レンズユニット(撮像レンズ)部と,CCDやCMOS等のセンサー部との間に配置される。このように本発明の光選択透過フィルター,レンズユニット部,及び,センサー部を少なくとも有する固体撮像素子もまた,本発明の1つである。」 (ウ) 「【発明の効果】 【0097】 本発明の光選択透過フィルターは,上述の構成よりなり,遮断したい波長域をよりシャープに遮断でき,かつ透過させたい波長域では高い透過率を示すといった特性に特に優れ,かつ光遮断特性の入射角依存性が充分に低減された光選択透過フィルターである。したがって,本発明の光選択透過フィルターを用いた固体撮像素子(カメラモジュール)は,反射型の光選択透過フィルターを用いることにより課題となった入射角による色むらの発生が,充分に抑制された画像を取り込むことができる。また,本発明の光選択透過フィルターは,充分な薄膜化も可能であるため,薄型化・軽量化が求められる用途において特に好適に用いることができる。具体的には,オプトデバイス用途,表示デバイス用途,機械部品,電気・電子部品等の様々な用途に好適に用いることができ,特に,撮像レンズ等のレンズ用光選択透過フィルターとして有用であり,中でも,カメラモジュール用IRカットフィルターとして特に有用である。 【0098】 また本発明の樹脂シートは,吸収層における特定色素を特定濃度以上で含有するものとすることにより,色素分子が本来有する選択透過性よりも優れた選択透過性を発揮できる樹脂シートである。すなわち,400~600nmの可視光に対する透過率は同等でありながら,600nm以上における吸収極大波長がより短波長側にシフトした,選択透過性に優れるものである。そのため,本発明の樹脂シートは,反射膜を更に備える光選択透過フィルター用の樹脂シートとして,上述した各種用途向けに好適に用いることができる。」 (エ) 「【図面の簡単な説明】 【0099】 【図1】実施例1で得た樹脂シート(1)の透過率スペクトルである。 【図2】実施例2で得た樹脂シート(2)の透過率スペクトルである。 ・・・(中略)・・・ 【図5】実施例3で得た樹脂シート(5)の透過率スペクトルである。 【図6】実施例4で得た樹脂シート(6)の透過率スペクトルである。・・・(中略)・・・ 【図8】本発明の光選択透過フィルターについて透過率及び入射角依存性を評価した透過率スペクトルの一例である。」 (オ) 「【発明を実施するための形態】 【0100】 以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り,「部」は「重量部」を,「%」は「質量%」を意味するものとする。・・・(中略)・・・ 【0102】 実施例1 合成例1で得たFPEK10部に,TX-EX-609K(開発品名,フタロシアニン系色素,吸収極大波長650nm,日本触媒社製)を0.3部,MIBK(メチルイソブチルケトン)を70部加え均一に溶解させ,色素含有樹脂組成物(1)を得た。 支持体フィルムとしてのネオプリムL-3430(三菱ガス化学社製,50μm厚)上に,色素含有樹脂組成物(1)を30μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥して,樹脂シート(1)52.3μmを得た。 樹脂シート(1)の透過率スペクトルを図1に示した。 【0103】 実施例2 支持体フィルムとしてのネオプリムL-3430(三菱ガス化学社製,50μm厚)上に,実施例1で得られた色素含有樹脂組成物(1)を15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥後,裏面にも同様に15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥した。樹脂シート(2)52.2μmを得た。 樹脂シート(2)の透過率スペクトルを図2に示した。 ・・・(中略)・・・ 【0106】 実施例3 ネオプリムL-3430(三菱ガス化学社製,50μm厚)10部にDMAc90部を加え,120℃で1時間攪拌し,溶解させた。この溶液にTX-EX-609K(商品名,フタロシアニン系色素,吸収極大波長650nm,日本触媒社製)を0.3部加え均一に溶解させ,色素含有樹脂組成物(4)を得た。 色素含有樹脂組成物(4)を支持体フィルムとしてのネオプリムL-3430(三菱ガス化学社製,50μm厚)上に,15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥後,支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(4)を15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥させることにより,樹脂シート(5)54μmを得た。 樹脂シート(5)の透過率スペクトルを図5に示した。 【0107】 実施例4 1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸(アルドリッチ製,純度95%)5部と無水酢酸(和光純薬社製)44部とを,フラスコに仕込み,攪拌しながら反応器内を窒素ガスで置換した。窒素ガス雰囲気下で溶剤の還流温度まで昇温し,10分間溶剤を還流させた。攪拌しながら室温まで冷却し,結晶を析出させた。析出した結晶を固液分離し,乾燥して目的物(1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物)の結晶を得た。温度計,撹拌器,窒素導入管,側管付き滴下ロート,ディーンスターク,冷却管を備えたフラスコに,窒素気流下,4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(和光純薬社製)0.89部と,溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン7.6部を仕込んで溶解させた後,1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物1部を室温にて固体のまま1時間かけて分割投入し,室温下2時間撹拌した。共沸脱水剤としてキシレンを2.6部添加して180℃で3時間反応を行い,ディーンスタークで還流して共沸する生成水を分離した。190℃に昇温しながらキシレンを留去した後,冷却し,ポリイミドのN-メチル-2-ピロリドン溶液,9.33部を得た(この溶液中のポリイミド濃度:18.5%)。この溶液に,TX-EX-609K(商品名,フタロシアニン系色素,吸収極大波長650nm,日本触媒社製)を0.055部加え均一に溶解させ,色素含有樹脂組成物(5)を得た。 色素含有樹脂組成物(5)を,支持体フィルムとしてのネオプリムL-3430(三菱ガス化学社製,50μm厚)上に,15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥後,支持体フィルムの裏面に同様にして色素含有樹脂組成物(5)を15μm厚で塗布し,150℃で60分間乾燥させることにより,樹脂シート(6)54μmを得た。 樹脂シート(6)の透過率スペクトルを図6に示した。 ・・・(中略)・・・ 【0112】 ・・・(中略)・・・すなわち,実施例においては,吸収層を,特定色素を1質量%以上で含有したものとすることにより,色素分子が本来有する選択透過性よりも優れた選択透過性を発揮できる樹脂シートが得られたのである。 【0113】 試験例 実施例1~4で得た各樹脂シートを,幅60mm,長さ100mmの長方形にカッティングした。この両面に,蒸着基板温度150℃で赤外線を反射する多層膜〔シリカ(SiO2:膜厚120~190nm)層とチタニア(TiO2:膜厚70~120nm)層とが交互に積層されてなるもの,積層数は片面20層ずつ両面に蒸着:計40層〕を蒸着により形成し,光選択透過フィルター(光学フィルター)を製造した。 得られた各光選択透過フィルターについて,透過率及び入射角依存性を以下に示す方法にて測定・評価した。 【0114】 <透過率の測定・入射角依存性の評価> Shimadzu UV-3100(島津製作所社製)を用いて200~1100nmにおける透過率を測定した。透過率は,図11に示すように,入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを0°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向から光が入射するようにして測定される。)と,入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置した場合(このようにして測定された透過率スペクトルを25°スペクトルともいう。光選択透過フィルターの厚み方向に対して25°傾いた方向から光が入射するようにして測定される。)の夫々について測定した。 【0115】 その結果,実施例1~4の樹脂シートを各々用いた各光選択透過フィルターでは,近赤外領域での透過率スペクトルのスロープは緩やかになるものの,透過率80%以上の領域において,0°と25°とのスペクトルに変化がなく,光遮断特性の入射角依存性は低減されることが確認された。一例として,本発明の樹脂シートに,多層膜を積層して形成した光選択透過フィルターにおける,透過率及び入射角依存性を評価したスペクトルを示す(図8)。」 (カ) 「【図1】 【図2】 ・・・(中略)・・・ 【図5】 【図6】 ・・・(中略)・・・ 【図8】 」 イ 甲1の記載から把握される発明 甲1の【0114】に記載されているとおり,入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置して測定した透過率スペクトルを「0°スペクトル」と表現し,入射光に対して25°光選択透過フィルターを傾けて設置して測定した透過率スペクトルを「25°スペクトル」と表現すると,甲1の【0115】の記載から,200ないし1100nmにおける0°スペクトル及び25°スペクトルが,図8に示されたとおりとなる「本発明の樹脂シートに,多層膜を積層して形成した光選択透過フィルター」について,把握することができる。 しかるに,当該光選択透過フィルターが,少なくとも【0013】に記載された「樹脂シートと,その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含む光選択透過フィルターであって,該樹脂シートは,色素及び樹脂成分を含む吸収層を有し,該色素は,分子内にπ電子結合を有する色素を含み,該分子内にπ電子結合を有する色素の含有割合は,吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対し,1質量%以上である光選択透過フィルター」なる構成を有することが明らかである。 