特許異議申立
2017-700353
可撓性ホース、及び電気掃除機
- 審判番号
- 2017-700353
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-121712外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年04月11日
- 審決日
- 2017年09月25日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立アプライアンス株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【権利者】東拓工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】清水 隆男
- 【異議申立人代理人】森本 敏明
- 分類
- P1651.121-YAA(A47L) / P1651.537-YAA(A47L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6008583号発明「可撓性ホース、及び電気掃除機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6008583号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第6008583号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第6008583号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、平成28年9月23日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人清水隆男より特許異議の申立てがされ、平成29年6月19日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年7月21日に意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成29年7月21日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6008583号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「該潤滑剤は、炭酸カルシウム又はシリコーンであり、」と記載されているのを、「該潤滑剤はシリコーンであり、」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「該潤滑剤は、炭酸カルシウム又はシリコーンであり、」と記載されているのを、「該潤滑剤はシリコーンであり、」に訂正する。
(3) 訂正事項3
明細書の段落【0007】及び【0008】において、それぞれ、「該潤滑剤は、炭酸カルシウム又はシリコーンであり、」と記載されているのを、いずれも「該潤滑剤はシリコーンであり、」に訂正する。
2 訂正の適否
(1) 一群の請求項について
訂正事項1に係る訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1及び2に対応する訂正後の請求項1及び2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2) 訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、潤滑剤の種類について、訂正前の請求項1に「炭酸カルシウム又はシリコーン」としていたものを、訂正後の請求項1の「シリコーン」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正後の請求項1を引用する請求項2についても同様に減縮しようとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、潤滑剤の種類を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、訂正後の請求項1を引用する訂正後の請求項2に記載された発明についてもカテゴリーや対象、目的を変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の「又、本実施形態において、凸部2の頂部3を構成する合成樹脂に混合可能な潤滑剤としては、例えば、炭酸カルシウムやシリコーンが挙げられる。」