特許異議申立
2017-700396
水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子及びその生産方法
- 審判番号
- 2017-700396
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-560138外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月19日
- 審決日
- 2018年01月10日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ジョイント ストック カンパニー カウスティク
- 【権利者代理人】▲吉▼川 俊雄
- 【異議申立人】清水 すみ子
- 分類
- P1652.113-YAA(C09K) / P1652.121-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6016044号発明「水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子及びその生産方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6016044号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
特許第6016044号の請求項1ないし3、7ないし10に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第6016044号の請求項1~20に係る特許についての出願は、平成28年10月7日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成29年4月19日に特許異議申立人清水すみ子(以下、単に「異議申立人」ともいう。)より請求項1~3及び7~10に対して特許異議の申立てがされ、同年7月13日付けで取消理由が通知され、同年10月16日に意見書の提出及び訂正請求がされたものである。
なお、上記訂正請求に対して、異議申立人に期間を設定して意見書を提出する機会を与えたが、意見書の提出はなかった。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、特許第6016044号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める、というものであって、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲について、次のア~カの訂正事項1~6のとおり訂正することを求めるというものである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の「二次粒子90%の直径が5μmを超えず、」の後に、請求項5及び請求項6の発明特定事項である「吸油力が、水酸化マグネシウム100gに対して50g以下であり、空隙率が10.5x10―3cm3/g以下であり、」なる記載を追加する。
(請求項1を引用する請求項2~4及び請求項7~10も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6を削除する。
エ 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0003】、【0006】、【0010】、【0013】、【0026】、【0035】に記載された「回析」を「回折」に訂正する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に記載された「レーザー回析法」を「レーザー回折法」に訂正する。
(請求項1を引用する請求項2~4及び請求項7~10も同様に訂正する。)
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項2に記載された「レーザー回析法」を「レーザー回折法」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び独立特許要件について
ア 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)訂正事項1について
上記訂正事項1は、請求項5及び請求項6の記載に基き、請求項1に係る水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子において、その吸油力及び空隙率を限定するものであり、当該訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、請求項1を引用する請求項2~4及び請求項7~10も同様に訂正されるものであって、当該請求項2~4及び請求項7~10に係る訂正は、請求項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(イ)訂正事項2、3について
上記訂正事項2、3は、請求項の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)訂正事項4について
上記訂正事項4は、「レーザー回析法」(【0003】、【0035】)、「X線回析法」(【0006】)、「レーザー回析測定」(【0010】、【0013】、【0026】)という記載における「回析」を「回折」と訂正するものであるところ、「回析」という技術用語は存在せず、それらは、順に、「レーザー回折法」、「X線回折法」及び「レーザー回折測定」という技術用語を指していることは明らかである。
そうすると、上記訂正事項4は、「回析」という語句を、本来の意味である「回折」という語句に正すものであって、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を有するものと客観的に認められるものである。
したがって、上記訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(エ)訂正事項5について
上記訂正事項4について述べたように、訂正事項5は、請求項1に記載された「レーザー回析法」という語句を、本来の意味である「レーザー回折法」という語句に正すものであって、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を有するものと客観的に認められるものである。
また、請求項1を引用する請求項2~4及び請求項7~10も同様に訂正されるものであって、当該請求項2~4及び請求項7~10に係る訂正は、請求項1と同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(オ)訂正事項6について
上記訂正事項4について述べたように、訂正事項6は、請求項2に記載された「レーザー回析法」という語句を、本来の意味である「レーザー回折法」という語句に正すものであって、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を有するものと客観的に認められるものである。
したがって、上記訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号の「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されている事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
イ 一群の請求項について
