特許異議申立
2017-700149
圧電トランスを用いた電源装置
- 審判番号
- 2017-700149
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-032668
- 登録番号
- 特許第5970847号(P5970847)
- 請求日
- 2017年02月17日
- 審決日
- 2017年05月08日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】横河電機株式会社
- 【異議申立人】中澤 佳樹
- 審判長/審判官
- 審判長 和田 志郎
- 審判官 山田 正文
- 審判官 千葉 輝久
- 分類
- P1651.121-Y (H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5970847号発明「圧電トランスを用いた電源装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5970847号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5970847号の請求項1-2に係る特許についての出願は、平成24年2月17日に特許出願され、平成28年7月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 中澤 佳樹により特許異議の申立てがされたものである。
2.本件発明
特許第5970847号の請求項1-2の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、以下、請求項1-2の特許に係る発明をそれぞれ、「本件特許発明1」-「本件特許発明2」という。
「【請求項1】
1次側端子と1対の2次側端子を備え、1次側端子に印加された電圧を絶縁して2次側端子に出力する圧電トランスと、
前記圧電トランスの1次側端子に電圧を出力する駆動部と、
前記圧電トランスの2次側端子に出力される電圧を整流、平滑し、直流電圧に変換して出力する整流平滑部と、
2つの入力端子を具備し、これらの入力端子に印加された電圧の差電圧に関連する電圧を、前記駆動部に出力する差動増幅部と、
前記圧電トランスの1対の2次側端子の一方にその一端が接続され、他端が前記差動増幅部の入力端子の一方に接続される第2のコンデンサと、
前記圧電トランスの1対の2次側端子の他方にその一端が接続され、他端が前記差動増幅部の入力端子の他方に接続される第3のコンデンサと、
を具備したことを特徴とする圧電トランスを用いた電源装置。
【請求項2】
前記第2のコンデンサ、または前記第3のコンデンサのうち少なくとも1つとして、プリント基板の配線層を用いて形成したコンデンサを用いたことを特徴とする請求項1に記載の圧電トランスを用いた電源装置。」
3.申立理由の概要
特許異議申立人 中澤 佳樹は、証拠として甲第1-11号証を提出し、請求項1-2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1-2に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
甲第1号証: 特開平4-49845号公報(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証: 特開平11-266041号公報(以下、「刊行物2」という。)
甲第3号証: 電子情報通信学会技術研究報告.EE,電子通信エネルギー技術、1998年6月19日発行、一般社団法人電子情報通信学会、98巻132号、p.81-86(以下、「刊行物3」という。)
甲第4号証: 1999年総合大会講演論文集、電子情報通信学会、p.353(以下、「刊行物4」という。)
甲第5号証: OPアンプによる実用回路設計、馬場清太郎著、2004年5月1日発行、p.133-158(以下、「刊行物5」という。)
甲第6号証: 速解電子回路、宮田武雄著、1991年12月10日発行、p.104-111、p.124-127及びp.168-169(以下、「刊行物6」という。)
甲第7号証: 学びやすいアナログ電子回路、二宮保及び小浜輝彦著、2007年4月25日発行、p.106-116(以下、「刊行物7」という。)
甲第8号証: 特開2003-249393号公報(以下、「刊行物8」という。)
甲第9号証: 特開平10-51045号公報(以下、「刊行物9」という。)
甲第10号証: 実願昭62-93279号(実開昭63-201362号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物10」という。)
甲第11号証: 特開平11-167959号公報(以下、「刊行物11」という。)
特に、本件特許発明1については、刊行物2から刊行物7に記載された本件特許の出願当時の技術水準に鑑みれば、刊行物1及び刊行物8から刊行物10の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨、本件特許発明2については、刊行物11の記載に基づいて当業者が容易に発明できたものである旨主張している。