(【0020】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3) 訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、潤滑剤の種類について、訂正前の請求項3に「炭酸カルシウム又はシリコーン」としていたものを、訂正後の請求項3の「シリコーン」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、潤滑剤の種類を減縮するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の「又、本実施形態において、凸部2の頂部3を構成する合成樹脂に混合可能な潤滑剤としては、例えば、炭酸カルシウムやシリコーンが挙げられる。」(【0020】)との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4) 訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、上記訂正事項1及び2に係る訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正事項であり、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正事項であるところ、訂正前の請求項〔1、2〕、3に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合性を図るための訂正であり、上記訂正事項1及び2において示したとおり、明細書の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。
3 まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正を認める。
第3 本件特許発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1~3」という。また、これらをまとめて「本件発明」ということもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
環状又は螺旋状の凹部及び凸部を外表面上に備え、前記凸部の内周側に金属又は硬質合成樹脂の線材を内包して有し、前記凹部は成形後のショア硬度が50~70度の軟質塩化ビニル樹脂であって、前記凸部は成形後のショア硬度が80~100度の軟質塩化ビニル樹脂又は高摺動ポリエチレン樹脂であって、該凸部の頂部表面に潤滑剤を有し、
該潤滑剤はシリコーンであり、
前記凸部の頂部は、前記凸部の最大幅の20~80%の範囲であることを特徴とする可撓性ホース。
【請求項2】
前記凹部の表面の摩擦係数は0.9~0.4であって、前記凸部の頂部の摩擦係数は0.3~0.1であることを特徴とする請求項1に記載の可撓性ホース。
【請求項3】
掃除機本体と、ホース体と、を備え、
前記ホース体は、一端に吸口体又は延長管と接続される操作部と、他端に前記掃除機本体に接続される接続部と、前記操作部と前記接続部とを連結する可撓性ホースと、を備え、
前記可撓性ホースは、環状又は螺旋状の凹部及び凸部を外表面に備え、前記凸部の内周側に金属又は硬質合成樹脂の線材を内包して有し、前記凹部は成形後のショア硬度が50~70度の軟質塩化ビニル樹脂であって、前記凸部は成形後のショア硬度が80~100度の軟質塩化ビニル樹脂又は高摺動ポリエチレン樹脂であって、該凸部の頂部表面に潤滑剤を有し、
該潤滑剤はシリコーンであり、
前記凸部の頂部は、前記凸部の最大幅の20~80%の範囲であることを特徴とする電気掃除機。
第4 当審の判断
1 平成29年6月19日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要
[理由1]
本件発明1~3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
(刊行物)
甲第1号証:特開平10-153279号公報
甲第2号証:特開2002-5347号公報
甲第3号証:特開2001-235070号公報
甲第4号証:特開2001-82641号公報
甲第5号証:特開平7-323489号公報
甲第6号証:特開2002-523号公報
甲第7号証:特開2010-60012号公報
甲第8号証:特開2011-131415号公報
甲第9号証:特開平11-294643号公報
甲第13号証:実公平3-32874号公報
(以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。また、「甲第1号証に記載された発明」、「甲第2号証に記載された事項」等を、それぞれ「甲1発明」、「甲2記載事項」等という。)
理由1-1
本件発明1~3は、甲1発明及び甲2~9、13記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
理由1-2
本件発明1~3は、甲2発明及び甲1、3~9、13記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