訂正事項4について、「レーザー回析法」(【0003】、【0035】)、「X線回析法」(【0006】)、「レーザー回析測定」(【0010】、【0013】、【0026】)という語句は、請求項1~4、7~10に係る「水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子」に直接関係し、請求項11~20に係る「水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子の生産方法」には直接関係しない語句であるといえる。
そして、訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものであるとともに、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行われたものである。
ウ 独立特許要件について
特許異議の申立ての対象とされていない請求項4(請求項5、6は削除された)に関して、上記アで述べたように、上記訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項5は、誤記の訂正を目的とするものであり、上記イで述べたように、訂正事項4は、誤記の訂正を目的とするものであって、該請求項4に直接関連する訂正であるから、該請求項4に係る発明について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件について検討する。
(訂正後の請求項4に係る発明について)
訂正後の請求項4には、「一次粒子の縦の長さが200~600nm、厚さが40~100nmであることを特徴とする、第1項に従う水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。」と記載され、該請求項4は該請求項1(第1項)を引用しているところ、訂正後の請求項1には、「板状六方構造をもち、BET法測定による比表面積が20m2/g以下、レーザー回折法測定による二次粒子の平均径が2μm以下であり、表面処理済みの水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子であって、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子は、その二次粒子10%の直径が0.8μmを超えず、二次粒子90%の直径が5μmを超えず、吸油力が、水酸化マグネシウム100gに対して50g以下であり、空隙率が10.5x10―3cm3/g以下であり、なおかつ、上記水酸化マグネシウムの一次粒子が板状六方形を呈し、一次粒子の縦の長さが150~900nm、厚さが15~150nmであることを特徴とする、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。」と記載されている。
(独立特許要件についての検討)
異議申立人は、訂正前の請求項1~3及び7~10に係る発明(以下、項番号に対応して、「訂正前発明1」などという。)について特許異議の申立てをしているので、まず、訂正後の請求項1に係る発明(以下、項番号に対応して、「訂正発明1」などという。)に対する、特許異議の申立ての理由について、検討することとする。
(異議申立人の主張)
異議申立人は、特許異議申立書において、訂正前発明1~3及び7~10に対して、次の(ア)、(イ)のように主張している。
「(ア)訂正前発明1~3は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の甲第1号証(以下、項番号に応じて、「甲1」などという。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができず、この特許の請求項1~3に係る特許は取り消すべきものである。
(イ)訂正前発明1~3及び7~10は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の甲1~甲7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、この特許の請求項1~3及び7~10に係る特許は取り消すべきものである。
記
甲1:フィラー研究会編、「フィラー活用事典」、株式会社大成社、平成6年(1994)5月31日初版第1刷発行、p40~43、p96~100
甲2:西沢仁監修、「高分子の難燃化技術」、株式会社シーエムシー出版、2002年11月27日普及版第1刷発行、p244~254
甲3:経営開発センター出版部企画編集、「無機物質とポリマーとの相互作用」、経営開発センター出版部、昭和61年1月31日発行、p395~409
甲4:協和化学工業株式会社のホームページ(http://kyowa-chem.jp/support/sds/sds_kisuma5a.pdf)から印刷した「製品名:KISUMA 5A」に関する「安全データシート(SDS)」、協和化学工業株式会社作成、作成日2007年4月1日、改訂日2015年10月1日
甲5:松井誠二著、博士論文「電位差滴定法による水酸化マグネシウム系難燃剤の表面評価とプラスチックス複合最適化に関する研究」、岡山大学大学院自然科学研究科、平成15年3月発行、p31~38
甲6:稲葉恵一、平野二郎編著「新版 脂肪酸化学 第2版」、株式会社幸書房、1990年5月15日第2版発行、p49~50
甲7:特開2006-160603号公報」
(異議申立て理由に対する当審の判断)
甲1の96~100頁から、「水酸化マグネシウム」である「キスマ5AU」について、次のa~eの事項が理解できる(括弧内は、甲1の対応箇所。)。
a 六角形の板状晶(97頁の「写真1 合成品水酸化マグネシウム」の「(B)難燃グレード ×104」についての写真から、「六角形の板状晶」が看取される。また、98頁の表1の「水酸化マグネシウムの一般的な性質」の「結晶の形状」の項には、「六角形または不定形の板状晶」という記載がある。)である。
b BET法測定による比表面積が4~7m2/g(99頁の表2の「難燃グレード Mg(OH)2 物性例」の「比表面積(BET法)」の項には、「4~7」という記載がある。技術常識から、単位は「m2/g」であることは明らかである。)である。
c 二次粒子の平均径が0.6~1.0μm(上記表2の「平均2次粒子径」の項には、「0.6~1.0」という記載がある。なお、粒径、粒度の単位は同表2の「粒度分布(μm)」という記載から、「μm」であることは明らかである。)である。
d 処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム(99頁の表3の「PPへの応用例」の「(キスマ5AU,5BU,5JUは各々異なる処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム)」という記載がある。)である。
e 処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウムは、その二次粒子10%の直径が0.39μm(上記表2の「粒度分布(μm)」の欄には、「% 10 = 0.39」という記載がある。)であり、二次粒子90%の直径が1.90μm(同欄には、「% 90 = 1.90」という記載がある。)である。
そうすると、甲1には、「キスマ5AU」として、