4.刊行物の記載、刊行物1の発明
(1)刊行物1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、特に着目した箇所を示す。)
ア.「第1図は、本発明の一実施例を示す回路ブロック図である。
この自励式圧電トランスコンバータは、入力電源1と、駆動回路2と、圧電トランス3と、整流平滑回路4と、負荷5と、増幅器6とから成っている。
入力電源1は、駆動回路2を動作させるための電源である。
駆動回路2は、圧電トランス3を駆動する自励発振方式の駆動回路である。また入力電源1(当審注:「入力電源1」は「駆動回路2」の誤記と認める。)は、増幅器6からの信号により制御される。
圧電トランス3は、駆動回路2の駆動による圧電トランスの1次側の機械的振動によるエネルギーを2次側に伝えて電圧を発生し、整流平滑回路4に供給する。またその出力電圧は増幅器6にも供給される。
整流平滑回路4は、圧電トランス3で発生した出力電圧を整流及び平滑して負荷5に供給する。
増幅器6は、圧電トランス3の出力電圧を増幅して、駆動回路2に帰還する帰還回路である。この増幅器6の帰還回路があるため、圧電トランス3から最高出力電圧を取り出すことが可能となる。」(第2頁右上欄第7行~同頁左下欄第8行の記載。)
イ.第1図には、圧電トランス3は、駆動回路2に接続される1対の1次側端子と、整流平滑回路4に接続される1対の2次側端子とを有し、当該1対の2次側端子のうちの1つに増幅器6が接続されることが示されている。
そして、上記記載事項を関連図面と技術常識に照らし、下線部に着目すれば、刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1の発明」という。)が記載されているといえる。
「入力電源1と、駆動回路2と、圧電トランス3と、整流平滑回路4と、負荷5と、増幅器6とから成っている自励式圧電トランスコンバータにおいて、
入力電源1は、駆動回路2を動作させるための電源であり、
駆動回路2は、圧電トランス3を駆動する自励発振方式の駆動回路であり、
圧電トランス3は、駆動回路2の駆動による圧電トランスの1次側の機械的振動によるエネルギーを2次側に伝えて電圧を発生し、整流平滑回路4に供給し、またその出力電圧は増幅器6にも供給され、
整流平滑回路4は、圧電トランス3で発生した出力電圧を整流及び平滑して負荷5に供給し、
増幅器6は、圧電トランス3の出力電圧を増幅して、駆動回路2に帰還するものであり、
圧電トランス3は、駆動回路2に接続される1対の1次側端子と、整流平滑回路4に接続される1対の2次側端子とを有し、当該1対の2次側端子のうちの1つに増幅器6が接続される、
自励式圧電トランスコンバータ。」
(2)刊行物2には、次の記載がある。
ア.「【0003】一方、圧電トランスは、放射ノイズは、ほとんど無いものの、伝導ノイズに関しては、容量性の素子であることから、入出力間に大きな結合容量が存在し、入出力間のインピーダンスが極端に低く、伝導ノイズに対する耐性が低い。そこで、圧電トランスは、特にコモンモード(伝導)ノイズに対して、従来の電磁誘導トランス以上に対策が必要になる。」(【0003】の記載。)
(3)刊行物3には、次の記載がある。
ア.「あらまし 圧電トランスは機械振動によって電力を伝送するため低ノイズなデバイスとして期待されている。しかしながら、これまで圧電トランスのノイズ特性については明らかにされておらずコンバータの低ノイズ化が図られていない。本論文では、圧電トランスの入出力間に存在する寄生インピーダンスのモデルを提案し、コモンモードノイズの発生メカニズムを明確にするためにそのモデルを用いたシミュレーションと実験結果との比較を行った。その結果、この寄生インピーダンスがコモンモードノイズの発生に大きく影響を及ぼすことが分かった。
さらに、コモンモードノイズを低減するために新たな圧電トランスの駆動回路を提案する。次に、この駆動回路を用いてコンバータを試作し、良好な結果を得たことについて報告する。」(第81頁の「あらまし」の欄の記載。)
(4)刊行物4には、次の記載がある。
ア.「1.はじめに
圧電トランスは、機械振動を利用して入出力間の絶縁を図りながら電力を伝送するものであり、従来の電磁トランスに比べ、小形、軽量、薄形、低ノイズ等の優れた特性を持っている。これを用いた圧電トランスコンバータの開発により、より小さいコンバータが実現された〔1-3〕。現在も圧電トランスはさらなる小形軽量化が進められている。しかしながら、それに伴い圧電トランスの1次側と2次側との間に存在する寄生容量も増加するため、そのコモンモードノイズへの影響が懸念されている。本稿では、圧電トランスコンバータにおいて寄生容量の増加がコモンモードノイズに与える影響と、ノイズ低減に効果のあるフィルタ回路のインダクタの値や配置を検討している。」(第353頁の「1.はじめに」の欄の記載。)
(5)刊行物5には、次の記載がある。
ア.「■差動信号と同相信号
図12-1に示すように,増幅回路の二つの入力端子に加えられる信号は次の二つに分けて考えることができます.