したがって,甲1に,200~1100nmにおける0°スペクトル及び25°スペクトルが,図8に示されたとおりとなる「本発明の樹脂シートに,多層膜を積層して形成した光選択透過フィルター」として,次の発明が記載されていると認められる。 「樹脂シートと,その少なくとも一方の表面に形成されてなる反射膜とを含み,該樹脂シートは,色素及び樹脂成分を含む吸収層を有し,該色素は,分子内にπ電子結合を有する色素を含み,該分子内にπ電子結合を有する色素の含有割合は,吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対し,1質量%以上である光選択透過フィルターであって, 前記反射膜は多層膜からなり, 入射光に対して垂直になるように光選択透過フィルターを設置して測定した0°スペクトル,及び入射光に対して25°傾けて光選択透過フィルターを設置して測定した25°スペクトルが,波長範囲200ないし1100nmにおいて下記グラフに示すとおりとなる, 光選択透過フィルター。 [0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ] 」(以下,「甲1発明」という。) (2)甲2 ア 甲2の記載 甲2(特表2004-504481号公報)は,本件特許の優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲2には,次の記載がある。(下線は,後述する「甲2記載技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) (ア) 「【請求項1】 300~380nmの波長域の光透過率が10%以下,420~800nmの波長域の光透過率が90%以上であることを特徴とする紫外線遮蔽部材。 ・・・(中略)・・・ 【請求項3】 300~400nmの波長域の光透過率が10%以下であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線遮蔽部材。 【請求項4】 紫外線遮蔽部材が紫外線吸収剤と蛍光物質を含有することを特徴とする請求項1に記載の紫外線遮蔽部材。」 (イ) 「【0002】 【発明の属する技術分野】 本発明は,概して光遮蔽又は光吸収フィルターの分野に関し,より具体的には,人工光透過源からの有害な紫外線の遮蔽に適する改良されたフィルター部材に関する。 【0003】 【従来の技術】 紫外線は3つの領域,すなわち,UVA(320~400nm),UVB(280~320nm),及びUVC(100~280nm)からなっている。UVA及びUVBは大気により減衰するが,それでも地表に到達する。UVCは通常大気中のオゾンにより遮蔽される。人工の光源も紫外線を放射する。蛍光照明の殆どがUVA領域で高出力を示す。UVBはUVAよりダメージを与えるが,全ての紫外線が物質を劣化させる。 【0004】 太陽や人工の光源からの紫外線は,分子結合を破壊することにより多くの物質を劣化させる。紫外線により,染料やインクは退色,プラスチックは特性劣化,塗料はチョーキングや退色を起こし,その他の多くのものがダメージを受ける。紫外線劣化に対処する方法は,紫外線を吸収して熱エネルギーに変換する物質を使用する。殆どの吸収剤の紫外線カットオフは365nmである。全くあるいは殆ど黄色化の無い,384nmを上限とするカットオフの高い吸収剤もいくつかある。紫外線全域の遮蔽を目的として吸収剤を使用すると黄色味が発生する現象は,吸収物質の吸収曲線のゆるやかな勾配に起因する。カットオフを400nmに伸ばすと,この勾配により紫及び青色光の吸収が起こる。青色光の欠如は黄色として知覚される。殆どの吸収剤が,透明なオーバーコートの場合は特に,400nmまでの紫外線全域の遮蔽目的で使用されないのはこのためである。 ・・・(中略)・・・ 【0007】 日光,特に太陽光にさらされることにより発生する退色その他の劣化に対する抵抗力を向上させるために,保護すべき物品に直接塗布できる液体,又は直接貼付できる透明合成樹脂からなる積層体の形態の紫外線遮蔽フィルターを設けることは従来から知られている。紫外スペクトルの放射,中でも365nmから400nmまでの波長域の放射が特に有害である。しかし,最も広く使用されているフィルター材料は約365nmまでの波長域では効力があるが,この値を超えた波長域では効力が急激に低下する。 ・・・(中略)・・・ 【0009】 【課題を解決するための手段】 [総括的態様1] 本発明で開示する被覆は,紫外線の上限である400ナノメートル(nm)を含む,400nmまでの紫外線を遮蔽する。物体や表面への紫外線の到達を防止することは,化学的結合に対する紫外線の影響に起因する物理的劣化に対する抵抗力及び耐候性を大きく向上させる。現在多種類の紫外線防止剤が存在しており,これらは紫外線に対する抵抗力向上のために物体中に含有されるように意図されたものである。紫外線によるダメージは,紫外線波長が短くなるほど増大する。しかし,それでもかなりのダメージが紫外線の長波長域に起因している。紫外線を遮蔽し,かつ黄色化が起こらないことが望ましい。本発明で開示する被覆は水のような白色透明である。 ・・・(中略)・・・ 【0014】 [総括的態様3] 本発明の紫外線遮蔽部材は,300~380nmの波長域の光透過率が10%以下,好ましくは300~390nmの波長域の光透過率が10%以下,特に好ましくは300~400nmの波長域の光透過率が10%以下であり,一方,420~800nmの波長域の光透過率が90%以上,好ましくは95%以上である。」 (ウ) 「【0016】 【発明の実施の形態】 [総括的態様1] 本発明において開示する被覆は2層からなる被覆であり,そのうち,紫外線源から最も遠くにある内側層(遮蔽層と呼ぶ)中に,紫外線を青色光として反射する蛍光物質とともに典型的な紫外線吸収剤を使用したものである。内側層における紫外線吸収剤は,紫外カットオフを得るのに十分な濃度で使用され,このカットオフ波長は蛍光物質により大きくできる。天然の蛍光物質としては,方解石,ケイ酸亜鉛鉱,スプライト,蛍石,ダイヤモンドなどがある。長波長の紫外線を青色光として反射することで物質をより白く見せるために使用される人工の蛍光物質もある。これらは光学増輝剤(brighteners)と呼ばれている。典型的な光学増輝剤としては,ジスルホネート類,テトラスルホネート類,ヘキサスルホネート類がある。これらは水溶性の光学増輝剤である。溶剤に可溶な光学増輝剤の例としては,チバ・ガイギー社(Ciba-Geigy Corp.)のユーヴィテックス(Uvitex)OBが挙げられる。 【0017】 これらの光学増輝剤は典型的には1重量%未満の大変低い濃度で繊維に使用されている。その目的は,生地,染料,プラスチック等の黄色味を低減することである。本発明は光学増輝剤を紫外線吸収剤と組み合わせることにより必要な保護を行うものであり,これは,カットオフ波長の長い紫外線吸収剤が通常行うように青色光を吸収するのではなく,カットオフ波長を上げて青色光を増大させる。 ・・・(中略)・・・ 【0055】 ・・・(中略)・・・ティニュビン(Tinuvin)328単独で,樹脂固形分に対して上記に記載の濃度で使用すると,9ミクロンの膜厚において380~384nmに紫外カットオフをもたらす。」 (エ) 「【0145】 【実施例】 以下の実施例において,アクリロイド(Acriloid)A21(アクリル樹脂溶液;ローム&ハース製;30%溶液),バイロン(Bilon)103(飽和ポリエステル樹脂;東レ製),PKHC(フェノキシ樹脂;フェノキシスペシャルティーズ(Phenoxy Specialties),ロックヒル(Rock Hill),SC製),ティニュビン(Tinuvin)328(紫外線吸収剤;チバ・ガイギー製品),ユーヴィテックス(Uvitex)OB(蛍光物質;チバ・ガイギー製品),イルガノックス(Irganox)1076(ヒンダードフェノール系酸化防止剤;チバ・ガイギー製品),ティニュビン(Tinuvin)120(ベンゾエート系安定化剤;チバ・ガイギー製品),2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;以下「DHDMOBF」と略記する),フルオラド(Fluorad)FC-430(フッ素系界面活性剤;3M製品),アセチルアセトン,混合溶媒(トルエン/2-ブタノン=1/1)を使用した。 【0146】 [実施例1~4,比較例1及び2] 片面に離型層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:12μm)を基材として使用し,表1に示す塗布液をマイヤー(Meyer)バーを用いて離型層上に塗布した。塗布後,120℃で1分間乾燥し,基材上に厚さ2μmの紫外線遮蔽層を形成した。 得られた紫外線遮蔽部材の光透過スペクトルを,日立製分光光度計U-3500を用いて測定した。結果を図2に示す。 【0147】 【表1】 」 (オ) 「【図面の簡単な説明】 ・・・(中略)・・・ 【図2】実施例1~4ならびに比較例1及び2の光透過スペクトル ・・・(中略)・・・ 【図2】 」 イ 甲2の記載から把握される技術事項 甲2の【0147】の【表1】から,実施例1ないし4において,紫外線遮蔽層中のユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)の含有量が,樹脂成分である「アクリロイド A21」(30%溶液)中の固形分100重量部に対して,それぞれ,20,15,10及び5重量部であると算出できるから,前記アで摘記した甲2の記載から,甲2に次の技術事項が記載されていると認められる。 「退色その他の劣化に関して有害な400nmまでの波長域の紫外線をカットするために,カットオフを400nmにまで伸ばした紫外線吸収剤を用いることには,紫外線吸収剤によって紫及び青色光の吸収が起こり,黄色として知覚されるという課題があるので, 紫外線遮蔽層中に,380ないし384nmにカットオフを有する紫外線吸収剤であるティニュビン(Tinuvin)328(チバ・ガイギー製品)とともに,紫外領域で吸収し可視領域で蛍光を発する蛍光物質であるユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)を,樹脂成分100重量に対して5ないし20重量部の範囲で含有させることによって,黄色として知覚されることなく400nmまでの紫外線をカットする技術。」(以下,「甲2記載技術」という。) (3)甲7 ア 甲7の記載 甲7(特開2009-227938号公報)は,本件特許の優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲7には,次の記載がある。(下線は,後述する「甲7記載技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「【発明を実施するための最良の形態】 【0007】 以下,本発明の近赤外線吸収材について,図面を参照しながら以下説明する。