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特許異議申立

2017-700329

希土類添加ダブルクラッドファイバ

審判番号
2017-700329
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2012-129112
登録番号
特許第6002453号(P6002453)
請求日
2017年04月04日
審決日
2018年03月22日
公報発行日
2018年06月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三菱電線工業株式会社
  • 【権利者代理人】特許業務法人前田特許事務所
  • 【異議申立人】一條 淳
審判長/審判官
  • 審判長 森 竜介
  • 審判官 星野 浩一
  • 審判官 近藤 幸浩
分類
P1651.121-YAA(H01S) / P1651.536-YAA(H01S) / P1651.537-YAA(H01S) / P1651.841-YAA(H01S)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6002453号発明「希土類添加ダブルクラッドファイバ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6002453号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3]について訂正することを認める。 特許第6002453号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6002453号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成24年6月6日の出願であって、平成28年9月9日にその特許権の設定登録がされ、同年10月5日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成29年4月4日に特許異議申立人一條淳により特許異議の申立てがされたものである。 以後の手続の経緯は、以下のとおりである。 平成29年 6月 7日:一回目の取消理由通知(6月12日発送) 同年 7月28日:訂正請求書・意見書 同年 8月14日:通知書(8月16日発送) 同年 9月14日:意見書(特許異議申立人) 同年10月 4日:二回目の取消理由通知(10月10日発送) 同年12月 5日:訂正請求書・意見書 同年12月25日:通知書(平成30年1月4日発送) 平成30年 2月 2日:意見書(特許異議申立人) 第2 訂正の適否 1 訂正の趣旨及び訂正の内容 平成29年12月5日付けの訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、本件訂正請求書による訂正を、以下「本件訂正」という。)は、特許第6002453号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-3]について訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである(なお、下線は、当審で付した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「上記一部領域は、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.55倍以上2.1倍以下である」と記載されているのを、 「上記一部領域は、上記コアの直径の40%以上70%以下であって、かつ、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下である」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許明細書の段落[0014]に記載された「上記一部領域は、上記コア中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.11倍以上2.1倍以下である。」を、 「上記一部領域は、上記コアの直径の40%以上70%以下であって、かつ、上記コア中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下である。」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許明細書の段落[0016]に記載された「Yb添加領域がコア中心から第1クラッドに向かってコアのLP01モード(基本モード)径の0.55倍よりも小さいと、Yb吸収係数を高めるためにYb添加濃度を高くする必要があり、Ybイオンのクラスタ化によってフォトダークニング耐性が低下する傾向になり、2.1よりも大きいと、低励起状態で高次モードの反転分布が低く、過飽和吸収体になるために自己パルスが起こる。しかし、本発明では、0.55倍以上2.1倍以下であるので、フォトダークニング耐性が高く、且つ、自己パルスが起こらないファイバが得られる。」を、 「Yb添加領域がコア中心から第1クラッドに向かってコアのLP01モード(基本モード)径の0.55倍よりも小さいと、Yb吸収係数を高めるためにYb添加濃度を高くする必要があり、Ybイオンのクラスタ化によってフォトダークニング耐性が低下する傾向になり、1.8よりも大きいと、低励起状態で高次モードの反転分布が低く、過飽和吸収体になるために自己パルスが起こる。しかし、本発明では、0.55倍以上1.8倍以下であるので、フォトダークニング耐性が高く、且つ、自己パルスが起こらないファイバが得られる。」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許明細書の段落[0021]に記載された「このYb添加領域をコア中心から第1クラッドに向かってコアのLP01モード径の0.55倍以上2.1倍以下としたことにより、希土類添加ダブルクラッドファイバを高い変換効率及び高い信頼性を持つものとすることができる。」