・差動信号・・・入力端子間に加わる信号の差分
(図12-1 略)
・同相信号・・・両入力端子に共通に加わる信号
差動信号は,ディファレンシャル・モード(differential mode)信号またはノーマル・モード(normal mode)信号ともいいます.同相信号は,コモン・モード(common mode)信号といいます.
差動増幅回路は,このコモン・モード信号を除去しつつ,差動信号を増幅することができます.」(第133~134頁の「■差動信号と同相信号」の欄の記載。)
(6)刊行物6には、次の記載がある。
ア.「差動増幅器はさまざまな場合に有効に活用されるが,その一例として,ノイズ混入のある伝送系への応用例を図6.19に示す。
(図6.19 略)
図6.19において,差動増幅器の入力電圧v1とv2に接続された伝送線は双方とも等しい電気的状態にあるので,ノイズの混入状況も等しく,どちらにもノイズ電圧vnが混入している。一方,信号電圧vsはv1に接続された伝送線に印加し,v2に接続された伝送線はアースに接続してある。したがってv1とv2はそれぞれ
v1=vs+vn (6.45)
v2=vn (6.46)
となっている。
式(6.33)に式(6.45),(6.46)を代入すると,出力電圧v0は,
v0=R3/R1{vn-(vs+vn)}
=-R3/R1vs (6.47)
となって,v0にはvnは表れないので,ノイズの影響が除かれる。」(第109頁第4行~第110頁第4行の記載。)
(7)刊行物7には、次の記載がある。
ア.「8.2.1 差動増幅器の特徴
差動増幅器を図8.1に示す.基本構造はエミッタ接地増幅器を左右対称に配置した構造となっており,以下の特徴を持つ.
(1) コンデンサが不要
(2) 直流増幅が可能
(3) 入力インピーダンスが高い
(4) ドリフトに強い(温度変化に伴うトランジスタ特性の変化による影響が小さい).
(5) グランド基準に入力端子を2つ,出力端子を2つ備える.
(6) ノイズに強い(同相ノイズを相殺できる)
差動増幅器の一般的な使用方法は,入力端子間に入力信号Vinを与え,出力端子間から出力電圧V0を得る.(図8.1 略)図8.1においては
Vin=V2-V1 (8.1)
V0=V02-V01 (8.2)
となる.
