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特許異議申立

2017-700332

メソ孔の多い粒状活性炭およびその製造方法、並びに粒状やし殻活性炭およびその製造方法

審判番号
2017-700332
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-501433外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年04月04日
審決日
2017年12月19日
公報発行日
2018年03月30日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(C01B) / P1651.121-YAA(C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6033396号発明「メソ孔の多い粒状活性炭およびその製造方法、並びに粒状やし殻活性炭およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6033396号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正することを認める。 特許第6033396号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1.手続の経緯 特許第6033396号は、平成26年2月14日(優先権主張 平成25年2月20日 日本)を国際出願日とする特願2015-501433号について、平成28年11月4日に設定登録がされ、その後、その請求項1~4に係る特許に対し、特許異議申立人 谷口 真魚により特許異議の申立てがなされ、平成29年8月17日付けで本件特許の請求項1,2,4に係る特許に対する取消理由が通知され、平成29年10月20日付けで特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がなされ、平成29年11月30日付けで特許異議申立人より意見書の提出がなされたものである。 第2.訂正の請求 1.訂正の内容 平成29年10月20日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次の訂正事項1~5よりなる。 (ア)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「下記(1)~(3)の要件を備えた、粒状活性炭;(1)強熱残分が2質量分率%以下、(2)硬さが60質量分率%以上、および(3)メソ孔容積が0.5mL/g以上である。」とあるのを「下記(1)~(3)の要件を備えた、粒状やし殻活性炭;(1)強熱残分が2質量分率%以下、(2)硬さが60質量分率%以上、および(3)直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上である。」に訂正する。 (イ)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「下記(A)~(C)の工程を含む、請求項1に記載の粒状活性炭の製造方法;(A)賦活処理された活性炭とカルシウム成分とを接触させる工程、(B)工程(A)で得られた活性炭に、賦活処理を行う工程、および(C)工程(B)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程。」とあるのを「下記(A)~(C)の工程 (A)賦活処理された活性炭とカルシウム成分とを接触させる工程、(B)工程(A)で得られた活性炭に、賦活処理を行う工程、および(C)工程(B)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程、を含み、活性炭原料がやし殻であり、前記カルシウム成分が塩化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記接触により得られた活性炭に占めるカルシウム成分の含有量がカルシウム換算で0.5~2wt%である、請求項1に記載の粒状やし殻活性炭の製造方法。」に訂正する。 (ウ)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「下記(A)~(D)の工程を含む、請求項1に記載の粒状活性炭の製造方法;(A)活性炭原料に、炭化処理を施した後、粉砕する工程、(B)工程(A)で得られた活性炭と、カルシウム成分とを混合し、成型する工程、(C)工程(B)で得られた活性炭に、炭化処理および賦活処理を行う工程、(D)工程(C)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程。」とあるのを「下記(A)~(D)の工程 (A)活性炭原料に、炭化処理を施した後、粉砕する工程、(B)工程(A)で得られた活性炭と、カルシウム成分とを混合し、成型する工程、(C)工程(B)で得られた活性炭に、炭化処理および賦活処理を行う工程、(D)工程(C)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程を含む粒状活性炭の製造方法であり、前記粒状活性炭が下記(1)~(3)の要件(1)強熱残分が2質量分率%以下、(2)硬さが60質量分率%以上、および(3)メソ孔容積が0.5mL/g以上である、を備える、粒状活性炭の製造方法。」に訂正する。 (エ)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に「請求項2又は3に記載の」とあるのを、「請求項3に記載の」に訂正する。 (オ)訂正事項5 訂正前の明細書の【発明の名称】に記載された「メソ孔の多い粒状活性炭およびその製造方法」との記載を、「メソ孔の多い粒状活性炭およびその製造方法、並びに粒状やし殻活性炭およびその製造方法」に訂正する。 2.訂正の適否 (ア)訂正事項1について 訂正事項1は、請求項1において、「粒状活性炭」が「やし殻」を原料由来とするものであることを特定し限定するものであるとともに、請求項1において、「メソ孔容積」における「メソ孔」が「直径2~30nm」であることを特定し、限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該訂正事項1において限定した事項は、願書に添付した明細書の段落【0027】、【0038】等の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、当該訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (イ)訂正事項2について 訂正事項2は、請求項2において訂正前に特定されていない「活性炭原料」、「カルシウム成分の種類」及び「接触により得られた活性炭に占めるカルシウム成分の含有量」について、「粒状活性炭」が「やし殻」であり、「カルシウム成分」が「塩化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種」であり、「接触により得られた活性炭に占めるカルシウム成分の含有量」が「カルシウム換算で0.5~2wt%」であることを特定し、限定するものである。 そして、訂正後の請求項2は、訂正後の請求項1の記載を引用することにより、訂正後の請求項2に係る発明をより具体的に特定し、さらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該訂正事項2において限定した事項は、願書に添付した明細書の段落【0038】、【0046】~【0048】等の記載に基づくものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、当該訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (ウ)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。 また、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (エ)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項4が請求項2又は3を引用する形式であったところ、請求項2を引用しないものとするための訂正であるから、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (オ)訂正事項5について 訂正事項5は、訂正後の特許請求の範囲の記載に整合させるべく、発明の名称を訂正したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに相当する。 また、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3.一群の請求項について 訂正前の請求項1~4について、請求項2~3はそれぞれ請求項1を引用し、請求項4は請求項2又は3を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1~4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 ただし、訂正後の請求項3,4は、引用関係の解消を目的とする訂正であって、請求項1,2とは別途訂正することを求めるものである。 そして、訂正事項5に係る明細書の訂正は、これら一群の請求項の全てについて請求するものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第4項及び第9項の規定によって準用する第126条第4項乃至第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3、4〕について訂正を認める。 第3.本件発明 上記「第2.」のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下、請求項の項番にしたがって、「本件発明1」などといい、全体をまとめて「本件発明」という。)は、平成29年10月20日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のものであると認められる。 「【請求項1】 下記(1)~(3)の要件を備えた、粒状やし殻活性炭; (1)強熱残分が2質量分率%以下、 (2)硬さが60質量分率%以上、および (3)直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上である。 【請求項2】 下記(A)~(C)の工程、 (A)賦活処理された活性炭とカルシウム成分とを接触させる工程、 (B)工程(A)で得られた活性炭に、賦活処理を行う工程、および (C)工程(B)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程、 を含み、 活性炭原料がやし殻であり、 前記カルシウム成分が塩化カルシウム及び水酸化カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、 前記接触により得られた活性炭に占めるカルシウム成分の含有量がカルシウム換算で0.5~2wt%である、請求項1に記載の粒状やし殻活性炭の製造方法。 