を、 「このYb添加領域をコアの直径の40%以上70%以下であって、かつ、コア中心から第1クラッドに向かってコアのLP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下としたことにより、希土類添加ダブルクラッドファイバを高い変換効率及び高い信頼性を持つものとすることができる。」に訂正する。 (5)訂正事項5 特許明細書の段落[0025]に記載された「Yb添加領域は、コア2の中心から第1クラッド3に向かって、コア2のLP01モード(基本モード)径の0.55倍以上2.1倍以下である。」を、 「Yb添加領域は、コア2の中心から第1クラッド3に向かって、コア2のLP01モード(基本モード)径の0.55倍以上1.8倍以下である。」に訂正する。 2 訂正の適否 (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項 ア 訂正事項1 (ア)訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「一部領域」について、「コアの直径の40%以上70%以下」との限定を付すとともに、「2.1倍以下」を「1.8倍以下」に訂正するものである。 (イ)願書に添付した明細書及び図面には、以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0014】 上記の目的を達成するために、第1の発明では、 Ybが添加されたコアと、 上記コアを囲む第1クラッドと、 上記第1クラッドを囲む第2クラッドとを有する希土類添加ダブルクラッドファイバを対象とし、 上記希土類添加ダブルクラッドファイバでは、 上記コアの開口数は、0.06以上0.15以下であり、 上記コアの直径は、20μm以上100μm以下であり、 上記Ybは、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって一部領域でのみ添加され、 上記一部領域は、上記コア中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.11倍以上2.1倍以下である。 【0015】 ここで、コアの開口数NAが0.06よりも小さくなると光の閉じ込めが弱く光変換効率が低下するためにコアNAを0.06以上に上げる必要があり、0.15よりも大きくなると、ビーム品質が低下する。しかし、NAを0.06以上0.15以下にすることで、閉じ込めが強く且つ高いビーム品質の実現が可能である。 【0016】 …Yb添加領域がコア中心から第1クラッドに向かってコアのLP01モード(基本モード)径の0.55倍よりも小さいと、Yb吸収係数を高めるためにYb添加濃度を高くする必要があり、Ybイオンのクラスタ化によってフォトダークニング耐性が低下する傾向になり、2.1よりも大きいと、低励起状態で高次モードの反転分布が低く、過飽和吸収体になるために自己パルスが起こる。しかし、本発明では、0.55倍以上2.1倍以下であるので、フォトダークニング耐性が高く、且つ、自己パルスが起こらないファイバが得られる。このように、希土類元素であるYbをコア中心の一部領域のみに添加することにより、低励起状態でも擬似連続発振を起こすような反転分布状態を作り、自己パルス発生が抑制される。」 「【発明の効果】 【0021】 ……このYb添加領域をコア中心から第1クラッドに向かってコアのLP 01モード径の0.55倍以上2.1倍以下としたことにより、希土類添加ダブルクラッドファイバを高い変換効率及び高い信頼性を持つものとすることができる。」 「【発明を実施するための形態】 【0023】 以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 【0024】 …… 【0025】 ……Yb添加領域は、コア2の中心から第1クラッド3に向かって、コア2のLP01モード(基本モード)径の0.55倍以上2.1倍以下である。 【0026】 …… 【0043】 コア径D0及びYb添加径を変化させ、出射ビームの形状変化をシミュレーションした。図11によると、コアNAが0.06以上0.15以下、コア径D0が20μm以上100μm以下の範囲において、Yb添加領域がコアの70%以下ではLP01などの低モード出射ビームの強度がコア周辺の高次モードの出射ビーム強度よりも高いことが判った。この結果より、Yb添加領域はコア径D0の70%まで自己パルスが抑制可能であると判断される。 【0044】 図12によると、LP01(基本モード)モードフィルド径(非特許文献5)は、コアNA及びコア径D0に大きく依存し、コア径D0が大きいほどLP01のモードフィルド径MFDも大きくなることが判った。……中心添加40%に対するLP01モードフィルド径の比率は0.68、中心添加80%に対するLP01モードフィルド径の比率は1.4であり、Yb添加径をLP01モード径の関数で表現可能となる。」 「【実施例】 【0049】 (実施例) 実施例では、希土類元素としてYbを採用したYb添加光ファイバをMCVD装置により作製した。希土類元素供給源にYb(DPM)3を用いた。石英管としては、無水石英を採用した。 【0050】 …… 【0064】 ……Yb添加をコア直径の40%以上70%以下の範囲で行うことが好ましい。Yb中心添加が40%以下になるとYb濃度を上げなければいけないのでYbクラスタリングが増え、フォトダークニング耐性の悪化や変換効率が悪化する恐れがある。また、70%以上になると高次モード効果が顕著に現れ、自己パルスが発生し、ファイバが破壊される。」 「図12 」 a 上記【課題を解決するための手段】及び【発明の効果】の欄の記載からして、 希土類添加ダブルクラッドファイバにおいて、希土類元素であるYbをコア中心の一部領域のみに添加することにより、低励起状態でも擬似連続発振を起こすような反転分布状態を作り、自己パルス発生が抑制されることが理解できる。 b 【発明を実施するための形態】の欄の記載からして、 Yb添加径をLP01モード径の関数で表現可能であることが理解できる。 