次に,差動増幅器の動作について詳しく述べる.」(第107~108頁の「8.2.1 差動増幅器の特徴」の欄の記載。)
(8)刊行物8には、次の記載がある。
ア.「【0010】
【発明の実施の形態】カレントトランスを利用することによって、高電圧回路と電流検出回路を絶縁(分離)できる。また、その出力を処理部の差動増幅器に入力することによって同相ノイズをキャンセルすることができる。
【0011】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例を示すブロック図である。入力電圧(図示しない)を加える圧電トランス駆動部11のスイッチング回路によって圧電トランス12を所定の周波数で駆動する。点灯開始時は高電圧出力を得るために周波数の高い方から高インピーダンス時の共振周波数方向へ周波数掃引して駆動する。
【0012】圧電トランス12で得られる高電圧は冷陰極蛍光管13の両端の電極に印加される。通常は一方の電極が接地されるのではなく、両方の電極が圧電トランスの出力に接続される平衡出力型となっている。これによって、蛍光管の両電極は高電圧が印加されることになり、輝度ムラの発生を防止することができ、管全体を均一に発光させることができる。
【0013】この回路構成では抵抗を用いて管電流を検出することができないので、本発明においては圧電トランス12と冷陰極蛍光管13との間にカレントトランス14を設ける。高圧電流路の1次側の電流の変化によって誘起される2次側の電圧を検出するようにしたもので、高圧電流路と分離された回路で管電流の検出がされることになる。
【0014】カレントトランス14で検出された管電流は、管電流検出処理部16の差動増幅器15に入力されて電圧に変換され、基準電圧と比較される。その結果の出力による帰還信号を発生し、圧電トランス駆動回路11の駆動周波数を制御する。冷陰極蛍光管13が点灯するとインピーダンスが下がり、その共振周波数も変化するのでその共振周波数近傍で効率よく駆動できるように制御される。
【0015】カレントトランス14と差動増幅器の信号ラインには浮遊容量の影響で、高圧出力の誘導電圧が発生するが、差動増幅器の+、-の端子に加わる誘導電圧は同相のためにキャンセルされる。したがって差動増幅器15の出力は管電流のみで制御されることになり、安定した制御回路を構成することができる。
【0016】図2は、冷陰極蛍光管を2本点灯させる場合への適用例を示すものである。圧電トランス駆動回路21で駆動される圧電トランス22の出力が並列に接続された冷陰極蛍光管23A、23Bの電極に印加される。それぞれの冷陰極蛍光管23A、23Bの管電流がカレントトランス24A、24Bで検出されて管電流検出処理部26の差動増幅器25A、25Bに入力されて処理される。
【0017】
【発明の効果】本発明によれば、平衡出力回路で使用する冷陰極蛍光管の管電流検出をカレントトランスで行うので、高電圧回路と検出回路を分離でき、負荷条件の変化によって検出回路が変動することを防止できる。また、処理部の入力段に差動増幅器を用いるので、同相ノイズの影響を受けず、制御回路の信頼性が増し、電源電圧の変動や負荷状態の変化にも安定した動作が得られる。」(【0010】~【0017】の記載。)
(9)刊行物9には、次の記載がある。
ア.「【0019】この時、発電部においてそれぞれ独立に設置した2つのモニタ電極の出力信号間に差が生じる。このモニタ出力信号の差分がノイズレベルかどうかの判定を行うために基準信号との比較を行う。このモニタ出力信号の差分が基準信号を超過する場合は、圧電トランスにクラックが発生していると判断し、警告表示を行う。
【0020】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】図1は本発明の第1の実施形態による1次ローゼン型圧電トランスの構成を示した概略構造図である。
【0022】図1において、長板状の圧電トランス1の図面上左半分は厚さ方向に分極された駆動部2であり、図面上右半分は長辺方向に分極された発電部3である。駆動部2の表面及び裏面の全面には入力電極4が銀パラジウム材料を被着して形成されており、入力電極4は入力端子5からリード線を介して入力信号17に接続されている。発電部3の端面には出力電極6が銀パラジウム材料を被着して形成されており、出力電極6は出力端子7からリード線を介して出力信号18を外部に取り出す。発電部3の端面の両端に出力電極6から独立したモニタ電極8a及び8bが互いに対称的な形状に設けてある。
