特許異議申立
2017-700071
導電粒子および導電粒子を含む導電材料
- 審判番号
- 2017-700071
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-026029
- 登録番号
- 特許第5973015号(P5973015)
- 請求日
- 2017年01月27日
- 審決日
- 2018年03月08日
- 公報発行日
- 2018年10月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社ドクサンハイメタル
- 【権利者代理人】アイ・ピー・ディー国際特許業務法人
- 【異議申立人】青山 惠子
- 審判長/審判官
- 審判長 池渕 立
- 審判官 千葉 輝久
- 審判官 結城 佐織
- 分類
- P1651.537-ZAA(H01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第7項、特許法第126条第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5973015号発明「導電粒子および導電粒子を含む導電材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5973015号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕について、訂正することを認める。
特許第5973015号の請求項6~13に係る特許を取り消す。
特許第5973015号の請求項1~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5973015号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願(特願2015-26029)は、平成25年10月15日(パリ条約による優先権主張2012年12月26日、韓国)に出願した特願2013-214890号の一部を平成27年 2月13日に新たな特許出願としたものであって、平成28年 7月22日にその特許権の設定登録がされ、平成28年 8月17日付け特許掲載公報が発行されたものである。
その後、平成29年 1月27日に、本件特許について、特許異議申立人青山惠子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年 5月29日付けで取消理由が通知され、これに対し、その指定期間内である同年 8月29日に特許権者より意見書及び証拠説明書が提出され、さらに平成29年10月 3日付けで取消理由通知(決定の予告)がされ、これに対し、その指定期間内である平成30年 1月 9日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求がされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
平成30年 1月 9日付けの訂正請求書による訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)の趣旨は、特許5973015号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13について訂正することを求める、というものであり、本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電粒子を含む、異方性導電材料。」とあるのを、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電粒子、または、請求項6の異方性導電材料を含む、電子装置。」とあるのを、請求項6を引用するものについて、訂正事項6に整合させて、「異方性導電材料」を「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に減縮し、次のように訂正する。
「請求項6のCOG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。」
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電粒子を含む、異方性導電材料。」とあるのを、請求項2を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項8とするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層は、30~300nmの厚さを有する、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電粒子を含む、異方性導電材料。」とあるのを、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項9とするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記突起は、前記被覆層と同一の物質からなる、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項6に、
「請求項1~5のいずれか1項に記載の導電粒子を含む、異方性導電材料。」とあるのを、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項10にするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdからなる群から選択される1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含む、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電粒子、または請求項6の異方性導電材料を含む、電子装置。」とあるのを、請求項2を引用する請求項6を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項11とするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層は、30~300nmの厚さを有する、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電粒子、または請求項6の異方性導電材料を含む、電子装置。」とあるのを、請求項1を引用する請求項3を引用する請求項6を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項12とするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記突起は、前記被覆層と同一の物質からなる、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項7に、
「請求項1~4のいずれか1項に記載の導電粒子、または請求項6の異方性導電材料を含む、電子装置。」とあるのを、請求項1を引用する請求項4を引用する請求項6を引用するものについて、独立形式に改めて新たな請求項13とするとともに、「異方性導電材料」について減縮して、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とし、次のように訂正する。
「樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdからなる群から選択される1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含む、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
2 訂正の可否について
2-1 訂正事項1~5について