【請求項3】 下記(A)~(D)の工程、 (A)活性炭原料に、炭化処理を施した後、粉砕する工程、 (B)工程(A)で得られた活性炭と、カルシウム成分とを混合し、成型する工程、 (C)工程(B)で得られた活性炭に、炭化処理および賦活処理を行う工程、 (D)工程(C)で得られた活性炭を鉱酸で洗浄する工程 を含む粒状活性炭の製造方法であり、 前記粒状活性炭が下記(1)~(3)の要件 (1)強熱残分が2質量分率%以下、 (2)硬さが60質量分率%以上、および (3)メソ孔容積が0.5mL/g以上である、 を備える、粒状活性炭の製造方法。 【請求項4】 活性炭原料がやし殻である、請求項3に記載の製造方法。」 第4.取消理由についての当審の判断 1.取消理由の概要 特許異議申立人は、証拠として下記甲第1~5号証(以下、「甲1」、「甲2」等という。)を提出し、本件訂正前の請求項1~4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである旨、主張している。 これに対し、当審にて本件訂正前の請求項1~4に係る特許に対して平成29年8月17日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1)本件訂正前の請求項1,2,4に係る発明は、本件特許の出願前に発行された下記甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 2)本件訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に発行された下記甲3に記載された発明及び甲3~5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 甲1:特表2012-520230号公報 甲2:特開平9-187648号公報 甲3:特表2010-520806号公報 甲4:ASTM International, Designation:D2866-11,”Standard Test Method for Total Ash Content of Activated Carbon” 甲5:株式会社クレハ BAC 球状活性炭バック パンフレット 2.甲1,3の記載事項及び甲1,3発明 (1)甲1の記載事項 甲1には、以下の記載事項がある。 (ア)「【0004】多孔性炭素材の孔径の分布もまたその吸着特性に影響を与える。当業者に使用される命名法では吸着材の孔の大きさが直径で2nm(<2x10-9m)未満の場合、その孔はミクロ孔と呼ばれ、2~50nmの場合、「メソ孔」と呼ばれている。」 (イ)「【0020】ガスの流速および温度は、粒状炭素に所望のメソ孔性を付与するために選択される。炭素が賦活される時間もまた得られる炭素の特性おおびその吸着性に影響を与える。炭素が受ける賦活の時間の影響を下記実施例2に例示する。好ましい実施態様では賦活は、1~10時間、より好ましくは3~7時間行われる。賦活の時間が長くなるほど、より多くのメソ孔が形成される。しかしながら10時間を超える賦活は、得られる粒状炭素の構造的一体性が失われ、粉になってしまう。これは明らかに望ましくなく、従って本発明の実施態様では賦活工程は、10時間を超えず、好ましくは9時間を超えない範囲で行われる。」 (ウ)「【0045】実施例2 10gの粒状ヤシ炭素を真空中383Kで2時間予備処理した。それから1gの予備処理された炭素に2MのCa(NO3)2の溶液10mlを含浸させた。この混合物を12時間振動させ、その後ろ過し、乾燥させた。 【0046】 得られた炭素のサンプル500mgをアルゴンおよび水蒸気下、1123Kで100ml/分のアルゴン流で賦活した。サンプルを1、3、5、7および10時間賦活した。賦活されたサンプルを1M塩酸溶液50mlに2時間、浸した。最後にサンプルを脱イオン水で洗浄し、ろ過および乾燥させた。 【図面の簡単な説明】 【0047】 得られた炭素の図1に示した窒素吸着等温線は、賦活が行われた時間の長さと共に得られた炭素のメソ孔が増えていることを示している。予備処理された炭素を10時間賦活した後の炭素は、簡単に粉末状になり、これは炭素が不安定であることを示唆している。 【0048】 賦活時間の長さを変えた後の炭素のミクロ孔とメソ孔の変化を図2に示す。グラフに示した孔容積は、αs-プロットによって測定した。この分析は、非孔性の化学的に類似の参照材を必要とし、不規則なカーボンブラック(404B)を使用した。 【0049】 活性炭の構造的特徴を表2に示す。 【0050】 」 (2)甲3の記載事項 甲3には、以下の記載事項がある。 (エ)「【0004】製造された活性炭の構造-微細に又は粗い多孔状の、堅い、もろい、等-は、開始材料に依存する。」 (オ)「【0064】ASTM D2866-94/04で測定された本願発明の高性能吸着剤の灰含有量は、約1%であり、特に約0.8%であり、特に約0.6%であり、より好ましくは約0.5%である。」 (カ)「【0081】表1に示される本願発明の高性能吸着剤「活性炭I」と「活性炭II」は、それぞれ下記のように製造される。約4%のジビニルベンゼン含有量を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づく商品として販売されている乾燥イオン交換前駆体を、硫酸/発煙硫酸混合物を使用して100℃~150℃の温度で通常の方法においてスルホン化する。」 (キ)「 」 (ク)「 」 (3)甲1発明の認定 記載事項(ア)及び(ウ)の実施例2における活性化時間が5時間及び7時間の例によれば、甲1には、直径2~50nmのメソ孔容積が0.5cm3/g以上である賦活された粒状ヤシ炭素が記載されている。 