c 【実施例】の欄の記載からして、 Yb添加をコア直径の40%以上70%以下の範囲で行うことが理解できる。 d 【課題を解決するための手段】、【発明の効果】及び【実施例】の欄の記載を踏まえて、図12を見ると、 LP01モード径は、開口係数とコア径に依存し、「中心70%ドープ径/LP01の倍率」を、(2.1×0.7/0.8)等として計算すると、その最大値が「1.8」であることが理解できる。 e 上記aないしdより、 「Yb添加領域を、コア中心から第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.11倍以上1.8倍以下」とするには、「Yb添加領域を、コア直径の40%以上70%以下」とすればよいものと解される。 f 以上のことから、本件特許明細書には、 「Ybが添加されたコアと、コアを囲む第1クラッドと、第1クラッドを囲む第2クラッドを有し、コアNAが0.06以上0.15以下、コア径D0が20μm以上100μm以下の範囲である希土類添加ダブルクラッドファイバ」において、 Yb添加領域を、コア中心から第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.11倍以上1.8倍以下、具体的には、Yb添加領域を、コア直径の40%以上70%以下とすることにより、 「低励起状態でも擬似連続発振を起こすような反転分布状態を作り、自己パルス発生が抑制される希土類添加ダブルクラッドファイバ」が記載されているものと認められる。 g そうすると、訂正前の「一部領域」について、「コアの直径の40%以上70%以下」との限定を付すとともに、「2.1倍以下」を「1.8倍以下」に訂正することは、技術的に整合していなかった記載を技術的に整合するように正すものであるから、上記訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 イ 訂正事項2ないし訂正事項5 訂正事項2ないし訂正事項5は、訂正事項1により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲と明細書の記載との整合を図るためのものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 ウ 一群の請求項 (ア)訂正前の請求項2及び請求項3は、訂正事項1により記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、訂正前において「一群の請求項」に該当するものであるから、本件訂正は、一群の請求項ごとになされたものであって、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 (イ)訂正事項2ないし訂正事項5は、訂正事項1に伴って本件特許明細書に記載されている請求項1に対応する部分について訂正するものであって、訂正後の請求項2及び訂正後の請求項2の記載を引用する請求項3を含めた一群の請求項2及び請求項3の全てに関係することから、訂正事項2ないし訂正事項5は、特許法第126条第4項の規定に適合する。 (2)訂正の適否のまとめ 訂正事項1ないし訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号、同条第4項及び同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合することから、訂正後の請求項[1-3]について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正は、上記「第1 訂正の適否」で検討したように認められるものであるから、本件訂正により訂正された請求項1ないし3に係る発明(以下、本件訂正発明1」ないし「本件訂正発明3」という。)は、訂正特許請求の範囲に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 Ybが添加されたコアと、 上記コアを囲む第1クラッドと、 上記第1クラッドを囲む第2クラッドとを有する希土類添加ダブルクラッドファイバであって、 上記コアの開口数は、0.06以上0.15以下であり、 上記コアの直径は、20μm以上100μm以下であり、 上記Ybは、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって一部領域でのみ添加され、 上記一部領域は、上記コアの直径の40%以上70%以下であって、かつ、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下である ことを特徴とする希土類添加ダブルクラッドファイバ。 【請求項2】 請求項1に記載されている希土類添加ダブルクラッドファイバにおいて、 上記第2クラッドの外径は、上記コア径の10倍以上40倍以下である ことを特徴とする希土類添加ダブルクラッドファイバ。 【請求項3】 請求項1又は2に記載されている希土類添加ダブルクラッドファイバにおいて、 915nm波長帯域の上記コアの吸収係数は、50dB/m以上300dB/m以下であることを特徴とする希土類添加ダブルクラッドファイバ。」 2 二回目の取消理由通知における取消理由 (1)取消理由の概要 当審において、訂正前の請求項1ないし3に係る発明の特許に対して通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 「本件発明1ないし本件発明3は、当業者が甲1発明、甲第1号証に記載された事項、甲第2号証に記載された技術事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1ないし本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。 