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特許訂正審判

2017-390078

発光装置と表示装置

審判番号
2017-390078
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2012-189084
登録番号
特許第5177317号(P5177317)
請求日
2017年08月08日
審決日
2017年11月28日
公報発行日
2018年02月23日
結論
訂正認容
当事者
  • 【請求人】日亜化学工業 株式会社
  • 【請求人代理人】鮫島 睦
  • 【請求人代理人】言上 惠一
  • 【請求人代理人】山尾 憲人
  • 【請求人代理人】田村 啓
  • 【請求人代理人】玄番 佐奈恵
審判長/審判官
  • 審判長 森 竜介
  • 審判官 星野 浩一
  • 審判官 森林 克郎
分類
P141 .841-Y (H01L) / P141 .851-Y (H01L) / P141 .853-Y (H01L) / P141 .854-Y (H01L) / P141 .855-Y (H01L) / P141 .856-Y (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項特許法126条4項特許法126条7項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第4項、特許法第168条第5項、特許法第126条第7号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5177317号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 特許第5177317号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。

理由

【理 由】 第1 訂正の要旨 本件訂正審判の請求の趣旨は、本件訂正審判に係る特許第5177317号の明細書及び特許請求の範囲を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める、との審決を求めるものである。 1 訂正の内容(当審注:訂正箇所に下線を付した。) (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」とあるのを、 「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」と訂正する(訂正請求書第3頁)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」とあるのを、 「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、」と訂正する(訂正請求書第3ないし4頁)。 (3)訂正事項3 願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された、 「すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。」を、 「すなわち、本発明の発光装置は、白色系を発光する発光ダイオードであって、該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含むこと、を特徴とする発光ダイオードである。」と訂正する(訂正請求書第4頁)。 (4)訂正事項4 願書に添付した明細書の段落【0012】に記載された、 「また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、ことを特徴とするLED光源でもある。」を、 「また、本発明の発光装置は、白色系を発光するLED光源であって、該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、ことを特徴とするLED光源でもある。」と訂正する(訂正請求書第4ないし5頁)。 2 訂正の目的・新規事項の有無等について (1)上記訂正事項1及び訂正事項2は、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」に含まれる元素として択一的に列挙されたものから、Sm(サマリウム)を削除することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。 また、訂正事項3及び訂正事項4は、訂正後の請求項の記載と発明の詳細な説明の記載との整合性を図るために、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。 (2)上記訂正事項1ないし訂正事項4は、元素として択一的に列挙されたものから、単に「Sm」を削除するものであるから、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内においてなされるものであることは明らかである。そして、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことから、特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)また、訂正事項3は請求項1に関する訂正であり、訂正事項4は請求項2に関する訂正であることから、訂正事項3及び訂正事項4は、特許法第126条第4項の規定に適合する。 第2 独立特許要件について 訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、同条第7項の規定に基づき、訂正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるか否かについて、以下に検討する。 1 訂正後の発明 訂正後の請求項1及び訂正後の請求項2に係る発明は、以下のとおりのものである(以下「本件訂正発明1」及び「本件訂正発明2」という。)。 「【請求項1】 白色系を発光する発光ダイオードであって、 該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とする発光ダイオード。 【請求項2】 白色系を発光するLED光源であって、 該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とするLED光源。」 2 特許無効の抗弁 本件特許(特許第5177317号)に関し、東京地方裁判所において侵害訴訟事件(平成28年(ワ)第35157号)が係属中であるところ、特許法第168条第5項に基づき裁判所より、特許無効の抗弁がなされた旨の通知があった。 その理由とは、以下のものである。 無効理由1:サポート要件違反 (被告第1準備書面第14ないし28頁を参照。) 無効理由2:サポート要件違反及び明確性要件違反 (被告第3準備書面第11ないし22頁を参照。) 無効理由3:分割要件違反 (被告第1準備書面第28ないし29頁を参照。) 無効理由4:乙第10号証に記載された発明に基づく進歩性欠如 (被告第1準備書面第29ないし42頁を参照。) 