図1は本発明の近赤外線吸収材の構成を示す模式図であり,基材2上に近赤外線吸収層3が積層され,さらに近赤外線吸収層3上にコレステリック液晶層4が積層された構成を有する。 本発明の近赤外線吸収材においては,図2に示すように,基材2上にコレステリック液晶層4が積層され,さらにコレステリック液晶層4上に近赤外線吸収層3が積層された構成であっても良く,図3に示すように,基材2の一方の面上に近赤外線吸収層3が積層され,さらに近赤外線吸収層3の反対側の基板2上にコレステリック液晶層4が積層された構成であっても良い。 ・・・(中略)・・・ 【0049】 また,本発明の近赤外線吸収材の表面における外光の反射を防止する方法として,近赤外線吸収層の上に,さらに低屈折率層を設ける方法がある。すなわち,相対的に高い屈折率を有する近赤外線吸収層の上に,低屈折率層を設けることで,反射防止層を形成し,外光の反射を防止するものである。」 イ 甲7の記載から把握される技術事項 前記アで摘記した甲7の記載から,甲7に次の技術事項が記載されていると認められる。 「近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収材において,近赤外線吸収層の上に低屈折率層を設けることで,反射防止層を形成し,近赤外線吸収材の表面における外光の反射を防止する技術。」(以下,「甲7記載技術」という。) (4)周知の技術事項 ア 甲9の記載 甲9(特開2006-182584号公報)は,本件特許の優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲9には,次の記載がある。(下線は,後述する「周知技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,デジタルスチルカメラ(DSC)やカラービデオカメラなどの色補正フィルタ等に使用され,400~600nmの可視域を効率よく透過し,700nm付近におけるシャープカット特性に優れた近赤外線カットフィルタガラスに関する。 【背景技術】 【0002】 従来,カラービデオカメラに使用されているCCDやCMOS等の撮像素子は可視域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度を有している。したがって,このままでは良好な色再現性を得ることができないので,赤外域を吸収するフィルタを用いて,通常の視感度に補正することが必要である。このフィルタは近赤外波長を選択的に吸収するように,リン酸塩系ガラスにCuOを添加したフィルタガラスが使用されている。このフィルタガラスは多量のP2O5を必須成分としてCuOを含有しており,酸化性の溶融雰囲気中で,多数の酸素イオンに配位されたCu2+イオンを形成させることによって青緑色を呈し,近赤外線カット特性を有するものである。 【0003】 しかし,上記のフィルタガラスは,近赤外線カット効果を促進するためCuOの含有量を増加させると,一般に400~500nmの波長域における分光透過性が低下して緑色化の傾向を示し,かつ600~700nmの波長域におけるシャープカット特性が悪化するという問題点がある。特にこのようなフィルタガラスは,薄板状で使用されることから高いCuO含有量を要求されるが,前記問題点により所望の分光透過性を有するものが得がたい。また基礎ガラスであるリン酸塩系ガラスは,耐候性が不十分なため,ガラス研磨面にウェザリングを生じるので,長期間にわたって使用するには難点がある。 【0004】 このような背景から,リン酸塩系ガラスの耐候性の低さを改善するために,特許文献1および2に示されるように基礎ガラスとしてフツリン酸塩系ガラスを用い,これにCuOを添加したガラスが開発された。」 イ 甲10の記載 甲10(特開2008-303130号公報)は,本件特許の優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲10には,次の記載がある。(下線は,後述する「周知技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は,近赤外線を吸収する色素と透明樹脂とを含有する光学フィルムを,CCD等の撮像素子の前面に設置した撮像装置用の近赤外線カットフィルタ,および当該近赤外線カットフィルタを備える撮像装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来デジタルカメラ等に使用されているCCDやCMOS等の撮像素子は可視域から1100nm付近の近赤外域にわたる分光感度を有している。これに対して人間の目は380~780nmの波長の光を感じることができる。撮像素子と人間の目では分光感度に大きな差があるため,撮像素子の前面に近赤外域を吸収するフィルタ(近赤外線カットフィルタ)を備えて,人間の目の視感度に補正することが必要である。 【0003】 このようなフィルタとしては,近赤外波長を選択的に吸収するように,リン酸塩系ガラスにCuOを添加したガラスフィルタが知られている。このガラスフィルタは多量のP2O5を必須成分としてCuOを含有しており,酸化性の溶融雰囲気中で,多数の酸素イオンに配位されたCu2+イオンを形成させることによって青緑色を呈し,近赤外線カット特性を有するものである。 【0004】 しかし,上記のガラスフィルタは,近赤外線カット効果を促進するためにCuOの含有量を増加させると,一般に400~500nmの波長域における分光透過性が低下して緑色化の傾向を示す。また,上記のガラスフィルタに用いられるリン酸塩系ガラスは,耐候性が不十分であり,ガラスフィルタとしての長期使用には難点がある。 【0005】 このような背景から,リン酸塩系ガラスの耐候性の低さを改善するために,特許文献1および2に開示されているように,リン酸塩系ガラスの替わりにフツリン酸塩系ガラスを用い,これにCuOを添加したガラスフィルタが開発され使用されている。また,リン酸塩系ガラスの耐候性の低さを改善するために,特許文献3に示されるように,リン酸基を含有する樹脂成分と,Cu2+イオンを主成分とするイオン性金属成分とを含有する合成樹脂製フィルタが提案されている。」 ウ 甲11の記載 甲11(特開2011-133532号公報)は,本件特許の優先日より前に頒布された刊行物であるところ,当該甲11には,次の記載がある。(下線は,後述する「周知技術」の認定に特に関係する箇所を示す。) 「【0001】 本発明は,近赤外線遮断効果を有するフィルム状または薄板状の光学部材,および光学フィルタに関する。 【背景技術】 【0002】 近年,様々な分野で,可視波長領域(420~630nm)の光は透過するが,近赤外波長領域(700~1200nm)の光は遮断する光学フィルタあるいはフィルムが使用されている。 【0003】 例えば,固体撮像素子(CCD,CMOS等)を用いたデジタルスチルカメラ,デジタルビデオ等や,受光素子を用いた自動露出計等においては,固体撮像素子または受光素子の感度を人間の視感度に近づけるため,撮像レンズと固体撮像素子または受光素子との間にそのような光学フィルタを配置している。また,PDP(プラズマディスプレイパネル)においては,近赤外線で作動する家電製品用リモコン装置の誤作動を防止するため,その前面(視認側)に光学フィルタを配置している。 【0004】 従来,上記光学フィルタまたはフィルムとしては,近赤外波長領域の光を選択的に吸収するように,フツリン酸塩系ガラスや,リン酸塩系ガラスにCuO等を添加したガラスフィルタや,基板上に,例えば酸化シリコン(SiO2)層と酸化チタン(TiO2)層とを交互に積層し,光の干渉によって近赤外波長領域の光を反射して遮断する反射型の干渉フィルタ,透明樹脂中に近赤外波長領域の光を吸収する色素を含有させたフィルム等が知られている(例えば,特許文献1,2参照)。」 エ 甲9ないし甲11の記載から把握される周知の技術事項 前記アないしウで摘記した甲9ないし甲11の記載から,次の技術事項が,本件特許の優先日より前に周知であったと認められる。 「近赤外線カットフィルタの材質として,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスやCuOを含有するリン酸塩系ガラスを用いること。」(以下,「周知技術」という。) 4 本件取消理由の成否についての判断 本件取消理由が通知された請求項に係る発明に対応するのは,本件訂正発明1ないし3,11ないし14,17ないし24,26ないし41,56,57であるが,特許異議申立人は,全請求項に係る特許について,異議を申し立てているので,全本件訂正発明について,本件取消理由の成否の判断を示す。 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明の対比 (ア) 甲1発明の「吸収層」,「反射膜」,「光選択透過フィルター」及び「0°スペクトル」は,その機能等からみて,本件訂正発明1の「光吸収層」,「光反射層」,「光学フィルタ」及び「入射角0°の分光透過率曲線」にそれぞれ対応する。 (イ) 甲1発明は,「吸収層」(本件訂正発明1の「光吸収層」に対応する。以下,「ア 本件訂正発明1と甲1発明の対比」欄において,「」で囲まれた甲1発明の構成に付された()内の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件訂正発明1の発明特定事項を指す。)を有する樹脂シートと,「反射膜」(光反射膜)とを含む「光選択透過フィルター」(光学フィルタ)であるから,本件訂正発明1の「光吸収層および光反射層を有する」「光学フィルタ」という発明特定事項に対応する構成を具備している。 また,甲1発明の「反射膜」は「多層膜」からなるから,本件訂正発明1の「誘電体多層膜からなる光反射層」と,「多層膜からなる」点で共通する。 したがって,甲1発明は,「光吸収層および多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタ」である点で,本件訂正発明1と共通する。 (ウ) 甲1発明の「0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ」によれば,甲1発明の「0°スペクトル」(入射角0°の分光透過率曲線)において,波長範囲430nmないし620nmにおける平均透過率が80%以上であり,波長範囲430nmないし450nmにおける平均透過率が76%以上であり,波長範囲735nmないし1100nmにおける平均透過率が5%以下であることが明らかであるから,甲1発明は,「(I)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下である。」なる「(I)の要件を満た」す点で,本件訂正発明1と共通している。 なお,参考までに,甲1発明の「0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ」に縦軸及び横軸の補助線を付すと,次のとおりである。 (エ) 甲1発明の「0°スペクトル」において,波長範囲380nmないし400nmでの分光透過率については,波長が長くなるにつれて0%から60%まで直線的に増加するものに近似することができるから,甲1発明の「光選択透過フィルター」全体で,「0°スペクトル」(入射角0°の分光透過率曲線)において,波長範囲350nmないし395nmにおける平均透過率はおよそ7.5%程度と算出でき,波長400nm近傍で分光透過率が50%となる波長は約397nmと認められる。 また,同じ手法により,甲1発明の「光選択透過フィルター」全体で,「0°スペクトル」(入射角0°の分光透過率曲線)における波長範囲350nmないし400nmで分光透過率が5%を超えるのは,約382nmないし400nmの範囲の波長と認められるところ,各波長における「反射層」すなわち「多層膜」単独での分光透過率が,「光選択透過フィルター」全体の分光透過率を下回ることはないから,甲1発明の「多層膜」の,波長範囲350nmないし400nmのうち少なくとも約382nmないし400nmの範囲での分光透過率は5%を超えている。 (オ) 甲1発明の「吸収層」(光吸収層)は,「色素」及び「樹脂成分」を含み,前記「色素」は「分子内にπ電子結合を有する色素」を含んでいる。しかるに,甲1の【0012】の記載によれば,前記「分子内にπ電子結合を有する色素」は,「所定濃度未満の低濃度では,吸収率が最大となる吸収極大と,それよりも600nmに近い短波長側にショルダー(2番目の吸収ピーク)とが観測されるのに対し,所定濃度以上の高濃度では,吸収極大がより600nmに近い短波長側にシフトし,しかも透過率が低く,かつシャープな吸収特性とな」り,また,「高濃度での400~600nm領域の可視光透過率は,低濃度でのそれと同等以上である」のだから,所定の波長領域の光線(可視光線のみならず,紫外線や赤外線等をも含む意味で「光線」という用語を用いている。)を吸収する吸収体(以下,便宜上「光線吸収剤」という。)である。一方,本件訂正発明1の「紫外線吸収体」は,所定の波長領域の光線(紫外線)を吸収する「光線吸収剤」である。したがって,甲1発明の「分子内にπ電子結合を有する色素」と,本件訂正発明1の「紫外線吸収体」とは,「光線吸収剤」である点で共通するといえる。 また,甲1発明の「0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ」によれば,甲1発明は可視光領域のほぼ全域にわたって高透過率を有しているから,「吸収層」(光吸収層)中の「樹脂成分」が透明樹脂であることは明らかである。 したがって,甲1発明の「吸収層」は,本件訂正発明の「光吸収層」と,「光線吸収剤を含む透明樹脂から構成される」点で共通する。 (カ) 前記(ア)ないし(オ)に照らせば,本件訂正発明1と甲1発明は, 「光吸収層および多層膜からなる光反射層を有する光学フィルタにおいて,下記(I)の要件を満たし, 前記光吸収層が,光線吸収剤を含む透明樹脂から構成される光学フィルタ。 (I)入射角0°の分光透過率曲線において,波長430nm~620nmの平均透過率が80%以上であり,波長430nm~450nmの平均透過率が76%以上であり,波長735nm~1100nmの平均透過率が5%以下である。」 である点で一致し,次の点で一応相違する。 相違点1-1: 本件訂正発明1の「光反射層」は,「誘電体多層膜」からなるのに対して, 甲1発明の「反射層」は,どのような材質からなる「多層膜」であるのか定かでない点。 相違点1-2: 本件訂正発明1は,「入射角0°の分光透過率曲線」において,波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下であり,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有するとともに,「入射角30°の分光透過率曲線」において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下であるのに対して, 甲1発明は,「0°スペクトル」において,波長範囲350nmないし395nmにおける平均透過率はおよそ7.5%程度であって,5%以下ではなく,かつ,波長400nm近傍で分光透過率が50%となる波長(λ0(UV))は約397nmであって400nmないし425nmの波長領域にはなく,また,「入射角30°の分光透過率曲線」において,波長400nm近傍で分光透過率が50%となる波長(λ30(UV))は定かでなく,したがって,|λ0(UV)-λ30(UV)|の値も定かでない点。 相違点1-3: 本件訂正発明1の「誘電体多層膜」は,「入射角0°の分光透過率曲線」において,波長350nm~400nmの透過率が5%以下,すなわち,350nm~400nmの波長範囲では,透過率が5%を上回る波長が存在しないのに対して, 甲1発明の「多層膜」は,「0°スペクトル」において,波長範囲350nmないし400nmのうち少なくとも約382nmないし400nmの範囲での分光透過率は5%を超えている点。 相違点1-4: 本件訂正発明1では,「光吸収層」に含有される「光線吸収剤」が,「ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。」という(iv-1)の要件,及び「ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。」という(iv-2)の要件を満たす「紫外線吸収体」を含むのに対して, 甲1発明では,「吸収層」に含有される「光線吸収剤」は,「分子内にπ電子結合を有する色素」を含むものの,(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす「紫外線吸収体」を含んでいるとはいえない点。 イ 相違点1-1の判断 甲1の【0074】及び【0075】(前記3(1)ア(イ)を参照。)には,「反射膜」を構成する「光学多層膜」として,「誘電体多層膜」が好適であることが記載されている。 甲1発明の「多層膜」が,如何なる材質から形成された光学多層膜であるのかは,甲1の記載からは定かでないものの,【0074】及び【0075】の記載にしたがって,「誘電体多層膜」として構成すること,すなわち,甲1発明を,相違点1-1に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点1-4の判断 事案に鑑みて,相違点1-2及び1-3の容易想到性を判断する前に,相違点1-4の容易想到性について判断する。 (ア) 前記(2)イで認定した甲2記載技術は,退色その他の劣化に関して有害な400nmまでの波長域の紫外線をカットする必要があるものの,黄色として知覚されることが望ましくない用途に用いる光線カットフィルタの構成を開示するものである。 ここで,甲1の【0002】や【0095】等の記載(前記3(1)ア(ア)及び(イ)を参照。)や,甲1発明の分光透過率特性等からは,甲1発明は専ら固体撮像素子用に用いられることが想定されたものと解されるが,甲1の【0095】や【0097】等の記載からは,甲1に記載された技術的特徴を有する(分子内にπ電子結合を有する色素を1質量%以上含む吸収層と,反射膜とを用いることによって,光遮断したい波長域をよりシャープに遮断でき,透過させたい波長域では高い透過率を示し,かつ,入射角依存性が十分に低減されたものとなるよう構成した)光選択透過フィルターが,固体撮像素子用のもののみに限定されるものではなく,その他の様々な用途にも用いることができるものであることを把握できる。また,甲1の【0089】及び【0090】(前記3(1)ア(イ)を参照。)等には,光選択透過フィルターの好ましい態様として,紫外線及び赤外線の両方を遮断する機能を有する赤外・紫外線カットフィルターが記載されており,紫外線の好ましい遮蔽波長域として250ないし350nmが例示されている。 そうすると,甲1発明を,甲2記載技術における用途(退色その他の劣化に関して有害な400nmまでの波長域の紫外線をカットする必要があるものの,黄色として知覚されることが望ましくない用途)に用いるべく,甲2記載技術の構成を採用して,甲1発明が前記用途に適した分光透過率特性を有するものとなるよう構成すること,すなわち,「分子内にπ電子結合を有する色素」を含む「吸収層」に,ティニュビン(Tinuvin)328を含有させるとともに,ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)を,樹脂成分100重量に対して5ないし20重量部の範囲で含有させることは,甲2の記載に接した当業者が,容易になし得たことというほかない。 加えて,固体撮像素子用の光選択透過フィルターにおいても,例えば,屋外使用を前提とする場合には,固体撮像装置における各種部材の劣化を防止するという観点から,400nmまでの波長域の紫外線をカットすることには動機付けが存在するといえるから,固体撮像素子用途を前提とした場合においても,甲1発明に甲2記載技術を適用することは,当業者が容易になし得たことである。なお,400nmまでの波長域の紫外線をカットする固体撮像素子用の光選択透過フィルターは,本件特許の優先日より前に周知でもあった(例えば,国際公開第2012/169447号,国際公開第2013/038938号,特開2011-101089号公報,特開2012-137649号公報,特開2012-137646号公報等を参照。)。 (イ) しかるに,本件特許明細書の【0122】の【表3】及び【0124】の記載によれば,甲2記載技術の「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」は,本件訂正発明1における(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす「紫外線吸収体」であると認められるから,前記(ア)で述べた構成の変更(ティニュビン(Tinuvin)328,及び,ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)の含有)を行った甲1発明は,相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備している。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)のとおりであるから,甲1発明を,相違点1-4に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。 