甲第1号証:特許第3990034号公報 甲第2号証:米国特許第7576909号明細書 本件発明2及び本件発明3について、周知技術であることを示すために提示した文献 甲第3号証:特開2005-84386号公報 甲第4号証:特開2002-151764号公報 甲第5号証:特開2010-163329号公報  」 (2)各甲号証に記載された発明 ア 甲第1号証には、図とともに、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 回折限界に近いモードを持つ入力ビ-ムを発生させるレーザー源と、 多重モード・ファイバー増幅器と、 該入力ビームを受け、該多重モード・ファイバー増幅器の基本モードに整合するように該入力ビームのモードを変換し、該多重モードファイバー増幅器に入力するモード変換された入力ビームを作り出すモード変換器と、 該多重モード・ファイバー増幅器に結合され、該多重モード・ファイバー増幅器を光学的にポンピングして本質的に基本モードでの増幅されたビームを生成するポンプ源と、 を有することを特徴とする光学増幅装置。 【請求項2】 …… 【請求項5】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、ファイバー・コアをもち、ドーパントが全ファイバー・コア領域より小さい中心部の断面に局在している、 請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項6】 …… 【請求項10】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、希土類イオンをドープされている、 請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項11】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、Er,Er/Yb,Yb,Nd,Tm,PrまたはHoのイオンのうち少なくとも一つによってドープされている、 請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項12】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、二重クラッディング構造を持つ、請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項13】 …… 【請求項27】 前記多重モード・ファイバー増幅器内の伝播モード数は、3ないし3000である、請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項28】 …… 【請求項31】 前記多重モード・ファイバーは、ステップ状に変化する屈折率プロファイルを持つ、 請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項32】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、MCVD、OVD、VADおよびPCVDの製法技術のうち一つによって作られている、 請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項46】 前記多重モード・ファイバー増幅器のM2値は、10より小さい、請求項1記載の光学増幅装置。 【請求項47】 …… 【請求項49】 前記多重モード・ファイバー増幅器は、125μmより大きい外径のクラッディングをもつ、請求項1記載の光学増幅装置。」 (イ)「【0019】 【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、好ましくない非線形性と利得飽和とが始まる前に、光ファイバー増幅器にエネルギーを蓄積する能力を大きくし、単一モード(SM)ファイバーで達成できるより大きいピーク強度およびパルスエネルギーを発生させることである。 【0020】 本発明の他の目的は、増幅された自然発光(ASE)を減少させるときに、多重モード(MM)ファイバーの中で基本モードの増幅をすることである。 本発明の更なる目的は、基本モードの安定性を改善するためMMファイバーに利得ガイドを用いることである。 それに加えて、本発明の目的は、回折限界に近い出力を保持しながら、ピーク強度が大きいパルスを数ピコ秒からフェムト秒の範囲に圧縮することである。 【0021】 【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本発明では光学増幅装置に多重モード光ファイバーを用いる。本発明に従えば、MM光ファイバー、すなわち約2.5より大きいV値を持ったファイバーは基本モードの出力を出すことが出来る。このことにより、好ましからざる非線形性と利得飽和を修正する前に、SMファイバーより大きいピーク強度とパルス・エネルギーを発生することが出来る。ファイバーの断面積を増すことは、光ファイバー増幅器におけるエネルギー蓄積能力を非常に大きくすることと等しい。本発明の増幅システムは超高速で高強度のパルスの発生源が必要な場合に役に立つものである。 【0022】 本発明の一つの視点に立てば、利得媒質はMMファイバーの中心にあるから、基本モードが選択的に増幅され、自然発光が減少する。さらに利得を制限することにより、利得ガイドによって大きな断面積を持つファイバー中の基本モードを安定にする。 本発明の一つの実施例によれば、自己位相変調と、(希土類を)ドープした、またはドープしないMMファイバーにおける非線形性とを利用することにより、近似的な回折制限出力を保存しつつ、大きいピーク強度のパルスを数ヘムト秒の範囲まで圧縮することが出来る。 【0023】 本発明の他の実施例によれば、縮小されたモード結合を持ったMM光ファイバーにチャープ・ファイバー格子を書き込むことにより、高強度光パルスの線形パルス圧縮に対する強度限界は著しく大きくなる。さらに二重クラッドMMファイバー増幅器を利用することにより、比較的大面積の高出力半導体レーザーでポンピングすることが可能になる。 【0024】 本発明の更なる他の実施例によれば、完全なモードフィルターを組み込むことにより、(希土類を)ドープしたMM光ファイバーから得られる、回折限界に近い単一モードの中の連続波を消すことが出来る。 