(1)訂正の目的、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の追加の有無
訂正事項1~5は、それぞれ請求項1~5を削除するというものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、上記訂正請求による訂正事項1~5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合する。
(2)独立して特許を受けることができるものであること
本件においては、本件訂正請求前の全ての請求項である請求項1~7について、特許異議申立てがされているので、本件訂正請求前の請求項1~5に係る訂正事項1~5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
2-2 訂正事項6について
(1)訂正の目的
訂正事項6は、本件訂正請求前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項を引用するものであるところ、請求項1を引用するものについて、独立形式に改めるとともに、「異方性導電材料」について、用途を「COG(Chip on Glass)用」と限定し、形態を「フィルム」と限定することにより、「異方性導電フィルム(ACF)」又は「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」とするものである。
したがって、訂正事項6は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とするものである。
(2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)のとおり、訂正事項6は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)新規事項の追加の有無
願書に添付した明細書の【0020】には、「前記導電粒子は、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム(ACF)に含まれてもよい。」との記載がある。
したがって、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内でしたものといえるので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(4)独立して特許を受けることができるものであること
本件においては、本件訂正請求前の全ての請求項である請求項1~7について、特許異議申立てがされているので、本件訂正請求前の請求項6に係る訂正事項6に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
2-3 訂正事項7について
(1)訂正の目的
訂正事項7は、本件訂正前の請求項7が、請求項1~4、6のいずれかを引用するものであるところ、請求項6を引用するものについて、訂正事項6に整合させて、「異方性導電材料」を「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号を目的とするものである。
(2)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)のとおり、訂正事項7は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(3)新規事項の追加の有無
上記2-2(3)と同様に、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内でしたものといえるので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(4)独立して特許を受けることができるものであること
上記2-2(4)と同様に、本件訂正請求前の請求項7に係る訂正事項7に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
2-4 訂正事項8~13について
訂正事項8~13の内容は、上記「1訂正の内容」で示したとおりであり、「2-2 訂正事項6について」の項の判断と同様に、訂正事項8~13は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面の範囲内でしたものといえるので、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものであり、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項のいわゆる独立特許要件は課されない。
2-5 一群の請求項について
訂正事項1~13に係る本件訂正請求前の請求項1~7のうち、請求項2~7は、本件訂正請求前の請求項1を引用しており、訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正請求前の請求項1~7に対応する本件訂正請求後の請求項6~13は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
しかしながら、訂正請求書において、訂正後の請求項6~13について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の中の請求項を別の訂正単位とすることを求めているところ、上述のとおり、本件訂正は認められるものであるから、本件訂正請求後の請求項1~5、請求項6~7、請求項8、請求項9、請求項10、請求項11、請求項12、請求項13をそれぞれ別の訂正単位とすることを認める。
2-6 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、第9項で準用する特許法第126条第5項と第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6、7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕について、訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
上記第2で検討したように、本件訂正請求による訂正は認められたので、本件特許の請求項1~5は削除され、本件特許の請求項6~13に係る発明(以下、「本件発明6~13」という。)は、本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項6~13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項6】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項7】
請求項6のCOG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
【請求項8】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層は、30~300nmの厚さを有する、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項9】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記突起は、前記被覆層と同一の物質からなる、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項10】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdからなる群から選択される1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含む、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項11】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層は、30~300nmの厚さを有する、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項12】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記突起は、前記被覆層と同一の物質からなる、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。