エ 相違点1-2及び1-3の判断 (ア) 甲1の【0009】,【0010】,【0094】等の記載,甲1発明の0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ,及び技術常識等から,甲1発明は,吸収極大波長が600ないし800nmの波長範囲に存在する「分子内にπ電子結合を有する色素」を含む「吸収層」と,当該「分子内にπ電子結合を有する色素」の吸収極大波長近傍で,赤外線をよりシャープに反射する「多層膜」からなる「反射膜」とを組み合わせることによって,遮蔽したい赤外線をシャープにカットするとともに,光遮断特性の入射角依存性を低減したものと理解される。 そうすると,前記ウ(ア)で述べた構成の変更(吸収層へのティニュビン328及びユーヴィテックスOBの含有)を行って,「吸収層」によって,赤外線ばかりでなく,紫外線をも吸収するよう構成する場合,「反射膜」を,赤外線側と紫外線側の両方に遮蔽波長域を有するようなものに変更することは,当業者にとって自然な発想というべきである。(なお,コンピュータによる光学薄膜シミュレーションを用いることで,所望の分光透過率特性を有する多層膜を容易に設計できることは,当業者における技術常識である。) (イ) また,甲2の図2からみて,甲2記載技術による400nmまでの紫外線の遮蔽は,十分にシャープなものではなく(例えば,甲2に記載された実施例4の波長400nmにおける分光透過率は約34%である。),前記ウ(ア)で述べた構成の変更を行った甲1発明も,400nmまでの紫外線の遮蔽が十分なものとはいえないものである(例えば,吸収層にティニュビン328及びユーヴィテックスOBを甲2に記載された実施例4に対応する量で含有させた甲1発明は,波長400nmにおける分光透過率が約20%程度にもなる。)。 そうすると,甲1発明に,前記(ア)で述べた,「反射膜を,赤外線側と紫外線側の両方に遮蔽波長域を有するようなものに変更する」という構成の変更を行うことには,有害な400nmまでの紫外線を十分に遮蔽するという点で,積極的な動機付けがあるともいえる。 (ウ) 以上によれば,甲1発明に,前記エ(ア)で述べた構成の変更を行うに際して,「反射膜」を,赤外線側ばかりでなく,紫外線側にも遮蔽波長域を有し,400nmまでの紫外線を「吸収層」よりもよりシャープに反射する構成のものに変更することは,技術の具体的適用に伴い,当業者が適宜なし得た設計事項というべきである。 (エ) しかるに,「反射膜」を,「400nmまでの紫外線をよりシャープに反射する構成」のものにするには,その分光透過率が,カットしようとする紫外線のうち最も長波長である波長400nmではほぼ0%で,少なくとも甲2記載技術における分光透過率が上限には達していない波長420nm程度の波長では少なくともほぼ100%となるようなものとすることになるが,当該構成の「反射膜」では,「入射角0°の分光透過率曲線」において,400nmまでの紫外線の分光透過率がほぼ0%であるから,前記(ウ)で述べた構成の変更を行った甲1発明は,相違点1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項(波長350nm~400nmの透過率が5%以下)に相当する構成を具備している。また,当該「反射膜」を有する甲1発明自体も,「入射角0°の分光透過率曲線」において,400nmまでの紫外線の分光透過率はほぼ0%となるから,前記(ウ)で述べた構成の変更を行った甲1発明は,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項のうち「入射角0°の分光透過率曲線において,波長350nm~395nmの平均透過率が5%以下」であるとの要件に相当する構成を具備しており,かつ,当該甲1発明における波長400nm近傍の分光透過率が50%となる波長は,分光透過率がほぼ0%となる波長400nmと,少なくとも分光透過率がほぼ100%となっている波長420nmとの間に存在することになるから,前記(ウ)で述べた構成の変更を行った甲1発明は,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項のうち「入射角0°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ0(UV)を有する」との要件に相当する構成を具備している。 また,「多層膜」からなる「反射膜」の「入射角30°の分光透過率曲線」が,「入射角0°の分光透過率曲線」と比べて短波長側にシフト(いわゆる「ブルーシフト」)することが自然法則から明らかであるところ,当該シフト量の大きさにかかわらず,前記(ウ)で述べた構成の変更を行った甲1発明は,相違点1-2に係る本件訂正発明1の発明特定事項のうち「入射角30°の分光透過率曲線において,400nm~425nmの波長領域に透過率が50%となる波長λ30(UV)を有し,かつ前記波長の差の絶対値|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nm以下である」との要件に相当する構成を具備していると認められる。(例えば,吸収層にティニュビン328及びユーヴィテックスOBを甲2に記載された実施例4に対応する量で含有させた甲1発明において,波長λ0(UV)は,甲1の発明の「0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ」及び甲2の図2からみて,約410nmになると認められるが,これに,分光透過率が波長400nmでほぼ0%で,波長420nmでほぼ100%となるような「反射膜」を用いた場合の甲1発明全体の波長λ0(UV)は約415nmになる。そうすると,入射角30°としたときのブルーシフトの量に応じて,λ30(UV)の値は,入射角0°のときの約415nmという波長から約410nmまで変化することになるが,その変化量すなわち|λ0(UV)-λ30(UV)|は最大でも約5nmであるから,本件訂正発明1の|λ0(UV)-λ30(UV)|が5%以下という要件を満足することになる。甲2に記載された他の実施例に対応する量で含有させた場合も,同様に計算すると,|λ0(UV)-λ30(UV)|が5nmを超えることはない。また,分光透過率がほぼ100%となる波長を420nmより短波長に設定したときも,同様である。) (カ) 以上のとおりであるから,甲1発明を,相違点1-2及び1-3に係る本件訂正発明1の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。 オ 効果について 本件訂正発明1が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 カ 特許権者の主張について 平成30年5月28日提出の意見書(8ページ3行ないし9ページ)において,特許権者は,甲1の【0089】ないし【0093】の記載,及び甲2の【0007】,【0008】,【0014】及び【0015】の記載を指摘した上で,甲1発明が,可視光の低減は行わず,そのために可視光と紫外線が重なる範囲(350ないし400nmの波長範囲)でのある程度の紫外線の通過は許容するものであるのに対して,甲2記載技術は,紫外線はできるだけ低減し,そのために可視光と紫外線が重なる範囲でのある程度の可視光の低減は許容するものであって,両者を組み合わせることには阻害要因があるなどと主張する。 特許権者が指摘する甲1の【0089】ないし【0093】の記載は,甲1に記載された光選択透過フィルムの用途の一つである固体撮像素子用途に適した分光透過率特性を説明したものであると解され,また,前記ウ(ア)でも述べたように,甲1発明は,専ら固体撮像素子用に用いられることが想定されたものと解される。 しかしながら,前記ウ(ア)で述べたように,甲1の【0095】や【0097】等の記載からは,甲1に記載された光選択透過フィルターが,固体撮像素子用のもののみに限定されるものではなく,その他の様々な用途にも用いることができるものであることを把握できるのであり,また,固体撮像素子用途においても,屋外使用を前提とする場合のように,400nmまでの波長域の紫外線をカットする必要がある用途が想定されるのであるから,専ら固体撮像素子用に用いられるものとして設計された甲1発明を,甲2記載技術における用途(退色その他の劣化に関して有害な400nmまでの波長域の紫外線をカットする必要があるものの,黄色として知覚されることが望ましくない用途)に用いるものや,屋外使用を前提とするものとして,設計変更することに,阻害要因などない。そして,用途に応じて,好ましい分光透過率特性が変わることは,特許権者が指摘する甲1の記載中に「本発明の光選択透過フィルターは,光の透過率を選択的に低減するものである。低減させる光としては,10nm~100μmの間のものであればよく,用いる用途により選択することができる。」(【0089】)との記載があるように,当然のことである。 したがって,当該特許権者の主張は採用できない。 キ 本件訂正発明1についての結論 以上のとおりであるから,本件訂正発明1は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件訂正発明2について ア 本件訂正発明2と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点2: 本件訂正発明2では,|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下であるのに対して, 甲1発明では,|λ0(IR)-λ30(IR)|が約15nmである点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲1の【0009】や【0010】等の記載からみて,甲1発明は,光遮断特性の入射角依存性を低減することを,目的の一つとしていると理解される。 また,甲1の【0094】には,「光遮断特性の入射角依存性は,樹脂シートの吸収により充分に低減されている必要があり,入射角の変化に対して透過率スペクトルが変化しないこと,又は,その変化の程度が小さいことが好ましい。。具体的には,入射角0°を20°に変えても(より好ましくは25°に変えても),透過率80%以上の領域において,透過率のスペクトルが変化しないことが好ましく,より好ましくは,透過率70%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことであり,更に好ましくは,透過率60%以上の領域において透過率のスペクトルが変化しないことである。最も好ましくは,いずれの透過率領域においてもスペクトルが変化しないことである。」との記載がある。 そうすると,甲1発明において,赤外線側のカットオフ波長近傍の光遮断特性(分光透過率)の入射角依存性をさらに低減するために,「多層膜」からなる「反射膜」の赤外線側のカットオフ波長を長波長側にずらす方向に調整することや,当該調整における目標となる入射角依存性として,「入射角0°の分光透過率曲線」における「透過率が50%となる波長λ0(IR)」と,「入射角30°の分光透過率曲線」における「透過率が50%となる波長λ30(UV)」との差の絶対値|λ0(IR)-λ30(IR)|が5nm以下という特性を設定することは,当業者が適宜なし得た設計変更というべきである。 