本発明の更なる他の実施例によれば、MM光ファイバーはファイバー光再生増幅器と高出力のQスイッチレーザーを構成することができる。さらに、MM光ファイバーを用いて、比較的弱い吸収断面積を持つドーパントを使ったクラッド-ポンプファイバー・レーザーを設計することができる。」 (ウ)「【0026】 【発明の実施の形態】 本発明の光学増幅装置の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。 [実施例1] 図1に、本発明の実施例1としての光学増幅装置の構成を示す。図1に示される例では、エルビュウム・ファイバー発振器のようなフェムト秒単一モード(SM)ファイバー発振器10は、エルビウム/イッテルビウム・ファイバー増幅器のような多重モード(MM)ファイバー増幅器12に結合されている。これに適合するMMファイバー増幅器の他の例には、Er,Yb,Nd,Tm,PrまたはHoイオンをドープされたものが含まれる。このシステムに利用するのに適合する発振器は、上に述べたFermannらの米国特許出願第08/789,995号に記載されている。 【0027】 二つのレンズを持つ望遠鏡14(L1,L2)は、発振器10のモードをMM増幅器12の基本モードに合わせるために使われる。更に、ポンプされたMMファイバー12の出力は、レンズL3,L4を使って、第二のSMファイバー(図1におけるモード・フィルター(MF)ファイバー16)に移される。レンズL3,L5およびビーム分離器18は、以下に述べるように、ポンプ源20から発生するポンプ光を増幅器ファイバーに結合するために使われる。 【0028】 図1にしたがったシステムの配置の例では、その発振器10は出力レベル14mW、波長1.56μm繰り返し周波数100MHzで、300フェムト秒の近似的にバンド幅が限定されたパルスを射出する。 増幅ファイバー12は、例えば、コア直径約28μm、コアの開口数NA=0.19の二重クラッドMMエルビウム/イッテルビウム増幅器であり得る。この例での内側クラッドは直径約220μmで開口数NA=0.24である。そのコアは内部クラッドの中心に位置する。増幅器の長さは1.10mである。 【0029】 …… 【0031】 【数1】 V=(2πa/λ)NA, モード数N=(1/2)V2 ここで、aはコア直径であり、λは信号の波長である。また、1.55μmにおけるV値はV≒10.8であり、かくして上の例では、モード数は約58と計算される。典型的には、V値が2.41を超えるとき、すなわち基本モードに付加するモードが光ファイバー中を伝播できるとき、ファイバーはMMであると考えられる。 【0032】 … 【0034】 【数3】 η(z)=θ02/(4Dz+θ02) ここで、DはGlogeによって定義されたモード結合係数である。かくしてη(z)を測定すれば、モード結合係数Dが求まる。同様にηを測定すれば、上記数2からMMファイバーの励起モードの近似的な数が求まる。回折限界に近い光ビームの質を特徴づけるために使われるM2 値に対して、Nを関係づけることが役に立つ。すなわち、N≒√M2 であることが示される。 【0035】 本発明にしたがえば、MMファイバー増幅器12の出力である増幅されたビームが本質的に基本モードであるような、低レベルのモード結合が好ましい。したがって、10以下のM2値が好ましく、4以下であればさらに好ましく、2以下であればもっと好ましい。更に、モード数は3~3000の範囲にあることが好ましく、3~1000の範囲にあればなお好ましい。」 【0036】 モード結合は、上記エルビウム/イッテルビウム・ファイバー(表1中のファイバー1)と三つの市販MMファイバー(表1中のファイバー2,3,4)に対して、1.1mのドープされていない増幅ファイバーで測定された。これらのファイバーのファイバー・パラメーターとモード結合係数D(m-1の単位)は、次の表1に示されている。表1中のファイバー1,3,4は、MCVD法で作られたものである。一方、表1中のファイバー2は、ロッド・イン・チューブ法で作られたものである。 【0037】 【表1】 【0038】 …… 【0039】 一般的に、高レベルのモード結合は、大きな散乱損失を持つファイバーから得られると期待される。このことから、小さい散乱損失を持つファイバー中の長い波長においては、モード結合係数は小さいことが予測される。表1から解るように、ファイバー1の波長が大きくなると、モード結合は著しく減少する。モード結合の受容できるレベルは、ファイバー1においては、790nm程度に短い波長で達成される。光ファイバーのモード数はa/λにのみに依存するので、56μmほどの大きさのコア直径を持ったファイバーと同様なファイバーによって、1m長さにおけるモード結合を実現できる。より長い波長における散乱を減少させるために、より長い波長ではより大きなコア直径がよい。例えば、Tavernerらによれば、コア直径60μmのMMファイバーはSM増幅器よりも16倍にパルスピーク強度を増幅することができる。表1から解るように、また次に説明することにより、モード結合の許容できるレベルは特別に設計された50μmのコア直径を持つファイバーで得られる。 【0040】 さらに、勾配指数(グレーデッド・インデックス)MMファイバー中の伝播定数はよく似ており、モード結合への感度が著しく増加するので、モード結合を最小にするためには、段階指数(ステップ・インデックス)MMファイバーの方が勾配指数を持つMMファイバーより実用的である。モード結合を最小にするためには、ファイバー・モード間の伝播定数の差を最大にすることが好ましい。 【0041】 上記表1中のファイバー2は、ロッド・イン・チューブ法で製作されたものであって、本質的に散乱損失が大きく、MCVD成長法による上記表1中のファイバー1,3,4に比べて、より大きなモード結合係数を持っている。また、ファイバー2で測定されたモード結合係数は、GamblingらやGriebnerらによって得られた結果と同じである。彼らはロッド・イン・チューブ法で作られた段階指数をもつ固体コアファイバーを用いている。