[理由2]
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1~3における、「該潤滑剤は、炭酸カルシウム」「であり、」という記載については、どのような炭酸カルシウムを用いれば、表面が粗面化されて、すべり性が向上するかについての特定がされておらず、出願時の技術常識に照らしても、本件発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、いわゆるサポート要件の規定を満たしていない。
(参考文献)
甲10:特公平1-46538号公報
甲11:特公昭63-63596号公報
甲12:白石カルシウム株式会社,「1白石工業(株)製品」,商品案内カタログ,白石カルシウム株式会社,1983年3月,p.1-4
なお、上記取消理由通知は、本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。
2 上記取消理由についての判断
(1) 理由1について
(1-1) 理由1-1(甲1発明に基く進歩性)について
ア 甲1記載事項
甲1(特開平10-153279号公報)には、以下の記載がある。
ア-1 「【請求項1】 導線が付設された幅広の条帯を螺旋状に捲回し、その隣接する側縁部同士を重合して接合することにより形成した可撓性ホースであって、上記条帯はその基部から立ち上がり横断面が中空の略逆三角形状をした突条部を幅方向に沿って複数形成されるとともに、隣接する突条部同士で形成する空間に基部から突設した導線保持壁により導線が保持される導線付設部が形成され、上記条帯を螺旋状に捲回してホース状体に形成した際の導線付設部の外径を突条部の外径よりも小さく構成し、かつ、上記突条部の頂壁部の剛性を他の部分より大きくしたことを特徴とする導線付き可撓性ホース。
【請求項2】 突条部の頂壁部の少なくとも外表面部分を硬質合成樹脂、その他の部分を軟質合成樹脂により一体成形した条帯により形成した請求項1に記載の導線付き可撓性ホース。」
ア-2 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パワーブラシ用やリモコンスイッチ用などの電気回路を構成する電気掃除機用ホース等に使用される導線付き可撓性ホースに関するものである。」
ア-3 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のホースにおいては、隣接する突条42,43,44間に導線挿入部47,48のスペースを設ける必要があり、ホースの長さ方向における単位長さ当たりの突条の数を多くすることはできず、ホースの可撓性の向上を図るのに限界があった。また、隣接する突条42,43,44同士が接着剤で接着されているため、中央の突条43における接着剤52,53より下方側と、外側の各突条42,44の内側壁における接着剤52,53より下方側の自由な変形が阻害されて、可撓性が制限される問題があった。本発明は、上記ホースの問題点を解消し、可撓性をより向上させることのできる導線付きホースを提供することを目的とする。」
ア-4 「【0007】以下、本発明の第1実施例を図1乃至図4の図面に基づき説明すると、導線付き可撓性ホースAは、一対の被覆導線2,3が付設された幅広の条帯1が螺旋状に捲回されその隣接する側縁部同士が接合されて形成されている。
【0008】すなわち、条帯1は、基部4から立ち上がり横断面が中空の略逆三角形状をした複数(本例では3条)の突条部5,6,7と突条部5,6,7相互の隣接する空間に基部4から突設した左右一対の導線保持壁9,9により被覆導線2,3を保持する導線付設部8を有し、突条部5,6,7の頂壁部10,10,10を硬質合成樹脂、その他の部分を軟質合成樹脂により一体に形成されている。
【0009】突条部5,6,7は、ホースの径方向外方に突出するとともに、条帯1の幅方向に併設され、それらの横断面は、ホースの径方向内方に開口する中空の略逆三角形状とされ、頂壁部10と左右一対の側壁部11,12を有し、上端部の幅Xが下端部の幅Yよりも大とされている。
【0010】条帯1のうち突条部5,6,7の頂壁部10,10,10を形成する硬質合成樹脂とそれ以外の部分を形成する軟質合成樹脂とは、互いに融着する材料が選択され、例えば硬質合成樹脂として高密度ポリエチレン、軟質合成樹脂としてエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)使用される。」
ア-5 「【0017】そして、条帯1の上向き側縁部15を隣接する下向き側縁部14内に挿入し、接着剤18と同一の接着剤である接合用接着剤16により接合する。上記のように、隣接する突条部5,6,7はどの部分も接着剤で接合されず、自由な変形が可能でありホースの可撓性は良好である。