無効理由5:乙第33号証に記載された発明に基づく新規性・進歩性欠如 (被告第3準備書面第22ないし29頁を参照。) そこで、これら無効理由1ないし無効理由5の観点から、本件訂正発明1及び本件訂正発明2が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 なお、訂正前の請求項1に係る発明及び訂正前の請求項2に係る発明を、まとめて、「訂正前発明」という。 3 無効理由1 (1)無効理由1の概要 訂正前発明の「白色系を発光する」(白色光)については、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものであるところ、本件特許明細書には、LEDチップからの発光(LED光)と、当該発光の一部がYAG系蛍光体により波長変換された発光(YAG光)との混色により白色光が発光されることが開示されているにすぎず、訂正前発明は、発明の詳細な説明に記載されていない態様を包含するものである。 (2)当審の判断 ア 本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、以下のものである(なお、下線は、当審で付した。)。 「【請求項1】 白色系を発光する発光ダイオードであって、 該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とする発光ダイオード。 【請求項2】 白色系を発光するLED光源であって、 該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とするLED光源。」 イ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件について (ア)特許請求の範囲の記載について 侵害訴訟事件の被告が、訂正前発明の「白色系(の光)」は、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものである旨主張していることから、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光の意義についてまず検討する 本件訂正発明1(本件訂正発明2)の白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)は、 a 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップ」 b 「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」 の二つの事項を少なくとも含むものであると認められる。 ここで、「白色系」の光は、補色関係にある光の混色により生成されることは技術常識であることから、上記aのLEDチップが発光する青色系の光を用いて「白色系の光」を生成するためには、黄色系の光を発光する要素の必要となることは明らかである。 他方、上記bの「ガーネット系蛍光体」は、黄色系の光を発光可能なことが技術常識であるし、本件特許明細書の【0044】にもその趣旨の記載がある。 そして、特許請求の範囲には、上記a及びbの二つが明示的に特定されていることからすれば、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光とは、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであると解するのが自然である。 この点、本件特許明細書の記載を見ても、「白色系」の光として、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるもののみが記載されているから、上記の解釈は、本件特許明細書の記載にも沿うものである。 以上によれば、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであると解すべきである。 そこで、上記のクレーム解釈に基づき、本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件充足性につき判断する。 (イ)本件特許明細書の記載から把握できる事項 a 本件特許明細書の【技術分野】、【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】の記載からして、 本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、従来の、青色発光素子とその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体の混色により白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)において、蛍光体が劣化して、色調がずれたり、光の外部取り出し効率が低下する場合があるという事情に鑑みて、「耐光性及び耐熱性等に優れたガーネット系蛍光体」を採用することにより、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれが極めて少ないという効果を奏するものであることが理解できる。 b 本件特許明細書の【0045】及び【0050】の記載からして、「ガーネット系蛍光体」は、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体であって、熱、光及び水分に強いことが理解できる。 c 本件特許明細書の実施例及び比較例から、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の組成を具体化した実施例1、2、5ないし11では、上記課題を解決できるのに対して、これとは異なる「(ZnCd)S:Cu、Al」を採用した比較例1及び「緑色有機蛍光顔料と赤色有機蛍光顔料」を採用した比較例2では、上記課題を解決できないことが理解できる。 d 本件特許明細書には、「白色系の光」を「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により生成することは、記載されていないし、示唆もされていない。 上記aないしdによれば、 本件特許明細書の記載に接した当業者は、「LEDチップ」の発光光(青色系の光)と「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の蛍光光を混色して「白色系の光」を生成することで、上記課題を解決できるものと認識できる。 (ウ)サポート要件について 本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系」の光は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものであるから、訂正後の特許請求の範囲は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、サポート要件を充足していると認められる。 (エ)侵害訴訟被告の主張について これに対し、侵害訴訟被告は、訂正前発明の「白色系(の光)」は、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含む旨主張するが、上記イ(ア)のとおり失当である。 ウ まとめ よって、無効理由1には、理由がない。 