その結果、直接成長技術、例えばMCVD、OVD、PCVDまたはVADなどのファイバー製作技術によるMMファイバーを用いた場合は、モード結合の縮小が期待できる。 【0042】 上記表1に示すように、1.55μmにおいてファイバー4で得られたモード結合係数は、ファイバー3のそれの1/11である。この差は、ファイバー3の外径が125μmであるのに対し、ファイバー4の外径が250μmであることで説明がつく。表1で明らかなように、一般に厚いファイバーは硬く、モード結合を誘発する曲りや微少曲りに対して強い。 【0043】 発明者が行った実験では、最も小さいモード結合係数は縦方向に延ばされた光ファイバーによって得られる。例えば、ファイバー2,3のモード散乱係数は、ファイバーを引っ張り真直に保持して測定された。短い長さのファイバーに張力を加えることは、もっとも良い質のモードを得るのに利用できる。 モード結合は、再び図1に示すように、増幅ファイバー(ファイバー1)がポンプされるような配置で測定した。増幅器は980nmの波長で、ブロード・ストライプの半導体レーザー(活性領域:1×500μm)から出射する3W以上の信号に対して反対方向にポンプされた。ここでは、MM増幅ファイバーの内部コアへのパワー結合を最大にするために脱磁をした。見かけのフィードバックを除くために、増幅器を約8°傾けて固定した。 1.55μmで、100mW以上の信号出力を増幅システムから取り出した。」 (エ)図1は、以下のものである。 (オ)上記記載からして、甲第1号証には、表1中の「ファイバー4」に関する次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ポンプ源を有する、基本モードの増幅をする光学増幅装置に用いられる、M2値が10より小さい、多重モード・ファイバー増幅器であって、 コアに希土類イオンがドープされ、前記コアの開口係数が0.13、コア直径が50μm、クラッディング直径が250μmであり、 レンズ及びビームスプリッタを介して、ポンプ源から発生するポンプ光が結合される、多重モード・ファイバー増幅器。」 イ 甲第2号証には、以下の記載がある。 (ア)「1. An optical amplifier, comprising: a single mode light source; and a multimode fiber amplifier having a dopant concentration area within a core thereof which is smaller than a diameter of said core, such that said amplifier preferentially propagates single mode light. 」(第11欄) (翻訳 光増幅器であって、 単一モード光源と、 多モードファイバー増幅器であって、そのコア内に、前記コアの直径よりも小さいドーパント濃度領域を有し、それにより単一モード光を優先的に伝搬する、多モードファイバー増幅器とを備える光増幅器。) (イ)「The miniature laser is coupled to a doped fiber gain medium. In the invention this medium is a Yb:fiber. In order to reach higher peak powers, the invention utilizes a multi-mode fiber to propagate single mode pulses as described in U.S. Pat. No. 5,818,630. As described above a mode converter is used to convert the single mode input to excite the fundamental mode of the multimode fiber. The mode converter 102 used in this case is a combination of lenses which mode-matches the output of the microchip laser to the beam diameter for single mode excitation of the multimode fiber. In addition to the lenses for mode-conversion, gain guiding in the Yb:fiber can be used to relax the tolerances on mode matching. Without gain in the Yb fiber, robust fundamental-mode excitation becomes increasingly difficult to achieve for the increasing core size of a fiber amplifier. We found experimentally that it is particularly advantageous to employ specially designed fibers in which Yb-doping in the center of the core has a significantly smaller diameter than the core itself. In this case, the fundamental mode light experiences significantly higher gain than multimode light. In our experimental configuration, we used 50μm diameter core with 25μm diameter doped region in the center, which exhibited a significantly more robust performance compared to 25μm homogeneously doped core. Besides relaxing the alignment tolerances, the beam parameters of the source are also relaxed. As the microchip laser may not have a perfect diffraction limited beam output, gain guiding can be used to correct for this. Also, gain guiding can correct the distortion expected from DiGiovanni pump couplers.