【0018】すなわち、ホースを曲げた際には、屈曲部の外周側では、図3に示すように、突条部5,6,7は幅方向に引っ張られその両側壁部11,12が拡開して、頂壁部10が湾曲凹状となる四角形(台形)状に変形するとともに、基部4,4はそれとは逆に湾曲凸状に変形する。
【0019】また、屈曲部の内周側では、図4に示すように、突条部5,6,7は軸方向に圧縮されてその両側壁部11,12が閉じるとともに、その頂壁部10および基部4,4はそれとは逆の湾曲形態で変形する。
【0020】上記のように、ホースを曲げた際に、外周側が伸長し内周側は縮小するが、突条部5,6,7の両側壁部11,12の開閉や基部4の湾曲により、伸縮に容易に対応して、ホースが座屈するように変形するので、ホースの可撓性は大きいものである。
【0021】また、突条部5,6,7の横断面が略逆三角形とされて、隣接する突条部5,6,7間の略台形状の空間内に被覆導線2,3を内有する導線付設部8が配設されたので、突条部5,6,7の横断面が門型である場合などに比べて、ホースの単位長さ当りの突条部の数を多く設定でき、この点からもホースの可撓性を大きくすることができる。」
ア-6 「【0023】更に、ホースが床面やカーペットなどと直接接触する部分である突条部5,6,7の頂壁部10,10,10を硬質合成樹脂で形成してあるので、その摩擦抵抗が少なく、ホースの移動が滑らかで掃除機の使い勝手が良くなるほか、この硬質合成樹脂が螺旋補強体の役目を果たし、ホースを屈曲させた際に、キンクしにくくなりホースの曲率半径をより小さくできる。
【0024】なお、本実施例のように、頂壁部10全体を硬質合成樹脂で形成する必要はなく、少なくとも床面などと直接接触するその外表面のみを硬質合成樹脂で形成するようにしてもよい。」
ア-7 「【0031】
【発明の効果】本発明によれば、導線付きホースでありながら、その可撓性を従来より大幅に向上させることができ、かつ、誤ってホースを踏んでも永久変形せず容易に元の形状に復元でき、導線がホース内部にうまく保護収納され外部に露出したりする虞がないとともに、耐キンク性が向上され曲率半径をより小さくできる。また、ホースを床などに引きずった際の摩擦抵抗が少なく、操作性に優れるほか、外観体裁や手触りのよいホースも得ることができる。」
イ 甲1発明
甲1記載事項ア-1~ア-7を踏まえると、甲1には、次の甲1発明が記載されている。
「 導線が付設された幅広の条帯1を螺旋状に捲回し、その隣接する側縁部同士を重合して接合することにより形成した電気掃除機用ホース等に使用される可撓性ホースであって、
上記条帯1には、その基部4から立ち上がり、横断面が頂壁部10と左右一対の側壁部11,12を有する中空の略逆三角形状をした突条部5,6,7が複数設けられるとともに、隣接する突条部同士で形成する空間には導線が保持される導線付設部8を有し、
上記条帯1を螺旋状に捲回してホース状体に形成した際の導線付設部8の外径は、突条部5,6,7の外径よりも小さく構成され、かつ、
上記突条部5,6,7の頂壁部10の少なくとも外表面部分を硬質合成樹脂である高密度ポリエチレン、その他の部分を軟質合成樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)により一体成形して、上記突条部5,6,7の頂壁部10の剛性を他の部分より大きくした、
電気掃除機用ホース等に使用される導線付き可撓性ホース。」
ウ 本件発明1と甲1発明との対比、判断
(ア) 本件発明1と甲1発明との対比
甲1発明の「幅広の条帯1を螺旋状に捲回し、その隣接する側縁部同士を重合して接合することにより形成した」「可撓性ホース」は、その形状、構造からみて、本件発明1の「環状又は螺旋状の」「可撓性ホース」に相当する。
また、甲1発明の「上記条帯1」の「基部4から立ち上がり、横断面が頂壁部10と左右一対の側壁部11,12を有する中空の略逆三角形状をした突条部5,6,7」は、本件発明1の「可撓性ホース」の「外表面上に備え」られた「凸部」に相当し、甲1発明の「突条部5,6,7の頂壁部10」は、本件発明の「凸部の頂部表面」に相当する。
また、甲1発明の「隣接する突条部同士で形成する空間」は、本件発明1の「可撓性ホース」の「外表面上に備え」られた「凹部」に相当する。
そうすると、甲1発明の「上記条帯1には、その基部4から立ち上がり、横断面が頂壁部10と左右一対の側壁部11,12を有する中空の略逆三角形状をした突条部5,6,7が複数設けられるとともに、隣接する突条部同士で形成する空間」を有し、「上記条帯1を螺旋状に捲回してホース状体に形成した」「可撓性ホース」は、本件発明1の「環状又は螺旋状の凹部及び凸部を外表面上に備え」た「可撓性ホース」に相当する。
また、甲1発明の「導線」は、技術常識からみて、金属であることは明らかであるから、本件発明1の「金属又は硬質合成樹脂の線材」に相当する。