【請求項13】
樹脂微粒子と、
前記樹脂微粒子の外面に設けられ、表面に突起を有する被覆層と、
を含み、
前記突起は、100~300nmの高さを有し、
前記被覆層は、ニッケルおよびリンを含み、
下記式1によるP値が47.7≦P≦50である導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACG)であり、
前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下であり、
前記被覆層の外面には、Au、Pt、AgおよびPdからなる群から選択される1種または2種以上の合金からなる追加の被覆層をさらに含む、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムを含む、電子装置。
P(μm-1)=[(Sf/Sc)/D]×100・・・(式1)
ここで、上記式1において、
Sf:導電粒子の破壊が始まる力(F2、mN)を加えたときの変形量(μm)
Sc:導電粒子の直径と同じ数値の力(F1、mN)を加えたときの変形量(μm)
D:導電粒子の平均直径(μm)
を示す。」
2 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証~甲第12号証を提出し、以下の理由により、訂正前の請求項1~7に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1
訂正前の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。
(2)申立理由2
訂正前の請求項1~7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3)申立理由3
本件特許の発明の詳細な説明は、訂正前の請求項1~7に係る発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してなされたものである。(甲第3号証~甲第9号証)
(4)申立理由4
訂正前の請求項1~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してなされたものである。
(5)申立理由5
訂正前の請求項1~7に係る発明は、明確でないから、訂正前の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してなされたものである。(甲第10号証~甲第12号証)
[証拠方法]
甲第1号証:特開2012-79635号公報
甲第2号証:特開平11-150355号公報
甲第3号証:特開2002-145935号公報
甲第4号証:Merck Millipore Corporation ホームページ 同社製ジビニルベンゼンの安全データシート
甲第5号証:昭和化学株式会社ホームページ 同社製ジビニルベンゼンの安全データシート
甲第6号証:新日鉄住金化学株式会社ホームページ 同社製ジビニルベンゼンの記載箇所
甲第7号証:東京化成工業株式会社ホームページ 同社製ジビニルベンゼンの記載箇所
甲第8号証:国立医薬品食品衛生研究所ホームページ ジビニルベンゼンに関する国際化学物質安全性カード
甲第9号証:特開2006-228474号公報
甲第10号証:特開2011-233297号公報
甲第11号証:特開2002-93240号公報
甲第12号証:特開2011-249233号公報
3 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由の概要
訂正前の請求項1~7に係る特許に対して、上記申立理由5に基づいて平成29年10月 3日付けで通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由2-1:請求項1~7に係る発明は、下記の理由で明確ではないから、請求項1~7に係る本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるので、取り消されるべきものである。
記
請求項1の「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」は明確でない。
それは、請求項1の「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際」について、どのようなフィルムを用いて、どのような抵抗測定サンプルを用いて抵抗を測定したのであるか、測定条件が明確でないから、請求項1で特定される上記事項が、どのようなことを特定しているのか明確でないからである。
また、請求項1を引用する請求項2~7についても同様である。
4 当審の判断
ア 取消理由2-1について検討するにあたり、初めに、本件訂正後の請求項6の「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」なる記載(下線は当審が付与した。)における「導電粒子を混合したフィルム」と、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」が同一のフィルムであるかについて検討する。
イ この検討にあたり、まず、本件訂正前の請求項1に記載された「導電粒子を混合したフィルム」と当該請求項1を引用する請求項6に記載された「異方性導電材料」が同一であるといえるかについて検討する。
ウ 本件訂正前の請求項1には「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である、導電粒子」と記載されていることから、「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項は、「導電粒子」が、当該「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際」に「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」が特定の値、すなわち、「1.6Ω以下」であるような「導電粒子」であることを特定したものである。
このことから、本件訂正前の請求項1に記載された「導電粒子を混合したフィルム」は、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を測定して、「導電粒子」の特性を特定するために使用されるフィルム(以下「サンプルフィルム」という。)であると認められる。
一方、当該請求項1を引用する請求項6に記載された「異方性導電材料」は、請求項1に記載された「導電粒子」を含む「異方性導電材料」であって、異方性導電フィルムや、異方性導電ペースト、異方性導電インク等の様々な形態で電気的接続に使用されるものである(本件特許明細書の段落【0002】~【0003】参照)。
したがって、本件訂正前の請求項1に記載された「導電粒子を混合したフィルム」と当該請求項1を引用する請求項6に記載された「異方性導電材料」は、用途においても、形態においても、同一のものでないことは明らかであるし、また、上記「導電粒子を混合したフィルム」と上記「異方性導電材料」は、それぞれに含まれる「導電粒子」の配合量、したがって、「導電粒子」の密度(ペーストやインクにおいては単位体積あたりの個数、フィルムにおいては単位面積あたりの個数又は単位体積あたりの個数)を別個に独立して設定し得るものであることが明らかであるから、この点においても同一のものではない。