(第9欄ないし第10欄) (翻訳 小型レーザは、ドープファイバ増幅媒体に結合される。本発明において、この媒体はYb:ファイバである。 より高いピーク出力を達するために、本発明は、米国特許第5818630号に説明されるようにマルチモードファイバを使用して、シングルモードパルスを伝播させる。上述したように、モード変換器を使用して単一モード入力を変換して、マルチモードファイバの基本モードを励起する。この場合に使用されるモード変換器102は、マルチモードファイバのシングルモード励起のためのビーム径にマイクロチップレーザの出力をモード整合するレンズの組合せである。モード変換用のレンズに加えて、Yb:ファイバのゲインガイドを使用して、モードマッチングの許容度を緩和することができる。Ybファィバが利得を持たないと、ファイバ増幅器のコアサイズが大きくなるので、堅牢な基本モードを励起を達成することがますます困難になる。コアの中心部のYbドーピングがコア自体よりも著しく小さい直径を有する特別に設計されたファイバを用いることが特に要理であることが実験的に分かった。この場合、基本モードは、マルチモード光よりも著しく高い利得を受ける。我々の実験では、中央に25μmの直径のドープ領域を有する50μmの直径のコアを使用した。これは25μmの均一にドープされたコアと比較して著しく強固な性能を示した。……。) (ウ)上記記載からして、甲第2号証には、以下の技術事項(以下「甲第2号証に記載された技術事項」という。)が記載されているものとみとめられる。 「光増幅器に用いられる、多モードファイバー増幅器において、 直径50μmのコアの中心部に、直径25μmのYbドープ領域を設けることで、基本モードがマルチモード光よりも著しく高い利得を受けること。」 3 当審の判断 (1)本件訂正発明1について ア 本件訂正発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「多重モード・ファイバー増幅器」は、「コア直径が50μm」の「コアに希土類イオンがドープされ」たものであることから、 本件訂正発明1と甲1発明とは、 「希土類が添加されたコアと、 上記コアを囲む第1クラッドを有する希土類添加ファイバ」である点で一致する。 (イ)甲1発明の「多重モード・ファイバー増幅器」は、甲第1号証の記載によれば(【0021】)、「基本モードを出力する」ものであるから、本件訂正発明1と甲1発明とは、 「希土類は、コアに添加され、 上記添加領域は、コアの直径の所定割合であって、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の所定倍である」点で一致する。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「希土類が添加されたコアと、 上記コアを囲む第1クラッドを有する希土類添加ファイバであって、 上記コアの開口数は、0.06以上0.15以下であり、 上記コアの直径は、20μm以上100μm以下であり、 上記希土類は、上記コアに添加され、 上記添加領域は、コアの直径の所定割合であって、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の所定倍である、 希土類添加ファイバ。」 (エ)一方、本件訂正発明1と甲1発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 希土類添加ファイバに関して、 本件訂正発明1は、「第1クラッドを囲む第2クラッドを有する」「希土類添加ダブルクラッドファイバ」であるのに対して、 甲1発明は、第2クラッドを有するか否か不明である点。 <相違点2> 添加領域に関して、 本件訂正発明1は、希土類が「Yb」であり、 「Ybは、コアの中心から第1クラッドに向かって一部領域でのみ添加され、上記一部領域は、上記コアの直径の40%以上70%以下であって、かつ、上記コアの中心から上記第1クラッドに向かって該コアのLP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下である」のに対して、 甲1発明は、希土類イオンがYbであるか否か不明であり、かつ、添加領域がコアの一部であるか否か不明である点。 イ 判断 (ア)まず、上記<相違点2>について検討する。 a 甲1発明の「多重モード・ファイバー増幅器」に係る「ファイバー4」は、甲第1号証の【0036】ないし【0043】等の記載によれば、実施例の「ファイバー1」との特性を比較するための「市販MMファイバー」、すなわち、「市販品」であって、いわゆる、比較例に相当するものであると認められる。 b してみると、甲第2号証に「甲第2号証に記載された技術事項」が記載されているとしても、あえて、その「市販品(比較例)」に基づいて、希土類イオンをコアの中心部のみにドープした「多重モード・ファイバー増幅器」を作製する動機があるとはいえない。 c よって、上記<相違点1>について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、当業者が甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 d また、本件発明2及び本件発明3について、周知技術であることを示すために提示した文献である甲第3号証ないし甲第5号証の記載を見ても、甲1発明の「多重モード・ファイバー増幅器」において、希土類イオンとして「Yb」を選択し、コアの中心部のみにドープする動機があるとはいえない。 (2)本件訂正発明2ない本件訂正発明3について 本件訂正発明2ないし本件訂正発明3は、本件訂正発明1の発明特定事項をすべて備えるものであるから、本件訂正発明1と同様の理由により、本件訂正発明2ないし本件訂正発明3は、当業者が甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 (3)特許異議申立人の意見について 特許異議申立人一條淳は、平成30年2月2日に提出した意見書において、以下のように主張することから、この点について検討する。 ア 新規事項の追加 Ybが添加される領域を、「コアの直径の40%以上70%以下」、かつ「LP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下」とすることは、願書に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲であるとはいえない(第3頁上段)。 しかしながら、前記「第2 2(1)ア(ア)」で検討したとおり、訂正前の「2.1倍」は「中心80%ドープ径/LP01の倍率」に対応する数値であって、「中心70%ドープ径/LP01の倍率」に対応する数値は「1.8倍」であると解される。 そして、図12の記載に基づいて、「Yb添加領域をコア直径の40%以上70%以下」、かつ「LP01モード径の0.11倍以上1.8倍以下」と訂正しても、新たな技術的意義が導入されるものでもない。 イ 進歩性欠如 ファイバー4の開口数NAの値を0.13に維持して、コアにYbを加えて、…当業者が容易に想到できたことである(第3頁下段ないし第4頁上段)。 しかしながら、甲第1号証の表1の「ファイバー3」又は「ファイバー4」は、いわゆる、比較例であり、あえて、「ファイバー3」又は「ファイバー4」に着目する動機がない。 また、上記表1には、「ファイバー2」ないし「ファイバー4」に関しては、「1.55μmでのモード数」しか記載されていないことから、増幅する波長帯は「1.55μm」であると解され、開口数を維持したまま、さらに、Ybを添加する動機付けもない。 ウ サポート要件違反 明細書に記載されている比較例1又は比較例2は、唯一の実施例である「63%中心ドープ」と作用効果が比較できないので、本件訂正発明1の作用効果は明細書にサポートされているとはいえない。 しかしながら、図18ないし図23を比較すれば、比較例のファイバ(長さ9.6M、ファイバ総吸収9.4dB)では自己パルスが観察されるのに対して、実施例のファイバ(長さ15M、ファイバ総吸収12.6dB)では、自己パルスの観察されないことが理解できる。 つまり、本件訂正発明1の作用効果を確認することができないとまではいえない。 エ 明確性要件違反 本件訂正発明1ないし本件訂正発明3において、「LP01モード径」が、どの定義により算出されるのか不明であるから、「LP01モード径」の値により特定されるYbの添加領域は明確でない(第11頁下段ないし第12頁上段)。 しかしながら、本件特許明細書の【0016】に「LP01モード(基本モード)」、【0035】に「基本モードであるLP01、高次モードであるLP11、LP21、LP02、LP31になる。」及び【0044】に「LP01(基本モード)モードフィルド径(非特許文献5)」等と記載されていることからして、 本件訂正発明1ないし本件訂正発明3における「LP01モード径」とは、当該技術分野においてよく知られる「基本モード」の径であって、その大きさは、非特許文献5に示されている式によっても求めることができるものと解される。 そして、本件訂正発明1ないし本件訂正発明3におけYb添加領域は、「LP01モード径」の値だけではなく、「コア直径の40%以上70%以下」であると特定されるようになったことから、Ybの添加領域は明確でないとはいえない。 オ 委任省令違反 明細書には、「LP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下」、かつ「コア直径の40%以上70%以下」とする技術的意義が理解できる程度に記載されていない(第13頁下段)。 しかしながら、図12を見れば、 Yb添加領域を、「LP01モード径の0.55倍以上1.8倍以下」とすることは、具体的には「コア直径の40%以上70%以下」とすることであると解される。 そして、本件特許明細書の【0016】には、「…このように、希土類元素であるYbをコア中心の一部領域のみに添加することにより、低励起状態でも擬似連続発振を起こすような反転分布状態を作り、自己パルス発生が抑制される。」と記載され、その技術的意義についても言及されている。 (4)二回目の取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由は、「サポート要件違反」、「明確性要件違反」及び「委任省令違反」である。 しかしながら、本件訂正発明1ないし本件訂正発明3が、「サポート要件違反」、「明確性要件違反」及び「委任省令違反」に該当しないことは、上記「(3)特許異議申立人の意見について」で指摘したとおりである。 4 まとめ 本件訂正発明1ないし本件訂正発明3の特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 第4 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正発明1ないし本件訂正発明3に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件訂正発明1ないし本件訂正発明3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2017-700329

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