4 無効理由2 (1)無効理由2の概要 訂正前発明は、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」から「Sm」のみが選択される発明であってもよいところ、本件特許明細書には、「Sm」のみが選択される態様は開示されていない。 また、訂正前発明は、「Sm」の割合についての限定はなく、不明確である。 (2)当審の判断 ア 本件訂正発明1及び本件訂正発明2は、以下のものである(なお、下線は、当審で付した。)。 「【請求項1】 白色系を発光する発光ダイオードであって、 該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とする発光ダイオード。 【請求項2】 白色系を発光するLED光源であって、 該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体とを含む、 ことを特徴とするLED光源。」 イ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)のサポート要件及び明確性要件について (ア)特許請求の範囲の記載について 侵害訴訟事件の被告が、訂正前発明において、「Y、Gd及びSmからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素」から「Sm」のみを選択した発明は、本件特許明細書には開示されていない旨主張しているが、「Sm」は訂正により含まれないことになった。 そこで、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」を含む発明がサポートされているか否かについて検討する。 本件訂正発明1(本件訂正発明2)の白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)は、 a 「発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップ」 b 「LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」 の二つの事項を少なくとも含むものであると認められる。 ここで、上記aの「ガーネット系蛍光体」とは、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体(複合酸化物)であって、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなる」との発明特定事項からして、前段の元素として「Y」を選択し、後段の元素として「Al」を選択したYAG蛍光体に代表されるような、「一般式[A]3[B]5O12」で表される蛍光体」であることは、当業者にとって明らかである。 (イ)発明の詳細な説明の記載から把握される事項 a 本件特許明細書の【技術分野】、【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】の記載からして、 本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、従来の、青色発光素子とその発光を吸収して黄色系の光を発光する蛍光体の混色により白色系を発光する発光ダイオード(LED光源)において、蛍光体が劣化して、色調がずれたり、光の外部取り出し効率が低下する場合があるという事情に鑑みて、「耐光性及び耐熱性等に優れたガーネット系蛍光体」を採用することにより、長時間の使用環境下においても発光光度及び発光光率の低下や色ずれが極めて少ないという効果を奏するものであることが理解できる。 b 本件特許明細書の【0045】及び【0050】の記載からして、「ガーネット系蛍光体」は、ガーネット型の結晶構造を有する蛍光体であって、熱、光及び水分に強いことが理解できる。 c 本件特許明細書の【0052】の記載からして、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とは、「一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceで表される蛍光体」であることが理解できる。 d 「一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceで表される蛍光体」の組成を具体化した実施例1、2、5ないし11では、上記課題を解決できるのに対して、これとは異なる「(ZnCd)S:Cu、Al」を採用した比較例1及び「緑色有機蛍光顔料と赤色有機蛍光顔料」を採用した比較例2では、上記課題を解決できないことが理解できる。 e 上記aないしdによれば、 本件特許明細書の記載に接した当業者は、「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」として、「一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceで表される蛍光体」を採用することにより、上記課題を解決できるものと認識できる。 (ウ)サポート要件について 本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」とは、「一般式(Y1-aGda)3(Al1-bGab)5O12:Ceで表される蛍光体」であるから、訂正後の特許請求の範囲は、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであり、サポート要件を充足していると認められる。 してみると、サポート要件に関する無効理由には、理由がない。 (エ)明確性要件について 訂正により、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」には「Sm」は含まれないことになった。 そして、訂正後の特許請求の範囲の記載に不明確なところは認められない。 してみると、明確性要件に関する無効理由には、理由がない。 ウ まとめ よって、無効理由2には、理由がない。 5 無効理由3 (1)無効理由3の概要 訂正前発明の「白色系を発光する」(白色光)については、LED光とYAG系蛍光体以外の他の蛍光体の蛍光光との混色により発せられた白色光も含むものである。 しかしながら、原出願(特願2008-269号)には、LEDチップからの発光(LED光)と、当該発光の一部がYAG系蛍光体により波長変換された発光(YAG光)との混色により白色光が発光されることが開示されているにすぎない。 したがって、本件特許出願は分割要件違反であり、新規性及び進歩性の判断基準日は現実の出願日である2012年8月29日であるから、訂正前発明は、国際公開第98/05078号(国際公開日:1998年2月5日)に記載された発明と同一である。 (2)当審の判断 ア 上記「3 無効理由1」で検討したように、本件訂正発明1(本件訂正発明2)の「白色系(の光)」は、LEDチップとセリウムで付活されたガーネット系蛍光体との組合せにより生成されるものである。 イ そして、本件特許第5177317号の出願である特願2012-189084号(以下「本件特許出願」という。)