「六角形の板状晶をもち、BET法測定による比表面積が4~7m2/g、二次粒子の平均径が0.6~1.0μmである、処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウムであって、該処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウムは、その二次粒子10%の直径が0.39μmであり、二次粒子90%の直径が1.90μmであり、なおかつ、上記水酸化マグネシウムの一次粒子が六角形の板状晶を呈する、処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「六角形の板状晶」は、訂正発明1の「板状六方構造」及び「一次粒子が板状六方形を呈」する構成に相当する。
また、甲1発明の「処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム」は、訂正発明1の「表面処理済みの水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子」に相当する。
そして、甲1発明の「BET法測定による比表面積」、「二次粒子の平均径」、「二次粒子10%の直径」及び「二次粒子90%の直径」は、いずれも、訂正発明1の範囲に含まれる。
そうすると、訂正発明1と甲1発明とは、
「板状六方構造をもち、BET法測定による比表面積が20m2/g以下、二次粒子の平均径が2μm以下である、表面処理済みの水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子であって、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子は、その二次粒子10%の直径が0.8μmを超えず、二次粒子90%の直径が5μmを超えず、なおかつ、上記水酸化マグネシウムの一次粒子が板状六方形を呈する水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。」である点で一致し、次の相違点1~3で相違する。
【相違点1】
二次粒子の平均径の測定方法が、訂正発明1では、「レーザー回折法」なのに対し、甲1発明のそれは不明な点。
【相違点2】
水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子の「吸油力」及び「空隙率」について、訂正発明は、「吸油力が、水酸化マグネシウム100gに対して50g以下であり、空隙率が10.5x10―3cm3/g以下であ」るのに対し、甲1発明のそれらは不明な点。
【相違点3】
一次粒子の縦の長さ及び厚さについて、訂正発明1は、「縦の長さが150~900nm、厚さが15~150nmである」のに対し、甲1発明のそれらは不明な点
ここで、相違点について検討する。
事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。
異議申立人が主張するように、甲2には、キスマ5について、表面処理済みの水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子であって、該難燃剤水酸化マグネシウムの結晶粒子の厚さが0.1~0.3μmであることが開示され、甲3には、結晶粒子(一次粒子)の厚さが120nmであることが記載され、甲4には、キスマ5が水酸化マグネシウムとステアリン酸からなることが記載され、甲5には、ステアリン酸による水酸化マグネシウムの表面処理のメカニズムが記載され、甲6には、ステアリン酸の分子鎖長が2.32nmであることが記載され、甲7には、水酸化マグネシウムにおける不純物として金属換算(Fe+Mn)の合計量が0.01重量%以下であることが記載されているとしても、甲1~甲7のいずれにも、上記相違点2に係る訂正発明1の発明特定事項である、「水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子」について、「吸油力が、水酸化マグネシウム100gに対して50g以下であり、空隙率が10.5x10―3cm3/g以下であ」る点は、記載も示唆もされていない。また、この点に関して、異議申立人は何ら主張ないし立証を行っていない。
そして、上記訂正発明1の「吸油力」及び「空隙率」に関する発明特定事項は、とりわけ、訂正発明11や本件明細書の【0014】、【0038】~【0041】の【実施例1】~【実施例3】に記載された生産方法によって生産された「水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子」が備えるものと認められるところ、甲1~甲7は、そのような生産方法を、開示も示唆もするものではない。
また、甲1発明の「処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム」の「吸油力」及び「空隙率」が、訂正発明1の範囲のものであるという技術常識は見当たらないし、さらに、該「処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム」が、訂正発明11や本件明細書に記載された生産方法によって生産されるものであるという根拠も見当たらない。
そうすると、甲1発明の「処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム」の「吸油力」及び「空隙率」が、訂正発明1の範囲のものである蓋然性は低い。さらに、該「処理剤で表面処理した難燃グレード水酸化マグネシウム」に訂正発明1で規定される「吸油力」及び「空隙率」を備えるようにする動機付けもない。
したがって、訂正発明1は、甲1発明と同一であるとはいえず、しかも、甲1発明及び甲2~甲7に記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
よって、訂正発明1について、異議申立人の異議申立て理由には、理由はない。
また、他に、訂正発明1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
(訂正発明4の独立特許要件についての判断)
訂正発明4は、訂正発明1を引用し、さらに限定するものであるから、訂正発明1と同様に、訂正発明4に係る特許を取り消すべき理由を発見せず、訂正発明4は、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件を満たす。
(3)まとめ
以上のことから、上記訂正事項1~6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。
3.本件発明
上記2で述べたように、本件訂正は認められるから、本件の請求項1~4、7~20に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、7~20に記載された事項によって特定される次のとおりのものである(以下、項番号に対応して、「本件発明1」などといい、これらをまとめて「本件発明」という。)。
「【請求項1】
板状六方構造をもち、BET法測定による比表面積が20m2/g以下、レーザー回折法測定による二次粒子の平均径が2μm以下であり、表面処理済みの水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子であって、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子は、その二次粒子10%の直径が0.8μmを超えず、二次粒子90%の直径が5μmを超えず、吸油力が、水酸化マグネシウム100gに対して50g以下であり、空隙率が10.5x10―3cm3/g以下であり、なおかつ、上記水酸化マグネシウムの一次粒子が板状六方形を呈し、一次粒子の縦の長さが150~900nm、厚さが15~150nmであることを特徴とする、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項2】
