特許異議申立
2017-700336
被覆切削工具
- 審判番号
- 2017-700336
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-541729
- 登録番号
- 特許第6004366号(P6004366)
- 請求日
- 2017年04月05日
- 審決日
- 2017年06月16日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社タンガロイ
- 【権利者代理人】稲葉 良幸
- 【権利者代理人】大貫 敏史
- 【権利者代理人】江口 昭彦
- 【権利者代理人】内藤 和彦
- 【異議申立人】松尾 三佐子
- 審判長/審判官
- 審判長 刈間 宏信
- 審判官 平岩 正一
- 審判官 柏原 郁昭
- 分類
- P1651.121-Y (B23B)
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6004366号発明「被覆切削工具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6004366号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
特許第6004366号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)4月25日(優先権主張2015年4月27日、日本国)を国際出願日として出願され、平成28年9月16日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人松尾三佐子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
2 本件発明
特許第6004366号の請求項1ないし7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるとおりのものである。
3 申立理由の概要
申立人は、主たる証拠として甲第1号証及び従たる証拠として甲第2ないし11号証を提出し、請求項1ないし7に係る特許は同法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1ないし7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
甲各号証は次のとおりである。
甲第1号証:中国特許出願公開第104441814号明細書
甲第2号証:特開2015-66644号公報
甲第3号証:特開2012-152852号公報
甲第4号証:特開2013-252607号公報
甲第5号証:特開2010-94744号公報
甲第6号証:特開2015-58526号公報
甲第7号証:特開2009-125914号公報
甲第8号証:特開2013-94883号公報
甲第9号証:特開2015-37834号公報
甲第10号証:特開2010-240812号公報
甲第11号証:特開2009-255206号公報
4 刊行物の記載
申立人が、請求項1に係る特許に対する証拠として提出したのは、甲第1ないし8号証であり、それらの記載は以下のとおりである。
(1)甲第1号証には、次の発明が記載されている。
「多層被覆切削工具であって、
AlbTi1-bN層と、Ti1-aAlaN層とを有し、
bは、0.60≦b≦0.75、好ましくは0.67≦b≦0.75、実施例5ではb=0.75、実施例8ではb=0.66であり、
aは、0.4≦a≦0.67、好ましくは0.5≦a≦0.67、実施例5ではa=0.55、実施例8ではa=0.50であり、
各層の厚さが、2nm~20nmであり、
交互に積層された層の全体の厚さは、実施例5では、全体の厚さ8.4μmから下地層の厚さを除いた8.0μm、実施例8では、全体の厚さ3.2μmから下地層の厚さを除いた2.7μmである切削工具」
(2)甲第2号証には、薄層Aと薄層BのAl組成の差が2原子%~4原子%であるという技術的事項が記載されている。
(3)甲第3号証には、A層とB層のSi組成の差が5原子%以下であるという技術的事項が記載されている。
(4)甲第4号証には、窒化物層であるTiAlNとTiAlHfNにおけるTi元素量の差の絶対値は3原子%であるという技術的事項が記載されている。
(5)甲第5号証には、CrとAlの複合窒化物からなる硬質被覆層という技術的事項が記載されている。
(6)甲第6号証には、窒化物層であるTiAlNとTiAlSiNにおけるTi元素量の差の絶対値は1原子%であるという技術的事項が記載されている。
(7)甲第7号証には、試料No1、2、4、9において、Ti量の差が2原子%~4原子%であるという技術的事項が記載されている。
(8)甲第8号証には、基体の表面に、MC1-xNx(ただし、Mは周期表4、5、6族元素、希土類元素、AlおよびSiから選ばれる1種以上、0.5≦x≦1)からなるとともに立方晶結晶構造を持つA層とB層の2種が交互積層した積層構造という技術的事項が記載されている。
5.判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明におけるbは、請求項1に係る発明のxに相当し、bは0.60≦b≦0.75であるから、xの0.58≦x≦0.80の範囲に全て含まれ、差異はない。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明におけるaは、請求項1に係る発明のyに対応し、aは0.5≦a≦0.67であるところ、yは0.57≦y≦0.79であり、一部重複するものの、同一とは言えない(相違点1)。
また、請求項1に係る発明においては、「前記交互積層構造を構成する化合物層に含まれる全金属元素の量に対する特定の金属元素の量と、当該化合物層に隣接した前記交互積層構造を構成する他の化合物層に含まれる全金属元素の量に対する前記特定の金属元素の量と、の差の絶対値が、0原子%を超えて大きく、かつ、5原子%未満」であることが特定されているが、甲第1号証に記載された発明においては、このような特定がなされていない(相違点2)。
まず、相違点2について検討する。
甲第1号証に記載された発明では隣接した層のAl含有量の差が、実施例5では20原子%、実施例8では16原子%であり、他の実施例を参照しても5原子%未満のものは存在しない。さらに、甲第1号証には好ましい例として、aとbが重複しない、0.67≦b≦0.75、0.5≦a≦0.67が示されていることからも、aとbの差を小さくするという発想が示されているとは言えず、むしろaとbの差を小さくするには阻害要因が存在すると当業者であれば認識するものと認められる。
そうすると、他の甲号証にaとbとの差を小さくした技術的事項が示されているからといって、甲第1号証に記載された発明において、実施例とは異ならせて、aとbとの差を小さくした発明を実施してみようする動機付けがあったものとは認めることができない。
また、申立人は、甲第1号証に記載された発明において、実施例として例示されていない数値で実施することの動機付けとして、甲第2ないし8号証が周知であること以上の主張はしておらず、申立人の主張する周知技術にどのような技術的意義があるのかについても何ら説明していないから、甲第1号証に記載された発明に申立人の主張する周知技術を適用する理由をみいだすことはできない。
したがって、相違点2は実質的な相違点である。
よって、相違点1について検討するまでもなく請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし8号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
(2)請求項2ないし7に係る発明について
請求項2ないし7に係る発明は、請求項1に係る発明を更に減縮したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし11号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、請求項1ないし7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし11号証に記載された技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6.むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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