は、特願2008-269号(以下「第5出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第5出願は、特願2006-196344号(以下「第4出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第4出願は、特願2005-147093号(以下「第3出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第3出願は、特願2002-278066号(以下「第2出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであり、第2出願は、特願平10-508693号(以下「第1出願」という。)の一部を新たな特許出願としたものであるところ、 「第1出願」ないし「第5出願」の、それぞれの願書に最初に添付した明細書及び図面にも、「LEDチップ」の発光(青色系の光)と「セリウムで付活されたガーネット系蛍光体」の蛍光光を混色して「白色系(の)光」を生成することが記載されていることから、本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「第1出願」ないし「第5出願」の、それぞれの願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された発明であると認められる。 よって、本件特許出願は、適法な分割出願であると認められる。 ウ そうすると、本件特許出願の出願日は、「第1出願」の国際出願日である1997年7月29日(最先の優先日:1996年7月29日)まで遡及し、国際公開第98/05078号(国際公開日:1998年2月5日)により新規性が欠如することはない。 エ まとめ よって、無効理由3には、理由がない。 6 無効理由4 (1)無効理由4の概要 訂正前発明は、当業者が乙第10号証(特開平5-152609号公報)に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (2)当審の判断 ア 乙第10号証には、図とともに、以下の記載がある。 (ア)「【請求項1】 ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、前記発光素子が、一般式GaXAl1-XN(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されてなることを特徴とする発光ダイオード。」 (イ)「【0003】通常、樹脂モールド4は、発光素子の発光を空気中に効率よく放出する目的で、屈折率が高く、かつ透明度の高い樹脂が選択されるが、他に、その発光素子の発光色を変換する目的で、あるいは色を補正する目的で、その樹脂モールド4の中に着色剤として無機顔料、または有機顔料が混入される場合がある。例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。 【0004】 …… 【0005】ところで、現在、LEDとして実用化されているのは、赤外、赤、黄色、緑色発光のLEDであり、青色または紫外のLEDは未だ実用化されていない。……それによるとpn接合の窒化ガリウム系化合物半導体を有するLEDの発光波長は、主として430nm付近にあり、さらに370nm付近の紫外域にも発光ピークを有している。その波長は上記半導体材料の中で最も短い波長である。しかし、そのLEDは発光波長が示すように紫色に近い発光色を有しているため視感度が悪いという欠点がある。 【0006】本発明はこのような事情を鑑みなされたもので、その目的とするところは、発光ピークが430nm付近、および370nm付近にある窒化ガリウム系化合物半導体材料よりなる発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させることにある。」 (ウ)「【0008】図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。発光素子11の裏面はサファイアの絶縁基板であり裏面から電極を取り出せないため、GaAlN層のn電極をメタルステム2と電気的に接続するため、GaAlN層をエッチングしてn型層の表面を露出させてオーミック電極を付け、金線によって電気的に接続する手法が取られている。また他の電極は図1と同様にメタルポスト3から伸ばした金線によりp型層の表面でワイヤボンドされている。さらに樹脂モールド4には420~440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。」 (エ)「【0009】 【発明の効果】蛍光染料、蛍光顔料は、一般に短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する。……そのためそれを発光素子の材料として使用した場合、その発光素子を包囲する樹脂モールドに蛍光染料、蛍光顔料を添加することにより、最も好適にそれら蛍光物質を励起することができる。したがって青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。さらに、短波長の光を長波長に変え、エネルギー効率がよい為、添加する蛍光染料、蛍光顔料が微量で済み、輝度の低下の点からも非常に好都合である。」 (オ)図2は、以下のものである。 イ 乙第10号証に記載された発明 (ア)上記ア(ア)の記載からして、乙第10号証には、 「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、 前記発光素子が、一般式GaXAl1-XN(但し0≦X≦1である)で表される窒化ガリウム系化合物半導体よりなり、さらに前記樹脂モールド中に、前記窒化ガリウム系化合物半導体の発光により励起されて蛍光を発する蛍光染料、または蛍光顔料が添加されている、発光ダイオード。」が記載されているものと認められる。 (イ)上記ア(イ)ないし(オ)の記載から、以下のことが理解できる。 a 上記(ア)の「発光素子」は、具体的には、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNよりなる発光素子であること。 b 上記(ア)の「蛍光染料、または蛍光顔料」は、具体的には、420~440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料であること。 c 上記(ア)の「発光ダイオード」は、視感度が良く、輝度が向上していること。 (ウ)上記(ア)及び(イ)より、乙第10号証には、次の発明(以下「乙10発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ステム上に発光素子を有し、それを樹脂モールドで包囲してなる発光ダイオードにおいて、 前記発光素子が、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNよりなり、 さらに前記樹脂モールド中に、420~440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料が添加されている、視感度が良く、輝度が向上した発光ダイオード。」 ウ 本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明とを対比する。 (ア)乙10発明の「発光ダイオード」は、「発光ダイオード」及び「LED光源」であるといえる。 乙10発明の「発光素子」は、「発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある紫色に近い発光色を有するGaAlNより」なるものであるから、「(発光層が)窒化ガリウム系化合物半導体」からなり、「発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にある」「LEDチップ」であるといえる。 乙10発明の「480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料」は、「発光素子によって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体」であるといえる。 (イ)そうすると、本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明は、以下の点で一致する。 <本件訂正発明1と乙10発明との一致点> 「発光ダイオードであって、 該発光ダイオードは、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、発光ダイオード。」 <本件訂正発明2と乙10発明との一致点> 「LED光源であって、 該LED光源は、発光層が窒化ガリウム系化合物半導体であり、前記発光層の発光スペクトルのピークが420~490nmの範囲にあるLEDチップと、該LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体とを含む、LED光源。」 (ウ)一方、本件訂正発明1(本件訂正発明2)と乙10発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 発光ダイオード(LED光源)の発光する色に関して、 本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「白色を発光する」のに対して、 乙10発明は、「白色を発光する」ものではない点。 <相違点2> LEDチップによって発光された光の一部を吸収して、吸収した光の波長よりも長波長の光を発光する、蛍光体に関して、 本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、「Y及びGdからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素と、Al及びGaからなる群から選ばれる少なくとも1つの元素とを含んでなるセリウムで付活されたガーネット系蛍光体」であるのに対して、 乙10発明は、そのような蛍光体であるか否か不明である点。 エ 判断 (ア)上記<相違点1>及び<相違点2>について検討する。 a 乙第10号証には「…例えば、GaPの半導体材料を有する緑色発光素子の樹脂モールド中に、赤色顔料を添加すれば発光色は白色とすることができる。」(【0003】)及び「…青色LEDの色補正はいうにおよばず、蛍光染料、蛍光顔料の種類によって数々の波長の光を変換することができる。」(【0009】)と記載され、混色により「白色」を生成することのできること、及びLEDと蛍光材料を組合わせることにより数々の波長に変換できることが示唆されている。 しかしながら、乙10発明の「発光ダイオード(LED光源)」は、その目的とするところが、発光ピークが430nm付近及び370nm付近にある発光素子を有するLEDの視感度を良くし、またその輝度を向上させること(【0006】)にあり、照明等に利用される「白色光」を生成するものではない。 b また、乙10発明の「発光素子」は、青色光(発光ピークが430nm付近)だけではなく、紫色光(370nm付近)を放射することから、青色光を吸収して青色の補色の光を発光する蛍光体として、「セリウムによって付活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体」が周知技術であるとしても、該蛍光体は紫色光(370nm付近)を吸収せず、そのまま外部に放射することになることから、当該蛍光体を採用して混色により白色光を生成することには、阻害要因があるといえる(370nm付近の有害な近紫外線を含む光を、照明光に利用することが望ましくないことは、当業者にとって明らかである。)。 c してみると、乙10発明において、上記<相違点1>及び<相違点2>に係る本件訂正発明1(本件訂正発明2)の発明特定事項を採用することは、当業者が周知技術に基づいて容易になし得たことであるとすることはできない。 オ まとめ よって、無効理由4には、理由がない。 7 無効理由5 (1)無効理由5の概要 本件訂正発明1(本件訂正発明2)は、ドイツ法人が発行したチラシ(乙第33号証)に記載された発明と同一、または、そのチラシに記載された発明と周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。 (2)当審の判断 ア 乙第33号証のチラシ(以下「本件チラシ」という。)を見ると、その右上側に「02/1995」と数字が印字されていることが読み取れるが、その数字が何を意味するのか直ちには明らかではない。 仮に、「1995年2月」を意味するものであるとしても、そのことから直ちに、本件チラシが本件特許の最先の優先日(1996年7月29日)前に頒布されたことを認めることはできない。 イ 本件チラシの頒布日を立証するために、 (ア)乙第34号証(納入伝票)と、それに添付された乙第35号証(チラ シ) (イ)乙第36号証(製品サンプル5個とチラシの在庫取り出しリスト) (ウ)乙第37号証(書簡)と、それに添付された乙第38号証(チラシ) が提出されている。 しかしながら、乙第34号証(納入伝票)及び乙第37号証(書簡)からでは、そこに印字された日付けに、本件チラシが配布されたことを認めることはできない。 また、乙第36号証(リスト)に手書きされた「250…02/1995」が本件チラシであるか不明である。 よって、本件チラシが、本件特許の最先の優先日(1996年7月29日)前に頒布されたことを認めることはできない。 ウ してみると、本件チラシは、本件特許の最先の優先日前に頒布されたものとはいえない。 エ まとめ よって、無効理由5には、理由がない。 8 独立特許要件についてのまとめ 以上の検討によれば、本件訂正発明1及び本件訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。 また、他に本件訂正発明1及び本件訂正発明2について、特許出願の際独立して特許を受けられないとすべき理由を発見しない。 よって、訂正事項1及び訂正事項2は、特許法第126条第7号の規定に適合するものである。 第4 むすび 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第126条第1項ただし書第1号又は同第3号に掲げる事項を目的とし、かつ同条第4項から第7項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-390078

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