そうすると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1-1]
金属又は硬質合成樹脂の線材の配置について、本件発明1においては、凸部の内周側に内包して有するようにしているのに対して、甲1発明においては、隣接する突条部同士で形成する空間に設けられた導線付設部8に保持されるようにしている点。
[相違点1-2]
凹部と凸部の素材や硬さについて、本件発明1においては、凹部は成形後のショア硬度が50~70度の軟質塩化ビニル樹脂であり、凸部は成形後のショア硬度が80~100度の軟質塩化ビニル樹脂又は高摺動ポリエチレン樹脂であるのに対して、甲1発明においては、突条部5,6,7の頂壁部10の少なくとも外表面部分を硬質合成樹脂である高密度ポリエチレン、その他の部分を軟質合成樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)により一体成形して、突条部5,6,7の頂壁部10の剛性を他の部分より大きくしたものである点。
[相違点1-3]
本件発明1においては、凸部の最大幅の20~80%の範囲である凸部の頂部表面に潤滑剤を有し、該潤滑剤はシリコーンであるのに対して、甲1発明においては、突条部5,6,7の頂壁部10の少なくとも外表面部分は硬質合成樹脂である高密度ポリエチレンとされるものの、その頂壁部10が突条部5,6,7の最大幅のどの程度の範囲であるかは明らかでなく、また、シリコーンの潤滑剤は有していない点。
(イ) 上記相違点についての検討
a まず、上記相違点1-1について検討する。
甲1発明は、「可撓性をより向上させることのできる導線付きホースを提供する」(上記記載事項ア-3参照)ことを課題とするところ、甲1発明において、突条部5,6,7は、条帯1の基部4から立ち上がり、横断面が頂壁部10と左右一対の側壁部11,12を有する中空の略逆三角形であるという事項、及び、導線は、隣接する突条部同士で形成する空間に設けられた導線付設部8に保持されるとともに、条帯1を螺旋状に捲回してホース状体に形成した際の導線付設部8の外径は、突条部5,6,7の外径よりも小さく構成されているという事項を有するものである。
そして、当該事項を有することにより、「ホースを曲げた際には、屈曲部の外周側では、図3に示すように、突条部5,6,7は幅方向に引っ張られその両側壁部11,12が拡開して、頂壁部10が湾曲凹状となる四角形(台形)状に変形するとともに、基部4,4はそれとは逆に湾曲凸状に変形する」、「屈曲部の内周側では、図4に示すように、突条部5,6,7は軸方向に圧縮されてその両側壁部11,12が閉じるとともに、その頂壁部10および基部4,4はそれとは逆の湾曲形態で変形する」、「ホースを曲げた際に、外周側が伸長し内周側は縮小するが、突条部5,6,7の両側壁部11,12の開閉や基部4の湾曲により、伸縮に容易に対応して、ホースが座屈するように変形するので、ホースの可撓性は大きいものである」及び「突条部5,6,7の横断面が略逆三角形とされて、隣接する突条部5,6,7間の略台形状の空間内に被覆導線2,3を内有する導線付設部8が配設されたので、突条部5,6,7の横断面が門型である場合などに比べて、ホースの単位長さ当りの突条部の数を多く設定でき、この点からもホースの可撓性を大きくすることができる」(いずれも上記記載事項ア-5)という作用により、「導線付きホースでありながら、その可撓性を従来より大幅に向上させることができ」(上記記載事項ア-7)るという効果を奏するものとなっている。
そうすると、甲1発明においては、導線の配置は、突条部の横断面中空の略逆三角形の内部に配置するのではなく、隣接する突条部同士で形成する空間に設けられた導線付設部8に保持されるとともに、条帯1を螺旋状に捲回してホース状体に形成した際の導線付設部8の外径は、突条部5,6,7の外径よりも小さく構成されることが、甲1発明の課題解決のために必要であるから、たとえ電気掃除機用ホースや空調用ダクトホースにおいて、甲2、6及び7にみられるような「凹凸のあるホースの凸部の内周側に金属又は合成樹脂の線材を内包して有する」ようにしている可撓性ホースの形状・構造が周知技術であったとしても、当該周知技術を甲1発明に適用しようとする動機づけはない。
また、当該周知技術の適用は、それにより突条部の両側壁部の拡開や頂壁部の湾曲などによる突条部の変形し易さを損ない、却って甲1発明が奏する効果を発揮し得ないものとすることになるから、上記周知技術の適用には阻害要因があるといえる。
よって、甲1発明において、上記相違点1-1に係る本件発明1の構成を得るようにすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
b 次に、上記相違点1-2について検討する。