レーザー回折法測定による二次粒子の平均径が0.7~1.7μmであることを特徴とする、請求項1に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項3】
BET法測定による比表面積が2~15m2/gであることを特徴とする、請求項1に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項4】
一次粒子の縦の長さが200~600nm、厚さが40~100nmであることを特徴とする、第1項に従う水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項7】
三酸化二鉄に換算した鉄分含有量が0.01%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項8】
水酸化マグネシウムの量の0.1~5.0%分の、一種類もしくは数種類のシランカップリング剤及び/または一種類もしくは数種類の表面処理剤によって、粒子が表面処理されていることを特徴とする、請求項1に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項9】
シランカップリング剤が、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルケニルトリエトキシシラン、アルケニルトリメトキシシランなどの、有機官能トリアルコキシシラン基の中から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1または請求項8に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項10】
表面処理剤が、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、トール油脂肪酸等、及び/またはそれらのアルカリ金属塩、及び/またはそれらの混合物などの、8~20の炭素原子をもつ飽和及び不飽和脂肪酸基から選ばれたものであることを特徴とする、請求項1または請求項8に記載の水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子。
【請求項11】
可能な限り、塩化マグネシウム水溶液とアルカリ成分との相互反応による表面処理が行われており、二段階より成る、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子の生産方法であって、第一段階において、温度100℃以下、常圧、OH-イオン対Mg++イオンのモル比が1.9~2.1:1の範囲において、塩化マグネシウム水溶液とアルカリ成分との相互反応が行われ、第二段階においては、温度120~220℃、圧力0.18~2.3MPa、継続時間2~24時間において水酸化マグネシウム粒子の水熱再結晶化がおこなれ、なおかつ、凝集による、その後の一次粒子の増大及び二次粒子の粗大化を防ぐことを目的として水熱再結晶化が行われる際に、温度160~240℃、圧力0.6~3,3MPaにおいて、過熱蒸気による周期的な液圧衝撃が反応塊に対して加えられることを特徴とする、水酸化マグネシウム難燃剤ナノ粒子の生産方法。
【請求項12】
塩化マグネシウムとして、天然由来または合成由来の塩化マグネシウムを使用することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
塩化マグネシウム水溶液が、鉄、及び/または臭素、及び/またはホウ素、及び/または硫酸塩、及び/またはマンガン、その他の不純物を前もって除去されたものであることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
アルカリ成分として、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムのそれぞれの水溶液、または水酸化カルシウム懸濁液が使われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
水酸化マグネシウムナノ粒子の生成が、周期的または連続的条件で行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
水熱再結晶化が、反応母液媒質中または脱イオン水中で行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
液圧衝撃が、任意の断面形状をもつ孔を経由して行われることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
生成された水酸化マグネシウム粒子が、水酸化マグネシウムの量の0.1~5.0%の量の、一種類または数種類のシランカップリング剤、及び/または一種類または数種類の表面処理剤によって、表面処理されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
シランカップリング剤が、アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルケニルトリエトキシシラン、アルケニルトリメトキシシラン、その他、及び/またはそれらの混合物などの、有機官能トリアルコキシシラン基から選ばれることを特徴とする、請求項11または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
表面処理剤が、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、トール油脂肪酸、その他、及び/またはそのアルカリ金属塩、及び/またはそれらの混合物などの、8~20の炭素原子をもつ飽和及び不飽和脂肪酸基から選ばれることを特徴とする、請求項11または請求項18に記載の方法。」
4.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
取消理由通知に記載した、取消理由の概要は、上記の「2.(2)ウ」の「(異議申立人の主張)」の「(ア)、(イ)」に記載した、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要と同じである。
(2)判断
本件発明1は、上記の「2.(2)ウ」の「(異議申立て理由に対する当審の判断)」で検討した訂正発明1であって、上述したように、本件発明1(訂正発明1)は、甲1に記載された発明であるとも、甲1~甲7に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるともいえないから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1に係る特許を取り消すことはできない。
そして、本件発明2~3及び7~10は、本件発明1をさらに限定したものであるから、本件発明2~3及び7~10に係る特許も、本件発明1と同様に、取り消すことはできない。
5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~3及び7~10に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件発明1~3及び7~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700396