したがって、甲1には、 「直径2~50nmのメソ孔容積が0.5cm3/g以上である賦活された粒状ヤシ炭素」(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 (4)甲3発明の認定 記載事項(カ)、(キ)によれば、甲3には、「ジビニルベンゼン含有量を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づく商品として販売されている乾燥イオン交換前駆体」を原料とする球状活性炭IIが記載されている。 記載事項(オ)、(ク)によれば、球状活性炭IIは、ASTM D2866-94/04で測定された灰含有量は、約1%であり、磨耗栄光(当審注:抵抗の誤記と認められる)が90.04%であることが記載されている。 したがって、甲3には、 「ASTM D2866-94/04で測定された灰含有量は、約1%であり、磨耗抵抗が90.04%であるジビニルベンゼン含有量を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づいた乾燥イオン交換前駆体を原料とする球状活性炭。」(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 3.本件発明1と甲1発明との対比・判断 (1)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「賦活された粒状ヤシ炭素」は、本件発明1の「粒状やし殻活性炭」に相当する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、「粒状やし殻活性炭」である点で一致し、下記(相違点1)、(相違点2)、(相違点3)で相違する。 (相違点1) 本件発明1では、「粒状やし殻活性炭」が「強熱残分が2質量分率%以下」であるのに対し、甲1発明では、「賦活された粒状ヤシ炭素」の強熱残分が明らかでない点。 (相違点2) 本件発明1では、「粒状やし殻活性炭」が「硬さが60質量分率%以上」であるのに対し、甲1発明では、「賦活された粒状ヤシ炭素」の硬さが明らかでない点。 (相違点3) 本件発明1では、「粒状やし殻活性炭」が「直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上である」であるのに対し、甲1発明では、「賦活された粒状ヤシ炭素」の直径2~50nmのメソ孔容積が0.5cm3/g以上であるものの、直径2~30nmのメソ孔容積が明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、(相違点3)について検討する。 申立人が意見書において述べているように、甲1発明の活性化時間が5時間及び7時間の粒状ヤシ炭素の直径2~30nmのメソ孔容積は、0.5cm3/gを下回るものである。 したがって、(相違点3)は実質的なものといえるから、(相違点1)及び(相違点2)について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人は、意見書において、賦活時間を9時間としたものを甲1発明とする場合は、粒状ヤシ炭素の直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上であり、硬さが60質量分率%以上である粒状ヤシ炭素が得られることから、本件発明1は甲1に記載された発明である旨主張している。 上記主張についても検討する。 甲1の記載事項(イ)によれば、「10時間を超える賦活は、得られる粒状炭素の構造的一体性が失われ、粉になってしまう。これは明らかに望ましくなく、従って本発明の実施態様では賦活工程は、10時間を超えず、好ましくは9時間を超えない範囲で行われる。」ことが記載されており、長時間の賦活によって、粒状炭素の構造的一体性が失われ、粉になること、すなわち、長時間の賦活によって、粒状炭素の硬さが失われることが示唆されているといえる。 したがって、申立人が主張するように、賦活時間を9時間とした場合、粒状ヤシ炭素の直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上であったとしても、硬さが60質量分率%以上にならないと認められる。 よって、上記主張は採用することができない。 4.本件発明2について 本件発明2は、本件発明1を引用し、本件発明1をさらに限定する発明であるから、本件発明2は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 5.本件発明1と甲3発明との対比・判断 (1)対比 本件発明1と甲3発明とを対比する。 甲3発明の「球状」は、本件発明1の「粒状」に相当する。 したがって、本件発明1と甲3発明とは、「粒状活性炭」である点で一致し、下記(相違点1)、(相違点2)、(相違点3)、(相違点4)で相違する。 (相違点1) 本件発明1では、粒状活性炭が「やし殻」を原料とするものであるのに対し、甲3発明では、球状活性炭が「ジビニルベンゼン含有量を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づ」いた「乾燥イオン交換前駆体」を原料とするものである点。 (相違点2) 本件発明1では、粒状活性炭が「強熱残分が2質量分率%以下」であるのに対し、甲3発明では、球状活性炭の「ASTM D2866-94/04で測定された灰含有量」が「約1%」である点。 (相違点3) 本件発明1では、粒状活性炭が「硬さが60質量分率%以上」であるのに対し、甲3発明では、球状活性炭の「磨耗抵抗」が「90.04%である」点。 (相違点4) 本件発明1では、粒状活性炭が「直径2~30nmのメソ孔容積が0.5mL/g以上である」であるのに対し、甲3発明では、球状活性炭の直径2~30nmのメソ孔容積が明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑み、(相違点1)について検討する。 