甲1発明は、可撓性をより向上させることのできる導線付きホースを提供するという課題のもと、突条部の頂壁部の剛性をその他の部分より大きくしたものであり、突条部の両側壁部や基部とは同じ素材(軟質合成樹脂であるエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA))で構成されるものであるところ、凹部と凸部とで硬度を異ならせている本件発明1のようにすることの動機づけを見出すことはできない。
また、本件発明1と甲1発明とは、凹部及び凸部の素材がいずれも異なるところ、凹部と凸部の素材や硬さについて、本件発明1と同様の組合せとすることについては、甲2~9、13をみても記載や示唆は見当たらない。
よって、甲1発明において、上記相違点1-2に係る本件発明1の構成を得るようにすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
c 次に、上記相違点1-3について検討する。
甲1発明においては、突条部5,6,7の頂壁部10の少なくとも外表面部分は硬質合成樹脂である高密度ポリエチレンとされることにより、その少ない摩擦抵抗で、すでにホースの移動が滑らかで掃除機の使い勝手が良くされているところ、さらに、当該箇所の一部表面にシリコーンの潤滑剤を有するようにする動機づけを見出すことはできない。
そして、甲5及び6には、ホースの滑りを良くするためにシリコン系樹脂を用いたり、シリコン系などの滑剤を用いたりすることが示されているものの、凹凸のあるホースの凸部の頂部表面の一部についてのみシリコーンの潤滑剤を有するようにすることまでの記載や示唆があるとはいえない。
よって、甲1発明において、上記相違点1-3に係る本件発明1の構成を得るようにすることは、当業者が容易になし得ることとはいえない。
d そして、本件発明1は、上記相違点1-1~1-3に係る本件発明1の構成を備えることにより、「可撓性ホースは、可撓性ホースと床面等との摩擦が軽減される。このため、可撓性ホースの滑り性が向上する」(【0009】)という効果を奏するものである。
(ウ) 小括
よって、本件発明1は、甲1発明並びに甲2~9、13記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2及び3と甲1発明との対比、判断
上記第3に示したとおり、本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、 本件発明2及び3は、甲1発明とは、少なくとも本件発明1と甲1発明との上記相違点1-1~1-3と同じ点において相違するといえる。
そして、上記相違点1-1~1-3については、上記ウ(イ)に示したとおりであるから、本件発明2及び3についても、甲1発明並びに甲2~9、13記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ 小括
よって、本件発明1~3は、甲1発明並びに甲2~9、13記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
(1-2) 理由1-2(甲2発明に基く進歩性)について
ア 甲2記載事項
甲2(特開2002-5347号公報)には、以下の記載がある。
ア-1 「【請求項1】 所定の間隔を隔てて螺旋状に巻回されたウレタン系樹脂被覆鋼線(3)…と、その外周面上において薄膜状のウレタン系樹脂帯材(5a)が螺旋状に巻回され、その重合面間が融着または接着されて形成された管壁(5)とを備え、これらウレタン系樹脂被覆鋼線(3)とウレタン系樹脂管壁(5)とがウレタン系接着剤(6)によって接着され、該管壁形成ウレタン系樹脂帯材(5a)よりも硬度の高いウレタン系樹脂製の小幅帯(4a)が、管壁(5)における前記被覆鋼線(3)の外周面上を二重に覆うように螺旋巻きされ、該小幅帯(4a)が前記管壁(5)と融着一体化またはウレタン系接着剤(6)を介して接着一体化されている可撓性ホース。
【請求項2】 管壁(5)を形成するウレタン系樹脂帯材(5a)がJIS A形硬さ試験による硬度60~90度の範囲内の樹脂、小幅帯(4a)がJIS A形硬さ試験による硬度70~99度の範囲内の樹脂から選択された樹脂で形成されている請求項1に記載の可撓性ホース。」