したがって,甲1発明を,相違点2に係る本件訂正発明2の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,単なる設計変更にすぎない。 エ 本件訂正発明2が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明2は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件訂正発明3について ア 本件訂正発明3と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点3: 本件訂正発明3では,(紫外線吸収体を含む)透明樹脂が,350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax・p(UV)が,360nm~415nmにあり,紫外線吸収体が,λmax・P(UV)における透過率が10%となる量で含有したときにλmax・p(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λp90と,λmax・p(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λp50との差λp90-λp50が14nm以下であるようなものであるのに対して, 甲1発明では,(分子内にπ電子結合を有する色素を含む)樹脂成分は,本件訂正発明3のような光吸収スペクトルを有しておらず,本件訂正発明3のような紫外線吸収体を含んでいるとはいえない点。 イ 相違点3について判断する。 甲1発明の[0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ]において,約370nm以下の波長領域で,0°スペクトルと25°スペクトルがともにほぼ0%であり,約370nmないし約390nmの波長領域で,0°スペクトルと25°スペクトルとの間にはずれが存在し,約390nmないし415nmの波長領域で,0°スペクトルと25°スペクトルが一致していることからみて,甲1発明の吸収層は,約390nm以下の波長領域の光吸収スペクトルにおいて,吸収極大波長を有していると推察されるが,当該吸収極大波長が360nm以上であるのか否かは定かでない。 また,甲2の図2に示された甲2に記載された実施例1ないし4の360ないし415nmの波長領域での光透過スペクトルは,概ね一定の透過率となる領域と透過率が概ね単調増加する領域とで構成されている。 そうすると,前記(1)イないしエで述べた構成の変更を行った甲1発明において,吸収層が,390nm以下の波長領域に,「吸収極大波長λmax・p(UV)」を有していると推察することはできても,当該「吸収極大波長λmax・p(UV)」が360ないし415nmの波長領域にあるということはできない。 また,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,当該構成の変更後の甲1発明において,吸収層を,360ないし415nmの波長領域に吸収極大波長を有する構成のものに変更することが,当業者が容易に想到し得たことということもできない。 ウ したがって,本件訂正発明3は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件訂正発明5について ア 本件訂正発明5と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-3に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点5: 本件訂正発明5の「光吸収層」を構成する「透明樹脂」は,「ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。」という(iv-1)の要件,及び「ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。」という(iv-2)の要件を満たし,式(M)で表されるメロシアニン系色素である「紫外線吸収体」を含むのに対して, 甲1発明の「吸収層」を構成する「樹脂成分」は,「分子内にπ電子結合を有する色素」を含むものの,本件訂正発明5のような「紫外線吸収体」を含んでいるとはいえない点。 イ 相違点5について判断する。 甲2に記載された「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」は,オキサゾール系色素であって,「メロシアニン系色素」ではないから,甲1発明に,甲2記載技術を適用しても,相違点5に係る本件訂正発明5の発明特定事項には至らない。 また,甲4には,「式(M)で表されるメロシアニン系色素」に該当する化合物について開示されているが,甲4に開示された化合物のうちに,(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たしているのが存在するのかは定かでない上,そもそも,甲1発明において,「吸収層」中に,当該甲4に記載された化合物を含有させることには動機付けがないから,甲1発明を,相違点5に係る本件訂正発明5の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが,甲4の記載に基づいて,当業者が容易に想到し得たこととすることはできない。 また,甲1発明に甲2記載技術を適用して,「吸収層」中に紫外線吸収剤と「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす蛍光物質」とを含有させることとした上で,当該「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす蛍光物質」として甲4記載の化合物のうち(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす化合物を選択することには,格別の創意工夫を要するというべきであるから,たとえ当業者といえども,甲2記載技術及び甲4の記載に基づいて,甲1発明を,相違点5に係る本件訂正発明5の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることが,容易に想到し得たこととすることもできない。 さらに,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」すなわち一般名称で表現すると「2,5ビス(5’-ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を含有させることが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。 ウ 前記イのとおりであるから,本件訂正発明5は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件訂正発明6ないし9について 本件訂正発明6ないし9はいずれも本件訂正発明5の発明特定事項を全て具備し,これに限定を加えたものであるところ,前記(4)で述べたとおり,本件訂正発明5が,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,本件訂正発明6ないし9についても,同様の理由で,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件訂正発明10について ア 本件訂正発明10と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-3に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点10: 本件訂正発明10の「光吸収層」を構成する「透明樹脂」は,「ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。」という(iv-1)の要件,及び「ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。」という(iv-2)の要件を満たし,「式(N)で表される色素」である「紫外線吸収体」を含むのに対して, 甲1発明の「吸収層」を構成する「樹脂成分」は,「分子内にπ電子結合を有する色素」を含むものの,本件訂正発明10のような「紫外線吸収体」を含んでいるとはいえない点。 イ 相違点10について判断する。 甲2記載技術における「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」は,相違点10に係る本件訂正発明10の「式(N)で表される色素」には該当しないところ,前記(4)イで述べたように,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」すなわち「2,5ビス(5’-ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を含有させることが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできないから,本件訂正発明10は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件訂正発明11について ア 本件訂正発明11と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点11: 本件訂正発明11の「光吸収層」は,(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体を,透明樹脂100質量部に対して,0.01~30質量部で含有するのに対して, 甲1発明の「吸収層」は,紫外線吸収体を含有しているとはいえない点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲2記載技術では,紫外線遮蔽層中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」を,樹脂成分100重量に対して5ないし20重量部の範囲で含有させるところ,当該含有量は,相違点11に係る本件訂正発明11の発明特定事項における紫外線吸収体の含有量に関する要件を満足している。 したがって,前記(1)ウで述べた構成の変更(甲2記載技術の適用)を行った甲1発明は,相違点11に係る本件訂正発明11の発明特定事項に相当する構成を具備することとなる。 