【0023】この2つのモニタ電極8a,8bは、発電部3の分極方向に発生する機械的振動の中で、図1において図面上、圧電トランス1の手前側で発生する機械的振動と奥側で発生する機械的振動を独立して検出できるように配置したものである。モニタ電極8a及び8bは、各々モニタ出力端子9a及び9bからリード線を介して、それぞれ差動増幅回路10の入力に入る。差動増幅回路10は、この2つのモニタ電極8a,8b間の出力差に応じた大きさの信号を出力する。差動増幅回路10の出力は、整流平滑回路11により直流化され、比較器12の入力に入り、予め設定された基準信号13と比較される。その結果、差動増幅回路10の出力を整流平滑回路11で直流化した信号が基準信号13を超過する場合には、比較器12から信号が出力される。比較器12の出力は警告表示回路14のスイッチング素子15に接続されており、スイッチング素子15は比較器12からの出力信号を受けるとスイッチがオンし、発光ダイオード16を点灯させる。
【0024】以上により、圧電トランス1にクラックが発生したことを発光ダイオード16の点灯により警告表示する。」(【0019】~【0024】の記載。)
(10)刊行物10には、次の記載がある。
ア.「第1図に示す装置1が従来装置20と異なる点は、従来装置20の圧電トランス13と同様圧電素子を用いて構成され、かつ、励振用電極3a,3b及び出力電極3dのみを有し帰還電極3cを有しない圧電トランス3を用いたこと、この圧電トランス3の出力電極3dに帰還回路4の一方の端子を接続したこと、帰還回路4として帰還用のコンデンサCFのみを用いたことである。そして、発振能動回路2(当審注:「2」は「12」の誤記と認める。)、圧電トランス3及び帰還回路14(当審注:「14」は「4」の誤記と認める。)により自励発振回路を構成するようになっている。」(明細書第5頁第16行~第6頁第6行の記載。)
(11)刊行物11には、次の記載がある。
ア.「【0020】図8に示すように、平行平面板を用いる方式は、配線パターンの一部又は全てを太くした平面状の導体(平行平面板)802,803をプリント基板801の両面同位置に配置し、平行平板コンデンサの原理を利用して静電容量を得るものである。この方式は、配線パターンを加工する場合と同様の製造技術で製造可能なため、コストが少なくて済む点と、静電容量の計算がしやすい点等の利点がある。」(【0020】の記載。)
5.対比・判断
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と、刊行物1の発明とを対比する。
ア.刊行物1の発明の「圧電トランス3」は、「駆動回路2に接続される1対の1次側端子と、整流平滑回路4に接続される1対の2次側端子とを有するものであるから、本件特許発明1の「1次側端子と1対の2次側端子を備え、1次側端子に印加された電圧を絶縁して2次側端子に出力する圧電トランス」に相当する。
イ.刊行物1の発明の「駆動回路2」は、「圧電トランス3」の「1対の1次側端子」に接続され、「圧電トランス3を駆動する自励発振方式の駆動回路」であるから、本件特許発明1の「圧電トランスの1次側端子に電圧を出力する駆動部」に相当する。
ウ.刊行物1の発明の「整流平滑回路4」は、「圧電トランス3」の「1対の2次側端子」に接続され、「圧電トランス3で発生した出力電圧を整流及び平滑して負荷5に供給」するものであるから、本件特許発明1の「圧電トランスの2次側端子に出力される電圧を整流、平滑し、直流電圧に変換して出力する整流平滑部」に相当する。
エ.刊行物1の発明の「増幅器6」は、「圧電トランス3の出力電圧を増幅して、駆動回路2に帰還するもの」であるから、本件特許発明1の「2つの入力端子を具備し、これらの入力端子に印加された電圧の差電圧に関連する電圧を、前記駆動部に出力する差動増幅部」と「入力端子に印加された電圧に関連する電圧を、前記駆動部に出力する増幅部」である点では共通するといえる。
オ.刊行物1の発明の「自励式圧電トランスコンバータ」は、「圧電トランス3で発生した出力電圧を整流及び平滑して負荷5に供給」するものであるから、本件特許発明1の「圧電トランスを用いた電源装置」に相当する。
したがって、本件特許発明1と刊行物1の発明との一致点・相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「1次側端子と1対の2次側端子を備え、1次側端子に印加された電圧を絶縁して2次側端子に出力する圧電トランスと、
前記圧電トランスの1次側端子に電圧を出力する駆動部と、
前記圧電トランスの2次側端子に出力される電圧を整流、平滑し、直流電圧に変換して出力する整流平滑部と、
入力端子に印加された電圧に関連する電圧を、前記駆動部に出力する増幅部と、
を具備した圧電トランスを用いた電源装置。」
〈相違点1〉
「増幅部」が、本件特許発明1では、「2つの入力端子を具備し、これらの入力端子に印加された電圧の差電圧に関連する電圧を、前記駆動部に出力する差動増幅部」であるのに対して、刊行物1の発明では、「圧電トランス3の出力電圧を増幅して、駆動回路2に帰還」しているが、「2つの入力端子を具備」する「差動増幅部」ではなく、「入力端子に印加された電圧の差電圧に関連する電圧」を「出力する」増幅器ではない点。