ア-2 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合成樹脂製の可撓性ホースに関するものである。殊に、一般家庭用の電気掃除機用ホース(クリーナーホース)として使用するのに適した可撓性ホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の可撓性ホース、例えばクリーナーホースについてみると、硬鋼線をポリ塩化ビニール(PVC)樹脂で被覆させた被覆鋼線と撚り合わせ銅電線を同じくPVC樹脂によって絶縁被覆させた被覆電線とを引き揃えて所定の間隔を隔てて螺旋状に巻回させ、その外周面上に同じくPVC樹脂製の帯素材を螺旋状に巻回させて帯状素材相互の重合面を融着または接着させて管壁を形成するとともに、該管壁と前記被覆鋼線及び被覆電線との相互も融着または接着させてある構造のものであった。このように、補強線材を使用した従来のクリーナーホースにあっては、前記被覆線の被覆樹脂、被覆電線の被覆樹脂並びに管壁を形成する樹脂素材が何れもPVC樹脂で形成されているのが一般的であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このようなPVC樹脂を使用したホースにあっては、廃棄後の処分に当たって、通常ゴミのように焼却すると人体に有害なダイオキシンなどを発生し、この除去が大きな社会問題となっている。また、樹脂素材がPVCの場合は比重が大きく、ホースの保形のための硬鋼線と通電のための銅電線とを併用しているホースにあっては、ホース全体の重量が大きく、長時間使用すると疲労が大きく、コスト的にも最適のものとは言いえないという課題を有するものであった。」
ア-3 「【0006】そこで、本発明は、このような課題を解決することを目的とし、前記のようにPVC樹脂素材の使用を全面的に排し、非PVC樹脂素材を使用し、焼却してもダイオキシンの発生源にはならないホースでありながら、保形性に優れ、ホース全体の重量が軽量で、取り扱いが容易で長時間の使用にも疲労感を最小限にとどめることができる利点を有し、なおかつ、ベタツキ感が少なく耐摩耗性をも備えているホースを提供しようとするものである。」
ア-4 「【0009】また、管壁5を形成するウレタン系樹脂帯材5aは、硬度がJIS規格によるA形硬さ試験の硬度60~90度(以下JIS A硬度と表示する)の範囲内の樹脂を用い、小幅帯4aは硬度がJIS A硬度70~99度の範囲内のものであって、前記樹脂帯材5aよりも硬度の高いものを選択して使用する。」
ア-5 「【0012】これら4本の被覆鋼線3a,3b,3c,3dと先行巻回した隣接する被覆鋼線3dとで形成される一定間隔wの4幅分余りの幅、即ち被覆鋼線3…5本分余りの幅をもつ薄膜状で長尺の、JIS A硬度70度のウレタン系樹脂帯材5a(図3には、被覆鋼線3…の凹凸に合致する波形凹凸状に予め形付けしてある帯材として示してあるが平帯状のものでもよい)を、その側縁部が任意の特定した被覆鋼線3の外周面上において重なるように螺旋巻きし、その重なり合った側縁部どうしを融着させて管壁5を形成し、このとき、被覆鋼線3…の外周面上に例えばホットメルトとして一般に知られているウレタン系接着剤6を塗布し、ウレタン樹脂帯材5aを各被覆鋼線3…とも接着させる。
【0013】該実施例に示したウレタン樹脂帯材5aは、図3に示したように、管壁5の形成時に各被覆鋼線3…の外周面に位置する部分の外周面側に、該ウレタン系樹脂帯材5aの硬度よりも硬度が高いJIS A硬度90度のウレタン系樹脂製の4本の小幅帯4a…が、ウレタン系樹脂帯材5aと同じ樹脂押出しダイスから同時的一体的に押し出したものとしてある。したがって、ウレタン系樹脂帯材5aによる管壁5の形成と同時に、該管壁5における前記各被覆鋼線3…の外周面側に耐摩性線状部4…を備えた管壁5が得られる。」
ア-6 「【0026】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明にいう可撓性ホースは、硬鋼線を被覆する被覆樹脂素材、管壁を構成する樹脂素材、耐摩性強化のための線状部の樹脂素材、更には接着剤の何れをも、燃焼時にダイオキシンのような人体に有毒なガスを発生することのない非塩素系の特定の樹脂素材を使用するものであるから、廃棄後における焼却処分時に公害を発生することのない可撓性ホースを得ることができる。
【0027】本発明にいう可撓性ホースは、管壁における被覆鋼線を覆う外表面部分に、管壁を形成する樹脂素材よりも硬度の高い樹脂素材で形成した耐摩性線状部を備えているので、引きづり摩擦や接触引っ掻き抵抗を硬度の高い耐摩性線状部が引き受けるので、耐摩性に優れ、濫りに傷つくことなく、長期間の使用に耐え得る利点を有するのみならず、握り持った時に感ずる硬度の低いウレタン系樹脂素材が有するベタツキ感を減少させ得る利点をも併せもつ効果がある。
【0028】また、本発明にいう可撓性ホースは、従来から一般にホース素材として使用されているPVC樹脂の場合は、比重が1.2~1.3であるのに比し、本発明において使用するウレタン系樹脂の場合は、比重が平均1.1~1.2であるから、使用する管壁形成素材の体積を同じとした場合には、PVC樹脂ホースに比して、単純計算で管壁の重量が、10%以上軽量化できることとなり、ウレタン系樹脂の場合は、滑り摩耗や引掻き耐性が優れ、引張りや引裂き力に対する機械的強度に優れ、耐候性にも優れた特性を備えているので、PVC樹脂ホースに比し管壁の平均肉厚の薄肉化を図り得るので、更なるホース重量の軽量化が可能となり、使用時の疲れを軽減させることができる利点がある。」