エ 次に、本件訂正後の請求項6に記載された「導電粒子を混合したフィルム」と、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」が同一のフィルムであるかについて検討する。
オ 上記「第2 2 2-2(1)」で検討したように、本件訂正後の請求項6に記載された「導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACF)」又は「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」は、本件訂正前の請求項6に記載された「導電粒子を含む、異方性導電材料」を用途及び形態について限定したものであることを勘案すれば、上記ウの検討も踏まえると、本件訂正後の請求項6に記載された、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を測定するために使用される「導電粒子を混合したフィルム」と、「導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACF)」又は「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」は、前者が導電粒子の特性測定用のサンプルフィルムであるのに対して、後者は電極間等の電気的接続に実際に使用される接続用のフィルムであるといえるから、これら両フィルムは、同一の導電粒子を含有する点及びフィルムという形態の点では共通しているけれども、お互いに用途が異なるし、フィルム内に混合される導電粒子の密度やフィルムの厚さ・面積が両フィルムで同一であるとの特定もされていないから、これら両フィルムが同一のフィルムであるといえないことは明らかである。
カ 上記オの検討によれば、本件訂正後の請求項6に記載された「導電粒子を混合したフィルム」と、「導電粒子を含む異方性導電フィルム(ACF)」又は「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」は同一のフィルムではないから、当該検討を前提にして、本件訂正後の請求項6の記載「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である、COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」を検討すると、「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項は、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」を特定するもの、すなわち、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」について「電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を測定した場合の「抵抗値の差」を特定するものであるということはできず、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に含まれる「導電粒子」を特定するもの、すなわち、「導電粒子」を「混合」することによって形成された、特性測定用のサンプルフィルムについて、「電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を測定することにより得られた「抵抗値の差」を特定することによって、上記「導電粒子」を特定するものであるといえる。
つまり、本件訂正後の請求項6における、「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項は、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」を特定する事項ではなく、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に含まれる「導電粒子」を特定する事項であると解するのが相当である。
キ そうすると、本件発明6の「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項(以下「導電粒子抵抗特定事項」という。)は、本件発明6の「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に含まれる「導電粒子」が、
当該「導電粒子」を「混合したフィルム」(COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルムとは異なる特性測定用のサンプルフィルムを意味する。)を「電極」と「接合」した状態で、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」(以下「抵抗値の差」という。)を測定すると、「1.6Ω以下である」ような特性を備えた「導電粒子」であること、
を特定するものである。
ク ここで、異方性導電フィルムであるサンプルフィルムを用いて抵抗を測定する場合、サンプルフィルムに含まれる導電粒子の配合量、サンプルフィルムの厚さ、サンプルフィルムと電極の接触面積(一般的に、抵抗は、断面積に反比例し、長さに比例する。例えば「化学大辞典 6 縮刷版」第36刷 1997年9月20日発行、共立出版株式会社発行 247ページ 「でんきていこう」の項目参照。)、サンプルフィルムと電極の接続条件(加熱温度、加圧圧力、加熱加圧時間)等によって、測定される抵抗が変化することは、技術常識である。
ケ 例えば、サンプルフィルム中の導電粒子の配合量(配合割合)が多ければ、接続される電極間に存在する導電粒子の個数が増えるので、電極間の抵抗は低くなるし、フィルムを介して接続される電極の面積が大きくなる場合にも、電極間の抵抗は低くなる。
コ これについて、簡単なモデルとして、対向する電極間に存在するサンプルフィルムに含まれる導電粒子の個数が、1個の場合と2個の場合を想定して検討する。
導電粒子の各々と電極との接続状態が均等なものであり、導電粒子の各々と電極との接続は、「接続初期」から「85℃/85%、100hr以後」にかけて、同様に劣化し、同様に抵抗が増加する、つまり、いずれの導電粒子も1個当たり、R1という初期抵抗値を持つとともに、導電粒子の各々は「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」の値が、Δという等しい値を有するものであると仮定する。
電極間に2個の導電粒子が存在している場合には、電極間を2つのR1抵抗が並列接続していると考えることができ、この場合の初期の合成抵抗Rは、1/R=1/R1+1/R1より、R=(R1)/2である(いくつもの並列に接続された抵抗の合成抵抗は、各抵抗の逆数の和の逆数に等しい。例えば、「電気・電子辞典」1版第6刷 昭和47年6月20日発行、株式会社技報堂発行 114ページ「合成抵抗」の項目参照。)。
そして、電極間を1個の導電粒子が接続している時、接続初期の抵抗がR=R1であり、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」がΔであると、電極間を2個の導電粒子が接続しているときの100hr後の合成抵抗Rは、R=(R1+Δ)/2=(R1)/2+Δ/2となるので、導電粒子1個当たり、100hr後にΔ抵抗が増加しているときに、合成抵抗がΔ/2増加することがわかる。
すなわち、導電粒子が2個の時には、1個の時に比べて、抵抗増加は、半分になる。