エ 本件訂正発明11が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明11は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件訂正発明12について 甲1の図1,図2,図5及び図6に示された実施例1ないし4で得た樹脂シートの透過率スペクトルからみて,甲1発明の「分子内にπ電子結合を有する色素」は,650ないし800nmの波長領域に,最も長波長の吸収極大波長を有していると推認されるから,本件訂正発明12と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4で相違し,その余の点で一致する。 したがって,前記(1)で述べたのと同様の理由で,本件訂正発明12は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9)本件訂正発明13について ア 本件訂正発明13と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点で相違し,その余の点で一致する。 相違点13: 本件訂正発明13の「光吸収層」が含む「近赤外線吸収体」は,スクアリリウム系,シアニン系,フタロシアニン系,ナフタロシアニン系,ジチオール金属錯体系,アゾ系,ポリメチン系,フタリド系,ナフトキノン系,アン卜ラキノン系,インドフェノール系,ピリリウム系,チオピリリウム系,ク口コニウム系,テ卜ラデヒドオコリン系,卜リフェニルメタン系,アミニウム系およびジイモニウム系からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのに対して, 甲1発明の「吸収層」が含む「分子内にπ電子結合を有する色素」は,そのような近赤外線吸収体に該当するのか否か定かでない点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲1の【0024】には,「分子内にπ電子結合を有する色素」の具体例として,フタロシアニン系色素,シアニン系色素,ナフタロシアニン系色素が挙げられているところ,甲1発明において,用いている「分子内にπ電子結合を有する色素」に代えて,それと同等の透過率特性を有するフタロシアニン系色素,シアニン系色素又はナフタロシアニン系色素の「分子内にπ電子結合を有する色素」を用いることは,当業者が適宜なし得たことである。 したがって,甲1発明を,相違点13に係る本件訂正発明13の発明特定事項を具備したものとすることは,甲1の記載自体に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 エ 本件訂正発明13が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明13は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (10)本件訂正発明14について 甲1の【0025】の記載からみて,甲1発明の「分子内にπ電子結合を有する色素」の含有量は,吸収層を構成する色素及び樹脂成分の総量100質量%に対して1質量%以上20質量%以下であって,「透明樹脂100質量部に対して,0.1~30質量部」という本件訂正発明14における近赤外線吸収体の含有量に係る要件を満足していると推認されるから,本件訂正発明14と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4で相違し,その余の点で一致する。 したがって,前記(1)で述べたのと同様の理由で,本件訂正発明14は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (11)本件訂正発明17について ア 本件訂正発明17と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点17: 本件訂正発明17は,透明基材と,当該透明基材に積層された「光吸収層」および「光反射層」とを有するのに対して, 甲1発明は,「吸収層」と「反射膜」とを有するものの,これらが積層される透明基材を有しているのか否かが定かでない点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲1の【0016】や【0017】には,「樹脂シート」の形態として,支持体を有する形態が好ましいことが記載されているところ,甲1発明を,「支持体」に「吸収層」及び「反射層」が積層された形態として構成すること,すなわち,相違点17に係る本件訂正発明17の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,甲1自体の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 したがって,甲1発明を,相違点17に係る本件訂正発明17の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,甲1の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 エ 本件訂正発明17が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明17は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (12)本件訂正発明18について ア 本件訂正発明18と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4及び前記(11)アで認定した相違点17に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点18: 本件訂正発明18は,透明基材が,CuOを含有するフツリン酸塩系ガラスまたはCuOを含有するリン酸塩系ガラスであるのに対して, 甲1発明は,そのような透明基材を有しているのか否かが定かでない点。 イ 相違点1-1ないし1-4及び相違点17については,前記(1)イないしエ及び前記(11)ウで述べたとおりである。 ウ 甲1発明は,近赤外線を遮蔽し,可視光を透過する光選択透過フィルムであるところ,その支持体の材料として,近赤外線カットフィルタの材質として周知のCuOを含有するフツリン酸塩系ガラス又はCuOを含有するリン酸塩系ガラスを用いることは,前記3(4)エで認定した周知技術に基づいて,当業者が適宜なし得たことである。 したがって,甲1発明を,相違点18に係る本件訂正発明18の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,周知技術に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 エ 本件訂正発明18が奏する効果は,甲1及び甲2の記載並びに周知技術に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明18は,甲1発明,甲2記載技術及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (13)本件訂正発明19について ア 本件訂正発明19と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点19: 本件訂正発明19は,透明基材と,当該透明基材に積層された「光吸収層」および「光反射層」とを有し,透明基材の一方の主面上に吸収層を備え,透明基材の他方の主面上に光反射層を備えるのに対して, 甲1発明は,「吸収層」と「反射膜」とを有するものの,これらが積層される透明基材を有しているのか否かが定かでなく,透明基材の一方の主面上に「吸収層」を備え,透明基材の他方の主面上に「反射膜」を備えるのか否かも定かでない点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲1の【0017】には,「樹脂シート」の好ましい形態として,支持体の一方に吸収層が形成された形態が挙げられている。また,甲1の【0082】には,反射膜が,「樹脂シート」の一方の表面のみに形成されていてもよいことが記載されている。 そうすると,甲1発明を,「支持体」の一方の表面に「吸収層」が,他方の表面に「反射層」が積層された形態として構成すること,すなわち,相違点19に係る本件訂正発明19の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,甲1自体の記載に基づいて,当業者が適宜なし得たことである。 したがって,甲1発明を,相違点19に係る本件訂正発明19の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,甲1の記載に基づいて,当業者が容易になし得たことである。 エ 本件訂正発明19が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明19は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (14)本件訂正発明20について ア 本件訂正発明20と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4及び前記(13)アで認定した相違点19に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点20: 本件訂正発明20は,「光吸収層」上に「反射防止層」を備えるのに対して, 甲1発明は,そのような構成を備えているとはいえない点。 イ 相違点1-1ないし1-4及び相違点19については,前記(1)イないしエ及び前記(13)ウで述べたとおりである。 ウ 甲1の【0085】には,甲1発明が,所望の光の透過率を選択的に低減させるという機能以外の他の機能を有していてもよいことが記載されているところ,甲1発明において,外光の反射を低減するために,「吸収層」上に反射防止層を積層すること,すなわち,相違点20に係る本件訂正発明20の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,前記3(3)イで認定した甲7記載技術に基づいて,当業者が容易に想到し得たことである。 エ 本件訂正発明20が奏する効果は,甲1,甲2及び甲7の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明20は,甲1発明,甲2記載技術及び甲7記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (15)本件訂正発明21について ア 甲1発明の「反射膜」は,その「0°スペクトル及び25°スペクトルのグラフ」からみて,0°スペクトルにおいて,波長範囲390nmないし620nm内の各波長の分光透過率はほぼ100%であり(波長範囲480nmないし520nm内の各波長の分光透過率についても少なくとも85%未満となることはない。),波長範囲700nmないし1100nm内の各波長の分光透過率はほぼ0%であることが明らかであるところ,「695nm」よりも短い波長で分光透過率が85%未満になっていると推察されるから,本件訂正発明21と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1ないし1-4に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点21: 本件訂正発明21の「光反射層」は,「入射角0°の分光透過率曲線」において,波長420nm~695nmの透過率が85%以上であるのに対して, 甲1発明の「反射膜」は,波長範囲420nmないし695nm内に分光透過率が85%未満となる波長が存在する点。 