特許異議申立
2017-700394
薬品払出装置、薬品払出方法、薬品払出プログラム、記録媒体
- 審判番号
- 2017-700394
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-538940外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月19日
- 審決日
- 2017年06月12日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6007989号発明「薬品払出装置、薬品払出方法、薬品払出プログラム、記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6007989号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6007989号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし17についての出願は、平成25年12月3日(優先権主張平成25年1月18日等、日本国)を国際出願日とする特許出願に係るものであって、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成29年4月19日に特許異議申立人石野裕二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~17に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明17」という。)は、願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定されるとおりのものである。
第3 特許異議申立ての理由の概要
申立人は、証拠方法として甲1~甲4を提出するとともに、本件特許を取り消すべき理由として、概ね次の理由1及び2を主張している。
なお、各証拠は、「甲第1号証」を「甲1」のように略記した。
(理由1)
本件発明1~5、15~17は、甲1記載の発明及び甲2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
本件発明6~14は、甲1記載の発明、甲2の記載事項、及び甲3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
(理由2)
本件発明1~17は、甲2記載の発明、及び甲1、3~4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第113条第2号に該当する。
[証拠方法]
甲1:国際公開第2012/099189号
甲2:特開平10-119902号公報
甲3:特開2000-354620号公報
甲4:特開2010-82052号公報
第4 甲各号証の記載
1.甲1
甲1には、本件請求項1に照らすと、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「任意の種類の薬剤を払出可能な薬剤供給装置と、
バーコードリーダ118により処方箋のスキャンが行われた場合に、処方箋読取処理を行って、Rxデータ要求を薬剤供給システムのホストシステム111側に送信し、前記Rxデータ要求を受信した前記ホストシステム111側からRxデータ応答とともに詳細な処方情報を受信する制御部117であって、
前記詳細な処方情報を受信した後、処方に該当する薬剤のサイズを薬品マスタ121から検索し、当該薬剤のサイズに基づいて高さ規制体41による規制高さ、及び幅規制体52による第2回転体35の移送幅を調整し、当該薬剤供給装置から薬剤を払い出させて、カウント処理を行う制御部117と、
を備える薬剤計数装置たるカウンタ110。」
2.甲2
甲2には、本件請求項1に照らすと、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「任意の種類の薬剤を払出可能な複数のトップタブレット3及びアンダータブレット6と、
手撒きする薬剤の種類、及び、使用するトップタブレット3に関する情報等を示すコードを指示する指示書に印刷された前記コードが読みとられた場合に、読みとった情報を記憶するとともに、使用するトップタブレット3を決定する制御装置であって、
前記使用するトップタブレット3が決定された後、作業者が開閉キーを押して前記決定されたトップタブレット3を引き出すことができるようにし、
前記トップタブレット3から払い出された薬剤をアンダータブレット6から払い出すタイミングを制御する制御装置と、
を備える薬剤包装機1。」
3.甲3
甲3には、次の事項(以下「甲3事項」という。)が記載されている。
「薬剤を自動供給する薬剤フィーダによって供給できない薬剤を手撒きする手撒き作業には、作業性が悪く、人為的なミスが発生する可能性がある、という問題点があること。」
4.甲4
甲4には、次の事項(以下「甲4事項」という。)が記載されている。
「複数の収納区画が形成された薬剤フィーダを備える薬剤供給装置において、指示に従って作業者が所定の収納区画に所定の種類の薬剤を投入する事前準備が煩雑である、という問題点があること。」
第5 判断
1.理由1について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「薬剤供給装置」は、甲1の図3~7Bの図示内容に照らすと、薬剤計数装置(甲1の図1~2、8参照)に着脱自在に構成されるものとは認められず、前者の「薬品カセット」に相当するとはいえない。
また、後者の「薬剤供給システムのホストシステム111」は、“Rxデータ要求を送信したカウンタ110(制御部117)”に対して、Rxデータ応答とともに詳細な処方情報を送信(カウンタ110側からみると「受信」)するものであり、当該詳細な処方情報の送信先について、“複数のカウンタ110のいずれか”に選択する余地はない。そうすると、カウンタ110はもとより、薬剤供給システムのホストシステム111にも、前者の「割当手段」に相当するものはない。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点1>
任意の種類の薬剤を払出可能な払出手段について、本件発明1は「複数の薬品カセット」であるのに対して、甲1発明の「薬剤供給装置」は「薬品カセット」ではなく、また「複数」ではない点。
<相違点2>
本件発明1は「薬品情報を薬品カセットのいずれかに割り当てる割当手段」を備えるのに対して、甲1発明は「割当手段」に相当するものは備えていない点。
イ 判断
<相違点1>
甲2発明の「トップタブレット3」は、「手撒き部材」であり、甲2発明の「アンダータブレット6」は、「手撒き部材」から払い出された薬剤を保持する保持部材である(甲2の【0010】参照)。また、「トップタブレット3」は「引き出」し可能に構成されるものであるが、“着脱自在”であるとまではいえず、「アンダータブレット6」は「引き出す」ことを想定していない部材である(甲2の図1、3参照)。そうすると、甲2発明の「トップタブレット3及びアンダータブレット6」は、本件発明1の「薬品カセット」に相当するものではない。
また、甲3及び4には、甲3及び4事項のとおり「薬剤フィーダ」は記載されているものの、「薬品カセット」が記載されているとまではいえない。