サ そうすると、導電粒子1個で電極間を接続している時に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が例えば2.8Ωであったとしても、上記導電粒子2個で接続した時には、抵抗値の差が半分の1.4Ωとなることとなり、同じ導電粒子を用いたとしても、サンプルフィルムの製造条件によって、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」は「1.6Ω以下」となることもあれば、「1.6Ω以上」となることもあるから、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下」との特定事項によっては、導電粒子の特性は一義的に決まらない。つまり、異方性導電フィルムの製造条件等が何ら特定されていない本件発明6の「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項は、導電粒子の特性を明確に特定するものではない。
シ ここで、本件訂正後の請求項6の記載「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」について、本件特許明細書の記載を参照しても依然として上記指摘の点が不明確であることを確認する。
本件特許明細書には上記請求項6の記載に関して、以下の記載が認められる。
「【0077】
(実験例)
<実験例1:接続抵抗の測定>
接続抵抗を測定するためにエポキシ樹脂と前記導電粒子を混合し、フィルム状に作って電極と接合させた後、抵抗を測定した。
【0078】
接合初期の抵抗と85℃/85%での100hr後の抵抗変化をそれぞれ測定し、その結果を以下の表1に示した。
【0079】
【表1】
【0080】
上記表1から明らかなように、本発明の実施例に係る、Pの範囲が20≦P≦50であるものの抵抗が低く、接続信頼度が高いことが分かる。」
ス 上記段落【0077】によれば、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を測定するために作製されるフィルムとは、エポキシ樹脂と導電粒子を混合したフィルムであるが、当該フィルムに含まれる導電粒子の配合量や、当該フィルムの厚さ、面積について記載されておらず、不明である。
また、異方性導電フィルムの抵抗値を測定するにあたり、当該フィルムに含まれる導電粒子の配合量や、当該フィルムの厚さ、面積が記載されていなかった場合に、特定の製造条件を採用するのが通常であるという、当業者に共通の認識があったものとも認められない。
そして、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」(以下「抵抗値の差」という。)は、上記表1に記載された「初期抵抗(Ω)」の値と「85℃/85%での100時間後の抵抗(Ω)」の値の差を計算すれば求めることができ、実際に表1の値を用いて計算すると、実施例1~8における「抵抗値の差」は、それぞれ、3.4、1.6、3.2、2.2、2.3、2.4、2.6、4.8であり、比較例1~2における「抵抗値の差」は、それぞれ、5.8、7.4であるから、比較例1、2よりも、実施例1~8は、「抵抗値の差」が小さくなっているので、実施例は比較例よりも接続信頼度が高いことが理解できる。
つまり、上記「抵抗値の差」は、「85℃/85%」という高温多湿の環境に100時間曝された場合における、フィルムの接続信頼度を表す指標であって、当該指標を異なる実施例・比較例の間で比較した場合に、「抵抗値の差」が小さいほど接続信頼度が高いことを表しており、「抵抗値の差」が小さいことは、上記高温多湿の環境においても、個々の「導電粒子」の導電性が劣化しにくいことを表していると考えられる。しかしながら、上記「抵抗値の差」は、当該フィルムに含まれる導電粒子の配合量や、当該フィルムの厚さ、面積が不明であって、一義的に求められるものではないから、明確といえないことは、上記サで検討したとおりである。
セ 以上のとおり、本件発明6は、「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との特定事項によっては、「導電粒子」の特性が一義的に決まらず不明であるから、そのような「導電粒子」を含有する「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」も、明確でない。
よって、本件発明6は明確でない。
また、本件発明7~13も、「前記導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下」との特定事項を備えるものであるから、上記本件発明6についての判断と同様に、明確でない。
ソ なお、特許権者は、平成30年 1月 9日提出の意見書において、次の主張をしている。
『本件発明6は、COG用異方性導電フィルムに関するものであり、特定の物理的な特性を示す導電粒子を含むフィルムであることを特徴とし、電極を接続して抵抗を測定した場合に、抵抗値の変化が少ないことを特徴とするものである。
本件発明6は、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」を求める測定(85℃/85%テスト)を行うと、「接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差」が1.6Ωであれば、本発明の権利範囲に属するものである。
本件発明6は、同一の導電粒子を多様な導電フィルム製造条件下で用いたとしても、フィルムの構成に関する要件は問うものではなく、導電粒子の配合量が多い場合であっても、少ない場合であっても、フィルムの厚さが厚い場合であっても、薄い場合であっても、請求項に記載された導電粒子を用いて異方性フィルムを製造した場合、85℃/85%テストによる抵抗値の差が1.6Ωであれば、本発明の権利範囲に属するものであり、「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との発明特定事項は、COG用異方性フィルムの特徴を一義的に規定する。
また、電極素材、電極面積、接続条件に起因する要因(測定方法に起因する要因)は、差分をとる際に相殺される。
さらに、85℃/85%の条件で電極の抵抗値を測定することは、一般的な方法である。
したがって、本件発明6は、明確である。』
しかしながら、上記カで検討したように、本件発明6の導電粒子抵抗特定事項は、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」を特定する事項ではなく、「COG(Chip on Glass)用異方性導電フィルム」に含まれる「導電粒子」を特定する事項であるから、特許権者の上記『「導電粒子を混合したフィルムと電極とを接合して抵抗を測定した際に、接続初期抵抗と、85℃/85%、100hr以後の抵抗値との差が1.6Ω以下である」との発明特定事項は、COG用異方性フィルムの特徴を一義的に規定する』との主張を採用することはできない。
また、上記コ、サで検討したように、導電粒子の配合量が違えば、「抵抗値の差」は異なってくるのであるから、少なくとも、導電粒子の配合量に起因する要因は、差分をとっても相殺されることがないといえる。
したがって、特許権者の上記主張は採用できない。
タ したがって、本件発明6~13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、本件発明6~13の特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項6~13に係る発明は明確ではないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。
また、請求項1~5に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項1~5に対して、申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-700071