〈相違点2〉
本件特許発明1は、「前記圧電トランスの1対の2次側端子の一方にその一端が接続され、他端が前記差動増幅部の入力端子の一方に接続される第2のコンデンサと、
前記圧電トランスの1対の2次側端子の他方にその一端が接続され、他端が前記差動増幅部の入力端子の他方に接続される第3のコンデンサと、
を具備」するものであるのに対して、刊行物1の発明は、そのようなコンデンサを具備しておらず、「圧電トランス3」の「1対の2次側端子のうちの1つに増幅器6が接続され」たものである点。
カ.上記〈相違点1〉及び〈相違点2〉について検討する。
(ア) 上記4.(2)-4.(4)に摘記した刊行物2-4の記載のように、圧電トランスにおいてコモンモードノイズが問題となることは、本件特許出願前周知の技術課題であったものと認められる。
また、上記4.(5)-4.(7)に摘記した刊行物5-7の記載のように、コモンモードノイズを除去するために差動増幅器を用いることは、本件特許出願前周知技術であったものと認められる。
しかしながら、上記刊行物2-7にはいずれにも、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いること(相違点1に係る構成)も、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)も記載されておらず、示唆されてもいない。
(イ) 上記4.(8)に摘記したとおり、刊行物8には、圧電トランス12に接続された蛍光管13に流れる管電流を検出するために、圧電トランス12と蛍光管13との間にカレントトランス14を設け、カレントトランス14で検出された管電流を差動増幅器15に入力することによって同相ノイズ(コモンモードノイズ)をキャンセルし、同相ノイズの影響を受けず、制御回路の信頼性が増し、電源電圧の変動や負荷状態の変化にも安定した動作を得ることができる圧電トランス駆動回路が記載されている。
しかしながら、刊行物8は、カレントトランスを差動増幅器に接続するものであり、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)は記載されておらず、示唆されてもいない。
(ウ) 上記4.(9)に摘記したとおり、刊行物9には、圧電トランス1の出力電極6から独立したモニタ電極8a及び8bが互いに対称的な形状に設けられ、圧電トランス1の手前側で発生する機械的振動と奥側で発生する機械的振動を独立して検出できるように配置したモニタ電極8a及び8bは、各々モニタ出力端子9a及び9bからリード線を介して、それぞれ差動増幅回路10の入力に入り、差動増幅回路10の出力は、整流平滑回路11により直流化され、比較器12の入力に入り、比較器12の出力は警告表示回路14のスイッチング素子15に接続され、圧電トランス1にクラックが発生したことを発光ダイオード16の点灯により警告表示することが記載されている。
しかしながら、刊行物9は、圧電トランスにクラックが発生したことの警告表示を行うものであり、圧電トランスの帰還回路に関するものではない。
そして、刊行物9には、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いること(相違点1に係る構成)も、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)も記載されておらず、示唆されてもいない。
(エ) 上記4.(10)に摘記したとおり、刊行物10には、圧電トランス3の出力電極3dに帰還回路4の一方の端子を接続し、帰還回路4として帰還用のコンデンサCFのみを用いることが記載されている。
しかしながら、刊行物10には、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いること(相違点1に係る構成)も、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)も記載されておらず、示唆されてもいない。
(オ) また、上記(ア)に記載したように、圧電トランスにおいてコモンモードノイズが問題となることは、本件特許出願前周知の技術課題であり、コモンモードノイズを除去するために差動増幅器を用いることは、本件特許出願前周知技術であったものと認められるものの、上記刊行物2-4は、圧電トランスの帰還回路に対するコモンモードノイズの影響が本件特許出願前周知の技術課題であったことを示すものではなく、また、刊行物1にも、自励式圧電トランスコンバータの帰還回路に関するコモンモードノイズの影響を課題とする記載はないから、刊行物5-7に記載されるように、コモンモードノイズを除去するために差動増幅器を用いることが周知技術であったとしても、刊行物1の発明において、圧電トランスの帰還回路のコモンモードノイズを除去するために、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いる構成(相違点1に係る構成)を採用することが、当業者であっても容易になし得たこととはいえない。