そうすると、甲1発明と甲2~4をどのように組み合わせたとしても、相違点1に係る本件発明1の構成には到達しない。
<相違点2>
甲1発明には、上記のとおり、当該詳細な処方情報の送信先について、“複数のカウンタ110のいずれか”に選択する余地はないことから、「薬品情報を薬品カセットのいずれかに割り当てる割当手段」を設けようとする動機はない。
また、甲2発明の「使用するトップタブレット3」の「決定」は、本件発明1の「薬品カセットのいずれかに割り当てる」「割当」に相当するものとはいえない。すなわち、甲2発明では、「決定」の前に、手撒き作業について「使用するトップタブレット3に関する情報」を読みとる作業が行われていることから、当該作業の段階において、既に「手撒きする薬剤の種類」と「使用するトップタブレット3」との対応関係が特定されていると理解するのが合理的である。そうすると、当該作業後に、制御装置において「手撒きする薬剤の種類」と「使用するトップタブレット3」との対応関係を特定するようなプロセスを要しないことは明らかであり、制御装置で行われる「決定」は、当該対応関係の特定とは無関係である。「割当」については、甲3及び4にも相当する事項は記載されていない。
さらに、相違点1で検討したとおり、そもそも、甲1~4のいずれにも「薬品カセット」に相当するものは記載されていない。
そうすると、甲1発明には相違点2の「割当手段」を設ける動機はなく、また、甲1発明と甲2~4をどのように組み合わせたとしても、相違点2に係る本件発明1の構成には到達しない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、及び、甲2~4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~14について
本件発明2~14は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件発明2~14についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(3)本件発明15について
本件発明15は、「薬品払出装置」の発明である本件発明1を「薬品払出方法」の発明に形式的に変更したものに相当する。
そうすると、本件発明15と甲1発明とは、実質的には、少なくとも上記相違点1及び2において相違することとなる。そして、本件発明15についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4)本件発明16について
本件発明16は、「薬品払出装置」の発明である本件発明1を「薬品払出プログラム」の発明に形式的に変更したものに相当する。
そうすると、本件発明16と甲1発明とは、実質的には、少なくとも上記相違点1及び2において相違することとなる。そして、本件発明16についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)本件発明17について
本件発明17は、本件発明16の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件発明17についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
2.理由2について
(1)本件発明1について
ア 甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、後者の「トップタブレット3及びアンダータブレット6」が前者の「薬品カセット」に相当するとはいえず、また、後者の「使用するトップタブレット3」の「決定」が前者の「薬品カセットのいずれかに割り当てる」「割当」に相当するものとはいえないのは、上記のとおりである。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、少なくとも次の点において相違する。
<相違点3>
任意の種類の薬剤を払出可能な払出手段について、本件発明1は「薬品カセット」であるのに対して、甲2発明は「トップタブレット3及びアンダータブレット6」である点。
<相違点4>
本件発明1は「薬品情報を薬品カセットのいずれかに割り当てる割当手段」を備えるのに対して、甲2発明は「割当手段」に相当するものは備えていない点。
イ 判断
<相違点3>
甲2発明の「トップタブレット3及びアンダータブレット6」は、手撒き部材及び当該手撒き部材から払い出された薬剤を保持する保持部材である。仮に当該部材を「薬品カセット」に置き換えると、手撒きの機能が失われることになるから、かかる置換えには阻害要因があるというべきである。
また、甲1、3~4のいずれにも「薬品カセット」が記載されていないのは、上記のとおりである。
そうすると、甲2発明には相違点3の「薬品カセット」に変更する阻害要因があり、また、甲2発明と甲1、3~4をどのように組み合わせたとしても、相違点3に係る本件発明1の構成には到達しない。
<相違点4>
上記のとおり、甲1~4のいずれにも「薬品情報を薬品カセットのいずれかに割り当てる割当手段」は記載されていないのであるから、甲2発明と甲1、3~4をどのように組み合わせたとしても、相違点4に係る本件発明1の構成には到達しない。
ウ 小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明、及び、甲1、3~4の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~14について
本件発明2~14は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件発明2~14についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(3)本件発明15について
本件発明15は、「薬品払出装置」の発明である本件発明1を「薬品払出方法」の発明に形式的に変更したものに相当する。
そうすると、本件発明15と甲2発明とは、実質的には、少なくとも上記相違点3及び4において相違することとなる。そして、本件発明15についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(4)本件発明16について
本件発明16は、「薬品払出装置」の発明である本件発明1を「薬品払出プログラム」の発明に形式的に変更したものに相当する。
そうすると、本件発明16と甲2発明とは、実質的には、少なくとも上記相違点3及び4において相違することとなる。そして、本件発明16についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(5)本件発明17について
本件発明17は、本件発明16の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する発明である。
よって、本件発明17についても、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
第6 むすび
したがって、上記取消理由1ないし2によっては、本件発明1ないし17に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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