甲3発明の球状活性炭は、「ジビニルベンゼン含有量を有するジビニルベンゼン架橋ポリスチレンコポリマーに基づ」いた「乾燥イオン交換前駆体」を原料とするものであって、甲3発明の球状活性炭の原料をやし殻とすることには動機付けがない。 また、甲3の記載事項(エ)によれば、「製造された活性炭の構造-微細に又は粗い多孔状の、堅い、もろい、等-は、開始材料に依存する。」ことから、甲3発明の原料をやし殻に変更した場合にまで、甲3発明と同様の物性を有する活性炭が得られるものとは認められない。 さらに、甲4,5にも、甲3発明の原料をやし殻に変更することや、甲3発明と同様の物性を有する活性炭が得られることについて、記載や示唆はない。 したがって、申立人が主張するように、甲3発明の球状活性炭が、本件発明1で特定する強熱残分、硬さ及び直径2~30nmのメソ孔容積を満たしていたとしても、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3~5の記載事項に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。 よって、(相違点2)、(相違点3)、(相違点4)について判断するまでもなく、本件発明1は、甲3に記載された発明及び甲3~5の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5.取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、「第4」で検討した取消理由1)、2)に加え、下記申立理由2(1)により、本件特許の請求項3,4に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により、取り消すべきものである旨、主張しているので、以下検討する。 申立理由2(1)本件特許の請求項1-4に係る発明は、本件特許の出願前に発行された甲1に記載された発明および甲2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。 1.甲1発明Aの認定 記載事項(ウ)によれば、甲1には、真空中383Kで2時間予備処理された粒状ヤシ炭素に2MのCa(NO3)2の溶液10mlを含浸させ、この混合物を12時間振動させ、その後ろ過し、乾燥させ、得られた炭素のサンプル500mgをアルゴンおよび水蒸気下、1123Kで100ml/分のアルゴン流で5時間または7時間賦活し、賦活されたサンプルを1M塩酸溶液50mlに2時間浸したことが記載されている。 また、記載事項(ウ)によれば、5時間または7時間賦活した粒状ヤシ炭素のメソ孔容積は、0.5cm3/g以上であることが記載されている。 したがって、甲1には、 「真空中383Kで予備処理された粒状ヤシ炭素に、Ca(NO3)2の溶液を含浸させ、混合物を振動させ、その後ろ過し、乾燥させ、得られた炭素のサンプルをアルゴンおよび水蒸気下、1123Kでアルゴン流で5時間または7時間賦活し、賦活されたサンプルを塩酸溶液に浸した賦活されたメソ孔容積が0.5cm3/g以上である粒状ヤシ炭素の製造方法」(以下「甲1発明A」という。)が記載されていると認められる。 2.本件発明3と甲1発明Aとの対比・判断 (1)対比 本件発明3と甲1発明Aとを対比する。 甲1発明Aの「賦活された粒状ヤシ炭素」、「Ca(NO3)2の溶液を含浸させ」、「アルゴンおよび水蒸気下、1123Kでアルゴン流で5時間または7時間賦活し」、「賦活されたサンプルを塩酸溶液に浸した」、「cm3/g」は、本件発明3の「粒状活性炭」、「カルシウム成分とを混合し」、「炭化処理および賦活処理を行う」、「得られた活性炭を鉱酸で洗浄する」、「mL/g」に相当する。 したがって、本件発明3と甲1発明Aとは、「活性炭と、カルシウム成分とを混合し、 得られた活性炭に、炭化処理および賦活処理を行い、得られた活性炭を鉱酸で洗浄する粒状活性炭の製造方法であり、粒状活性炭がメソ孔容積が0.5mL/g以上である粒状活性炭の製造方法。」である点で一致し、下記(相違点1)、(相違点2)、(相違点3)で相違する。 (相違点1) 本件発明3では、「活性炭原料に、炭化処理を施した後、粉砕する工程」を有するのに対し、甲1発明Aでは、上記工程を有するかどうかが明らかでない点。 (相違点2) 本件発明3では、「活性炭と、カルシウム成分とを混合し、成型する工程」を有するのに対し、甲1発明Aでは、粒状ヤシ炭素に、Ca(NO3)2の溶液を含浸させた後、成型していない点。 (相違点3) 本件発明3では、「粒状やし殻活性炭」が「強熱残分が2質量分率%以下、硬さが60質量分率%以上」であるのに対し、甲1発明Aでは、強熱残分及び硬さが明らかでない点。 (2)判断 事案に鑑みて、(相違点2)について検討する。 甲1発明Aは、粒状の炭素を得るものを課題とするものであるから、甲1発明Aにおいて、粒状ヤシ炭素にCa(NO3)2の溶液を含浸させた後、成型を行うことには動機付けがない。 さらに、甲2にも、粒状ヤシ炭素にCa(NO3)2の溶液を含浸させた後、成型を行うことに関する記載や示唆はない。 よって、(相違点1)、(相違点3)について判断するまでもなく、本件発明3は、甲1に記載された発明及び甲2の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.本件発明4について 本件発明4は、本件発明3を引用し、本件発明3をさらに限定する発明であるから、甲1に記載された発明及び甲2の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700332

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