イ 相違点1-1ないし1-4については,前記(1)イないしエで述べたとおりである。 ウ 甲1発明において,「分子内にπ電子結合を有する色素」が有する波長範囲650nmないし800nm内に存在する吸収極大波長(前記(8)を参照。)より長波長の光線をどの程度カットするのかは,甲1発明の用途等を考慮して,当業者が適宜決定すれば足りる設計上の事項である。しかるに,「反射膜」について,0°スペクトルにおける分光透過率がほぼ100%となる波長範囲が390nmないし695nmとなり,分光透過率がほぼ0%となる波長範囲が735nmないし1100nmとなるような構成のものに変更することは,当業者が適宜なし得たことというほかない。 したがって,甲1発明を,相違点21に係る本件訂正発明21の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易になし得たことである。 エ 本件訂正発明21が奏する効果は,甲1及び甲2の記載に基づいて,当業者が予測できた程度のものである。 オ したがって,本件訂正発明21は,甲1発明及び甲2記載技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 (16)本件訂正発明22ないし41について ア 本件訂正発明22について (ア) 本件訂正発明22と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1及び1-2に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点22-1: 本件訂正発明22では,「光吸収層」に含有される「光線吸収剤」が,「ジクロロメタンに溶解して測定される350nm~800nmの波長領域の光吸収スペクトルにおいて,415nm以下の波長領域に,少なくとも一つの吸収極大波長を有し,415nm以下の波長領域における吸収極大のうち,最も長波長側の吸収極大波長λmax(UV)は,360nm~415nmにある。」という(iv-1)の要件,及び「ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線において,前記吸収極大波長λmax(UV)における透過率を10%としたとき,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λL90と,前記吸収極大波長λmax(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λL50との差λL90-λL50が13nm以下である。」という(iv-2)の要件を満たす「紫外線吸収体」であって,「2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」ではない「紫外線吸収体」を含むのに対して, 甲1発明では,「吸収層」に含有される「光線吸収剤」は,「分子内にπ電子結合を有する色素」を含むものの,本件訂正発明22のような「紫外線吸収体」を含んでいるとはいえない点。 相違点22-2: 本件訂正発明22では,透明樹脂の屈折率が1.45以上であるのに対して, 甲1発明では,樹脂成分の屈折率が定かでない点。 (イ) 相違点22-1について判断する。 甲2記載技術における「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」は,一般名称でいうと「2,5ビス(5’―ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」であるから,甲1発明において,甲2記載技術を適用したとしても,相違点22-1に係る本件訂正発明22の発明特定事項に相当する構成を具備するものにはならない。 また,前記(4)イで述べたように,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」すなわち「2,5ビス(5’-ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を含有させることが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。 したがって,相違点22-2について判断するまでもなく,本件訂正発明22は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明23ないし41について 本件訂正発明23ないし41と甲1発明を対比すると,両者は,少なくとも,前記ア(ア)で認定した相違点22-1で相違するところ,前記ア(イ)で述べたように,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」すなわち「2,5ビス(5’-ターシャリブチルベンゾオキサゾリル)チオフェン」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を含有させることが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできないから,本件訂正発明23ないし41は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (17)本件訂正発明42ないし58について ア 本件訂正発明42について (ア) 本件訂正発明42と甲1発明を対比すると,両者は,前記(1)ア(カ)で認定した相違点1-1,1-2及び1-4に加えて,次の点でも相違し,その余の点で一致する。 相違点42: 本件訂正発明42では,「紫外線吸収体」として,オキサゾール系およびメロシアニン系からなる群から選ばれる1種を単独で使用するのに対して, 甲1発明では,そもそも「紫外線吸収体」を使用するとはいえない点。 (イ) 相違点42について判断する。 甲1発明において,甲2記載技術を適用すると,「吸収層」は,「ティニュビン(Tinuvin)328」と「ユーヴィテックス(Uvitex)OB」の2つの「紫外線吸収体」を含有することとなるから,平成30年5月28日に提出された意見書において,特許権者が主張するように,紫外線吸収体を1種のみ使用する構成,すなわち相違点42に係る本件訂正発明42の発明特定事項に相当する構成を具備するものにはならない。 また,甲2記載技術において,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB」は,380ないし384nmにカットオフを有する紫外線吸収剤である「ティニュビン(Tinuvin)328」による青色光の吸収に伴って,黄色として知覚されることを防止するために,含有させているものであるから,「ティニュビン(Tinuvin)328」あるいは他の紫外線吸収剤を含有させずに,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB」を単独で使用することは,甲2記載技術の技術思想に反することとなる。 そうすると,たとえ甲2記載技術が存在するとしても,甲1発明を,相違点42に係る本件訂正発明42の発明特定事項に相当する構成を具備したものとすることは,当業者が容易に想到し得たことではない。 さらに,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を単独で含有させることが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできない。 したがって,本件訂正発明42は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件訂正発明43ないし58について 本件訂正発明43ないし58と甲1発明を対比すると,両者は,少なくとも,前記ア(ア)で認定した相違点42で相違するところ,前記ア(イ)で述べたように,本件取消理由で引用した引用例及び平成29年8月15日付けで通知された取消理由で引用したその他の引用例,並びに,異議申立人が提出した証拠のいずれをみても,甲1発明において,「吸収層」中に,「紫外線吸収体」として,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」を単独で使用することや,「ユーヴィテックス(Uvitex)OB(チバ・ガイギー製品)」以外の「(iv-1)及び(iv-2)の要件を満たす紫外線吸収体」を単独で使用することが,当業者にとって容易に想到し得たことということはできないから,本件訂正発明43ないし58は,甲1発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (18)小括 本件訂正発明1,2,11ないし14,17ないし21に係る特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものである。 本件訂正発明3,5ないし10,22ないし58に係る特許について,本件取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由は成り立たない。 第4 むすび 請求項1,2,11ないし14,17ないし21に係る特許について,本件取消理由は成り立つから,その特許は,特許法29条2項の規定に違反してされたものであって,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。 請求項3,5ないし10,22ないし58に係る特許は,本件取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては,取り消すことはできない。さらに,他に請求項3,5ないし10,22ないし58に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項4,15,16に係る特許は,訂正により削除されたため,本件特許の請求項4,15,16に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2017-700428

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