イ 甲2発明
甲2記載事項ア-1~ア-6を踏まえると、甲2には、次の甲2発明が記載されている。
「 所定の間隔を隔てて螺旋状に巻回されたウレタン系樹脂被覆鋼線(3)と、その外周面上において薄膜状のウレタン系樹脂帯材(5a)が螺旋状に巻回され、その重合面間が融着または接着されて形成された管壁(5)とを備え、これらウレタン系樹脂被覆鋼線(3)とウレタン系樹脂管壁(5)とがウレタン系接着剤(6)によって接着され、該管壁形成ウレタン系樹脂帯材(5a)よりも硬度の高いウレタン系樹脂製の小幅帯(4a)が、管壁(5)における前記被覆鋼線(3)の外周面上を二重に覆うように螺旋巻きされ、該小幅帯(4a)が前記管壁(5)と融着一体化またはウレタン系接着剤(6)を介して接着一体化されている可撓性ホースであって、
管壁(5)を形成するウレタン系樹脂帯材(5a)がJIS A形硬さ試験による硬度70度の樹脂、小幅帯(4a)がJIS A形硬さ試験による硬度90度の樹脂で形成されている、
可撓性ホース。」
ウ 本件発明1と甲2発明との対比、判断
(ア) 本件発明1と甲2発明との対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、両者は少なくとも次の点において相違する。
[相違点2-1]
可撓性ホースの素材について、本件発明1は、可撓性ホースの凹部は軟質塩化ビニル樹脂であって、可撓性ホースの凸部は軟質塩化ビニル樹脂又は高摺動ポリエチレン樹脂であるのに対して、甲2発明は、可撓性ホースの管壁(5)を形成する帯材(5a)及び小幅帯(4a)はウレタン系樹脂である点。
(イ) 上記相違点2-1についての検討
甲2発明が解決しようとする課題は、「PVC樹脂素材の使用を全面的に排し、非PVC樹脂素材を使用し、焼却してもダイオキシンの発生源にはならないホースでありながら、保形性に優れ、ホース全体の重量が軽量で、取り扱いが容易で長時間の使用にも疲労感を最小限にとどめることができる利点を有し、なおかつ、ベタツキ感が少なく耐摩耗性をも備えているホースを提供しようとするものである」(上記記載事項ア-3)。
一方、本件発明1は、少なくとも、「可撓性ホース」の「凹部」に「軟質塩化ビニル樹脂」を用いることを発明特定事項とするものである。
そうすると、甲2発明において、可撓性ホースの一部に軟質塩化ビニル樹脂を用いることは、甲2発明の上記課題解決に反することであるから、甲2に接した当業者にとってそのようにする動機づけはないし、発明の課題を解決しないものとなる軟質塩化ビニル樹脂を用いることには、阻害要因があるといえる。
よって、甲2発明において上記相違点2-1に係る本件発明1の構成を得ることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
そして、本件発明1は、その構成により、「可撓性ホースは、可撓性ホースと床面等との摩擦が軽減される。このため、可撓性ホースの滑り性が向上する」(【0009】)という効果を奏するものである。
よって、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明2及び3と甲2発明との対比、判断
上記第3に示したとおり、本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから、 本件発明2及び3は、甲2発明とは、少なくとも本件発明1と甲2発明との上記相違点2-1と同じ点において相違するといえる。
そして、上記相違点2-1については、上記ウ(イ)に示したとおりであるから、本件発明2及び3についても、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
オ 小括
よって、本件発明1~3は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。
(1-3) 理由1のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
(2) 理由2について
上記第2に示したとおり本件訂正が認められることにより、本件発明1~3は、「潤滑剤」が「炭酸カルシウム」であることを含まないものとされた。
そして、上記理由2は、本件発明1~3の「潤滑剤」が「炭酸カルシウム」であることを前提とした理由であるところ、本件訂正によりその前提がなくなったため、理由のないものとなった。
よって、理由2によって、本件特許の請求項1~3の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、その特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1~3に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-700353