そして、上記(ア)-(エ)に記載したように刊行物2-10にはいずれにも、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続する(相違点2に係る構成)ことは記載されていないから、上記周知の技術課題や上記周知技術を考慮しても、刊行物1の発明において、圧電トランスの帰還回路のコモンモードノイズを除去するために、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用い、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続することが、刊行物2-10に記載された技術事項から当業者が容易になし得たとはいえない。
(キ) 特許異議申立人は、申立書の「3(4)エ)(b)」で、
「しかし、甲2乃至甲4に記載されるように、本件特許発明1の出願前において、圧電トランスにコモンモードノイズが発生することは広く知られていた。また、甲5乃至甲7に記載されるように、ノイズの除去のために、差動増幅器を使用することも広く知られていた。
前記のように甲8には、圧電トランスの出力を差動増幅器に入力することによって同相ノイズキャンセルすることが記載されている。同様に、甲9には、圧電トランスの出力側に1対の端子を設けて、この1対の端子から取り出した出力を差動増幅器に入力することでノイズの検出を行うことが記載されている。
したがって、甲2乃至甲7に記載された周知技術の下では、甲8及び甲9に記載された『圧電トランスのノイズ対策として差動増幅器を使用する』という技術を甲1の電源装置に適用することは、当業者にとってきわめて容易なことである。
特に、甲9の発明は、圧電トランス出力側に1対の端子を設けて、これら1対の端子から取り出した電圧を差動増幅器に入力して比較していることから、1対の出力端子を有する甲1に対して同じく1対の出力端子の出力を差動増幅器に入力する甲9の発明を組み合わせて、圧電トランスにおいてノイズ除去用の差動増幅器を使用する甲8の発明を適用すれば、圧電トランスに設けられた1対の出力端子からの出力を差動増幅器に入力して、ノイズ対策を行う本件特許発明1を発明することは、当業者にとってきわめて容易に為し得る事項である。」
旨主張している。
しかしながら、上記(イ)に記載したように、刊行物8は、カレントトランスを差動増幅器に接続するものであり、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)は記載及び示唆されておらず、また、上記(ウ)に記載したように、刊行物9は、圧電トランスにクラックが発生したことの警告表示を行うものであり、圧電トランスの帰還回路に関するものではないから、甲1(刊行物1の発明)に対し甲8(刊行物8)及び甲9(刊行物9)の技術を適用することはできないし、たとえ適用できたとしても、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いること(相違点1に係る構成)も、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)になるものでもない。
したがって、特許異議申立人の主張は根拠がない。
(2) 本件特許発明2について
上記4.(11)に摘記した刊行物11の記載のように、平面状の導体(平行平面板)をプリント基板の両面同位置に配置し、平行平板コンデンサの原理を利用して静電容量を得ることは、本件特許出願前周知技術であったものと認められる。
しかしながら、刊行物11には、圧電トランスの帰還回路に差動増幅器を用いること(相違点1に係る構成)も、圧電トランスの1対の2次側端子を差動増幅器が具備する2つの入力端子にそれぞれ接続すること(相違点2に係る構成)も記載されておらず、示唆されてもいない。
そして、本件特許発明2は、本件特許発明1を更に減縮したものであるから、上記本件特許発明1についての判断と同様の理由により、上記刊行物1-11に記載の発明及び技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。
以上のとおり、本件特許発明1-2は、刊行物1-11に記載された発明及び技術的事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6.むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700149